(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171298
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】薪ストーブ
(51)【国際特許分類】
F24B 1/195 20060101AFI20221104BHJP
F24B 1/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F24B1/195
F24B1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077873
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】521190923
【氏名又は名称】株式会社美山里山舎
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】小関 康嗣
(57)【要約】
【課題】ストーブ本体が鋼板で形成され、しかも、薪の燃焼が少なくなっても燃焼室及び部屋が冷え難い薪ストーブを提供するする。
【解決手段】この薪ストーブ1は、内部に燃焼室Rを有するストーブ本体4と、透明な耐熱ガラス窓51が設けられストーブ本体4の前側を閉塞及び開放可能な扉5と、燃焼室Rの上部に設けられた上部遮蔽板6Aと、燃焼室Rの両側部に設けられた2個の側部遮蔽板6B、6Cと、燃焼室Rの後部に設けられた後部遮蔽板6Dと、を備え、ストーブ本体4の少なくとも天板4Aと2個の側板4B、4Cが鋼板で形成され、上部遮蔽板6Aが凝灰岩で形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃焼室を有するストーブ本体と、
透明な耐熱ガラス窓が設けられ前記ストーブ本体の前側を閉塞及び開放可能な扉と、
前記燃焼室の上部に設けられた上部遮蔽板と、
前記燃焼室の両側部に設けられた2個の側部遮蔽板と、
前記燃焼室の後部に設けられた後部遮蔽板と、
を備え、
前記ストーブ本体の少なくとも天板と2個の側板が鋼板で形成され、
前記上部遮蔽板が凝灰岩で形成されている薪ストーブ。
【請求項2】
請求項1に記載の薪ストーブにおいて、
前記2個の側部遮蔽板は、凝灰岩で形成されている薪ストーブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薪ストーブにおいて、
前記後部遮蔽板は、バーミキュライトの板で形成されている薪ストーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪ストーブに関する。
【背景技術】
【0002】
薪を燃料とする薪ストーブが知られている。薪ストーブは、薪を燃焼室で燃焼させることによって部屋を暖めることができるとともに、燃焼室の上方で加熱された天板にやかんや調理鍋などを置くことにより湯を沸かしたり調理をしたりすることができる。薪の燃焼によって生じた煙は、薪ストーブに取り付けられた煙突により屋外に排出される。
【0003】
薪ストーブは、一般的には、鋼板(特許文献1参照)又は鋳物(鋳鉄)(特許文献2参照)でストーブ本体の天板及び2個の側板などが形成されている。鋼板の薪ストーブは、一般的に、気密性が高いために燃焼室の温度がコントロールし易く、また、薪が燃焼し始めてから部屋が暖まるまでに時間がかからないが、薪の燃焼が少なくなると燃焼室及び部屋が冷え易い。一方、鋳物の薪ストーブは、一般的に、鋳物の板を耐火セメントなどで接着して構成するので気密性が低くなって燃焼室の温度がコントロールし難く、また、鋳物の蓄熱性により、薪が燃焼し始めてから部屋が暖まるまでに時間がかかるが、薪の燃焼が少なくなると燃焼室及び部屋が冷え易い点は軽減される。
【0004】
薪ストーブは、薪の燃焼が少なくなると冷え易い点を補うために、従来より、様々な工夫がされている。例えば、特許文献1では単純に天板等の鋼板の厚さを厚くし、特許文献2では(鋳物の天板等であるが、)天板の下側に肉厚の鋳物の蓄熱板を備えるようにして蓄熱性を向上させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-175577号公報
【特許文献2】特開2014-137168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように天板等の鋼板の厚さを厚くしたり特許文献2のように天板の下側に肉厚の鋳物の蓄熱板を備えたりしても、蓄熱性の向上には限界がある。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、ストーブ本体が鋼板で形成され、しかも、薪の燃焼が少なくなっても燃焼室及び部屋が冷え難い薪ストーブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の薪ストーブは、内部に燃焼室を有するストーブ本体と、透明な耐熱ガラス窓が設けられ前記ストーブ本体の前側を閉塞及び開放可能な扉と、前記燃焼室の上部に設けられた上部遮蔽板と、前記燃焼室の両側部に設けられた2個の側部遮蔽板と、前記燃焼室の後部に設けられた後部遮蔽板と、を備え、前記ストーブ本体の少なくとも天板と2個の側板が鋼板で形成され、前記上部遮蔽板が凝灰岩で形成されている。
【0009】
請求項2に記載の薪ストーブは、請求項1に記載の薪ストーブにおいて、前記2個の側部遮蔽板は、凝灰岩で形成されている。
【0010】
請求項3に記載の薪ストーブは、請求項1又は2に記載の薪ストーブにおいて、前記後部遮蔽板は、バーミキュライトの板で形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薪ストーブによれば、ストーブ本体が鋼板で形成され、しかも、薪の燃焼が少なくなっても燃焼室及び部屋が冷え難くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る薪ストーブの外観を示す右斜め上から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示した薪ストーブの外観を示す左斜め上から見た斜視図である。
【
図3】
図1(及び
図2)に示した薪ストーブの断面図(正面の中央を上下に切断して右側から見た断面図)である。
【
図4】
図1(及び
図2、
図3)に示した薪ストーブを使用したときの様子を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る薪ストーブ1は、例えば、
図1及び
図2に示すような略直方体の形状のものである。薪ストーブ1には、一般に、煙突2と空気供給管3が取り付けられ、その位置は特に限定されるものではないが、例えば、
図1及び
図2に示すように、煙突2は薪ストーブ1の上部に、空気供給管3は薪ストーブ1の後部にそれぞれ取り付けられるようにすることができる。煙突2は、それを通って薪ストーブ1からの煙が排出される。空気供給管3は、屋外等から薪ストーブ1に空気が供給される。
【0014】
薪ストーブ1は、
図1及び
図2に示すように、ストーブ本体4、扉5、4個の遮蔽板(上部遮蔽板6A、2個の側部遮蔽板6B、6C、後部遮蔽板6D)を備えている。なお、
図1及び
図2においては、上部遮蔽板6A、2個の側部遮蔽板6B、6C、後部遮蔽板6D、後述する炉床板4Hは、後述する耐熱ガラス窓51を通して見えている。
【0015】
ストーブ本体4は、その内部に薪W(
図4参照)を燃焼させる燃焼室Rを有している。ストーブ本体4を構成する少なくとも天板(上面の板)4Aと2個の側板(側面の板)4B、4Cは、鋼板で形成されている。天板4Aと2個の側板4B、4Cは、板を曲げたり溶接したりして形成することができる。それにより、鋳物の薪ストーブのようには耐火セメントなどの接着剤を用いないので、気密性が高く、そのうえ耐久性が高く、広葉樹よりも燃焼の温度が高くなる針葉樹の薪を使用しても全体として劣化が少ないものとすることが可能である。なお、ストーブ本体4の天板4Aと2個の側板4B、4Cなどは、薪ストーブ1の筐体となっている。
【0016】
ストーブ本体4のその他の構成は、特に限定されるものではないが、次に述べるようにすることができる(
図3及び
図4参照)。
【0017】
天板4Aは、煙突2が取り付けられている。また、天板4Aは、その内面に、煙突2までの煙の流れを制御する制御板4Aaが設けられている。
【0018】
ストーブ本体4の後面(背面)を形成する後面部材4Dは、空気供給管3が取り付けられている。空気供給管3には、薪ストーブ1に供給する空気の量を調整する空気量調整機構4Eが設けられている。空気量調整機構4Eは、調整棒体4Eaを介して薪ストーブ1の前面等に設けられるレバー4Ebにより制御される。なお、
図3及び
図4において、空気量調整機構4Eの内部は省略している。
【0019】
後面部材4Dは、鋼板で形成されるようにすることができ、天板4A及び2個の側板4B、4Cとともに板を曲げたり溶接したりして形成することができる。
【0020】
後面部材4Dの内側(つまり、その前方)には後部隔壁板4Fが設けられている。後面部材4Dと後部隔壁板4Fの間は、空気供給管3からの空気(
図4においては矢印付き一点鎖線で示す)が通過する空気通過路Pとなっている。後部隔壁板4Fには、後に詳述する後部遮蔽板6Dの空気供給孔6Daに対応する位置に、空気が通過する空気通過孔4Faが形成されている。空気は、空気通過孔4Faから空気供給孔6Daを通って燃焼室Rに供給される。なお、
図3及び
図4に示す例では、空気の一部は、後部隔壁板4Fと後部遮蔽板6Dの隙間を通ってその上方にも流れる。
【0021】
ストーブ本体4の前面(正面)を形成する前板4Gは、後述するように扉5がストーブ本体4の前側を閉塞したときに扉5が密着する。前板4Gは、開口部を有しており、扉5がストーブ本体4の前側を開放したときに、その開口部を通して薪Wの投入などが行われる。前板4Gは、鋼板で形成されるようにすることができ、天板4Aと2個の側板4B、4C(及び後面部材4D)とともに板を曲げたり溶接したりして形成することができる。
【0022】
ストーブ本体4の内部の下部には、薪Wが置かれる炉床板4Hが設けられている。炉床板4Hには、薪Wの灰などが落ちる貫通孔が設けられ、炉床板4Hの下方には、その灰などが蓄えられる灰受け4Iが設置されている。扉5及び前板4Gには、灰受け4Iを出し入れする灰受け出し入れ孔4Iaが設けられている。なお、灰受け4Iより下側は、薪Wを蓄える空間とすることができる。
【0023】
このように、ストーブ本体4は、天板(上面の板)4Aや2個の側板(側面の板)4B、4Cなどが鋼板で形成されているので、気密性が高いために燃焼室Rの温度がコントロールし易く、また、薪Wが燃焼し始めてから部屋が暖まるまでに時間がかからない。また、天板4Aは、加熱されるのが早く、それにやかんや調理鍋などを置くことにより早く湯を沸かしたり調理をしたりすることができる。
【0024】
扉5は、ストーブ本体4の前側を閉塞及び開放可能なものである。扉5には、透明な耐熱ガラス窓51が設けられている。耐熱ガラス窓51は、扉5がストーブ本体4の前側を閉塞したときに前板4Gの開口部の前方に位置し、薪Wの燃焼により放射される熱(
図4においては矢印付き破線で示す)が通って部屋を暖め、また、薪Wの燃焼状態を点検することができる。
【0025】
上部遮蔽板6Aは、燃焼室Rの上部に設けられている。上部遮蔽板6Aは、前板4G(及び扉5)との間に間隔をあけて設けられている。上部遮蔽板6Aは、前方に向かうにつれ斜めに上がるようにすることができる。この上部遮蔽板6Aは、薪Wの燃焼(一次燃焼)により発生した煙と暖まった空気(
図4においては矢印付き実線で示す)が煙突に直接行かないように遮って滞留させ、滞留した煙又は空気に含まれる未燃焼ガスを再燃焼(二次燃焼)させる。再燃焼を経た煙と空気は、前板4G(及び扉5)と上部遮蔽板6Aの間から上昇し、天板4Aを暖め、そして、煙突に抜けて行く。また、上部遮蔽板6Aは、薪Wの燃焼による熱の一部を反射する。このようにして、上部遮蔽板6Aにより、燃焼の効率が良く、薪Wが燃焼し始めてから燃焼室Rが早く暖まり易くなる。
【0026】
上部遮蔽板6Aは、凝灰岩で形成されている。凝灰岩は、例えば、大谷石などである。凝灰岩の上部遮蔽板6Aは、高い耐火性及び耐熱性を有し、薪Wの燃焼による火に良く耐えることができる。また、凝灰岩の上部遮蔽板6Aは、高い蓄熱性を有し、薪Wの燃焼の直上及び近傍で高温の熱を受けて良く蓄積することができる。また、凝灰岩は天然石であるから、人工のものに比べて優れた耐久性を有している。このような上部遮蔽板6Aは、薪Wの燃焼の直上及び近傍で高温の熱を受けて良く蓄積することができるので、薪の燃焼が少なくなっても燃焼室が冷え難くなる。そうすると、燃焼を維持し易く部屋が冷え難く、また、燃焼残りによる臭いも発生し難くなる。
【0027】
側部遮蔽板6B、6Cは、燃焼室Rの両側部に設けられている。側部遮蔽板6B、6Cは、燃焼室R内で両側方に向かった煙と暖まった空気を遮って滞留させ、また、熱の一部を反射する。
【0028】
側部遮蔽板6B、6Cは、上記の凝灰岩で形成されているのが好ましい。凝灰岩の側部遮蔽板6B、6Cは、受ける熱は上記の凝灰岩の上部遮蔽板6Aほど高温ではないが、高い蓄熱性により、受けた熱を良く蓄積することができる。
【0029】
後部遮蔽板6Dは、燃焼室Rの後部に設けられている。後部遮蔽板6Dには、燃焼室Rの後方から空気を噴出して燃焼室Rに空気を供給するための空気供給孔6Daが設けられている。後部遮蔽板6Dは、燃焼室R内で後方に向かった煙と暖まった空気を遮って滞留させ、また、熱の一部を反射する。
【0030】
後部遮蔽板6Dは、凝灰岩で形成されていてもよいが、バーミキュライトの板で形成されているのが好ましい。バーミキュライトの板は、凝灰岩のものよりも熱を反射し易い。反射した熱は、耐熱ガラス窓51を通って部屋を暖めることができる。後部遮蔽板6Dは、熱を反射し易いその他の人工の板を用いることも可能である。
【0031】
このような4個の遮蔽板(上部遮蔽板6A、2個の側部遮蔽板6B、6C、後部遮蔽板6D)は、炉床板4Hの上に2個の側部遮蔽板6B、6Cと後部遮蔽板6Dを立て、その上に上部遮蔽板6Aを置くようにして設置することができる。そうすると、上記のストーブ本体4と同様に、耐火セメントなどの接着剤などを用いなくても設置することが可能であり、耐久性が高いものとすることができ、また、広葉樹よりも燃焼の温度が高くなる針葉樹の薪を使用しても全体として劣化が少ないものとすることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態である薪ストーブについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 薪ストーブ
2 煙突
3 空気供給管
4 ストーブ本体
4A 天板
4Aa 制御板
4B、4C 側板
4D 後面部材
4E 空気量調整機構
4Ea 調整棒体
4Eb レバー
4F 後部隔壁板
4Fa 空気通過孔
4G 前板
4H 炉床板
4I 灰受け
4Ia 灰受け出し入れ孔
5 扉
51 耐熱ガラス窓
6A 上部遮蔽板
6B、6C 側部遮蔽板
6D 後部遮蔽板
6Da 空気供給孔
P 空気通過路
R 燃焼室
W 薪