(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171341
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】証明書用紙
(51)【国際特許分類】
B42D 11/00 20060101AFI20221104BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B42D11/00 U
G06K19/077 156
G06K19/077 264
G06K19/077 144
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077931
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】山内 望由季
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】新美 則明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 一広
(72)【発明者】
【氏名】藤林 城司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋二
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 淳
(57)【要約】
【課題】RFIDインレットが貼付された証明書用紙にあって、耐久性に優れ、かつ、低コストで製造・使用が可能な構成を提供する。
【解決手段】証明書用紙1を、印字部が設けられた用紙基材5と、用紙基材5の印字部以外の場所に貼付された、証明事項を非接触で読み書き可能なRFIDインレット3と、RFIDインレット3に貼付された保護シート4とにより構成する。そして、RFIDインレット3を、薄膜状のインレット基材11と、該インレット基材11の表面に形成されたアンテナ13と、該アンテナ13上に配置されて該アンテナ13と接続されたICチップ12とにより構成して、RFIDインレット3を、アンテナ13及びICチップ12が配設された配設面側を向けて用紙基材5に貼付するとともに、RFIDインレット3の、アンテナ13及びICチップ12が配設されていない非配設面側を、保護シート4で覆うようにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
証明事項を印字して、証明書を発行するのに用いられる証明書用紙であって、
証明事項を印字する印字部が設けられた用紙基材と、
前記用紙基材の前記印字部以外の場所に貼付された、前記証明事項を非接触で読み書き可能なRFIDインレットと、
前記RFIDインレットに貼付された保護シートと
を備え、
前記RFIDインレットは、
薄膜状のインレット基材と、該インレット基材の表面に形成されたアンテナと、該アンテナ上に配置されて該アンテナと接続されたICチップとを備え、
前記アンテナ及び前記ICチップが配設された配設面側を向けて前記用紙基材に貼付され、
前記アンテナ及び前記ICチップが配設されていない非配設面側を前記保護シートに覆われていることを特徴とする証明書用紙。
【請求項2】
前記インレット基材はPETフィルムからなり、前記用紙基材及び前記保護シートは紙製であることを特徴とする請求項1に記載の証明書用紙。
【請求項3】
前記ICチップの配設部位の厚みが500μm以下であり、
前記ICチップの厚みが70~150μmであり、
前記用紙基材の厚みが100~200μmであり、
前記インレット基材と、前記アンテナと、前記保護シートを合わせた厚みが100μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の証明書用紙。
【請求項4】
前記保護シートは、前記RFIDインレットの周囲に延出して、前記RFIDインレットの周囲で、前記用紙基材に貼付されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の証明書用紙。
【請求項5】
前記RFIDインレットを前記用紙基材に貼付する粘着剤又は接着剤と、前記保護シートを前記用紙基材に貼付する粘着剤又は接着剤が異なることを特徴とする請求項4に記載の証明書用紙。
【請求項6】
複数の前記用紙基材が一方向に連続してなるものであり、前記用紙基材の境界で蛇腹状に折り返すことにより、前記用紙基材が一片ずつ又は複数片ずつ折り重ねられた連続用紙であって、
上下方向に同じ向きで重なり合う複数の前記用紙基材について、前記各用紙基材に対する前記RFIDインレットのICチップの配設部位が、少なくとも一部の前記用紙基材で相違するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の証明書用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要の証明事項を印字して、各種の証明書を発行するのに用いられる証明書用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
免許証等の身分証明用カードでは、証明事項を記録したRFIDインレットがプラスチック製のカード基材に埋設されており、カード表面に印字された証明事項を、非接触でRFIDインレットから読出可能に構成されている(特許文献1参照)。また、物流分野やなどでは、RFIDインレットを貼付した紙片が荷札として使用されている(特許文献2参照)。ここで、RFIDインレットを紙片に貼付する場合には、RFIDインレットのICチップの配設部位が周囲よりも厚くなるため、ICチップに荷重が集中しないように、ICチップの周囲にスペーサを設けたり、ICチップを保護シートで覆ったりしている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6433008号公報
【特許文献2】特開2017-68487号公報
【特許文献3】特開2008-102805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、住民票や資格証等の紙の証明書についても、用紙基材にRFIDインレットを貼付して、証明事項を非接触で機械的に読取可能にすることが検討されている。ここで、RFIDインレットに証明事項を記憶する場合は、一般的に、記憶情報の改ざんを防止するためにICチップに高度なセキュリティ機能を実装する必要があり、物流用途のRFIDインレットよりも大型のICチップが必要となる。また、証明書用紙から作製される証明書は、物流分野の荷札に比べて長期間利用されることが多いため、荷札よりも耐久性が求められる。しかしながら、RFIDインレットのICチップは、大型のものほど荷重が集中し易いため、証明書用紙にRFIDインレットを貼付する場合には、ICチップに加わる荷重を軽減する必要がある。
【0005】
証明書用紙に貼付するRFIDインレットのICチップに加わる負荷を軽減して、耐久性を低廉に向上させる方法としては、ICチップを覆うように保護シートを貼付して、ICチップの配設部位に加わる荷重を用紙基材と保護シートによって、ICチップの周囲に分散することが挙げられる。しかしながら、証明書では荷札よりも厚く耐久性のある用紙基材が用いられるため、厚めの用紙基材に貼付されたRFIDインレットに対して、大型のICチップを覆うように保護シートを貼付すると、証明書用紙がICチップの配設部位で過度に厚くなり、嵩張って運搬コストが増大したり、一般的なプリンタでは通紙困難となって、証明事項の印字コストが増大したりしてしまう。
【0006】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであり、RFIDインレットが貼付された証明書用紙にあって、耐久性に優れ、かつ、低コストで製造・使用が可能な構成の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、証明事項を印字して、証明書を発行するのに用いられる証明書用紙であって、証明事項を印字する印字部が設けられた用紙基材と、前記用紙基材の前記印字部以外の場所に貼付された、前記証明事項を非接触で読み書き可能なRFIDインレットと、前記RFIDインレットに貼付された保護シートとを備え、前記RFIDインレットは、薄膜状のインレット基材と、該インレット基材の表面に形成されたアンテナと、該アンテナ上に配置されて該アンテナと接続されたICチップとを備え、前記アンテナ及び前記ICチップが配設された配設面側を向けて前記用紙基材に貼付され、前記アンテナ及び前記ICチップが配設されていない非配設面側を前記保護シートに覆われていることを特徴とする証明書用紙である。
【0008】
ICチップの配設部位に加わる荷重を適度に分散し、かつ、ICチップの配設部位の厚みが過度に厚くなるのを防止するためには、ICチップの両側の厚みを適度な範囲に収める必要があるが、本発明では、ICチップの用紙基材側には、アンテナやインレット基材が配置されないため、ICチップの用紙基材側の厚みを適度な範囲に収めつつ、用紙基材の厚みを稼いで、用紙基材の耐久性を向上させることが可能となる。
一方で、ICチップの保護シート側には、インレット基材やアンテナが配置されるため、保護シートの厚みは、アンテナやインレット基材の厚みの分だけ、用紙基材よりも薄くできる。保護シートの外周縁には、保護シートの厚みによる段差が形成されており、証明書用紙に証明事項を印字する際に、かかる段差がプリンタの内部で引っ掛かるおそれがあるため、保護シートの厚みが薄くなれば、かかるおそれは低減される。
このように、本発明によれば、RFIDインレットのICチップや用紙基材について、証明書用紙に必要とされる耐久性を比較的容易に確保可能となる。また、本発明では、用紙基材や保護シート、RFIDインレットを特殊な形状に加工したり、特種な材質で構成する必要がないため、製造コストを抑えることができる。また、ICチップの配設部位が過度に厚くなるのを抑制できるため、証明書用紙が嵩張って運搬コストが増大したり、一般的なプリンタで通紙困難となって、証明事項の印字コストが増大したりすることもない。
【0009】
本発明にあって、前記インレット基材はPETフィルムからなり、前記用紙基材及び前記保護シートは紙製であることが提案される。アンテナのベースとなるインレット基材は、寸法安定性に優れたPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムで構成することが望ましいが、PETフィルムは、伸縮性に乏しく、紙に比べて厚み方向からの荷重を分散し難いためである。
【0010】
また、上記構成にあって、前記ICチップの配設部位の厚みが500μm以下であり、前記ICチップの厚みが70~150μmであり、前記用紙基材の厚みが100~200μmであり、前記インレット基材と、前記アンテナと、前記保護シートを合わせた厚みが100μm以上であることが提案される。ICチップの配設部位の厚みが500μm以下であれば、一般的なプリンタに通紙可能となる。また、用紙基材の厚みが100μm以上であれば、一般的な印刷用紙で証明書用紙に求められる耐久性を実現でき、また、用紙基材の厚みが200μm以下であれば、一般的なプリンタで証明事項を容易に印字できる。また、インレット基材と、アンテナと、保護シートを合わせた厚みが100μm以上であれば、保護シート側からICチップに加わる荷重を適度に分散できる。また、一般的に、高度なセキュリティ機能を実装したRFID用ICチップの厚みは70~150μmである。本発明によれば、これらの要件を全て充足しつつ、ICチップの配設部位の厚みを可及的に薄くすることが可能となる。
【0011】
また、本発明にあって、前記保護シートは、前記RFIDインレットの周囲に延出して、前記RFIDインレットの周囲で、前記用紙基材に貼付されていることが提案される。
かかる構成にあっては、RFIDインレットの貼付部位の厚みが保護シートの厚み分だけ増すこととなるが、保護シートの外周部はRFIDインレットの周囲に延出して、RFIDインレットと重なっていないため、保護シートの外周縁に、過度に大きな段差が形成されることはない。このため、かかる構成によれば、証明書用紙に証明事項を印字する際に、証明書用紙がプリンタ内部で引っ掛かるおそれが低減される。
また、かかる構成では、保護シートがRFIDインレットの周囲で用紙基材に貼付されるため、保護シートを用紙基材から剥がさなくては、用紙基材からRFIDインレットを剥ぎ取ることができない。このため、本発明では、RFIDインレットの貼替えによる証明書の改ざんを行い難くなる。
【0012】
また、上記構成では、前記RFIDインレットを前記用紙基材に貼付する粘着剤又は接着剤と、前記保護シートを前記用紙基材に貼付する粘着剤又は接着剤が異なることが提案される。
かかる構成にあっては、保護シートを用紙基材から剥がす時と、RFIDインレットを用紙基材から剥がす時とで、夫々の粘着剤又は接着剤の性質に合わせた剥がし方をする必要があるため、RFIDインレットの貼り替えが一層困難となる。
【0013】
また、本発明にあって、複数の前記用紙基材が一方向に連続してなるものであり、前記用紙基材の境界で蛇腹状に折り返すことにより、前記用紙基材が一片ずつ又は複数片ずつ折り重ねられた連続用紙であって、上下方向に同じ向きで重なり合う複数の前記用紙基材について、前記各用紙基材に対する前記RFIDインレットのICチップの配設部位が、少なくとも一部の前記用紙基材で相違するように構成されていることが提案される。
用紙基材を蛇腹折りに折り重ねた状態では、用紙基材が数片置きに相互に同じ向きで重なることとなる。この時、同じ向きで重なる全ての用紙基材のICチップが上下方向に重なり合うと、各ICチップの厚みや重量により、各ICチップに強い負荷が加わって、ICチップが破損するおそれがある。これに対して、かかる構成では、用紙基材を折り重ねた状態で、上下方向に重なり合うRFIDインレットのICチップの数を少なくできるため、夫々のICチップに加わる負荷を軽減可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、耐久性に優れ、かつ、低コストで製造・使用が可能な証明書用紙を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】RFIDインレット3と保護シート4を用紙基材5から分離して示す、証明書用紙1の裏側の拡大斜視図である。
【
図4】RFIDインレット3の(a)平面図と、(b)断面図である。
【
図5】証明書用紙1の積層構造を示す説明図である。
【
図6】証明書用紙1の積層構造の厚みを示す説明図である。
【
図8】変形例の証明書用紙1aの概略を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、以下の実施例によって説明する。
【0017】
本実施例の証明書用紙1は、地方自治体の住民票を発行するための用紙である。かかる証明書用紙1は、縦20cm×横15cmの縦長矩形状であるが、本発明の証明書用紙の形状や大きさはこれに限定されるものではない。
図1に示すように、証明書用紙1の表側には、証明事項(氏名、生年月日、住所、発行日等)を印字するための印字部2が設けられる。用紙基材5の表側には、印字部2に印字する証明事項の項目名や枠線等が事前印刷によって設けられている。また、図示は省略しているが、用紙基材5の表側全体には、複写や偽造を防止するための地紋が事前印刷によって設けられている。
【0018】
図2,3に示すように、用紙基材5の裏側は、事前印刷のない白紙となっいる。そして、用紙基材5の下部中央に、非接触でデータを読み書き可能なRFIDインレット3が貼付され、さらに、RFIDインレット3の全体を裏側から覆うように保護シート4が貼付される。RFIDインレット3及び保護シート4は、表側に印字部2が配設されていない部位に貼付される。RFIDインレット3及び保護シート4の貼付部位は、RFIDインレット3と保護シート4の厚み分だけ周囲よりも証明書用紙1が厚くなるため、印字部2の裏側に設けると印字部2への印字不良が生じやすくなるためである。
【0019】
証明書用紙1を用いて住民票を発行する場合は、地方自治体の担当部署が、表側の印字部2に、所要の証明事項や発行日をサーマルプリンタ等で印字するとともに、公印を押印する。また、RFIDリーダライタを用いて、証明書用紙1に貼付されたRFIDインレット3に、印字した証明事項と同じ情報を記憶させる。かかる証明書用紙1により発行した住民票は、RFIDインレット3が記憶する証明事項を非接触で機械的に読み取ることができるため、証明事項の確認作業が容易となる。
【0020】
図4に示すように、RFIDインレット3は、薄膜状のインレット基材11と、該インレット基材11の表面に設けられたアンテナ13と、該アンテナ13の上に配置されたICチップ12とを備えてなる。
図3に示すように、RFIDインレット3は、ICチップ12及びアンテナ13が配設される配設面側を用紙基材5に向けて、粘着剤で用紙基材5に貼付されている。インレット基材11はPETフィルムからなるものである。また、アンテナ13は、HF帯の電磁波で非接触通信するためのループアンテナであり、インレット基材11の表面に導電性ペーストで印刷されている。ICチップ12は、印字部2に印字される証明事項を電磁的に記憶可能なものであり、アンテナ13の中央部の上に配置され、異方性導電接着剤14によってアンテナ13と接着されるとともに、電気的に接続される。ICチップ12のサイズは、縦横の寸法が約1500μm、厚さが約120μmであり、RFIDインレット用としては大型となっている。記憶情報の改ざんを防止するための公知のセキュリティ技術がICチップ12に実装されるためである。このため、
図4(b)に示すように、ICチップ12はインレット基材11の表面から突出している。
【0021】
保護シート4は、
図3に示すように、平面視略矩形状をなしている。保護シート4は、RFIDインレット3の平面形状よりも縦横の寸法が大きく、粘着剤でRFIDインレット3の裏側全体に貼付されるとともに、RFIDインレット3の周囲に延出して、RFIDインレット3の周囲で用紙基材5に粘着剤で貼付されている。保護シート4は、PETフィルムや紙で構成され得るが、PETフィルムよりも紙製とすることが望ましい。PETフィルムは寸法安定性に優れるためインレット基材には適するが、紙に比べて伸縮性に乏しく、厚み方向からの荷重を周囲に分散させ難いためである。また、保護シート4を用紙基材5に貼付する粘着剤は、RFIDインレット3を用紙基材5に貼付する粘着剤とは別種のものが用いられる。具体的には、RFIDインレット3がホットメルト系粘着剤で用紙基材5に貼付されるのに対して、保護シート4は、エマルジョン系粘着剤によって用紙基材5及びRFIDインレット3に貼付される。
【0022】
用紙基材5は、凹凸のない一般的な紙製の印刷用紙であり、既存の証明書用紙に用いられる厚手の上質紙や板紙等で構成され得る。上述のように、紙製の用紙基材であれば、比較的容易に厚み方向からの荷重を周囲に分散させることができる。
【0023】
図5は、RFIDインレット3の貼付部位の積層構造を示したものである。
図5に示すように、RFIDインレット3の貼付部位は、RFIDインレット3及び保護シート4の厚みの分だけ裏側に盛り上がって、周囲よりも厚くなっている。特に、ICチップ12はインレット基材11の表面から突出しているため、ICチップ12の配設部位は、RFIDインレット3の貼付部位の中でも厚みが最も大きくなっている。このように、本実施例の証明書用紙1では、ICチップ12の配設部位の厚みが最も大きく、当該部位に荷重が集中し易くなっている。このため、本実施例では、ICチップ12の表裏の用紙基材5や保護シート4に適度な厚みを持たせることによって、ICチップ12の配設部位に加わる荷重をICチップ12の周囲に分散して、ICチップ12に加わる負荷を軽減するよう構成される。
【0024】
具体的には、本実施例では、
図6に示すように、ICチップ12の厚みt4(約120μm)に対して、ICチップ12よりも表側に配置される用紙基材5の厚みt2を130~170μmに設定し、ICチップ12よりも裏側に配置される保護シート4、インレット基材11及びアンテナ13を合わせた厚みt3を100~200μmに設定することで、ICチップ12の配設部位に対して表裏から加わる荷重をICチップ12の周囲に分散させて、ICチップ12に大きな負荷が加わらないよう構成し、耐荷重性能を高めている。なお、ICチップ12の表裏両側の厚みt2,t5が過度に厚くなるのを制限するのは、ICチップ12の配設部位の厚みt1が過度に大きくなると、一般的なサーマルプリンタで通紙する際に、当該部位が引っ掛かってしまうためである。具体的には、本実施例では、ICチップ12の配設部位の厚みt1を、一般的なサーマルプリンタで証明事項を印字可能な500μm以下に設定している。
【0025】
ここで、用紙基材5については、証明書用紙としての高い耐久性が求められるため、ICチップ12の配設部位の厚みt1が過度に大きくならない範囲で、用紙基材5を厚くして、耐久性を高くすることが望ましい。一方で、保護シート4については、外周縁に形成される厚みt5相当の段差20(
図5参照)が大きくなると、証明書用紙1に証明事項を印字する際に、かかる段差20がプリンタ内部で引っ掛かるおそれがあるため、保護シート4は、ICチップ12の耐久性が不十分とならない範囲内で、薄くすることが望ましい。このため、本実施例では、RFIDインレット3を、配設面側を向けて用紙基材5に貼付することにより、ICチップ12の配設部位を厚くせず、また、ICチップ12の耐久性も低下させることなく、用紙基材5の厚みt2を稼ぎ、かつ、保護シート4の厚みt5を抑えている。すなわち、かかる構成では、ICチップ12の表側(用紙基材側)には、インレット基材11やアンテナ13が配置されず、用紙基材5のみによって荷重を適度に分散させる必要があるため、インレット基材11やアンテナ13が配置されない分だけ用紙基材5の厚みt2を厚くできる。これに対して、ICチップ12の裏側(保護シート側)では、保護シート4とインレット基材11とアンテナ13によって荷重を適度に分散させればよいため、インレット基材11とアンテナ13の厚みt6の分だけ、保護シート4の厚みt5を薄くすることが可能となる。
【0026】
このように、本実施例の証明書用紙1によれば、ICチップ12の配設部位の厚みt1を抑えつつ、RFIDインレット3のICチップ12や用紙基材5について、証明書用紙1に必要とされる耐久性を比較的容易に確保可能となる。また、本実施例の証明書用紙1は、用紙基材5や保護シート4、RFIDインレット3を特殊な形状に加工したり、特種な材質で構成する必要がないため、製造コストを抑えられる。また、ICチップ12の配設部位が過度に厚くならないため、嵩張って運搬コストが増大したり、一般的なプリンタで通紙困難となって、証明事項の印字コストが増大したりすることもない。
【0027】
また、保護シート4はRFIDインレット3よりも大きく、保護シート4の外周部は、RFIDインレット3の周囲に延出して、用紙基材5に貼付されている。かかる構成にあっては、RFIDインレット3を証明書用紙1から剥ぎ取るためには、RFIDインレット3だけでなく、保護シート4を用紙基材5から剥がさなくてはならない。このため、本実施例では、RFIDインレット3のみが用紙基材5に貼付される構成よりも、RFIDインレット3を剥ぎ取り難く、RFIDインレット3の貼替えによる証明書の改ざんが困難となる。
【0028】
特に、本実施例では、RFIDインレット3を用紙基材5に貼付する粘着剤23と、保護シート4を用紙基材5に貼付する粘着剤24とを相違させている。かかる構成によれば、用紙基材5から保護シート4を剥がす時と、RFIDインレット3を剥がす時とで、夫々の粘着剤23,24の性質に合わせた剥がし方をする必要があるため、RFIDインレット3の貼り替えが一層困難となる。なお、本実施例では、RFIDインレット3と保護シート4を粘着剤23,24によって用紙基材5に貼付しているが、RFIDインレット3と保護シート4の一方、又は両方を、接着剤で用紙基材5に貼付してもよい。
【0029】
また、本実施例では、保護シート4の外周部が、RFIDインレット3の周囲に延出して、RFIDインレット3と重なっていないため、保護シート4の外周縁の段差20が比較的大きくなり難く、証明書用紙1に証明事項を印字する際に、当該段差20がプリンタ内部で引っ掛かるおそれが小さくなる。
【0030】
本実施例の証明書用紙1は、例えば、以下の(1)~(3)の工程により製造できる。
(1)用紙基材5の表側に、オフセット印刷等により事前印刷を行う。
(2)RFIDインレット3を粘着剤23で用紙基材5の裏側に貼付する。
(3)RFIDインレット3を覆うようにして、保護シート4をRFIDインレット3及び用紙基材5に粘着剤24で貼付する。
【0031】
なお、上記製造方法は、一例に過ぎず、本実施例の証明書用紙1は他の製造方法によっても製造され得る。例えば、RFIDインレット3の非配設面側に保護シート4を貼付してから、RFIDインレット3と保護シート4をまとめて用紙基材5に貼付してもよい。
【0032】
<試験品1>
上記実施例の証明書用紙1を、以下の材質・寸法で作製して試験品1とした。
用紙基材:コート紙、日本製紙株式会社製、アイベスト(厚み170μm)
保護シート:PETフィルム(厚み約70μm)
RFIDインレット:SMARTRAC社製NFCタグ(BullsEye)
インレット基材:PETフィルム(厚み約30μm)
アンテナ:(厚み約30μm)
ICチップ:NXP NTAG216(厚み約120μm)
【0033】
<試験品2>
保護シート4の材質を上質紙(厚み約70μm)に変更する以外は上記試験品1と同様の証明書用紙を作製し、試験品2とした。
【0034】
<比較品1>
上記試験品1の構成から保護シート4を除去した構成の証明書用紙を作製し、比較品1とした。
【0035】
<比較品2>
RFIDインレットを、非配設面側を向けて用紙基材に貼付する他は、上記試験品1と同様の構成の証明書用紙を作製し、比較品2とした。
【0036】
<耐圧試験>
試験品1,2及び比較品1,2について、ICチップの破壊強度を測定した。具体的には、最大荷重500Nの引張圧縮試験機のプローブに直径2mmの鋼球を取り付けて、ICチップの配設部位を厚み方向から加圧して圧力を上げていき、ICチップが破壊した時の荷重を測定した。各サンプルについて、表側からの加圧と、裏側からの加圧を5回ずつ実行し、表裏の夫々について、5回の測定値の最大値と最小値を除外し、残り3回の測定値の平均値を破壊強度とした。結果を
図7に示す。
【0037】
図7に示すように、保護シートを具備しない比較品1は、保護シートを具備する試験品1に比べて、ICチップの破壊強度が、表裏ともに低くなった。これは、試験品1の保護シートが、ICチップの配設部位に表裏から加わる荷重を、ICチップの周囲に分散するのに寄与していることを示唆している。
【0038】
また、試験品1と比較品2でICチップの破壊強度を比較すると、試験品1は表側からが40N台、裏側からが30N台であるのに対して、比較品2は表側からが90N台、裏側からが20N台と大きな偏りが見られ、特に、裏側からの加圧に対して脆弱であった。これは、ICチップの表側又は裏側に配置されたインレット基材とアンテナが、ICチップの配設部位に加わる荷重を周囲に分散するのに寄与していることを示唆している。また、表裏両側からの破壊強度を高めるためには、ICチップの表裏両側に適度な厚みを設けることが必要であることを示唆している。
【0039】
また、試験品1と試験品2でICチップの破壊強度を比較すると、試験品1は表側からが40N以上、35N未満であったのに対して、試験品2は表裏両側が35N以上であり、試験品1に比べて裏側からの破壊強度が高く、表裏のバランスの取れた破壊強度となっていた。このことは、PET製の保護シートよりも、紙製の保護シートの方が、ICチップの配設部位に加わる荷重を、ICチップの周囲に分散させ易いことを示唆している。
【0040】
以上に、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。
例えば、上記実施例は、本発明を住民票用の証明書用紙に適用したものであるが、本発明の証明書用紙は、公的機関や民間企業が発行する証明書に用いられる用紙全般に適用可能である。
【0041】
また、上記実施例の証明書用紙1は、単票であったが、本発明の証明書用紙は、連続用紙やロール用紙であってもよい。
図8は、上記実施例の証明書用紙1を連続用紙に変更した変形例の証明書用紙1aである。かかる証明書用紙1aは、上記実施例の用紙基材5を、長手方向に複数片連続させてなるものである。各用紙基材5はミシン目26を介して連続しており、各用紙基材5は証明事項を印字した後にミシン目26で切断して分離される。
図8では展開した状態を示しているが、かかる証明書用紙1aは、ミシン目26で蛇腹折りにして、用紙基材5を一片ずつ折り重ねた折畳み状態で保管される。かかる折畳み状態では、隣り合う用紙基材5は表裏逆向きに重なり、一片置きの用紙基材5が相互に同じ向きで重なることとなる。これに対して、本変形例では、
図8に示すように、RFIDインレット3の貼付部位を、用紙基材5二片毎に左右方向にずらすことにより、各用紙基材5に対するRFIDインレット3の貼付部位が、一片置きの用紙基材5で相互に異なるように構成される。かかる構成によれば、用紙基材5を折り重ねた時に、上下方向に重なるRFIDインレット3のICチップ12の数を少なくできるため、多数のICチップ12が上下に重なることによって、ICチップ12に強い負荷が加わり、ICチップ12が破損することを防止できる。なお、本変形例では、用紙基材5の境界に形成される全てのミシン目26を蛇腹折りにして、用紙基材5を一片ずつ折り重ねているが、本発明は、ミシン目26を一つ置きに蛇腹折りにして、用紙基材5を二片ずつ折り重ねる連続用紙であってもよい。用紙基材5を二片ずつ折り重ねる場合には、三片置きの用紙基材5が相互に同じ向きで重なることとなるため、各用紙基材5に対するRFIDインレット3の貼付部位を、三片置きの用紙基材5で相互に異なるように構成すれば、上下方向に重なるRFIDインレット3のICチップ12の数を少なくできる。また、
図8では、一つ置きの用紙基材5で、各用紙基材5に対するRFIDインレット3の貼付部位を相違させることで、上下に重なるICチップ12の数を低減させているが、一片又は複数片置きの用紙基材5で、ICチップ12の配設部位を相違させられるのであれば、必ずしもRFIDインレット3の貼付部位を相違させる必要はない。例えば、RFIDインレット3の中央部から外れた位置にICチップ12が配置されている場合は、一片又は複数片置きの用紙基材5で、RFIDインレット3の上下の向きを180°反転させて貼付するだけで、RFIDインレット3の貼付部位を相違させることなく、ICチップ12の配設部位を一片又は複数片置きに相違させることができる。
【0042】
また、上記実施例では、用紙基材5の裏側は白紙であったが、用紙基材5の裏側にも事前印刷をしてもよい。事前印刷の内容としては、発行する証明書についての注意事項や、証明書発行後に備考を記入するための備考欄などが挙げられる。また、用紙基材5の裏側に貼付される保護シート4の裏面に、事前印刷を施すようにしてもよい。また、上記実施例では、RFIDインレット3が証明書用紙1の裏側に貼付されていたが、RFIDインレット3は、証明書用紙1の表側(印字部配設側)に貼付されていてもよい。
【0043】
また、上記実施例の保護シート4は、略矩形状をなしているが、本発明に係る保護シート4の平面形状は特に限定されず、円形状や楕円形状などであってもよい。また、上記実施例の保護シート4は、RFIDインレット3よりも大きく、RFIDインレット3の周囲に延出しているが、本発明に係る保護シート4は、RFIDインレット3と同じ大きさでもよいし、RFIDインレット3よりも小さくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 証明書用紙
2 印字部
3 RFIDインレット
4 保護シート
5 用紙基材
11 インレット基材
12 ICチップ
13 アンテナ
14 異方性導電接着剤
20 段差
23,24 粘着剤
26 ミシン目