(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171258
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 3/02 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
A46B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077806
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(72)【発明者】
【氏名】林 孝彦
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202EG03
3B202HA03
(57)【要約】
【課題】 確実に毛材の抜けや折れの発生を防ぐことができると共に、ブラシ台の溝部への嵌合をスムーズに行うことができるブラシを提供する。
【解決手段】 ブラシ台に形成されている溝部と嵌合するブラシ10は、複数の毛材1、1・・・を集束させた毛材束2と、毛材束の一端2cを固定すると共に、ブラシ台の溝部と嵌合する基台3とを有し、毛材束の根元側の外周面2aと、基台の上面3aとに潤滑剤4が塗布されていると共に、毛材束の根元側の内部2bに接着材5が充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ台に形成されている溝部と嵌合するブラシであって、
前記ブラシは、複数の毛材を集束させた毛材束と、
前記毛材束の一端を固定すると共に、前記ブラシ台の溝部と嵌合する基台と、を有し、
前記毛材束の根元側の外周面と、前記基台の上面とに潤滑剤が塗布されていると共に、前記毛材束の根元側の内部に接着材が充填されていることを特徴とするブラシ
【請求項2】
基台は、基部と、該基部の外周面と毛材束の根元側の外周面とを覆うように形成された補強部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のブラシ
【請求項3】
毛材束を構成する毛材は、熱可塑性樹脂で形成されると共に、
基台又は基台の一部は、毛材束の一端を溶融結合することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラシ
【請求項4】
基台は、外表面と内部を連通する空隙部を有し、前記空隙部に接着材が充填されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のブラシ
【請求項5】
潤滑剤は、接着材の充填面の近傍まで塗布されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のブラシ
【請求項6】
接着材の充填面は、毛材束の外周面側に対して、中央側が高くなるように形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のブラシ
【請求項7】
潤滑剤は、シリコーンオイルを含有すると共に、接着材は、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のブラシ
【請求項8】
毛材束を構成する毛材は、長手方向に向かい形成された略波形状部又は外表面に形成された凹凸形状部を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のブラシ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の機器類に組み付けて使用し、各種の産業用及び生活用の製品として使用するブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱可塑性樹脂の毛材を束ねたブラシが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のブラシは、熱溶融性材料からなる繊維を集束させて繊維束を作り、この繊維束の下端面を熱溶融性材料の熱溶融温度以上に加熱された金属製のブラシ台部の上面に圧接して繊維束の下端面部分を溶融させた後、ブラシ台部を冷却して、ブラシ台部に繊維束を固着させたものであり、ブラシ台部の上面に、予め、熱溶融性接着材の薄層を塗布しておくことによって、繊維束をブラシ台部に確実に固着しようとするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のブラシは、ブラシ台部の上面に塗布された熱溶融性接着材の薄層では繊維束の根元部に十分に接着材が浸透しないことから、繊維の抜けや折れの発生を防ぐには十分ではないという課題を有していた。
【0006】
一方、繊維束の根元部に充填する接着材の量を増やした場合には、繊維束の根元部の外周面やブラシ台部の側面等に固化した接着材が残る接着だまりができることから、そのままではブラシ台に形成されている溝部への嵌合が困難になるといる課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、確実に毛材の抜けや折れの発生を防ぐことができると共に、ブラシ台の溝部への嵌合をスムーズに行うことができるブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、請求項1の発明は、ブラシ台に形成されている溝部と嵌合するブラシであって、前記ブラシは、複数の毛材を集束させた毛材束と、前記毛材束の一端を固定すると共に、前記ブラシ台の溝部と嵌合する基台と、を有し、前記毛材束の根元側の外周面と、前記基台の上面とに潤滑剤が塗布されていると共に、前記毛材束の根元側の内部に接着材が充填されていることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明では、毛材束の根元側の内部に接着材が充填されていることで、毛材の抜けや折れの発生を確実に防ぐことができる。また、毛材束の根元側の外周面と基台の上面とに潤滑剤が塗布されていることから、同箇所に接着材が付着して残る接着だまりが発生し難くなり、ブラシ台の溝部への嵌合をスムーズに行うことができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、基台は、基部と、該基部の外周面と毛材束の根元側の外周面とを覆うように形成された補強部と、を有することを特徴としている。これにより、毛材束の一端と根元側の外周面を、基部と補強部とで覆うこととなるので、毛材の抜け及び折れを一層防止することができる。また、ブラシをブラシ台に嵌合する場合にブラシを安定させることができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、毛材束を構成する毛材は、熱可塑性樹脂で形成されると共に、基台又は基台の一部は、毛材束の一端を溶融結合することにより形成されることを特徴としている。これにより、基台に金属製金具を使用した場合と比較して軽量化が図られると共に、製造時及び廃棄時の工程を短縮することができ、コストを削減することができる。また、毛材の抜けや折れの発生を一層防ぐことができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれかの発明において、基台は、外表面と内部を連通する空隙部を有し、前記空隙部に接着材が充填されていることを特徴としている。これにより、基台の強度を増加させることができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1~4のいずれかの発明において、潤滑剤は、接着材の充填面の近傍まで塗布されていることを特徴としている。これにより、毛材束の根元側の外周面と基台の上面への接着だまりの発生を一層防ぐことができる。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1~5のいずれかの発明において、接着材の充填面は、毛材束の外周面側に対して、中央側が高くなるように形成されていることを特徴としている。これにより、毛材束の中央側の接着面積が大きくなることでブラシの強度を増加させることができ、中央側の毛材の抜けや折れの発生を一層防ぐことができる。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1~6のいずれかの発明において、潤滑剤は、シリコーンオイルを含有すると共に、接着材は、エポキシ樹脂を含有することを特徴としている。これにより、毛材の抜けや折れの発生を一層確実に防ぐことができると共に、接着だまりが発生し難くなり、ブラシ台の溝部への嵌合を一層スムーズに行うことができる。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1~7のいずれかの発明において、毛材束を構成する毛材は、長手方向に向かい形成された略波形状部又は外表面に形成された凹凸形状部を有することを特徴としている。これにより、毛材束の内部での接着材の保持が容易になると共に、毛材の抜けや折れの発生を一層確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1のブラシの発明は、毛材の抜けや折れの発生を確実に防ぐことができる。また、ブラシのブラシ台の溝部への嵌合をスムーズに行うことができる。また、請求項2の発明は、毛材の抜け及び折れを一層防止することができる。また、ブラシをブラシ台に嵌合する場合にブラシを安定させることができる。
【0018】
請求項3の発明は、ブラシの軽量化が図られると共に、製造時及び廃棄時の工程を短縮することができ、コストを削減することができる。また、毛材の抜けや折れの発生を一層防ぐことができる。また、請求項4の発明は、基台の強度を増加させることができる。また、請求項5の発明は、毛材束の根元側の外周面と基台の上面への接着だまりの発生を一層防ぐことができる。
【0019】
請求項6の発明は、ブラシの強度を増加させることができ、中央側の毛材の抜けや折れの発生を一層防ぐことができる。また、請求項7の発明は、毛材の抜けや折れの発生を一層確実に防ぐことができると共に、ブラシ台の溝部への嵌合を一層スムーズに行うことができる。また、請求項8の発明は、毛材束の内部での接着材の保持が容易になると共に、毛材の抜けや折れの発生を一層確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)本発明に係るブラシの斜視図(b)本発明に係るブラシを基台側から視た斜視図
【
図3】本発明に係るブラシをブラシ台に嵌合させた状態を示す斜視図
【
図4】(a)~(c)本発明に係るブラシの他の実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
図1(a)は、本発明に係るブラシの斜視図であり、
図1(b)は、同ブラシを基台側から視た斜視図である。また、
図2(a)は、
図1のA-A断面図であり、
図2(b)は、
図1のB-B断面図である。これらの図を用いて本発明に係るブラシの第1実施形態について以下に説明する。
【0022】
本発明に係るブラシ10は、ブラシ台に形成されている溝部と嵌合するブラシであって、複数の毛材1、1・・を集束させた毛材束2と、この毛材束2の一端を固定すると共に、ブラシ台の溝部と嵌合する基台3とを有している。
【0023】
そして、毛材束の根元側の内部2bに接着材5が充填されている。これにより、毛材1の抜けや折れの発生を確実に防ぐことができる。尚、接着材5は、エポキシ樹脂を含有しているものが好ましい。
【0024】
また、毛材束の根元側の外周面2aと、基台3の上面3aとに潤滑剤4が塗布されている。これにより、接着材5が付着して残る接着だまりが発生し難くなり、ブラシ台の溝部への嵌合をスムーズに行うことができる。
【0025】
ここで、潤滑剤4の塗布と接着材5の充填の手順は以下のとおりである。まず、潤滑剤4を毛材束の根元側の外周面2aと、基台3の上面3aとに塗布した後、毛材束の根元側の外周面2aを覆うように型枠を設置し、接着材5が充填されている注射器の先端を毛材束の中央2dに差し込んで、毛材束2に形成されている隙間に接着材5の充填が行われる。
【0026】
基台3は、基部3bと、基部の外周面3cと毛材束の根元側の外周面2aとを覆うように形成された補強部3dとを有している。これにより、毛材束の一端2cと根元側の外周面2aを、基部3bと補強部3dとで覆うこととなるので、毛材1の抜け及び折れを一層防止することができる。また、ブラシ10をブラシ台に嵌合する場合にブラシ10を安定させることができる。
【0027】
毛材束2を構成する毛材1は、熱可塑性樹脂で形成されると共に、基台3は、毛材束の一端2cを溶融結合することにより形成されている。これにより、基台に金属製金具を使用した場合と比較して軽量化が図られると共に、製造時及び廃棄時の工程を短縮することができ、コストを削減することができる。また、毛材1の抜けや折れの発生を一層防ぐことができる。尚、後述するように、基台3の全体ではなく、基台3の一部が毛材束の一端2cを溶融結合することにより形成されている場合も本発明に含まれる。
【0028】
尚、好適には補強部3dの高さ方向の長さは、基部3bの厚みに対して2倍以上であることが望ましい。これにより、ブラシ10全体の長さを短くすることができると共に、強度を増加させることができる。尚、第1実施形態のブラシ10の毛材束1は、平面視が長方形状としているがこれに限定するものでは無く、円形状、星形状、三角形状など様々な形状を採用することができる。
【0029】
第1実施形態のブラシ10の製造手順の一例を以下に示す。
(1)まず、毛材1を型枠に投入する。
(2)次に、ヒーターで熱せられた鉄板を一方の側面側から毛材束2に当接する。
(3)次に、鉄板をスライドさせて毛材束の一端2cを熱で溶融させる。
(4)次に、溶融された毛材は型枠の内側端部に設けられた溝(補強部3dを形成する部分)に流れ込む。
(5)次に、鉄板を他方の側面側まで移動させる(余分な毛材1はそぎ落とされる)と共に、上方から鉄板で毛材1を押し付けて基部3bが形成される。
(6)次に、溶融された毛材が補強部3dを形成する溝に充填されるのを確認した後、鉄板を離して毛材1を冷却する。
(7)最後に、基部3b及び補強部3eに形成されているバリを刃物等で切断してブラシ10が完成する。
【0030】
基台3は、外表面と内部を連通する空隙部6を有しており、この空隙部6には接着材5が充填されている。これにより、基台3の強度を増加させることができる。
【0031】
図2(a)及び(b)に示すように、潤滑剤4は、接着材5の充填面の近傍まで塗布されている。これにより、毛材束の根元側の外周面2aと基台の上面3aへの接着だまりの発生を一層防ぐことができる。尚、潤滑剤4は、シリコーンオイルを含有しているものが好ましく、これにより、接着だまりが発生し難くなり、ブラシ台の溝部への嵌合を一層スムーズに行うことができる
【0032】
また、
図2(b)に示すように、接着材5の充填面は、毛材束の外周面2a側に対して、中央2d側が高くなるように形成してもよい。これにより、毛材束の中央2d側の接着面積が大きくなることでブラシ10の強度を増加させることができ、中央2d側の毛材1の抜けや折れの発生を一層防ぐことができる。
【0033】
毛材束2を構成する毛材1は、長手方向に向かい形成された略波形状部7を有している。これにより、毛材束2の内部での接着材5の保持が容易になると共に、毛材1の抜けや折れの発生を一層確実に防ぐことができる。
【0034】
図3は、本発明に係るブラシをブラシ台に嵌合させた状態を示す斜視図である。ブラシ台11は、円環状のベース部材12に着脱可能に複数のブラシ10が取り付けられている。ベース部材12は、挿入孔12aと、この挿入孔12aの縁部に形成された溝部12bとを有しており、ブラシの基台3を溝部12bに嵌合させた状態で矢印方向にスライドさせた後、リング形状の抜け止め部材(図示せず)を内周側に装着することによって、ブラシ10はベース部材12に固定される。尚、ブラシ台11に複数のブラシ10、10、・・・を固定する構成としているが、ブラシ10が1つであってもよい。ここで、ブラシ10の毛材束の根元側の外周面2aと、基台の上面3aに接着だまりが形成されている場合には、ブラシの基台3の溝部12bへの嵌合や、矢印方向へのスライドが困難となるが、本発明によって、この課題は解決することができる。
【0035】
図4(a)は、第2実施形態のブラシを示す断面図である。第2実施形態のブラシ20は、基台23が毛材束2とは異なる樹脂で形成されており、毛材束の一端2cが基台23の樹脂で固められることによって毛材1の抜けを防止している。このブラシ20は、金具が使用されていないため、軽量であると共に、廃棄が容易である。また、基台23の厚みを薄くすることができ、前述したブラシ台を構成するベース部材の厚みを薄くすることができる。その他の構成は第1実施形態のブラシ10と同様なので説明は省略する。
【0036】
図4(b)は、第3実施形態のブラシを示す断面図である。第3実施形態のブラシ30は、第1実施形態のブラシ10と同様に、毛材束2を構成する毛材1は、熱可塑性樹脂で形成されると共に、基台33の基部33bは、毛材束の一端2cを溶融結合することにより形成されている。一方、補強部33dは、金属製のリングで形成されていて、この金属製のリング33dの一方の端部を基部33bに接着している。補強部33dに金属製のリングを採用することによって、毛材束の根元側の外周面2aを覆う面積を増やすことができ、毛材1の抜けや折れの発生を確実に防ぐことができる。また、毛材束2を構成する毛材1は、長手方向に向かい形成された略波形状部7を有していると共に、毛材1は砥粒を含有しているため、外表面に凹凸形状部8が形成されている。これにより、毛材束2の内部での接着材5の保持が一層容易になると共に、毛材1の抜けや折れの発生を一層確実に防ぐことができる。尚、略波形状部7に替えて、直線状の毛材を使用し、該毛材の外表面に凹凸形状部8を形成した構成としてもよく、これも本発明に含まれる。その他の構成は第1実施形態のブラシ10と同様なので説明は省略する。
【0037】
図4(c)は、第4実施形態のブラシを示す断面図である。第4実施形態のブラシ40は、基部43bと補強部43dとが一体的に形成された断面コ字状の金属製の基台43で形成されており、毛材束の一端2c側が基台43の固定孔9に挿入されて接着材5により固定されている。このように構成することによって、基台43とブラシ台の溝部との嵌合をスムーズに行うことができる。その他の構成は第1実施形態のブラシ10と同様なので説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るブラシは、各種の機器類に組み付けて利用され、各種の産業用及び生活用の製品で利用される。
【符号の説明】
【0039】
1 毛材
2 毛材束
2a 根元側の外周面
2b 根元側の内部
2c 一端
2d 中央
3、23、33、43 基台
3a 上面
3b、33b、43b 基部
3c 外周面
3d、33d、43d 補強部
4 潤滑剤
5 接着材
6 空隙部
7 略波形状部
8 凹凸形状部
9 固定孔
10、20、30、40 ブラシ
11 ブラシ台
12 ベース部材
12a 挿入孔
12b 溝部