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特開2022-171313ボールペンレフィル用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペンレフィル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171313
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ボールペンレフィル用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペンレフィル
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20221104BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C09D11/18
B43K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077895
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】山田 亮
(72)【発明者】
【氏名】森垣 結衣
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KC05
4J039BA04
4J039BE01
4J039BE23
4J039CA06
4J039EA42
4J039EA44
4J039GA27
(57)【要約】
【課題】気泡の形成や残留を長期に亘って抑制し、初期と同等の良好な筆記性能を長期に亘って得ることができるボールペンレフィル用水性インキ組成物を提供すること。
【解決手段】ボールペンチップと、インキ収容管とを備え、前記インキ収容管にインキが収容され、前記インキの端面にインキ逆流防止体が充填されてなるボールペンレフィルに内蔵されるインキであって、着色材と、剪断減粘性付与剤と、式(1)に示される物質及び/又はその塩と、水とを含有する、ボールペンレフィル用水性インキ組成物とする。
【化1】
式中、XとYは-H、-R、-OH、-OR、-NH、-NHRおよび-NRから選ばれる官能基であり、Rはアルキル基である。ただし、X、Y双方が水素である場合を除く。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールペンチップと、インキ収容管とを備え、前記インキ収容管にインキが収容され、前記インキの端面にインキ逆流防止体が充填されてなるボールペンレフィルに内蔵されるインキであって、着色材と、剪断減粘性付与剤と、式(1)の構造を有する物質及び/又はその塩と、水とを含有する、ボールペンレフィル用水性インキ組成物。
【化1】
式中、XとYは-H、-R、-OH、-OR、-NH、-NHRおよび-NRから選ばれる官能基であり、Rはアルキル基である。ただし、X、Y双方が水素である場合を除く。
【請求項2】
前記XとYは、-H、-OHおよび-NHから選ばれる官能基である(ただし、X、Y双方が水素である場合を除く)、請求項1に記載の水性インキ組成物。
【請求項3】
20℃において、せん断速度3.84sec-1で測定される粘度が、20~2000mPa・sであり、せん断速度384sec-1で測定される粘度が、1~100mPa・sであり、剪断減粘指数nが0.15以上、0.7未満である、請求項1または請求項2に記載の水性インキ組成物。
【請求項4】
式(1)に示される物質及び/又はその塩の含有量が水性インキ組成物全質量に対して0.05~5質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性インキ組成物。
【請求項5】
前記着色材が顔料である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性インキ組成物。
【請求項6】
ボールペンチップと、インキ収容管とを備え、前記インキ収容管に請求項1~5のいずれか1項に記載の水性インキ組成物が収容され、前記水性インキ組成物の端面にインキ逆流防止体が充填されてなるボールペンレフィル。
【請求項7】
請求項6に記載のボールペンレフィルが内蔵されてなるボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペンレフィル用水性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンレフィルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、剪断減粘性インキが内蔵されたレフィル式のボールペンが広く利用されている。
剪断減粘性インキは、静置時においてインキにせん断力が加わらない状態では粘度が維持され、筆記時において高速回転するボールから強いせん断力が加わると速やかに低粘度化し、ペン先から吐出された後は速やかに粘度が回復する粘度挙動を示すことから、このようなインキを用いたボールペンは、操作性に優れ、保管時のインキ漏れやインキ不溶成分の沈降、凝集が抑えられつつ筆記時においては良好なインキ吐出性を奏し、滲みの少ない、鮮明な筆跡を形成することが可能である。
【0003】
しかしながら、剪断減粘性インキが内蔵されたレフィルはインキ中の気泡の影響を受けやすく、気泡によって筆記性能が低下することがある。
例えば、剪断減粘性インキでは、高速回転するボール近傍が低圧になることでインキ中の溶存空気が気泡化したり、ノック操作や落下等による衝撃を受けたときにペン先から混入した空気が経時によりインキ中で気泡となった場合、気泡がペン先側に溜まることで、筆記時にインキが追従せず筆跡カスレが生じることや、筆記不能になることがある。また、ボールペンレフィルはインキ収容管に剪断減粘性インキを充填するときにインキ中に空気泡が混入することが避けられず、残存した気泡によって前記した筆記の不具合が発生することもある。さらには、インキの消費に伴って追従するインキ逆流防止体(液栓)がインキ後端面に接触充填される場合には、前記気泡がインキとインキ逆流防止体の間に溜まり、経時により膨張することで逆流を生じる虞がある。
【0004】
そこでインキ中の気体を化学的に除去する方法が検討されており、例えば、α-トコフェロール等を添加する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、α-トコフェロールを気体除去剤として適用した水性インキが開示されている。このインキはα-トコフェロールが水不溶性であるため可溶化剤が併用されており、水性インキ中の気泡吸収が可能とされている。
しかしながら、この従来技術のインキはα-トコフェロールの溶解安定性が十分ではなく、経時的にα-トコフェロールが析出して気泡抑制効果が持続し難いことがあった。また、α-トコフェロールを水性インキ中に溶解させるためには可溶化剤である界面活性剤を多量に添加する必要があり、このようなインキは配合調整の自由度が制限されやすい欠点も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-330672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、気泡の形成や残留を長期に亘って抑制し、初期と同等の良好な筆記性能を長期に亘って得ることができるボールペンレフィル用水性インキ組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.ボールペンチップと、インキ収容管とを備え、前記インキ収容管にインキが収容され、前記インキの端面にインキ逆流防止体が充填されてなるボールペンレフィルに内蔵されるインキであって、着色材と、剪断減粘性付与剤と、式(1)に示される物質及び/又はその塩と、水とを含有する、ボールペンレフィル用水性インキ組成物。
【化1】
式中、XとYは-H、-R、-OH、-OR、-NH、-NHRおよび-NRから選ばれる官能基であり、Rはアルキル基である。ただし、X、Y双方が水素である場合を除く。
2.前記XとYは、-H、-OHおよび-NHから選ばれる官能基である(ただし、X、Y双方が水素である場合を除く)、第1項に記載の水性インキ組成物。
3.20℃において、せん断速度3.84sec-1で測定される粘度が、20~2000mPa・sであり、せん断速度384sec-1で測定される粘度が、1~100mPa・sであり、剪断減粘指数nが0.15以上、0.7未満である、第1項または第2項に記載の水性インキ組成物。
4.式(1)に示される物質及び/又はその塩の含有量が水性インキ組成物全質量に対して0.05~5質量%である、第1項~第3項に記載の水性インキ組成物。
5.前記着色材が顔料である、第1項~第4項のいずれか1項に記載の水性インキ組成物。
6.ボールペンチップと、インキ収容管とを備え、前記インキ収容管に第1項~第5項のいずれか1項に記載の水性インキ組成物が収容され、前記水性インキ組成物の端面にインキ逆流防止体が充填されてなるボールペンレフィル。
7.第6項に記載のボールペンレフィルが内蔵されてなるボールペン。」とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、気泡の形成や残留を長期に亘って抑制し、初期と同等の良好な筆記性能を長期に亘って得ることができるボールペンレフィル用水性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンレフィルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。尚、本明細書において、配合を示す「部」、「% 」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
【0011】
本発明による水性インキ組成物( 以下、場合により、「インキ組成物」または「組成物」と表すことがある。)は、着色材と、剪断減粘性付与剤と、式(1)に示される物質及び/又はその塩と、水とを含有してなる。以下、本発明によるインキ組成物を構成する各成分について説明する。
【0012】
(着色材)
着色材としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0013】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社製〕、C.I. Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
尚、前記顔料を分散する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、カゼイン等、およびそれらの誘導体、前記した樹脂の共重合体等が挙げられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
また、酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉顔料、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料等を使用することもできる。
【0014】
さらに、インキ組成物に適用できる着色材としては、摩擦熱により変色する着色材も例示できる。
【0015】
前記摩擦熱により変色する着色材としては、筆跡を摩擦体等で擦過して加温することによって、筆跡が変色(色相変化や透明化や消色)するものが、可逆、不可逆を問わず選択的に適用できる。尚、着色材自身が色相変化するものの他、透明化(消色)するものと、前記した染料、顔料等の汎用の着色材を併用することで、色相が変化する構成とすることもできる。
前記加熱変色する着色材としては、例えば、引用文献として例示した、特開2012-219160号公報、特開2014-5422号公報等に開示される可逆タイプや、特開2010-229332号公報等に開示される不可逆タイプのものが適用可能である。
特に、前記筆跡の変化は、熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させることで、組成変化を生じることなく長期間安定して発現できるものとなるため好適である。前記マイクロカプセル顔料に内包される熱変色性組成物としては、繰り返しの使用性、温度変化の正確性等の点から、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が好適である。
【0016】
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
更に、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報、特開平7-33997号公報、特開平8-39936号公報等に記載されている比較的大きなヒステリシス特性(ΔH=8~50℃)を示すものや、特開2006-137886号公報、特開2006-188660号公報、特開2008-45062号公報、特開2008-280523号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させ加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、筆記具インキに適用される、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち-50~0℃、好ましくは-40~-5℃、より好ましくは-30~-10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50~95℃、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃の範囲に特定し、ΔH値を40~100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0017】
前記熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセル顔料の表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0018】
顔料インキは、顔料表面に気泡が吸着しやすいため、染料インキと比較して気泡の影響を受けやすい。しかしながら、本発明のインキは後述する気泡抑制剤によって経時的に気泡の形成や残留が抑制されるため、顔料を着色材に適用した場合であっても、良好な筆記性能が長期に亘って維持される。
【0019】
前記着色材は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成物中、例えば、0.1~40質量%、好ましくは3~30質量%の範囲で用いられる。
【0020】
(剪断減粘性付与剤)
剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、マクロホモプシスガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万~15万の重合体、グルコマンナン、カラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ポリN-ビニル-カルボン酸アミド架橋物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8~12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示できる。更には、インキ組成物中にN-アルキル-2-ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加してもよい。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1~20質量%の範囲で用いることができる。
【0021】
(気泡抑制剤)
インキ組成物には下式(1)に示される物質またはその塩が気泡抑制剤として適用される。
【化1】
式中、XとYは-H、-R、-OH、-OR、-NH、-NHRおよび-NRから選ばれる官能基であり、Rはアルキル基である。ただし、X、Y双方が水素である場合を除く。
前記式(1)に示される物質の塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
前記気泡抑制剤は水性インキ組成物中で還元作用を呈することから、良好な酸素吸収能を長期間に亘って発現するものである。従って、インキ中の酸素を含む気体が集まって気泡となることを長期的に抑制でき、さらには、前記気泡抑制剤はインキ中の気泡の残留を抑制することもできる。このため、本発明のインキ組成物は初期と同等の良好な筆記性が長期に亘って維持される。
また、前記気泡抑制剤はインキ中で親水性基であるスルホ基と疎水性を有するナフタレン環を併せ持つため、疎水性を有し、水中で分散をさせにくい有機顔料やカーボンブラック等における水性インキ中の分散性を良好にする効果をも奏する。
式(1)に示される物質とその塩は併用しても良い。
【0022】
気泡抑制性能を考慮すると、式(1)のXとYは、-H、-OHおよび-NHから選ばれる官能基である(ただし、XとYの双方が水素である場合を除く)ことが好ましく、XとYは、一方が-H、-OHおよび-NHから選ばれる官能基であり、他方が-NHであることがより好ましく、XとYは、一方が-OHであり、他方が-NHであることがさらに好ましい。
【0023】
気泡抑制剤の含有量は、インキ組成物全質量に対して0.05~5質量%とすることが好ましく、0.1~3質量%とすることがより好ましく、0.1~2質量%とすることが一層好ましい。含有量が0.05%以上であれば前記した気泡抑制剤の気泡抑制性能が十分に奏され、5質量%を超えるとボールペンチップの腐食性が高まり、インキ吐出性が低下しやすくなる。
【0024】
インキ組成物には、水に相溶性のある従来汎用の水溶性有機溶剤を用いることもでき、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用することもでき、インキ組成物中2~60重量%、好ましくは5~35重量%の範囲で用いられる。
【0025】
更に、インキ組成物の特性に合わせ、所望のpHに調整するためにpH調整剤を用いることが好ましい。
pH調整剤としては、従来公知の酸性物質、塩基性物質が適用でき、酸性物質としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられ、塩基性物質としては例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の強アルカリ、或いはアンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等の弱アルカリが挙げられる。また、塩基性物質としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類も適用可能である。
【0026】
その他、必要に応じて、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2-ベンズチアゾリン3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等を使用してもよい。さらに前記した塩基性物質を式(1)に示される物質の中和剤として用いることもできる。
更に、潤滑剤を添加することができ、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、N-アシルアミノ酸系界面活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β-アラニン型界面活性剤、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、α-リポ酸、N-アシル-L-グルタミン酸とL-リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
また、N-ビニル-2-ピロリドンのオリゴマー、N-ビニル-2-ピペリドンのオリゴマー、N-ビニル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、N-ビニル-ε-カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
【0027】
また、耐乾燥性を妨げない範疇でアルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂を一種又は二種以上添加したりすることもできる。
【0028】
インキ組成物は、せん断速度3.84sec-1で測定される粘度が20~2000mPa・sであり、かつ、せん断速度384sec-1で測定される粘度が1~100mPa・sであることが好ましい。インキ組成物のより好ましい粘度は、せん断速度3.84sec-1で測定される粘度が100~1500mPa・sであり、せん断速度384sec-1で測定される粘度が1~60mPa・sである。インキ組成物の粘度が前記範囲であると、静置状態におけるボールペンチップからのインキ漏れや顔料の沈降、凝集等が十分に抑制されるとともに、筆記時のボールペンチップからのインキ吐出性が良好となり、鮮明な筆跡を形成しやすい。インキ組成物の粘度は、着色材の含有量、せん断減粘性付与剤の含有量等のインキ組成を適宜選択することで、所望の範囲に調整することができる。
粘度の測定はインキ組成物が20℃の状態において行い、測定機にはティーエイインスツルメント社製のレオメーター「Discovery HR-2」を用いることができる。
【0029】
水性インキ組成物は、20℃で測定した下記(2)式で示される剪断減粘指数nが、0.15以上、0.7未満であることが好ましく、0.2~0.6であることがより好ましい。
T=KJn (2)
ここで、Tはずり応力[N/m]、Kは粘性係数(定数)、Jはずり速度[sec-1]である。
これにより、静置状態におけるボールペンチップからのインキ漏れや顔料の沈降、凝集等が十分に抑制されつつ、筆記時にボールペンチップのインキがボールとボール掴持部との隙間に溜ることなく吐出されるため、鮮明な筆跡を形成することが容易となる。
【0030】
剪断減粘指数nの測定は、例えば、ティーエイインスツルメント社製のレオメーター「Discovery HR-2」を用いて行うことができ、3.84sec-1、38.4sec-1及び384sec-1のずり速度と、それらのずり速度でそれぞれ得られるずり応力(剪断応力)とを上記(2)式に適用してnを求める。
【0031】
前記インキ組成物を充填するボールペンレフィルについて説明する。ボールペンレフィルはインキ組成物を収容するインキ収容管と、インキ収容管に直接又は接続部材を介して装着され、ボールを回転自在に抱持するボールペンチップとを備えて構成される。
筆記先端部となるボールペンチップは、例えば、金属を切削加工して内部にボール受け座とインキ導出部を形成したもの、金属製パイプの先端近傍の内面に複数の内方突出部を外面からの押圧変形により設け、前記内方突出部の相互間に、中心部から径方向外方に放射状に延びるインキ流出間隙を形成したもの等を適用でき、特に押圧変形によるチップは、ボール後端との接触面積が比較的小であり、低筆記圧でのスムーズな筆記感を与えることができる。
【0032】
前記ボールペンチップに抱持されるボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の外径0.1~2.0mm、好ましくは0.2~1.2mm、より好ましくは0.28~0.7mmのボールが有効である。0.7mm以下のボールを用いる場合、インキ吐出量を増やす目的や、通常の着色材よりも粒子径が大きいマイクロカプセル顔料(特に0.1μm以上)を安定吐出する目的で、チップのクリアランスを大きくする必要があるため、筆記やノック操作等の衝撃によって空気が混入し易くなる。そのため、本発明のインキがより有効に作用するものとなる。
尚、前記ボールペンチップには、チップ内にボールの後端を前方に弾発する弾発部材を配して、非筆記時にはチップ先端の内縁にボールを押圧させて密接状態とし、筆記時には筆圧によりボールを後退させてインキを流出可能に構成することもでき、不使用時のインキ漏れを抑制できる。
前記弾発部材は、金属細線のスプリング、前記スプリングの一端にストレート部(ロッド部)を備えたもの、線状プラスチック加工体等を例示でき、5~40gの弾発力により、押圧可能に構成して適用される。
【0033】
インキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体、金属製管状体が用いられる。インキ収容管にはボールペンチップを直接連結する他、接続部材(チップホルダー)を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
更に、インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
【0034】
前記ボールペンレフィルに収容したインキの後端にはインキ逆流防止体を充填する。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等が挙げられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0035】
前記不揮発性液体や難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0036】
ボールペンレフィルを収容するボールペンについて説明する。
ボールペンは、出没式のボールペンであっても良い。出没式ボールペンとしては、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で外軸内に収納されており、出没機構の作動によって外軸開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、外軸後端部や外軸側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、外軸に回転部(後軸等)を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
尚、前記出没式ボールペンは、外軸内に一本のボールペンレフィルを収容したもの以外に、複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。また、前記ボールペンレフィルを構成するインキ収容管は樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
【0037】
更に、前記ボールペンとともに、摩擦熱によって筆跡を消色又は変色させるための摩擦部材を用いることができる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。尚、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、SBS樹脂(スチレンブチレンスチレン共重合体)等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物、ポリプロピレン樹脂とポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの混合物等が用いられる。
前記摩擦部材はボールペンと別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、ボールペン外装に摩擦部材を固着させることにより、携帯性に優れた形態となる。
キャップ式ボールペンの場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
出没式ボールペンの場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
【実施例0038】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に実施例及び比較例の筆記具用水性インキの組成、インキの粘度値およびインキの剪断減粘指数を示す。尚、表中の組成の数値は質量%を示し、粘度の単位は、mPa・sである。
粘度の測定は、インキ組成物が20℃において、ティーエイインスツルメント社製のレオメーター「Discovery HR-2」を用いて行った。また、剪断減粘指数nの測定は、ティーエイインスツルメント社製のレオメーター「Discovery HR-2」を用いて、3.84sec-1、38.4sec-1及び384sec-1のずり速度と、それらのずり速度でそれぞれ得られるずり応力(剪断応力)とを前記(2)式に適用してnを求めた。
【0039】
【表1】
【0040】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)顔料:カーボンブラック(製品名:三菱カーボンブラックMA-100、三菱ケミカル社製)
(2)剪断減粘性付与剤:キサンタンガム(製品名:ケルザン、三晶社製)
(3)式(1)で示される物質(X:-OH、Y:-NH
(4)式(1)で示される物質(X、Y共に-OH)
(5)式(1)で示される物質(X:-OH、Y:-H)
(6)dl-α-トコフェロールの可溶化剤:オレオイルサルコシンナトリウム
(7)リン酸エステル系界面活性剤:ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルリン酸エステル(製品名;プライサーフAL、第一工業製薬社製)
(8)水溶性樹脂:ポリビニルピロリドン(製品名:ルビテックK-17、BASFジャパン社製)
【0041】
ボールペンインキの調製
表1に記載の材料の内、ポリビニルピロリドンとカーボンブラックと一部の水とを3本ロールを用いて混合し、加工顔料とした。前記加工顔料と、前記実施例及び比較例の配合量で剪断減粘性付与剤を除く、残りの各材料を混合し、20℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌した後、剪断減粘性付与剤を加えて更に1時間攪拌することでボールペンインキ組成物を得た。
【0042】
インキ逆流防止体の調製
基油としてポリブテン98.5部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド1.5部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
【0043】
ボールペンの作製
直径0.5mmの超硬合金製ボールを抱持するステンレススチール製切削チップが透明ポリプロピレン製インキ収容管の一端に嵌着されたボールペンレフィル内に、前記各ボールペンインキ組成物を充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、キャップを装着することで試料ボールペンを作製した。
【0044】
上記の通り作製したインキとボールペンを用いて、下記1~4の評価を行った。
【0045】
1.インキ外観1
シリンジを用いて、ボールペンレフィル内に空気を10μml注入し、インキ中に気泡を形成させた。次いで、このボールペンレフィルを25℃の1週間静置した後、ボールペンレフィルを目視で観察した。評価基準はAを合格とし、Bを不合格とした。
A:気泡が確認されない
B:気泡が確認される
【0046】
2.筆跡形成性1
手書きにて連丸を2回筆記し、筆跡を目視で観察した。尚、丸1個の直径は3cmであり、1回の筆記あたり12個の丸を形成した。また、筆記用紙には、商品名:NPiフォーム<55>(日本製紙株式会社製)を用いた。筆記速度は、1秒当たり3丸を筆記する速度とした。
評価基準は、Aを合格とし、BおよびCを不合格とした。
A:初筆から筆記終了まで、カスレや途切れのない鮮明な筆跡が形成されている。
B:1~11個の丸に筆跡カスレまたは筆跡途切れが確認される。
C:12個以上の丸に筆跡カスレまたは筆跡途切れが確認される。
【0047】
3.インキ外観2
ボールペンを、ボールペンチップを下に向けた状態で40℃下に90日間保管した後、ボールペンレフィルを目視で観察した。評価基準は、Aを合格とし、BおよびCを不合格とした。
A:インキ逆流防止体とインキとの界面に気泡が確認されない。
B:インキ逆流防止体とインキとの界面に気泡が確認されるものの、インキ逆流防止体とインキとは部分的に接している。
C:インキ逆流防止体とインキとの間に気泡が確認され、インキ逆流防止体とインキは完全に解離している。
【0048】
4.筆跡形成性2
筆記可能であることを確認したボールペンを、ボールペンチップを上に向けた状態で40℃下に90日間保管した。ボールペンを室温(25℃)に戻した後、前記「筆跡形成性1」と同様の筆記を行い、筆跡を目視で観察した。評価基準は、Aを合格とし、BおよびCを不合格とした。
A:初筆から筆記終了まで、カスレや途切れのない鮮明な筆跡が形成されている。
B:1~11個の丸に筆跡カスレまたは筆跡途切れが確認される。
C:12個以上の丸に筆跡カスレまたは筆跡途切れが確認される。
表2に上記評価の結果を記す。
【0049】
【表2】
【0050】
(まとめ)
・実施例1~5のインキは気泡抑制性能に優れることがインキ外観観察と筆跡形成性から確認でき、初期から長期に亘って良好な筆跡を形成できた。
・比較例1のインキは気泡抑制性能に劣り、初期は良好な筆跡を形成できるものの、長期経時後は気泡の影響で筆跡形成性が悪化した。
・比較例2のインキは比較例1のインキよりも気泡抑制性能に優れるものの、長期経時後は気泡の影響で筆跡形成性が悪化した。