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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171356
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】異種金属からなる蝶番
(51)【国際特許分類】
   E05D 9/00 20060101AFI20221104BHJP
   E05D 5/14 20060101ALI20221104BHJP
   E05D 3/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
E05D9/00 A
E05D5/14
E05D3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077950
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】521191137
【氏名又は名称】株式会社関口精機
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】関口 隆之
【テーマコード(参考)】
2E030
【Fターム(参考)】
2E030AB00
2E030BB06
(57)【要約】
【課題】 門扉の蝶番などのように、屋外で使用した場合であっても、長期にわたって腐食の問題を解決することができ、使用耐久性を大幅に向上させ、更に望ましくは設置後における注油などのメンテナンスを不要にして保守作業を簡素化する事のできる蝶番を提供する。
【解決手段】 対象物を揺動又は回動自在に支承する蝶番であって、金属からなるブッシュと、当該ブッシュに挿入される中空円筒部を有するスリーブと、当該スリーブの中空部に挿入される金属からなる回転軸とからなり、当該スリーブは銅合金を用いて形成した、異種金属からなる蝶番とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を揺動又は回動自在に支承する蝶番であって、
金属からなるブッシュと、当該ブッシュに挿入される中空円筒部を有するスリーブと、当該スリーブの中空部に挿入される金属からなる回転軸とからなり、
当該スリーブは銅合金を用いて形成されていることを特徴とする、異種金属からなる蝶番。
【請求項2】
前記ブッシュと回転軸とはステンレスを用いて形成されており、
前記回転軸は、前記スリーブの中空部円筒部に挿入される軸部と、当該軸部から膨出して拡径して前記ブッシュの外周面と面一になる膨出部とからなり、
前記スリーブは、前記ブッシュの上端面と前記回転軸の膨出部の下端面との間に展開する外向きフランジ部を備える、請求項1に記載の異種金属からなる蝶番。
【請求項3】
対象物を揺動又は回動自在に支承する蝶番であって、
金属からなるブッシュと、当該ブッシュに挿入される金属からなる回転軸とからなり、
当該ブッシュ及び/又は回転軸は、少なくとも当該ブッシュと回転軸との対向面が銅合金で形成されていることを特徴とする、異種金属からなる蝶番。
【請求項4】
前記ブッシュは、円柱ブロックに、真円形状の挿入孔を研磨加工して形成している、請求項1~3の何れか一項に記載の異種金属からなる蝶番。
【請求項5】
開閉自在な扉を、支柱又は塀などの構造物に蝶番によって固定してなる工作物であって、
当該蝶番として、請求項1~4の何れか一項に記載の異種金属からなる蝶番が使用されている工作物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉部に用いられる蝶番に関し、特に使用耐久性を向上させた異種金属からなる蝶番に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、門扉などの各種開閉部には蝶番が使用されている。かかる蝶番は揺動や回動などによって開閉動作する対象物の質量や開閉頻度によって様々なものが提供されており、多くの場合、円滑な回動動作を行えることや、長期にわたって安定して使用できることが要求されている。
【0003】
このような状況下、特許文献1(特開2019-218717号公報)では、金属製のシャフトまたはスリーブが削れることによる金属粉が発生することのない蝶番を提案している。この文献1では、スリーブをそれぞれ有する金属製の第1羽根および第2羽根と、前記第1羽根のスリーブおよび前記第2羽根のスリーブに挿入された金属製のシャフトとを含む蝶番において、前記シャフトの周面を覆い、前記シャフトと前記スリーブとの間に位置する合成樹脂製のカラーと、前記シャフトの上下方向の上端部を覆う合成樹脂製の第1キャップと、前記シャフトの前記上下方向の下端部を覆う合成樹脂製の第2キャップとを有し、前記カラーと前記第1キャップと前記第2キャップとによって前記シャフトの表面の全体を覆う蝶番を提案している。
【0004】
また門扉は屋外に設置されることも多く、その開閉部に使用される蝶番も風雨に晒されることから腐食をできるだけ抑制することが望ましい。そこで特許文献2(特開平7-307582号公報)では、長期間に渡って屋外などに設置するような場合でも、とりわけヒンジ部の腐食をできるだけ抑制する為の構造を提案している。即ちこの文献2では、通信機器用筐体の密閉蓋を回動支持するヒンジ部が、防錆材料の回動軸と、該回動軸の周囲に、該ヒンジ部の支持孔に圧入されて固定されているリングブッシュとを備え、該リングブッシュが、スリットを有して、圧入前に前記支持孔の径よりも大きい径であること、かつ、該リングブッシュ材料の接触電位が該通信機器用筐体の材質と前記防錆材料との間の値である通信機器用筐体を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-218717号公報
【特許文献2】特開平7-307582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1で提案している蝶番は、合成樹脂製のカラーを介在させることによって、金属製のシャフトまたはスリーブが削れることはなくなり、金属粉も発生しないようにする事は可能であるが、当該カラーが合成樹脂を用いて形成されていることから、長期の使用により摩耗し、屋外での耐候性を十分に確保できないことが危惧される。
【0007】
また前記特許文献2の通信機器用筐体では、防錆材料の回動軸の周囲に、ヒンジ部の支持孔に圧入されて固定されているリングブッシュを設け、このリングブッシュ材料の接触電位を通信機器用筐体(ヒンジ部の支持孔)の材質と防錆材料(回転軸)との間の値とすることにより電位差を少なくして腐食を発生しにくくしている。しかしながら、この通信機器用筐体のヒンジ部は、密閉蓋を回動支持するものであって、門扉などの重量物を支承するものではない。また、通信機器用筐体と回転軸とは異なる材料で形成されることを前提としてリングブッシュの材料が選択されるものである。そしてリングブッシュは、ヒンジ部の支持孔に圧入されることから、スリットを有することが必要不可欠である。その結果、当該スリットからヒンジ部内に、塵埃などの異物が入り込んでしまうことも否定できず、長期的な揺動又は回動動作が困難になる事も危惧される。
【0008】
そこで本発明は、屋外で使用した場合であっても腐食の問題を解決することができ、使用耐久性を大幅に向上させた蝶番を提供することを第1の課題とする。また本発明では、当該蝶番を設けた門扉の開閉動作など、対象物の揺動又は回動を長期にわたって円滑に動作可能な蝶番を提供することも別の課題とする。更に門扉などの重量物を支承した上で、長期にわたって円滑に揺動又は回動可能な蝶番を提供することも更に別の課題とする。そして設置後における注油などのメンテナンスを不要にして保守作業を簡素化する事のできる蝶番を提供することも更に別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記課題の少なくとも何れかを解決する為に鋭意開発を行った結果、2種類の金属を組み合わせることにより、前記課題の少なくとも何れかを解決した蝶番を実現できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0010】
即ち、本発明に係る異種金属からなる蝶番は、門扉などの対象物を揺動又は回動自在に支承する蝶番であって、金属からなるブッシュと、当該ブッシュに挿入される中空円筒部を有するスリーブと、当該スリーブの中空部に挿入される金属からなる回転軸とからなり、当該スリーブは銅合金を用いて形成されていることを特徴とする。
【0011】
かかる蝶番において、前記ブッシュと回転軸とはステンレスを用いて形成することが望ましい。また前記回転軸は、前記スリーブの中空部に挿入される軸部と、当該軸部から膨出して拡径して前記ブッシュの外周面と面一になる膨出部とで形成することができる。そして前記スリーブは、前記ブッシュの上端面と前記回転軸の膨出部の下端面との間に展開する外向きフランジ部を備えることが望ましい。そしてブッシュの挿入孔およびスリーブの中空部の開口は、はめ合い交差(H)を約7程度とするのが望ましい。
【0012】
また本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、対象物を揺動又は回動自在に支承する蝶番であって、金属からなるブッシュと、当該ブッシュに挿入される金属からなる回転軸とからなり、当該ブッシュ及び/又は回転軸は、少なくとも当該ブッシュと回転軸との対向面が銅合金で形成されている、異種金属からなる蝶番を提供する。即ち、蝶番の揺動又は回動に際して接触する領域に銅合金が存在するように、ブッシュ及び/又は回転軸を形成することができる。その際、当該ブッシュ及び/又は回転軸は、両者の当接面に銅合金を積層一体化することができる。
【0013】
そして上記本発明に係る蝶番において、前記ブッシュは、円柱ブロックに、真円形状の挿入孔を研磨加工して形成することが望ましい。
【0014】
また本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、上記本発明に係る蝶番を用いて構築した門扉などの工作物を提供する。即ち、開閉自在な扉を、支柱又は塀などの構造物に蝶番によって固定してなる工作物であって、当該蝶番として、上記本発明に係る異種金属からなる蝶番が使用されている工作物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の異種金属からなる蝶番は、金属からなるブッシュと、当該ブッシュに挿入される中空円筒部を有するスリーブと、当該スリーブの中空部に挿入される金属からなる回転軸とからなり、当該スリーブは銅合金を用いて形成している。この為、ブッシュと回転軸との間には、銅合金からなるスリーブが存在していることから、両者間における相対的な回動を円滑に行うことができる。また、当該ブッシュと回転軸との相対的な回動は、銅合金からなるスリーブの存在によって円滑に行うことができることから、注油などのメンテナンスを不要とすることができる。そしてスリーブを構成する銅合金は、熱伝導率も高いことから回動時の接触によって発生した熱を迅速に放熱することができ、熱がこもる事もなく、溶融などによる劣化や腐食の問題を解消することができる。
【0016】
そして当該ブッシュと回転軸とをステンレスで構成した場合には、重量物である門扉であっても安定して支承することができ、更に腐食の問題を解消することもできることから、屋外での使用であっても使用耐久性を大幅に向上させることができる。
【0017】
また、前記回転軸を、前記スリーブの中空部に挿入される軸部と、当該軸部から膨出して拡径して前記ブッシュの外周面と面一になる膨出部とで構成し、前記スリーブが、前記ブッシュの上端面と前記回転軸の膨出部の下端面との間に展開する外向きフランジ部を備える場合には、門扉などの支承の対象物の質量が作用するブッシュの上端面と回転軸の膨出部の下端面との間には、銅合金からなるスリーブの外向きフランジ部が存在する事から、両者間の回動を円滑に行うことができる。
【0018】
そして前記ブッシュを、円柱ブロックに対して真円形状の挿入孔を研磨加工して形成した場合には、当該ブッシュにおいて、スリーブ又は回転軸を挿入する為の挿入孔は真円となり、揺動又は回転による摩耗も少なく注油の必要性を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態に係る蝶番の使用状態を示す斜視図
図2】第1の実施の形態に係る蝶番を示す(A)平面図、(B)左側面図、(C)正面図、(D)右側面図、(E)E-E矢視分解断面図、(F)底面図
図3】第1の実施の形態に係る蝶番の分解斜視図
図4】第2の実施の形態に係る異種金属からなる蝶番を示す分解斜視図
図5】第3の実施の形態に係る異種金属からなる蝶番を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる異種金属からなる蝶番10を具体的に説明する。特に本実施の形態に係る蝶番10は門扉Gの設置に使用する例を示しているが、これに限ることなく門扉以外の各種の対象物を揺動又は回動自在に支承する為に使用することができる。
【0021】
図1は第1の実施の形態に係る蝶番10の使用状態を示す斜視図である。かかる蝶番10は支柱や塀などの構造物Sに対して、門扉Gを開閉自在に支承する為に設置している。かかる蝶番10は回転軸20とブッシュ40とを備えており、本実施の形態ではそれぞれに台座51を設け、当該台座51を門扉Gや、これを設置する構造物に対して溶接やボルト等によって固定している。また本実施の形態では、門扉Gに対して当該蝶番10を上下に2つ設けているが、1つであっても良く、また3つ以上設けても良い。かかる蝶番10の設置数量は、支承する対象物の質量に応じて適宜調整すれば良い。
【0022】
図2は当該第1の実施の形態に係る蝶番10を示す(A)平面図、(B)左側面図、(C)正面図、(D)右側面図、(E)E-E矢視分解断面図、(F)底面図であり、図3は当該蝶番10の分解斜視図である。これらの図に示す様に、当該蝶番10は、ブッシュ40と、このブッシュ40の挿入孔42に挿入されるスリーブ30と、当該スリーブ30の中空円筒部32に挿入される回転軸20とからなり、前記ブッシュ40と回転軸20には門扉Gなどの取付対象物や、支柱や塀などの構造物に固定する為の台座51をそれぞれ設けている。本実施の形態において、当該ブッシュ40と回転軸20と台座51とは、何れも金属、特にステンレス鋼を用いて形成しており、台座51は溶接等によってブッシュ40と回転軸20の外周面に一体化することができる。
【0023】
ブッシュ40は本実施の形態では円筒形状に形成しており、これは円柱状のステンレス鋼の中心部を研磨加工して挿入孔42を形成している。その結果、当該挿入孔42は真円となり、蝶番10の揺動又は回動時における摩耗を最小限に抑えることができる。かかるブッシュ40は少なくとも前記スリーブ30を内挿可能な横断面円形の挿入孔42を備えていればよく、その外形は特に限定されるものではない。従って、外形は三角柱形状、四角柱形状、その他の多角柱形状であっても良い。
【0024】
前記スリーブ30は、本実施の形態では銅合金を用いて円筒形状に形成し、その一端部には外向きフランジ状に展開する外向きフランジ部31を形成している。かかるスリーブ30の外径は前記ブッシュ40の挿入孔42内に挿入可能な大きさであって、両者間の隙間は極力小さくすることが望ましい。当該ブッシュ40の内周面とスリーブ30の外周面との間に塵埃などの異物が入り込まないようにするためであり、使用耐久性を高める為である。よって当該ブッシュ40の挿入孔42は、はめ合い交差を約7程度とするのが望ましい。また外向きフランジ部31を形成することにより、これが前記ブッシュ40と後述する回転軸20との間に介在して、両者間の揺動や回動を円滑にすることができる。
【0025】
スリーブ30は本実施の形態では銅合金を用いて形成している。かかる銅合金は、例えば、銅-スズ系合金、銅-亜鉛系合金、銅-ニッケル系合金、銅-アルミニウム系合金、銅-ベリリウム系合金などを使用することができるが、望ましくは銅-アルミニウム系合金、特に望ましくはアルミニウム青銅を用いるのが望ましい。耐腐食性を向上させると共に耐摩耗性を向上させる為であり、更にステンレスからなるブッシュ40と回転軸20との揺動又は回動を円滑に行うことができる様にする為である。特に重量物である門扉を長期にわたって円滑に開閉させるためには、当該スリーブ30をアルミニウム青銅で形成するのが望ましい。
【0026】
そして前記回転軸20は、本実施の形態ではステンレス鋼を用いて形成しており、前記スリーブ30の中空部に挿入される軸部21と、当該軸部21から膨出して拡径して、前記ブッシュ40の外周面と面一になる膨出部22とで形成している。当該軸部21と膨出部22との間には、前記ブッシュ40の端面に対向する円環状部23が出現し、当該円環状部23と前記ブッシュ40の端面41との間に前記外向きフランジ部31を挟み込むことができる。
【0027】
当該回転軸20は前記前記スリーブ30の中空円筒部32内において相対的に揺動又は回動する為の円柱状の軸部21を備えれば良く、その他の部位の形状は任意であって良い。よって前記膨出部22は本実施の形態では円柱状に形成しているが、その他にも三角柱形状、四角柱形状、その他の多角柱形状に形成することもできる。
【0028】
また前記スリーブ30の中空円筒部32に挿入される軸部21は、隙間を極力小さくして形成されることが望ましい。該スリーブ30の中空円筒部32の内周面と軸部21の外周面との間に塵埃などの異物が入り込まないようにするためであり、使用耐久性を高める為である。よってスリーブ30の中空部の開口のはめ合い交差は約7程度とするのが望ましい。
【0029】
そして当該蝶番10は、ブッシュ40の挿入孔42内に前記スリーブ30を挿入し、当該スリーブ30の中空円筒部32内に回転軸20の軸部21を挿入することで形成することができる。この時、当該軸部21が抜け出ることを阻止する場合には、スリーブ30の先端側に露出する軸部21の先端部にビスや拡径部分などを設けて、スリーブ30、更にはブッシュ40からの抜け止めを実現することもできる。
【0030】
以上のように構成した本実施の形態に係る蝶番10では、相対的に揺動又は回動するブッシュ40と回転軸20との間には、銅合金からなるスリーブ30が存在する事から、両者の揺動や回動を円滑に行うことができ、更に錆の発生などを阻止することができる。そして当該スリーブ30は銅合金で形成していることから、回動などによって生じた摩擦熱を円滑に放出させることができ、回動や揺動に伴って熱がこもるという問題を解消することができる。
【0031】
次に図4を参照しながら第2の実施の形態に係る異種金属からなる蝶番10を具体的に説明する。特に本実施の形態に係る蝶番10は、前記ブッシュ40及び回転軸20の少なくとも何れかにおける、ブッシュ40と回転軸20との対向面を銅合金で形成したものであり、即ち前記スリーブ30をブッシュ40または回転軸20に一体化して形成した例を示している。図4では、前記スリーブ30を回転軸20に一体しているが、ブッシュ40に一体化しても良く、更に両者に設けても良い。また、当該銅合金からなる部分は、研削加工して形成したものを前記ブッシュ40や回転軸20に嵌合または溶接などによって一体化する他、前記ブッシュ40や回転軸20の表面を銅合金でメッキ加工して形成することもできる。
【0032】
このように形成した蝶番10であっても、揺動又は回動に際して接する部位には銅合金が存在する事から、前記スリーブ30を用いたのと同じ効果を得ることができる。特に本実施の形態によれば、部品点数を減ずることができると共に、蝶番10における隙間を減じてガタ付き等を無くすことができる。なお、蝶番10で支承する対象物の質量が大きくなく、高荷重性が要求されていない場合には、前記ブッシュ40や回転軸20の何れかを銅合金で形成することもできる。
【0033】
そして図5は第3の実施の形態に係る異種金属からなる蝶番10を示す分解斜視図である。この実施の形態に示す蝶番10は、2つのブッシュ40を使用し、両ブッシュ40の間にスリーブ30を設けて形成している。特に本実施の形態に係るスリーブ30は、中空円筒状であって長さ方向の中央部分に径方向に膨出する膨出部22を形成した鞘部材25と、当該鞘部材25における中空円筒部32内に挿入される回転軸20とで形成されており、鞘部材は制動を用い、回転軸20はステンレスを用いて形成することができる。ステンレスからなる回転軸20を存在させることにより、曲げ応力が向上し、長期にわたって変形せず、使用耐久性を向上させた蝶番10とすることができる。
【0034】
そして当該スリーブ30における長さ方向両端は、前記それぞれのブッシュ40の挿入孔42に挿入することで、本実施の形態に係る異種金属からなる蝶番10を構成することができる。かかる蝶番10においても、相対的に揺動又は回動するブッシュ40と回転軸20との間には、前記銅合金からなるスリーブ30が存在する事から、前記実施の形態1に示した作用効果を得ることができる。
【0035】
以上の通り、本実施の形態として幾つかの例を示したが、蝶番10において相対的に揺動又は回動する部材同士の間に銅合金を存在させる限りにおいて、各種形状又は構造に変更して実施することができる。
【実施例0036】
以下の実施例では、本発明に係る異種金属からなる蝶番(サンプル2及びサンプル3)の耐久性を確認する事を目的として検討を行った。特に本実施例では、質量2066.7Nの門扉を蝶番で支承する事を考慮して検討した。なお、門扉の質量は使用している材料に基づいて算出しており、比較対象(サンプル1)としてタキゲン社製のステンレス製重量用両抜旗蝶番 (型番:B-1003-0)と対比して検討した。
〔蝶番の仕様〕
【0037】
以下の表1はこの実験で使用した蝶番の仕様を示している。
【0038】
【表1】
【0039】
サンプル1の耐荷重は2個当たり100Kgであり、これは980.7Nである。支承対象とする質量2066.7Nの門扉は、サンプル1の耐荷重の2倍以上の重量が作用することから不適格である。一方、サンプル2及び3は耐荷重(実際に荷重をかけて耐力を求め、これを安全率3で除算した値)については、公表値は存在しない。
【0040】
〔蝶番に作用する力〕
支承対象となる門扉の質量をW,蝶番と門扉の重心の距離をLとすると、2個の蝶番にはW×LのモーメントMが作用する。蝶番の間隔をL0、蝶番に作用する力をFとすると、モーメントMと蝶番に働く力(偶力)がつり合うので、以下のようになる。
モーメントMは「M=F×L0」となり、蝶番に作用する力Fは「F=M/L0」となることから、蝶番に作用する力Fは「F=M/L0=(W×L)/L0」となる。
そして、W=2066.7N、L=1295mm、L0=2000mmであるから、
蝶番に作用する力Fは「F=(2066.7×1295)/2000=1338N」となる。
【0041】
〔せん断応力〕
回転軸における軸部の断面積をA(mm)、剪断応力をτ(N/mm)とすると、剪断応力をτは「τ=F/A」となる。一方、ステンレス鋼(SUS304)の耐力σは205N/mm、安全率Sは3とすると、許容剪断応力τaは、以下のようになる。
許容剪断応力τa=(σ/√3)×(1/3)=39.6N/mm
そこでサンプル1~3についての剪断応力の評価結果を以下の表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
この結果から、サンプル1~3の剪断応力は、何れも許容剪断応力τaの範囲内である事を確認した。
【0044】
〔曲げ応力〕
回転軸における軸部の中央部(Lの位置)に集中荷重Fがかかるとすると、回転軸の軸部に作用する曲げモーメントMは「M=F×L(N・mm)」となる。そして回転軸の軸部の直径をd(mm)とすると、剪断係数Zは「Z=(π/32)×d」となり、曲げ応力σは「σ=M/Z(N/mm)」となる。
一方、ステンレス鋼(SUS304)の耐力σ(205N/mm)を安全率Sの「S=3」で除算した値を許容応力とすると、許容応力σaは「σa=205/3=68.36N/mm」となる。
そこでサンプル1~3についての曲げ応力の評価結果を以下の表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
この実験から、サンプル1では、許容曲げ応力の2倍以上の曲げ応力が発生することから不適格であり、サンプル2及び3の曲げ応力は、は何れも許容曲げ応力以下であるから適格であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の異種金属からなる蝶番は、開閉部に用いられる蝶番として使用することができ、門扉の蝶番として利用可能である他、各種機械の開閉部に利用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
10:蝶番、20:回転軸、21:軸部、22:膨出部、23:円環状部、25:鞘部材、30:スリーブ、31:外向きフランジ部、32:中空円筒部、40:ブッシュ、41:端面、42:挿入孔、51:台座
図1
図2
図3
図4
図5