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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171354
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】車両の下部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221104BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B62D25/20 E
B62D21/15 C
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077947
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 帝
(72)【発明者】
【氏名】棗 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】戎本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】中本 晶子
(72)【発明者】
【氏名】辻 大介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健人
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB16
3D203BB18
3D203BB20
3D203BB22
3D203BB35
3D203BB54
3D203CA02
3D203CA25
3D203CA33
3D203CA34
3D203CA53
3D203CA56
3D203CA57
3D203CA68
3D203CA73
3D203CB04
3D203CB10
3D203CB19
3D203DA20
3D203DA51
3D203DA53
3D203DB05
(57)【要約】
【課題】側突時においても前後延設部によるサイドシルの支持効果を維持できる、車両の下部車体構造を提供することを課題とする。
【解決手段】車両の下部車体構造100は、フロアパネル2と、サイドシル50と、サイドシル50の車幅方向内側において前後方向に延びておりサイドシル50に対して車幅方向内側に当接してサイドシル50に沿って車両前後方向に延びる前後延設部22を有するフレーム部材20とを備える。前後延設部22は、フロアパネル2に対して下方から対向する底面部41と、底面部41の車幅方向の内端部からフロアパネル2に向かって延びる内壁部42と、内壁部42の先端部から車幅方向内側に延びてフロアパネル2に接合される内側フランジ44と有する。底面部41に、車幅方向への衝突荷重が入力されたときに底面部41の車幅方向への変形を促進する変形促進部48,49が形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面部を構成するフロアパネルと、
車両の車幅方向端部において車両前後方向に延びる、サイドシルと、
前記サイドシルの車幅方向内側において前後方向に延びており、前記フロアパネルに対して上下方向に接合されて前記フロアパネルと共に閉断面を構成するフレーム部材であって、前記サイドシルに対して車幅方向内側に当接して前記サイドシルに沿って車両前後方向に延びる前後延設部を有する、フレーム部材と、
を備え、
前記前後延設部は、
前記フロアパネルに対して上下方向に対向する第1面部と、
前記第1面部の車幅方向の内端部から前記フロアパネルに向かって延びる内壁部と、
前記内壁部の先端部から車幅方向内側に延び、前記フロアパネルに接合される内側フランジと
を有しており、
前記第1面部に、車幅方向への衝突荷重が入力されたときに該第1面部の車幅方向への変形を促進する変形促進部が形成されている、車両の下部車体構造。
【請求項2】
前記変形促進部は、前後方向に延びるビード又は車両上下方向に貫通した孔部である、
請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
前記変形促進部は、複数設けられており、
複数の前記変形促進部には、車幅方向に並ぶ少なくとも2つの前記変形促進部が含まれている、
請求項1又は2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
前記変形促進部は、複数設けられており、
複数の前記変形促進部には、車両前後方向に並ぶ少なくとも2つの前記変形促進部が含まれている、
請求項1~3のいずれか1つに記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
前記前後延設部は、前記フロアパネルに対して下方から接合されており、
前記前後延設部の下面は、前記サイドシルの下面よりも上方に位置している、
請求項1~4のいずれか1つに記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
前記前後延設部は、前記第1面部の車幅方向外端部から前記フロアパネルに向かって延びる外壁部を有し、前記外壁部において前記サイドシルに接合されている、
請求項1~5のいずれか1つに記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
前記フロアパネルのうち、前記前後延設部と共に閉断面を構成している部分の車幅方向内側への圧縮強度は、前記第1面部の圧縮強度に同等である、
請求項1~6のいずれか1つに記載の車両の下部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サイドシルの車幅方向内側において前後方向に延びており、フロアパネルに対して下方から接合されてフロアパネルと共に閉断面を構成するフレーム部材であって、サイドシルに対して車幅方向内側に当接してサイドシルに沿って車両前後方向に延びる前後延設部を有する、フレーム部材を備えた、車両の下部車体構造が開示されている。サイドシルは、フレーム部材、特に前後延設部によって車幅方向内側から支持されており、側突時の内倒れ変形が抑制されている。
【0003】
前後延設部は、フロアパネルに対して下方から対向する第1面部と、第1面部の車幅方向の内端部からフロアパネルに向かって延びる内壁部と、内壁部の先端部から車幅方向内側に延びてフロアパネルに接合される内側フランジとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10155542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレーム部材は、車体の骨格部分を構成するため、一般に、フロアパネルを構成する鋼板よりも剛性が高い部材(例えば板厚が厚い)により構成されている。換言すれば、フレーム部材とフロアパネルとによって構成される閉断面について、上下方向に対向する前後延設部の第1面部とフロアパネルとは剛性が異なる。具体的には、第1面部は、フロアパネルよりも剛性が高い。
【0006】
このため、特許文献1の車両の下部車体構造では、側突時にサイドシルを介して車幅方向内側に向かう衝突荷重が前後延設部に作用したとき、第1面部の変形量に比して、フロアパネルのうち第1面部に対向する部分の変形量が過度に大きくなりやすい。その結果、前後延設部は内側フランジにおけるフロアパネルへの接合部に、過度なせん断歪が生じて、該接合部が破断して前後延設部がフロアパネルから脱落してしまう。
【0007】
前後延設部がフロアパネルから脱落すると、前後延設部によるサイドシルの支持がなくなるため、側突時における前後延設部による上記サイドシルの内倒れ抑制効果が低下する。
【0008】
本発明は、側突時においても前後延設部によるサイドシルの支持効果を維持できる、車両の下部車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本願発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明は、
車両の床面部を構成するフロアパネルと、
車両の車幅方向端部において車両前後方向に延びる、サイドシルと、
前記サイドシルの車幅方向内側において前後方向に延びており、前記フロアパネルに対して上下方向に接合されて前記フロアパネルと共に閉断面を構成するフレーム部材であって、前記サイドシルに対して車幅方向内側に当接して前記サイドシルに沿って車両前後方向に延びる前後延設部を有する、フレーム部材と、
を備え、
前記前後延設部は、
前記フロアパネルに対して上下方向に対向する第1面部と、
前記第1面部の車幅方向の内端部から前記フロアパネルに向かって延びる内壁部と、
前記内壁部の先端部から車幅方向内側に延び、前記フロアパネルに接合される内側フランジと
を有しており、
前記第1面部に、車幅方向への衝突荷重が入力されたときに該第1面部の車幅方向への変形を促進する変形促進部が形成されている、車両の下部車体構造を提供する。
【0011】
本発明によれば、側突時にサイドシルを介して車幅方向への衝突荷重が前後延設部に入力されたときに、変形促進部を介して第1面部の車幅方向への変形を促進させることができる。その結果、一般的にフロアパネルに対して剛性が高い第1面部の変形量がフロアパネルのうち該第1面部に対向する部分の変形量に近づく。
【0012】
これによって、内側フランジとフロアパネルとの接合部に係るせん断歪が減少するので、内側フランジにおける接合を維持しやすい。したがって、前後延設部の閉断面を維持しやすく、前後延設部によるサイドシルの車幅方向内側からの支持が維持されやすいので、サイドシルの内倒れ変形が抑制される。
【0013】
また、前記変形促進部は、前後方向に延びるビード又は車両上下方向に貫通した孔部であってもよい。
【0014】
本構成によれば、前後延設部を例えばプレス成形によって、第1面部に変形促進部をビード又は孔部として一体的に容易に形成できる。本構成におけるビードとしては、閉断面の内側(すなわちフロアパン側)に凹となるビードと、閉断面の外側(すなわち反フロアパン側)に凸となるビードのいずれでもよい。
【0015】
また、前記変形促進部は、複数設けられており、
複数の前記変形促進部には、車幅方向に並ぶ少なくとも2つの前記変形促進部が含まれていてもよい。
【0016】
本構成によれば、第1面部を、車幅方向に並ぶ少なくとも2つの変形促進部が形成された位置において確実に車幅方向に圧縮するように変形させやすい。
【0017】
また、前記変形促進部は、複数設けられており、
複数の前記変形促進部には、車両前後方向に並ぶ少なくとも2つの前記変形促進部が含まれていてもよい。
【0018】
本構成によれば、車両前後方向に並ぶ少なくとも2つの変形促進部によって、第1面部を前後方向の広い範囲において安定して車幅方向に圧縮するように変形させやすい。
【0019】
また、前記前後延設部は、前記フロアパネルに対して下方から接合されており、
前記前後延設部の下面は、前記サイドシルの下面よりも上方に位置していてもよい。
【0020】
本構成によれば、前後延設部のうち下面部と外壁部との間に形成される稜線部が、サイドシルの車幅方向の内壁部のうち下面よりも上方に位置しているので、剛性の高い稜線部によってサイドシルの内壁部を支持しやすい。さらに、サイドシルから、底面部に衝突荷重が確実に伝達されるので、底面部を安定して車幅方向に圧縮するように変形させやすい。したがって、側突時にサイドシルに車幅方向内側へ向かう衝突荷重が作用したとき、前後延設部によってサイドシルを支持しやすく、サイドシルの内倒れ変形を抑制しやすい。
【0021】
これに対して、前後延設部の下面がサイドシルの下面よりも下方に位置するとき、上記稜線部によってサイドシルの内壁部が支持されず、またサイドシルから前後延設部の下面部への衝突荷重が効率的に伝達されない。また、前後延設部の下面がサイドシルの下面と同じ高さに位置するとき、上記稜線部を起点としてサイドシルが内倒れ変形しやすい。
【0022】
前記前後延設部は、前記第1面部の車幅方向外端部から前記フロアパネルに向かって延びる外壁部を有し、前記外壁部において前記サイドシルに接合されていてもよい。
【0023】
本構成によれば、前後延設部はサイドシルに接合されているので、側突時にサイドシルに車幅方向内側へ向かう衝突荷重が作用したとき、サイドシルの内倒れ変形に対して前後延設部が車幅方向内側から抗する。よって、サイドシルの内倒れ変形をさらに抑制しやすい。
【0024】
前記フロアパネルのうち、前記前後延設部と共に閉断面を構成している部分の車幅方向内側への圧縮強度は、前記第1面部の圧縮強度に同等であってもよい。
【0025】
本構成によれば、側突時にサイドシルを介して車幅方向への衝突荷重が前後延設部に入力されたときに、第1面部の変形量がフロアパネルのうち該第1面部に対向する部分の変形量と同等になる。その結果、フロアパネルに対する内側フランジの車幅方向における位置連れがないので、内側フランジとフロアパネルとの接合部に係る剪断歪が生じず、内側フランジにおける接合を維持できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、側突時においても前後延設部のフロアパネルへの接合を維持しやすく、これによって前後延設部によるサイドシルの支持効果を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の下部車体構造を示す斜視図。
図2図1の下部車体構造の底面図。
図3図1のIII-III線に沿った断面図。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図。
図5】ロアフレームの周辺を下方から見た斜視図。
図6図2のVI-VI線に沿った断面図。
図7図2のVII-VII線に沿った断面図。
図8】ポール側突時の解析結果を示すロアフレーム周辺の底面図。
図9図8の解析結果を車幅方向内側から見た斜視図。
図10図9のX-X線に沿った断面図。
図11図9のXI-XI線に沿った断面図。
図12】側突時のロアフレーム周辺の変形態様を概略的に示す図。
図13】変形例に係るロアフレームを示す図6と同様の断面図。
図14】比較例に係るロアフレームの変形態様を示す図10と同様の断面図。
図15】比較例に係るロアフレームの変形態様を示す図12と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は本発明の一実施形態に係る車両の下部車体構造100を示す斜視図である。図2は下部車体構造100の左側半分の底面図である。以下の説明では、車両に搭乗した乗員から見た前後方向、車幅方向(左右方向)及び上下方向をそれぞれ、下部車体構造100及び各部材の前後方向、車幅方向(左右方向)及び上下方向とする。
【0030】
図1に示されるように、下部車体構造100は、車室内空間の床面部を構成するフロアパネル2と、フロアパネル2の車幅方向両端部に沿って前後方向に延びる一対のサイドシル50と、フロアパネル2の前方に配設されたダッシュパネル10とを備えている。
【0031】
各サイドシル50は、前後方向に直交する断面において、車幅方向外側に開放したハット状に形成されたサイドシルインナ51と、車幅方向内側に開放したハット状に形成されたサイドシルアウタ52(図2参照)とを備えている。サイドシルインナ51とサイドシルアウタ52とは、前後方向に連続する閉断面を構成するように相互に接合されている。
【0032】
下部車体構造100は、一対のサイドシル50それぞれの前端部から上方に立ち上がる、一対のヒンジピラー11をさらに備えている。一対のヒンジピラー11の間にダッシュパネル10が架設されている。ダッシュパネル10によって、車室内空間とエンジンルームとが前後方向に仕切られている。エンジンルームの車幅方向の両側部には、前後方向に延びる一対のフロントフレーム7が配設されている(図1において一方のフロントフレーム7のみ示されている)。
【0033】
下部車体構造100の車幅方向中央部には、フロアパネル2から上方に膨出して前後方向に延びるトンネル部3が設けられている。トンネル部3は、前後方向に直交する断面において下方に開放したU字状に形成されている。具体的には、トンネル部3は、車幅方向の中央において前後方向及び車幅方向に延びる頂面部3aと、頂面部3aの車幅方向の両側部から下方に延びてフロアパネル2に接続される一対の縦壁部3bとを有している。
【0034】
トンネル部3の上部の車幅方向における両側部にはそれぞれ、前後方向に延びるバックボーンフレーム8が接合されている。バックボーンフレーム8は、前後方向に直交する断面においてトンネル部3の頂面部3a及び縦壁部3bに沿って接合されるように、L字状に形成されている。バックボーンフレーム8によって、トンネル部3の頂面部3aと縦壁部3bとの間の角部が補強されている。
【0035】
フロアパネル2の上面には、車幅方向に延びる一対のクロスメンバ4が接合されている。一対のクロスメンバ4は、トンネル部3の車幅方向の両側部にそれぞれ設けられている。クロスメンバ4は、例えば鋼板からなるプレス成形品であり、車幅方向に直交する断面において下方に開放したハット状に形成されている。クロスメンバ4は、下端部において、前方に延びる前側フランジ4aと、後方に延びる後側フランジ4bとを有している。
【0036】
クロスメンバ4は、前側フランジ4a及び後側フランジ4bにおいて、フロアパネル2に対して上方から例えばスポット溶接により接合されている。したがって、クロスメンバ4とフロアパネル2との間に、車幅方向に連続する不図示の閉断面が構成されている。
【0037】
クロスメンバ4は、車幅方向内側の端部に内側シートレール(不図示)の前部を支持するための内側シートブラケット5が接合されており、車幅方向外側の端部に外側シートレール(不図示)の前部を支持する外側シートブラケット6が接合されている。クロスメンバ4は、内側シートブラケット5を介してトンネル部3の縦壁部3bに連結されており、外側シートブラケット6を介してサイドシルインナ51に接合されている。
【0038】
フロアパネル2には、サイドシル50とトンネル部3との間を前後方向に延びる一対のフレーム部材20が接合されている。一対のフレーム部材20は、トンネル部3の車幅方向の両側にそれぞれ設けられている。フレーム部材20は、後方に向かって車幅方向外側に傾斜した方向に延びる傾斜部21と、傾斜部21の後部に連続して前後方向に平行に後方へ延びる前後延設部22(図2参照)とを有している。
【0039】
傾斜部21は、前端部がフロントフレーム7の後端部に連続しており、後端部がクロスメンバ4の車幅方向の外端部で終端している。前後延設部22は、サイドシルインナ51の車幅方向内側に当接している。
【0040】
また、フロアパネル2の上面には、一対のフレーム部材20、具体的には一対の傾斜部21をトンネル部3の一対の縦壁部3bにそれぞれ車幅方向に連結する、一対の連結部材15が接合されている。一対の連結部材15は、トンネル部3の車幅方向の両側にそれぞれ設けられている(図1においては一方の連結部材15のみ示されている)。
【0041】
連結部材15は、フロアパネルに沿って車幅方向に延びる水平部16と、トンネル部3の縦壁部3bに沿って上方に延びる立ち上がり部17と、水平部16と立ち上がり部17とを接続するスロープ部18とを有している。水平部16は、上面視で傾斜部21の延在方向に対して略直交する方向に延びている。スロープ部18は、フロアパネル2及びトンネル部3の縦壁部3bから離間して、車幅方向内側に向かって上方に傾斜した方向に延びている。
【0042】
連結部材15は、例えば鋼板からなるプレス成形品であり、延在方向に直交する断面形状が下方または車幅方向内側に開放したハット状に形成されている。
【0043】
連結部材15の水平部16は、車幅方向の外端部において傾斜部21に接合されており、フロアパネル2との間に車幅方向に延びる閉断面を構成している。連結部材15の立ち上がり部17は、トンネル部3の縦壁部3bに接合されており、縦壁部3bと共に上下方向に延びる閉断面を構成している。また、立ち上がり部17の上端部は、バックボーンフレーム8に接合されている。連結部材15のスロープ部18は、フロアパネル2及びトンネル部3の何れにも接合されていない。
【0044】
図3は、図1のIII-III線に沿ったフレーム部材20の傾斜部21における前後方向に直交する断面図である。図3に示されるように、フレーム部材20は、フロアパネル2の上面に接合されたアッパフレーム30と、フロアパネル2の下面に接合されたロアフレーム40とを有している。傾斜部21においては、アッパフレーム30とロアフレーム40とは、フロアパネル2を挟んで上下に対向するように配置されている。
【0045】
本実施形態では、傾斜部21は、アッパフレーム30と、ロアフレーム40のうちクロスメンバ4より前側に位置する部分によって構成されている。前後延設部22は、ロアフレーム40のうち、前後方向においてクロスメンバ4対してに下方から対向する部分を含んでクロスメンバ4より後方に位置する部分によって構成されている。アッパフレーム30及びロアフレーム40は、例えば鋼板からなるプレス成形品である。
【0046】
アッパフレーム30は、図3に示す断面において下方に開放したハット状に形成されている。具体的には、アッパフレーム30は、フロアパネル2の上面側においてフロアパネル2と略平行に延びる上面部31と、上面部31の車幅方向内端部から下方に延びる内壁部32と、上面部31の車幅方向外端部から下方に延びる外壁部33と、内壁部32の下端部から車幅方向内側に延びる内側フランジ34と、外壁部33の下端部から車幅方向外側に延びる外側フランジ35とを有している。
【0047】
ロアフレーム40は、図3に示す断面において上方に開放したハット状に形成されている。具体的には、ロアフレーム40は、フロアパネル2の下面側においてフロアパネル2と略平行に延びる底面部41(第1面部)と、底面部41の車幅方向内端部から上方に延びる内壁部42と、底面部41の車幅方向外端部から上方に延びる外壁部43と、内壁部42の上端部から車幅方向内側に延びる内側フランジ44と、外壁部43の下端部から車幅方向外側に延びる外側フランジ45とを有している。
【0048】
アッパフレーム30及びロアフレーム40は、それぞれの内側フランジ34,44と外側フランジ35,45とが、フロアパネル2を挟んで3枚重ねで例えばスポット溶接により接合されている。したがって、傾斜部21においては、アッパフレーム30及びロアフレーム40は、フロアパネル2を上下に挟んで前後方向に延びる略矩形状の閉断面を構成している。
【0049】
図2に示されるように、フロアパネル2の下方には、本発明に係る車両部品として、バッテリ60と複数の配管70とが配置されている。バッテリ60は、車幅方向においてロアフレーム40とトンネル部3との間にわたって配置されている。バッテリ60は、車幅方向の外端部がバッテリブラケット61を介してロアフレーム40の底面部41に締結により固定されており、車幅方向の内端部がフロアパネル2及び/又はトンネル部3に設けた不図示のブラケットに締結により固定されている。
【0050】
バッテリブラケット61は、ロアフレーム40の底面部41に平行に前後方向に延びる第1面部62と、第1面部62の車幅方向の内端部から下方に延びる第2面部63とを有するL字状に形成されている。
【0051】
第1面部62は、ロアフレーム40の底面部41に対して下方から締結により固定されている。バッテリ60は、車幅方向の外側端部が、第2面部63に対して車幅方向外側から締結により固定されている。したがって、バッテリ60は、車幅方向の外側端部において、バッテリブラケット61を介してロアフレーム40の底面部41に固定されている。
【0052】
複数の配管70は、ロアフレーム40の内壁部42に沿って前後方向に延びている。複数の配管70は、バッテリ60の車幅方向外端部の上方であって、ロアフレーム40の内壁部42の車幅方向の内側に隣接した位置に配策されている。
【0053】
図4図2のIV-IV線におけるフレーム部材20のうち前後延設部22の前後方向に直交する断面を示す斜視図である。図4においてバッテリ60及びサイドシルアウタ52が省略されている。図4に示されるように、複数の配管70には、第1燃料配管71、第2燃料配管72、第1ブレーキ配管73及び第2ブレーキ配管74が含まれている。
【0054】
第1燃料配管71は、燃料タンク(不図示)からエンジン(不図示)へ燃料を供給するための配管である。第2燃料配管72は、燃料タンクで生じる蒸散ガスを例えばキャニスタ(不図示)に導入させるための配管である。第1及び第2ブレーキ配管73,74はそれぞれ左右の後輪用のブレーキ装置(不図示)に作動油圧を伝達するための配管である。
【0055】
図5は、ロアフレーム40の周辺を下方から見た斜視図であり、バッテリ60を省略すると共に、複数の配管70を分解した状態を示している。図5に示されるように、複数の配管70は、前後方向に間隔を空けた複数箇所において、配管クリップ76を介してロアフレーム40の内壁部42に取り付けられている。本実施形態では、複数の配管70は、前後延設部22の前側より部分と後側より部分の2箇所それぞれにおいて、配管クリップ76を介してロアフレーム40に取り付けられている。
【0056】
図6を併せて参照して、配管クリップ76は、複数の配管70を個別に保持する複数の保持部77と、ロアフレーム40の内壁部42に取り付けられる取付部78とを有している。複数の配管70は、ロアフレーム40に対して車幅方向内側に隣接して前後方向に平行に直線状に延びる直管部70aと、直管部70aから屈曲されて配管クリップ76の対応する各保持部77によって保持される被保持部70bとを有している。
【0057】
図4に示されるように、フロアパネル2は車幅方向の外端部から上方に延びる外側フランジ2aを有している。サイドシルインナ51は、車幅方向内側において上下方向に延びる内壁部53と、内壁部53の上端部から車幅方向外側に延びる上面部54と、内壁部53の下端部から車幅方向外側に延びる下面部55と、上面部54の車幅方向の外端部から上方に延びる上側フランジ56と、下面部55の車幅方向の外端部から下方に延びる下側フランジ57とを有している。
【0058】
内壁部53は、フロアパネル2を下面側から上面側へ横断するように、上下方向に延びている。具体的には、内壁部53は、上下方向の中心位置がフロアパネル2よりも下方に位置している。サイドシルインナ51は、上側フランジ56及び下側フランジ57によってサイドシルアウタ52(図2参照)に接合されている。
【0059】
ロアフレーム40は、傾斜部21と同様に、前後延設部22においても、底面部41、内壁部42、外壁部43及び内側フランジ44を有している。底面部41は、サイドシルインナ51の下面部55よりも上方に位置している。
【0060】
一方、ロアフレーム40は、傾斜部21とは異なり、前後延設部22においては、外側フランジ45を有しておらず、外壁部43がフロアパネル2を超えて上方へ延びている。外壁部43は、サイドシルインナ51の内壁部53に対してスポット溶接によって接合されている。具体的には、ロアフレーム40は、外壁部43のうち上下方向の中心位置よりも下側において、サイドシルインナ51の内壁部53に接合されている。
【0061】
ロアフレーム40は、外壁部43の上端部において、フロアパネル2の外側フランジ2aと共にサイドシルインナ51の内壁部53に3枚重ねで例えばスポット溶接により接合されている。すなわち、ロアフレーム40は、外壁部43において、フロアパネル2の上面側と下面側とに上下に離間した2箇所でサイドシルインナ51の内壁部53に接合されている。
【0062】
図5に示されるように、ロアフレーム40の内壁部42には、車幅方向に貫通する複数の横孔部46が形成されている。複数の横孔部46は、ロアフレーム40の外壁部43(図4参照)を、閉断面の内側においてサイドシルインナ51の内壁部53(図4参照)にスポット溶接により接合するときに、スポット溶接用の治工具を挿入するために使用される。複数の横孔部46は、ロアフレーム40をサイドシルインナ51にスポット溶接により接合する位置に対応して形成されている。
【0063】
本実施形態では、横孔部46は丸穴により構成しているが、この他、矩形状等種々の孔形状を採用できる。
【0064】
また、ロアフレーム40の内壁部42には、内壁部42の面外変形を抑制するように剛性を増大させる高剛性部が形成されている。本実施形態では、高剛性部は、上下方向に延びる複数のリブ47により構成されている。
【0065】
複数のリブ47は、内壁部42から車幅方向内側に凸となるように形成されている。複数のリブ47は、上下方向において横孔部46が形成された範囲に概ねわたって延びており上端部が内側フランジ44に至っている。複数のリブ47は、複数の横孔部46それぞれの前後方向に隣接して位置している。例えば、横孔部46とリブ47との間の前後方向における間隔は10mm以下に設定されている。
【0066】
また、リブ47は、前後方向において配管クリップ76が取り付けられる位置とは異なる位置に形成されている。本実施形態では、リブ47は、前後延設部22の前部及び後部に取り付けられた一対の配管クリップ76の間と、後部に設けられた配管クリップ76の後方とに、形成されている。
【0067】
内壁部42は、複数の横孔部46が形成されたために、面剛性が低下しやすい。しかしながら、本実施形態によれば、リブ47によって横孔部47周辺における面剛性が高められている。特に、リブ47は、上下方向に延びているので、内壁部42の面外変形のうち、特に前後方向に延びる折れ線に沿った面外変形に好適に抗するように作用する。
【0068】
図5に示されるように、横孔部46及びリブ47は、複数の配管70の直管部70aに車幅方向に対向するように位置している。本実施形態では、リブ47は、複数の配管70の全てに対して車幅方向に対向しているが、これらの配管70の一部に対して少なくとも部分的に対向していればよい。
【0069】
図2に示されるように、ロアフレーム40の底面部41には、バッテリブラケット61に対して前後方向にずれた位置に、上下方向に貫通する複数の縦孔部48と、上方に凹設された凹部49(ビード)とが形成されている。本実施形態では、前後延設部22において、底面部41のうちバッテリブラケット61の前側に第1縦孔部48a及び第2縦孔部48bが前後方向に並ぶように形成されており、バッテリブラケット61の後側に凹部49と第3縦孔部48cとが前後方向に並ぶように形成されている。さらに、凹部49の車幅方向外側に隣接して第4縦孔部48dが形成されている。
【0070】
図6は、図2のVI-VI線に沿ったロアフレーム40周辺の前後方向に直交する断面図であり、具体的には第3縦孔部48cの中心を通る断面図である。図6に示されるように、第3縦孔部48cは、底面部41を上下方向に貫通している。
【0071】
図7は、図2のVII-VII線に沿ったロアフレーム40周辺の前後方向に直交する断面図であり、具体的には凹部49と第4孔部49dの中心とを通る断面図である。図7に示されるように、凹部49は、底面部41から上方に凹設されて閉断面の内側に突出している。図2を併せて参照して、凹部49は、前後方向に延びている。第4縦孔部48dは、底面部41を上下方向に貫通しており、第1~第3縦孔部41a~41cよりも小径である。
【0072】
ここで、本実施形態では、フロアパネル2は、引張強度590MPa、板厚0.8mmの鋼板により構成されている一方で、ロアフレーム40は、引張強度780MPa、板厚1.4mmの鋼板により構成されている。すなわち、フロアパネル2とロアフレーム40とによって構成される閉断面において、ロアフレーム40の底面部41は、フロアパネル2のうち底面部41に対向する対向面部2bよりも引張強度が高く且つ板厚が厚いので、本構成によれば底面部41は対向面部2bよりも圧縮剛性が高くなりやすい。
【0073】
しかしながら、本実施形態では、ロアフレーム40底面部41には、複数の縦孔部48及び凹部49が形成されているので車幅方向における圧縮剛性が低下している。つまり、複数の縦孔部48によって底面部41の面剛性が低下すると共に、凹部49が車幅方向への荷重を受けた際に前後方向に延びる折れの起点として作用するので、底面部41の圧縮剛性が低下している。すなわち、縦孔部48及び凹部49は、本発明に係る変形促進部を構成している。
【0074】
その結果、ロアフレーム40の底面部41における車幅方向への圧縮剛性が、フロアパネル2の対向面部2bにおける車幅方向への圧縮剛性に近くなっている。
【0075】
次に、図8図12を参照して、サイドシル50にポール側突による側突荷重が入力されたときの、下部車体構造100の変形態様について説明する。
【0076】
図8は、CAE解析により計算された、ポール側突における下部車体構造100の変形態様を示す底面図であり、図9図8における変形部位を車幅方向内側から見た斜視図である。
【0077】
図8及び図9に示されるように、CAE解析では、ポール90がフレーム部材20のうち前後延設部22に対して車幅方向外側から衝突した場合の、下部車体構造100の変形態様が計算されている。図8に示されるように、ポール90が車幅方向内側に侵入する結果、サイドシル50及びフレーム部材20共に車幅方向内側に局所的に押し込まれている。
【0078】
図10は、図9のX-X線に沿った前後方向に直交する断面図であって、具体的には横孔部46の近傍における断面図である。図10に示されるように、ポール側突により、ロアフレーム40は、内壁部42が車幅方向内側に突出するように変形しているが、リブ47によって内壁部42の車幅方向内側への面外変形による突出量が抑制されている。その結果、横孔部46の縁部46aの車幅方向縁側への突出が抑制されて、縁部46aと複数の配管70との接触が回避されている。したがって、ポール側突時における、横孔部46の縁部46aによる配管70の損傷が抑制されている。
【0079】
図11は、図9のXI-XI線に沿った前後方向に直交する断面図であって、具体的には、リブ47の近傍における断面図である。図11に示されるように、ポール側突時において、複数の配管70は内壁部42に接触する前にリブ47に接触するため、これによっても横孔部46の縁部46aに接触することが抑制されている。
【0080】
図14は、内壁部42にリブ47が形成されていない比較例における、図10と同じ断面位置でのCAE解析結果を示している。図14に示されるように、比較例では、本実施形態に比して、内壁部42の車幅方向内側への面外変形が大きくなっている。さらに、比較例では、内壁部42にリブ47が形成されていないため、配管70に対してリブ47を横孔部46の縁部46aに先立って、先当てすることもできない。その結果、ポール側突時において、横孔部46の縁部46aが複数の配管70に接触している。
【0081】
図12は、ポール側突時の、ロアフレーム40周辺の変形態様を概略的に示す図である。図12(a)に示すように、ロアフレーム40の底面部41には、凹部49が形成されている。このため、図12(b)に示すように、ポール側突時に、ロアフレーム40は底面部41が凹部49を起点として上方に屈曲しやすくなっている。
【0082】
なお、図示は省略するが、縦孔部48は底面部41の剛性を低下させるため、縦孔部48によっても、凹部49と同様に、底面部41の車幅方向への圧縮強度を低下させるように作用する。
【0083】
その結果、ロアフレーム40の底面部41の車幅方向への変形量(圧縮量)が、フロアパネル2の対向面部2bの車幅方向への変形量(圧縮量)に近づくので、内側フランジ44におけるフロアパネル2との接合部Zにおける車幅方向へのせん断歪が低減される。よって、ポール衝突においていも、接合部Zにおける接合を維持しやく、その結果、接合部Zにおける接合外れが回避されるので、ロアフレーム40によるサイドシル50の車幅方向内側からの支持を維持しやすい。
【0084】
図15は、底面部41に縦孔部48も凹部49も形成されていない更なる比較例における、図12と同様の、ポール側突時の、ロアフレーム40周辺の変形態様を概略的に示す図である。図15(a)に示すように、ロアフレーム40の底面部41には、縦孔部48も凹部49も形成されていない。このため、図15(b)に示すように、ポール側突時に、ロアフレーム40は底面部41が車幅方向に圧縮するように変形しにくい。
【0085】
この場合、ロアフレーム40の底面部41の車幅方向への変形量(圧縮量)が、フロアパネル2の対向面部2bの車幅方向への変形量(圧縮量)に近づかず、内側フランジ44におけるフロアパネル2との接合部Zにおけるせん断歪が増大する。その結果、接合部Zにおける接合が外れやすく、ロアフレーム40によるサイドシル50の車幅方向内側からの支持が維持されにくい。
【0086】
上記説明した実施形態に係る下部車体構造100によれば以下の効果を奏する。
【0087】
(1)側突時にサイドシル50を介して車幅方向への衝突荷重がロアフレーム40の前後延設部22に入力されたときに、変形促進部としての縦孔部48及び凹部49を介して底面部41の車幅方向への変形を促進させることができる。その結果、フロアパネル2に対して剛性が高い底面部41の変形量がフロアパネル2の対向面部2bの変形量に近づく。
【0088】
これによって、内側フランジ44とフロアパネル2との接合部Zに係るせん断歪が減少するので、内側フランジ44における接合を維持しやすい。したがって、ロアフレーム40における前後延設部22の閉断面を維持しやすく、前後延設部22によるサイドシル50の車幅方向内側からの支持が維持されやすいので、サイドシル50の内倒れ変形が抑制される。
【0089】
(2)ロアフレーム40を例えばプレス成形によって形成するときに、底面部41に変形促進部を縦孔部48及び/又は凹部49として一体的に容易に形成できる。
【0090】
(3)ロアフレーム40の前後延設部22における底面部41には、変形促進部としての第4縦孔部48dと凹部49とが車幅方向に並んで位置しているので、底面部41を、前後方向における第4縦孔部48d及び凹部49が形成された位置において確実に車幅方向に圧縮するように変形させやすい。
【0091】
(4)ロアフレーム40の前後延設部22における底面部41には、変形促進部としての、第1及び第2縦孔部48a,48bが車両前後方向に隣接して位置しており、さらに凹部49と第3縦孔部49cとが車両前後方向に隣接して位置している。その結果、車両前後方向に並ぶ少なくとも2つの変形促進部によって、底面部41を前後方向の広い範囲において安定して車幅方向に圧縮するように変形させやすい。
【0092】
(5)ロアフレーム40の底面部41は、サイドシルインナ51の下面部55よりも上方に位置しているので、ロアフレーム40の前後延設部22のうち底面部41と外壁部43との間に形成される稜線部が、サイドシルインナ51の下面部55よりも上方に位置することになり、剛性の高い稜線部によってサイドシルインナ51の内壁部53を支持しやすい。
【0093】
さらに、サイドシルインナ51から、ロアフレーム40の底面部41に衝突荷重が確実に伝達されるので、底面部41を安定して車幅方向に圧縮するように変形させやすい。したがって、側突時にサイドシルインナ51に車幅方向内側へ向かう衝突荷重が作用したとき、ロアフレーム40における前後延設部22によってサイドシル50を支持しやすく、サイドシル50の内倒れ変形を抑制しやすい。
【0094】
これに対して、ロアフレーム40における前後延設部22の底面部41がサイドシルインナ51の下面部55よりも下方に位置するとき、上記稜線部によってサイドシルインナ51の内壁部53が支持されず、またサイドシル50からロアフレーム40の下面部1に衝突荷重が効率的に伝達されない。また、前後延設部22の底面部41がサイドシルインナ51の下面部55と同じ高さに位置するとき、上記稜線部を起点としてサイドシル50が内倒れ変形しやすい。
【0095】
(6)ロアフレーム40は、前後延設部22において、外壁部43がサイドシルインナ51の内壁部53に接合されているので、側突時にサイドシル50に車幅方向内側へ向かう衝突荷重が作用したとき、サイドシル50の内倒れ変形に対して前後延設部22が車幅方向内側から抗する。よって、サイドシル50の内倒れ変形をさらに抑制しやすい。
【0096】
(7)側突時にサイドシル50を介して車幅方向への衝突荷重がフレーム部材20の前後延設部22に作用したとき、高剛性部としてのリブ47によって、前後延設部22の内壁部42の車幅方向内側への面外変形が抑制される。その結果、内壁部42に形成された横孔部46の縁部46aがエッジ状となって車幅方向内側に突出することが抑制されるので、縁部46aによる複数の配管70への損傷が抑制される。
【0097】
なお、衝突荷重が局所的に集中するポール側突時において、前後延設部22に対して局所的に衝突荷重が入力されることによりロアフレーム40の内壁部42が局所的に変形しやすい場合において、上記効果が特に好適に発揮される。
【0098】
(8)サイドシルインナ51の下面部55よりも上方に位置する、ロアフレーム40の底面部41にバッテリ60が取り付けられている。これによって、サイドシル50の下面にバッテリ60を取り付ける場合に比して、バッテリ60を上方に配置しやすく、バッテリ60による地上高の悪化を抑制できる。
【0099】
(9)側突時にサイドシル50を介して車幅方向への衝突荷重がロアフレーム40のうち前後延設部22に入力されたときに、前後延設部22は、変形促進部としての縦孔部48及び凹部49を介して底面部41の車幅方向への変形を促進させることによって内壁部42に伝達される衝突エネルギが吸収される。その結果、前後延設部22において、内壁部42の面外変形がさらに抑制される。
【0100】
(10)ロアフレーム40の前後延設部22における内壁部42のうち、配管クリップ76が設けられていないために側突時に配管70に接触しやすい部分に、高剛性部としてのリブ47が形成されている。よって、内壁部42のうち配管70に接触しやすい部分の面外変形がリブ47によって抑制されるので、横孔部46の縁部46aが配管70に接触することがさらに抑制される。
【0101】
(11)ロアフレーム40を例えばプレス成形によって形成するときに、内壁部42に高剛性部をリブとして一体的に容易に形成できる。
【0102】
(12)リブ47は内壁部42から車幅方向内側に突出しているので、側突時にサイドシル50を介して車幅方向への衝突荷重がロアフレーム40の前後延設部22に入力されたときに、内壁部42に先立ってリブ47を配管70に先当てさせやすい。よって、横孔部46の縁部46aが配管70に接触することがさらに抑制される。
【0103】
(13)リブ47は、上下方向において、配管70と少なくとも一部が重複しているので、リブ47によって、ロアフレーム40の前後延設部22における内壁部42のうち、配管70に対向する部分での面外変形を確実に抑制しやすい。さらに、内壁部42のうちリブ47を配管70により確実に先当てさせやすい。
【0104】
本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0105】
上記実施形態では、ロアフレーム40の内壁部42に形成する高剛性部として、内壁部42から車幅方向内側に凸となるリブ47によって構成する場合を例にとって説明したがこれに限らない。リブ47を、内壁部42に対して、車幅方向外側に凹となるように形成してもよい。
【0106】
また、図13に示されるように、高剛性部として、リブ47に換えて、横孔部46の縁部46aから閉断面の内側に筒状に突出するバーリング部80として構成してもよい。バーリング部80によって横孔部46の縁部46aの剛性を高めることができる。これによって、側突時にサイドシル50を介して車幅方向への衝突荷重がロアフレーム40の前後延設部22に入力されたときに、内壁部42のうち横孔部46の周辺における面外変形を抑制できる。
【0107】
さらに、バーリング部80は、内壁部42から車幅方向外側へ延びているので、側突時に車幅方向内側に変形したとしても横孔部46の縁部46aの端部が配管70に接触しにくい。よって、横孔部46の縁部46aの配管70への接触をさらに抑制できる。
【0108】
また、上記実施形態では、ロアフレーム40の底面部41に形成する変形促進部として縦孔部48及び凹部49を例にとって説明したがこれに限らない。底面部41から下方に突出しており、前後方向に延びる凸部として構成してもよい。凸部によっても、側突時に車幅方向内側に向かう衝突荷重が作用したときに、底面部41が車幅方向に圧縮するように変形するときの折れきっかけを構成する。
【0109】
また、上記実施形態では、ロアフレーム40の底面部41に変形促進部を形成して、側突時における底面部41の車幅方向への変形量を、これに対向するフロアパネル2の対向面部2bの車幅方向への変形量に近づけるように構成したが、両者の変形量が同等になるように変形促進部を構成するのが好ましく、さらに両者の変形速度も同等になるように変形促進部を構成するのがより好ましい。ここで、本明細書において、両者の変形量が同等及び両者の変形速度が同等とは、一方の値の±10%の範囲内に他方の値があることを意味している。
【0110】
この場合フロアパネル2に対する内側フランジ44の車幅方向における位置ずれが概ね生じないので、内側フランジ44とフロアパネル2との接合部Zに係るせん断歪が略ゼロとなり、内側フランジ44におけるフロアパネル2に対する接合がより一層維持される。
【0111】
また、上記実施形態では、前後延設部22が、ロアフレーム40によって構成される場合を例にとって説明したが、アッパフレーム30によって構成される場合にも、本発明を好適に適用できる。すなわち、前後延設部22を構成するアッパフレーム30及び/又はロアフレーム40に対して、高剛性部を前後延設部22を配管70に対向する部分に形成すればよく、変形促進部をフロアパネル2に対向する部分に形成すればよい。
【0112】
また、上記実施形態では、変形促進部及び高剛性部の両方を有する場合を例にとって説明したが、側突時における、ロアフレーム40の底面部41の車幅方向内側への圧縮変形を促進するという観点では、高剛性部は必ずしも必要ではない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上説明したように、本発明に係る車両の下部車体構造によれば、側突時においても前後延設部によるサイドシルの支持効果を維持できるので、この種の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0114】
2 フロアパネル
20 フレーム部材
21 傾斜部
22 前後延設部
30 アッパフレーム
40 ロアフレーム
46 横孔部
47 リブ
48 縦孔部
49 凹部
50 サイドシル
51 サイドシルインナ
60 バッテリ
61 バッテリブラケット
70 配管
76 配管クリップ
100 下部車体構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15