(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171309
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ゾーン空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/044 20060101AFI20221104BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F9/00 A
F24F9/00 G
F24F9/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077886
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩
(72)【発明者】
【氏名】青 勇志
【テーマコード(参考)】
3L053
【Fターム(参考)】
3L053BB02
3L053BB04
3L053BB10
(57)【要約】
【課題】作業員の作業効率を維持しながら、ゾーニングされた箇所を効果的に冷暖房するためのゾーン空調システムが提供する。
【解決手段】ゾーン空調システム1は、壁を有する構造物の内部の所定区画であるゾーン6に対し空調するものであって、エアカーテン形成装置3と、空調装置8に繋がる吹き出し口7と、エアカーテン形成装置3を支持する支持体4とを備え、エアカーテン形成装置3は、上面視でゾーン6の境界に配置され、下方に向けて風を吐出することでエアカーテン2を形成し、吹き出し口7は、空調装置8からの冷気をゾーン6内に吹き出し、エアカーテン形成装置3による風の速度は、1m/s超6m/s以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁を有する構造物の内部の所定区画であるゾーンに対し空調するゾーン空調システムであって、
エアカーテン形成装置と、空調装置に繋がる吹き出し口と、前記エアカーテン形成装置を支持する支持体とを備え、
前記エアカーテン形成装置は、上面視で前記ゾーンの境界における前記壁以外の部分に配置され、下方に向けて風を吐出することでエアカーテンを形成し、
前記吹き出し口は、前記空調装置からの冷気又は暖気を前記ゾーン内に吹き出し、
前記エアカーテン形成装置による前記風の速度は、1m/s超6m/s以下であることを特徴とするゾーン空調システム。
【請求項2】
前記ゾーンの上部に、天井部が配置されることを特徴とする請求項1に記載のゾーン空調システム。
【請求項3】
前記吹き出し口は、前記冷気又は前記暖気の吐出方向を拡散させる拡散手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のゾーン空調システム。
【請求項4】
前記ゾーンの上部から下方に向けてミストを噴霧する噴霧部を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のゾーン空調システム。
【請求項5】
前記エアカーテン形成装置は、下方に延びるエアガイドを備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のゾーン空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風により区切った所定のゾーンの内部を冷暖房するためのゾーン空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な工場等では、換気量や内部発熱量が多いこと、及び断熱が不十分なことから、夏季は暑熱環境となり、冬は寒冷環境となる。そして、大規模な工場のような大空間全体を冷暖房することは多大なエネルギーを必要とするため、スポットで冷暖房することが一般的である。一方、スポットでの冷暖房は、作業範囲が狭い作業員に対しては有効であるが、作業範囲が広く、移動の多い作業員に対しては、効果的に冷暖房することができなかった。
【0003】
上記課題に対する解決法として、間仕切りを用いたゾーニングにより空間を狭めることで、作業範囲が広い作業員に対しても効果的に冷暖房しつつ、大空間全体を空調する場合に比べ省エネルギーとすることができると考えられる。しかし、作業範囲に応じた間仕切りの配置の設定は難しく、実際には作業員が間仕切り間を通ることが発生し、作業効率の低下に繋がるため、望ましくない。
そこで、作業員の移動及び作業を妨げずにゾーニングをする方法として、エアカーテンによるゾーニングが考えられる。エアカーテンを用いたゾーニング技術として、例えば特許文献1には、エアカーテンを用いることで搬入出の障害にならないクリーンブースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたクリーンブースは、エアカーテンにより外部との遮断性を向上させ、クリーンブース内部における局所的な空気清浄度を高めるものであるが、仕切られた空間の内部の冷暖房に関する記載がない。そのため、冷暖房を目的としたエアカーテンによるゾーニングには、改善の余地が残されていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、作業員による作業効率を維持しながら、ゾーニングされた箇所を冷暖房するためのゾーン空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、壁を有する構造物の内部の所定区画であるゾーンに対し空調するゾーン空調システムであって、エアカーテン形成装置と、空調装置に繋がる吹き出し口と、エアカーテン形成装置を支持する支持体とを備え、エアカーテン形成装置は、上面視でゾーンの境界における壁以外の部分に配置され、下方に向けて風を吐出することでエアカーテンを形成し、吹き出し口は、空調装置からの冷気又は暖気をゾーン内に吹き出し、エアカーテン形成装置による風の速度は、1m/s超6m/s以下であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、ゾーンの上部に、天井部が配置されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記構成において、吹き出し口は、冷気又は暖気の吐出方向を拡散させる拡散手段を備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記構成において、ゾーンの上部から下方に向けてミストを噴霧する噴霧部を備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記構成において、エアカーテン形成装置は、下方に延びており、風を下方へ導くエアガイドを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の主な効果は、作業員の作業効率を維持しながら、ゾーニングされた箇所を効果的に冷暖房するためのゾーン空調システムが提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のゾーン空調システムを示す説明図である。
【
図2】ゾーン空調システムを模した計算モデルを示す説明図である。
【
図3】本発明のゾーン空調システムを模した計算モデルを用いた温度計算結果を示す説明図であって、(a)は比較例1の計算結果、(b)は実施例1-1の計算結果、(c)は実施例1-2の計算結果、(d)は実施例1-3の計算結果、(e)は実施例1-4の計算結果、(f)は実施例1-5の計算結果、(g)は実施例1-6の計算結果である。
【
図4】実施例1及び比較例1におけるゾーン6の内部の平均気温を示すグラフである。
【
図6】比較例2-1の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
【
図7】比較例2-2の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
【
図8】比較例2-3の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
【
図9】実施例2-1の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
【
図10】実施例2-2の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
【
図11】実施例2-3の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
【
図12】実施例2-4の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
【
図13】変形例のゾーン空調システムを示す説明図である。
【
図14】変形例のゾーン空調システムを模した変形例計算モデルを用いた温度計算結果を示す説明図であって、(a)は変形比較例1の計算結果、(b)は変形実施例1-1の計算結果、(c)は変形実施例1-2の計算結果、(d)は変形実施例1-3の計算結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のゾーン空調システムを示す説明図である。
ゾーン空調システム1は、工場等の壁を有する構造物の内部の所定区画であるゾーン6に設けられ、
図1に示すように、エアカーテン2及び天井部5によりゾーン6と外部とを仕切ることで、ゾーニングされたゾーン6の内部を効果的に空調(冷暖房)するために用いられる。
【0011】
ゾーン空調システム1は、吐出部3aより下方に向けて風を吐出し、吐出された風によりエアカーテン2を形成するエアカーテン形成装置3を備える。エアカーテン形成装置3による風の速度(エアカーテン2の設定吹出風速)は任意に切替可能であるところ、1m/s超6m/s以下に設定され、好ましくは1.5m/s以上5m/s未満で設定される。また、エアカーテン形成装置3は、支持体4により支持される。支持体4は、複数(4本)の柱部4aと、それら柱部4aの上端を繋ぐように配置された上面視四角形状の支持部4bとを有する。各柱部4aは、工場等の床Fに、支持部4bが上面視でゾーン6の境界に配置されるように立設される。エアカーテン形成装置3は、支持部4bの各辺毎に、各辺それぞれの全域に渡って配置される。すなわち、エアカーテン形成装置3は、上面視でゾーン6の境界に配置される。エアカーテン2は、隣接する柱部4aの間に形成される。
ゾーン空調システム1は、4つのエアカーテン形成装置3により形成されるエアカーテン2、及びビニールシート等を用いて支持体4の支持部4b内に設けられる天井部5により、直方体状のゾーン6を形成する。
なお、支持部4bを構造物の天井から吊り下げ支持する等の方法で設ける場合、柱部4aを省略しても良い。また、柱部4aによってエアカーテン形成装置3を配置する場合、支持部4bを省略しても良い。また、天井部5は、構造物の天井から吊り下げ支持すること等により、支持体4と別体で設けられても良い。
また、構造物の壁がゾーン6の境界の一部となる場合、エアカーテン形成装置3は、ゾーン6の境界における壁以外の部分に配置される。すなわち、ゾーン6の境界はエアカーテン2と構造物の壁との組み合わせで構成されても良い。
【0012】
また、ゾーン空調システム1は、天井部5に、ゾーン6を冷暖房する冷気又は暖気を吐出する吹き出し口7を備える。吹き出し口7は、空調装置8に配管されており、任意の温度の冷気又は暖気を、任意の風速又は風量で吐出可能である。吹き出し口7は、天井部5の中央近傍に、冷気又は暖気を下方に向けて吐出可能に設けられる。また、吹き出し口7の先端部には、吐出される冷気又は暖気を多方向に広く拡散させる拡散手段であるシーリングディフューザ9が設けられている。シーリングディフューザ9により、ゾーン6の全域に冷気又は暖気が拡散され、ゾーン6の内部全域を効果的に冷暖房できる。
さらに、天井部5の所定箇所には、噴霧部10が設けられる。噴霧部10は、図示しない水供給手段に配管されている。噴霧部10は、下方に向けてミストを任意の噴霧量で噴霧する。
なお、吹き出し口7及び噴霧部10の少なくとも一方は、構造物の天井から吊り下げ支持すること等により、天井部5以外に設けられても良い。また、吹き出し口7及び噴霧部10は、上面視でゾーン6の中に配置されていれば、天井部5と高さが異なっていても良い。例えば、吹き出し口7が地上付近に配置されても良いし、噴霧部10が支持体4に配置されても良い。
【0013】
[実施例1及び比較例1]
以下、ゾーン空調システム1等を模した計算モデル1aを用いた冷房時の計算結果を示し、実施例1(実施例1-1~1-6)及び本発明に属さない比較例1について説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0014】
図2は、ゾーン空調システムを模した計算モデルを示す説明図である。
実施例1及び比較例1の計算モデル1aは、
図2に示すように、一辺5m(メートル)、床Fからの高さ3mの四角形状に、各エアカーテン形成装置3が配置され、その内方に吹き出し口7が配置された場合を模している。また、計算では、外気温が温度33℃湿度50%とされた。また、吹き出し口7に設けられたシーリングディフューザ9は、90度ずつ異なる4方向に空気を拡散するものとし、吹き出し口7からは、温度18℃(実施例1-6は15℃)湿度50%の冷気が、各方向に225m
3/hの風量で拡散するものとされた。
【0015】
比較例1では、エアカーテン2の風速が1.0m/sとされた。
【0016】
実施例1-1では、エアカーテン2の風速が1.5m/sとされた。
【0017】
実施例1-2では、エアカーテン2の風速が6.0m/sとされた。
【0018】
実施例1-3では、エアカーテン2の風速が5.0m/sとされた。
【0019】
実施例1-4では、エアカーテン2の風速が4.0m/sとされた。
【0020】
実施例1-5では、エアカーテン2の風速が2.0m/sとされた。
【0021】
実施例1-6では、実施例1-5の条件において、吹き出し口7から吐出される冷気の温度が15℃に変更された。
【0022】
上記の各条件の下、計算により、ゾーン空調システム1が、ゾーン6の内部を効果的に冷房できるか否かを検討した。
図3は、本発明のゾーン空調システムを模した計算モデルを用いた温度計算結果を示す説明図であって、(a)は比較例1の計算結果、(b)は実施例1-1の計算結果、(c)は実施例1-2の計算結果、(d)は実施例1-3の計算結果、(e)は実施例1-4の計算結果、(f)は実施例1-5の計算結果、(g)は実施例1-6の計算結果である。なお、温度計算結果で示す温度分布は、床Fからの高さが1mでの水平平面上の温度分布を示す。また、温度分布の下限は22℃であり、上限は33℃である。
【0023】
比較例1では、
図3(a)に示すように、吹き出し口7の直下近傍において顕著な冷却効果が確認される。一方、ゾーン6の周縁付近では、明確な冷却効果は確認されない。これは、エアカーテン2の風速が1.0m/sと遅いため、床F付近までエアカーテン2のゾーニング効果を維持できず、ゾーン6の周囲の空気のゾーン6内への侵入を抑えることができなかったことで、ゾーン6の周縁付近では冷却効果が得られなかったと考えられる。すなわち、比較例1は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域を効果的に冷房することはできない。
【0024】
実施例1-1では、
図3(b)に示すように、吹き出し口7の直下近傍において顕著な冷却効果が確認される。また、ゾーン6の全域に渡って、一定の冷却効果が確認される。これは、エアカーテン2の風速を1.5m/sに上げたことで、エアカーテン2が一定のゾーニング効果を実現し、ゾーン6の周囲の空気のゾーン6への侵入を抑制したためと考えられる。すなわち、実施例1-1は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域を効果的に冷房することができる。
【0025】
実施例1-2では、
図3(c)に示すように、ゾーン6の全域に渡って、一定の冷却効果が確認される。これは、エアカーテン2の風速を6.0m/sに上げたことで、風速の速いエアカーテン2によるゾーン6の周囲の空気の巻き込みに起因する冷却効果阻害が生じる可能性がある中でも、エアカーテン2によるゾーニング効果が発揮されたためと考えられる。すなわち、実施例1-2は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域を効果的に冷房することができる。
【0026】
実施例1-3では、
図3(d)に示すように、ゾーン6の全域に渡って、より高い冷却効果が確認される。これは、エアカーテン2の風速を5.0m/sに抑えたことで、エアカーテン2のゾーニング効果の維持に加え、エアカーテン2によるゾーン6の周囲の空気の巻き込みが抑制されたためと考えられる。すなわち、実施例1-3は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域をより効果的に冷房することができる。
【0027】
実施例1-4では、
図3(e)に示すように、ゾーン6の全域に渡って、さらに高い冷却効果が確認される。これは、エアカーテン2の風速を4.0m/sに抑えたことで、エアカーテン2のゾーニング効果の維持に加え、エアカーテン2によるゾーン6の周囲の空気の巻き込みがより抑制されたためと考えられる。すなわち、実施例1-3は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域をより効果的に冷房することができる。
【0028】
実施例1-5では、
図3(f)に示すように、ゾーン6の全域に渡って、より高い冷却効果が確認される。これは、エアカーテン2の風速を2.0m/sに抑えたことで、エアカーテン2のゾーニング効果の維持に加え、エアカーテン2によるゾーン6の周囲の空気の巻き込みがさらに抑制されたためと考えられる。すなわち、実施例1-5は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域をより効果的に冷房することができる。
【0029】
実施例1-6では、
図3(g)に示すように、ゾーン6の全域に渡って、より顕著な冷却効果が確認される。これは、ゾーン6に対し、より低温(15℃)の冷気を吐出したためと考えられる。すなわち、実施例1-6は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域をさらに効果的に冷房することができる。
【0030】
続いて、実施例1及び比較例1について、床Fから、0.5m、1m及び1.5mの高さでの、ゾーン6における水平平面上の温度分布から、各高さでの平均気温を算出した。
図4は、実施例1及び比較例1におけるゾーン6の内部の平均気温を示すグラフである。
【0031】
図4に示すように、実施例1-1~1-5において、外気温である33℃から、確かな冷却効果が確認される。なお、実施例1-2は、比較例1と平均気温上では同程度であるところ、高さ0.5m、1.0m及び1.5mでの平均気温に差異がない。すなわち、これは、冷却効果が、ゾーン6の全域に及んでいるためと考えられる。
【0032】
上述のように構成される実施例1は、壁を有する構造物の内部の所定区画であるゾーン6に対し空調するゾーン空調システム1を模した計算モデル1aであって、エアカーテン形成装置3と、空調装置8に繋がる吹き出し口7と、エアカーテン形成装置3を支持する支持体4とを備え、エアカーテン形成装置3は、上面視でゾーン6の境界に配置され、下方に向けて風を吐出することでエアカーテン2を形成し、吹き出し口7は、空調装置8からの冷気をゾーン6内に吹き出し、エアカーテン形成装置3による風の速度は、1m/s超6m/s以下である。
また、ゾーン6の上部に、天井部5が配置される。
よって、実施例1は、比較例1と比べ、ゾーニングされたゾーン6の内部全域を効果的に冷房することができる。また、エアカーテン2によるゾーニングは、物理的な壁である間仕切りを構築せず、作業員はエアカーテン2を通過することができる。従って、作業員の作業効率は維持される。
【0033】
また、実施例1は、吹き出し口7に、冷気の吐出方向を拡散させるシーリングディフューザ9を備える。
よって、ゾーン6の全域に冷気が拡散され、ゾーン6の内部全域が、より効果的に冷房される。
【0034】
[実施例2及び比較例2]
次に、ゾーン空調システム1等を用いた冷房の実地試験装置1bに係る実施例2(実施例2-1~2-4)及び本発明に属さない比較例2(比較例2-1~2-3)について説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
図5は、実地試験装置を示す寸法図である。
実施例2及び比較例2の実地試験装置1bは、
図5に示すように、一辺4m、吐出部3aまでの高さ2.7mの四角形状に配置された各エアカーテン形成装置3と、当該四角形の中央に配置された吹き出し口7とを備える。
また、実地試験装置1bは、所定広さの試験室内に設置され、試験室への投入熱量は、353W/m
2とされた。
【0036】
比較例2-1では、エアカーテン2が形成されず、温度20℃の冷気が風量1350m3/hで吐出された。
【0037】
比較例2-2では、エアカーテン2が形成されず、吹き出し口7から冷気が吐出されない一方、噴霧部10からミストが噴霧量200g/minで噴霧されるものとした。
【0038】
比較例2-3では、エアカーテン2の風速が2.2m/sとされた。また、吹き出し口7から冷気が吐出されず、噴霧部10からミストが噴霧量200g/minで噴霧されるものとした。
【0039】
実施例2-1では、エアカーテン2の風速が2.2m/sとされた。また、吹き出し口7から吐出される冷気が温度20℃、風量1350m3/hとされた。
【0040】
実施例2-2では、エアカーテン2の風速が2.2m/sとされた。また、吹き出し口7から吐出される冷気が温度20℃、風量1350m3/hとされた。また、実施例2-2の実地試験装置1bは、エアカーテン形成装置3に、エアカーテン2の形成方向に向けて、すなわち吐出部3aから下方に向けて延びるシート状のエアガイド3bを備える。
【0041】
実施例2-3では、エアカーテン2の風速が2.2m/sとされた。また、吹き出し口7から吐出される冷気が温度15℃、風量1070m3/hとされた。また、実施例2-3の実地試験装置1bは、実施例2-2と同様に、エアガイド3bを備える。
【0042】
実施例2-4では、エアカーテン2の風速が2.2m/sとされた。また、吹き出し口7から吐出される冷気が温度20℃、風量1350m3/hとされた。また、噴霧部10からミストが噴霧量200g/minで噴霧されるものとした。
【0043】
上記の各条件の下、実地試験装置1bが、ゾーン6内部を効果的に冷房できるか否かを三次元的な温度分布測定により検討した。
図6は、比較例2-1の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
図7は、比較例2-2の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
図8は、比較例2-3の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
図9は、実施例2-1の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
図10は、実施例2-2の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
図11は、実施例2-3の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
図12は、実施例2-4の温度測定結果を示す説明図であって、(a)は高さ1mでの水平平面上の温度分布、(b)は吹き出し口の直下で直交する2方向の垂直断面の温度分布である。
【0044】
比較例2-1では、
図6(a),(b)に示すように、吹き出し口7の直下において顕著な冷却効果が確認される。一方、ゾーン6の周縁付近に相当する箇所及び床F付近では、明確な冷却効果は確認されない。これは、エアカーテン2を形成しなかったことで、周囲の温度の高い空気がゾーン6に相当する空間に入り込み、吹き出し口7から吐出される冷気が、温度の高い空気によりゾーン6に相当する空間の全域を冷却する前に昇温するからと考えられる。すなわち、比較例2-1は、ゾーン6に相当する空間の内部全域を効果的に冷房することはできない。
【0045】
比較例2-2では、
図7(a),(b)に示すように、噴霧部10の直下において顕著な冷却効果が確認される。一方、ゾーン6の天井付近では、明確な冷却効果は確認されない。これは、ミストが自身の質量により噴霧直後から比較的速く下降するためと考えられる。また、噴霧されたミストによる床Fの結露が確認された。すなわち、比較例2-2は、ゾーン6に相当する空間の内部全域を効果的に冷房することができない。加えて、床Fの結露が、作業員の作業効率の低下に繋がる。
【0046】
比較例2-3では、
図8(a),(b)に示すように、ゾーン6の全域に渡って、顕著な冷却効果が確認される。これは、エアカーテン2によりゾーニングされることで、ゾーン6の内部にミストが閉じ込められたためと考えられる。一方、噴霧されたミストによる床Fの結露が確認された。すなわち、比較例2-3は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーニングされたゾーン6の内部全域を効果的に冷房することができる一方、床Fの結露により作業員の作業効率の低下に繋がる。従って、比較例2-3は、本発明に属していない。
【0047】
実施例2-1では、
図9(a),(b)に示すように、吹き出し口7の直下において顕著な冷却効果が確認される。また、ゾーン6の全域に渡って、確かな冷却効果が確認される。これは、エアカーテン2がゾーニング効果を発揮したためと考えられる。すなわち、実施例2-1は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域を効果的に冷房することができる。
【0048】
実施例2-2では、
図10(a),(b)に示すように、吹き出し口7の直下において顕著な冷却効果が確認される。また、実施例2-1よりもゾーン6の周縁部において、冷却効果が向上した。これは、エアガイド3bにより、エアカーテン2がより高いゾーニング効果を発揮し、ゾーン6の内部の冷房効率が向上したためと考えられる。すなわち、実施例2-2は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域をより効果的に冷房することができる。
【0049】
実施例2-3では、
図11(a),(b)に示すように、吹き出し口7の直下において顕著な冷却効果が確認される。また、ゾーン6の全域に渡って、顕著な冷却効果が確認される。これは、冷気の温度を低下させると共に風量を抑えたことで、冷気の冷却効率を向上させると共に、吐出された冷気がエアカーテン2に干渉して外気と混ざり合う影響を抑えたためと考えられる。すなわち、実施例2-3は、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域をさらに効果的に冷房することができる。
【0050】
実施例2-4では、
図12(a),(b)に示すように、吹き出し口7の直下において顕著な冷却効果が確認される。また、ゾーン6の全域に渡って、顕著な冷却効果が確認される。一方、ミストによる床Fの結露は確認されなかった。これは、冷気による冷却に、ミストの気化による冷却が加わり、ゾーン6の内部の空気の冷却効率が向上したことに加え、冷気の吐出がミストの気化を促したことで、床Fの結露が抑えられたためと考えられる。すなわち、実施例2-4は、作業員の作業効率を維持した上で、エアカーテン2及び天井部5によりゾーニングされたゾーン6の内部全域をより一層効果的に冷房することができる。
【0051】
上述のように構成される実施例2は、エアカーテン形成装置3と、空調装置8に繋がる吹き出し口7と、エアカーテン形成装置3を支持する支持体4と、天井部5とを備え、エアカーテン形成装置3は、天井部5及び吹き出し口7を上面視で囲むように配置され、下方に向けて風を吐出することでエアカーテン2を形成し、吹き出し口7は、空調装置8からの冷気を下方に向けて吹き出し、エアカーテン形成装置3による風の速度は、2m/s以上5.3m/s未満であることを特徴とする。
よって、実施例2は、エアカーテン2及び天井部5により外部と仕切られ、ゾーニングされたゾーン6の内部全域を効果的に冷房することができる。また、エアカーテン2によるゾーニングは、物理的な壁である間仕切りを構築せず、作業員はエアカーテン2を通過することができる。従って、作業員の作業効率は維持される。
【0052】
また、実施例2は、吹き出し口7に、冷気の吐出方向を拡散させるシーリングディフューザ9を備える。
よって、ゾーン6の全域に冷気が拡散され、ゾーン6の内部全域が、より効果的に冷房される。
【0053】
また、実施例2-4は、天井部5にミストを噴霧する噴霧部10を備える。
よって、冷気による冷却に、ミストの気化による冷却が加わり、ゾーン6の内部の空気の冷却効率が向上したことで、ゾーン6の内部全域がより一層効果的に冷房される。加えて、冷気の吐出がミストの気化を促すことで、ミストによる床Fの結露が抑えられるため、作業員の作業効率は維持される。
【0054】
また、実施例2-2,2-3は、エアカーテン2の形成方向に延びるエアガイド3bを備える。
よって、エアカーテン2がより高いゾーニング効果を発揮し、ゾーン6の内部の冷房効率を向上できる。
【0055】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、エアカーテン形成装置は、支持体の隣接する柱部の間にエアカーテンを形成可能であれば、その隣接する柱部の間に、単体で設けられても、複数設けられても良い。
また、天井部を構成する部材は、ビニールシートに限定されず、一般的な建材でも良い。さらに、空間の天井の一部が下方に向けて突出し、当該突出した部分をゾーン空調システムの天井部とする等しても良い。なお、天井部は、設けられなくても良い。
また、空調装置からは、暖気が送られても良い。すなわち、ゾーン空調システムは、暖房に用いられても良い。暖房の効果は冷房の場合と同様である(ミストを除く)。
また、吹き出し口は、ゾーンの内部を効果的に冷暖房できれば、その数及び配置箇所は限定されない。噴霧部についても同様である。
また、吹き出し口は、拡散手段を備えていなくても良い。
また、エアガイドの鉛直方向長さは、作業員の作業効率を維持できる範囲内であれば、任意に設定可能である。
【0056】
[変形例]
以下、エアカーテンの吹き出し方向が水平方向の発明(以下、変形例)の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図13は、変形例のゾーン空調システムを示す説明図である。なお、
図13に示される寸法は、後述する変形例計算モデルの説明のためであり、実際は任意の値を設定可能である。
ゾーン空調システム11は、工場等の壁を有する構造物の内部の所定区画であるゾーン60に設けられ、
図13に示すように、エアカーテン20及び天井部50によりゾーン60と外部とを仕切ることで、ゾーニングされたゾーン60の内部を効果的に空調(冷暖房)するために用いられる。
【0057】
ゾーン空調システム11は、吐出部30aより側方(水平方向)に向けて風を吐出し、吐出された風の風によりエアカーテン20を形成するエアカーテン形成装置30を4つ備える。各エアカーテン形成装置30は、ゾーン60の上面視での境界である四角形の各頂点にそれぞれ配置され、吐出部30aは、四角形の各辺を一方向になぞるようにエアカーテン20を形成する向きで設置される。エアカーテン形成装置30による風の速度(エアカーテン20の設定吹出風速)は、隣り合う他のエアカーテン形成装置30まで吐出部30aより吐出された風が到達し、エアカーテン20によって上面視でゾーン60が閉じた境界を形成可能な範囲で任意に設定可能である。また、各エアカーテン形成装置30は、エアカーテン20の形成を補助する目的で、吐出部30aの開口方向に向けて延びる、所定の水平方向長さのエアガイド30bを備える。ゾーン空調システム11は、4つのエアカーテン形成装置30により形成されるエアカーテン20と、ビニールシート等を用いて設けられ、エアカーテン形成装置30により形成される四角形と同サイズかつ同型状の天井部50とにより、直方体状のゾーン60を形成する。
なお、構造物の壁がゾーン60の境界の一部となる場合、エアカーテン形成装置30は、ゾーン60の境界における壁以外の部分に配置される。すなわち、ゾーン60の境界はエアカーテン20と構造物の壁との組み合わせで構成されても良い。この場合、エアカーテン20の風速は、上面視でゾーン60が閉じた境界を形成可能な範囲で任意に設定される。
【0058】
また、ゾーン空調システム11は、天井部50に、ゾーン60を空調するための冷気又は暖気を吐出する吹き出し口7を備える。吹き出し口7は、空調装置8に配管されており、任意の温度の冷気又は暖気を、任意の風速又は風量で吐出可能である。吹き出し口7は、天井部50の中央近傍に、冷気又は暖気を下方に向けて吐出可能に3つ並設される。
【0059】
以下、ゾーン空調システム11を模した変形例計算モデルを用いた計算結果を示し、変形実施例1(変形実施例1-1~1-3)及び変形例に属さない変形比較例1について説明する。なお、変形例は、これらの変形実施例に限定されるものではない。
【0060】
変形実施例1及び変形比較例1の変形例計算モデルは、
図13に示すように、一辺5m正方形の各頂点にエアカーテン形成装置30が配置されるものとした。また、計算では、変形例計算モデルは、天井高さが8mの空間の内部に設置されることとした。また、吹き出し口7からは、温度25℃の冷気(変形実施例1-1及び変形比較例1)又は暖気(変形実施例1-2~1-3)が、風量600m
3/hで吐出されるものとした。
【0061】
変形比較例1では、天井部50が設けられず、エアカーテン20が風量4000m3/hで形成されるものとした。また、夏季を想定し、空間の天井自体の温度が60℃とされた。また、空間内の温度が、床F付近を32℃とし、空間の天井付近を35℃とし、床Fから空間の天井にかけて徐々に上昇するものとされた。
【0062】
変形実施例1-1では、エアカーテン20が風量4000m3/hで形成されるものとした。また、天井部50が高さ3mに配置されるものとした。また、夏季を想定し、空間の天井自体の温度が60℃とされた。また、空間内の温度が、床F付近を32℃とし、空間の天井付近を35℃とし、床Fから空間の天井にかけて徐々に上昇するものとされた。
【0063】
変形実施例1-2では、天井部50が設けられず、エアカーテン20が風量4000m3/hで形成されるものとした。また、冬季を想定し、空間の天井自体の温度が40℃とされた。また、空間内の温度が、床F付近を17℃とし、空間の天井付近を20℃とし、床Fから空間の天井にかけて徐々に上昇するものとされた。
【0064】
変形実施例1-3では、エアカーテン20が風量4000m3/hで形成されるものとした。また、天井部50が高さ3mに配置されるものとした。また、冬季を想定し、空間の天井自体の温度が40℃とされた。また、空間内の温度が、床F付近を17℃とし、空間の天井付近を20℃とし、床Fから空間の天井にかけて徐々に上昇するものとされた。
【0065】
上記の各条件の下、計算により、ゾーン60の内部を効果的に冷房又は暖房できるか否かを検討した。
図14は、変形例のゾーン空調システムを模した変形例計算モデルを用いた温度計算結果を示す説明図であって、(a)は変形比較例1の計算結果、(b)は変形実施例1-1の計算結果、(c)は変形実施例1-2の計算結果、(d)は変形実施例1-3の計算結果である。なお、温度計算結果で示す温度分布は、床からの高さ1mでの水平平面上の温度分布を示す。また、
図14(a)及び(b)における温度分布の下限は28℃であり、上限は35℃である。また、
図14(c)及び(d)における温度分布の下限は17℃であり、上限は25℃である。加えて、
図14では、温度分布を視認し易くするため、天井部の記載を省略している。
【0066】
変形比較例1では、
図14(a)に示すように、吹き出し口7の直下において顕著な冷却効果が確認される。一方、吹き出し口7の直下以外では、明確な冷却効果は確認されない。これは、エアカーテン20の風流及び吹き出し口7からの冷気の吐出により、ゾーン60の上方に、床Fに向かう渦流が生じ、ゾーン60の上方の熱気をゾーン60内に巻き込んだためと考えられる。すなわち、比較例1は、エアカーテン20によりゾーニングされたゾーン60の内部全域を冷房することはできない。
【0067】
変形実施例1-1では、
図14(b)に示すように、ゾーン60の全域に渡って、明確な冷却効果が確認された。これは、エアカーテン20及び天井部50が、一定のゾーニング効果を実現したと共に、天井部50により、エアカーテン20の風流及び吹き出し口7からの冷気の吐出により生じる床Fに向かう渦流の発生を抑えたためと考えられる。すなわち、変形実施例1-1は、エアカーテン20及び天井部50によりゾーニングされたゾーン60の内部全域を効果的に冷房することができる。
【0068】
変形実施例1-2では、
図14(c)に示すように、ゾーン60の全域に渡って、暖房効果が確認された。これは、エアカーテン20が、一定のゾーニング効果を実現したと共に、エアカーテン20の風流及び吹き出し口7からの暖気の吐出により、ゾーン60の上方に、床Fに向かう渦流が生じ、ゾーン60の上方の熱気をゾーン60内に巻き込んだためと考えられる。すなわち、変形実施例1-2は、エアカーテン20によりゾーニングされたゾーン60の内部全域を効果的に暖房することができる。
【0069】
変形実施例1-3では、
図14(d)に示すように、ゾーン60の全域に渡って、明確な冷却効果が確認された。これは、エアカーテン20及び天井部50が、一定のゾーニング効果を実現したためと考えられる。すなわち、変形実施例1-3は、エアカーテン20及び天井部50によりゾーニングされたゾーン60の内部全域をより効果的に暖房することができる。
【0070】
上述のように構成される変形実施例1は、壁を有する構造物の内部の所定区画であるゾーン60に対し空調するゾーン空調システム1を模した計算モデルであって、エアカーテン形成装置30と、空調装置8につながる吹き出し口7とを備え、エアカーテン形成装置30は、上面視でゾーン60の境界である四角形の各頂点に配置され、水平方向に風を吐出することで、境界にエアカーテン20を形成し、吹き出し口7は、空調装置8からの冷気又は暖気をゾーン60内に吹き出す。
また、変形実施例1は、エアカーテン形成装置30は、エアカーテン20の形成方向に延びるエアガイド30bを備える。
よって、変形実施例1は、エアカーテン20、又はエアカーテン20及び天井部50によりゾーニングされたゾーン60の内部全域を効率的に冷房又は暖房することができる。また、エアカーテン20によるゾーニングは、物理的な壁を構築せず、作業員はエアカーテン20を通過することができる。従って、作業員の作業効率は維持される。
【0071】
また、変形実施例1-1及び1-3は、ゾーン60の上部には、天井部50が配置される。
よって、天井部50が上方からゾーン60への外気の侵入を防ぎ、ゾーン60の内部全域をより効率的に冷房又は暖房することができる。
【0072】
以上は、変形例を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、ゾーン空調システムは、上面視でゾーン6の境界にエアカーテン形成装置が設けられていれば、設置個所及び設置数は任意に設定できる。
また、天井部の大きさは、上面視でのゾーンの境界と同等以上の大きさであれば、任意に設定可能である。
また、天井部を構成する部材は、ビニールシートに限定されず、一般的な建材でも良い。さらに、空間の天井の一部が下方に向けて突出し、当該突出した部分をゾーン空調システムの天井部とする等しても良い。
また、吹き出し口は、ゾーンの内部を効果的に冷暖房できれば、その数及び配置箇所は限定されない。さらに、吹き出し口の先端に吐出される冷気又は暖気を拡散させる拡散手段を備えても良い。
また、エアガイドの水平方向長さは、作業員の作業効率を維持できる範囲内であれば、任意に設定可能である。
また、変形例のゾーン空調装置11は、適宜、上述のゾーン空調システム1と同様の変更例を有する。
【0073】
なお、エアカーテンの吹き出し方向が水平方向の発明が次に示される。
(1)壁を有する構造物の内部の所定区画であるゾーンに対し空調するゾーン空調システムであって、
エアカーテン形成装置と、空調装置につながる吹き出し口とを備え、
前記エアカーテン形成装置は、上面視で前記ゾーンの境界に配置され、水平方向に風を吐出することで、前記境界における前記壁以外の部分にエアカーテンを形成し、
前記吹き出し口は、前記空調装置からの冷気又は暖気を前記ゾーン内に吹き出すことを特徴とするゾーン空調システム。
(2)前記ゾーンの上部には、天井部が配置されることを特徴とする上記(1)に記載のゾーン空調システム。
(3)前記エアカーテン形成装置は、前記風の吐出方向に延びるエアガイドを備えることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のゾーン空調システム。
【符号の説明】
【0074】
1,11・・ゾーン空調システム、2,20・・エアカーテン、3,30・・エアカーテン形成装置、3a,30a・・吐出部、3b,30b・・エアガイド、5,50・・天井部、6,60・・ゾーン、7・・吹き出し口、8・・空調装置、9・・シーリングディフューザ(拡散手段)、10・・噴霧部。