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  • 特開-ミリ波アンテナ用カバー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171324
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ミリ波アンテナ用カバー
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20221104BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20221104BHJP
   H01Q 15/12 20060101ALI20221104BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01Q1/42
H01Q15/14 B
H01Q15/12
G01S7/03 246
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077907
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【弁理士】
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】多田 健人
【テーマコード(参考)】
5J020
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
5J020AA06
5J020AA07
5J020BA05
5J020BD03
5J020DA10
5J046AA05
5J046AA13
5J046RA05
5J046RA08
5J070AB24
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】広い入射角度に対して、高い透過率を有するミリ波アンテナ用カバーを提供する。
【解決手段】ミリ波アンテナ用カバーは、平面上に行列をなす多数の正方形の格子を有する厚さが0.035mm~0.65mmであり、格子の線幅が0.05mm~0.20mmであり、格子の間隔が0.9mm~2.0mmである金属格子と、金属格子の両面に接合された、厚さが0.1mm~0.4mmであり、複素比誘電率が3.4-j0.003である樹脂製の2枚の誘電体フィルムとを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に行列をなす多数の正方形の格子を有する厚さが0.035mm~0.65mmであり、格子の線幅が0.05mm~0.20mmであり、格子の間隔が0.9mm~2.0mmである金属格子と、
前記金属格子の両面に接合された、厚さが0.1mm~0.4mmであり、複素比誘電率が3.4-j0.003である樹脂製の2枚の誘電体フィルムとを有する
ミリ波アンテナ用カバー。
【請求項2】
周波数79GHzの電磁波について、入射角度θが0度~30度の範囲にわたって、透過率の変化ΔTが0.0014以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のミリ波アンテナ用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波アンテナ用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるミリ波レーダーは、電磁波を受信および送信するアンテナと、そのアンテナを駆動する駆動回路を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/047937号
【特許文献2】特開2019-68355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミリ波レーダーの設計においては、EMC(電磁両立性、Electromagnetic Compatibility)を考慮すべきであることが知られている(特許文献1,2)。具体的には、レーダーが使用する所望のミリ波の周波数帯(例えば、76~81GHz)の電磁波がレーダーから外部へ、そしてその逆に進行可能である一方で、不要な周波数帯(例えば、1GHz以下)の電磁波がレーダーから外部へ放射されず、外部からレーダーに侵入しないことが好ましい。
【0005】
一方、ミリ波レーダーに使用されるミリ波アンテナ用カバーには、様々な角度で電磁波が入射しうる。所望の周波数帯のミリ波については、広い入射角度に対して、高い透過率を達成することが好ましい。
【0006】
本発明は、広い入射角度に対して、高い透過率を有するミリ波アンテナ用カバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係るミリ波アンテナ用カバーは、平面上に行列をなす多数の正方形の格子を有する厚さが0.035mm~0.65mmであり、格子の線幅が0.05mm~0.20mmであり、格子の間隔が0.9mm~2.0mmである金属格子と、前記金属格子の両面に接合された、厚さが0.1mm~0.4mmであり、複素比誘電率が3.4-j0.003である樹脂製の2枚の誘電体フィルムとを有する。
【0008】
この態様においては、76~81GHzの周波数帯のミリ波について、広い入射角度に対して、高い透過率を達成することが可能である。
【0009】
好ましくは、周波数79GHzの電磁波について、入射角度θが0度~30度の範囲にわたって、透過率の変化ΔTが0.0014以下である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るミリ波アンテナ用カバーを有するハウジングの断面図である。
図2】実施形態に係るミリ波アンテナ用カバーの金属格子の正面図である。
図3図2の金属格子の一部を破断した斜視図である。
図4図2および図3の金属格子に2枚の保持フィルムが配置された構造体の側面図である。
図5図4の構造体に2枚のカバーフィルムが配置されたミリ波アンテナ用カバーの側面図である。
図6】実施形態に係るミリ波アンテナ用カバーの性能計算結果を示すグラフである。
図7】変形例に係るミリ波アンテナ用カバーの金属格子の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るミリ波アンテナ用カバー4は、アンテナ1と電子回路2を内蔵するハウジング3の蓋つまりレドームとして使用される。
【0013】
アンテナ1は、76~81GHzの電磁波を送信する送信アンテナでもよいし、同じ周波数帯の電磁波を受信する受信アンテナでもよいし、76~81GHzの電磁波を送受信する送受信アンテナでもよい。電子回路2は、少なくともアンテナ1を駆動する駆動回路および電源を有する。
【0014】
ハウジング3は、その内部空間にアンテナ1と電子回路2を収容し、これらを保護する。ハウジング3は、鉄等の金属製の電磁シールド材料または樹脂等に金属メッキが施された複合材料である電磁シールド材料から形成されており、内部からの不要電磁波の放射を抑制し、外部の電子機器からの干渉、混信を防止する。したがって、ハウジング3は、所望のミリ波の周波数帯(例えば、76~81GHz)の電磁波も不要な周波数帯(例えば、1GHz以下)も透過させない。
【0015】
ミリ波アンテナ用カバー4は、ハウジング3の内部のアンテナ1と電子回路2を保護するとともに、所望のミリ波の周波数帯(例えば、76~81GHz)の電磁波を透過させ、不要な周波数帯(例えば、1GHz以下)の透過を抑制する電磁フィルターとして機能する。理想的には、ミリ波アンテナ用カバー4の周波数76~81GHzの電磁波に対する透過率は92%以上であり、周波数1GHzの電磁波に対する透過率は5%以下である。
【0016】
ミリ波アンテナ用カバー4は、図2および図3に示す金属格子10を有する。金属格子10は、多数の正方形の格子を有する。多数の正方形の格子は平面上に規則的に行列をなす。すなわち各行で格子は一直線上に揃えられ、各列でも格子は一直線上に揃えられている。金属格子10においては、格子の各行、各列が傾斜している。このミリ波アンテナ用カバー4は、アンテナ1が直線偏波用のアンテナである場合に、適しており、格子の傾斜角度は偏波の角度に適合させられている。
【0017】
金属格子10の全体の縦の長さは200mm、横の長さは200mmである。金属格子10は線幅dと、格子間隔aと、厚さtを有する。格子間隔aは、格子の隣り合う線の間隔である。金属格子10は、例えば、厚さtの銅箔をエッチングすることで製造される。あるいは、金属格子10は、図4に示す保持フィルム11aまたは11bにメッキ、蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングによって形成してもよい。
【0018】
図4に示すように、樹脂すなわち誘電体(例えば、複素比誘電率3.4-j0.003のポリイミド)製の2枚の保持フィルム11a,11bが金属格子10の両面に配置されており、これにより構造体12が設けられている。金属格子10の片面(第1の面)に接合された保持フィルム11aは一様な厚さt1aを有し、金属格子10の他方の面(第2の面)に接合された保持フィルム11bは一様な厚さt1bを有する。
【0019】
図5に示すように、厚さt、複素比誘電率が3.4-j0.003のポリイミド製の2枚のカバーフィルム13が構造体12の両面に配置されており、これによりミリ波アンテナ用カバー4が設けられている。
【0020】
ミリ波アンテナ用カバー4の使用においては、厚さが異なる保持フィルム11a,11bのいずれがハウジング3の外側に配置されてもよい(図1参照)。
【0021】
カバーフィルム13、保持フィルム11a、金属格子10、保持フィルム11b、およびカバーフィルム13を積層し、接着剤(例えばエポキシ接着剤)でこれらの層を接着するとともに、60tの荷重を与えることによりプレス成形し、ミリ波アンテナ用カバー4を製造することができる。これらの層の間に空気はなく、また接着剤の厚さは無視できるほど小さい。接着剤を使用しなくても、樹脂材料への加熱処理、酸素プラズマ処理または紫外線処理によって、これらの層を接合してもよい。あるいは、カバーフィルム13、保持フィルム11a、金属格子10、保持フィルム11b、およびカバーフィルム13は接合せずに、図示しない保持装置で挟んで密着させてもよい。
【0022】
保持フィルム11a,11b、カバーフィルム13の縦横の寸法は、金属格子10の全体を覆うように、金属格子10と同じであり、縦の長さは200mm、横の長さは200mmである。
【0023】
保持フィルム11aとそれに接合された第1のカバーフィルム13は、金属格子10の片面(第1の面)に接合された第1の誘電体フィルムとみなすことができ、保持フィルム11bとそれに接合されたカバーフィルム13は、金属格子10の他方の面(第2の面)に接合された第2の誘電体フィルムとみなすことができる。
【0024】
図5に示すように、ミリ波アンテナ用カバー4の両側から角度θで電磁波が入射しうる。ミリ波アンテナ用カバー4は、広い入射角度θにわたって、所望のミリ波の周波数帯(例えば、76~81GHz)の電磁波を透過させることが望ましい。
【0025】
適切なEMCを達成するとともに、広い入射角度θにわたって、所望のミリ波の周波数帯(例えば、76~81GHz)の電磁波を透過させるためには、金属格子10の線幅d、格子間隔a、および線幅d、カバーフィルム13の物性を適切に決定するべきである。
【0026】
発明者は、計算による解析および実験によって、下記の数値の範囲にある金属格子10とカバーフィルム13によれば、広い入射角度θにわたって、76~81GHzの電磁波がミリ波アンテナ用カバー4を透過することを発見した。また、下記の数値の範囲に従って、ミリ波アンテナ用カバー4の周波数76~81GHzの電磁波に対する透過率は92%以上であった。
【0027】
具体的には、金属格子10の厚さtが0.035mm~0.65mmであり、格子の線幅dが0.05mm~0.20mmであり、格子の間隔aが0.9mm~2.0mmである。また、カバーフィルム13の厚さtが0.1mm~0.4mmであり、複素比誘電率が3.4-j0.003である。
【0028】
図6は、実施形態に係るミリ波アンテナ用カバーの性能計算結果、具体的には、周波数79GHzの電磁波についての入射角度θに対する透過率を示すグラフである。金属格子10の厚さtは0.035mm、線幅dは0.1mm、格子間隔aは1.5mmであった。ポリイミド製のカバーフィルム13の初期の厚さtは0.4mmであり、複素比誘電率が3.4-j0.003であった。ポリイミド製の保持フィルム11aの初期の厚さt1aは0.06mmであり、ポリイミド製の保持フィルム11bの初期の厚さt1bは0.045mmであり、保持フィルム11a,11bの複素比誘電率は3.4-j0.003であった。60tの荷重を与えたプレス成形によって、得られたミリ波アンテナ用カバー4の厚さは0.5mmであった。
【0029】
計算結果において、周波数79GHzの電磁波について、入射角度θが0度~30度の範囲にわたって、透過率は0.9965以上もあった。入射角度θが0度~30度の範囲において、透過率の変化ΔTは、わずか0.0014であった。したがって、実施形態では、広い入射角度にわたって高い透過率を達成することが確認された。このため、視野角が60度のミリ波レーダーに使用した場合、好適な探知結果を達成することができる。このように、周波数79GHzの電磁波について、入射角度θが0度~30度の範囲にわたって、透過率の変化ΔTが0.0014以下であることが好ましい。
【0030】
図7は、変形例に係るミリ波アンテナ用カバーの金属格子16の正面図である。金属格子16においては、格子の各行、各列が傾斜していない。多数の正方形の格子を有する金属格子は、アンテナ1が直線偏波用のアンテナである場合に、適しており、格子の傾斜角度は偏波の角度に適合させられている。図7の変形例は、偏波が垂直偏波および/または水平偏波である場合に適している。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0032】
上記の実施形態は、自動車に搭載されるミリ波レーダーに関するが、ミリ波を送信および/または受信するセンサー、イメージングデバイス、その他のミリ波通信機器にも本発明を利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
3 ハウジング
4 ミリ波アンテナ用カバー
10,16 金属格子
11a,11b 保持フィルム
13 カバーフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7