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特開2022-171311ボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容した水性ボールペン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171311
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容した水性ボールペン
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20221104BHJP
   B43K 7/01 20060101ALI20221104BHJP
   B43K 1/08 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C09D11/18
B43K7/01
B43K1/08 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077893
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】森垣 結衣
(72)【発明者】
【氏名】名渕 由弦
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA10
2C350KC11
4J039BE02
4J039CA03
4J039EA42
4J039EA44
4J039GA27
(57)【要約】
【課題】 金属製のボールを備えたボールペンに適用する水性インキ組成物において、初筆性能に優れ、長期間に亘って保管された後であっても、書き出し時にカスレや線飛び等の筆記不良を生じることなく良好な筆跡を形成でき、さらに滑らかな筆記感を奏するボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容したボールペンを提供する。
【解決手段】 ペン先として、チップ本体と、前記チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備えてなるボールペンに収容される水性インキ組成物であって、少なくとも染料と、特定のベンゾトリアゾール系化合物と、特定のナフタレンジスルホン酸系化合物及び/又はその塩と、水とを含んでなるボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容した水性ボールペン。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先として、チップ本体と、前記チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備えてなるボールペンに収容される水性インキ組成物であって、少なくとも染料と、下記式(1)で示される化合物と、下記式(2)で示される化合物及び/又はその塩と、水とを含んでなるボールペン用水性インキ組成物。
【化1】
(式中、Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシ基、又はニトロ基である)
【化2】
〔式中、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、アミノ基、又は炭素数1~4のアルキル置換アミノ基である(但し、Y及びYが共に、水素原子である場合は除く)〕
【請求項2】
前記インキ組成物の総質量に対する、前記式(1)で示される化合物の含有率をPとするとき、前記Pが0.1~3質量%である請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
【請求項3】
前記インキ組成物の総質量に対する、前記式(2)で示される化合物及び/又はその塩の含有率をPとするとき、前記Pが0.1~3質量%である請求項1又は2記載のボールペン用水性インキ組成物。
【請求項4】
前記P及びPに関して、
0.5≦P/P≦5
を満たす請求項3記載のボールペン用水性インキ組成物。
【請求項5】
前記式(1)におけるXが、水素原子又はメチル基であり、且つ、前記式(2)におけるY及びYが、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、又はアミノ基である(但し、Y及びYが共に、水素原子である場合は除く)請求項1乃至4のいずれか一項に記載のボールペン用水性インキ組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインキ組成物を収容してなり、且つ、ペン先として、チップ本体と、前記チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備えてなる水性ボールペン。
【請求項7】
前記ボールペンが、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、前記インキ吸蔵体には前記インキ組成物が含侵されてなり、且つ、前記インキ吸蔵体から前記ボールペンチップへインキを誘導するためのインキ誘導芯を備えてなる中詰式ボールペンである請求項6記載の水性ボールペン。
【請求項8】
前記チップ本体が合成樹脂からなり、且つ、ボール受け座が前記チップ本体の内部に一体に形成されてなる請求項6又は7記載の水性ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容した水性ボールペンに関する。さらに詳細には、長期間に亘って保管された後であっても、書き出し時にカスレや線飛び等の筆記不良を生じることなく良好な筆跡を形成できると共に、筆記感が滑らかであるボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容した水性ボールペン関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を主溶媒としたインキ(水性インキ)が知られ、低臭気で安全性が高いことから盛んに利用されている。水性インキはボールペン等の筆記具に収容されて用いられることがあり、水性インキを収容した筆記具には、書き出し時に、筆跡にカスレや線飛び等の筆記不良が発生しないことが求められる。そこで、書き出し時の筆記不良を抑制する検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、着色剤と、水可溶性有機溶剤と、水と、特定の中性多糖類と、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドの、一種又は二種とを含有してなる水性ボールペン用インキ組成物が開示されている。
上記のインキ組成物は、書き出し時のインキ流出性に優れる、即ち、初筆性能に優れるものであるが、上記のインキ組成物を収容した水性ボールペンを長期間に亘って保管した場合、初筆性能が不十分であり、特に、筆記先端部を上向きにした状態で長期間に亘って保管した場合、筆記不良を生じ易い傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-145581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、金属製のボールを備えたボールペンに適用する水性インキ組成物において、初筆性能に優れ、長期間に亘って保管された後であっても、書き出し時にカスレや線飛び等の筆記不良を生じることなく良好な筆跡を形成でき、さらに滑らかな筆記感を奏するボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容した水性ボールペンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ペン先として、チップ本体と、前記チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備えてなるボールペンに収容される水性インキ組成物であって、少なくとも染料と、下記式(1)で示される化合物と、下記式(2)で示される化合物及び/又はその塩と、水とを含んでなるボールペン用水性インキ組成物を要件とする。
【化1】
(式中、Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシ基、又はニトロ基である)
【化2】
〔式中、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、アミノ基、又は炭素数1~4のアルキル置換アミノ基である(但し、Y及びYが共に、水素原子である場合は除く)〕
また、前記インキ組成物の総質量に対する、前記式(1)で示される化合物の含有率をPとするとき、前記Pが0.1~3質量%であること、前記インキ組成物の総質量に対する、前記式(2)で示される化合物及び/又はその塩の含有率をPとするとき、前記Pが0.1~3質量%であること、前記P及びPに関して、0.5≦P/P≦5を満たすこと、前記式(1)におけるXが、水素原子又はメチル基であり、且つ、前記式(2)におけるY及びYが、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、又はアミノ基である(但し、Y及びYが共に、水素原子である場合は除く)ことを要件とする。
さらには、前記インキ組成物を収容してなり、且つ、ペン先として、チップ本体と、前記チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備えてなる水性ボールペン、前記ボールペンが、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、前記インキ吸蔵体に前記インキ組成物が含侵されてなり、且つ、前記インキ吸蔵体から前記ボールペンチップへインキを誘導するためのインキ誘導芯を備えてなる中詰式ボールペンであること、前記チップ本体が合成樹脂からなり、且つ、ボール受け座が前記チップ本体の内部に一体に形成されてなることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、金属製のボールを備えたボールペンに適用される水性インキ組成物において、ボール近傍でインキが十分に保持されることにより初筆性能に優れ、長期間に亘って保管された後であっても、書き出し時におけるカスレや線飛び等の筆記不良を抑制し、特に、筆記先端部を上向きにした状態(正立状態)で長期間に亘って保管した場合であっても良好な筆跡を形成できると共に、滑らかな筆記感を奏するボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容した水性ボールペンを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明によるボールペン用水性インキ組成物(以下、「水性インキ組成物」、「インキ組成物」、又は「インキ」と表すことがある)は、少なくとも染料と、上記式(1)で示される化合物と、上記式(2)で示される化合物及び/又はその塩と、水とを含んでなり、ペン先として、チップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備えてなるボールペンに適用される。以下に、本発明による水性インキ組成物を構成する各成分について説明する。
【0008】
本発明によるインキ組成物は、着色剤として染料を含有する。染料としては水性系媒体に溶解又は分散可能なものであれば特に限定されるものではなく、酸性染料、塩基性染料、直接染料等が挙げられる。
【0009】
酸性染料としては、例えば、ナフト―ルグリーンB(C.I.10020)、ナフト―ルイエローS(C.I.10316)、アシッドイエロー9(C.I.13015)、メタニルイエロー(C.I.13065)、オレンジI(C.I.14600)、ポンソーSX(C.I.14700)、オレンジII(C.I.15510)、サンセットイエローFCF(C.I.15985)、ニューコクシン(C.I.16255)、ファーストアシッドマゼンタ(C.I.17200)、アシッドファーストレッド3G(C.I.18050)、ファーストライトイエロー3G(C.I.18820)、タートラジン(C.I.19140)、レゾルシンブラウン(C.I.20170)、アシッドブルー29(C.I.20460)、ナフトールブルーブラック(C.I.20470)、アシッドオレンジ56(C.I.22895)、アシッドイエロー42(C.I.22910)、ギネアグリーンB(C.I.42085)、ファーストグリーンFCF(C.I.42053)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、アシッドブルー1(C.I.42045)、ブリリアントブルーG(C.I.42655)、ブリリアントブルーP-1(C.I.42735)、ウォーターブルー(C.I.42755)、エリオグリーンB(C.I.44025)、アシッドレッド(C.I.45100)、ビオラミンR(C.I.45190)、ウラニン(C.I.45350)、エオシン(C.I.45380)、フロキシンB(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、ピラニンコンク(C.I.59040)、アリズロールパープル(C.I.60730)、アリザリンシアニングリーンF(C.I.61570)、インジゴカルミン(C.I.73015)等を例示できる。
【0010】
塩基性染料としては、例えば、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレット(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジ(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)、ビクトリアピュアブルー(C.I.42595)等を例示できる。
【0011】
直接染料としては、例えば、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー(C.I.24400)、ダイレクトバイオレット51(C.I.27905)、ダイレクトブラック38(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトブラック19(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等を例示できる。
【0012】
上記の染料は一種、又は二種以上を併用して用いることができる。
また、インキ組成物の総質量に対する染料の含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%の範囲である。染料の含有率が50質量%を超えると、インキ組成物を収容したボールペンのインキ吐出安定性が低下し、カスレや線飛びなどの筆記不良が発生し易くなる。一方、含有率が1質量%未満では、ボールペンとしての好適な筆跡濃度が得られ難くなる。
【0013】
本発明によるインキ組成物は、下記式(1)で示される化合物を含んでなる。式(1)で示される化合物は、ベンゾトリアゾール系化合物である。
【化3】
(式中、Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシ基、又はニトロ基である)
上記の化合物は、金属類に対して吸着して被膜を形成する性質を有しており、インキ組成物を収容するボールペンに備えられる金属製のボールペンチップ(以下、「チップ」と表すことがある)、特に、金属製のチップ本体やボールの腐食を抑制する防錆剤としての効果を奏する。
【0014】
インキ組成物の総質量に対する、式(1)で示される化合物の含有率(以下、「P」と表すことがある)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.3~2質量%、さらに好ましくは0.3~1質量%の範囲である。式(1)で示される化合物の含有率が上記の範囲内にあることにより、金属製のボールペンチップの腐食を抑制する効果に優れる。
インキ組成物中における、金属製のチップ本体やボールの腐食を抑制する効果に優れることから、Xとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0015】
本発明によるインキ組成物は、上記式(1)で示される化合物と、さらに下記式(2)で示される化合物又はその塩とを併用することを特徴とするものである。具体的には、インキ組成物中に、式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物又はその塩を含むことにより、インキ組成物の、金属製のボールペンチップ、特に、金属製のボールに対する親和性を向上させる効果を発現させることができる。これにより、インキをボールペンチップ先端に備えられるボール近傍に誘導し易くなると共に、インキをボール近傍で十分に保持させることができるため、初筆性能に優れ、カスレや線飛び等の筆記不良を抑制して良好な筆跡を形成することができ、さらに、滑らかな筆記感を奏するインキ組成物とすることができる。また、この効果は長期間に亘って維持されるため、特に、本発明によるインキ組成物を収容したボールペンを、筆記先端部を上向きにした状態で長期間に亘って保管した場合であっても、良好な筆跡を形成することができると共に、滑らかな筆記感を奏し、ボールペンは優れた筆記性能を示す。
【0016】
本発明によるインキ組成物は、下記式(2)で示される化合物及び/又はその塩を含んでなる。下記式(2)で示される化合物は、ナフタレンジスルホン酸系化合物である。
【化4】
〔式中、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、アミノ基、又は炭素数1~4のアルキル置換アミノ基である(但し、Y及びYが共に、水素原子である場合は除く)〕
式(2)で示される化合物の塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等の塩が挙げられる。
また、本発明によるインキ組成物において、式(2)で示される化合物とその塩とを併用して用いることもできる。
【0017】
式(2)で示される化合物としては、例えば、
4-ヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-メチルナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-エチルナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-n-ブチルナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-エトキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-アミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-メチルアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-n-プロピルアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-(N,N-ジエチルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-(N-メチル-N-エチルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジメチルナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジ-n-プロピルナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジメトキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジ-tert-ブトキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジ-エチルアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジ-(N,N-ジメチルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4,5-ジ-(N-メチル-N-エチルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-ヒドロキシ-5-メチルナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-ヒドロキシ-5-エトキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-ヒドロキシ-5-エチルアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-メチル-5-tert-ブチルナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-メチル-5-メトキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-メチル-5-アミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-メチル-5-n-プロピルアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-エチル-5-(N,N-ジエチルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-エチル-5-(N-メチル-N-エチルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-メトキシ-5-アミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-メトキシ-5-メチルアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-エトキシ-5-(N,N-ジメチルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-n-プロポキシ-5-メチルアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-アミノ-5-メチルアミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-アミノ-5-(N,N-ジメチルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、
4-アミノ-5-(N,N-ジ-n-プロピルアミノ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸
等を例示できる。
【0018】
本発明によるインキ組成物は、上述の通り、式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物又はその塩とを併用するものであり、インキ組成物の、金属製のチップ本体やボールに対する親和性を向上させ、インキをペン先(筆記先端部)へ誘導させ易くなり、さらにボール近傍でインキを十分に保持させることができるようになる。これにより、インキ組成物を収容したボールペンを、長期間に亘って保管した後であっても、初筆性能に優れると共に、滑らかな筆記感を奏するインキ組成物とすることができる。これは、式(1)で示されるベンゾトリアゾール系化合物の有する金属類に対する吸着性と、式(1)で示される化合物と式(2)で示される化合物又はその塩との相互作用によるものと推察される。つまり、式(1)で示される化合物が金属製のチップ本体やボールに吸着し、式(1)で示される化合物に式(2)で示される化合物又はその塩が作用することにより、両化合物が金属製のチップ本体やボールに吸着し、インキ組成物の、金属製のチップ本体やボールに対する親和性を向上させるものと推察される。その結果、インキ組成物をペン先へ誘導し易くなり、ボール近傍においてインキが十分に保持されるようになるため、長期間に亘って保管された後であっても、優れた初筆性能を有すると共に、滑らかな筆記感を奏するインキ組成物とすることができる。
【0019】
インキ組成物の総質量に対する、式(2)で示される化合物及び/又はその塩の含有率(以下、「P」と表すことがある)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.5~1質量%の範囲である。式(2)で示される化合物及び/又はその塩の含有率が上記の範囲内にあることにより、式(1)で示される化合物と適切に相互作用し易くなる。
【0020】
本発明において、式(1)で示される化合物の含有率(P)と、式(2)で示される化合物及び/又はその塩の含有率(P)との比(P/P)は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
0.5≦P/P≦5 (3)
/Pに関して、より好ましくは1≦P/P≦4を満たすことである。P/Pが上記の範囲内にあることにより、インキ組成物の、金属製のチップ本体やボールに対する親和性を向上させる効果に優れ、初筆性能により優れるインキ組成物とすることができる。
【0021】
また、式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物又はその塩とが相互に作用し易くなり、初筆性能を向上させることが容易となることから、式(1)で示される化合物として、Xが水素原子又はメチル基である化合物と、式(2)で示される化合物又はその塩として、Y及びYが、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、又はアミノ基である(但し、Y及びYが共に、水素原子である場合は除く)化合物又はその塩との組合せが好ましい。より好ましい組合せとしては、式(1)で示される化合物として、Xが水素原子又はメチル基である化合物と、式(2)で示される化合物又はその塩として、Y及びYの一方がアミノ基であり、他方がヒドロキシ基である化合物又はその塩との組合せである。
【0022】
本発明によるインキ組成物は、水を含んでなる。
水としては特に制限されるものではなく、例えば、水道水、イオン交換水、限外ろ過水、及び蒸留水等を例示できる。
インキ組成物の総質量に対する水の含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは30~80質量%、より好ましくは40~70質量%の範囲である。
【0023】
本発明によるインキ組成物には、上記した必須成分のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を配合させることができる。
【0024】
本発明によるインキ組成物には、増粘剤を配合させることができる。増粘剤を配合させることにより、良好な経時安定性を有するインキ組成物とすることができる。
増粘剤としては、従来知られている物質を用いることが可能であるが、インキ組成物に剪断減粘性を付与できる物質(剪断減粘性付与剤)を用いることが好ましい。剪断減粘性付与剤を用いたインキ組成物は、静置状態、或いは応力の低いときには高粘度で流動し難く、外部から応力が加わった際に容易に低粘度化するため、非筆記時には、インキの漏出を防止したり、インキの分離や逆流を防止したりすることができ、筆記時には、ペン先からのインキ吐出安定性を良好とすることが容易となる。とりわけ、ペン先としてボールペンチップを備えた形態の筆記具(ボールペン)にこのようなインキ組成物を用いた際には、剪断応力が加わらない静置時には高粘度であるため、ボールペン内に安定的に保持されており、筆記時にはボールの回転によりインキ組成物に強い剪断応力が加わり、ボール近傍のインキ組成物がより低粘度化し易くなるため、インキ吐出安定性を良好とすることができる。
本発明によるインキ組成物が増粘剤を含む場合、インキ組成物の総質量に対する増粘剤の含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~20質量%の範囲である。
【0025】
剪断減粘性付与剤としては、例えば、水溶性多糖類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万~15万の重合体、ポリ-N-ビニルカルボン酸アミド架橋物、ベンジリデンソルビトール及びその誘導体、ベンジリデンキシリトール及びその誘導体、アルカリ増粘型アクリル樹脂、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8~12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示できる。
剪断減粘性付与剤は一種、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0026】
水溶性多糖類としては、例えば、キサンタンガム、ウェランガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、マクロホモプシスガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量が約100万~800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物等を例示できる。
【0027】
本発明によるインキ組成物には、界面活性剤を配合させることができ、インキ組成物の表面張力を適切な範囲に調整することができる。
界面活性剤には、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などがあるが、何れも好適に用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレン結合を構造中に有する界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を例示でき、これらの界面活性剤は、インキ組成物の成分や用途などに応じて適切に選択される。
本発明によるインキ組成物が界面活性剤を含む場合、インキ組成物の総質量に対する界面活性剤の含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.05~1質量%の範囲である。
【0028】
本発明によるインキ組成物には、pH調整剤を配合させることができ、インキ組成物のpHを適切な範囲に調整することができる。pH調整剤としては、各種の酸性物質や塩基性物質を用いることができる。
酸性物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等を例示できる。
塩基性物質としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム等を例示でき、また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類を適用することもできる。
本発明によるインキ組成物がpH調整剤を含む場合、インキ組成物の総質量に対するpH調整剤の含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.5~2質量%の範囲である。
【0029】
本発明によるインキ組成物には、水と相溶性のある水溶性有機溶剤を配合させることができ、ペン先からの水分蒸発を抑制することができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドン等を例示できる。
水溶性有機溶剤は一種、又は二種以上を併用して用いることができる。
本発明によるインキ組成物が水溶性有機溶剤を含む場合、インキ組成物の総質量に対する水溶性有機溶剤の含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~25質量%の範囲である。水溶性有機溶剤の含有率が40質量%を超えるとインキ粘度が高くなり易く、インキ組成物を収容したボールペンのインキ吐出性が低下し、カスレや線飛び等の筆記不良を生じ易くなる。一方、配合割合が1質量%未満では水分蒸発を抑制する効果に乏しくなる。
【0030】
本発明によるインキ組成物には、例えば、アルキッド樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂を配合させることができ、紙面への固着性及び粘性を付与することもできる。
水溶性樹脂は一種、又は二種以上を併用して用いることができる。
本発明によるインキ組成物が水溶性樹脂を含む場合、インキ組成物の総質量に対する水溶性樹脂の含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは1~30質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲である。
【0031】
本発明によるインキ組成物には、その他必要に応じて、各種添加剤を配合させることもできる。
添加剤としては、例えば、
ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、
石炭酸、1,2-ベンゾチアゾリン3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤又は防黴剤、
アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、α-トコフェロール、カテキン類、合成ポリフェノール、コウジ酸、アルキルヒドロキシルアミン、オキシム誘導体、α-グルコシルルチン、α-リポ酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素等の気泡吸収剤、
還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤のほか、
消泡剤、分散剤、比重調整剤等を例示できる。
また、上記した塩基性物質を、式(2)で示される化合物の中和剤として配合させることもできる。
【0032】
本発明によるインキ組成物には、潤滑剤を配合させることもできる。潤滑剤は、チップ本体内部に設けられるボール受け座と、チップ本体の前端に備えられるボールとの潤滑性を向上させて、ボール受け座の摩耗を容易に防止することができ、筆記感を向上させることができるものである。
潤滑剤としては、例えば、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、並びにそれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、及びアルカノールアミン塩等のリン酸エステル系界面活性剤等を例示できる。
【0033】
本発明によるインキ組成物を、金属製のボール受け座が設けられるチップ本体と、金属製のボールとからなるボールペンチップを備えるボールペンに適用する場合には、潤滑剤としてリン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。
リン酸エステル系界面活性剤は、リン酸基が金属類に対して吸着し易い性質を有するため、リン酸エステル系界面活性剤を含むインキ組成物を上記のボールペンに適用すると、リン酸エステル系界面活性剤がボール及びボール受け座に吸着して、ボール表面及びボール受け座の表面にリン酸エステル系界面活性剤からなる潤滑層を形成し、ボールとボール受け座との間の潤滑性を向上させてボールを円滑に回転させることができる。そして、ボール受け座の摩耗を抑制して、書き味等の筆記感を良好とすることができる。
【0034】
本発明によるインキ組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、従来知られている任意の方法を用いることができる。具体的には、上記の各成分を配合した混合物を、プロペラ攪拌、ホモディスパー、若しくはホモミキサー等の各種攪拌機で攪拌することにより、又はビーズミル等の各種分散機等で分散することにより、インキ組成物を製造することができる。
【0035】
本発明の水性インキ組成物において、粘度特性は特に限定されるものではなく、例えば、高剪断減粘性のインキ組成物(ゲルインキ)、低粘度で低剪断減粘性のインキ組成物、低粘度で非剪断減粘性のインキ組成物(ニュートニアンインキ)等の粘度特性を有するインキ組成物を用いることができ、これらの中でも、低粘度のインキ組成物が好適に用いられる。
本発明によるインキ組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、20℃の環境下において、回転数20rpmの条件で測定した場合、好ましくは1~30mPa・s、より好ましくは1~20mPa・s、さらに好ましくは1~10mPa・sの範囲である。粘度が上記の範囲内にあることにより、ボールペンのペン先からのインキ吐出性が安定であり、カスレや線飛び等の筆記不良を抑制して良好な筆跡を形成できるインキ組成物とすることが容易となる。
なお、粘度は、E型回転粘度計〔東機産業(株)製、製品名:RE-85L、コーン型ローター:標準型(1°34′×R24)〕を用いて、インキ組成物を20℃の環境下に置いて測定した値である。
【0036】
本発明によるインキ組成物の表面張力は、特に限定されるものではないが、20℃の環境下において、好ましくは20~50mN/m、より好ましくは25~45mN/mの範囲である。表面張力が上記の範囲内にあることにより、筆記線の滲みや、紙面への裏抜けを抑制することが容易であると共に、インキの紙面に対する濡れ性を向上させることができる。
なお、表面張力は、表面張力計測器〔協和界面科学(株)製、製品名:DY-300〕を用いて、インキを20℃の環境下に置いて、白金プレートを用いた垂直平板法により測定した値である。
【0037】
本発明によるインキ組成物のpHは、特に限定されるものではないが、好ましくは6~11、より好ましくは7~10の範囲である。pHが上記の範囲内にあることにより、インキ組成物中における式(2)で示される化合物又はその塩の溶解安定性に優れ、また、インキによる金属製のボールペンチップの腐食を防止し易くなる。
なお、pHは、pHメーター〔東亜ディーケーケー(株)製、製品名:IM-40S〕を用いて、インキを20℃の環境下に置いて測定した値である。
【0038】
本発明によるインキ組成物は、ペン先として、チップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップと、インキ充填機構とを備えたボールペンに収容されて用いられる。
【0039】
ボールペンチップとしては、例えば、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部に金属製のボールを抱持してなるチップ、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部に金属製のボールを抱持してなるチップ、金属又は合成樹脂製チップ本体の内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、上記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を例示できる。
【0040】
ボールの材質としては、金属製であれば特に限定されるものではなく、例えば、超硬合金(超硬)やステンレス鋼等を例示できる。
ボールの直径(以下、「ボール径」と表すことがある)は、一般に0.1~3mm、好ましくは0.3~2mm、より好ましくは0.3~1mmのものが適用できる。
【0041】
インキ充填機構としては、例えば、インキ組成物を充填することのできるインキ収容管を例示できる。
【0042】
インキ収容管としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体や、金属製管状体が用いられる。
上記のチップを直接、または接続部材を介して連結させたインキ収容管に、本発明によるインキ組成物を充填することにより、ボールペンレフィル(以下、「レフィル」と表すことがある)を形成することができる。このレフィルを軸筒内に収容することでボールペンを形成することができる。
【0043】
インキ収容管に充填されるインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。インキ逆流防止体としては、液栓又は固体栓が挙げられる。
液栓は不揮発性液体及び/又は難揮発性液体からなり、例えば、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、及び脂肪酸変性シリコーンオイル等を例示できる。
不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は一種、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0044】
不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましい。
増粘剤としては、例えば、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイト等の粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、及びステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、並びにセルロース系化合物等を例示できる。
【0045】
固体栓としては、例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、及びポリメチルペンテン製等の固体栓を例示できる。
インキ逆流防止体として、上記した液栓と固体栓を併用して用いることもできる。
【0046】
また、軸筒自体をインキ充填機構として、軸筒の前端部にチップを装着すると共に、軸筒内に直接インキを充填することでボールペンを形成することもできる。
【0047】
ペン先として、チップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップと、インキ充填機構とを備えたボールペンは、さらに、インキ充填機構に充填されるインキ組成物をペン先に供給するためのインキ供給機構を備えていてもよい。
【0048】
インキ供給機構としては特に限定されるものではなく、例えば、(1)繊維束等からなるインキ誘導芯をインキ流量調節体として備え、インキをペン先に供給する機構、(2)櫛溝状のインキ流量調節体を備え、これを介在させてインキをペン先に供給する機構、(3)多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ充填機構からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を介して、インキをペン先に供給する機構等が挙げられる。
ペン芯の材質としては、多数の円盤体を櫛溝状とした構造に射出成形できる合成樹脂であれば特に制限されるものではない。合成樹脂としては、例えば、汎用のポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等を例示できる。特に、成形性が高く、ペン芯性能を得られ易いことから、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)が好適に用いられる。
【0049】
ボールペンがインキ供給機構を備えてなる場合、インキ充填機構としては、インキを直に充填する構成のものや、インキを充填できるインキ収容体又はインキ吸蔵体を備えるものを用いることができる。
【0050】
インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させた繊維集束体であり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40~90%の範囲になるように調整して構成されたものである。
【0051】
さらに、インキ充填機構は、着脱可能な構造としてインキカートリッジ形態とすることもできる。この場合、ボールペン本体が収容するインキを使い切った後に、新たなカートリッジと取り替えることにより使用することができる。
インキカートリッジとしては、ボールペン本体に接続することでボールペンを構成する軸筒を兼ねたものや、ボールペン本体に接続した後に軸筒(後軸)を被覆して保護するものが用いられる。なお、後者においては、インキカートリッジ単体で用いるほか、使用前のボールペンにおいて、ボールペン本体とインキカートリッジが接続されているものや、ユーザーが使用時に、軸筒内のインキカートリッジを接続して使用を開始するように、非接続状態で軸筒内に収容したもののいずれであっても良い。
【0052】
本発明によるインキ組成物を収容するボールペンは、ペン先と、インキ充填機構とから構成されるもの、或いは、ペン先と、インキ充填機構と、インキ供給機構とから構成されるものであれば、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではない。
ボールペンの構成としては、例えば、(1)軸筒内に、インキを充填したインキ収容管を有し、インキ収容管には、直接又は接続部材を介してボールペンチップが連結され、インキの端面にはインキ逆流防止体が充填されたボールペン、(2)軸筒内部に直接インキを充填し、櫛溝状のインキ流量調節体や、繊維束等からなるインキ誘導芯をインキ流量調節体として介在させ、インキをペン先に供給する機構を備えたボールペン、(3)軸筒内部に直接インキを充填し、上記のペン芯を介して、インキをペン先に供給する機構を備えたボールペン、(4)インキが含浸された、繊維集束体からなるインキ吸蔵体を軸筒内に内蔵し、繊維束等からなるインキ誘導芯をインキ流量調節体として介在させ、インキをペン先に供給する機構を備えたボールペン等を例示できる。
【0053】
さらに、上記構成のボールペンには、ペン先(筆記先端部)を覆うように装着されるキャップを設けてキャップ式ボールペンとすることにより、ペン先が乾燥して筆記できなくなることや、筆記先端部が汚染・破損されることを防ぐことができる。
【0054】
また、軸筒内にボールペンレフィルが収容されるボールペンは、軸筒内に、軸筒から筆記先端部を出没可能とする出没機構を設けて出没式ボールペンとすることもでき、筆記先端部が汚染・破損されることを防ぐことができる。
出没式ボールペンは、筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
【0055】
出没式ボールペンに収容されるレフィルとしては、例えば、インキ収容管にインキを充填し、インキ収容管の一端にボールペンチップを装着し、さらに他端より、インキの端面に密接するようにインキ逆流防止体を充填したレフィルや、インキ収容管内に、インキを含浸させたインキ吸蔵体を内蔵し、インキ収容管の一端にボールペンチップを装着し、さらに、インキ吸蔵体からボールペンチップへインキを誘導するためのインキ誘導芯を備えたレフィル等を例示できる。
これらのレフィルを軸筒内に収容して、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造とすることにより、出没式ボールペンとすることができる。
【0056】
出没機構としては、例えば、(1)軸筒の後部側壁より前後方向に移動可能な操作部(クリップ)を径方向外方に突設させ、操作部を前方にスライド操作することにより軸筒前端開口部から筆記先端部を出没させるサイドスライド式の出没機構、(2)軸筒後端に設けた操作部を前方に押圧することにより軸筒前端開口部から筆記先端部を出没させる後端ノック式の出没機構、(3)軸筒側壁外面より突出する操作部を径方向内方に押圧することにより軸筒前端開口部から筆記先端部を出没させるサイドノック式の出没機構、(4)軸筒後部の操作部を回転操作することにより軸筒前端開口部から筆記先端部を出没させる回転式の出没機構等を例示できる。
【0057】
ボールペンの形態は上記した構成に限らず、相異なるボール径のチップを装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させたりするほか、相異なるボール径のチップを装着させると共に、各チップから導出されるインキの色調が相異なる複合式ボールペン(両頭式やペン先繰り出し式等)であってもよい。
また、軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのレフィルの筆記先端部を軸筒開口部から出没させる複合タイプの出没式ボールペンとすることもできる。
【0058】
本発明において好ましいボールペンは、ペン先として、チップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備え、軸筒内にインキ充填機構として、インキが含浸された、繊維集束体等からなるインキ吸蔵体を内蔵し、インキ供給機構として繊維束等からなるインキ誘導芯が、インキ吸蔵体の前端、及びチップ本体内部に設けられたボール受け座に接続されてなる中詰式ボールペンである。
上記構成のボールペンは、毛細管力を利用してインキをペン先に供給するものであり、インキ吸蔵体の前端に接続したインキ誘導芯が、チップ本体内部に設けられるボール受け座に接続されることにより、インキが、インキ吸蔵体からボール近傍に誘導され、筆記可能となるものであるが、毛細管力を利用する点でペン先へのインキ誘導力が乏しくなり易い傾向にあり、また、ボール近傍においてインキが保持され難いため、初筆性能が課題となることがあった。しかしながら、本発明によるインキ組成物は、金属製のチップ本体やボールに対する親和性に優れ、ペン先、特に、金属製のボール近傍へインキが誘導され易く、ボール近傍でインキを十分に保持できるようになるため、上記構成のボールペン(中詰式ボールペン)に、好適に用いられる。
【0059】
また、ペン先として、内部に合成樹脂製のボール受け座が設けられたチップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備えてなるボールペンも、本発明において好ましく用いられる。
合成樹脂製のボール受け座が設けられたチップ本体は、金属又は合成樹脂製のチップ本体の内部に合成樹脂製のボール受け座を設けたものであれば、特に限定されるものではない。
合成樹脂製のボール受け座には、中心孔及び中心孔より径方向外方に延びる複数(例えば5本)のインキ誘導孔が備えられ、中心孔及びインキ誘導孔は軸方向に貫通した構造を有している。これにより、インキ充填機構に充填されるインキを、インキ誘導芯等のインキ供給機構を介して、ボール近傍へ供給することが可能となる。
【0060】
ボール受け座が合成樹脂製であるチップは、ボール受け座の弾性が高く、ボールの回転に伴ってボール受け座が弾性変形し易いため、ボール受け座が金属製であるチップに比べてボールの回転がスムーズであり、ボールペンの筆記感を滑らかとすることができる。
本発明によるインキ組成物を収容したボールペンは、ボール近傍にインキが十分に保持されており、滑らかな筆記感を奏するものであるが、ボールペンチップとして、合成樹脂製のボール受け座が設けられたチップを適用することにより、滑らかな筆記感をより向上させることができるため、上記構成のボールペンに好適に用いられる。
【0061】
ボール受け座が合成樹脂製であるチップ本体は、例えば、ポリアセタール樹脂の射出成形により得ることができ、具体的には、チップ本体を成形する際にボール受け座をチップ本体の内部に一体に形成することができる。そして、このチップ本体の前端に金属製のボールを抱持させることにより、合成樹脂製のボール受け座が設けられたボールペンチップを得ることができる。
一般的に、金属部材から構成され、ボール受け座が金属製であるチップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップは、筆記時にチップ本体の前端が紙面に当たることにより紙を削り易く、筆記感を損なってしまうことがあり、さらに、削れた紙がボールに巻き込まれて、筆記不能となることがある。また、ボールペンチップを製造する際の金属部材の加工工程が多く、生産性の低さやコストの高さが課題となることがあった。しかしながら、合成樹脂からなり、ボール受け座がチップ本体の内部に一体に形成されたチップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップは、上述の、金属製のボールがスムーズに回転することに加えて、筆記時にチップ本体の前端が紙面に当たっても紙を削り難いため、筆記感を滑らかとすることが可能である。さらに、チップ本体を成形する際に、同時にボール受け座を形成することができるため加工工程が少なく、チップの生産性に優れるものである。
本発明によるインキ組成物を収容したボールペンは、ボール近傍にインキが十分に保持されており、滑らかな筆記感を奏するものであるが、ボールペンチップとして、合成樹脂からなり、ボール受け座がチップ本体の内部に一体に形成される上記のチップを適用することにより、滑らかな筆記感をよりいっそう向上させることができるため、上記構成のボールペンに好適に用いられる。
【0062】
また、ペン先(筆記先端部)を覆うように装着されるキャップを設けてなるボールペン(キャップ式ボールペン)も、本発明において好ましく用いられる。水性インキ組成物を収容したボールペンはペン先が乾燥し易く、筆記不良を生じ易いものであるが、キャップ式ボールペンとすることにより、ペン先が乾燥して筆記できなくなくことを防止すると共に、筆記先端部が汚染・破損されることを防ぐことができる。
【0063】
本発明によるインキ組成物を収容したボールペンとして、ペン先として、チップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備え、軸筒内にインキ充填機構として、インキが含浸されたインキ吸蔵体を内蔵し、インキ供給機構としてインキ誘導芯が、インキ吸蔵体の前端、及びチップ本体内部に設けられたボール受け座に接続され、さらに筆記先端部を覆うようにキャップを装着した中詰式ボールペンが、より好ましいボールペンである。上記構成のボールペンは、ボール近傍へインキが誘導され易く、長期間に亘って保管された後であっても、初筆性能に優れると共に滑らかな筆記感を奏し、また、ペン先が乾燥し難いものであり、筆記性能に優れるため、より好適に用いられる。
上記構成のボールペンにおいて、ボールペンチップとして、合成樹脂製のボール受け座が設けられたチップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるチップを備えた中詰式ボールペンは、上述の効果に加えて、金属製のボールがスムーズに回転し滑らかな筆記感を奏するため、さらに好適に用いられる。
【0064】
本発明おいて最も好ましいボールペンとしては、上記構成のボールペンにおいて、ボールペンチップとして、合成樹脂からなり、ボール受け座がチップ本体の内部に一体に形成されたチップ本体と、チップ本体の前端に備えられる金属製のボールとからなるボールペンチップを備えた中詰式ボールペンであり、長期間に亘って保管された後であっても、初筆性能に優れ、ペン先が乾燥し難いことに加えて、金属製のボールのスムーズに回転すると共に、筆記時にチップ本体の前端が紙面に当たっても紙を削り難く、よりいっそう滑らかな筆記感を奏するため、実用的な筆記具として最も好適に用いられる。また、チップ本体を成形する際に同時にボール受け座を形成することができるため、チップの生産性にも優れる。
【実施例0065】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断らない限り実施例中の「部」は、「質量部」を示す。
【0066】
実施例1
水性インキ組成物の調製
赤色染料〔保土谷化学工業(株)製、製品名:フロキシン〕5.5部と、橙色染料〔オリヱント化学工業(株)製、製品名:WATER ORANGE 18〕1.5部と、ベンゾトリアゾール〔大和化成(株)製、製品名:VERZONE Crystal #120〕0.5部と、4-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸0.2部と、ノニオン系界面活性剤〔日光ケミカルズ(株)製、製品名:NIKKOL BC-10〕0.1部と、グリセリン20部と、デキストリン〔日澱化学(株)製、製品名:赤玉デキストリン No.102-S〕2.5部と、トリエタノールアミン0.9部と、防腐剤〔ロンザジャパン(株)製、製品名:プロキセルXL-2(S)〕0.5部と、水68.3部とを混合して、水性インキ組成物を調製した。
また、インキ組成物の総質量に対する、式(1)で示される化合物の含有率(P)は0.5であり、インキ組成物の総質量に対する、式(2)で示される化合物の含有率(P2)は0.2であり、PとPの比(P/P)は、0.4であった。
【0067】
ボールペンの作製
ポリアセタール樹脂の射出成形によりボール受け座を内部に一体に形成した合成樹脂製のチップ本体の前端に、直径が0.8mmである超硬製のボールを抱持させたボールペンチップの後端から、ポリエステル繊維からなるインキ誘導芯を挿入し、ボール受け座とインキ誘導芯の前端とを接続させた。次いで、インキ誘導芯が接続されたボールペンチップを、軸筒の前端開口部にホルダーを介して連結させた。次いで、ポリエステル繊維からなるインキ吸蔵体に上記のインキ組成物を含浸させ、このインキ吸蔵体を軸筒の後端開口部より軸筒に収容し、インキ誘導芯の後端とインキ吸蔵体の前端を接続させ、軸筒の後端開口部に尾栓を嵌合させた。さらに、筆記先端部を覆うようにキャップを装着して、ボールペン(中詰式ボールペン)を作製した。
【0068】
上記のボールペンを用いて、室温(20℃)環境下で、A4サイズの試験用紙(縦向き)の短手方向と平行方向に、1行あたり12個の楕円形状の丸(長径15mm、短径8mm程度)を、丸が互いに接するように螺旋状に手書きで、2行連続筆記したところ、書き出し時(筆記開始時)からカスレや線飛びは発生せず、初筆性能に優れ、良好な筆跡が得られた。なお、試験用紙には旧JIS P3201に準拠した筆記用紙Aを用いた。
【0069】
実施例2~11、及び、比較例1~3
配合する材料の種類と配合量を以下の表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、水性インキ組成物を調製した。また、各水性インキ組成物におけるP、P、及びP/Pは、表1に記載のとおりである。
【0070】
また、ボールペンは、実施例1と同様にして作製した。各ボールペンを用いて、室温(20℃)環境下で、A4サイズの試験用紙(縦向き)の短手方向と平行方向に、1行あたり12個の楕円形状の丸(長径15mm、短径8mm程度)を、丸が互いに接するように螺旋状に手書きで、2行連続筆記したところ、いずれのボールペンも、書き出し時(筆記開始時)からカスレや線飛びは発生せず、初筆性能に優れ、良好な筆跡が得られた。なお、試験用紙には旧JIS P3201に準拠した筆記用紙Aを用いた。
【0071】
【表1】
【0072】
表1中の材料の内容を、注番号に沿って説明する。
(1)赤色染料
〔保土谷化学工業(株)製、製品名:フロキシン〕
(2)橙色染料
〔オリヱント化学工業(株)製、製品名:WATER ORANGE 18〕
(3)黒色染料溶液
〔オリヱント化学工業(株)製、製品名:WATER BLACK 191-L(固形分:20%)〕
(4)黄色染料
〔住友化学工業(株)製、製品名:WATER YELLOW 6C〕
(5)ベンゾトリアゾール
〔大和化成(株)製、製品名:VERZONE Crystal #120〕
(6)トリルトリアゾール
〔大和化成(株)製、製品名:VERZONE TTA〕
(7)4-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン-2,7-ジスルホン酸
(8)4,5-ジヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸
(9)4-ヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸
(10)ノニオン系界面活性剤
〔日光ケミカルズ(株)製、製品名:NIKKOL BC-10〕
(11)デキストリン
〔日澱化学(株)製、製品名:赤玉デキストリン No.102-S〕
(12)防腐剤
〔ロンザジャパン(株)製、製品名:プロキセルXL-2(S)〕
【0073】
室温経時後の初筆性能の評価
実施例1~11、及び、比較例1~3の各ボールペンにキャップをし、20℃に設定した恒温槽内に60日間、ペン先が上向きの状態(正立状態)で静置させた。60日経過後に恒温槽から取り出し、室温(20℃)環境下で、A4サイズの試験用紙(縦向き)の短手方向と平行方向に、1行あたり12個の楕円形状の丸(長径15mm、短径8mm程度)を、丸が互いに接するように螺旋状に手書きで、2行連続筆記した。なお、試験用紙には旧JIS P3201に準拠した筆記用紙Aを用いた。
得られた筆跡を目視にて確認し、下記基準で筆跡を評価した。評価結果は、以下の表2
に記載のとおりである。なお、A及びBは、実用上合格レベルである。
A:筆記開始時から丸を2行分(24個)筆記し終えるまで、筆跡にカスレや線飛びは発生せず、良好な筆跡が得られた。
B:筆記開始時に、筆跡にカスレや線飛びが僅かに発生したが、丸を1個筆記し終えるまでにカスレや線飛びの発生は解消され、実用上問題のないレベルであった。
C:筆記開始時から筆跡にカスレや線飛びが発生し、丸を3個筆記し終えるまでカスレや線飛びの発生は解消されなかった。
D:筆記開始時から筆跡にカスレや線飛びが発生し、丸を12個(1行分)筆記し終えてもカスレや線飛びの発生は解消されなかった。
【0074】
加温経時後の初筆性能の評価
実施例1~11、及び、比較例1~3の各ボールペンにキャップをし、40℃に設定した恒温槽内に60日間、ペン先が上向きの状態(正立状態)で静置させた。60日経過後に恒温槽から取り出し、室温(20℃)環境下で、A4サイズの試験用紙(縦向き)の短手方向と平行方向に、1行あたり12個の楕円形状の丸(長径15mm、短径8mm程度)を、丸が互いに接するように螺旋状に手書きで、2行連続筆記した。なお、試験用紙には旧JIS P3201に準拠した筆記用紙Aを用いた。
得られた筆跡を目視にて確認し、下記基準で筆跡を評価した。評価結果は、以下の表2
に記載のとおりである。なお、A及びBは、実用上合格レベルである。
A:筆記開始時から丸を2行分(24個)筆記し終えるまで、筆跡にカスレや線飛びは発生せず、良好な筆跡が得られた。
B:筆記開始時に、筆跡にカスレや線飛びが僅かに発生したが、丸を1個筆記し終えるまでにカスレや線飛びの発生は解消され、実用上問題のないレベルであった。
C:筆記開始時から筆跡にカスレや線飛びが発生し、丸を3個筆記し終えるまでカスレや線飛びの発生は解消されなかった。
D:書き出し時から筆跡にカスレや線飛びが発生し、丸を12個(1行分)筆記し終えてもカスレや線飛びの発生は解消されなかった。
【0075】
【表2】