(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171262
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】被験者を層別化する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20221104BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20221104BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01N33/50 G
C12Q1/04
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077816
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦川 李花
(72)【発明者】
【氏名】安田 多賀子
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C083
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB06
2G045CB07
2G045DA80
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
4C083CC41
4C083EE33
(57)【要約】
【課題】被験者を層別化する方法の提供。
【解決手段】被験者をプラークの付着がある群又はない群に分類すること、及び前記被験者から採取した口腔内試料中に歯周病原菌の検出がある群又はない群に分類することを含む、被験者を層別化する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者をプラークの付着がある群又はない群に分類すること、及び
前記被験者を、前記被験者から採取した口腔内試料中に歯周病原菌の検出がある群又はない群に分類すること
を含む、
被験者を層別化する方法。
【請求項2】
さらに、前記被験者の年齢を基準値と比較し、前記被験者を前記基準値以上の群又は未満の群に分類することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定するために用いられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法において、
前記プラークの付着がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の方法において、
前記プラークの付着がなく、かつ
前記歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の方法において、
前記プラークの付着がなく、かつ
前記歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の方法において、
前記プラークの付着がなく、
前記歯周病原菌の検出があり、かつ
前記年齢が前記基準値以上の群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
【請求項8】
請求項2又は3に記載の方法において、
前記プラークの付着がなく、
前記歯周病原菌の検出があり、かつ
前記年齢が前記基準値未満の群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
【請求項9】
被験者のプラークの付着の有無、及び前記被験者から採取した口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を指標として、前記被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度を測定する方法であって、
前記プラークの付着の有無、及び前記歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被験者を層別化する方法等に関する。詳細には、口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定するために被験者を層別化する方法等に関する。また、本開示は、前記方法により層別化された被験者のための口腔衛生用品等に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、歯周病原菌が歯周組織に感染することによって発症する炎症性疾患であり、その進行度合いに応じて、歯肉炎と歯周炎とに大別される。口腔衛生不良により生じるプラークは、歯周病の原因の1つであると考えられており、口腔衛生行動を止めると歯肉炎が発生することから、プラークを除去する口腔衛生行動の重要性が示されている。
【0003】
また、歯周病の罹患の有無やその程度等、口腔環境の状況に応じて、適切なオーラルケアを選択することが、口腔環境を改善し、清潔に保つためには重要であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯肉炎から歯周炎への進行は、プラークの付着による歯肉炎症の持続の延長として起こると考えられているが、歯周病原菌などの口腔細菌や生体側要因(全身疾患)などが複雑に関与しているため、歯周病をプラークの付着の有無のみにより評価することは難しく、歯科専門家が不在の場でのスクリーニングには課題がある。
【0006】
また、例えば、歯周病に罹患している被験者が、口腔診査直前に丁寧な歯磨きを実施した場合、診査時にはプラーク清掃状況が良好となる一方、当該歯磨きにより歯周病の程度が改善される可能性は低い。このことからも分かるように、プラークの付着の有無のみによって、歯周病を評価することは難しい場合が多いため、簡便な歯周病の診断手法等の開発が求められている(特許文献1)。
【0007】
本開示は、被験者を層別化する方法を提供することを課題とする。また、本開示は、歯周病の罹患の有無又はその程度に適した口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定するために、被験者を層別化する方法を提供することも課題の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、プラークの有無だけでなく、唾液中の歯周病原菌の有無を組み合わせて被験者を分類することによって、歯周病の罹患の有無又はその程度を予測することができることを見出し、さらに改良を重ねた。
【0009】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
被験者をプラークの付着がある群又はない群に分類すること、及び
前記被験者を、前記被験者から採取した口腔内試料中に歯周病原菌の検出がある群又はない群に分類すること
を含む、
被験者を層別化する方法。
項2.
さらに、前記被験者の年齢を基準値と比較し、前記被験者を前記基準値以上の群又は未満の群に分類することを含む、項1に記載の方法。
項3.
口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定するために用いられることを特徴とする、項1又は2に記載の方法。
項4.
項1~3のいずれかに記載の方法において、
前記プラークの付着がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
項5.
項1~3のいずれかに記載の方法において、
前記プラークの付着がなく、かつ
前記歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
項6.
項1~3のいずれかに記載の方法において、
前記プラークの付着がなく、かつ
前記歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
項7.
項2又は3に記載の方法において、
前記プラークの付着がなく、
前記歯周病原菌の検出があり、かつ
前記年齢が前記基準値以上の群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
項8.
項2又は3に記載の方法において、
前記プラークの付着がなく、
前記歯周病原菌の検出があり、かつ
前記年齢が前記基準値未満の群に分類された被験者のための口腔衛生用品。
項9.
被験者のプラークの付着の有無、及び前記被験者から採取した口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を指標として、前記被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度を測定する方法であって、
前記プラークの付着の有無、及び前記歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化すること
を含む、方法。
【発明の効果】
【0010】
被験者を層別化する方法が提供される。また、層別化された被験者のための口腔衛生用品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示は、被験者を層別化する方法を包含する。本明細書において、当該層別化する方法を、「本開示の層別化方法」と表記することがある。
【0013】
本明細書において、「層別化」とは、被験者をいくつかの群に分類・抽出することを意味する。
【0014】
本開示の層別化方法は、被験者をプラークの付着がある群又はない群に分類することを含む。本開示の層別化方法は、プラークの付着の有無を確認することを含んでいてもよい。
【0015】
被験者としては、ヒトである限り、特に限定されない。例えば、健常者であってもよく、歯周病に罹患したヒト(歯周病患者)であってもよく、歯周病の罹患が疑われるヒトであってもよい。
【0016】
本明細書において、「プラーク」とは、歯の表面に付着している細菌のかたまりを意味する。プラークは、歯垢と称されることもある。
【0017】
プラークの付着の有無の確認方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、歯周プローブや歯科用探針等の先端で歯面を擦過してプラークの付着の有無を判定する方法、プラーク染色液を使用して染色歯面によりプラークの付着の有無を判定する方法、画像診断によりプラークの付着の有無を判定する方法、センサーによりプラークを検出する方法等が挙げられる。また、プラークの付着は口腔清掃不足の結果として起こるため、歯磨き回数や歯間清掃具の使用との関連があること、また、プラーク付着が継続すると歯肉出血が起こること、はすでに知られており、口腔衛生行動の問診(アンケート)や、歯肉からの出血(潜血)を調べる検査等を、プラークの付着の代用とすることもできる。
【0018】
プラークの付着の有無を確認する対象となる歯としては、例えば、全歯であってもよく、対象歯であってもよい。対象歯としては、例えば、右上6、右上1、左上6、右下6、左下1、及び左下6の計6本であってもよい。当該番号は、
図1に示す番号に対応する。また、スマートフォンなどで画像撮影可能な歯(主に前歯部)、口腔内カメラにより撮影可能な歯であってもよい。
【0019】
前述した方法により、プラークの付着が認められない又は検出限界以下である場合には、プラークの付着がない群に分類され、そうでない場合には、プラークの付着がある群に分類される。また、後述する実施例に示すように、Plaque Index(PlI)によりプラークの有無を評価する場合、PlIの測定値の平均値が、例えば、0.5未満(好ましくは0.25未満、より好ましくは0)である場合には、プラークの付着がない群に分類され、0.5以上(好ましくは0.25以上、より好ましくは0より大きい)である場合には、プラークの付着がある群に分類される。
【0020】
本開示の層別化方法は、前記被験者を、前記被験者から採取した口腔内試料中に歯周病原菌の検出がある群又はない群に分類することを含む。本開示の層別化方法は、被験者から採取した口腔内試料中の歯周病原菌を検出することを含んでいてもよい。
【0021】
口腔内試料としては、例えば、唾液、舌苔、プラーク、歯肉溝浸出液(GCF)等が挙げられる。中でも、唾液が好ましい。口腔内試料は、ろ紙や遠心分離機等により分離されていてもよい。なお、被験者から採取した口腔内試料を保存する方法、条件等については特に限定されず、常法に従って行うことができる。
【0022】
被験者から口腔内試料を採取する方法としては特に限定されず、常法に従って行えばよい。また、採取した口腔内試料は、そのまま用いてもよく、凍結乾燥等して保存した後、当該凍結乾燥物を後述する適当な溶媒に溶解して用いてもよく、また、採取した口腔内試料を、そのまま冷凍保存した後、あるいは後述する適当な溶媒に溶解する等して冷凍保存した後、使用時に解凍して用いてもよい。
【0023】
口腔内試料を溶解させる溶媒としては、例えば、生理食塩水、PBS、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、TEバッファー、Good Bufferなどが挙げられる。これらの溶媒は、界面活性剤;亜鉛やマグネシウム等の金属の塩などの酵素の活性化剤などを含むものであってもよい。
【0024】
歯周病原菌としては、公知の歯周病原菌である限り、特に限定されない。例えば、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)菌株等が挙げられる。
【0025】
歯周病原菌の検出方法としては、歯周病原菌を検出できる限り、特に限定されない。例えば、口腔内試料中に含まれる核酸を抽出し、当該核酸に含まれる歯周病原菌由来の核酸を検出する方法、歯周病原菌に特有の酵素(例えば、プロテアーゼなど)の酵素活性を測定する方法、歯周病原菌を認識する抗体を用いて抗原抗体反応で測定する方法等が挙げられる。これらの方法については、公知の方法を採用することができる。
【0026】
核酸としては、DNA、RNA等が例示される。
核酸の抽出方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0027】
核酸に含まれる歯周病原菌由来の核酸を検出する方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、16S rRNA増幅用プライマーを用いて、16S rRNAを増幅し、増幅した核酸の配列をシーケンス(確認)し、歯周病原菌由来の核酸の有無を確認する方法;歯周病原菌由来の核酸を特異的に増幅するプライマーを用いて、核酸を増幅し、増幅された核酸を検出することにより、歯周病原菌由来の核酸の有無を確認する方法等が挙げられる。
【0028】
プライマーは、公知の方法により調製したものであってもよく、商業的に入手したものであってもよい。
【0029】
増幅方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、PCR等が挙げられる。
【0030】
歯周病原菌由来の核酸については、データベース等を参照することができる。データベースとしてはHOMD(Human Oral Microbial Database)データベースを用いることができる。
【0031】
シーケンス方法は、公知の方法を採用することができる。また、増幅核酸が、データベースに登録される歯周病原菌と97%以上の相同性がある場合には、当該増幅核酸は、その歯周病原菌由来であると判断される。
【0032】
前述した方法により、歯周病原菌が検出されない、又は検出下限値未満である場合には、歯周病原菌の検出がない群に分類され、そうでない場合には、歯周病原菌の検出がある群に分類される。検出下限値は、測定方法に応じて適宜設定することができる。例えば、唾液試料中、102cfu/mL程度であってもよく、103cfu/mL程度であってもよく、104cfu/mL程度であってもよく、又は105cfu/mL程度であってもよい。
【0033】
本開示の層別化方法は、さらに前記被験者の年齢を基準値と比較し、前記被験者を前記基準値以上の群又は未満の群に分類することを含んでいてもよい。例えば、歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者について、前記被験者の年齢を基準値と比較し、前記被験者を前記基準値以上の群又は未満の群に分類してもよい。
【0034】
被験者の年齢と比較する基準値としては、例えば、40歳、又は50歳等とすることができる。好ましくは40歳である。
【0035】
本開示の層別化方法は、被験者を、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がある群;プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がない群;プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がある群;又はプラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群に分類することができる。
【0036】
また、本開示の層別化方法は、被験者を、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群;プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群;プラークの付着があり、歯周病原菌の検出がなく、かつ年齢が基準値以上の群;プラークの付着があり、歯周病原菌の検出がなく、かつ年齢が基準値未満の群;プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群;プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群;プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出がなく、かつ年齢が基準値以上の群;又はプラークの付着がなく、歯周病原菌の検出がなく、かつ年齢が基準値未満の群に分類するものであってもよい。
【0037】
本開示の層別化方法によれば、歯周病の罹患の有無又はその程度に応じて、被験者を層別化することができる。
【0038】
歯周病は、歯肉炎と歯周炎(軽度歯周炎、重度歯周炎)とに大別される。
本明細書において、「歯肉炎」とは、歯肉縁上にプラークがたまり、歯肉の炎症で腫れや出血が生じた状態を意味する。
本明細書において、「歯周炎」とは、歯肉炎がさらに進行した状態であり、歯肉縁下にプラークがたまり、歯槽骨が破壊され、歯と歯茎の間の隙間が深くなり、歯周ポケットを形成した状態を意味する。本明細書において、歯周ポケットの深さが4mm以上6mm未満の場合を「軽度歯周炎」、歯周ポケットの深さが6mm以上の場合を「重度歯周炎」とする。
【0039】
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着、及び口腔内試料中の歯周病原菌の有無により、歯科専門家が不在の場合や歯科健診を実施していない場合であっても、例えば、唾液等の採取、及びその分析結果と撮影された口腔画像等をもとに、歯周病の罹患の有無又はその程度に応じて、被験者を層別化することができる。
【0040】
後述する実施例に示す通り、プラークの付着がある場合には、歯周病でない被験者の割合が低く、歯肉炎及び軽度歯周炎を有する被験者の割合が高いことから、プラークの付着は歯周病の発症(炎症の発生)に関与しているものと考えられる。
また後述する実施例に示す通り、歯周病原菌の検出がある場合には、歯肉炎を有する被験者の割合が低く、歯周炎(軽度歯周炎及び重度歯周炎)を有する被験者の割合が高いことから、歯周病原菌の有無は、歯周病の重症化に関与しているものと考えられる。
【0041】
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がある群は、他の群と比較して、歯周炎(特に重度歯周炎)を有する被験者の割合が高い。また、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がある群は、他の群(より具体的には、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がない群)と比較して、歯肉炎を有する被験者の割合が低い。このため、本開示の層別化方法によれば、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者は、他の群に分類された被験者と比較して、歯周炎(特に重度歯周炎)を有する可能性が高いと予測(判定)することができる。
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がない群は、他の群(より具体的には、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がある群)と比較して、歯肉炎を有する被験者の割合が高い。このため、本開示の層別化方法によれば、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者は、他の群に分類された被験者と比較して、歯肉炎を有する可能性が高いと予測(判定)することができる。
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がある群は、他の群(より具体的には、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群)と比較して、歯周炎を有する被験者の割合が高い。このため、本開示の層別化方法によれば、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者は、他の群(より具体的には、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群)に分類された被験者と比較して、歯周炎を有する可能性が高いと予測(判定)することができる。
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群では、歯周病でない被験者(健常者)の割合が高い。このため、本開示の層別化方法によれば、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者は、歯周病でない被験者(健常者)である可能性が高いと予測(判定)することができる。
【0042】
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群は、他の群と比較して、歯周炎(特に重度歯周炎)を有する被験者の割合が高い。また、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群は、他の群(より具体的には、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がない群、及びプラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群)と比較して、歯肉炎を有する被験者の割合が低い。このため、本開示の層別化方法によれば、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群に分類された被験者は、他の群に分類された被験者と比較して、歯周炎(特に重度歯周炎)を有する可能性が高いと予測(判定)することができる。
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群は、他の群(より具体的には、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群)と比較して、歯肉炎を有する被験者の割合が高い。このため、本開示の層別化方法によれば、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群に分類された被験者は、他の群(より具体的には、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群)に分類された被験者と比較して、歯肉炎を有する可能性が高いと予測(判定)することができる。
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群は、他の群(より具体的には、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群、及びプラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群)と比較して、歯周炎を有する被験者の割合が高い。このため、本開示の層別化方法によれば、プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群に分類された被験者は、他の群(より具体的には、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群、及びプラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群)に分類された被験者と比較して、歯周炎を有する可能性が高いと予測(判定)することができる。
本開示の層別化方法によれば、プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群では、歯周病でない被験者(健常者)の割合が高い。このため、本開示の層別化方法によれば、プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群に分類された被験者は、歯周病でない被験者(健常者)である可能性が高いと予測(判定)することができる。
【0043】
本開示によれば、例えば、プラークの付着がない群に分類される被験者であっても、歯周病に罹患している被験者、又はその罹患の程度の高い被験者を予測(判定)することができる。
例えば、後述する実施例に示す通り、プラークの付着がなくても、歯周病原菌の検出がある場合には、歯周炎を有する可能性があると予測(判定)することができる。
また、例えば、後述する実施例に示す通り、プラークの付着がなくても、歯周病原菌の検出があり、かつ被験者の年齢が基準値以上である場合には、歯周炎を有する可能性があると予測(判定)することができる。年齢を基準値とすることによって、歯周病の罹患の有無又はその程度に応じて、より精度高く被験者を層別化できることが期待される。
【0044】
本開示によれば、例えば、歯周病原菌の検出がある群に分類される被験者であっても、歯周病でない被験者(健常者)を予測(判定)することができる。
例えば、後述する実施例に示す通り、歯周病原菌の検出があっても、プラークの付着がない場合には、歯周病でない被験者(健常者)である可能性が高いと予測(判定)することができる。
また、例えば、後述する実施例に示す通り、歯周病原菌の検出があっても、プラークの付着がなく、かつ被験者の年齢が基準値未満である場合には、歯周病でない被験者(健常者)である可能性が高いと予測(判定)することができる。年齢を基準値とすることによって、歯周病の罹患の有無又はその程度に応じて、より精度高く被験者を層別化できることが期待される。
【0045】
本開示の層別化方法によれば、歯周病の罹患の有無又はその程度に応じて、被験者を層別化することができる。このため、本開示の層別化方法は、被験者に適した口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定するために好適に用いることができる。
【0046】
口腔衛生用品としては、例えば、歯ブラシ、歯間清掃具、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ガム剤、タブレット剤、トローチ剤、ドロップ剤、フィルム剤、歯磨回数又は歯磨時間を記録するための歯磨ログデバイス、歯周病原菌を殺菌するための光照射デバイス等が挙げられる。
口腔衛生用品は、医薬品、医薬部外品、食品等であってもよい。
口腔衛生方法としては、例えば歯磨き方法、口腔衛生用品の最適な使用方法などが挙げられる。特に限定されないが、より具体的には、例えば、1回の歯磨き(ブラッシング)時間を3分以上とする、1日の歯磨き回数を3回以上にする、全ての歯を隅々までまんべんなく磨く、歯間清掃具のサイズ選びや使い方等が挙げられる。
【0047】
本開示によれば、層別化された被験者に適した口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
【0048】
また、本開示によれば、例えば、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出がなく、かつ年齢が基準値以上の群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着があり、歯周病原菌の検出がなく、かつ年齢が基準値未満の群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出がなく、かつ年齢が基準値以上の群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
本開示によれば、例えば、又はプラークの付着がなく、歯周病原菌の検出がなく、かつ年齢が基準値未満の群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提供することができる。
【0049】
口腔衛生用品は、例えば、プラーク減少用、プラーク形成抑制用、歯周病原菌殺菌用、歯周病原菌増殖抑制用、歯周病原菌定着抑制用、歯周病原菌定着予防用等であってもよい。
【0050】
プラークの付着がある群に分類された被験者に対しては、例えば、プラークを減少させること、プラークの形成を抑制すること等が、炎症を抑えるために有効であると推測される。プラークを減少させる手段としては、機械的プラーク除去の向上(歯磨回数の増加、歯間清掃具の使用等)が特に有効であると推測される。
プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者に対しては、例えば、プラークの質を良い状態に維持すること、歯周病原菌の定着を抑制すること、歯周病原菌の定着を予防すること等が、歯周病の罹患を予防するために有効であると推測される。
プラークの付着がない群に分類された被験者であっても、歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者に対しては、例えば、歯周病原菌を殺菌すること、歯周病原菌の増殖を抑制すること、歯周病原菌の歯肉細胞への侵入を予防すること等が、歯周病の進行を抑制するために有効であると推測される。
【0051】
プラークの付着がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、プラーク減少用、プラーク形成抑制用等であってもよい。
プラークの付着がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、歯周病原菌殺菌用、歯周病原菌増殖抑制用、歯周病原菌定着抑制用、歯周病原菌定着予防用等であってもよい。
歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、歯周病原菌殺菌用、歯周病原菌増殖抑制用、歯周病原菌の歯肉細胞侵入阻害用等であってもよい。
歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、歯周病原菌定着抑制用、歯周病原菌定着予防用、口腔細菌叢の維持用等であってもよい。
プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、プラーク減少用、プラーク形成抑制用、歯周病原菌殺菌用、歯周病原菌増殖抑制用等であってもよい。
プラークの付着があり、かつ歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、プラーク減少用、プラーク形成抑制用、歯周病原菌定着抑制用、歯周病原菌定着予防用等であってもよい。
プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がある群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、プラーク形成抑制用、歯周病原菌殺菌用、歯周病原菌増殖抑制用等であってもよい。
プラークの付着がなく、かつ歯周病原菌の検出がない群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、プラーク形成抑制用、歯周病原菌定着抑制用、歯周病原菌定着予防用等であってもよい。
プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、プラーク減少用、プラーク形成抑制用、歯周病原菌殺菌用、歯周病原菌増殖抑制用、歯周病原菌の歯肉細胞侵入阻害用等であってもよい。
プラークの付着があり、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、プラーク減少用、プラーク形成抑制用、歯周病原菌定着抑制用、歯周病原菌定着予防用等であってもよい。
プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値以上の群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、歯周病原菌殺菌用、歯周病原菌増殖抑制用等であってもよい。
プラークの付着がなく、歯周病原菌の検出があり、かつ年齢が基準値未満の群に分類された被験者のための口腔衛生用品としては、例えば、歯周病原菌定着抑制用、歯周病原菌定着予防用等であってもよい。
【0052】
本開示は、前述した本開示の層別化方法を実現させるためのプログラムを提供することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータに、被験者のプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を取得する第1機能、及び第1機能で取得されたプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無に基づいて、被験者を層別化する第2機能を実現させるためのプログラムである。
【0053】
プラークの付着の有無、口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無、並びにプラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づく被験者の層別化等については、前述した記載を援用することができる。
【0054】
層別化結果は、例えば、被験者に対して、ネットワークを介して、提供することができる。また、例えば、被験者に対して、ネットワークを介して、前述した各群に分類された被験者のための口腔衛生用品又は口腔衛生方法を提示することができる。例えば、被験者のスマートフォン、タブレット端末等に層別化結果、口腔衛生用品又は口腔衛生方法等の情報を送信することができる。また、例えば、層別化結果に基づいて、被験者に対して、ネットワークを介して、口腔衛生用品又は口腔衛生方法の提案、指導等を行うことができる。
【0055】
本開示は、被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度を測定(予測)する方法をも包含する。本明細書において、当該方法を、「本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度の測定方法」と表記することがある。
【0056】
本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度の測定方法は、被験者のプラークの付着の有無、及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を指標とすることが好ましい。本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度の測定方法は、さらに年齢を指標としてもよい。
【0057】
本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度の測定方法は、プラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化することを含むことが好ましい。本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度の測定方法は、さらに年齢に基づいて被験者を層別化することを含んでいてもよい。
【0058】
プラークの付着の有無、口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無、並びにプラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化する方法等については、前述した「本開示の層別化方法」についての記載を援用することができる。
【0059】
本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度の測定方法によれば、層別化結果に基づいて、被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度を測定(予測)することができる。
【0060】
本開示は、前述した本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度の測定方法を実現させるためのプログラムを提供することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータに、被験者のプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を取得する第1機能、第1機能で取得されたプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無に基づいて、被験者を層別化する第2機能、及び層別化結果に基づいて、被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度を測定(予測)する第3機能を実現させるためのプログラムである。
【0061】
本開示は、歯周病の罹患の有無又はその程度に応じた被験者の層別化を補助する方法をも包含する。本明細書において、当該方法を、「本開示の層別化を補助する方法」と表記することがある。
【0062】
本開示の層別化を補助する方法は、被験者のプラークの付着の有無、及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を指標とすることが好ましい。本開示の層別化を補助する方法は、さらに年齢を指標としてもよい。
【0063】
本開示の層別化を補助する方法は、プラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化することを含むことが好ましい。本開示の層別化を補助する方法は、さらに年齢に基づいて被験者を層別化することを含んでいてもよい。
【0064】
プラークの付着の有無、口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無、並びにプラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化する方法等については、前述した「本開示の層別化方法」についての記載を援用することができる。
【0065】
本開示の層別化を補助する方法によれば、歯周病の罹患の有無又はその程度に応じて、被験者を層別化することを補助することができる。
【0066】
本開示は、前述した本開示の層別化を補助する方法を実現させるためのプログラムを提供することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータに、被験者のプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を取得する第1機能、及び第1機能で取得されたプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無に基づいて、被験者を層別化する第2機能を実現させるためのプログラムである。
【0067】
本開示は、被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定(診断)することを補助する方法をも包含する。本明細書において、当該方法を、「本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定することを補助する方法」と表記することがある。
【0068】
本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定することを補助する方法は、被験者のプラークの付着の有無、及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を指標とすることが好ましい。本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定することを補助する方法は、さらに年齢を指標としてもよい。
【0069】
本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定することを補助する方法は、プラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化することを含むことが好ましい。本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定することを補助する方法は、さらに年齢に基づいて被験者を層別化することを含んでいてもよい。
【0070】
プラークの付着の有無、口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無、並びにプラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化する方法等については、前述した「本開示の層別化方法」についての記載を援用することができる。
【0071】
本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定することを補助する方法によれば、層別化結果に基づいて、被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定することを補助することができる。
【0072】
本開示は、前述した本開示の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定することを補助する方法を実現させるためのプログラムを提供することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータに、被験者のプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を取得する第1機能、第1機能で取得されたプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無に基づいて、被験者を層別化する第2機能、及び層別化結果に基づいて、被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度を判定する第3機能を実現させるためのプログラムである。
【0073】
本開示は、被験者の歯周病の発症又は重症化のリスクを測定(予測)する方法をも包含する。本明細書において、当該方法を、「本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクの測定方法」と表記することがある。
【0074】
本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクの測定方法は、被験者のプラークの付着の有無、及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を指標とすることが好ましい。本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクの測定方法は、さらに年齢を指標としてもよい。
【0075】
本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクの測定方法は、プラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化することを含むことが好ましい。本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクの測定方法は、さらに年齢に基づいて被験者を層別化することを含んでいてもよい。
【0076】
プラークの付着の有無、口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無、並びにプラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化する方法等については、前述した「本開示の層別化方法」についての記載を援用することができる。
【0077】
本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクの測定方法によれば、層別化結果に基づいて、被験者の歯周病の発症又は重症化のリスクを測定(予測)することができる。
【0078】
本開示は、前述した本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクの測定方法を実現させるためのプログラムを提供することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータに、被験者のプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を取得する第1機能、第1機能で取得されたプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無に基づいて、被験者を層別化する第2機能、及び層別化結果に基づいて、被験者の歯周病の発症又は重症化のリスクを測定(予測)する第3機能を実現させるためのプログラムである。
【0079】
本開示は、被験者の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助する方法をも包含する。本明細書において、当該方法を、「本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助する方法」と表記することがある。
【0080】
本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助する方法は、被験者のプラークの付着の有無、及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を指標とすることが好ましい。本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助する方法は、さらに年齢を指標としてもよい。
【0081】
本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助する方法は、プラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化することを含むことが好ましい。本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助する方法は、さらに年齢に基づいて被験者を層別化することを含んでいてもよい。
【0082】
プラークの付着の有無、口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無、並びにプラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化する方法等については、前述した「本開示の層別化方法」についての記載を援用することができる。
【0083】
本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助する方法によれば、層別化結果に基づいて、被験者の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助することができる。
【0084】
本開示は、前述した本開示の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定することを補助する方法を実現させるためのプログラムを提供することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータに、被験者のプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を取得する第1機能、第1機能で取得されたプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無に基づいて、被験者を層別化する第2機能、及び層別化結果に基づいて、被験者の歯周病の発症又は重症化のリスクを判定する第3機能を実現させるためのプログラムである。
【0085】
本開示は、被験者の歯周病の罹患の有無又はその程度に応じて、被験者に適した口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定(提示)することを補助する方法をも包含する。本明細書において、当該方法を、「本開示の口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定することを補助する方法」と表記することがある。
【0086】
本開示の口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定することを補助する方法は、被験者のプラークの付着の有無、及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を指標とすることが好ましい。本開示の口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定することを補助する方法は、さらに年齢を指標としてもよい。
【0087】
本開示の口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定することを補助する方法は、プラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化することを含むことが好ましい。本開示の口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定することを補助する方法は、さらに年齢に基づいて被験者を層別化することを含んでいてもよい。
【0088】
プラークの付着の有無、口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無、並びにプラークの付着の有無及び歯周病原菌の検出の有無に基づいて被験者を層別化する方法等については、前述した「本開示の層別化方法」についての記載を援用することができる。
【0089】
本開示の口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定することを補助する方法によれば、層別化結果に基づいて、被験者に適した口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定(提示)することを補助することができる。
【0090】
本開示は、前述した本開示の口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定することを補助する方法を実現させるためのプログラムを提供することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータに、被験者のプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無を取得する第1機能、第1機能で取得されたプラークの付着の有無及び口腔内試料中の歯周病原菌の検出の有無に基づいて、被験者を層別化する第2機能、及び層別化結果に基づいて、被験者に適した口腔衛生用品又は口腔衛生方法を決定(提示)する第3機能を実現させるためのプログラムである。
【0091】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0092】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0093】
本開示の内容を以下の試験例を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。
【0094】
449名(男性297名、女性152名(平均年齢45.5歳)の被験者について、以下の項目について、それぞれ記載の方法に従って確認した。
【0095】
試験例1 プラークの有無(PlI(Plaque Index)の測定)
1人当たり代表歯6本についてPlIを測定した(
図1)。代表歯は、右上6、右上1、左上6、右下6、左下1、及び左下6とした。ただし、6が喪失している場合は、7で測定した。
PlIは歯垢付着の程度を示した指標である。代表歯6本について以下の基準に従って、PlIを測定した。1歯の中でもっとも付着の多い部位の値(最大値)を採用した。
<基準>
0:付着は認められない
1:歯面1/3未満の歯垢付着
2:歯面1/3以上2/3未満の歯垢付着
3:歯面2/3以上の歯垢付着
代表歯6本のPlIより平均値を算出し、PlIの平均値が0である場合には、「プラークなし」と、PlIの平均値が0より大きい場合には、「プラークあり」とした。
【0096】
試験例2 唾液細菌叢解析
被験者の唾液からDNAを抽出し、細菌が保有する16S rRNA遺伝子をPCRで増幅した後、次世代シーケンサーMiseq(イルミナ株式会社)を用いて細菌叢解析を行った。(検出された歯周病原菌の構成比率の最小値は約0.001%であった。唾液中には108cfu/mL程度の細菌が存在することから、検出下限は103cfu/mL程度と推測された)。解析の結果から、Porphyromonas gingivalis(Pgと表記することがある)の検出がある群又はない群(検出下限値未満の群)に分類した。
【0097】
試験例3 歯周病の分類
歯科専門家の診察により、CPI(Community Periodontal Index)を測定した。
<基準>
コード0: 健全
コード1: 出血
コード2: 歯石沈着
コード3: 浅い歯周ポケット(PD=4-5mm)
コード4: 深い歯周ポケット(PD≧6mm)
代表歯のコードをそれぞれ測定し、その最大コードを各被験者の代表値とした。コード1と2を合わせて歯肉炎として、各被験者を以下の4群に分類した。
【0098】
【0099】
1.プラークの有無による分類
プラークの付着がある群及びない群における、歯周病の分類結果を以下に示す。
【0100】
【0101】
プラークの付着がある群においては、歯肉炎又は歯周炎を有する被験者の割合が高いことが確認された。一方、プラークの付着がない群においても、歯周炎を有する被験者が24%程度含まれることから、プラークの付着の有無のみにより、歯周病の罹患の有無又はその程度を予測することはできない(歯周病リスクのある被験者を見逃してしまう可能性がある)ことが分かった。
【0102】
2.プラークの有無及び唾液Pgによる分類
プラークの付着がある群及びない群に分類後、唾液Pgの検出がある群とない群とに分類した。各群における、歯周病の分類結果を以下に示す。
【0103】
【0104】
プラークの付着がない群であっても、唾液Pgの検出がある群では、唾液Pgの検出がない群と比較して、歯周炎を有する被験者の割合が高いことが確認された。
また、プラークの付着がある群においては、唾液Pgの検出がある群では、他の群と比較して、歯周炎(特に重度歯周炎)を有する被験者の割合が高く、唾液Pgの検出がない群では、他の群と比較して、歯肉炎を有する被験者の割合が高いことが確認された。さらに、プラークの有無のみで分類した場合([表2])と比較すると、プラークの付着があり、唾液Pgの検出がある群では、歯肉炎を有する被験者の割合が減少し、歯周炎を有する被験者の割合が増加していることが確認された。
また、プラークの付着がある場合には、歯周病でない被験者の割合が低く、歯肉炎及び軽度歯周炎を有する被験者の割合が高いことから、プラークの付着は歯周病の発症(炎症の発生)に関与しているものと考えられる。また、唾液Pgの検出がある場合には、歯肉炎を有する被験者の割合が低く、軽度歯周炎及び重度歯周炎を有する被験者の割合が高いことから、口腔内試料中の歯周病原菌の有無は歯周病の重症化に関与しているものと考えられる。
以上のことから、プラークの付着の有無と唾液Pgを組み合わせて分類することによって、プラークの付着の有無のみにより分類した場合と比較して、より精度高く歯周病の罹患の有無又はその程度を予測できることが示唆された。プラークの付着の有無と唾液Pgとの組み合わせは、歯周病の罹患の有無、又はその程度を予測するために有効な評価指標であることが示唆された。
【0105】
3.プラークの有無、唾液Pg及び年齢による分類
プラークの付着がある群及びない群に分類後、唾液Pgの検出がある群とない群とに分類し、唾液Pgの検出がある群においてさらに年齢が40歳以上の群と40歳未満の群とに分類した。各群における、歯周病の分類結果を以下に示す。
【0106】
【0107】
プラークの付着がない群であっても、唾液Pgの検出があり、かつ年齢が40歳以上の群では、唾液Pgの検出があり、かつ年齢が40歳未満の群と比較して、歯周炎を有する被験者の割合が高いことが確認された。さらに、プラークの付着と唾液Pgを組み合わせて分類した場合([表3])と比較すると、プラークの付着がなく、唾液Pgの検出があり、かつ年齢が40歳未満の群では、歯周炎を有する被験者の割合が減少し、歯周病でない被験者の割合が増加していることが確認された。
また、プラークの付着がある群においては、唾液Pgの検出があり、かつ年齢が40歳以上の群では、唾液Pgの検出があり、かつ年齢が40歳未満の群と比較して、歯周炎(特に重度歯周炎)を有する被験者の割合が高いことが確認された。
以上のことから、プラークの付着の有無、唾液Pg、及び年齢を組み合わせて分類することによって、プラークの付着の有無のみ、もしくはプラークの付着と唾液Pgを組み合わせて分類した場合と比較して、より精度高く歯周病の罹患の有無又はその程度を予測できることが示唆された。プラークの付着の有無、唾液Pg、及び年齢の組み合わせは、歯周病の罹患の有無、又はその程度を判断するためにより有効な評価指標であることが示唆された。
【0108】
4.プラークの有無、唾液Pg及び年齢による分類
プラークの付着がある群及びない群に分類後、唾液Pgの検出がある群とない群とに分類し、唾液Pgの検出がある群においてさらに年齢が50歳以上の群と50歳未満の群とに分類した。各群における、歯周病の分類結果を以下に示す。
【0109】
【0110】
プラークの付着がなく、かつ唾液Pgの検出がある群において、年齢を50歳で分類した場合には、40歳で分類した場合([表4])と比較して、50歳以上の群と50歳未満の群との歯周炎を有する被験者の割合の差が小さくなる(年齢が50歳未満の群において、軽度又は重度歯周炎を有する被験者の割合が高くなる)ことが確認された。
また、プラークの付着があり、かつ唾液Pgの検出がある群において、年齢を50歳で分類した場合には、40歳で分類した場合([表4])と比較して、50歳以上の群と50歳未満の群との歯周炎を有する被験者の割合の差が小さくなり(年齢が50歳未満の群において、歯周炎を有する被験者の割合が高くなる)、歯周病でない被験者の割合が低くなることが確認された。
なお、年齢を30歳で分類した場合には、唾液Pgが検出される被験者が少なく(20%程度)、年齢の分類基準としては適当でないことが示唆された。
このことから年齢を指標とする場合には、40歳を基準とすることによって、より精度高く、歯周病の罹患の有無又はその程度を判断できることが示唆された。