(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171250
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】変性液状ジエン系重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08C 19/20 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
C08C19/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077797
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑樹
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB02P
4J100AS02P
4J100AS02Q
4J100AS03P
4J100AS03Q
4J100AS07P
4J100BA16H
4J100BA51H
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100EA01
4J100FA03
4J100HA61
4J100HC54
4J100HE14
4J100HE41
4J100HG03
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】シリカ吸着性に優れるジエン系重合体、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有する、液状ジエン重合体、又は、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体である、変性液状ジエン系重合体。
式(1)及び式(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、X
1は、カルボキシ基を表し、X
2及びX
3は、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表し、*は、結合位置を表す。ただし、X
2及びX
3の少なくとも一方はカルボキシ基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有する、液状ジエン重合体、又は、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体である、変性液状ジエン系重合体。
【化1】
【化2】
式(1)及び式(2)中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
X
1は、カルボキシ基を表し、
X
2及びX
3は、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表し、
*は、結合位置を表す。
ただし、X
2及びX
3の少なくとも一方はカルボキシ基である。
【請求項2】
前記液状ジエン重合体が、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である、又は、
前記液状芳香族ビニル-ジエン共重合体が、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種とスチレンとの共重合体である、請求項1に記載の変性液状ジエン系重合体。
【請求項3】
重量平均分子量が、1,000~100,000である、請求項1又は2に記載の変性液状ジエン系重合体。
【請求項4】
前記特定官能基が、前記式(2)で表される官能基であり、
前記式(2)中、R2がメチレン基であり、X2及びX3がカルボキシ基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性液状ジエン系重合体。
【請求項5】
1分子あたりの前記特定官能基の平均の数が、1~10である、請求項1~4のいずれか1項に記載の変性液状ジエン系重合体。
【請求項6】
液状ジエン重合体、又は、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体と、
ラジカル開始剤と、
下記式(1A)で表される化合物及び下記式(2A)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である特定化合物とを反応させることで、請求項1に記載の変性液状ジエン系重合体を得る、変性液状ジエン系重合体の製造方法。
【化3】
【化4】
式(1A)及び式(2A)中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
X
1は、カルボキシ基を表し、
X
2及びX
3は、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表す。
ただし、X
2及びX
3の少なくとも一方はカルボキシ基である。
【請求項7】
前記液状ジエン重合体が、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である、又は、
前記液状芳香族ビニル-ジエン共重合体が、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種とスチレンとの共重合体である、請求項6に記載の変性液状ジエン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記変性液状ジエン系重合体の重量平均分子量が、1,000~100,000である、請求項6又は7に記載の変性液状ジエン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記特定化合物が、メルカプトこはく酸である、請求項6~8のいずれか1項に記載の変性液状ジエン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記変性液状ジエン系重合体の1分子あたりの前記特定官能基の平均の数が、1~10である、請求項6~9のいずれか1項に記載の変性液状ジエン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性液状ジエン系重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカへの吸着性(シリカ吸着性)を有するジエン系重合体が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者が特許文献1に記載のジエン系重合体について検討したところ、様々な用途への応用を考えると、シリカ吸着性のさらなる向上が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、シリカ吸着性に優れるジエン系重合体、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、特定の官能基を主鎖に有するジエン系重合体によって上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) 後述する式(1)で表される官能基及び後述する式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有する、液状ジエン重合体、又は、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体である、変性液状ジエン系重合体。
(2) 上記液状ジエン重合体が、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である、又は、
上記液状芳香族ビニル-ジエン共重合体が、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種とスチレンとの共重合体である、上記(1)に記載の変性液状ジエン系重合体。
(3) 重量平均分子量が、1,000~100,000である、上記(1)又は(2)に記載の変性液状ジエン系重合体。
(4) 上記特定官能基が、上記式(2)で表される官能基であり、
上記式(2)中、R2がメチレン基であり、X2及びX3がカルボキシ基である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の変性液状ジエン系重合体。
(5) 1分子あたりの上記特定官能基の平均の数が、1~10である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の変性液状ジエン系重合体。
(6) 液状ジエン重合体、又は、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体と、
ラジカル開始剤と、
後述する式(1A)で表される化合物及び後述する式(2A)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である特定化合物とを反応させることで、上記(1)に記載の変性液状ジエン系重合体を得る、変性液状ジエン系重合体の製造方法。
(7) 上記液状ジエン重合体が、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である、又は、
上記液状芳香族ビニル-ジエン共重合体が、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種とスチレンとの共重合体である、上記(6)に記載の変性液状ジエン系重合体の製造方法。
(8) 上記変性液状ジエン系重合体の重量平均分子量が、1,000~100,000である、上記(6)又は(7)に記載の変性液状ジエン系重合体の製造方法。
(9) 上記特定化合物が、メルカプトこはく酸である、上記(6)~(8)のいずれかに記載の変性液状ジエン系重合体の製造方法。
(10) 上記変性液状ジエン系重合体の1分子あたりの上記特定官能基の平均の数が、1~10である、上記(6)~(9)のいずれかに記載の変性液状ジエン系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、シリカ吸着性に優れるジエン系重合体、及び、その製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の変性液状ジエン系重合体、及び、その製造方法について説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について量とは、特段の断りが無い限り、合計の量を指す。
また、本明細書において、液状とは、20℃、1気圧において、液状であることを意味する。
【0010】
[変性液状ジエン系重合体]
本発明の変性液状ジエン系重合体(以下、「本発明の重合体」とも言う)は、
後述する式(1)で表される官能基及び後述する式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有する、液状ジエン重合体、又は、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体である、変性液状ジエン系重合体である。
【0011】
本発明の重合体がシリカ吸着性に優れる理由は明らかではないが、主鎖の官能基がカルボキシ基の代わりにアルコキシシリル基を有する場合(後述する比較例1)や、主鎖の官能基がカルボキシ基を有するが特定の構造(硫黄原子等)を有さない場合には十分なシリカ吸着性が見られないことから、主鎖の官能基(特定官能基)がカルボキシ基及び特定の構造(硫黄原子等)を有することによって優れたシリカ吸着性が発現されるものと推測される。
【0012】
以下、本発明の重合体について詳述する。
【0013】
〔骨格〕
本発明の重合体の骨格(主鎖構造)は、液状のジエン重合体(液状ジエン重合体)、又は、液状の芳香族ビニル-ジエン共重合体(液状芳香族ビニル-ジエン共重合体)であれば特に制限されない。以下、「液状ジエン重合体」及び「液状芳香族ビニル-ジエン共重合体」をまとめて「液状ジエン系重合体」とも言う。
ジエン重合体とは、ジエン(特に共役ジエン)の重合体である。ジエン重合体は、単独重合体(ホモポリマー)であっても、共重合体(コポリマー)であってもよいが、本発明の効果がより優れる理由から、単独重合体であることが好ましい。
芳香族ビニル-ジエン共重合体とは、芳香族ビニルとジエン(特に共役ジエン)との共重合体である。
上記共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
上記骨格は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン重合体であることが好ましい。
【0014】
上記ジエン重合体のジエンの具体例としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。上記ジエンは、本発明の効果がより優れる理由から、ブタジエン又はイソプレンであることが好ましく、ブタジエンであることがより好ましい。
上記芳香族ビニル-ジエン共重合体の芳香族ビニルの具体例としては、スチレンが挙げられる。上記芳香族ビニル-ジエン共重合体のジエンの具体例及び好適な態様は上記ジエン重合体と同じである。
【0015】
上記液状ジエン系重合体の具体例としては、液状の、ブタジエン重合体(BR)、イソプレン重合体(IR)、クロロプレン重合体(CR)、イソプレンブタジエン共重合体(IBR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、イソプレンスチレン共重合体等が挙げられる。
【0016】
<好適な態様>
上記液状ジエン系重合体は、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、又は、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種とスチレンとの共重合体であることが好ましく、液状の、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体であることがより好ましく、液状の、ブタジエンの重合体であることがさらに好ましい。
【0017】
<分子量>
上記液状ジエン系重合体の分子量の好適な態様は後述する本発明の重合体の分子量と同じである。
【0018】
〔特定官能基〕
本発明の重合体は、下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有する。
上記特定官能基は、本発明の効果がより優れる理由から、式(2)で表される官能基であることが好ましい。
【0019】
【0020】
【0021】
式(1)及び式(2)中、
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
X1は、カルボキシ基を表し、
X2及びX3は、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表し、
*は、結合位置を表す。
ただし、X2及びX3の少なくとも一方はカルボキシ基である。
【0022】
R1及びR2は、本発明の効果がより優れる理由から、1~3のアルキレン基であることが好ましく、1~2のアルキレン基であることがより好ましい。
【0023】
X2及びX3は、本発明の効果がより優れる理由から、両方ともカルボキシ基であることが好ましい。
【0024】
<主鎖官能基数>
本発明の重合体の主鎖官能基数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、3~6であることがさらに好ましい。
ここで、主鎖官能基数とは、本発明の重合体が主鎖に有する特定官能基の数(1分子あたりの平均の数)を表す。
【0025】
<変性率>
本発明の重合体の変性率は、本発明の効果がより優れる理由から、1.0~10.0モル%であることが好ましく、2.0~5.0モル%であることがより好ましい。
ここで、変性率とは、本発明の重合体の重合度に対する、本発明の重合体が主鎖に有する特定官能基の数(1分子あたりの平均の数)の割合を表す。上記重合度は、本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)と本発明の重合体を構成する繰り返し単位の分子量から算出するものとする。
【0026】
〔分子量〕
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましく、8,000~20,000であることがさらに好ましい。
本発明の重合体の数平均分子量(Mn)は、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましく、8,000~20,000であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0027】
〔液状〕
本発明の重合体は、20℃、1気圧において、液状である。
【0028】
[本発明の重合体の製造方法]
本発明の重合体を製造する方法は特に制限されないが、得られる本発明の重合体のシリカ吸着性がより優れる理由から、
液状ジエン重合体、又は、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体(液状ジエン系重合体)と、
ラジカル開始剤と、
後述する式(1A)で表される化合物及び後述する式(2A)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である特定化合物とを反応させることで、本発明の重合体を得る方法(以下、製造方法1」とも言う)が好ましい。
上記製造方法1においては、ラジカル開始剤によって液状ジエン系重合体の二重結合のα炭素原子から水素原子が引き抜かれ、そこに特定化合物が反応して、液状ジエン系重合体の主鎖に上述した特定官能基が導入される。
上記製造方法1の反応は、得られる本発明の重合体のシリカ吸着性がより優れる理由から、バルク又は有機溶媒中で行うのが好ましい。
以下、「得られる本発明の重合体のシリカ吸着性がより優れる」ことを「本発明の効果がより優れる」とも言う。
【0029】
以下、製造方法1で使用される各成分について説明する。
【0030】
〔液状ジエン系重合体〕
液状ジエン系重合体の定義、具体例及び好適な態様は、上述した本発明の重合体の骨格と同じである。
【0031】
〔ラジカル開始剤〕
上記ラジカル開始剤は特に限定されず、その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシ-3-ヘキシン、2,4-ジクロロ-ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-ジ-イソプロピルベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタンなどの有機過酸化物、アゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチレート)、アゾビス-シアン吉草酸、1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などのラジカル発生剤、等が挙げられる。
上記ラジカル開始剤は、本発明の効果がより優れる理由から、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)であることが好ましい。
【0032】
<添加量>
上記ラジカル開始剤の添加量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した液状ジエン系重合体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0033】
〔特定化合物〕
上述のとおり、製造方法1では、式(1A)で表される化合物及び式(2A)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である特定化合物が使用される。
特定化合物は、本発明の効果がより優れる理由から、式(2A)で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
【0035】
【0036】
式(1A)及び式(2A)中、
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
X1は、カルボキシ基を表し、
X2及びX3は、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表す。
ただし、X2及びX3の少なくとも一方はカルボキシ基である。
【0037】
式(1A)及び式(2A)中の各記号の具体例及び好適な態様は、上述した式(1)及び式(2)と同じである。
【0038】
<具体例>
式(1A)で表される化合物の具体例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、メルカプト酢酸が好ましい。
式(2A)で表される化合物の具体例としては、メルカプトこはく酸、2-メルカプトグルタル酸、2-メルカプトアジピン酸等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、メルカプトコハク酸が好ましい。
【0039】
<添加量>
特定化合物の添加量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した液状ジエン系重合体に対して、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることがさらに好ましい。
【0040】
〔好適な態様〕
上記製造方法1は、本発明の効果がより優れる理由から、下記(1)~(2)の工程を備える方法(以下、「製造方法2」とも言う)であることが好ましい。
【0041】
(1)モノマー重合工程
有機リチウム化合物を用いてジエンを含有するモノマーを重合し、液状ジエン系重合体を得る工程
(2)主鎖変性工程
上記液状ジエン系重合体と、ラジカル開始剤と、上述した特定化合物とを反応させることで、本発明の重合体を得る工程
【0042】
以下、製造方法2の各工程について説明する。
【0043】
<モノマー重合工程>
モノマー重合工程は、有機リチウム化合物を用いてジエンを含有するモノマーを重合し、液状ジエン系重合体を得る工程である。
【0044】
(ジエンを含有するモノマー)
上記ジエンを含有するモノマーについて、ジエン(特に共役ジエン)の具体例及び好適な態様は、上述した本発明の重合体の骨格の液状ジエン系重合体と同じである。
また、上記モノマーについて、ジエン以外のモノマーとして芳香族ビニルを含有していてもよい。上記芳香族ビニルの具体例及び好適な態様は、上述した本発明の重合体の骨格のジエン系重合体と同じである。
【0045】
(有機リチウム化合物)
上記有機リチウム化合物は特に制限されないが、その具体例としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましく、n-ブチルリチウムがより好ましい。
【0046】
有機リチウム化合物の使用量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記モノマーに対して、0.001~10モル%であることが好ましい。
【0047】
<主鎖変性工程>
主鎖変性工程は、上記液状ジエン系重合体と、ラジカル開始剤と、上述した特定化合物とを反応させることで、上記液状ジエン系重合体の主鎖に上述した特定官能基を導入し、本発明の重合体を得る工程である。
上記主鎖変性工程は、上述した製造方法1と同じである。
【0048】
[用途]
本発明の重合体は、ゴム組成物、タイヤ、コンベアベルト、ホース、防振材、ゴムロール、鉄道車両の外幌等に好適に用いられる。特に、タイヤ(特にトレッド)に好適に用いられる。
【実施例0049】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
〔変性液状ジエン系重合体の製造〕
以下のとおり、変性液状ジエン系重合体を製造した。
なお、実施例1~3の変性液状ジエン系重合体は、特定官能基を主鎖に有する液状ジエン系重合体であるため、本発明の重合体に該当する。一方、比較例1の変性液状ジエン系重合体は、特定官能基を主鎖に有さない液状ジエン系重合体であるため、本発明の重合体に該当しない。
【0051】
<実施例1>
下記のとおり、実施例1の変性液状ジエン系重合体を製造した。
【0052】
(モノマー重合工程)
シクロヘキサン4.2kgに1,3-ブタジエン1200mL、n-ブチルリチウム30mL、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン0.1mLを添加し加熱攪拌(60℃、24時間)して、1,3-ブタジエンを重合した。その後、メタノール40mLを添加し攪拌(室温、2.0時間)して重合を停止した。次いで、重合溶液を多量のメタノールに添加し精製を行い、50℃で24時間真空乾燥を行うことで、Mw10,000の液状ブタジエン重合体を得た。
【0053】
(主鎖変性工程)
MEK(メチルエチルケトン)200mLに得られた液状ブタジエン重合体200g、メルカプト酢酸(上述した式(1A)で表される化合物に該当)40g、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)2.5gを添加し加熱攪拌(80℃、24時間)した。
反応溶液を多量のメタノールに添加し精製を行い、50℃で24時間真空乾燥を行うことで、上述した式(1)で表される官能基(ただし、式(1)中、R1はメチレン基である)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は5であった。
【0054】
<実施例2>
主鎖変性工程でメルカプト酢酸40gの代わりにメルカプトこはく酸(上述した式(2A)で表される化合物に該当)40gを使用した点以外は、実施例1と同様の手順に従って変性液状ブタジエン重合体を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体は、上述した式(2)で表される官能基(ただし、式(2)中、R2はメチレン基であり、X2及びX3は両方ともカルボキシ基である)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)であった。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は5であった。
【0055】
<実施例3>
主鎖変性工程でメルカプトこはく酸40gの代わりにメルカプトこはく酸20gを使用した点以外は、実施例2と同様の手順に従って、変性液状ブタジエン重合体を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体は、上述した式(2)で表される官能基(ただし、式(2)中、R2はメチレン基であり、X2及びX3は両方ともカルボキシ基である)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)であった。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は4であった。
【0056】
<比較例1>
主鎖変性工程でメルカプト酢酸40gの代わりに3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(上述した特定化合物に該当しない化合物)50gを使用した点以外は、実施例1と同様の手順に従って変性液状ブタジエン重合体を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体は、*-S-C3H6-Si(OC2H5)3(ここで、*は結合位置を表す)で表される官能基(上述した特定官能基に該当しない官能基)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)であった。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は5であった。
【0057】
[シリカ吸着率]
キシレン15g中に、得られた変性液状ジエン系重合体1.5g、シリカ3.0gを溶解させ、140℃、20分加熱攪拌した。その後濾過、回収し、80℃、24時間真空乾燥を行い、質量(最終質量)を測定した。そして、以下の計算式によってシリカ吸着率を求めた。
(シリカ吸着率)=(最終質量-評価に用いたシリカの質量)/(評価に用いた変性液状ジエン系重合体の質量)×100(単位は%)
結果を下記表1に示す。シリカ吸着率が大きい程、シリカ吸着性に優れることを表す。
【0058】
【0059】
表1中、主鎖官能基数は、主鎖に有する官能基の数(1分子あたりの平均の数)を表す。また、変性率は、重合体の重合度に対する、重合体が主鎖に有する官能基の数(1分子あたりの平均の数)の割合を表す。
【0060】
表1から分かるように、特定官能基を主鎖に有さない比較例1の変性液状ジエン系重合体と比較して、特定官能基を有する実施例1~3の変性液状ジエン系重合体は、優れたシリカ吸着性を示した。なかでも、特定官能基が式(2)で表される官能基(ただし、式(2)中、X2及びX3は両方ともカルボキシ基である)である実施例2~3は、より優れたシリカ吸着性を示した。
また、実施例2~3の対比(主鎖官能基数のみが異なる態様同士の対比)から、主鎖官能基数が4超である実施例2は、より優れたシリカ吸着性を示した。