(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171359
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】飲食容器の製造方法及び飲食容器
(51)【国際特許分類】
B29C 49/42 20060101AFI20221104BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221104BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B29C49/42
B29C49/06
B65D1/00 120
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077954
(22)【出願日】2021-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】302045602
【氏名又は名称】株式会社レーベン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高部 篤
【テーマコード(参考)】
3E033
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033AA20
3E033BA17
3E033BA26
3E033CA20
3E033FA02
3E033FA03
3E033GA02
4F208AG07
4F208AH55
4F208AR12
4F208LA02
4F208LA07
4F208LB01
4F208LD01
4F208LD08
4F208LD16
4F208LG03
4F208LG09
4F208LG13
4F208LG29
(57)【要約】
【課題】 広口の樹脂製の飲食容器を簡便に製造し、提供する。
【解決手段】 広口の飲食容器の製造方法であって、樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、前記プリフォームをブロー成形用金型で所定形状にブロー成形するブロー成形工程と、を含み、前記ブロー成形用金型は、横開きの横型と、前記横型に対して上下に昇降する縦型とを有し、前記横型と前記縦型で完成品形成空間が形成され、前記横型と前記縦型との間のパーティングラインは、前記飲食容器の上端縁よりも下方に設けられる、飲食容器の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広口の飲食容器の製造方法であって、
樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形用金型で所定形状にブロー成形するブロー成形工程と、を含み、
前記ブロー成形用金型は、横開きの横型と、前記横型に対して上下に昇降する縦型とを有し、前記横型と前記縦型で完成品形成空間が形成され、
前記横型と前記縦型との間のパーティングラインは、前記飲食容器の上端縁よりも下方に設けられる
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の飲食容器の製造方法であって、
前記飲食容器は、開口の外周の長さが300mm以上または開口の直径が100mm以上である
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の飲食容器の製造方法であって、
前記飲食容器は、開口が平面視において略多角形に構成されている
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の飲食容器の製造方法であって、
前記飲食容器は、上端が縦断面視において凸凹曲線状に構成されている
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の飲食容器の製造方法であって、
前記飲食容器の胴部は、開口の周辺部分である口部の下方に開口よりも外周が大きい部分を有する
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の飲食容器の製造方法であって、
前記縦型は、前記横型の上端面と接する外周部を有し、前記外周部の内側に前記外周部と隣接して前記完成品形成空間の上端縁壁面を構成する上端壁部が設けられる
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の飲食容器の製造方法であって、
前記縦型は、前記横型の上端面と接する外周部と、前記外周部よりも内側に位置し下方に凸出する凸出部を有し、
前記凸出部は、外周面に前記プリフォームの内側を保持する保持部を有する
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の飲食容器の製造方法であって、
前記横型は、上端面から内側下方に延続し、前記プリフォームの外側を保持する第1壁面を有する
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項9】
広口の飲食容器であって、
前記飲食容器は、樹脂製であって上端縁にパーティングラインを有しない
ことを特徴とする飲食容器。
【請求項10】
請求項9に記載の飲食容器であって、
前記飲食容器は、開口の外周の長さが300mm以上または開口の直径が100mm以上である
ことを特徴とする飲食容器。
【請求項11】
請求項9または10に記載の飲食容器であって、
前記飲食容器の胴部は、開口の周辺部分である口部の下方に開口よりも外周が大きい部分を有する
ことを特徴とする飲食容器。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の飲食容器であって、
前記飲食容器は、載置面と当接する台座と、前記胴部と前記台座の間のステムとを有する
ことを特徴とする飲食容器。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか一項に記載の飲食容器であって、
前記飲食容器は、載置面と当接する台座と、前記胴部と前記台座の間の一対の持ち手とを有する
ことを特徴とする飲食容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食容器の製造方法及び飲食容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食容器として例えば、ワイングラスがある。例えば、特許文献1には、「酒を注ぐことができるカップ部を備え、前記カップ部は、注がれる酒が日本酒であることを飲用者に理解させることができる酒種表示部を備え、前記酒種表示部が、前記カップ部に注がれる日本酒の量が所定の設定値となる位置に配置されていることにより、日本酒用のワイングラスであることを表示すると共に適正量の日本酒を前記カップ部に注ぐことができるように促すことができるように構成されたことを特徴とする日本酒用ワイングラス」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
割れにくく扱いやすい等の利点から、ワイングラスは、ガラスの代わりに樹脂成形により製造されることがある。例えば、射出成形工程において樹脂原料を用いて成形されたプリフォームを、さらにブロー工程において所定形状に延伸させることで、ワイングラスの形が作られる。
【0005】
飲食容器は、直接口を付けて飲む、食べる容器であるので、上端縁が唇や舌触りのよいものでなければならない。そのため、樹脂製ワイングラスの製造では、成形後の後工程で、成形完成品の上部を切り落とし、熱をかけて上端縁に丸みを付けるなどの加工が行われている。
【0006】
しかし、上記後工程の加工は、開口の形状が円形で口径が小さい場合は問題ないが、開口周辺部分である口部の形状に特徴がある場合や口径が大きい場合は、変形するおそれがある、加工性が悪い、工数がかかる等の問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するためのもので、広口の樹脂製の飲食容器を簡便に製造し、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した少なくとも1つの課題を解決するために、本発明の一方面に係る飲食容器の製造方法は、広口の飲食容器の製造方法であって、樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、前記プリフォームをブロー成形用金型で所定形状にブロー成形するブロー成形工程と、を含み、前記ブロー成形用金型は、横開きの横型と、前記横型に対して上下に昇降する縦型とを有し、前記横型と前記縦型で完成品形成空間が形成され、前記横型と前記縦型との間のパーティングラインは、前記飲食容器の上端縁よりも下方に設けられる。
【0009】
好ましくは、上記飲食容器の製造方法において、前記飲食容器は、開口の外周の長さが300mm以上または開口の直径が100mm以上である。
【0010】
好ましくは、上記飲食容器の製造方法において、前記飲食容器は、開口が平面視において略多角形に構成されている。
【0011】
好ましくは、上記飲食容器の製造方法において、前記飲食容器は、上端が縦断面視において凸凹曲線状に構成されている。
【0012】
好ましくは、上記飲食容器の製造方法において、前記飲食容器の胴部は、開口の周辺部分である口部の下方に開口よりも外周が大きい部分を有する。
【0013】
好ましくは、上記飲食容器の製造方法において、前記縦型は、前記横型の上端面と接する外周部を有し、前記外周部の内側に前記外周部と隣接して前記完成品形成空間の上端縁壁面を構成する上端壁部が設けられる。
【0014】
好ましくは、上記飲食容器の製造方法において、前記縦型は、前記横型の上端面と接する外周部と、前記外周部よりも内側に位置し下方に凸出する凸出部を有し、前記凸出部は、外周面に前記プリフォームの内側を保持する保持部を有する。
【0015】
好ましくは、上記飲食容器の製造方法において、前記横型は、上端面から内側下方に延続し、前記プリフォームの外側を保持する第1壁面を有する。
【0016】
本発明の一方面に係る飲食容器は、広口の飲食容器であって、前記飲食容器は、樹脂製であって上端縁にパーティングラインを有しない。
【0017】
好ましくは、上記飲食容器において、前記飲食容器は、開口の外周の長さが300mm以上または開口の直径が100mm以上である。
【0018】
好ましくは、上記飲食容器において、前記飲食容器の胴部は、開口の周辺部分である口部の下方に開口よりも外周が大きい部分を有する。
【0019】
好ましくは、上記飲食容器において、前記飲食容器は、載置面と当接する台座と、前記胴部と前記台座の間のステムとを有する。
【0020】
好ましくは、上記飲食容器において、前記飲食容器は、載置面と当接する台座と、前記胴部と前記台座の間の一対の持ち手とを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、広口の樹脂製の飲食容器を簡便に製造し、提供することができる。
【0022】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の飲食容器の製造方法の一例を示す図でプリフォームの縦断面図である。
【
図2】本発明の飲食容器の製造方法の一例を示す図でブロー成形用金型の縦断面図である。
【
図3】本発明の飲食容器の製造方法の一例を示す図で成形完成品の縦断面図である。
【
図4】従来の樹脂製のワイングラスの製造方法を示す図である。
【
図5】本発明の飲食容器の製造方法の一例を示す図でプリフォームの縦断面図である。
【
図6】本発明の飲食容器の製造方法の一例を示す図でブロー成形用金型の縦断面図である。
【
図7】本発明の飲食容器の製造方法の一例を示す図で成形完成品の縦断面図である。
【
図8】本発明の飲食容器の一例を示す図で、(a)平面図、(b)正面図である。
【
図10】本発明の飲食容器の一例を示す図で、(a)平面図、(b)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態の例を図面を用いて説明する。なお、下記実施形態において共通する構成要素については、前出の符号と同様な符号を付し説明を省略することがある。また、構成要素等の形状、位置関係等に言及する場合は、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0025】
<飲食容器の製造方法>
本発明に係る飲食容器の製造方法は、一例として、広口の樹脂製の飲食容器の製造に係るものである。ここでは、飲食容器は、広い開口を有し、飲食容器の開口が平面視略円形である場合は、直径が例えば100mm以上である。飲食容器は、広く開口する開口か平面視略楕円形や略多角形(略三角形や略四角形、略五角形等)の容器でもよく、開口の外周の長さが例えば300mm以上である。
【0026】
また、本発明に係る飲食容器の製造方法は、一例として、開口の周辺部分である口部に特徴のある飲食容器の製造に係るものである。ここでは、飲食容器は、例えば、上端が縦断面視において凸凹曲線状である。一例として、口部に他の周辺部分と上端の高さが異なる段差部を有し、上端が上下起伏する形状である。
【0027】
本発明に係る飲食容器は、上端縁が滑らかな曲面に仕上がる。また、飲み物などが流れやすいように口部が外周方向に湾曲する形状である。このように構成することで、本発明に係る飲食容器は、その相乗効果として従来のものより優れた飲み心地や食べ心地が得られる。
【0028】
本発明に係る飲食容器は、射出成形工程、ブロー成形工程を経て製造される。詳細は後述するが、本発明に係る製造方法は、成形後の上端縁を処理する後工程が不要である。言い換えれば、成形完成品の上部を切り落す、上端縁に丸みを付けるなどの加工が不要で、成形完成品が完成品となり、飲食容器として使用者に提供される。
【0029】
図1~
図3は本発明に係る飲食容器の製造方法の一例を示す図で、
図1はプリフォームの縦断面図、
図2はブロー成形用金型の縦断面図、
図3は成形完成品の縦断面図である。
【0030】
まず、射出成形工程において樹脂製のプリフォーム100を射出成形する。樹脂原料は、特に限定されず、公知のものが適宜用いられる。とりわけ、透明または透光性を有する有機ガラスが好適であり、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が用いられる。一例として、トライタン(登録商標)が用いられる。トライタンは、透明度や強度、耐薬品性だけでなく、加工性にも優れており、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)の観点でも安全な材料である。
【0031】
プリフォーム100は、射出成形用金型(不図示)に射出成形装置から溶融樹脂を射出して、射出成形用金型のプリフォーム形成空間に樹脂材料を流し込んで製造される。射出成形には公知技術が適宜用いられ、ここでは詳細な説明を省略する。
図1に示すように、プリフォーム100は、一例として、中心軸Aに線対称に形成され、胴部110と、ステム120と、台座130とを有する。
【0032】
プリフォーム100は、ブロー成形工程で、ブロー成形用金型で所定形状にブロー成形される。一例として、
図2に示すブロー成形用金型200を用いて、プリフォーム100は
図3に示す成形完成品300に成形される。
【0033】
図3に示すように、成形完成品300は、一例として、中心軸Aに線対称に形成され、胴部310と、ステム320と、台座330とを有する。成形完成品300は、胴部310において、開口の外周の長さが例えば300mm以上である。成形完成品300が本例のように平面視円形の開口を有する場合は、開口の直径が100mm以上である。胴部310は、プリフォーム100と異なり、開口の周辺部分である口部311の下方に、開口よりも外周が大きい部分を有する。成形完成品300は、後述のように、口部311の上端縁312にパーティングラインを有しない。
【0034】
図2に示すように、ブロー成形用金型200は、縦型210と、横型220を有する。横型220は一対の左右分割金型からなり、横開きし、図示の矢印C方向に水平に開閉する。縦型210は、横型220に対して図示の矢印B方向に縦に昇降(スライド)する。縦型210と横型220とが型閉すると、両者の間に完成品形成空間D(キャビティ、膨張空間)が形成される。縦型210と横型220との間のパーティングラインEは、成形完成品300の上端縁312の位置よりも下方に位置するように設けられる。このようにパーティングラインEを設けることで、成形完成品300は滑らかな口当たり面(図示のFに対応する曲面)が形成される。
【0035】
縦型210は、横型220の上端面と接する外周部211を有し、外周部211の下端面が横型220の上端面と接する。縦型210は、外周部211の内側に外周部211と隣接するように上方に凹入する凹状部分である上端壁部212を有する。上端壁部212は滑らかな凹曲面(図示のF部分)を有し、完成品形成空間Dの上端縁壁面(型面)を構成する。図示のように、上端壁部212は、上端がパーティングラインEよりも高さH分だけ上方に位置する。高さ(距離)Hは、例えば0.5mm~10mm、好ましくは0.5mm~5mmである。上端壁部212は、横断面形状が成形完成品300の口部311の形状に応じた形状であり、ここでは、円形である。
【0036】
縦型210は、さらに、外周部211よりも内側に位置し、外周部211よりも下方に凸出する凸出部213を有する。凸出部213は、外周面が下方内側に傾斜する形状である。凸出部213の外周面の上方寄りの部分である保持部2131は、完成品形成空間Dの口部内壁面(型面)を構成する。保持部2131は、後述のように、プリフォーム100の内側を保持する機能を有する。
【0037】
凸出部213は、横断面形状が成形完成品300の口部と対応した形状であり、ここでは、円形である。上端壁部212は、外周部211と凸出部213との間に位置し、凸出部213を縁取るように囲っている。
【0038】
縦型210は、さらに、凸出部213の内側に位置し、凸出部213よりも下方に凸出する吹出部214を有する。吹出部214は、中央部分にブローエアGを供給する吹出口を有する。
【0039】
横型220は、中心軸Aに線対称の一対の金型を有し、各金型が上方の第1壁部221と、下方の第2壁部222とを有する。第1壁部221は、完成品形成空間Dの胴部外壁面(型面)を構成する部分である。第2壁部222は、完成品形成空間Dのステム外壁面(型面)及び台座外壁面(型面)を構成する部分である。
【0040】
第1壁部221は、上端面から内側に延続する第1壁面2211が、下方内側に傾斜する曲線状(図示のI部分)になっており、完成品形成空間Dの口部外壁面(型面)を構成する。第1壁面2211は、後述のように、プリフォーム100の外側を保持する機能を有する。
【0041】
第1壁部221は、第1壁面2211に続く第2壁面2212が、外側に大きく膨らむ曲線状になっており、完成品形成空間Dの胴部本体外壁面(型面)を構成する。第2壁面2212に続く第3壁面2213はやや緩やかな曲線状になっており、完成品形成空間Dの胴部の底部外壁面(型面)を構成する。
【0042】
プリフォーム100をセットして型閉すると、吹出部214がプリフォーム100と縦型210との間に形成される空間内に突入する形となり、第1壁面2211よりも下方に位置する。また、プリフォーム100と横型220との間に空間が形成されている。この状態で、エアブローを行うと、プリフォーム100の胴部110を、横方向に広げ押す力と共に、上部に押し上げる力が働き、胴部110を完成品空間Dの壁面一杯に膨張させるとともに、その口部を圧縮し形状を整えることとなる。
【0043】
また、前もって、プリフォーム100を成形完成品300の口部に近い形状に成形しておき、ブロー成形時に最終形状に仕上げてもよい。
【0044】
このようにして、プリフォーム100が成形完成品300に成形される。ブロー成形の際、口部が下方に引き込まれて変形することがあるが、図示のように、プリフォーム100の口部を、内側では縦型210の下方内側に傾斜する保持部2131を用いて、外側では横型220の下方内側に傾斜する第1壁面2211を用いて挟持するように保持することで、口部を支え、変形を抑制することができる。
【0045】
上記金型の取数(キャビティ数)は適宜設けられ、1でもよいし、2以上でもよい。なお、上記製造方法では必要に応じて公知技術が適宜用いられる。
【0046】
図4は従来の樹脂製のワイングラスの製造方法を示す図で、
図4(a)はプリフォーム、
図4(b)はブロー成形後、
図4(c)は上部カット後を示している。
【0047】
従来の製造方法では、まず、
図4(a)に図示のプリフォームを射出成形し、これをブロー成形して
図4(b)に図示の成形完成品とする。そして、成形後の後工程で、
図4(c)に図示のように成形完成品の上部余長部分を切除し、熱をかけて丸みを付けるなどして上端縁を滑らかに仕上げる。
【0048】
上記従来の製造方法、とりわけ後工程の処理は、口部の形状が円形で口径が小さい場合は問題ないが、口部の形状に特徴がある場合や口径が大きい場合は、変形するおそれがある、加工性が悪い、工数がかかる等の問題がある。
【0049】
これに対して、本例では、ブロー成形において、縦型210と横型220との間のパーティングラインEを口部の上端縁よりも下方に設けている。そのため、上記のような成形後の後工程の処理をしなくて済む。これにより、上記問題を解決し、広口の樹脂製の飲食容器を簡便に製造し、提供することができる。
【0050】
また、本例では、縦型210において、外周部211の内側に完成品形成空間Dの上端縁壁面を構成する上端壁部212を設けることで、パーティングラインEよりも上方において飲食容器の上端縁を滑らかな曲線状に形成することができる。
【0051】
また、本例では、縦型210の保持部2131でプリフォーム100の内側を保持し、横型220の第1壁面2211でプリフォーム100の外側を保持することで、プリフォーム100の口部を支えることができ、成形時の変形を抑制することができる。
【0052】
図5~
図7は本発明に係る飲食容器の製造方法の一例を示す図で、
図5はプリフォームの縦断面図、
図6はブロー成形用金型の縦断面図、
図7は成形完成品の縦断面図である。ここでは、ブロー成形用金型200を用いて、口部に特徴のある飲食容器をブロー成形する例を説明する。
【0053】
図7に示すように、成形完成品300aは、中心軸Aに線対称に形成され、胴部310aと、ステム320と、台座330とを有する。上記成形完成品300の胴部310において口部311が一様な形状で上端が同高で縦断面視直線状であるのに対して、本例の成形完成品300aは、口部311aが一様ではなく、変化のある形状である。一例として、胴部310aは、上端が縦断面視において凸凹曲線状に構成されている。
【0054】
一例として、成形完成品300aは、口部311aに、下方に下がる段差部313aを有する。図示のように、上端において最も低い部分である段差部313aの最も低い部分と、最も高い部分との間には高さJ分だけ段差を有する。なお、図示では段差部313a以外の部分は一様な高さであるが、口部311aは上端の一部又は全部が縦断面視凸曲線及び凹曲線で構成される上下に波を打つ形状(凸凹曲線状)でもよい。
【0055】
図5に示すように、本例のプリフォーム100aは、胴部110aが段差部113aを有する形状に射出形成される。
【0056】
図6に示すように、本例の成形完成品300aはブロー成形用金型200aを用いて成形される。ブロー成形用金型200aは、縦型210aが上記と異なる。より具体的には、縦型210aは、上端壁部212aが段差部313aの形状に応じて設けられる。
【0057】
従来の製造方法では、上部余長部分を切除する必要があるため、口部を変化のある形状とすることは難しいが、本例の製造方法では、成形完成品に余長部分を有しないので、口部に変化のある形状の飲食容器を簡便に製造できる。
【0058】
なお、以上では、下方に下がる形状の段差部の例を説明したが、口部の変化のある形状は特に限定されず、他の形状でもよい。また、飲食容器は中心軸Aに線対称ではない、変化のある形状でもよい。
【0059】
上記の製造方法により、デザイン性だけでなく、機能面でも優れる飲食容器を製造することができる。例えば、飲みやすい飲み口を開口の凸凹曲線形状で実現することができる。
【0060】
<飲食容器>
図8~
図9は本発明の飲食容器の一例を示す図で、
図8(a)は平面図、
図8(b)は正面図、
図9は
図8の飲食容器の口部を説明するための図で一部拡大縦断面図である。図示においてXは左右方向(横方向)、Yは上下方向(縦方向)、Zは前後方向(奥行方向)を示している(以下同じ)。飲食容器400は、上記製造方法により製造される。飲食容器400は、上記成形完成品、または上記成形完成品に塗装や梨地仕上げ等の表面加工を施したものである。
【0061】
飲食容器400は、一例として、胴部410と、載置面と当接する台座430と、胴部と台座の間のステム420と、を有する。なお、飲食容器400は、後述のように、ステムの代わりに持ち手を有してもよい。
【0062】
飲食容器400は、胴部410において、開口の外周の長さが例えば300mm以上、または開口が平面視円形の場合は直径が100mm以上である点は、上述の通りである。
【0063】
図9に図示のように、飲食容器400の口部411は、上記の方法で製造されるため、上端縁412にパーティングラインを有しない。口部411の上端は、パーティングラインEの位置よりも略高さH分だけ上方にある。高さ(距離)Hは、例えば0.5mm~10mm、好ましくは0.5mm~5mmである。上端縁412は、滑らかな凸曲面になっている。
【0064】
飲食容器400は、ここでは、
図8に図示のように、平面視開口が略四角形で、例えば略正方形である。辺部の長さKは、例えば75mm以上である。飲食容器400は、平面視開口が略三角形や五角形など他の多角形状でもよい。
【0065】
図8(a)に示すように、平面視において、胴部410は、4つの角部414が外側に膨らみ、角部414同士の間に凹部415を有する形状である。このように、胴部410に膨らみのある形状の場合も、上記製造方法であれば、簡便に成形することができる。
【0066】
図8(b)に示すように、正面視において、胴部410は、高さMが横幅Nより小さく、どんぶりのような形状である。このように、飲食容器400は、従来のワイングラスと異なり、広口に形成され、どんぶり等のように料理を収容する容器として用いることができる。また、胴部410は、ブロー成形により膨張させて形を作っているため、従来のどんぶりよりも丸みのある形状に形成できる。
【0067】
胴部410は、口部411から胴部本体に延続する部分が、内側に凹む曲線状(曲率半径Lが例えば8mm)に形成される。このように、口部の外周を廻るように帯状に凹状部分を設けることで、口部の変形を抑制できる。なお、この曲線状部分は、例えば、上記第1壁面及び第2壁面の上端部分と対応する部分である。
【0068】
一例として、胴部410は、口部411の下方に開口よりも外周が大きい部分を有する。胴部410は、胴部本体が、口部よりも肉薄に形成され、例えば、0.5mm~5mm程度肉薄になっている。胴部410は、肉薄の胴部本体から、開口に向かってP部分のように反りながら広がり、やや膨らんだ膨張部を有し、丸みがあり、上端縁412が凸曲面である。なお、P部分は上記I部分に対応する部分である。
【0069】
ステム420は、中心軸A上に設けられ、広口の胴部410を支えるため、太く形成される。ステムの横断面形状は特に限定されず、円形でもよいし多角形等でもよい。
【0070】
台座430は、広口の胴部410を支えるため、幅広く形成される。横断面形状は、特に限定されず、胴部410と同形状でもよいし、異なる形状でもよく、略円形でもよいし略三角形や四角形等の多角形等でもよい。台座430は、円形である場合は直径が例えば75mm以上であり、円形以外の形状である場合は外周の長さが例えば220mm以上である。
【0071】
飲食容器400は、ステム420の代わりに、胴部410と台座430の間に中心軸Aを外した位置に、両者を接続するように一対の持ち手を線対称に設けてもよい。飲食容器400は、飲食の際は手を延ばして中央のステム420を掴むことになるが、胴部410が広口であるため、手を延ばす距離が大きくなる。そこで、ステム420に代わる持ち手を中心軸Aよりも外側に設けることで、より快適な掴み心地とすることができる。また、一対の持ち手を設けることで、飲食物の受け渡しの際に相手との直接または間接的な接触を回避できる。
【0072】
飲食容器400は、大きく、大容量であるにも関わらず、片手で持てるように軽く形成される。飲食容器400は、質量が、例えば400g以内、好ましくは350g以内、より好ましくは280g以内である。
【0073】
図10は本発明の飲食容器の一例を示す図で、(a)平面図、(b)正面図である。図示のように、飲食容器400は、蓋440を備えてもよい。
【0074】
蓋440は、本体部441と、摘み部442とを含む。本体部441は、蓋440を胴部410に被せたときにずれないように形成される。本体部441は、ここでは、図示のように、平面視角部に丸みのある略四角形状に形成される。摘み部442は、蓋440を胴部410に被せたり外したりするときに指で摘む部分である。
【0075】
飲食容器400は、蓋440を備えることで、飲食物の乾燥を防ぎ、温度変化を抑え、飲食物の作り置きがしやすくなる。また、蓋440を備えることで、飲食物を介した飛沫感染を防止できる。
【0076】
なお、上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態の例に限定されるものではない。請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0077】
100 プリフォーム
200 ブロー成形用金型
210 縦型
220 横型
300 成形完成品
310 胴部
311 口部
312 上端縁
400 飲食容器
410 胴部
411 口部
412 上端縁
【手続補正書】
【提出日】2021-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広口の飲食容器の製造方法であって、
樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形用金型で所定形状にブロー成形するブロー成形工程と、を含み、
前記ブロー成形用金型は、横開きの横型と、前記横型に対して上下に昇降する縦型とを有し、前記横型と前記縦型で完成品形成空間が形成され、
前記横型と前記縦型との間のパーティングラインは、前記飲食容器の上端縁よりも下方に設けられ、
前記縦型は、前記横型の上端面と接する外周部を有し、前記外周部の内側に前記外周部と隣接して前記完成品形成空間の上端縁壁面を構成する上端壁部が設けられる
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項2】
広口の飲食容器の製造方法であって、
樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形用金型で所定形状にブロー成形するブロー成形工程と、を含み、
前記ブロー成形用金型は、横開きの横型と、前記横型に対して上下に昇降する縦型とを有し、前記横型と前記縦型で完成品形成空間が形成され、
前記横型と前記縦型との間のパーティングラインは、前記飲食容器の上端縁よりも下方に設けられ、
前記縦型は、前記横型の上端面と接する外周部と、前記外周部よりも内側に位置し下方に凸出する凸出部を有し、
前記凸出部は、外周面に前記プリフォームの内側を保持する保持部を有する
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の飲食容器の製造方法であって、
前記横型は、上端面から内側下方に延続し、前記プリフォームの外側を保持する第1壁面を有する
ことを特徴とする飲食容器の製造方法。