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特開2022-171318金属化樹脂フィルムの絶縁破点数の測定方法
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  • 特開-金属化樹脂フィルムの絶縁破点数の測定方法 図1
  • 特開-金属化樹脂フィルムの絶縁破点数の測定方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171318
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】金属化樹脂フィルムの絶縁破点数の測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 13/00 20130101AFI20221104BHJP
【FI】
H01G13/00 361Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077900
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤城 義和
(72)【発明者】
【氏名】中田 将裕
(72)【発明者】
【氏名】石渡 忠和
(72)【発明者】
【氏名】高垣 俊嗣
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082EE07
5E082MM32
(57)【要約】
【課題】金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数を容易かつ精度良く測定することができる金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数の測定方法を提供する
【解決手段】樹脂フィルムの片面に第1の金属膜が形成された金属化樹脂フィルムの絶縁破点数を測定する方法であって、導電基材と、開口部が形成された絶縁フィルムと、前記金属化樹脂フィルムとが積層された積層体に電圧を印加し、前記金属化樹脂フィルムに発生した絶縁破壊点数をカウントする工程1を備える。前記絶縁フィルムは、前記導電基材及び前記金属化樹脂フィルムの間に配置され、前記第1の金属膜は積層体の表面側に露出して配置されており、金属化樹脂フィルムは絶縁フィルムに接触していると共に、前記開口部を通じて前記導電基材にも接触して配置されている。工程1では、第1の金属膜表面に電極を載置して第1の金属膜と前記導電基材との間で金属化樹脂フィルムに電圧を印加する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの片面に第1の金属膜が形成された金属化樹脂フィルムの絶縁破点数を測定する方法であって、
導電基材と、開口部が形成された絶縁フィルムと、前記金属化樹脂フィルムとが積層された積層体に電圧を印加し、前記金属化樹脂フィルムに発生した絶縁破壊点数をカウントする工程1を備え、
前記絶縁フィルムは、前記導電基材及び前記金属化樹脂フィルムの間に配置されており、
前記第1の金属膜は、前記積層体の表面側に露出して配置されており、
前記金属化樹脂フィルムは、前記絶縁フィルムに接触していると共に、前記開口部を通じて前記導電基材にも接触して配置されており、
前記工程1では、前記第1の金属膜表面に電極を載置して前記第1の金属膜と前記導電基材との間で前記金属化樹脂フィルムに電圧を印加する、測定方法。
【請求項2】
前記導電基材は、導電板と、導電性ゴムと、金属箔とがこの順に積層されており、
前記金属箔が、前記絶縁フィルム側に配置されている、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
工程1の開始電圧をV1(V)、金属化樹脂フィルムの厚さをD1(μm)とした場合、
V1/D1(V/μm)の値が300以上である、請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】
工程1の印加をn回目(nは整数)まで段階的に電圧を上昇させて実施し、
n回目の電圧をVn(V)とした場合、Vn/D1(V/μm)の値が700以下である、請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
n/2回目(ただし、nが奇数の場合は(n/2)+0.5回目又は(n/2)-0.5回目とする)までの累積の絶縁破壊点数をSとした場合、Sを前記開口部に面積で除した値を金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数(個/cm)とする、請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
前記金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数(個/cm)に当該金属化樹脂フィルムの厚さを乗じた値を金属化樹脂フィルムの厚み換算絶縁破壊点数[(個/cm)・μm]とする、請求項5に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化樹脂フィルムの絶縁破点数の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、耐電圧性及び低い誘電損失特性等の優れた電気特性、並びに高い耐湿性を有する。これらの特性を生かして、電子及び電気機器において、例えば、高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバータ及びインバータ等のフィルター用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等のコンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく利用されている。また、ポリプロピレンフィルムは、近年需要が高まっている電気自動車及びハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバータ電源機器用コンデンサとしても利用され始めている。
【0003】
ポリプロピレンフィルムを上述のような各種コンデンサに適用するにあたり、ポリプロピレンフィルムの耐電圧性を向上させることが重要な課題の一つとして知られており、そのための検討が広く行われている。斯かる耐電圧性を評価する指標としては、一般的には絶縁破壊点数が知られている。この耐絶縁破壊点数は、一定の電圧下においてポリプロピレンフィルムに発生する絶縁破壊点数をカウントすることで測定できる。例えば、特許文献1には、片面アルミ蒸着PETフィルムと、銅製平板との間に測定試料(ポリプロピレンフィルム)を挟んで形成させた積層体に、所定の電圧で所定時間印加しつつ段階的に昇圧させ、各電圧において生じた絶縁破壊点数(欠陥個数)をカウントする方法が開示されている。このように絶縁破壊点数を計測することで、ポリプロピレンフィルムの耐電圧性能を把握することができることから、新規のコンデンサ用ポリプロピレンフィルムを開発する上で有用な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/043172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の絶縁破壊点数の測定においては、印加時においていわゆる沿面放電(絶縁体の表面に沿って起こり得る放電)が生じやすいことから、決して信頼性が高いものではなかった。このため、一定の条件の測定で耐電圧性能をクリアしたポリプロピレンフィルムであっても、実際にコンデンサ用途に適用すると所望のコンデンサ性能が発揮されないことがあった。斯かる事情が存在することから、製造したポリプロピレンフィルムがコンデンサ素子の要求性能を満たすかどうかは、そのポリプロピレンフィルムを用いてコンデンサ素子を製作した上で見極めなければならず、ポリプロピレンフィルムのコンデンサ素子への適用性を判断しづらいものであった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数を容易かつ精度良く測定することができ、コンデンサ素子を組み立てて耐電圧性評価をせずとも金属化樹脂フィルムの段階で、コンデンサ素子にした際の耐電圧能力を予測することができる金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数の測定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、導電基材と、開口を有する絶縁フィルムと、測定対象の前記金属化樹脂フィルムとを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
樹脂フィルムの片面に第1の金属膜が形成された金属化樹脂フィルムの絶縁破点数を測定する方法であって、
導電基材と、開口部が形成された絶縁フィルムと、前記金属化樹脂フィルムとが積層された積層体に電圧を印加し、前記金属化樹脂フィルムに発生した絶縁破壊点数をカウントする工程1を備え、
前記絶縁フィルムは、前記導電基材及び前記金属化樹脂フィルムの間に配置されており、
前記第1の金属膜は、前記積層体の表面側に露出して配置されており、
前記金属化樹脂フィルムは、前記絶縁フィルムに接触していると共に、前記開口部を通じて前記導電基材にも接触して配置されており、
前記工程1では、前記第1の金属膜表面に電極を載置して前記第1の金属膜と前記導電基材との間で前記金属化樹脂フィルムに電圧を印加する、測定方法。
項2
前記導電基材は、導電板と、導電性ゴムと、金属箔とがこの順に積層されており、
前記金属箔が、前記絶縁フィルム側に配置されている、項1に記載の測定方法。
項3
工程1の開始電圧をV1(V)、金属化樹脂フィルムの厚さをD1(μm)とした場合、
V1/D1(V/μm)の値が300以上である、請求項1又は2に記載の測定方法。
項4
工程1の印加をn回目(nは整数)まで段階的に電圧を上昇させて実施し、
n回目の電圧をVn(V)とした場合、Vn/D1(V/μm)の値が700以下である、項3に記載の測定方法。
項5
n/2回目(ただし、nが奇数の場合は(n/2)+0.5回目又は(n/2)-0.5回目とする)までの累積の絶縁破壊点数をSとした場合、Sを前記開口部に面積で除した値を金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数(個/cm)とする、項4に記載の測定方法。
項6
前記金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数(個/cm)に当該金属化樹脂フィルムの厚さを乗じた値を金属化樹脂フィルムの厚み換算絶縁破壊点数[(個/cm)・μm]とする、項5に記載の測定方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数の測定方法によれば、金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数を容易かつ精度良く測定することができ、コンデンサ素子の耐圧を測定せずとも金属化樹脂フィルムの段階で、コンデンサ素子にした際の耐圧能力を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の測定方法の実施の形態の一例を示す概略説明図であり、(a)は測定方法で使用する装置の側面図、(b)はその装置の平面図、(c)は、その装置の断面図、(d)はその装置に組み込まれる絶縁フィルムの斜視図である。
図2】(A)及び(B)にはそれぞれ、製造例1~4及び製造例5~8の絶縁破壊点数の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
本発明は、樹脂フィルムの片面に第1の金属膜が形成された金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数を測定する方法を包含する。以下、この金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数を測定する方法を単に「本発明の測定方法」と表記する。
【0013】
本発明の測定方法は、下記の工程1を備える。
工程1:導電基材と、開口部が形成された絶縁フィルムと、前記金属化樹脂フィルムとが積層された積層体に電圧を印加し、前記金属化樹脂フィルムに発生した絶縁破壊点数をカウントする工程。
【0014】
図1は、本発明の測定方法の実施形態の一例を示す概略図であり、図1(a)には測定方法で使用する装置の側面図を、図1(b)には前記装置の平面図を、図1(c)には前記装置の断面図を示している。図1(c)の断面図は具体的に、図1(b)にて表示しているX1-X1線断面図である。なお、図1(a)では工程1での印加をするために設ける回路を図示しているが、(b)及び(c)ではその回路の図示は省略している。
【0015】
図1(a)に示すように、本発明の測定方法では、導電基材2と、開口部が形成された絶縁フィルム3と、前記金属化樹脂フィルム1とを備える積層体Aを用いて測定が行われる。図1(a)、(b)及び(c)に示されるように、この積層体Aにおいて、絶縁フィルム3は、導電基材2及び金属化樹脂フィルム1の間に配置されている。また、積層体Aにおいて、前記金属化樹脂フィルム1の片面に形成されている第1の金属膜1bは、前記積層体Aの表面側に露出するように配置されている。以下、積層体Aを構成する導電基材2、絶縁フィルム3、及び、金属化樹脂フィルム1を説明する。
【0016】
(導電基材)
導電基材2は、積層体Aにおいて導体の機能を果たす基材であって、いわば下側導体として機能する基材である。
【0017】
導電基材2は、導電性を有する材料で形成された基材である限り、その種類は限定されず、例えば、公知の導電性の基材を広く適用することができる。例えば、導電基材2として、公知の金属板、金属箔、合金板、合金箔、導電性ゴム材料等を挙げることができる。
【0018】
導電基材2は、ただ一層で形成される単層構造の基材であってもよいし、あるいは、複数の層が積層して形成されてなる積層構造を有することもできる。斯かる積層構造の積層数は特に限定されない。
【0019】
導電基材2の一例として、導電板と、導電性ゴムと、金属箔とがこの順に積層されてなる基材を挙げることができる。この場合、積層体Aにおいて、例えば、金属箔が、積層体の内側、つまり、絶縁フィルム3側に配置される。導電板及び金属箔の間に導電性ゴムが介在することで、密着性が向上し、また、金属箔が表面に配置されることで、表面がより平滑になる。また、導電基材2が導電板を備えることで、積層体Aの電気的接続が容易になりやすい。
【0020】
前記導電板としては、例えば、金属単体で形成される板、合金等の複数の金属で形成される板を挙げることができ、具体例としては、真鍮板である。
【0021】
前記導電性ゴムの種類も特に限定されず、例えば、公知の導電性ゴムを広く採用することができる。導電性ゴムの材質も、例えば、適度な柔らかさと十分な導電性を有している限りは特に限定されない。本発明の測定方法では、積層体Aに抵抗器を接続することがあるので、その抵抗器の抵抗値よりも低い抵抗値を有する導電性ゴムが好適に採用される。
【0022】
前記金属箔としては、例えば、金属単体で形成される箔、合金等の複数の金属で形成される箔を挙げることができ、具体例としては、アルミニウム箔を挙げることができる。
【0023】
導電基材2を製造する方法も特に限定されず、例えば、公知の製造方法によって、導電基材2を得ることができ、また、市販品等から導電基材2を入手することもできる。導電基材2が前述の積層構造を有する場合にあっても、各層を構成する材料は、公知の製造方法によって得ることができ、市販品等から入手することもでき、それらを順次積層させることで積層構造を有する導電基材2を得ることができる。
【0024】
(絶縁フィルム)
絶縁フィルム3は、前述のように積層体Aにおいて、導電基材2及び金属化樹脂フィルム1の間に配置される層であり、導体間(前記下側導体と、後記する上側導体との間)に絶縁性をもたらすための層である。従って、絶縁フィルム3の両面いずれにも、金属化樹脂フィルム1が有する金属膜のような導電性の材料は形成されていないことが好ましい。
【0025】
絶縁フィルム3は、絶縁性を有する材料で形成されている限り特に限定されず、例えば、各種の樹脂材料で形成されるフィルムを挙げることができる。樹脂材料としては、具体的に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、その他、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の各種樹脂を例示することができる。中でも絶縁フィルム3を構成する樹脂としては、オレフィン樹脂であることが好ましく、ポリプロピレンであることがさらに好ましい。つまり、絶縁フィルム3は、ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
【0026】
絶縁フィルム3は、ただ一層で形成される単層構造のフィルムであってもよいし、あるいは、複数の層が積層して形成されてなる積層フィルムとすることもできる。
【0027】
絶縁性フィルム3を製造する方法も特に限定されず、例えば、公知の製造方法によって、絶縁性フィルム3を得ることができ、また、市販品等から絶縁性フィルム3を入手することもできる。
【0028】
絶縁性フィルム3の厚さは、測定対象の金属化樹脂フィルムの厚さよりも十分に大きいことが好ましい。従って、絶縁性フィルム3の厚さは、測定対象の金属化樹脂フィルムの厚さに応じて適宜設定でき、例えば、金属化樹脂フィルムの厚さの1~10倍の厚さとすることができる。
【0029】
図1(d)に示すように、絶縁フィルム3には、開口部3aが形成されている。開口部3aは、絶縁フィルム3の一部が切り抜かれて形成されている。この開口部3aは、絶縁フィルム3の厚み方向に該フィルムを貫通するように形成されている。以下、図1(d)に示す絶縁フィルム3において、開口部3aの外側のフィルム部分を「枠部3b」と表記する。
【0030】
開口部3aの形状は特に限定されず、例えば、絶縁フィルム3の平面視において長方形、正方形等の四角形状、円形状、楕円形状、その他各種多角形状や、不定形状とすることができ、中でも、後記する金属化樹脂フィルムが開口部3a内に収まりやすいという点で、長方形、正方形等の四角形状であることが好ましい。
【0031】
開口部3aの大きさも特に限定されず、測定対象である金属化樹脂フィルムの大きさに応じて適宜の大きさとすることができる。後記するように金属化樹脂フィルム1の一部は開口部3a全体に収容されることから、金属化樹脂フィルム1の一部(特に中央部)を収容できるサイズの開口部3aが形成されていることが好ましい。
【0032】
開口部3aは、絶縁フィルム3の内側に形成されている限り、その形成位置は特に限定されず、後記する沿面放電が起こるのをより抑止しやすいという点で、図1(d)に示すように、絶縁フィルム3の内側であって、中央部を含むように形成されていることが好ましい。
【0033】
積層体Aにおいて、絶縁フィルム3は、下側導体である導電基材2上に載置される。導電基材2が、前述のように、導電板と、導電性ゴムと、金属箔とがこの順に積層されてなる基材である場合は、絶縁フィルム3は金属箔(例えば、アルミニウム箔)上に載置される。
【0034】
(金属化樹脂フィルム)
金属化樹脂フィルム1は、本発明の測定方法における測定対象物である。金属化樹脂フィルム1は、樹脂フィルム1aと金属膜1bとで形成されるフィルムであって、例えば、図1(a)及び(c)に示されるように、樹脂フィルム1aの片面に第1の金属膜1bが形成されてなるフィルムである。本発明では、特に樹脂フィルム1aの片面のみに第1の金属膜1bが形成されてなるフィルムを測定対象とする。
【0035】
本発明の測定方法では、種々の金属化樹脂フィルムを測定対象とすることができ、例えば、コンデンサ素子を形成するために用いられる金属化樹脂フィルムを広く本発明の測定方法の対象とすることができる。具体的には、後記する本発明の金属化樹脂ポリプロピレンフィルムをはじめ、公知のコンデンサ素子用の金属化ポリプロピレンフィルムはもちろん、その他、ポリプロピレン以外の樹脂で形成された樹脂フィルムが金属化されてなる金属化樹脂フィルムも本発明の測定対象とできる。樹脂フィルムに形成される金属の種類も特に限定されず、コンデンサ素子用の金属化樹脂フィルムに使用される各種の金属が形成されたフィルムを本発明の測定方法の測定対象とすることができる。
【0036】
積層体Aにおいては、第1の金属膜1bが積層体Aの表面側に露出するように配置される。つまり、金属化樹脂フィルム1は、第1の金属膜1b側の面が絶縁フィルム3と逆側に位置するように絶縁フィルム3上に配置される。この場合において、金属化樹脂フィルム1の金属膜が形成されていない側の面が絶縁フィルム3側に配置される。
【0037】
積層体Aにおいては、第1の金属膜1bが積層体Aの表面側に露出するように配置されることで、斯かる第1の金属膜1bは、積層体Aにおける導体との機能を果たし、いわば上側導体として機能する。従って、積層体Aは、第1の金属膜1bで形成される上側導体と、導電基材2で形成される下側導体とを有する。なお、上側導体、下側導体なる記載は、図1(a)のように導電基材2を試験台等に設置した状態を基準にした場合に上下方向を表現したものに過ぎず、必ずしも第1の金属膜1bが上側、導電基材2が下側に配置されることを意図したものではない。
【0038】
積層体Aにおいて、金属化樹脂フィルム1は、絶縁フィルム3に接触すると共に、絶縁フィルム3が有する開口部を通じて導電基材2にも接触して配置される。詳述すると、金属化樹脂フィルム1は、絶縁フィルム3の開口部3a以外の部分、つまり、前述の枠部3b(図1(d)参照)の表面に接触していると共に、開口部3aを通じて露出している導電基材2の表面にも接触して配置されている。
【0039】
従って、図1(b)に示すように、積層体Aでは、金属化樹脂フィルム1の一部が開口部3aに嵌まり込んでいる領域が存在する。以下、当該領域を「領域R」と表記する。
【0040】
本発明の測定方法では、領域Rのすべての範囲に第1の金属膜1bを配置させる。仮に金属化樹脂フィルム1に金属膜が形成されていない部位(いわゆるマージン)が形成されていたとしても、当該マージンと領域Rが重ならないようにする。これによって、金属化樹脂フィルム1の絶縁破壊点数を高い精度で測定することが可能になる。
【0041】
また、測定対象である金属化樹脂フィルム1において、金属膜が他の部位よりも厚く形成された、いわゆるヘビーエッジを有する場合、斯かるヘビーエッジは、領域Rに重ならないようにする。これによっても、金属化樹脂フィルム1の絶縁破壊点数を高い精度で測定することが可能になる。
【0042】
(工程1)
工程1では、積層体Aに電圧を印加する。つまり、工程1では、導電基材2(下側導体)と第1の金属膜1b(上側導体)との間で、電圧を印加する。特に工程1では、第1の金属膜1b表面に電極を載置して第1の金属膜1bと導電基材2との間で金属化樹脂フィルム1に電圧を印加する。
【0043】
導電基材2(下側導体)と第1の金属膜1b(上側導体)との間に印加するためには電気的接続が必要となる。下側導体には、導電基材2に導線をつなぐことで容易に電気的接続ができる。これに対し、上側導体は金属膜1bであるので、電気的接続を容易にするために電極を用いる。具体的には、図1(a)に示すように、電極4を金属膜1b上に載置することで、電気的接続を行うことができる。
【0044】
従って、工程1では、第1の金属膜1b表面に電極4を載置して第1の金属膜1bと導電基材との間で電圧を印加する。電極4が第1の金属膜1b表面に載置されると、電極4の自重によって、金属膜1b表面と電極4との電気的接続が可能となる。
【0045】
電極4は、第1の金属膜1b表面のどの部分にも載置することができるが、前記領域R以外の部分に載置することが好ましい。これにより、絶縁破壊点数のカウントが容易になり、測定精度がより向上する。
【0046】
工程1で使用する電極の種類は特に限定されず、公知の電極を広く使用することができる。例えば、本発明の測定方法では、真鍮製の円柱電極を使用することができる。
【0047】
工程1において印加するにあたっては、積層体A及び電極4の他、市販の高圧電源及び抵抗器等を使用し、図1(a)に示すようにこれらを直列に接続して、導電基材2(下側導体)と第1の金属膜1b(上側導体)に配線することができる。抵抗器が接続されることで、電圧印加時の過電圧(オーバーシュート)が防止されやすく、また,絶縁破壊時に過度な短絡電流が流れるのが抑制されやすい。抵抗器の抵抗値は試験対象物に応じて適宜設定することができ、例えば、数百Ω~数百kΩとすることができる。
【0048】
印加条件は特に限定されず、測定対象の金属化樹脂フィルム1の材料種及び厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、所定の電圧で所定時間印加することで1回目の印加を行い、次いで、1回目の印加電圧よりも高い電圧で同様に所定時間印加し、この操作をn回(nは整数)行うことで、工程1の印加を実施することができる。この場合、印加の回数を重ねる度に電圧を段階的又は連続的に上昇させることができる。各回の印加時間も通常は同じ時間とすることができる。また、各印加の度に金属化樹脂フィルム1に発生した絶縁破壊点数を、後記する方法によりカウントすることができる。
【0049】
ここで、工程1の印加をn回目(nは整数)まで段階的に電圧を上昇させて実施する場合について説明する。
【0050】
印加の回数(つまり、nの値)は特に限定されず、例えば、2~10回、好ましくは3~8回である。なお、電圧を連続的に昇圧する方式を採用する場合は,後記する音、光または瞬時電流に基づいてカウントすることができる。
【0051】
工程1において、開始電圧(つまり1回目に印加する電圧)をV1(V)、金属化樹脂フィルム1の厚さをD1(μm)とした場合、V1/D1(V/μm)の値は300以上とすることができる。また、工程1の印加をn回目(nは整数)まで段階的に電圧を上昇させて実施した場合において、n回目の電圧をVn(V)とした場合、Vn/D1(V/μm)の値は700以下とすることができる。開始電圧V1からn回目の印加電圧Vnまで、例えば、100V間隔で段階的に電圧を上昇させることができる。
【0052】
工程1で印加する前にあらかじめ、積層体Aを除電ブラシでなでつけることが好ましい。これにより、各層の間の空隙、特に、金属化樹脂フィルム1とその下層との間に仮に空隙が生じていたとしても、その空隙が取り除かれやすい。このような除電ブラシによる処理後においてもたとえ空隙が残存していたとしても、工程1の印加によって静電吸着が起こるので、これにより、空隙はさらに除去され、より正確な絶縁破壊点数を計測することが可能となる。印加を始めた後は、さらなる除電ブラシによる処理は不要とすることができる。
【0053】
印加によって発生する絶縁破壊点数をカウントする方法は特に限定されない。例えば、印加後の金属化樹脂フィルム1を目視し、観測された絶縁破壊部位を数えることで、絶縁破壊点数を把握することができる。上述のように、通常、印加は種々の電圧で繰り返し行うので、各印加の度に発生する絶縁破壊点数をカウントすることができる。従って、2回目以降の印加では、累積の絶縁破壊点数を計測できる。
【0054】
目視で絶縁破壊点数をカウントする場合は、具体的には印加後の金属化樹脂フィルム1を目視し、視認される絶縁破壊部分をカウントする。詳述すると、金属化樹脂フィルム1に高い電圧がかかると,耐電圧が弱い箇所が絶縁破壊を起こし、この絶縁破壊が起こると瞬間的に金属化樹脂フィルム1が発熱することでフィルム温度が上昇する。この温度上昇により、上側導体である第1の金属膜が蒸散し、これによって、絶縁が回復、いわゆるセルフヒーリング現象が生じる。このセルフヒーリングした痕は、金属膜が消失しているので、当該箇所の光透過性のために周囲よりも白く視認される。従って、電圧を一定時間印加した後、その絶縁破壊した箇所(セルフヒーリングした箇所)の数を数えることで、金属化樹脂フィルム1の絶縁破壊点数をカウントすることができ、これにより、金属化樹脂フィルム1の耐電圧性を評価することができる。
【0055】
上記目視に替えて、若しくは、上記目視と組み合わせて、音及び光に基づいて絶縁破壊点数をカウントすることもできる。音に基づいて絶縁破壊点数をカウントする場合、絶縁破壊時には特徴的な音を発するので、印加の間に発生られたその音の数を絶縁破壊点数とすることができる。光に基づいて絶縁破壊点数をカウントする場合、絶縁破壊時には特徴的な光が放射されるので、印加の間に光った数を絶縁破壊点数とすることができるし、あるいは、その光を光センサー等で感知することで、絶縁破壊点数をカウントすることもできる。
【0056】
絶縁破壊点数をカウントするための他の方法としては、絶破壊時には、瞬時電流が流れるという特性を利用して、瞬時電流に基づく閾値を設定し、その閾値超えた回数を絶縁破壊点数とすることもできる。
【0057】
好ましい絶縁破壊点数のカウント方法は、上記の目視によるカウント、音によるカウント、光によるカウント、瞬時電流に基づく閾値によるカウントすべてを実行し、それらの中で最大のカウント数を金属化樹脂フィルム1の絶縁破壊点数とすることである。特に、印加によって生じる破壊痕が重なり合う場合は絶縁破壊点数を正確にカウントすることが難しくなり、測定精度の低下が起こり得るので、この点においても、複数のカウント方法を実行し、それらの中で最大のカウント数を把握することが望ましい。
【0058】
本発明の測定方法において、金属化樹脂フィルム1の絶縁破壊点数の決定方法の一例として、印加をn回行ったとして(ただし、最初の印加は0回目とする)、n/2回目(ただし、nが奇数の場合は(n/2)+0.5回目又は(n/2)-0.5回目とする、望ましくはn/2)+0.5回目)までの累積の絶縁破壊点数をSとした場合、Sを前記開口部に面積で除した値を金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数(個/cm)とすることができる。従って絵、5回の印加(つまり、n=5)を行った場合は、例えば、3回目までの絶縁破壊点数(1~3回目までの累積の絶縁破壊点数)を金属化樹脂フィルム1の絶縁破壊点数として採用することができる。また、7回の印加(つまり、n=7)を行った場合は、例えば、4回目の絶縁破壊点数(詳しくは1~4回目までの累積の絶縁破壊点数)を金属化樹脂フィルム1の絶縁破壊点数として採用することができる。本発明の測定方法では、金属化樹脂フィルム1に所定の電圧を計5回異なる箇所に印加して各回の絶縁破壊点数をカウントし、5回の平均値を当該電圧での絶縁破壊点数とすることができる。
【0059】
本発明の測定方法では、前記金属化樹脂フィルム1の絶縁破壊点数(個/cm)に当該金属化樹脂フィルム1の厚さを乗じた値を金属化樹脂フィルムの「厚み換算絶縁破壊点数[(個/cm)・μm]」として得ることもできる。(個/cm)・μmは、個/cm・μm、(個/cm)×μm、個・μm/cm、または、個×μm/cmと表現することができる。
【0060】
上記のように本発明の測定方法で計測された絶縁破壊点数から、例えば、単位面積あたりの絶縁破壊点数を算出することもできる。例えば、上記のように計測された絶縁破壊点数を領域Rで除することによって、金属化樹脂フィルム1の単位面積あたりの絶縁破壊点数を導き出すことができる。
【0061】
本発明の測定方法では、絶縁破壊点数を測定する箇所を実質的に一定の範囲に確保でき、加えて、絶縁体の表面に沿って起こり得る放電、いわゆる沿面放電が生じにくいことから、測定の信頼性に優れるものである。
【0062】
本発明の測定方法で使用する積層体Aは、導電基材2(下側導体)と第1の金属膜1b(上側導体)との間に誘電体(つまり、樹脂フィルム1a)が挟まれた構造を有するものであって、特に領域Rにおける誘電体の厚さは、金属化樹脂フィルム1の樹脂フィルム1aの厚さ分だけとなる。これに対し、金属化樹脂フィルム1が枠部3bに接触している領域では、その枠部3bの厚さ分(つまり、絶縁フィルム3の厚さ分)だけ領域Rに存在する誘電体よりも厚くなる。このため、領域Rよりも領域R以外の部分の耐電圧性が高くなるので、本発明の測定方法では実質的に、領域Rの面積内のみで行われるものとみなすことができる。そうすると、本発明の測定方法では、領域Rに発生する絶縁破壊点数と領域Rの面積から容易に単位面積あたりに発生する絶縁破壊点数を計測できる。
【0063】
しかも、本発明の測定方法では金属化樹脂フィルム1の周縁部ではなく中心部に近いところで測定を実施できるので、沿面放電が抑止されやすい。開口部3aの位置が絶縁フィルム3の内側であるほど、金属化樹脂フィルム1の実質的な測定箇所もフィルムの内側の箇所となることで、この場合は不要な沿面放電がさらに抑止されやすくなり、測定精度が特に向上する。
【0064】
以上より、本発明の測定方法において、開口部3aが形成されている絶縁フィルム3を使用することは、絶縁破壊点数を測定する箇所を実質的に一定の範囲に確保できることと、沿面放電の抑止にあるといえる。
【0065】
従来の絶縁破壊試験(BDV試験)では,上側導体として真鍮等の金属を用いるので、前述のセルフヒーリングが生じない。このため、金属化樹脂フィルムに電圧をかけて最弱点で絶縁破壊すると、フィルムにはそれ以上の電圧をかけられなくなり(短絡状態になるため)、試験を終了しなければならない。これに対し、本発明の測定方法では、前述のセルフヒーリングが機能するので、絶縁破壊の度に回復することで、印加し続けることができる。これにより、絶縁破壊点数を容易かつ高精度にカウントでき、また、印加する電圧値を一定時間ごとに変動(例えば、上昇)させたときの挙動を確認することができる。すなわち、本発明の測定方法では、金属化樹脂フィルム1の最弱点だけではなく、該フィルムを実使用に近い条件で耐電圧性能を把握することができる。
【0066】
従って、本発明の測定方法では、従来のようにフィルムを用いてコンデンサ素子を形成してから評価するまでもなく、金属化樹脂フィルムの段階で、コンデンサ素子にした際の耐圧能力を予測することができる。一般に金属化樹脂フィルムの絶縁破壊点数は、金属化樹脂フィルムの耐電圧性、及び、上側導体である金属膜の性質(蒸散しやすいかどうか)に依拠するところ、本発明では上側導体として第1の金属膜1bを用いるので、実際にコンデンサ素子にしたときに近い特性を本発明の測定方法で把握することができる。
【実施例0067】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0068】
(製造例1)
ポリプロピレン樹脂ペレット(PP樹脂A1〔Mw=32万、Mw/Mn=9.3、メソペンタッド分率[mmmm]=95%、プライムポリマー製〕と、PP樹脂A2〔〔Mw=35万、Mw/Mn=7.7、メソペンタッド分率[mmmm]=96.5%、大韓油化製〕とを、質量比67:33で混合された樹脂ペレット)を押出機に供給し、230℃の温度で溶融した後、溶融物を目開き寸法が30μmであるポリマーフィルタを通過させた。ポリマーフィルタを通過させた溶融物をTダイを用いて押出し、表面温度を96℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させることで、厚さ約138μmであるキャスト原反シートを製造した。このキャスト原反シートを146℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸し、直ちに室温まで冷却した後、テンターにて165℃の温度で横方向に10倍に延伸して、厚さ2.3μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、蒸着装置を用いて公知の方法で二軸延伸ポリプロピレンフィルムに金属層を積層し、金属化ポリプロピレンフィルムを得た。蒸着は、冷却ロールの温度を-23℃、膜抵抗を20Ω/□、フィルムの搬送速度を150m/分で行った。
【0069】
(製造例2)
ポリマーフィルタの目開き寸法を20μmに変更したこと以外は製造例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0070】
(製造例3)
ポリマーフィルタの目開き寸法を10μmに変更したこと以外は製造例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0071】
(製造例4)
ポリマーフィルタの目開き寸法を5μmに変更したこと以外は製造例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0072】
(製造例5)
ポリプロピレン樹脂ペレットを、PP樹脂B〔Mw=34万、Mw/Mn=6.3、メソペンタッド分率=98%、プライムポリマー製〕に変更し、金属ドラムの表面温度を90℃に変更したこと以外は製造例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0073】
(製造例6)
ポリプロピレン樹脂ペレットを、PP樹脂Bに変更したこと以外は製造例2と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0074】
(製造例7)
ポリプロピレン樹脂ペレットを、PP樹脂Bに変更したこと以外は製造例3と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0075】
(製造例8)
ポリプロピレン樹脂ペレットを、PP樹脂Bに変更したこと以外は製造例4と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0076】
(絶縁破壊点数の測定方法)
真鍮板(320mm×250mm)、導電性ゴム(280mm×150mm)及びアルミニウム箔(280mm×150mm)をこの順に積層することで導電基材を形成した。この導電基材のアルミニウム箔側の面上に、中央部に四角形状(100mm×10mm)の開口部(以下、当該部分を「開口」または「開口部」と表記する)を有する絶縁フィルム(ポリプロピレンシート、外形は280mm×150mm、厚さは22μm)を載置した。次いで、絶縁フィルムの上に、測定用の金属化ポリプロピレンフィルムを載置することで積層体を作製した。このとき、測定用の金属化ポリプロピレンフィルムは、開口部を通じて露出している導電基材(具体的には、導電基材のアルミニウム箔)の全面に接するように、かつ、金属化ポリプロピレンフィルムの金属蒸着面が表面側に露出するように載置した。次いで、前記露出させた金属蒸着面上に、円柱の真鍮電極(直径25mm、高さ65mm)を載置した。
【0077】
次いで、導電基材の真鍮板と真鍮電極とを直流電源により電気的に接続した。そして、20℃の環境下、900Vの電圧(開始電圧)を1分間印加した後、測定用金属化ポリプロピレンフィルムの開口部内に配置された領域における絶縁破壊箇所の数を目視で数えた。金属化ポリプロピレンフィルムに絶縁破壊が起こると、絶縁破壊部分は、絶縁破壊していない部分に比べて白濁状に視認されるので、当該部分を絶縁破壊箇所として、その個数をカウントした。このカウントの後、1000Vの電圧を1分間印加した後、同様に絶縁破壊箇所の数を目視で数えた。以下、電圧を100Vずつ上昇させて各電圧で1分間印加したときの発生する絶縁破壊箇所の数を目視で数え、この操作を1400V(終了電圧)まで行ってすべての印加を終了した。つまり、印加は計5回(n=5、900Vの印加は0回目としている)行った。
【0078】
すべての印加が終了した後、n/2回目、つまり、3回目(1200V)までの印加で発生した累積の絶縁破壊点数を開口部の面積(100mm×10mm=10cm)で除した値を、金属化ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊点数(個/cm)とした。また、当該絶縁破壊点数(個/cm)に金属化ポリプロピレンフィルムの厚さ(2.3μm)を乗じた値を、金属化ポリプロピレンフィルムの厚み換算絶縁破壊点数(個/cm・μm)とした。
【0079】
(測定結果)
表1は各製造例で得られた絶縁破壊点数の測定条件及び測定結果を示す。表1中、V1は開始電圧(V)、D1は金属化ポリプロピレンフィルムの厚さ(μm)、Vnは終了電圧を意味する。また、図2(A)及び(B)にはそれぞれ、製造例1~4及び製造例5~8の絶縁破壊点数の測定結果を示す。
【0080】
【表1】
【符号の説明】
【0081】
A:積層体
1:金属化樹脂フィルム
1a:樹脂フィルム
1b:第1の金属膜
2:導電基材
3:絶縁フィルム
3a:開口部
3b:枠部
4:電極
図1
図2