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特開2022-171343液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171343
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221104BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077934
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB08
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB40
2C056FA04
2C056FA10
2C057AF72
2C057AG14
2C057AG44
2C057AL25
2C057AN01
2C057AR09
2C057DB01
2C057DD06
(57)【要約】
【課題】短時間でノズルの検査を実行することができる液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法を提供する。
【解決手段】液体吐出装置は、第1ノズル及び第2ノズルに対応した第1アクチュエータ及び第2アクチュエータと、コントローラとを備える。第1アクチュエータ及び第2アクチュエータそれぞれは、ノズルから液体を吐出するために変形される圧電体と、圧電体を挟む少なくとも2つの電極とを有する。コントローラは、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータの圧電体の合成容量を検出し、検出された合成容量に基づく値が異常値であるか否か判定する。合成容量に基づく値が異常値であると判定した場合、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータの駆動後に、圧電体の振動によって発生する振動波形を、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータの圧電体それぞれについて検出し、検出された振動波形が異常波形であるか否か判定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ノズル及び第2ノズルを含む複数のノズルを有する第1ノズル群と、
前記第1ノズル及び前記第2ノズルに対応した第1アクチュエータ及び第2アクチュエータと、
コントローラと
を備え、
前記第1アクチュエータ及び第2アクチュエータそれぞれは、
前記ノズルから液体を吐出するために変形される圧電体と、
該圧電体を挟む少なくとも2つの電極と
を有し、
前記コントローラは、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの前記圧電体の合成容量を検出する第1検出処理と、
前記第1検出処理にて検出された合成容量に基づく値が異常値であるか否か判定する第1判定処理と、
前記合成容量に基づく値が異常値であると判定した場合、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを駆動させる駆動処理と、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの駆動後に、前記圧電体の振動によって発生する振動波形を、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの圧電体それぞれについて検出する第2検出処理と、
前記第2検出処理にて検出された振動波形が異常波形であるか否か判定する第2判定処理と
を実行する
液体吐出装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
第1時点にて検出された前記合成容量に基づいて第1温度を算出する第1算出処理と、
前記第1時点よりも後の第2時点にて検出された前記合成容量に基づいて第2温度を算出する第2算出処理と
を実行し、
前記第1判定処理において、前記第2温度から前記第1温度を減算した減算値が閾値以上である場合、前記減算値は異常値であると判定する
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1ノズル群と、第3ノズル及び第4ノズルを含む複数のノズルを有する第2ノズル群とを含む複数のノズル群を備え、
前記コントローラは、
前記第1検出処理において、前記複数のノズル群それぞれについて、前記合成容量を検出し、
前記第1判定処理において、
前記複数のノズル群それぞれの前記合成容量に基づいて正常範囲を決定する処理と、
前記第1ノズル群の前記合成容量に基づく値が前記正常範囲にあるか否か判定する処理と、
前記第1ノズル群の前記合成容量に基づく値が前記正常範囲にない場合、前記値は異常値であると判定する処理とを実行する
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
液体が通流するマニホールドを備え、
前記第1ノズル群の前記第1ノズルは、前記マニホールドの最上流に位置する最上流ノズルであり、前記第1ノズル群の前記第2ノズルは、前記マニホールドの最下流に位置する最下流ノズルである
請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
液体が通流するマニホールドを備え、
前記第1ノズル群の前記第1ノズルは、前記マニホールドの最上流に位置する最上流ノズルであり、前記第1ノズル群の前記第2ノズルは、前記マニホールドの最下流に位置する最下流ノズルであり、
前記第2ノズル群の前記第3ノズルは、前記最上流ノズルに最も近い位置にある第1近接ノズルであり、前記第2ノズル群の前記第4ノズルは、前記最下流ノズルに最も近い位置にある第2近接ノズルである
請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
液体が通流するマニホールドを備え、
前記第1ノズル群の前記第1ノズルは、前記マニホールドの最上流に位置する最上流ノズルであり、前記第1ノズル群の前記第2ノズルは、前記最上流ノズルに最も近い位置にある第1近接ノズルであり、
前記第2ノズル群の前記第3ノズルは、前記第1近接ノズルの次に前記最上流ノズルに最も近い位置にある第3近接ノズルであり、前記第2ノズル群の前記第4ノズルは、前記第3近接ノズルの次に前記最上流ノズルに最も近い位置にある第4近接ノズルである
請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの前記圧電体の合成容量を検出する第1検出回路と、
前記第1アクチュエータ又は前記第2アクチュエータの駆動後に、前記圧電体の振動によって発生する振動波形を検出する第2検出回路と、
前記第1アクチュエータ及び前記第1検出回路に接続された第1スイッチング素子と、
前記第2アクチュエータ及び前記第1検出回路に接続された第2スイッチング素子と、
前記第1アクチュエータ及び前記第2検出回路に接続された第3スイッチング素子と、
前記第2アクチュエータ及び前記第2検出回路に接続された第4スイッチング素子と、
を備える
請求項1から6のいずれか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を閉じ、前記第1検出回路によって前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの前記圧電体の合成容量を検出し、
前記第3スイッチング素子を閉じ、前記第4スイッチング素子を開き、前記第2検出回路によって前記第1アクチュエータにおける前記振動波形を検出し、
前記第4スイッチング素子を閉じ、前記第3スイッチング素子を開き、前記第2検出回路によって前記第2アクチュエータにおける前記振動波形を検出する
請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
第1ノズル及び第2ノズルを含む複数のノズルを有する第1ノズル群と、前記第1ノズル及び前記第2ノズルに対応した第1アクチュエータ及び第2アクチュエータと、コントローラとを備え、前記第1アクチュエータ及び第2アクチュエータそれぞれは、前記ノズルから液体を吐出するために変形される圧電体と、該圧電体を挟む少なくとも2つの電極とを有する液体吐出装置の制御方法であって、
前記コントローラは、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの前記圧電体の合成容量を検出する第1検出処理と、
前記第1検出処理にて検出された合成容量に基づく値が異常値であるか否か判定する第1判定処理と、
前記合成容量に基づく値が異常値であると判定した場合、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを駆動させる駆動処理と、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの駆動後に、前記圧電体の振動によって発生する振動波形を、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの圧電体それぞれについて検出する第2検出処理と、
前記第2検出処理にて検出された振動波形が異常波形であるか否か判定する第2判定処理と
を実行する液体吐出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する複数のノズルと、各ノズルに対応する圧電式アクチュエータとを備える液体吐出装置がある。圧電式アクチュエータは、圧力室、振動板及び電極を備える。電極に電圧を印加することによって振動板は振動し、ノズルから液体が吐出される。
【0003】
電極への電圧印加後、振動板は残留振動(自由振動)する。残留振動による波形、即ち残留波に基づいて、ノズルの状態、例えば液体の粘土、又は液体への気泡の混入の有無を検査することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-240563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
残留波に基づくノズルの検査は、二つの工程、即ち電極への電圧印加と、残留波の測定とを必要とし、二つの工程は各ノズルについて実行される。そのため、ノズルの検査には長時間を要する。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、短時間でノズルの検査を実行することができる液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る液体吐出装置は、第1ノズル及び第2ノズルを含む複数のノズルを有する第1ノズル群と、前記第1ノズル及び前記第2ノズルに対応した第1アクチュエータ及び第2アクチュエータと、コントローラとを備え、前記第1アクチュエータ及び第2アクチュエータそれぞれは、前記ノズルから液体を吐出するために変形される圧電体と、該圧電体を挟む少なくとも2つの電極とを有し、前記コントローラは、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの前記圧電体の合成容量を検出する第1検出処理と、前記第1検出処理にて検出された合成容量に基づく値が異常値であるか否か判定する第1判定処理と、前記合成容量に基づく値が異常値であると判定した場合、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを駆動させる駆動処理と、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの駆動後に、前記圧電体の振動によって発生する振動波形を、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの圧電体それぞれについて検出する第2検出処理と、前記第2検出処理にて検出された振動波形が異常波形であるか否か判定する第2判定処理とを実行する。
【0008】
本開示の一実施形態に係る液体吐出装置の制御方法は、第1ノズル及び第2ノズルを含む複数のノズルを有する第1ノズル群と、前記第1ノズル及び前記第2ノズルに対応した第1アクチュエータ及び第2アクチュエータと、コントローラとを備え、前記第1アクチュエータ及び第2アクチュエータそれぞれは、前記ノズルから液体を吐出するために変形される圧電体と、該圧電体を挟む少なくとも2つの電極とを有する液体吐出装置の制御方法であって、前記コントローラは、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの前記圧電体の合成容量を検出する第1検出処理と、前記第1検出処理にて検出された合成容量に基づく値が異常値であるか否か判定する第1判定処理と、前記合成容量に基づく値が異常値であると判定した場合、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを駆動させる駆動処理と、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの駆動後に、前記圧電体の振動によって発生する振動波形を、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの圧電体それぞれについて検出する第2検出処理と、前記第2検出処理にて検出された振動波形が異常波形であるか否か判定する第2判定処理とを実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態に係る液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法にあっては、合成容量に基づく値に基づいてノズル群に異常があるか否か判定し、異常があると判定された場合にのみ、ノズル群に含まれる各ノズルに対して、振動波形に基づく検査を行うので、検査に要する時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る印刷装置を略示する平面図である。
図2】サブタンク及びインクジェットヘッド間のインクの流れを説明する説明図である。
図3】インクジェットヘッドの略示部分拡大断面図である。
図4】コントローラ等の構成を略示するブロック図である。
図5】記憶部に記憶されたテーブルの一例を示す概念図である。
図6】ノズルアドレス及びグループ識別子の関係を説明する説明図である。
図7】制御装置による印刷処理を説明するフローチャートである。
図8】コントローラによる不吐出検出処理を説明するフローチャートである。
図9】振動波形検出処理を説明するフローチャートである。
図10】インクの粘度と振動波形との関係を模式的に示すグラフである。
図11】インクへの気泡の混入と振動波形との関係を模式的に示すグラフである。
図12】実施の形態2に係るコントローラによる不吐出検出処理を説明するフローチャートである。
図13】グループ識別子と合成容量との関係を模式的に示すグラフである。
図14】実施の形態3に係るノズルアドレス及びグループ識別子の関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。図1は、印刷装置を略示する平面図、図2は、サブタンク及びインクジェットヘッド間のインクの流れを説明する説明図である。以下の説明では、図1に示す前後左右を使用する。前後方向は搬送方向に対応し、左右方向は走査方向に対応する。また図1の表側が上側に対応し、裏側が下側に対応し、上下も使用する。印刷装置は液体吐出装置に対応する。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、プラテン2と、インク吐出装置3と、搬送ローラ4、5等を備える。プラテン2の上面には、記録媒体である記録用紙200が載置される。インク吐出装置3は、プラテン2に載置された記録用紙200に対してインクを吐出して画像を記録する。インク吐出装置3は、キャリッジ6と、サブタンク7と、四つのインクジェットヘッド8と、循環ポンプ10(図2参照)等を備える。
【0013】
プラテン2の上側には、キャリッジ6を案内する左右に延びた2本のガイドレール11、12が設けられている。キャリッジ6には、左右に延びた無端ベルト13が連結されている。無端ベルト13は、キャリッジ駆動モータ14によって駆動される。無端ベルト13の駆動によって、キャリッジ6は、ガイドレール11、12に案内され、プラテン2に対向する領域において、走査方向に往復移動される。
【0014】
ガイドレール11、12の間に、キャップ20及びフラッシング受け21が設けられている。キャップ20及びフラッシング受け21は、インク吐出装置3よりも下側に配置されている。キャップ20はガイドレール11、12の右端部に配置され、フラッシング受け21はガイドレール11、12の左端部に配置されている。つまり、キャリッジ6は、キャップ20とフラッシング受け21との間でインクジェットヘッド8を移動させる。なお、キャップ20及びフラッシング受け21は、左右逆に配置されてもよいし、左右のいずれか一方に双方が配置されていてもよい。
【0015】
サブタンク7及び四つのインクジェットヘッド8はキャリッジ6に搭載され、キャリッジ6と共に走査方向に往復移動する。サブタンク7はカートリッジホルダ15とチューブ17を介して接続されている。カートリッジホルダ15には、一又は複数色(本実施例においては4色)のインクカートリッジ16が装着される。4色としては、例えばブラック、イエロー、シアン及びマゼンタが挙げられる。
【0016】
図2に示すように、サブタンク7の内部には、四つのインク室19が形成されている。四つのインク室19には、四つのインクカートリッジ16から供給された4色のインクがそれぞれ貯留される。
【0017】
四つのインクジェットヘッド8は、サブタンク7の下側において、走査方向に並んでいる。各インクジェットヘッド8の下面には、複数のノズル80(図3参照)が形成されている。図2に示すように、一つのインクジェットヘッド8は、1色のインクに対応し、一つのインク室19に接続されている。すなわち、四つのインクジェットヘッド8は、4色のインクにそれぞれ対応し、四つのインク室19にそれぞれ接続されている。
【0018】
図2に示すように、インクジェットヘッド8の上面には、インク供給口8aと、インク排出口8bとが設けられている。インク供給口8a及びインク排出口8bは、チューブ等を介してインク室19に接続されている。インク供給口8a及びインク室19の間には、循環ポンプ10が介装されている。
【0019】
循環ポンプ10は、例えばチューブをロータでしごくことによって、チューブ内の液体を押し出すチューブポンプである。循環ポンプ10は、インク室19のインクをインクジェットヘッド8に送り込む。
【0020】
循環ポンプ10によってインク室19から送出されたインクは、インク供給口8aを通ってインクジェットヘッド8に流入し、ノズル80から吐出される。ノズル80から吐出されないインクは、インク排出口8bを通って、インク室19に戻る。インクは、インク室19及びインクジェットヘッド8の間を循環する。なお循環ポンプ10に代えて、他の循環の為の動力源、例えばサブタンク7内に圧縮空気を送り込み、インクをインクジェットヘッド8に送り込む装置を使用してもよい。四つのインクジェットヘッド8は、キャリッジと共に走査方向に移動しながら、サブタンク7から供給された4色のインクを記録用紙200に吐出する。
【0021】
図1に示すように、搬送ローラ4は、プラテン2よりも搬送方向上流側(後側)に配置されている。搬送ローラ5は、プラテン2よりも搬送方向下流側(前側)に配置されている。二つの搬送ローラ4、5は、モータ(図示略)によって、同期して駆動する。二つの搬送ローラ4、5は、プラテン2に載置された記録用紙200を、走査方向と直交する搬送方向に搬送する。印刷装置1は制御装置50を備える。制御装置50は、CPU又はロジック回路(例えばFPGA)、不揮発性メモリ及びRAM等の記憶部50a等を備える。制御装置50は、外部装置100から印刷ジョブを受信して、記憶部50aに記憶する。また、記憶部50aは、後述するテーブル及び閾値等を記憶する。制御装置50は、印刷ジョブに基づいて、インク吐出装置3及び搬送ローラ4等の駆動を制御し、印刷処理を実行する。
【0022】
図3は、インクジェットヘッド8の略示部分拡大断面図である。インクジェットヘッド8は、複数の圧力室81を備える。複数の圧力室81は、複数の圧力室列を構成する。圧力室81の上側には振動板82が形成されている。振動板82の上側には、層状の圧電体83が形成されている。各圧力室81の上側であって、圧電体83と振動板82との間に共通電極84が形成されている。各圧力室81の上側であって、圧電体83の上面に個別電極85が形成されている。個別電極85と共通電極84とは圧電体83を挟んで上下に対向する。各圧力室81の下部にノズルプレート87が設けられている。ノズルプレート87には、上下に貫通した複数のノズル80が形成されている。各ノズル80は、各圧力室81の下側に配置されている。複数のノズル80は、第1ノズル列80a及び第2ノズル列80b(図6参照)を含む複数のノズル列を構成する。ノズル列は圧力室列に沿って延びる。共通電極84は第1ノズル列80a及び第2ノズル列80bに亘って配置されている。
【0023】
共通電極84はCOM端子、本実施例ではグランドに接続される。個別電極85は、スイッチ制御部67に接続される。個別電極85にHigh又はLow電圧が印加され、圧電体83が変形し、振動板82が振動する。振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81からインクが吐出される。圧力室81、振動板82、圧電体83、共通電極84及び個別電極85はアクチュエータ88を構成する。
【0024】
図4は、コントローラ51等の構成を略示するブロック図である。印刷装置1は、コントローラ51、D/Aコンバータ52、吐出用アンプ53、A/Dコンバータ54、振動波形用アンプ55、容量検出回路56、及びスイッチングドライバ57を備える。スイッチングドライバ57は複数のスイッチ群57(1)、57(2)、・・・、57(n)を備える。複数のノズル80は複数のアクチュエータ88にそれぞれ対応する。以下、複数のアクチュエータ88をアクチュエータ88(1)、88(2)、・・・、88(n)とも記載する。
【0025】
複数のスイッチ群57(1)、57(2)、・・・、57(n)は、複数のノズル80(ノズル80はn個ある)にそれぞれ対応し、且つ複数のアクチュエータ88(1)、88(2)、・・・、88(n)にそれぞれ対応する。各スイッチ群57(1)、57(2)、・・・、57(n)は第1スイッチ571、第2スイッチ572、及び第3スイッチ573を備える。例えば、スイッチ群57(1)の第3スイッチ573は第1スイッチング素子に対応し、スイッチ群57(2)の第3スイッチ573は第2スイッチング素子に対応する。スイッチ群57(1)の第2スイッチ572は第3スイッチング素子に対応し、スイッチ群57(2)の第2スイッチ572は第4スイッチング素子に対応する。
【0026】
各スイッチ群57(1)、57(2)、・・・、57(n)の第1スイッチ571の一端は吐出用アンプ53に接続される。各スイッチ群57(1)、57(2)、・・・、57(n)の第2スイッチ572の一端は振動波形用アンプ55に接続される。各スイッチ群57(1)、57(2)、・・・、57(n)の第3スイッチ573の一端は容量検出回路56に接続される。
【0027】
スイッチ群57(1)、スイッチ群57(2)、・・・、スイッチ群57(n)の第1スイッチ571の他端はアクチュエータ88(1)、アクチュエータ88(2)、・・・、アクチュエータ88(n)の個別電極85にそれぞれ接続される。スイッチ群57(1)、スイッチ群57(2)、・・・、スイッチ群57(n)の第2スイッチ572の他端はアクチュエータ88(1)、アクチュエータ88(2)、・・・、アクチュエータ88(n)の個別電極85にそれぞれ接続される。スイッチ群57(1)、スイッチ群57(2)、・・・、スイッチ群57(n)の第3スイッチ573の他端はアクチュエータ88(1)、アクチュエータ88(2)、・・・、アクチュエータ88(n)の個別電極85にそれぞれ接続される。
【0028】
各アクチュエータ88(1)~(n)の圧電体83の合成容量を検出する場合について説明する。各アクチュエータ88(1)~(n)の個別電極85に電圧を印加した後、コントローラ51はスイッチングドライバ57に開閉信号を出力する。コントローラ51は各スイッチ群57(1)~57(n)の第1スイッチ571及び第2スイッチを開け、各スイッチ群57(1)~57(n)の第3スイッチ573を閉じる。各圧電体83に溜まった電荷が第3スイッチ573を介して容量検出回路56に入力され、容量検出回路56は、入力された電荷に基づいて各圧電体83の合成容量を検出し、コントローラ51に出力する。
【0029】
アクチュエータ88の振動波形に基づいて、ノズル80の状態を検査する場合、コントローラ51は以下の制御を行う。例えば、アクチュエータ88(1)が、検査対象であるノズル80に対応するとする。コントローラ51は、アクチュエータ88(1)の第1スイッチ571を閉じる。コントローラ51は、アクチュエータ88(1)の第2スイッチ572及び第3スイッチ573を閉じて、アクチュエータ88(1)の個別電極85に電圧を印加する。
【0030】
その後、コントローラ51は、アクチュエータ88(1)の第2スイッチ572を閉じ、アクチュエータ88(1)の第1スイッチ571及び第3スイッチ573を閉じる。アクチュエータ88(1)の圧電体83の振動によって発生する振動波形が振動波形用アンプ55に入力される。振動波形用アンプ55に入力された振動波形は増幅され、A/Dコンバータ54に入力される。振動波形はアナログ信号である。
【0031】
A/Dコンバータ54は、入力された振動波形をデジタル信号に変換して、コントローラ51に出力する。コントローラ51は入力された振動波形に基づいて、ノズル80の状態を検査する。アクチュエータ88(1)に対応するノズル80の状態を検査している場合、他のアクチュエータ88(2)~アクチュエータ88(n)の第1スイッチ571~第3スイッチ573は開いている。コントローラ51は、アクチュエータ88(2)~アクチュエータ88(n)に対応するノズル80の状態を検査する場合も、同様な制御を実行する。容量検出回路56は第1検出回路に対応し、コントローラ51、A/Dコンバータ54及び振動波形用アンプ55は第2検出回路に対応する。
【0032】
図5は、記憶部50aに記憶されたテーブルの一例を示す概念図、図6は、ノズルアドレス及びグループ識別子の関係を説明する説明図である。図6の矢印は、インクジェットヘッド8におけるインク供給口8aからインク排出口8bへのインクの流れを模式的に示す。すなわち、インクの流れは、インク供給口8aがある側が上流であり、インク排出口8bがある側が下流である。図6に示すように、インクジェットヘッド8は、第1ノズル列80a及び第2ノズル列80bを備える。第1ノズル列80aは左側に配置され、第2ノズル列80bは右側に配置されている。
【0033】
第1ノズル列80aを構成する複数のノズル80それぞれに、ノズルアドレスN(1)、N(2)、・・・、N(p)が割り当てられている。本実施例において、ノズルアドレスN(1)、N(2)、・・・、N(p)は、上流から下流に向かって順に割り当てられている。
【0034】
第2ノズル列80bを構成する複数のノズル80それぞれに、ノズルアドレスM(1)、M(2)、・・・、M(p)が割り当てられている。本実施例において、ノズルアドレスM(1)、M(2)、・・・、M(p)は、上流から下流に向かって順に割り当てられている。なお2p=nとする。
【0035】
図6に示すように、例えば、ノズルアドレスN(1)及びN(2)にグループ識別子G(1)が対応し、ノズルアドレスN(3)及びノズルアドレスN(4)にグループ識別子G(2)が対応し、ノズルアドレスN(p-3)及びノズルアドレスN(p―2)にグループ識別子G(k-1)が対応し、ノズルアドレスN(p-1)及びノズルアドレスN(p)にグループ識別子G(k)が対応する。同じグループ識別子G(k)が付与されたノズル80は同じグループ(k)に所属する。ノズルアドレスN(1)~N(p)は、例えばアクチュエータ88(1)~88(p)に対応する。
【0036】
またノズルアドレスM(1)及びM(2)にグループ識別子G(1)が対応し、ノズルアドレスM(3)及びノズルアドレスM(4)にグループ識別子G(2)が対応し、ノズルアドレスM(p-3)及びノズルアドレスM(p―2)にグループ識別子G(k-1)が対応し、ノズルアドレスM(p-1)及びノズルアドレスM(p)にグループ識別子G(k)が対応する。ノズルアドレスM(1)~M(p)は、例えばアクチュエータ88(p+1)~88(n)に対応する。
【0037】
ノズルアドレスN(1)のノズル80は、最上流ノズルに対応し、ノズルアドレスN(2)のノズルは第1近接ノズルに対応し、ノズルアドレスN(3)のノズル80は、第3近接ノズルに対応し、ノズルアドレスN(4)のノズル80は第4近接ノズルに対応する。
【0038】
図7は、制御装置50による印刷処理を説明するフローチャートである。制御装置50は外部装置100から印刷ジョブを受信したか否か判定する(S1)。印刷ジョブを受信していない場合(S1:NO)、制御装置50はステップS1に処理を戻す。印刷ジョブを受信した場合(S1:YES)、制御装置50はフラッシング処理を実行する(S2)。フラッシング処理は、印刷目的以外でノズル80からインクを吐出する処理である。
【0039】
次に制御装置50は、コントローラ51に不吐出検出処理を実行させる(S3)。不吐出検出処理の詳細は後述する。次に制御装置50は、1印刷タスクを実行する(S4)。印刷タスクは、印刷ジョブを構成する単位である。具体的には、印刷タスクは、インクジェットヘッド8が右又は左に記録用紙200の左右幅分移動する間に行う液体吐出処理である。次に制御装置50は、1印刷タスクが完了したか否か判定する(S5)。1印刷タスクが完了していない場合(S5:NO)、ステップS5に処理を戻す。1印刷タスクが完了した場合(S5:YES)、制御装置50は、印刷ジョブが完了したか否か判定する(S6)。
【0040】
印刷ジョブが完了した場合(S6:YES)、制御装置50は印刷処理を終了する。印刷ジョブが完了していない場合(S6:NO)、制御装置50は2印刷タスクが完了したか否か判定する(S7)。なお、2印刷タスクは例示であり、1印刷タスク又は3印刷タスクが完了したか否か判定してもよい。2印刷タスクが完了した場合(S7:YES)、制御装置50はフラッシング処理を行うタイミングであるか否か判定する(S8)。フラッシング処理はノズル80のメンテナンスの為に、定期的に実行される。フラッシング処理を行うタイミングである場合(S8:YES)、制御装置50は、フラッシング処理を実行する(S9)。制御装置50は不吐出検出処理を実行し(S10)、ステップS4に処理を戻す。
【0041】
ステップS8において、フラッシング処理を行うタイミングでない場合(S8:NO)、制御装置50は不吐出検出処理を実行し(S15)、ステップS4に処理を戻す。
【0042】
ステップS7において、2印刷タスクが完了していない場合(S7:NO)、制御装置50はフラッシング処理を行うタイミングであるか否か判定する(S11)。フラッシング処理を行うタイミングである場合(S11:YES)、制御装置50はフラッシング処理を実行し(S12)、ステップS4に処理を戻す。
【0043】
ステップS11において、フラッシング処理を行うタイミングでない場合(S11:NO)、制御装置50は、非吐出フラッシング処理を実行するタイミングであるか否か判定する(S13)。非吐出フラッシング処理は、液体の吐出を行わずに、ノズル80の乾燥を防止する為の処理であり、詳細には、圧電体83を僅かに変形させて、液体の表面(メニスカス)を揺らす処理である。非吐出フラッシング処理は定期的に実行される。非吐出フラッシング処理を実行するタイミングである場合(S13:YES)、制御装置50は非吐出フラッシング処理を実行し(S14)、ステップS4に処理を戻す。非吐出フラッシング処理を実行するタイミングでない場合(S13:NO)、制御装置50は、ステップS4に処理を戻す。
【0044】
図8は、コントローラ51による不吐出検出処理を説明するフローチャートである。上述のステップS3、S10、S15において、制御装置50は、コントローラ51に不吐出検出処理を実行させる。不吐出検出処理は、コントローラ51に搭載されたソフトウェアによって実行される。コントローラ51は静電容量を検出するグループ識別子を指定し(S21)、指定したグループ識別子に対応する全ノズル80の第3スイッチ573を閉じ(S22)、合成容量を検出する(S23)。ステップS23は第1検出処理に対応する。
【0045】
例えば、コントローラ51はグループ識別子G(1)を指定し、テーブルを参照してグループ識別子G(1)が付与されたノズル80、即ち、ノズルアドレスN(1)、N(2)、M1、M(2)のノズル80に対応するアクチュエータ88(1)、88(2)、88(p+1)、88(p+2)の第3スイッチ573を閉じ、アクチュエータ88(1)、88(2)、88(p+1)、88(p+2)の圧電体83の合成容量を検出する。
【0046】
コントローラ51は、検出した合成容量に基づいて温度を算出し、記憶部50aに記憶する(S24)。コントローラ51は、今回記憶部50aに記憶した温度から、前回の不吐出検出処理において記憶部50aに記憶した温度を減算した値、即ち減算値を算出する(S25)。なお初めて不吐出検出処理を実行する場合、今回記憶部50aに記憶した温度から、不吐出検出処理を実行する前に記憶部50aに記憶した初期温度を減算する。前回の不吐出検出処理のステップS24において、検出した合成容量に基づいて温度を算出する処理は第1算出処理に対応する。今回の不吐出検出処理のステップS24において、検出した合成容量に基づいて温度を算出する処理は第2算出処理に対応する。
【0047】
コントローラ51は、減算値が閾値以上であるか否か判定する(S26)。閾値は記憶部50aに記憶されている。ステップS26は第1判定処理に対応する。減算値が閾値以上でない場合(S26:NO)、即ち温度上昇が過剰でなく、減算値が異常値でない場合、コントローラ51は、全グループ識別子、即ち全グループについて、合成容量の検出が完了したか否か判定する(S27)。全グループについて、合成容量の検出が完了していない場合(S27:NO)、ステップS21に処理を戻し、次のグループ識別子を選択する。全グループについて、合成容量の検出が完了している場合(S27:YES)、コントローラ51はステップS4に処理を戻す。
【0048】
ステップS26において、減算値が閾値以上である場合(S26:YES)、即ち温度上昇が過剰であり、減算値が異常値である場合、コントローラ51は、検出対象であるグループ識別子に対応させて、異常値フラグを記憶部50aに記憶する(S28)、即ち異常値フラグを立てる。コントローラ51は、異常値フラグを立てたグループ識別子に対応する各ノズル80に対し、振動波形検出処理を実行し(S29)、ステップS27に処理を進める。振動波形検出処理については後述する。
【0049】
なお、先に全てのグループに対してステップS21~S28の処理を実行した後、振動波形検出処理を実行してもよい。即ち、先に、全グループに対して減算値が閾値以上であるか否かを判定し、その後、異常値フラグを立てた各グループのノズル80に対して振動波形検出処理を実行してもよい。
【0050】
ステップS26における閾値は、全グループ識別子に対して共通の値でもよいし、各グループ識別子に対応した複数の値でもよい。各グループ識別子に対向した複数の値である場合、ステップS21にてグループ識別子が指定される毎に、指定されたグループ識別子に対応した閾値が使用される。
【0051】
図9は、振動波形検出処理を説明するフローチャートである。振動波形検出処理は、コントローラ51に搭載されたソフトウェアによって実行される。コントローラ51は、異常値フラグが立ったグループに含まれるいずれかのノズル80を指定し(S31)、指定されたノズル80に対応する第1スイッチ571を閉じる(S32)。コントローラ51は、駆動信号を所定時間出力し(S33)、第1スイッチ571を開く(S34)。
【0052】
コントローラ51は第2スイッチ572を閉じ(S35)、振動波形を検出して(S36)、第2スイッチ572を開く(S37)。コントローラ51は、検出された振動波形が異常であるか否か判定する(S38)。ステップS36は第2検出処理に対応し、ステップS38は第2判定処理に対応する。
【0053】
図10は、インクの粘度と振動波形との関係を模式的に示すグラフ、図11は、インクへの気泡の混入と振動波形との関係を模式的に示すグラフである。ステップS29の振動波形検出処理において、コントローラ51は圧電体83の振動によって発生する振動波形を検出する。
【0054】
図10に示すように、振動波形の振幅はインクの粘度比によって異なる。粘度比A<粘度比B<粘度比Cの場合、粘度比Aの振幅が最も大きくなり、粘度比Cの振幅が最も小さい。例えばノズル80付近のインクが乾燥した場合には、インクの粘度が増加する。インクの粘度が増加すると、流路抵抗が増加し振動周期や残留振動の減衰が大きくなり、ノズル80からインクを吐出できないおそれがある。コントローラ51は、振動波形に基づいてインクの粘度比を算出し、インクの粘度比が予め記憶部50aに記憶した閾値よりも大きい場合、即ち粘度比が過剰に大きい場合、振動波形は異常であると判定する。
【0055】
図11に示すように、振動波形の周期はインクへの気泡の混入の有無によって異なる。例えば、気泡がインクの流路やノズル先端に混入した場合には、ノズル正常時に比べて、気泡が混入した分だけインクの重量が減少し、振動周期が短くなる。インクに気泡が混入すると、ノズル80からインクを吐出できないおそれがある。コントローラ51は、振動波形の周期を算出し、算出した周期が予め記憶部50aに記憶した閾値よりも小さい場合、即ちインクに気泡が混入している場合、振動波形は異常であると判定する。
【0056】
検出された振動波形が異常である場合(S38:YES)、コントローラ51は、検出対象であるノズル80のノズルアドレスに対応させて異常波形フラグを記憶部50aに記憶する(S39)。コントローラ51は、異常値フラグが立ったグループに含まれる全ノズル80に対して、振動波形の検出を実行したか否か判定する(S40)。
【0057】
ステップS38において、検出された振動波形が異常でない場合(S38:NO)、コントローラ51は、ステップS40に処理を進める。
【0058】
ステップS40において、全ノズル80に対して、振動波形の検出を実行していない場合(S40:NO)、ステップS31に処理を戻す。全ノズル80に対して、振動波形の検出を実行した場合(S40:YES)、ステップS27に処理を戻す(図8参照)。
【0059】
実施の形態1において、不吐出検出処理及び振動波形検出処理はソフトウェアによって実行されているが、これに限らない。例えば、合成容量に基づく値が異常値である場合及び異常値でない場合に異なる信号を出力する第1回路と、振動波形が異常である場合及び異常でない場合に異なる信号を出力する第2回路とを設けてもよい。第1回路及び第2回路は、例えばロジック回路である。この場合、第1回路に合成容量が入力され、第1回路はコントローラ51に信号を出力する。また第2回路に振動波形が入力され、第2回路はコントローラ51に信号を出力する。コントローラ51は、入力された各信号に基づいて異常の有無を判定する。
【0060】
実施の形態1に係る印刷装置にあっては、合成容量に基づく値に基づいて、指定されたグループ識別子に対応する複数のノズル80、即ち指定されたノズル群に異常があるか否か判定する。そして当該印刷装置は、異常があると判定された場合にのみ、前記ノズル群に含まれる各ノズルに対して、振動波形に基づく検査を行うので、検査に要する時間を削減することができる。
【0061】
また当該印刷装置は、合成容量に基づいてノズル群の温度を算出し、今回算出した温度(第2時点にて検出された第2温度)から、前回算出した温度(第1時点にて検出された第1温度)を減算した減算値が閾値以上である場合、ノズル群は、温度が過剰に上昇した異常なノズル80を含むと判定する。異常なノズル80を含むと判定した場合にのみ、振動波形に基づく検査を行い、検査に要する時間を削減する。
【0062】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図12は、コントローラ51による不吐出検出処理を説明するフローチャートである。
【0063】
コントローラ51は静電容量を検出するグループ識別子を指定し(S51)、指定したグループ識別子に対応する全ノズル80の第3スイッチ573を閉じ(S52)、合成容量を検出し(S53)、検出された合成容量を記憶部50aに記憶する(S54)。コントローラ51は全グループ識別子、即ち全グループについて、合成容量を記憶したか否か判定する(S55)。全グループについて、合成容量を記憶していない場合(S55:NO)、ステップS51に処理を戻し、次のグループ識別子を選択する。
【0064】
全グループについて、合成容量を記憶している場合(S55:YES)、コントローラ51は、記憶された全グループの合成容量に基づいて、合成容量の正常範囲を決定する(S56)。
【0065】
図13は、グループ識別子と合成容量との関係を模式的に示すグラフである。図13に示すように、記憶部50aに各グループ識別子に対応した合成容量が記憶されている。コントローラ51は、例えば記憶された各合成容量の80%以上が含まれる範囲を算出し、算出された範囲を正常範囲に決定する。なお正常範囲は任意に設定することができ、記憶された各合成容量の70%又は90%以上が含まれる範囲を正常範囲としてもよい。
【0066】
コントローラ51は、グループ識別子を指定し(S57)、コントローラ51は、指定されたグループ識別子に対応する圧電体83の合成容量が正常範囲の最大値Cmaxよりも大きいか否か判定する(S58)。合成容量が最大値Cmaxよりも大きくない場合(S58:NO)、コントローラ51は、全グループ識別子、即ち全グループについてステップS58の判定を実行したか否か判定する(S59)。全グループについて、ステップS58の判定を実行していない場合、コントローラ51は、ステップS57に処理を戻し、次のグループ識別子を指定する。
【0067】
ステップS58において、合成容量が最大値Cmaxよりも大きい場合(S58:YES)、即ち、温度上昇が過剰であり、合成容量が異常値である場合、検出対象であるグループ識別子に対応させて、異常値フラグを記憶部50aに記憶する(S60)、即ち異常値フラグを立てる。コントローラ51は、異常値フラグを立てたグループ識別子に対応する各ノズル80に対し、振動波形検出処理を実行し(S61)、ステップS59に処理を進める。
【0068】
実施の形態2に係る印刷装置にあっては、各グループ識別子に対応する圧電体83の合成容量を検出し、検出された各合成容量に基づいて正常範囲を決定する。コントローラ51はいずれかのグループ識別子を指定し、指定されたグループ識別子の合成容量が正常範囲よりも大きい場合、指定されたグループ識別子に対応する複数のノズル、即ちノズル群は、温度が過剰に上昇した異常なノズル80を含むと判定する。異常なノズル80を含むと判定した場合にのみ、ノズル群に振動波形に基づく検査を行い、検査に要する時間を削減する。
【0069】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。実施の形態3に係る構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図14は、ノズルアドレス及びグループ識別子の関係を説明する説明図である。
【0070】
図14に示すように、インクジェットヘッド8は、第1ノズル列80a及び第2ノズル列80bを備える。第1ノズル列80aは左側に配置され、第2ノズル列80bは右側に配置されている。
【0071】
第1ノズル列80aを構成する複数のノズル80それぞれに、ノズルアドレスN(1)、N(2)、・・・、N(p)が割り当てられている。本実施例において、ノズルアドレスN(1)、N(2)、・・・、N(p)は、上流から下流に向かって順に割り当てられている。即ち、ノズルアドレスN(1)のノズル80は、最上流ノズルに対応し、ノズルアドレスN(p)は最下流ノズルに対応し、ノズルアドレスN(2)のノズル80は、第1近接ノズルに対応し、ノズルアドレスN(p-1)のノズル80は第2近接ノズルに対応する。
【0072】
第2ノズル列80bを構成する複数のノズル80それぞれに、ノズルアドレスM(1)、M(2)、・・・、M(p)が割り当てられている。本実施例において、ノズルアドレスM(1)、M(2)、・・・、M(p)は、上流から下流に向かって順に割り当てられている。即ち、ノズルアドレスM(1)のノズル80は、最上流ノズルに他対応し、ノズルアドレスM(p)は最下流ノズルに対応し、ノズルアドレスM(2)のノズル80は、第1近接ノズルに対応し、ノズルアドレスM(p-1)のノズル80は第2近接ノズルに対応する。
【0073】
図14に示すように、例えば、ノズルアドレスN(1)及びN(p)にグループ識別子G(1)が対応し、ノズルアドレスN(2)及びノズルアドレスN(p-1)にグループ識別子G(2)が対応し、ノズルアドレスN(3)及びノズルアドレスN(p―2)にグループ識別子G(3)が対応し、ノズルアドレスN(4)及びノズルアドレスN(p-3)にグループ識別子G(4)が対応する。実施の形態3においても、実施の形態1又は2と同様に、ノズル80の状態が検査される。
【0074】
実施の形態3に係る印刷装置にあっては、最上流ノズル及び最下流ノズルにグループ識別子G(1)を付与し、第1近接ノズル及び第2近接ノズルにグループ識別子G(2)を付与する。即ち、インク供給口8aに最も近いノズルと、インク供給口8aから最も遠いノズルとを同じグループに所属させ、次にインク供給口8aに最も近いノズルと、次にインク供給口8aから最も遠いノズルとを同じグループに所属させる。インクの温度は、下流側に向かうに従って上昇するので、上述のようにグループ分けを行うことによって、各グループにおける平均温度を均一化させることができる。そのため、各グループの合成容量の差が小さくなり、合成容量に基づく値と比較する閾値を、各グループで共通化させやすくなる。
【0075】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 印刷装置
51 コントローラ
80 ノズル
83 圧電体
84 共通電極
85 個別電極
88 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14