(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171319
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】金属化ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
H01G4/32 511G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077901
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤城 義和
(72)【発明者】
【氏名】中田 将裕
(72)【発明者】
【氏名】石渡 忠和
(72)【発明者】
【氏名】高垣 俊嗣
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082BC35
5E082EE05
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG19
5E082FG35
5E082PP09
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】耐絶縁破壊特性に優れる金属化ポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】本発明の金属化ポリプロピレンフィルムは、前記金属化ポリプロピレンフィルムの厚みが0.5~4.0μmであり、所定の絶縁破壊点数の測定条件にて測定される厚み換算絶縁破壊点数が1.90[(個/cm2)・μm]以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に第1の金属膜が形成された金属化ポリプロピレンフィルムであって、
前記金属化ポリプロピレンフィルムの厚みが0.5~4.0μmであり、
下記絶縁破壊点数の測定条件にて測定される厚み換算絶縁破壊点数が1.90[(個/cm2)・μm]以下である、金属化ポリプロピレンフィルム。
<絶縁破壊点数の測定条件>
真鍮板、導電性ゴム及びアルミニウム箔がこの順に積層されてなる導電基材の前記アルミニウム箔側の面に、10mm×100mmの開口を有する22μm厚さのポリプロピレンフィルム製絶縁フィルムを載置する。この絶縁フィルム上面に、前記金属化ポリプロピレンフィルムを、第1の金属膜が表面側に露出するように載置することで、前記金属化ポリプロピレンフィルムを、前記絶縁フィルムに接触させると共に、前記開口部を通じて前記アルミニウム箔にも接触させる。次いで、電極を前記第1の金属膜表面に載置し、前記第1の金属膜と前記導電基材との間で391(V/μm)、435(V/μm)、478(V/μm)、521(V/μm)、565(V/μm)、609(V/μm)の順にそれぞれ計6回を1分間印加し、3回目までの累積の絶縁破壊点数をカウントする。このカウント数を、前記絶縁フィルムの開口部の面積(1000mm2)で除した値を絶縁破壊点数とし、前記絶縁破壊点数に前記金属化ポリプロピレンフィルムの厚さを乗じた値を厚み換算絶縁破壊点数[(個/cm2)・μm]とする。
【請求項2】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、一視野あたり240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定機を用いて表面形状の計測を行った際、高さ0.02μm以上の突起部総体積が、一視野あたり950~1300μm3である、請求項1に記載の金属化ポリプロピレンフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、耐電圧性及び低い誘電損失特性等の優れた電気特性、並びに高い耐湿性を有する。これらの特性を生かして、電子及び電気機器において、例えば、高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバータ及びインバータ等のフィルター用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等のコンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく利用されている。また、ポリプロピレンフィルムは、近年需要が高まっている電気自動車及びハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバータ電源機器用コンデンサとしても利用され始めている。
【0003】
ポリプロピレンフィルムを上述のような各種コンデンサに適用するにあたり、ポリプロピレンフィルムの耐絶縁破壊特性を向上させることが重要な課題の一つとして知られており、そのための検討が広く行われている(例えば、特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の各種コンデンサ用途等の高性能化に対応すべく、ポリプロピレンフィルム自体の特性に対する要求も益々高まっており、特に耐絶縁破壊特性を従来よりもさらに向上させた金属化ポリプロピレンフィルムの開発が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、耐絶縁破壊特性に優れる金属化ポリプロピレンフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の測定方法によって計測される絶縁破壊点数を一定数以下に制御することで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に第1の金属膜が形成された金属化ポリプロピレンフィルムであって、
前記金属化ポリプロピレンフィルムの厚みが0.5~4.0μmであり、
下記絶縁破壊点数の測定条件にて測定される厚み換算絶縁破壊点数が1.90[(個/cm2)・μm]以下である、金属化ポリプロピレンフィルム。
<絶縁破壊点数の測定条件>
真鍮板、導電性ゴム及びアルミニウム箔がこの順に積層されてなる導電基材の前記アルミニウム箔側の面に、10mm×100mmの開口を有する22μm厚さのポリプロピレンフィルム製絶縁フィルムを載置する。この絶縁フィルム上面に、前記金属化ポリプロピレンフィルムを、第1の金属膜が表面側に露出するように載置することで、前記金属化ポリプロピレンフィルムを、前記絶縁フィルムに接触させると共に、前記開口部を通じて前記アルミニウム箔にも接触させる。次いで、電極を前記第1の金属膜表面に載置し、前記第1の金属膜と前記導電基材との間で391(V/μm)、435(V/μm)、478(V/μm)、521(V/μm)、565(V/μm)、609(V/μm)の順にそれぞれ計6回を1分間印加し、3回目までの累積の絶縁破壊点数をカウントする。このカウント数を、前記絶縁フィルムの開口部の面積(1000mm2)で除した値を絶縁破壊点数とし、前記絶縁破壊点数に前記金属化ポリプロピレンフィルムの厚さを乗じた値を厚み換算絶縁破壊点数[(個/cm2)・μm]とする。
項2
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、一視野あたり240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定機を用いて表面形状の計測を行った際、高さ0.02μm以上の突起部総体積が、一視野あたり950~1300μm3である、請求項1に記載の金属化ポリプロピレンフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金属化ポリプロピレンフィルムは耐絶縁破壊特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の金属化ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊点数の測定を説明する概略図であり、(a)は測定方法で使用する装置の側面図、(b)はその装置の平面図、(c)は、その装置の断面図、(d)はその装置に組み込まれる絶縁フィルムの斜視図である。
【
図2】(A)及び(B)にはそれぞれ、製造例1~4及び製造例5~8の絶縁破壊点数の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
本発明の金属化ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に第1の金属膜が形成され、前記金属化ポリプロピレンフィルムの厚みが0.5~4.0μmであり、下記絶縁破壊点数の測定条件にて測定される厚み換算絶縁破壊点数が1.90[(個/cm2)・μm]以下である。
<絶縁破壊点数の測定条件>
真鍮板、導電性ゴム及びアルミニウム箔がこの順に積層されてなる導電基材の前記アルミニウム箔側の面に、10mm×100mmの開口を有する22μm厚さのポリプロピレンフィルム製絶縁フィルムを載置する。この絶縁フィルム上面に、前記金属化ポリプロピレンフィルムを、第1の金属膜が表面側に露出するように載置することで、前記金属化ポリプロピレンフィルムを、前記絶縁フィルムに接触させると共に、前記開口部を通じて前記アルミニウム箔にも接触させる。次いで、電極を前記第1の金属膜表面に載置し、前記第1の金属膜と前記導電基材との間で391(V/μm)、435(V/μm)、478(V/μm)、521(V/μm)、565(V/μm)、609(V/μm)の順にそれぞれ計6回を1分間印加し、3回目までの累積の絶縁破壊点数をカウントする。このカウント数を、前記絶縁フィルムの開口部の面積(1000mm2)で除した値を絶縁破壊点数とし、前記絶縁破壊点数に前記金属化ポリプロピレンフィルムの厚さを乗じた値を厚み換算絶縁破壊点数とする。
【0013】
絶縁破壊点数の測定方法及び測定条件等については、後記する「2.絶縁破壊点数の測定方法」の項で詳述する。
【0014】
1.金属化ポリプロピレンフィルム
金属化ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に金属膜が設けられて形成される。本明細書では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方の面に形成されている金属膜を「第1の金属膜」と表記する。二軸延伸ポリプロピレンフィルムとは、ポリプロピレン樹脂が二軸延伸されて形成されるフィルムを示す。
【0015】
(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分とする。本明細書において、「主成分」とは、二軸延伸ポリプロピレンフィルム中に固形分換算で50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上含むことをいう。
【0016】
ポリプロピレン樹脂の種類は特に制限されず、例えば、コンデンサ用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成するために用いられているポリプロピレン樹脂を広く使用することができる。
【0017】
ポリプロピレン樹脂の具体例として、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等のプロピレンホモポリマー;プロピレンとエチレンとのコポリマー;長鎖分岐ポリプロピレン;超高分子量ポリプロピレン等が挙げられる。好ましいポリプロピレン樹脂はプロピレンホモポリマーであり、耐熱性が向上しやすいという観点から、アイソタクチックポリプロピレンがより好ましく、オレフィン重合用触媒の存在下でポリプロピレンを単独重合して得られるアイソタクチックポリプロピレンがさらに好ましい。特に本発明のポリプロピレンフィルムは、立体規則性が高いポリプロピレン樹脂を含むことにより、自由体積及び相対自由体積が前述の所望の値に調節されやすい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂は、1種単独であってもよいし、異なる2種以上であってもよい。
【0018】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂は、異なる2種以上を組み合わせることが好ましく、この場合、金属化ポリプロピレンフィルムは耐絶縁破壊特性が向上しやすい。例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂は、Mw/Mnが8以上(好ましくは8.5以上、より好ましくは9以上)であるポリプロピレン樹脂Aと、Mw/Mnが8未満(好ましくは7.9以下、より好ましくは7.8以下)であるポリプロピレン樹脂Bとを含むことが好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂A及びポリプロピレン樹脂Bのみからなるものであってもよい。
【0019】
ポリプロピレン樹脂AのMw/Mnは、例えば、15以下、好ましくは13以下、より好ましくは12以下であり、ポリプロピレン樹脂BのMw/Mnは、例えば、5以上、好ましくは6以上である。ポリプロピレン樹脂A及びポリプロピレン樹脂Bの含有割合は特に限定されず、例えば、質量比でポリプロピレン樹脂A:ポリプロピレン樹脂Bを1:99~99:1とすることができ、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、30:70~70:30特に好ましい。
【0020】
以下、本明細書において、主成分であるか否かを特に明記せずに「ポリプロピレン樹脂」というときは、特段の断りがない限り、主成分としてのポリプロピレン樹脂と、主成分以外のポリプロピレン樹脂との両方を意味する。例えば、「前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましい。」と記載されている場合、主成分としてのポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であることが好ましいことと、主成分以外のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であることが好ましいこととの両方を意味する。
【0021】
前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましく、25万以上40万以下であることがより好ましい。前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であると、樹脂流動性が適度となる。その結果、キャスト原反シートの厚さの制御が容易であり、厚み均一性が良好で薄い延伸フィルムを作製することが容易となる。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの力学特性、熱-機械特性、延伸成形性等の観点からも重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂を2種以上使用する場合、上記Mwが25万以上33万未満のポリプロピレン樹脂と上記Mwが33万以上45万以下のポリプロピレン樹脂を併用することが好ましい。
【0022】
前記ポリプロピレン樹脂の数平均分子量Mnは、30000以上53000以下であることが好ましく、33000以上52000以下であることがより好ましい。
【0023】
前記ポリプロピレン樹脂のz平均分子量Mzは、500000以上2100000以下であることが好ましく、700000以上1700000以下であることがより好ましい。
【0024】
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]は、5以上12以下であることが好ましく、5以上11以下であることがより好ましく、5以上10以下であることがさらに好ましい。前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]が5以上12以下であると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、厚みムラのない極薄化された二軸延伸プロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。
【0025】
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]は、10以上70以下であることが好ましく、15以上60以下であることがより好ましく、15以上50以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本明細書において、前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、z平均分子量(Mz)、及び、分子量分布(Mw/Mn、及び、Mz/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定した値である。より具体的には、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機のHLC-8121GPC-HT(商品名)を使用して測定した値である。GPCカラムとして、東ソー株式会社製の3本のTSKgel GMHHR-H(20)HTを連結して使用する。カラム温度を140℃に設定して、溶離液としてトリクロロベンゼンを1.0ml/10分の流速で流して、MwとMnの測定値を得る。東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いてその分子量Mに関する検量線を作成して、測定値をポリスチレン値に換算して、Mw、Mn及びMzを得る。ここで、標準ポリスチレンの分子量Mの底10の対数を、対数分子量(「Log(M)」)という。
【0027】
前記ポリプロピレン樹脂は、分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(以下、「微分分布値差DM」ともいう)が、-5%以上14%以下であることが好ましく、-4%以上12%以下であることがより好ましく、-4%以上10%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
なお、「対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(微分分布値差DM)が、-5%以上14%以下である」とは、前記ポリプロピレン樹脂の有するMwの値より、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としての対数分子量Log(M)=4.5の成分と、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としてのLog(M)=6.0前後の成分とを比較したときに、差分が正の場合は低分子量成分の方が多く、差分が負の場合は高分子量成分の方が多いと理解できる。
【0029】
つまり、例えば、分子量分布Mw/Mnが5~12である場合を例にすると、分子量分布Mw/Mnが5~12であるといっても単に分子量分布幅の広さを表しているに過ぎず、その中の高分子量成分、低分子量成分の量的な関係までは分からない。そこで、樹脂流動性、延伸成形性、厚み均一性の観点から、前記ポリプロピレン樹脂は、分子量1万から10万の成分を、分子量100万の成分と比較して、微分分布値差が-5%以上14%以下となるようにポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0030】
前記微分分布値は、GPCを用いて、次のようにして得た値である。GPCの示差屈折(RI)検出計によって得られる、時間に対する強度を示す曲線(一般には、「溶出曲線」ともいう)を使用する。標準ポリスチレンを用いて得た検量線を使用して、時間軸を対数分子量(Log(M))に変換することで、溶出曲線をLog(M)に対する強度を示す曲線に変換する。RI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、強度を示す曲線の全面積を100%とすると、対数分子量Log(M)に対する積分分布曲線を得ることができる。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによって得る。したがって、「微分分布」とは、濃度分率の分子量に対する微分分布を意味する。この曲線から、特定のLog(M)のときの微分分布値を読みとる。
【0031】
前記ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm])は、98.0%未満であることが好ましく、97.5%以下であることがより好ましく、97.4%以下であることがさらに好ましく、97.0%以下であることが特に好ましい。また、前記メソペンタッド分率は、94.0%以上であることが好ましく、94.5%以上であることがより好ましく、95.0%以上がさらに好ましい。メソペンタッド分率が前記数値範囲内であると、適度に高い立体規則性によって樹脂の結晶性が適度に向上し、初期耐電圧性および長期間に渡る耐電圧性が向上する一方、キャスト原反シートを成形する際の適度な固化(結晶化)速度によって所望の延伸性を得ることができる。
【0032】
メソペンタッド分率([mmmm])は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。本明細書において、メソペンタッド分率([mmmm])は、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT-NMR)、JNM-ECP500を利用して測定した値をいう。観測核は、13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、ポリプロピレン樹脂を溶解する溶媒にはo-ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)を用いる。高温NMRによる測定方法は、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、第610頁」に記載の方法を参照して行うことができる。メソペンタッド分率([mmmm])のより詳細な測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0033】
前記ポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)は、96.0%以上であることが好ましく、より好ましくは97.0%以上である。また、前記ポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)は、99.5%以下であることが好ましく、より好ましくは99.0%以下である。ここで、ヘプタン不溶分は、多いほど樹脂の立体規則性が高いことを示す。前記ヘプタン不溶分(HI)が、96.0%以上99.5%以下であると、適度に高い立体規則性により、樹脂の結晶性が適度に向上し、高温下での耐電圧性が向上する。一方、キャスト原反シート成形の際の固化(結晶化)の速度が適度となり、適度の延伸性を有する。ヘプタン不溶分(HI)の測定方法は、実施例記載の方法による。
【0034】
前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1.0~8.0g/10minであることが好ましく、1.5~7.0g/10minであることがより好ましく、2.0~6.0g/10minであることがさらに好ましい。前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートの測定方法は、実施例記載の方法による。
【0035】
前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種類以上である場合、主成分のポリプロピレン樹脂は、少なくとも重量平均分子量Mwが25万以上34.5万未満であり、MFRが4~8g/10minであることが好ましい。また、前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種類以上である場合、主成分以外のポリプロピレン樹脂は、少なくとも重量平均分子量Mwが34.5万以上45万以下であり、MFRが1g/10min以上4g/10min未満(更に好ましくは1g/10min以上3.9g/10min以下)であることが好ましい。
【0036】
ポリプロピレン樹脂中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、ポリプロピレン樹脂を基準(100質量部)として、50ppm以下であることが好ましい。
【0037】
前記総灰分(ポリプロピレン樹脂中に含まれる総灰分)は、極性をもった低分子成分の生成を抑制しつつコンデンサとしての電気特性を向上させるために、5ppm以上35ppm以下が好ましく、5ppm以上30ppm以下がより好ましく、10ppm以上25ppm以下がさらに好ましい。
【0038】
ポリプロピレン樹脂の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。例えば、例えば、気相重合法、塊状重合法及びスラリー重合法等の各種重合方法を用いてポリプロピレン樹脂を製造することができる。また、ポリプロピレン樹脂は、例えば、市販品等から入手することもできる。
【0039】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂以外に他の樹脂を含むことができる。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、添加剤を含むことができる。「添加剤」とは、一般的に、ポリプロピレン樹脂に使用される添加剤であって、本発明のポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤や紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等を挙げることができ、例えば、コンデンサ用のポリプロピレンフィルムに適用されている公知の添加剤を広く適用できる。
【0040】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、コンデンサが高容量になりやすいという点で、例えば、0.5~4.0μmの厚さを有することが好ましい。本発明のポリプロピレンフィルムの厚さは、外側マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製 高精度デジマチックマイクロメータ MDH-25MB)を用いて、JIS K 7130:1999 A法に準拠して測定される値である。
【0041】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの突起部総体積は特に限定されない。例えば、一視野あたり240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定機を用いて二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面形状の計測を行った際、高さ0.02μm以上の突起部総体積が、一視野あたり950~1300μm3であることが好ましい。この場合、金属化ポリプロピレンフィルムの長期にわたる絶縁破壊特性が向上しやすくなり、また、素子巻き加工をする際に、巻きシワが発生せず、最適に巻上げることができる。その結果、フィルム同士の間に均一な接触を生ずるので、耐電圧性及び長期間にわたる耐電圧性も向上する。
【0042】
突起部総体積は、光干渉式非接触表面形状測定機を使用して、三次元表面粗さ評価法を用いて、表面形状を計測することで求める。「三次元表面粗さ評価法」は、フィルム表面の全面の高さを評価するので、フィルム間の空隙を三次元的に評価することになる。従って、測定対象面の局所的な微細変化や変異を把握することができ、より正確な表面粗さを評価することができる。単なる突起の高さ(一般的な中心線平均粗さRaなどによる二次元の表面粗さ評価)ではなく、三次元的な突起部の合計の体積を用いて、フィルム間の空隙を評価することとなりで、より良好な耐電圧性及び長期にわたる耐電圧性を得ることができる。
【0043】
具体的に突起部総体積は、菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を光干渉式非接触表面形状測定機として使用して測定する。斯かる測定では、WAVEモードを用い、530whiteフィルター及び×20対物レンズを用いて、一視野あたり240μm×180μmの計測を計測対象のフィルム表面の任意の10箇所について行う。得られたデータは、メディアンフィルタによるノイズ除去処理を行った後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去する。これにより、粗面化表面の状態を適切に計測できる状態とする。
【0044】
突起部総体積は、「VertScan2.0」の解析ソフトウェア「VS-Viewer」のプラグイン機能「ベアリング」を用いて次のようにして求めることができる。「山側高さ閾値」を、所定の高さ(すなわち、0.02μm)に設定した後、「山側体積」として表示されるものが、一視野あたりの突起総体積になる。この測定を10箇所について行い、その平均値を、一視野あたりの突起部総体積とする。
【0045】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの突起部総体積は、例えば、エンボス法及びエッチング法等の公知の粗面化方法を使用して調節することができる。この場合、不純物の混入などの必要がない、β晶を用いる表面粗化法を用いることが好ましい。β晶の生成割合は、使用するポリプロピレン樹脂の分子構造等の特性を変えることで調整することができる。また、キャスト温度及びキャストスピード等の延伸条件によってもβ晶の割合をコントロールすることができる。さらに縦延伸工程のロール温度ではβ晶の融解割合を制御することができる。β晶生成及び融解の二つのパラメータについて最適な製造条件を選択することで、表面性を制御することができる。
【0046】
(二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法)
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法を広く採用することができる。例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、未延伸原反シートを用いて製造することが好ましい。従って、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法は、未延伸原反シートを延伸処理する工程を備えることができる。
【0047】
未延伸原反シートを製造する方法は特に限定されず、例えば、公知の方法を広く適用することができる。例えば、未延伸原反シートはポリプロピレン樹脂を含む原料を押出機に供給して加熱溶融し、Tダイから溶融押出をし、金属ドラムで冷却及び固化させることで得られる。
【0048】
未延伸原反シートを得るためのポリプロピレン樹脂は、例えば、ペレット形状とすることができ、具体的には、ポリプロピレン樹脂ペレット、ドライ混合されたポリプロピレン樹脂ペレット(及び/又は重合粉)あるいは、予め溶融混練して作製した混合ポリプロピレン樹脂ペレットを使用することができる。ポリプロピレン樹脂を含む原料に含まれるポリプロピレン樹脂は、1種単独であってもよいし、異なる2種以上であってもよい。ポリプロピレン樹脂を含む原料に含まれるポリプロピレン樹脂が異なる2種以上である場合、それらの種類は特に限定されず、種々のポリプロピレン樹脂を組み合わせることができる。
【0049】
なお、ポリプロピレン樹脂を含む原料は、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤や紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等を挙げることができ、例えば、コンデンサ用のポリプロピレンフィルムに適用されている公知の添加剤を広く適用できる。
【0050】
押出機によってポリプロピレン樹脂含む原料を溶融する際の温度(溶融温度)は、例えば、170℃以上320℃以下であり、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは220℃以上250℃以下である。
【0051】
押出機によってポリプロピレン樹脂含む原料を加熱溶融した後は、ポリマーフィルターを通過させてからTダイにより溶融押出することが好ましい。つまり、未延伸原反シートを製造するにあたっては、前記押出機と前記Tダイとの間にはポリマーフィルターを設置することが好ましい。このように未延伸原反シートを製造する場合、最終的に得られる本発明の金属化ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊点数がより少なくなりやすい。
【0052】
前記ポリマーフィルターのろ過精度、つまり、ポリマーフィルターの開き目寸法は、前記測定による絶縁破壊点数の値がより小さくなりやすく、耐絶縁破壊特性が向上しやすいという点で、20μm(98%カットサイズ)未満であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。ただし、吐出安定性が悪化しにくくするため、ポリマーフィルターの開き目寸法は狭くなり過ぎないようにすることが必要である。
【0053】
ポリマーフィルターの使用ろ材の種類は特に限定されず、公知のろ材を広く利用可能である。例えば、焼結金属不織布(ファイバー焼結体)や、積層焼結金網、パウダー焼結体等をポリマーフィルターとして使用できる。フィルタータイプとしては、リーフディスクフィルター、キャンドルフィルター、パックフィルターなどを制限なく利用可能である。中でも、差圧(圧力損失)も大きくならず、安定した吐出が得られる上、使用寿命も長いという点で、焼結金属不織布(ファイバー焼結体)を用いたリーフディスクタイプのフィルターを好ましく採用できる。
【0054】
押出機にて加熱溶融した原料を、前記ポリマーフィルターを通過させた後は、Tダイから溶融押出する。Tダイ温度は特に限定されず、例えば、170℃~320℃、好ましくは、200℃~300℃とすることができる。
【0055】
加熱溶融した原料は、Tダイから溶融押出された後、金属ドラムで冷却及び固化する。これにより、未延伸のキャスト原反シートが成形される。この冷却固化の際には、エアーナイフによるエアを樹脂に吹き付けることもできる。金属ドラムでの冷却にあたって、冷却温度(金属ドラム温度)は特に限定されない。例えば、80~140℃に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで冷却、固化させることで、未延伸のキャスト原反シートが成形され得る。金属ドラム温度は、好ましくは90℃~120℃、より好ましくは90℃~105℃である。
【0056】
得られる未延伸原反シートの厚みは、たとえば、0.05mm以上2mm以下であることが好ましく、0.1mm以上1mm以下であることがより好ましい。
【0057】
得られた未延伸原反シートの延伸処理を行うことで、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造することができる。延伸は、縦及び横に二軸に配向せしめる二軸延伸が良く、延伸方法としては逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法の一例は次の通りである。まず、未延伸原反シートを100~160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に3~7倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて160℃以上の温度で幅方向に3~11倍に延伸した後、緩和、熱固定を施して巻き取る。巻き取られたフィルムは、例えば、20~45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に断裁され得る。
【0058】
上記方法で得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、必要に応じて、表面に凹凸処理を施すこともできる。凹凸を与える方法としては、エンボス法、エッチング法等、公知の各種粗面化方法を採用することができ、中でも、不純物の混入等の必要がないβ晶を用いた粗面化法が好ましい。β晶の生成割合は、一般的には、キャスト温度(前述の金属ドラムによる冷却温度)及びキャストスピードを変更することによって制御することができる。また、縦延伸工程のロール温度によってβ晶の融解/転移割合を制御することができ、これらのβ晶生成とその融解/転移の二つのパラメータについて最適な製造条件を選択することによって微細な粗表面性を得ることができる。
【0059】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片方の表面において、その表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.03μm以上0.08μm以下であることが好ましく、かつ、最大高さ(Rz、旧JIS定義でのRmax)で0.3μm以上0.8μm以下に微細粗面化されていることが好ましい。Ra及びRzが、上述の好ましい範囲にある場合、表面は、微細に粗化された表面になり得、コンデンサ加工の際には、素子巻き加工において巻きシワが発生し難く、好ましく巻上げることができる。更に、フィルム同士の間も均一な接触が可能となりえるので、耐電圧性及び長期間に渡る耐電圧性も向上し得る。
【0060】
「Ra」及び「Rz」(旧JIS定義のRmax)とは、例えばJIS-B0601:2001等に定められている方法によって、一般的に広く使用されている触針式表面粗さ計(例えば、ダイヤモンド針等による触針式表面粗さ計)を用いて測定された値をいう。「Ra」及び「Rz」は、より具体的には、例えば、東京精密社製、三次元表面粗さ計サーフコム1400D-3DF-12型を用い、JIS-B0601:2001に定められている方法に準拠して、RaおよびRz(旧JIS定義のRmax)を求めることができる。
【0061】
また、上記方法で得られた二軸ポリプロピレンフィルムには、必要に応じて、オンラインもしくはオフラインにてコロナ放電処理を行うことができる。これにより、ポリプロピレンフィルムと後記する金属膜との接着性を高めることができる。コロナ放電処理は、例えば、公知の方法を広く採用できる。コロナ放電処理は、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスのいずれの雰囲気下で行ってもよい。
【0062】
(金属化ポリプロピレンフィルム)
本発明の金属化ポリプロピレンフィルムは、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面のみに第1の金属膜が形成されている。第1の金属膜を単に「金属膜」と表記することもある。
【0063】
本発明の金属化ポリプロピレンフィルムにおいて、前記金属膜は、金属化ポリプロピレンフィルムがコンデンサとして使用される場合に電極として機能する。前記金属膜に用いられる金属としては、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、それらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛、アルミニウムが好ましい。
【0064】
金属膜の厚さは特に限定されず、コンデンサとして使用される公知の金属化ポリプロピレンフィルムと同様とすることができる。
【0065】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に金属膜を積層する方法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を例示することができる。生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。
【0066】
前記真空蒸着法における蒸着条件として、冷却ロールの温度は、ポリプロピレンフィルムの熱負けを防止する観点から、-20℃以下が好ましく、-23℃以下がより好ましい。
【0067】
前記真空蒸着法において、金属膜の厚さは、膜抵抗で制御する。前記真空蒸着法における蒸着条件として、膜抵抗は、コンデンサ素子の損失を抑制するという観点から、アルミニウム膜の場合、25Ω/sq以下であることが好ましく、20Ω/sq以下であることがより好ましい。亜鉛膜の場合、5Ω/sq以下であることが好ましく、4Ω/sq以下であることがより好ましい。前記膜抵抗は、自己回復性(セルフヒーリング性)の観点から、アルミニウム膜の場合、1Ω/sq以上であることが好ましく、5Ω/sq以上であることがより好ましい。亜鉛膜の場合、1Ω/sq以上であることが好ましく、2Ω/sq以上であることがより好ましい。前記金属膜の厚さ(膜抵抗)は、蒸着ライン速度と蒸発源の温度とにより調整することができる。
【0068】
蒸着により金属膜を積層する際のマージンパターンは、特に限定されるものではないが、コンデンサの保安性等の特性を向上させる点から、マージンによって区分けされた金属膜(分割電極)が、狭幅の金属膜(いわゆるヒューズ)でつながれた構造(特殊マージンパターン)であることが好ましい。保安性が高まり、コンデンサの破壊、ショートの防止、などの点からも効果的である。マージンを形成する方法はテープ法、オイル法など、一般に公知の方法が、何ら制限無く使用することができる。
【0069】
本発明の金属化ポリプロピレンフィルムは、0.5~4.0μmの厚さを有する。本発明の金属化ポリプロピレンフィルムの厚さは、外側マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製 高精度デジマチックマイクロメータ MDH-25MB)を用いて、JIS K 7130:1999 A法に準拠して測定される値である。
【0070】
本発明の金属化ポリプロピレンフィルムは、前記測定方法で計測される厚み換算絶縁破壊点数が1.90[(個/cm2)・μm]以下であることで、耐電圧性に優れるものとなるので、各種コンデンサ素子用途に好適に使用することができる。本発明の金属化ポリプロピレンフィルムの前記厚み換算絶縁破壊点数は、1.8[(個/cm2)・μm]以下であることが好ましく、1.7[(個/cm2)・μm]以下であることがより好ましく、1.6[(個/cm2)・μm]以下であることがさらに好ましく、1.5[(個/cm2)・μm]以下であることが特に好ましい。
【0071】
(コンデンサ)
本発明の金属化ポリプロピレンフィルムを用いてコンデンサ(コンデンサ素子)を形成することができる。コンデンサの構成は、本発明の金属化ポリプロピレンフィルムを備える限りは特に限定されない。
【0072】
コンデンサを製造する工程では、フィルムの巻き付け加工が行われる。例えば、本発明の金属化ポリプロピレンフィルムの金属膜と、二軸延伸ポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように、さらには、絶縁マージン部が逆サイドとなるように、2枚1対の前記金属化ポリプロピレンフィルムを重ね合わせて巻回する。この際、2枚1対の金属化ポリプロピレンフィルムを1~2mmずらして積層することが好ましい。用いる巻回機は特に制限されず、例えば、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW-N2型等を利用することができる。
【0073】
扁平型コンデンサを作製する場合、巻回後、通常、得られた巻回物に対してプレスが施される。プレスによってコンデンサの巻締まり・素子成形を促す。層間ギャップの制御・安定化を施す点から、与える圧力は、本発明の金属化ポリプロピレンフィルムの厚み等によってその最適値は変わり、例えば、2~20kg/cm2である。続いて、巻回物の両端面に金属を溶射してメタリコン電極を設けることによって、コンデンサを作製する。その後、さらに所定の熱処理が施すこともできる。例えば、コンデンサに対し、80~125℃の温度で1時間以上の常圧もしくは真空下にて熱処理を施すこともできる(以下、「熱エージング」と称することがある)。
【0074】
コンデンサに対して熱処理を施す工程において、熱処理の温度は、通常80℃以上、好ましくは90℃以上である。また、熱処理の温度は、通常130℃以下、好ましくは125℃以下である。コンデンサの熱処理により、前記金属化ポリプロピレンフィルムに基づくコンデンサを構成するフィルム間の空隙が減少し、コロナ放電が抑制され、しかも金属化フィルムの内部構造が変化して結晶化が進む。その結果、コンデンサの耐電圧性が向上し得る。
【0075】
コンデンサに対して熱処理を施す方法としては、例えば、真空雰囲気下で、恒温槽を用いる方法、高周波誘導加熱を用いる方法等が挙げられ、恒温槽を用いる方法を採用することが好ましい。熱処理の時間は、機械的及び熱的安定性の観点から、1時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましいく、熱シワや型付等の成形不良を防止する点で、20時間以下とすることがより好ましい。
【0076】
熱エージングしたコンデンサのメタリコン電極には、通常、リード線が溶接される。また、耐候性を付与し、とりわけ湿度劣化を防止するため、コンデンサをケースに封入してエポキシ樹脂でポッティングすることが好ましい。
【0077】
本発明の金属化ポリプロピレンフィルムを用いて得られるコンデンサは、優れた耐電圧性、耐久性及び信頼性を有する。
【0078】
2.絶縁破壊点数の測定条件
図1は、本発明の金属化ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊点数の測定方法を説明する概略図であって、(a)には測定方法で使用する装置の側面図を、(b)には前記装置の平面図を、
図1(c)には前記装置の断面図を示している。
図1(c)の断面図は具体的に、
図1(b)におけるa-a線断面図である。なお、
図1(a)では工程1での印加をするために設ける回路を図示しているが、(b)及び(c)ではその回路の図示は省略している。
【0079】
図1に示すように、前記測定方法では、導電基材2と、開口部が形成されたポリプロピレンフィルム製絶縁フィルム3と、前記金属化ポリプロピレンフィルム1(本発明の金属化ポリプロピレンフィルム)とを備える積層体Aを用いて測定が行われる。
図1(a)、(b)及び(c)に示されるように、この積層体Aにおいて、絶縁フィルム3は、導電基材2及び金属化ポリプロピレンフィルム1の間に配置されている。また、積層体Aにおいて、前記金属化ポリプロピレンフィルム1の片面に形成されている第1の金属膜1bは、前記積層体Aの表面側に露出するように配置されている。以下、積層体Aを構成する導電基材2、絶縁フィルム3を説明する。
【0080】
(導電基材)
導電基材2は、積層体Aにおいて導体の機能を果たす基材であって、いわば下側導体として機能する基材である。導電基材2は、真鍮板、導電性ゴム及びアルミニウム箔がこの順に積層されてなる3層積層体である。積層体Aにおいては、アルミニウム箔が絶縁フィルム3側に配置される。
【0081】
前記導電性ゴムの種類は特に限定されず、例えば、公知の導電性ゴムを広く採用することができる。導電性ゴムの材質も、例えば、適度な柔らかさと十分な導電性を有している限りは特に限定されない。前記測定方法では、積層体Aに抵抗器を接続することがあるので、その抵抗器の抵抗値よりも低い抵抗値を有する導電性ゴムが好適に採用される。
【0082】
(絶縁フィルム)
絶縁フィルム3は、前述のように積層体Aにおいて、導電基材2及び金属化ポリプロピレンフィルム1の間に配置される層であり、導体間(前記下側導体と、後記する上側導体との間)に絶縁性をもたらすための層である。従って、絶縁フィルム3の両面いずれにも、金属化樹脂フィルム1が有する金属膜のような導電性の材料は形成されていないことが好ましい。
【0083】
絶縁フィルム3は、開口部が形成されたポリプロピレンフィルムである。絶縁フィルム3は、測定対象の金属化ポリプロピレンフィルムの厚さよりも十分に大きいことが好ましいので、厚さを22μmとしている。
【0084】
図1(d)に示すように、絶縁フィルム3には、一部が切り抜かれて開口部3aが形成されている。開口部3aは、絶縁フィルム3の平面視において長方形状(10mm×100mm)に形成されている。この開口部3aは、絶縁フィルム3の厚み方向に該フィルムを貫通するように形成されている。
図1(d)では、示す絶縁フィルム3において、開口部3aの外側のフィルム部分を「枠部3b」と表記している。
【0085】
開口部3aは、絶縁フィルム3の内側に形成されている限り、その形成位置は特に限定されず、後記する沿面放電が起こるのをより抑止しやすいという点で、
図1(d)に示すように、絶縁フィルム3の内側であって、中央部を含むように形成されていることが好ましい。
【0086】
絶縁フィルム3は、積層体Aにおいて、下側導体である導電基材2上に載置される。具体的に絶縁フィルム3は導電基材2のアルミニウム箔上に載置される。
【0087】
(金属化ポリプロピレンフィルム)
金属化ポリプロピレンフィルム1は、測定対象となるフィルムであって、本発明の金属化ポリプロピレンフィルムである。前述のように、金属化ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルム1aと、その片面に形成された第1の金属膜1bとで構成されている。
【0088】
第1の金属膜1bは、積層体Aの表面側に露出するように配置される。つまり、金属化ポリプロピレンフィルム1は、第1の金属膜1b側の面が絶縁フィルム3と逆側に位置するように絶縁フィルム3上に配置される。第1の金属膜1bが積層体Aの表面側に露出するように配置されることで、斯かる第1の金属膜1bは、積層体Aにおける導体との機能を果たし、いわば上側導体として機能する。従って、積層体Aは、第1の金属膜1bで形成される上側導体と、導電基材2で形成される下側導体とを有する。なお、上側導体、下側導体なる記載は、
図1(a)のように導電基材2を試験台等に設置した状態を基準にした場合に上下方向を表現したものに過ぎず、必ずしも第1の金属膜1bが上側、導電基材2が下側に配置されることを意図したものではない。
【0089】
積層体Aにおいて、金属化ポリプロピレンフィルム1は、絶縁フィルム3に接触すると共に、絶縁フィルム3が有する開口部を通じて導電基材2にも接触して配置される。詳述すると、金属化ポリプロピレンフィルム1は、絶縁フィルム3の開口部3a以外の部分、つまり、前述の枠部3b(
図1(d)参照)の表面に接触していると共に、開口部3aを通じて露出している導電基材2の表面にも接触して配置されている。従って、
図1(b)に示すように、積層体Aでは、金属化樹脂フィルム1の一部が開口部3aに嵌まり込んでいる領域が存在する。以下、当該領域を「領域R」と表記する。
【0090】
金属化ポリプロピレンフィルム1は、領域Rのすべての範囲に第1の金属膜1bが位置するように配置させる。仮に金属化ポリプロピレンフィルム1に金属膜が形成されていない部位(いわゆるマージン)が形成されていたとしても、当該マージンと領域Rが重ならないようにする。これによって、金属化ポリプロピレンフィルム1の絶縁破壊点数を高い精度で測定することが可能になる。
【0091】
また、測定対象である金属化ポリプロピレンフィルム1において、金属膜が他の部位よりも厚く形成された、いわゆるヘビーエッジを有する場合、斯かるヘビーエッジは、領域Rに重ならないようにする。これによっても、金属化ポリプロピレンフィルム1の絶縁破壊点数を高い精度で測定することが可能になる。
【0092】
(電圧の印加及び絶縁破壊点数のカウント)
前記測定は、積層体Aに電圧を印加することで行う。この場合、導電基材2(下側導体)と第1の金属膜1b(上側導体)との間に印加するために電気的に接続する。下側導体には、導電基材2に導線をつなぐことで容易に電気的接続ができる。これに対し、上側導体は金属膜1bであるので、電気的接続を容易にするために電極4を用いる。
【0093】
具体的には、
図1(a)に示すように、電極4を金属膜1b上に載置することで、電気的接続を行うことができる。電極4が第1の金属膜1b表面に載置されると、電極4の自重によって、第1の金属膜1b(上側導体)と電極4との電気的接続が可能となる。電極4は、第1の金属膜1b表面のどの部分にも載置することができるが、前記領域R以外の部分に載置する。電極4としては、真鍮製の円柱電極を使用する。
【0094】
印加するにあたっては、積層体A及び電極4の他、市販の高圧電源及び抵抗器等を使用し、
図1(a)に示すようにこれらを直列に接続して、導電基材2(下側導体)と第1の金属膜1b(上側導体)に配線する。抵抗器が接続されることで、電圧印加時の過電圧(オーバーシュート)が防止されやすく、また,絶縁破壊時に過度な短絡電流が流れるのが抑制されやすい。抵抗器の抵抗値は試験対象物に応じて適宜設定することができ、例えば、数百Ω~数百kΩとすることができる。
【0095】
電極4を第1の金属膜表面に載置した後、前記第1の金属膜と導電基材との間で391(V/μm)、435(V/μm)、478(V/μm)、521(V/μm)、565(V/μm)、609(V/μm)の順に計6回それぞれ1分間印加する。そして、3回目までの印加(478(V/μm))で発生した累積の絶縁破壊点数をカウントする(つまり、1~3回目までの累積の絶縁破壊点数)。このカウント数を、前記絶縁フィルムの開口部の面積(つまり、10mm×100mm=1000mm2)で除した値を絶縁破壊点数とし、前記絶縁破壊点数に前記金属化ポリプロピレンフィルムの厚さを乗じた値を厚み換算絶縁破壊点数[(個/cm2)・μm]とする。なお(個/cm2)・μmは、個/cm2・μm、(個/cm2)×μm、個・μm/cm2、または、個×μm/cm2と表現することができる。
【0096】
上記印加をする前にあらかじめ、積層体Aを除電ブラシでなでつける。これにより、各層の間の空隙、特に、ポリプロピレンフィルム1とその下層との間に仮に空隙が生じていたとしても、その空隙を取り除くことができる。このような除電ブラシによる処理後においてもたとえ空隙が残存していたとしても、工程1の印加によって静電吸着が起こるので、これにより、空隙はさらに除去され、より正確な絶縁破壊点数を計測することが可能となる。印加を始めた後は、さらなる除電ブラシによる処理は不要とすることができる。
【0097】
絶縁破壊点数は、目視によるカウント、音によるカウント、光によるカウント、瞬時電流に基づく閾値によるカウントすべてを実行し、それらの中で最大のカウント数を、金属化ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊点数とする。
【0098】
目視での絶縁破壊点数をカウントでは、印加後の金属化ポリプロピレンフィルム1を目視し、視認される絶縁破壊部分をカウントする。金属化樹脂フィルム1に高い電圧がかかると,耐電圧が弱い箇所が絶縁破壊を起こし、この絶縁破壊が起こると瞬間的に金属化樹脂フィルム1が発熱することでフィルム温度が上昇する。この温度上昇により、上側導体である第1の金属膜が蒸散し、これによって、絶縁が回復、いわゆるセルフヒーリング現象が生じる。このセルフヒーリングした痕は、金属膜が消失しているので、当該箇所の光透過性のために周囲よりも白く視認される。従って、絶縁破壊した箇所(セルフヒーリングした箇所)の数を数えることで、金属化ポリプロピレンフィルム1の絶縁破壊点数を目視でカウントすることができる。
【0099】
音に基づいた絶縁破壊点数をカウントでは、絶縁破壊時には特徴的な音を発するので、印加の間に発生られたその音の数を絶縁破壊点数とする。光に基づいた絶縁破壊点数をカウントでは、絶縁破壊時には特徴的な光が放射されるので、印加の間に光った数を絶縁破壊点数とすることができるし、あるいは、その光を光センサー等で感知することで、絶縁破壊点数をカウントする。
【0100】
上記測定方法では、金属化ポリプロピレンフィルム1の周縁部ではなく中心部に近いところで測定を実施できるので、沿面放電が抑止されやすい。開口部3aの位置が絶縁フィルム3の内側であるほど、金属化樹脂フィルム1の実質的な測定箇所もフィルムの内側の箇所となることで、この場合は不要な沿面放電がさらに抑止されやすくなり、測定精度が高い。
【実施例0101】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0102】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂ペレット(PP樹脂A1〔Mw=32万、Mw/Mn=9.3、メソペンタッド分率[mmmm]=95%、プライムポリマー製〕と、PP樹脂A2〔〔Mw=35万、Mw/Mn=7.7、メソペンタッド分率[mmmm]=96.5%、大韓油化製〕とを、質量比67:33で混合された樹脂ペレット)を押出機に供給し、230℃の温度で溶融した後、溶融物を目開き寸法が30μmであるポリマーフィルタを通過させた。ポリマーフィルタを通過させた溶融物をTダイを用いて押出し、表面温度を96℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させることで、厚さ約138μmであるキャスト原反シートを製造した。このキャスト原反シートを146℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸し、直ちに室温まで冷却した後、テンターにて165℃の温度で横方向に10倍に延伸して、厚さ2.3μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、蒸着装置を用いて公知の方法で二軸延伸ポリプロピレンフィルムに金属層を積層し、金属化ポリプロピレンフィルムを得た。蒸着は、冷却ロールの温度を-23℃、膜抵抗を20Ω/□、フィルムの搬送速度を150m/分で行った。
【0103】
(比較例2)
ポリマーフィルターの目開き寸法を20μmに変更したこと以外は比較例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0104】
(実施例1)
ポリマーフィルターの目開き寸法を10μmに変更したこと以外は比較例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0105】
(実施例2)
ポリマーフィルターの目開き寸法を5μmに変更したこと以外は比較造例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0106】
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂ペレットを、PP樹脂B〔Mw=34万、Mw/Mn=6.3、メソペンタッド分率=98%、プライムポリマー製〕に変更したこと以外は比較例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0107】
(比較例4)
ポリプロピレン樹脂ペレットを、PP樹脂Bに変更したこと以外は比較例2と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0108】
(比較例5)
ポリプロピレン樹脂ペレットを、PP樹脂Bに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0109】
(比較例6)
ポリプロピレン樹脂ペレットを、PP樹脂Bに変更したこと以外は実施例2と同様の方法で金属化ポリプロピレンフィルムを得た。
【0110】
(絶縁破壊点数の測定方法)
真鍮板(320mm×250mm)、導電性ゴム(280mm×150mm)及びアルミニウム箔(280mm×150mm)をこの順に積層することで導電基材を形成した。この導電基材のアルミニウム箔側の面上に、中央部に四角形状(100mm×10mm)の開口部(以下、当該部分を「開口」または「開口部」と表記する)を有する絶縁フィルム(ポリプロピレンシート、外形は280mm×150mm、厚さは22μm)を載置した。次いで、絶縁フィルムの上に、測定用の金属化ポリプロピレンフィルムを載置することで積層体を作製した。このとき、測定用の金属化ポリプロピレンフィルムは、開口部を通じて露出している導電基材(具体的には、導電基材のアルミニウム箔)の全面に接するように、かつ、金属化ポリプロピレンフィルムの金属蒸着面が表面側に露出するように載置した。次いで、前記露出させた金属蒸着面上に、円柱の真鍮電極(直径25mm、高さ65mm)を載置した。
【0111】
次いで、導電基材の真鍮板と真鍮電極とを直流電源により電気的に接続した。そして、20℃の環境下、900V(391(V/μm))の電圧(開始電圧)を1分間印加した後、測定用金属化ポリプロピレンフィルムの開口部内に配置された領域における絶縁破壊箇所の数を目視で数えた。金属化ポリプロピレンフィルムに絶縁破壊が起こると、絶縁破壊部分は、絶縁破壊していない部分に比べて白濁状に視認されるので、当該部分を絶縁破壊箇所として、その個数をカウントした。このカウントの後、1000Vの電圧を1分間印加した後、同様に絶縁破壊箇所の数を目視で数えた。以下、電圧を100Vずつ上昇(つまり、435(V/μm)、478(V/μm)、521(V/μm)、565(V/μm)、609(V/μm)の順に印加)させて各電圧で1分間印加したときの発生する絶縁破壊箇所の数を目視で数え、すべての印加を終了した。
【0112】
すべての印加が終了した後、3回目(1100V、478(V/μm))までの印加で発生した累積の絶縁破壊点数を開口部の面積(100mm×10mm=10cm2)で除した値を、金属化ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊点数(個/cm2)とした。また、当該絶縁破壊点数(個/cm2)に金属化ポリプロピレンフィルムの厚さ(2.3μm)を乗じた値を、金属化ポリプロピレンフィルムの厚み換算絶縁破壊点数(個/cm2・μm)とした。
【0113】
(突起部総体積の測定方法)
突起部総体積は、光干渉式非接触表面形状測定機を使用して、三次元表面粗さ評価法を用いて、表面形状を計測することで求めた。具体的に突起部総体積は、菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を光干渉式非接触表面形状測定機として使用して測定した。斯かる測定では、WAVEモードを用い、530whiteフィルター及び×20対物レンズを用いて、一視野あたり240μm×180μmの計測を計測対象のフィルム表面の任意の10箇所について行った。得られたデータは、メディアンフィルタによるノイズ除去処理を行った後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去した。
【0114】
(短時間耐圧試験の試験方法)
実施例及び比較例で得られた金属化ポリプロピレンフィルムで製作したコンデンサの試験前の初期静電容量を、日置電機株式会社製LCRハイテスター3522-50を用いて測定した。次に、コンデンサに室温で1000Vの直流電圧を10秒印加した。電圧印加後のコンデンサの静電容量を同様に測定し、試験前後の容量変化率を、次の式
(静電容量の変化率)=[(電圧印加後の静電容量)-(初期静電容量)]/(初期静電容量)×100(%)
により算出した。次に、1050Vの直流電圧を10秒印加し、静電容量を同様に測定した。電圧を50Vずつ上げ,容量変化率が-1%を超えるまで、この操作を繰り返し行い、累積的に電圧を印加した。-1%を超える前と超えた後の電圧から、-1%になる電圧を直線補間(内挿)で求めた。試験は2個のサンプルで行い、その平均値w算出した。
【0115】
静電容量の測定方法は下記のとおりとした。日置電機株式会社製LCRハイテスター3522-50に、4端子プローブ9140を装着した。コンデンサの2つの端子(リード線)を4端子プローブ9140でつまみ、LCRハイテスター3522-50の内蔵電源より、0.1V,1kHzの交流電圧を印加した。表示値が落ち着いたところで、静電容量の値を読み取った。なお、ここに記載した以外の測定条件については、JIS C 5101-16:2009の「4.2.2 静電容量」に準じた。
【0116】
(測定結果)
表1は金属化ポリプロピレンフィルムの厚さ、絶縁破壊点数の測定条件及び測定結果を示す。合わせて表1には、金属化ポリプロピレンフィルムの突起部総体積の測定結果、吐出安定性の評価結果、及び、短時間耐圧試験の結果も示している。表1中、V1は1回目の電圧(開始電圧(V))、D1は金属化ポリプロピレンフィルムの厚さ(μm)、Vnは終了電圧(6回目の印加電圧)を意味する。
【0117】
【0118】
図2(A)及び(B)には絶縁破壊点数の測定結果を示している。
【0119】
表1及び
図2から、実施例1及び2で得られた金属化ポリプロピレンフィルムは絶縁破壊点数が少なく、優れた耐絶縁破壊特性を有していることがわかる。また、実施例1及び2で得られた金属化ポリプロピレンフィルムは突起部総体積、吐出安定性及び短時間耐圧試験共に金属化ポリプロピレンフィルムの水準を満たすこともわかった。