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特開2022-171360風車の駆動機構の調整方法及び駆動機構の調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171360
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】風車の駆動機構の調整方法及び駆動機構の調整方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 15/00 20160101AFI20221104BHJP
   F03D 13/10 20160101ALI20221104BHJP
   G01M 13/021 20190101ALI20221104BHJP
【FI】
F03D15/00
F03D13/10
G01M13/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077957
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】小森 啓史
【テーマコード(参考)】
2G024
3H178
【Fターム(参考)】
2G024AB02
2G024BA03
2G024CA08
2G024DA09
2G024EA11
2G024FA02
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB35
3H178BB42
3H178CC16
3H178DD03X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の駆動装置の位置を判定する方法、及び複数の駆動装置の位置を調整する方法を提供する。
【解決手段】駆動機構の調整方法は、複数の駆動装置のうち、一つの駆動装置のピニオンをリングギヤの周方向における基準位置に対面するように位置合わせして駆動装置とリングギヤとのバックラッシを計測する工程と、リングギヤに対して複数の駆動装置を相対回転させて、バックラッシが測定された駆動装置とは異なる他の駆動装置のピニオンをリングギヤの基準位置に対面するように位置合わせして他の駆動装置とリングギヤとのバックラッシを計測する工程と、を少なくとも含む複数の駆動装置のそれぞれとリングギヤとのバックラッシを計測する計測工程と、計測工程において計測された複数のバックラッシに基づいてリングギヤに対する駆動装置の位置を判定する判定工程と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングギヤと、前記リングギヤに噛み合うピニオン及び前記ピニオンを駆動する駆動部をそれぞれ有する複数の駆動装置と、を備えた風車の可動部を駆動する駆動機構の調整方法であって、
前記複数の駆動装置のうち、一つの駆動装置のピニオンを前記リングギヤの周方向における基準位置に対面するように位置合わせして前記駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシを計測する工程と、
前記リングギヤに対して前記複数の駆動装置を相対回転させて、バックラッシが測定された前記駆動装置とは異なる他の駆動装置のピニオンを前記リングギヤの前記基準位置に対面するように位置合わせして前記他の駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシを計測する工程と、
を少なくとも含む前記複数の駆動装置のそれぞれと前記リングギヤとのバックラッシを計測する計測工程と、
前記計測工程において計測された複数のバックラッシに基づいて前記リングギヤに対する前記駆動装置の位置を判定する判定工程と、を備える、
風車の駆動機構の調整方法。
【請求項2】
複数の歯を有する前記リングギヤの回転中心から前記複数の歯のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得する取得工程を備え、
前記判定工程において、前記計測工程において計測されたバックラッシと前記取得工程において取得されたばらつき情報とに基づいて前記リングギヤに対する前記駆動装置の位置を判定する、
請求項1に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項3】
前記判定工程は、前記計測工程において計測されたバックラッシの相対標準偏差と、前記取得工程において取得された前記リングギヤの回転中心から前記複数の歯のそれぞれの先端部までの距離の相対標準偏差と、に基づいて、前記リングギヤに対する前記駆動装置の位置の、複数の前記駆動装置の間でのばらつきの度合いを評価する工程を含む、
請求項2に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項4】
前記取得工程において、前記リングギヤの製造公差に関する情報、前記リングギヤの異なる周方向位置において計測した特定の駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシ、及び前記リングギヤの周方向における歪みに関する検査結果の少なくともいずれか一つから、
前記リングギヤの回転中心から前記複数の歯のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得する、
請求項2又は3に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項5】
前記リングギヤは複数の内歯を有し、
前記計測工程において、前記複数の内歯のうちの前記リングギヤの回転中心から最も近い距離に先端部が位置する内歯と前記ピニオンとが噛み合った位置を基準位置としてバックラッシを測定する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項6】
前記リングギヤは複数の外歯を有し、
前記計測工程において、前記複数の外歯のうちの前記リングギヤの回転中心から最も遠い距離に先端部が位置する外歯と前記ピニオンとが噛み合った位置を基準位置としてバックラッシを測定する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項7】
前記複数の駆動装置は、それぞれ、回転を出力するアクチュエータと、前記アクチュエータからの出力を減速して前記ピニオンに伝達する減速機と、を有し、
前記計測工程は、前記基準位置に位置し且つ前記リングギヤの周方向において隣り合う一対の基準歯の間に位置する前記ピニオンの歯を、前記一対の基準歯の一方に接触させた上で、前記アクチュエータから前記ピニオンに回転を出力して前記ピニオンを回転させて、前記一対の基準歯の他方に前記ピニオンの歯が接触するまでに前記アクチュエータから出力された回転量を測定する工程と、測定された前記回転量、前記減速機の内部のバックラッシ、及び前記減速機の減速比から、前記ピニオンと前記リングギヤとのバックラッシを算出する工程と、を有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項8】
前記判定工程の結果に基づいて前記ピニオンの位置を調整する調整工程をさらに備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項9】
前記調整工程において、前記複数の駆動装置のうち少なくとも一つの駆動装置の前記ピニオンの位置を、前記リングギヤの回転中心からの距離を変更するように調整する、
請求項8に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項10】
前記調整工程において、前記複数の駆動装置のそれぞれと前記リングギヤとのバックラッシのばらつきの度合いが基準値以下となるように、前記ピニオンの位置を調整する、
請求項8又は9に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項11】
前記調整工程において、前記複数の駆動装置のうち少なくとも一つの駆動装置の前記ピニオンの位置調整を、前記複数の駆動装置のうち前記ピニオンの位置調整がされる駆動装置以外の駆動装置の前記ピニオンの位置を固定した状態で行う、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の風車の駆動機構の調整方法。
【請求項12】
リングギヤと、前記リングギヤに噛み合うピニオン及び前記ピニオンを駆動する駆動部をそれぞれ有する複数の駆動装置と、を備えた可動部を駆動する駆動機構の調整方法であって、
前記複数の駆動装置のうち、一つの駆動装置のピニオンを前記リングギヤの周方向における基準位置に対面するように位置合わせして前記駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシを計測する工程と、
前記リングギヤに対して前記複数の駆動装置を相対回転させて、バックラッシが測定された前記駆動装置とは異なる他の駆動装置のピニオンを前記リングギヤの前記基準位置に対面するように位置合わせして前記他の駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシを計測する工程と、
を少なくとも含む前記複数の駆動装置のそれぞれと前記リングギヤとのバックラッシを計測する計測工程と、
前記計測工程において計測された複数のバックラッシに基づいて前記リングギヤに対する前記駆動装置の位置を判定する判定工程と、を備える、
駆動機構の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車の駆動機構の調整方法及び駆動機構の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の駆動装置が協働して可動部を駆動する、駆動機構が知られている。例えば、特許文献1に記載された風力発電装置は、地上又は洋上に設置され、発電機の支柱となるタワーと、タワー上に設けられ、発電機を内蔵するナセルと、ナセルの一端に設けられ、風を受けて回転エネルギーへ変換するハブ及びブレードからなるロータと、を有している。この風力発電装置はさらに、タワーに設けられたヨーベーリングギアを有するとともに、複数の駆動装置として、ナセルに設けられた複数のヨーアクチュエータを有している。この風力発電装置は、ヨーベアリングギアとヨーアクチュエータのピニオンギアとを噛み合わせてヨーアクチュエータから回転を出力することにより、タワーに対してナセルをヨー方向に回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-140777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の駆動装置を備える駆動機構は、複数の駆動装置のそれぞれにかかる負荷のばらつきが小さくなるように配置されていることが好ましい。複数の駆動装置のそれぞれにかかる負荷のばらつきが大きいと、特に負荷の大きな駆動装置の寿命が短くなり、この結果として駆動機構全体の寿命が短くなるためである。このため、複数の駆動装置の位置を判定する方法、及び判定結果に基づいて複数の駆動装置の位置を調整する方法が求められていた。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、複数の駆動装置の位置を判定する方法、及び複数の駆動装置の位置を調整する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による風車の駆動機構の調整方法は、
リングギヤと、前記リングギヤに噛み合うピニオン及び前記ピニオンを駆動する駆動部をそれぞれ有する複数の駆動装置と、を備えた風車の可動部を駆動する駆動機構の調整方法であって、
前記複数の駆動装置のうち、一つの駆動装置のピニオンを前記リングギヤの周方向における基準位置に対面するように位置合わせして前記駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシを計測する工程と、
前記リングギヤに対して前記複数の駆動装置を相対回転させて、バックラッシが測定された前記駆動装置とは異なる他の駆動装置のピニオンを前記リングギヤの前記基準位置に対面するように位置合わせして前記他の駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシを計測する工程と、
を少なくとも含む前記複数の駆動装置のそれぞれと前記リングギヤとのバックラッシを計測する計測工程と、
前記計測工程において計測された複数のバックラッシに基づいて前記リングギヤに対する前記駆動装置の位置を判定する判定工程と、を備える。
【0007】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
複数の歯を有する前記リングギヤの回転中心から前記複数の歯のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得する取得工程を備え、
前記判定工程において、前記計測工程において計測されたバックラッシと前記取得工程において取得されたばらつき情報とに基づいて前記リングギヤに対する前記駆動装置の位置を判定してもよい。
【0008】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記判定工程は、前記計測工程において計測されたバックラッシの相対標準偏差と、前記取得工程において取得された前記リングギヤの回転中心から前記複数の歯のそれぞれの先端部までの距離の相対標準偏差と、に基づいて、前記リングギヤに対する前記駆動装置の位置の、複数の前記駆動装置の間でのばらつきの度合いを評価する工程を含んでもよい。
【0009】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記取得工程において、前記リングギヤの製造公差に関する情報、前記リングギヤの異なる周方向位置において計測した特定の駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシ、及び前記リングギヤの周方向における歪みに関する検査結果の少なくともいずれか一つから、前記リングギヤの回転中心から前記複数の歯のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得してもよい。
【0010】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記リングギヤは複数の内歯を有し、
前記計測工程において、前記複数の内歯のうちの前記リングギヤの回転中心から最も近い距離に先端部が位置する内歯と前記ピニオンとが噛み合った位置を基準位置としてバックラッシを測定してもよい。
【0011】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記リングギヤは複数の外歯を有し、
前記計測工程において、前記複数の外歯のうちの前記リングギヤの回転中心から最も遠い距離に先端部が位置する外歯と前記ピニオンとが噛み合った位置を基準位置としてバックラッシを測定してもよい。
【0012】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記複数の駆動装置は、それぞれ、回転を出力するアクチュエータと、前記アクチュエータからの出力を減速して前記ピニオンに伝達する減速機と、を有し、
前記計測工程は、前記基準位置に位置し且つ前記リングギヤの周方向において隣り合う一対の基準歯の間に位置する前記ピニオンの歯を、前記一対の基準歯の一方に接触させた上で、前記アクチュエータから前記ピニオンに回転を出力して前記ピニオンを回転させて、前記一対の基準歯の他方に前記ピニオンの歯が接触するまでに前記アクチュエータから出力された回転量を測定する工程と、測定された前記回転量、前記減速機の内部のバックラッシ、及び前記減速機の減速比から、前記ピニオンと前記リングギヤとのバックラッシを算出する工程と、を有してもよい。
【0013】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記判定工程の結果に基づいて前記ピニオンの位置を調整する調整工程をさらに備えてもよい。
【0014】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記調整工程において、前記複数の駆動装置のうち少なくとも一つの駆動装置の前記ピニオンの位置を、前記リングギヤの回転中心からの距離を変更するように調整してもよい。
【0015】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記調整工程において、前記複数の駆動装置のそれぞれと前記リングギヤとのバックラッシのばらつきの度合いが基準値以下となるように、前記ピニオンの位置を調整してもよい。
【0016】
本発明による風車の駆動機構の調整方法において、
前記調整工程において、前記複数の駆動装置のうち少なくとも一つの駆動装置の前記ピニオンの位置調整を、前記複数の駆動装置のうち前記ピニオンの位置調整がされる駆動装置以外の駆動装置の前記ピニオンの位置を固定した状態で行ってもよい。
【0017】
本発明による駆動機構の調整方法は、
リングギヤと、前記リングギヤに噛み合うピニオン及び前記ピニオンを駆動する駆動部をそれぞれ有する複数の駆動装置と、を備えた可動部を駆動する駆動機構の調整方法であって、
前記複数の駆動装置のうち、一つの駆動装置のピニオンを前記リングギヤの周方向における基準位置に対面するように位置合わせして前記駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシを計測する工程と、
前記リングギヤに対して前記複数の駆動装置を相対回転させて、バックラッシが測定された前記駆動装置とは異なる他の駆動装置のピニオンを前記リングギヤの前記基準位置に対面するように位置合わせして前記他の駆動装置と前記リングギヤとのバックラッシを計測する工程と、
を少なくとも含む前記複数の駆動装置のそれぞれと前記リングギヤとのバックラッシを計測する計測工程と、
前記計測工程において計測された複数のバックラッシに基づいて前記リングギヤに対する前記駆動装置の位置を判定する判定工程と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の駆動装置の位置を判定する方法、及び複数の駆動装置の位置を調整する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態における、風車の構成例を示す斜視図である。
図2】本実施形態における、駆動機構を示す上面図である。
図3】本実施形態における、駆動装置の構成例を示す図である。
図4】本実施形態における、リングギヤに対する複数の駆動装置の位置の一例を示す上面図である。
図5】本実施形態における、計測工程の様子を示す上面図である。
図6】本実施形態における、計測工程の様子を示す上面図である。
図7】本実施形態における、調整工程の様子を示す上面図である。
図8】本実施形態における、駆動機構の一部を拡大して示す上面図である。
図9】変形例における、駆動機構を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態においては、駆動機構1の調整方法の一例として、風車10の駆動機構1の調整方法について説明する。しかしながら、駆動機構1の調整方法は、風車10の駆動機構1に適用されるに限られず、複数の駆動装置2を備える駆動機構1に広く適用することができる。
【0021】
まず、本実施形態に係る調整方法が適用される駆動機構1を備える風車10について説明する。図1は、風車10の構成例を示す斜視図である。風車10は、風車本体101を備える。風車本体101は、タワー102と、ナセル103と、ロータ104(主軸部)と、複数のブレード105(羽根)とを備える。タワー102は、陸上又は海上において、鉛直方向の上向きに延びる。
【0022】
風車10は、風車本体101に加えて駆動機構1を備える。そして、風車本体101は、駆動機構1によって駆動される可動部を有する。本実施形態においては、ナセル103が、タワー102の上部に対して回転可能なように、タワー102に取り付けられている。すなわち、タワー102とナセル103との接続部が、タワー102に対してナセル103を回転可能な可動部となっている。そして、駆動機構1は、可動部を駆動することによって、タワー102に対してナセル103を回転させる。駆動機構1は、ナセル103を、タワー102の長手方向を回転軸として回転させるように駆動する。これによって、ナセル103は、タワー102に対してヨー方向(YAW)に回転する。
【0023】
ロータ104は、ナセル103においてロール方向(ROLL)に回転する。複数枚(例えば、3枚)のブレード105は、ロール方向の回転軸から放射方向に延びるように、互いに等角度でロータ104に備えられる。
【0024】
駆動機構1について、より詳細に説明する。図2は、本実施形態における駆動機構1を示す上面図である。本実施形態における駆動機構1は、後述するリングギヤ106と、複数の駆動装置2と、を備える。リングギヤ106は、複数の歯107を有する。また、複数の駆動装置2は、それぞれリングギヤ106に噛み合うピニオン4を有する。図2に示す例において、複数の駆動装置2のピニオン4はそれぞれ複数の歯41を有し、リングギヤ106の歯107とピニオン4の歯41とが噛み合っている。また、複数の駆動装置2は、図2には現れないが後述するように、それぞれピニオン4を駆動する駆動部3を有する。本実施形態において、駆動装置2は、ナセル103に取り付けられて、ヨー駆動力を発生させる。本実施形態において、4台の駆動装置2-1、2-2、2-3、及び2-4がナセル103に取り付けられる。駆動装置2がナセル103に取り付けられる場合、駆動部3は、ナセル103の内部に収容されていてもよい。
【0025】
以下、駆動装置を総称する場合には単に「駆動装置2」と記載する。また、リングギヤ106が周回する方向を、周方向D1とも称する。
【0026】
複数の駆動装置2は、協働して可動部を駆動する。図2に示す例では、タワー102の内壁にリングギヤ106が形成されている。この場合、図2に示すように、リングギヤ106は、複数の歯107として、内周に設けられた複数の内歯108を有する。そして、駆動装置2のピニオン4が、タワー102の内壁に形成されたリングギヤ106に噛み合う。各駆動装置2において、駆動部3はピニオン4を駆動し、回転軸線C1を中心として回転させる。換言すると、ピニオン4の回転軸線C1とは、ピニオン4が駆動部3に駆動されて回転する回転軸線である。図2に示す例において、第1の駆動装置2-1のピニオン4は回転軸線C1-1を中心として回転し、第2の駆動装置2-2のピニオン4は回転軸線C1-2を中心として回転し、第3の駆動装置2-3のピニオン4は回転軸線C1-3を中心として回転し、第4の駆動装置2-4のピニオン4は回転軸線C1-4を中心として回転する。ピニオン4の回転によって、各駆動装置2はリングギヤ106の周方向D1に沿って移動する。複数の駆動装置2がともに周方向D1に移動することによって、タワー102とナセル103との間の可動部が駆動され、複数の駆動装置2が取り付けられているナセル103が、リングギヤ106が形成されているタワー102に対してヨー方向に回転する。
【0027】
また、風車本体101のうち、ナセル103をタワー102に対してヨー方向に回転させるヨー旋回部は、リングギヤ106に対して相対回転させられる複数の駆動装置2に制動力を与えるブレーキを備える。本実施形態において、ブレーキは、ナセル103に取り付けられてリングギヤ106に対して制動力を与える油圧ブレーキである。油圧ブレーキは、例えば、キャリパーブレーキ機構である。油圧ブレーキは、図示しない油圧ブレーキ駆動部と、図2に示す摩擦体50とを有する。油圧ブレーキ駆動部は、外部から供給された制御信号に応じて摩擦体50を図2中のピニオン4の回転軸線C1が延びる方向に平行な方向(図2の紙面に垂直な方向)に移動させる。油圧ブレーキ駆動部は、摩擦体50をリングギヤ106に押し当てることでリングギヤ106に制動力を印加する。風車10は、リングギヤ106に付与する制動力を調整することができることが望ましい。
【0028】
図3は、駆動装置2の構成例を示す図である。なお、図3は、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41については記載を省略した概略図である。図3に示す例では、リングギヤ106はタワー102の上部に備えられている。
【0029】
複数の駆動装置2は、それぞれ、回転を出力するアクチュエータ30と、アクチュエータからの出力を減速してピニオン4に伝達する減速機32とを有する。本実施形態においては、駆動装置2のうち駆動部3が、アクチュエータ30と減速機32とを有している。また、駆動部3は、さらに制動部31と軸33とを備える。
【0030】
アクチュエータ30は、例えばモータである。アクチュエータ30は、アクチュエータ30に供給された電流に応じて、軸33の長手方向を回転軸として軸33を回転させる。
【0031】
減速機32は、減速機構としてのギヤを備える。減速機32は、減速機32に備えられたギヤを用いて、軸33の回転速度を定める。
【0032】
また、本実施形態において、制動部31は、電磁ブレーキを用いて、軸33の回転速度を抑える。制動部31は、電磁ブレーキを用いて、軸33の回転の停止状態を維持してもよい。
【0033】
軸33は、アクチュエータ30に駆動されることによって、減速機32によって定められた回転速度で回転する。軸33は、アクチュエータ30に駆動されることによって、所定のトルク(軸トルク)で回転する。ピニオン4は、軸33の回転量に応じて、リングギヤ106の歯107と噛み合いながら回転する。また、ピニオン4は、駆動部3のうち軸33の端部に設けられている。このため、ピニオン4は軸33の回転に伴って回転する。アクチュエータ30が軸33を介してピニオン4を回転させることによって、上述のようにナセル103がタワー102に対してヨー方向に回転する。
【0034】
一例として、駆動部3は、図示しない複数のボルトを用いてナセル103に固定される。
【0035】
続いて、上述した駆動機構1の複数の駆動装置2の位置を判定する方法及び上述した駆動装置2の位置を調整する調整方法について説明する。
【0036】
まず、複数の駆動装置2の位置を判定すること及び複数の駆動装置2の位置を調整することの意義について説明する。
【0037】
複数の駆動装置2が可動部を駆動する際、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシは均一であることが好ましい。以下の理由のためである。リングギヤ106とのバックラッシが小さい駆動装置2ほど、駆動装置2のピニオン4の歯41とリングギヤ106の歯107とがより深く噛み合っており、このために駆動装置2にかかる負荷が大きくなっていると考えられる。一方、リングギヤ106とのバックラッシが大きい駆動装置2ほど、駆動装置2のピニオン4の歯41とリングギヤ106の歯107とがより浅く噛み合っており、このために駆動装置2にかかる負荷が小さくなっていると考えられる。以上より、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシがばらついていると、複数の駆動装置2にかかる負荷もばらついてしまう。これに対して、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシを均一に近づけることによって、複数の駆動装置2にかかる負荷を均一に近づけることができる。これによって、複数の駆動装置2の一部に負荷が集中することを抑制して、駆動機構1を全体として長寿命化することができる。しかしながら、複数の駆動装置2が可動部を駆動する際に、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシがばらつく場合がある。
【0038】
複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシがばらつく理由の一つとして、複数の駆動装置2の位置にばらつきがあることが考えられる。図4は、リングギヤ106に対する複数の駆動装置2の位置の一例を示す図であり、特に複数の駆動装置2の位置にばらつきがある様子を示している。図4に示す例においては、各ピニオン4の回転軸線C1の、リングギヤ106の回転中心C2からの距離がばらついている。ここで、リングギヤ106の回転中心C2とは、仮にリングギヤ106が歪みのない円環に複数の歯107が設けられた形状を有する場合には、当該円環の中心となる軸線である。また、リングギヤ106の回転中心C2は、リングギヤ106の理論上の重心を通りリングギヤ106の広がる面に垂直な直線と定めることもできる。リングギヤ106の回転中心C2である直線は、ピニオン4の回転軸線C1である直線と平行である。
【0039】
図4に示す例においては、第4の駆動装置2-4のピニオン4の回転軸線C1-4とリングギヤ106の回転中心C2との間の距離w4の長さが、第1の駆動装置2-1のピニオン4の回転軸線C1-1とリングギヤ106の回転中心C2との間の距離w1、第2の駆動装置2-2のピニオン4の回転軸線C1-2とリングギヤ106の回転中心C2との間の距離w2、及び第3の駆動装置2-3のピニオン4の回転軸線C1-3とリングギヤ106の回転中心C2との間の距離w3の長さと異なっている。なお、図4に示す例においては、距離w1,距離w2及び距離w3の長さは等しくなっている。図4に破線で示す円L1は、リングギヤ106の回転中心C2を中心とし半径の長さが距離w1,距離w2及び距離w3の長さと等しい仮想の円である。
【0040】
リングギヤ106が内歯108を有する場合、自身の回転軸線C1のリングギヤ106の回転中心C2からの距離がより長いピニオン4の歯41ほど、リングギヤ106の内歯108により深く噛み合う。一方で、自身の回転軸線C1のリングギヤ106の回転中心C2からの距離がより短いピニオン4の歯41ほど、リングギヤ106の内歯108により浅く噛み合う。このために、自身の回転軸線C1のリングギヤ106の回転中心C2からの距離がより長いピニオン4を有する駆動装置2のほうが、自身の回転軸線C1のリングギヤ106の回転中心C2からの距離がより短いピニオン4を有する駆動装置2よりも、リングギヤ106とのバックラッシが小さくなりやすい。図4に示す例においては、距離w4が、距離w1、距離w2及び距離w3よりも短くなっている。このため、回転軸線C1のリングギヤ106の回転中心C2からの距離の観点からは、駆動装置2-4において、駆動装置2-1、駆動装置2-2及び駆動装置2-3よりも、リングギヤ106とのバックラッシが大きくなりやすくなっている。
【0041】
複数の駆動装置2の位置を判定することによって、図4に示すような複数の駆動装置2の位置のばらつきを検出し、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシがばらついていることを検出することができる。そして、複数の駆動装置2の位置を調整することによって、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシを均一に近づけることができる。
【0042】
また、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシがばらつくもう一つの理由として、リングギヤ106の形状が歪んでいることが考えられる。図4に示す例において、リングギヤ106は、歪んだ円環に複数の内歯108が設けられた形状を有している。このために、一つの内歯108の先端部108aからリングギヤ106の回転中心C2までの距離w5の長さと、当該一つの内歯108とは別の内歯108の先端部108aからリングギヤ106の回転中心C2までの距離w6の長さが、異なっている。この場合、駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシは、当該駆動装置2のピニオン4がリングギヤ106の回転中心C2からより離れた先端部108aを有する内歯108と噛み合うときに、より大きくなる。また、駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシは、当該駆動装置2のピニオン4がリングギヤ106の回転中心C2により近い先端部108aを有する内歯108と噛み合うときに、より小さくなる。
【0043】
ここで、リングギヤ106の形状の歪みが大きい場合には、複数の駆動装置2の位置のばらつきをより小さく抑えなければ、全体として複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いが大きくなってしまう。これに対して、リングギヤ106の形状の歪みが小さい場合には、複数の駆動装置2の位置のばらつきがある程度大きくても、全体として複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いは大きくなりにくい。このため、駆動装置2の位置の調整を最小限に留めつつ、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いが大きくなり過ぎることを抑制する観点からは、リングギヤ106の形状の歪みを考慮して複数の駆動装置2の位置を判定し、調整することが好ましい。
【0044】
次に、駆動機構1の複数の駆動装置2の位置を判定する方法及び複数の駆動装置2の位置を調整する調整方法について説明する。一例として、図4に示す駆動機構1の複数の駆動装置2の位置を判定する方法及び複数の駆動装置2の位置を調整する調整方法について説明する。本実施形態に係る駆動機構1の調整方法は、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシを計測する計測工程と、計測工程において計測されたバックラッシに基づいてリングギヤ106に対する駆動装置2の位置を判定する判定工程と、を備える。ここで、駆動機構1の調整方法は、判定工程の結果に基づいて駆動装置2の位置を調整する調整工程をさらに備えてもよいし、備えなくてもよい。本実施形態においては、一例として、調整工程を備える駆動機構1の調整方法について説明する。また、本実施形態に係る駆動機構1の調整方法は、リングギヤ106の回転中心C2から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得する取得工程を備える。
【0045】
まず、計測工程について述べる。計測工程においては、上述のように、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシを計測する。一例として、測定されるバックラッシは、駆動装置2とリングギヤ106との円周方向バックラッシである。計測工程は、複数の駆動装置2のうち一つの駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを計測する工程(以下、第1計測工程とも称する)と、他の駆動装置2のピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシを計測する工程(以下、第2計測工程とも称する)と、を少なくとも含む。
【0046】
第1計測工程においては、一つの駆動装置2のピニオン4をリングギヤ106の周方向D1における基準位置P1に対面するように位置合わせする。そして、当該一つの駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを計測する。本実施形態においては、第1計測工程において第1の駆動装置2-1とリングギヤ106とのバックラッシを計測する。図5及び図6は、第1の駆動装置2-1のピニオン4が基準位置P1に対面するように位置合わせされた駆動機構1の様子を示す図である。
【0047】
第2計測工程においては、リングギヤ106に対して複数の駆動装置2を相対回転させる。これによって、バックラッシが測定された駆動装置2とは異なる他の駆動装置2のピニオン4をリングギヤ106の基準位置P1に対面するように位置合わせする。そして、当該他の駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを計測する。本実施形態においては、第2計測工程において第2の駆動装置2-2とリングギヤ106とのバックラッシを計測する。
【0048】
また、駆動機構1がn個の駆動装置2を有する場合、計測工程は、第1計測工程及び第2計測工程においてバックラッシが計測されていない駆動装置2のバックラッシを測定する、第3計測工程から第n計測工程までの(n-2)個の工程をさらに含んでもよい。第3計測工程から第n計測工程までの工程においては、まず、バックラッシが計測されていない駆動装置2のピニオン4をリングギヤ106の基準位置P1に対面するように位置合わせする。そして、基準位置P1に対面するように位置合わせされた駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを測定する。計測工程が第1計測工程から第n計測工程までのn個の工程を含んでいることによって、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシを計測することができる。
【0049】
第1計測工程から第n計測工程までの工程のそれぞれにおけるバックラッシの測定方法の一例として、第1計測工程において第1の駆動装置2-1とリングギヤ106とのバックラッシを計測する方法について、図5及び図6を参照してより具体的に説明する。第1計測工程において第1の駆動装置2-1とリングギヤ106とのバックラッシを計測する方法の説明は、矛盾しない限り、第2計測工程から第n計測工程までの工程において計測対象の駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを計測する方法にも適用される。
【0050】
まず、リングギヤ106に対して複数の駆動装置2を相対回転させて、図5に示すように、計測対象の駆動装置2のピニオン4をリングギヤ106の基準位置P1に対面するように位置合わせする。より具体的には、計測対象の駆動装置2のピニオン4の歯41の一つが、リングギヤ106の一対の基準歯107aの間に位置するように、当該ピニオン4を位置合わせする。ここで、一対の基準歯107aとは、リングギヤ106の歯107のうち周方向D1において基準位置P1に最も近い一つの歯と、基準位置P1に二番目に近い一つの歯との対の歯をいう。
【0051】
ここで、複数の内歯108のうちのリングギヤ106の回転中心C2から最も近い距離に先端部108aが位置する内歯108を、最内側内歯108bとも称する。本実施形態においては、最内側内歯108bが、一対の基準歯107aの一方となるように、基準位置P1を定める。換言すれば、本実施形態においては、最内側内歯108bと、内歯108のうち周方向D1において最内側内歯108bに隣接する内歯108の一つと、を一対の基準歯107aとする。さらに換言すれば、本実施形態においては、複数の内歯108のうちのリングギヤ106の回転中心C2から最も近い距離に先端部108aが位置する内歯108(最内側内歯108b)とピニオン4とが噛み合った位置を基準位置P1としてバックラッシを測定する。一例として、基準位置P1は、最内側内歯108bと、周方向D1において最内側内歯108bに隣接する二つの内歯108のうちリングギヤ106の回転中心C2により近い先端部108aを有する内歯108と、の間に定められる。
【0052】
複数の内歯108を有するリングギヤ106において、上述のように基準位置P1を定めることによって、以下の効果が得られる。仮に、ピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシが小さくなり過ぎると、ピニオン4の歯41とリングギヤ106の内歯108との干渉によってピニオン4の回転が阻害される可能性がある。そして、ピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシは、ピニオン4が周方向D1において最内側内歯108bと噛み合う位置に位置するときに、最も小さくなる。これに対して、上述のように基準位置P1を定めることによって、計測工程において、ピニオン4が最内側内歯108bと噛み合った状態を基準として、バックラッシが計測される。また、このように計測されたバックラッシに基づいて、後述する判定工程及び調整工程が行われる。このため、調整工程においてピニオン4の位置を調整した後に、ピニオン4が最内側内歯108bと噛み合っているときのバックラッシが小さくなり過ぎてしまうことを、抑制することができる。
【0053】
リングギヤ106に対して複数の駆動装置2を相対回転させる方法の一例について説明する。本実施形態においては、複数の駆動装置2はナセル103に取り付けられており、リングギヤ106はタワー102に形成されている。このため、複数の駆動装置2によってナセル103をタワー102に対して相対回転させることによって、リングギヤ106に対して複数の駆動装置2を相対回転させることができる。
【0054】
バックラッシの計測対象の駆動装置2のピニオン4をリングギヤ106の基準位置P1に対面させた後、当該ピニオン4の回転軸線C1の、リングギヤ106に対する相対位置を固定する。本実施形態においては、駆動装置2が取り付けられたナセル103と、リングギヤ106が形成されたタワー102と、の相対位置を固定することによって、ピニオン4の回転軸線C1の相対位置を固定することができる。ナセル103とタワー102との相対位置は、例えば、ナセル103に取り付けられており且つ摩擦体50を有するブレーキを用いてリングギヤ106に対して制動力を与えることによって、固定することができる。
【0055】
次に、基準位置P1に位置し且つリングギヤ106の周方向D1において隣り合う一対の基準歯107aの間に位置するピニオン4の歯41を、図5に示すように、一対の基準歯107aの一方に接触させる。次に、アクチュエータ30からピニオン4に回転を出力して、図6に示すように一対の基準歯107aの他方にピニオンの歯41が接触するまで、ピニオン4を回転させる。そして、一対の基準歯107aの他方にピニオンの歯41が接触するまでにアクチュエータ30から出力された回転量を測定する。一例として、アクチュエータ30に人の手で回転を入力することによって、アクチュエータ30から回転を出力させることができる。この場合、アクチュエータ30から出力された回転量の測定は、人の手でアクチュエータ30に入力した回転の回転数を目視で数えることによって行うことができる。アクチュエータ30から出力された回転量の測定には、パルスカウンタが用いられてもよい。また、図5に示すようなピニオン4の歯41の一対の基準歯107aの一方への接触、又は図6に示すようなピニオンの歯41の一対の基準歯107aの他方への接触を検出するために、トルク計が用いられてもよい。この場合、回転するピニオン4にかかるトルクをトルク計で測定して、ピニオン4に大きなトルクがかかることを検出することで、ピニオン4の歯41の基準歯107aへの接触を検出することができる。
【0056】
そして、一対の基準歯107aの一方に接触した状態から一対の基準歯107aの他方にピニオンの歯41が接触するまでにアクチュエータ30から出力された回転量に基づいて、駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを算出する。
【0057】
駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを算出するにあたっては、測定されたアクチュエータ30から出力された回転量、減速機32の内部のバックラッシ、及び減速機32の減速比から、ピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシ、特にピニオン4とリングギヤ106との円周方向バックラッシを算出してもよい。これにより、ピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシに基づいて、後述する判定工程及び調整工程を行うことができる。特に、アクチュエータ30から出力された回転量から減速機32の内部のバックラッシ及び減速機32の減速比の影響を除き、実際にピニオン4とリングギヤ106との間で生じているバックラッシの絶対値に基づいて、複数の駆動装置2の位置を判定して調整することができる。
【0058】
また、一対の基準歯107aの一方に接触した状態から一対の基準歯107aの他方にピニオンの歯41が接触するまでにアクチュエータ30から出力された回転量の測定結果そのものを、駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシとして用いてもよい。一般的に、駆動機構1に備えられる複数の駆動装置2が有する減速機32は全て同型式であるため、減速機32の内部のバックラッシ及び減速機32の減速比は、複数の駆動装置2の間で一定であると仮定することができる。この仮定に基づけば、アクチュエータ30から出力された回転量が大きい駆動装置2ではピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシも大きくなっており、アクチュエータ30から出力された回転量が小さい駆動装置2ではピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシも小さくなっていると考えられる。このため、複数の駆動装置2のそれぞれについて、アクチュエータ30から出力された回転量の大小を比較することによって、ピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシの大小を比較することができる。例えば後述する判定工程において、アクチュエータ30から出力された回転量の大小を比較することによっても、ピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシが他の駆動装置2と比較して大きく異なってしまっている駆動装置2を特定することができる。このために、アクチュエータ30から出力された回転量そのものを、ピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシに代わる値として用いることができる。
【0059】
アクチュエータ30から出力された回転量を、駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシとして用いることによって、減速機32の内部のバックラッシ及び減速機32の減速比を考慮してピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシの絶対値を算出する手間が不要となる。
【0060】
次に、取得工程について述べる。取得工程においては、上述のように、リングギヤ106の回転中心C2から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得する。なお、リングギヤ106の回転中心C2から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきは、例えばリングギヤ106の形状の歪みのために生じる。取得工程は、計測工程の後に行ってもよいし、計測工程の前に行ってもよい。なお、取得工程を計測工程の先に行う場合、取得工程において取得したばらつき情報に基づいて最内側内歯108b及び基準位置P1を特定し、特定した最内側内歯108b及び基準位置P1に基づいて計測工程を行ってもよい。
【0061】
一例として、取得工程においては、リングギヤ106の製造公差に関する情報、リングギヤ106の異なる周方向位置において計測した特定の駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシ、及びリングギヤ106の周方向D1における歪みに関する検査結果の少なくともいずれか一つから、リングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得する。これによって、容易に入手できる情報に基づいてばらつき情報を取得することができる。また、後述する判定工程において、ばらつき情報を考慮することで正確にリングギヤ106に対する駆動装置2の位置、特にリングギヤ106に対する駆動装置2のピニオン4の位置を判定することができる。
【0062】
取得工程において、リングギヤ106の異なる周方向位置において計測した特定の駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシから、リングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得する方法について説明する。
【0063】
まず、複数の駆動装置2から、特定の駆動装置2を選択する。例えば、複数の駆動装置2から、特定の駆動装置2として第1の駆動装置2-1を選択する。
【0064】
次に、選択された特定の駆動装置2をリングギヤ106の周方向D1における第1の位置に対面させて、特定の駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを計測する。取得工程においてバックラッシを計測する方法は、例えば計測工程においてバックラッシを計測する方法と同様である。次に、リングギヤ106に対して複数の駆動装置2を相対回転させて、選択された特定の駆動装置2を、リングギヤ106の周方向D1における第2の位置(第1の位置とは異なる位置)に対面させる。そして、第2の位置における特定の駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを計測する。これによって、リングギヤ106の異なる複数の周方向位置において、特定の駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを計測することができる。
【0065】
ここで、リングギヤ106の異なる複数の周方向位置において計測されたバックラッシのばらつきが大きいほど、リングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきは大きいと考えられる。リングギヤ106が内歯108を有する場合には、リングギヤ106の特定の周方向位置において計測されたバックラッシが大きいほど、当該周方向位置において、駆動装置2のピニオン4の歯41がリングギヤ106の内歯108に浅く噛み合っていると考えられる。このために、リングギヤ106の当該周方向位置において計測されたバックラッシが大きいほど、当該周方向位置の内歯108の先端部108aの回転中心C2からの距離が、長くなっていると考えられる。以上より、リングギヤ106の異なる複数の周方向位置において特定の駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシを計測することで、リングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報を取得することができる。
【0066】
なお、リングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきに関するばらつき情報として、具体的には、異なる周方向位置において計測されたバックラッシの値そのものを取得することができる。また、当該ばらつき情報として、計測されたバックラッシの値に基づいて導出される情報を取得してもよい。例えば、計測されたバックラッシの値に基づいて、異なる周方向位置のそれぞれに位置する歯107の先端部の回転中心C2からの距離を算出し、これを当該ばらつき情報として取得してもよい。
【0067】
計測工程及び取得工程の後に、計測工程において計測された複数のバックラッシに基づいてリングギヤ106に対する駆動装置2の位置を判定する判定工程を行う。一例として、判定工程においては、特に、複数の駆動装置2のリングギヤ106に対する位置のばらつきの度合いが、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いを十分に小さくする観点から許容される程度か否かを判定する。また、仮に複数の駆動装置2の位置のばらつきの度合いが許容できない程度に大きい場合には、複数の駆動装置2の位置において、どの駆動装置2が他の駆動装置2に対してどれだけずれているのかを判定してもよい。具体的には、判定工程において、回転軸線C1のリングギヤ106の回転中心C2からの距離が他の駆動装置2と大きく異なる駆動装置2はどれかを判定してもよい。また、他の駆動装置2と比べて位置のずれが大きいと判定された駆動装置2の回転軸線C1の回転中心C2からの距離が、他の駆動装置2の回転軸線C1の回転中心C2からの距離と比較してどの程度異なっているかを判定してもよい。
【0068】
判定工程においては、一例として、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いが基準値以下ならば、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いが十分小さく抑えられており、複数の駆動装置2の位置調整は不要であると評価する。また、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いが基準値を上回るならば、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いが大き過ぎており、複数の駆動装置2の位置調整が必要であると評価する。
【0069】
一例として、判定工程においては、計測工程において計測されたバックラッシと取得工程において取得されたばらつき情報とに基づいてリングギヤ106に対する駆動装置2の位置を判定する。これによって、リングギヤ106の形状の歪みによって生じるリングギヤ106の回転中心C2から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離のばらつきを考慮して、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置の判定をすることができる。このため、例えば、複数の駆動装置2の位置のばらつきがある程度大きいものの、リングギヤ106の形状の歪みが小さいために、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきが全体として大きくない場合には、判定工程において、駆動装置2の位置の調整は不要と判定され得る。これによって、不要な調整を回避して、位置調整の作業量を軽減することができる。また、この場合、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いの基準値は、取得工程において取得されたばらつき情報に応じて変動する値とすることができる。
【0070】
一例として、バックラッシのばらつきの度合いを示す数値としては、計測工程において計測されたバックラッシの相対標準偏差を用いることができる。また、判定工程において、取得工程において取得されたばらつき情報を考慮する場合、ばらつき情報として、取得工程において取得されたリングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離の相対標準偏差を用いることができる。この場合、判定工程は、バックラッシの相対標準偏差と、リングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離の相対標準偏差と、に基づいて、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置の、複数の駆動装置2の間でのばらつきの度合いを評価する工程(以下、相対標準偏差評価工程とも称する)を含む。相対標準偏差評価工程においては、例えば以下の方法によって、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置の、複数の駆動装置2の間でのばらつきの度合いを評価することができる。バックラッシの相対標準偏差と、リングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離の相対標準偏差と、の合計値の基準となる、合計基準値を予め定めておく。そして、合計基準値から、取得工程において取得されたリングギヤ106の回転中心C1から複数の歯107のそれぞれの先端部までの距離の相対標準偏差を引いた値を、計測工程において計測されたバックラッシの相対標準偏差の基準値とする。そして、計測工程において計測されたバックラッシの相対標準偏差が基準値よりも大きければ、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いが大き過ぎていると評価する。また、計測工程において計測されたバックラッシの相対標準偏差が基準値以下ならば、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いが十分小さく抑えられていると評価する。
【0071】
相対標準偏差評価工程によって、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置の、複数の駆動装置2の間でのばらつきの度合いを容易に評価できる。特に、相対標準偏差を用いることで評価の基準を定量的に定めつつ、計測工程において計測されたバックラッシとともに取得工程において取得されたばらつき情報を考慮して評価を行うことができる。
【0072】
図4に示す複数の駆動装置2に関して、判定工程においてリングギヤ106に対する駆動装置2の位置した場合、例えば以下のような判定結果が得られる。複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いが基準値を上回っているため、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いが大き過ぎている、との判定結果が得られる。また、第4の駆動装置2-4のリングギヤ106とのバックラッシが他の駆動装置2-1、2-2、2-3のリングギヤ106とのバックラッシよりも大きいため、図4に示す距離w4が距離w1、w2、w3よりも小さくなっている、との判定結果が得られる。また、図4に示す距離w4の長さをどのように変化させれば、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いが基準値以下となるかが、判定結果として得られる。
【0073】
なお、判定工程においては、取得工程において取得されたばらつき情報を考慮せずに、計測工程において計測されたバックラッシのみに基づいて、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置を判定してもよい。この場合、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いの基準値は、取得工程において取得されたばらつき情報に応じて変動しない、固定値とすることができる。
【0074】
判定工程の後に、判定工程の結果に基づいて駆動装置2の位置を調整する調整工程を行う。調整工程においては、判定工程の結果に基づいて、駆動装置2のうち特にピニオン4の位置を調整する。一例として、判定工程において複数の駆動装置2のリングギヤ106に対する位置のばらつきの度合いが許容できないほど大きいと判定された場合に、調整工程を行う。
【0075】
調整工程においては、一例として、仮に調整工程の後に再度判定工程を行うとすれば、複数の駆動装置2のリングギヤ106に対する位置のばらつきの度合いが許容できる程度に小さいと判断されるように、駆動装置2の位置を調整する。例えば調整工程においては、複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いが基準値以下となるように、ピニオン4の位置を調整する。一例として、調整工程における基準値は、判定工程においてリングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いを判定する際の基準値と同様である。すなわち、調整工程における基準値は、取得工程において取得されたばらつき情報に応じて変動する値であってもよいし、変動しない固定値であってもよい。複数の駆動装置2のそれぞれとリングギヤ106とのバックラッシのばらつきの度合いが基準値以下となるように、ピニオン4の位置を調整することによって、バックラッシのばらつきの度合いを十分に小さくすることができる。
【0076】
一例として、駆動装置2のリングギヤ106に対する位置が図4に示すようにばらついていた場合における調整工程について説明する。図4に示す例においては、上述のように、第4の駆動装置2-4のピニオン4の回転軸線C1-4とリングギヤ106の回転中心C2との間の距離w4が、他の駆動装置2-1、2-2、2-3のピニオン4の回転軸線C1-1、C1-2、C1-3とリングギヤ106の回転中心C2との間の距離w1、w2、w3よりも、短くなっている。このために、複数の駆動装置2のリングギヤ106に対する位置のばらつきの度合いが大きくなっている。
【0077】
判定工程の結果から図4のような状態が把握された場合、調整工程において、図7に示すように、複数の駆動装置2のうち少なくとも一つの駆動装置2のピニオン4の位置を、リングギヤ106における回転中心C2からの距離を変更するように調整することができる。特に、複数の駆動装置2のうち少なくとも一つの駆動装置2のピニオン4の回転軸線C1の位置について、リングギヤ106の回転中心C2からの距離を変更するように調整することができる。これによって、調整工程の前の状態よりも、複数の駆動装置2のリングギヤ106に対する位置のばらつきの度合いを小さくすることができる。なお、図面において符号L2を付した一点鎖線は、調整工程において移動させる前のピニオン4の位置を示す仮想の線である。また、図面において符号C3を付した破線で描かれた円は、調整工程において移動させる前のピニオン4の回転軸線C1の位置を示す円である。
【0078】
図7に示す例においては、第4の駆動装置2-4のピニオン4の回転軸線C1-4の位置を、図4に示す調整工程の前の状態よりもリングギヤ106における回転中心C2からの距離がより長くなるように調整されている。これによって、図4に示す調整工程の前の状態よりも、複数の駆動装置2のリングギヤ106に対する位置のばらつきの度合いが小さくなっている。
【0079】
また、調整工程において、複数の駆動装置2のうち少なくとも一つの駆動装置2のピニオン4の位置調整を、複数の駆動装置2のうちピニオン4の位置調整がされる駆動装置2以外の駆動装置2のピニオン4の位置を固定した状態で行ってもよい。特に、駆動装置2のピニオン4の位置調整は、ピニオン4の位置調整がされる駆動装置2以外の全ての駆動装置2のピニオン4の位置を固定した状態で行うことができる。例えば上述のように第4の駆動装置2-4のピニオン4の位置を調整する場合には、位置調整を、第4の駆動装置2-4以外の駆動装置2-1、2-2、2-3のピニオン4の位置を固定した状態で行うことができる。このように位置調整を行うことで、位置調整を行うピニオン4以外のピニオン4の位置まで動いてしまうことを抑制しつつ、位置が好ましくないピニオン4の位置のみを調整することができる。これによって、位置調整の作業量を少なくすることができる。ピニオン4の位置調整を行う駆動装置2以外の駆動装置2の位置の固定は、例えば駆動装置2のそれぞれの制動部31を用いて軸33の回転にブレーキをかけることで、行うことができる。
【0080】
また、調整工程においては、複数の駆動装置2同士の相対的な位置関係を変えずに、複数の駆動装置2をリングギヤ106に対して移動させることによって、駆動装置2の位置調整を行ってもよい。このような位置調整は、例えば、複数の駆動装置2が取り付けられているナセル103の、リングギヤ106が形成されているタワー102に対する相対的な位置を調整することによって行うことができる。
【0081】
調整工程によって、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いを十分小さくすることができる。特に、上述の判定工程の結果に基づいて調整工程を行うことによって、位置調整の作業量を軽減しつつ、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置のばらつきの度合いを十分小さくすることができる。
【0082】
上述した駆動機構1の複数の駆動装置2の位置を判定する方法及び上述した駆動装置2の位置を調整する調整方法によれば、簡単な方法によって、複数の駆動装置2のリングギヤ106に対する位置が判定される。また、このような判定の結果に基づいて、複数の駆動装置2の位置、特にピニオン4の位置を調整することができる。
【0083】
上述した駆動機構1の複数の駆動装置2の位置を判定する方法及び上述した駆動装置2の位置を調整する調整方法の効果について、図8を参照してさらに説明する。図8は、図4に示す駆動機構1のうち、リングギヤ106の歯107とピニオン4の歯41とが噛み合っている部分を拡大して示す図である。図8に破線で示す曲線L3は、リングギヤ106の回転中心C2を中心とする仮想の円の一部をなす線である。また、図8に一点鎖線で示す直線L4は、曲線L3の接線である。
【0084】
可動部を駆動する駆動機構1の調整方法、特に図1に示すような風車10の可動部を駆動する駆動機構1であって、図4に示すようにリングギヤ106と複数の駆動装置2とを備える駆動機構1の調整方法としては、以下の方法も考えられる。まず、図8に示すように噛み合っているリングギヤ106の歯107とピニオン4の歯41との隙間の長さを直接測定することによってバックラッシを計測する。ここで、バックラッシの測定においては、例えばリングギヤ106の歯107の歯面107b及びピニオン4の歯41の歯面41aの隙間に隙間ゲージを差し込んで、バックラッシとして法線方向バックラッシw7または接線方向バックラッシw8を測定する。そして、計測されたバックラッシに基づいてリングギヤ106に対する駆動装置2の位置を判定し、判定結果に基づいて駆動機構1を調整する。しかしながら、この調整方法の場合、リングギヤ106及びピニオン4の回転軸(回転軸線C1、回転中心C2)の延びる方向(図8の紙面に垂直な方向)からリングギヤ106及びピニオン4を観察し、当該方向から隙間ゲージを差し込む必要が生じる。このため、リングギヤ106及びピニオン4の周囲に別の部材が取り付けられている場合には、当該部材がバックラッシの計測を阻害するおそれがある。このため、この調整方法は、図1に示すように組み立てられた風車10の一部となっている駆動機構1には、適用できないおそれがある。また、リングギヤ106とピニオン4との間の潤滑油が、隙間ゲージなどによる測定を阻害するおそれもある。
【0085】
また、駆動機構1の調整方法として、以下の方法も考えられる。まず、固定されたリングギヤ106に対してピニオン4を回転させつつ、ピニオン4の歯41の歯面41aにダイヤルゲージの測定子をあてる。これによって、ピニオン4の回転方向における歯面41aの動きをダイヤルゲージによって読み取って、図8に示す円周方向バックラッシw9を計測する。そして、計測されたバックラッシに基づいてリングギヤ106に対する駆動装置2の位置を判定し、判定結果に基づいて駆動機構1を調整する。しかしながら、この調整方法の場合、ダイヤルゲージが必要になるとともに、ダイヤルゲージを取り付ける作業も必要となる。また、リングギヤ106とピニオン4との間の潤滑油が、ダイヤルゲージの取り付けや測定を阻害するおそれもある。
【0086】
これに対して、本実施形態に係る調整方法によれば、バックラッシの計測や、計測に用いる計測器の設置のために、風車10などの駆動機構1が組み込まれている対象を大きく分解する必要なしに、バックラッシの計測を行うことができる。また、リングギヤ106とピニオン4との間の潤滑油に阻害されることなく、バックラッシを計測することができる。このため、簡易な方法によって、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置を判定することができる。特に、設置されている状態の風車10の駆動機構1に関しても、リングギヤ106に対する駆動装置2の位置を容易に判定することができる。
【0087】
以上の通り、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0088】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0089】
(変形例)
上述の実施形態では、リングギヤ106が複数の内歯108を有する駆動機構1に関して、複数の駆動装置2の位置を判定する方法及び駆動装置2の位置を調整する調整方法について説明した。しかしながら、リングギヤ106の形態は、これに限られない。図9は、変形例のリングギヤ106を備える駆動機構1を示す上面図である。図9に示す例において、リングギヤ106は、複数の外歯109を有する。図9に示す例において、リングギヤ106が、歪んだ円環に複数の外歯109が設けられた形状を有している。そして、リングギヤ106の外歯109とピニオン4の歯41とが噛み合っている。なお、図9では、摩擦体50の図示は省略している。
【0090】
リングギヤ106が複数の外歯109を有する場合、駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシは、当該駆動装置2のピニオン4がリングギヤ106の回転中心C2により近い先端部109aを有する外歯109と噛み合うときに、より大きくなる。また、駆動装置2とリングギヤ106とのバックラッシは、当該駆動装置2のピニオン4がリングギヤ106の回転中心C2からより離れた先端部109aを有する外歯109と噛み合うときに、より小さくなる。
【0091】
ここで、複数の外歯109のうちのリングギヤ106の回転中心C2から最も遠い距離に先端部109aが位置する外歯109を、最外側外歯109bとも称する。本変形例においては、最外側外歯109bが、一対の基準歯107aの一方となるように、基準位置P1を定める。換言すれば、本変形例においては、最外側外歯109bと、外歯109のうち周方向D1において最外側外歯109bに隣接する外歯109の一つと、を一対の基準歯107aとする。さらに換言すれば、本実施形態においては、複数の外歯109のうちのリングギヤ106の回転中心C2から最も遠い距離に先端部109aが位置する外歯109(最外側外歯109b)とピニオン4とが噛み合った位置を基準位置P1としてバックラッシを測定する。一例として、基準位置P1は、最外側外歯109bと、周方向D1において最外側外歯109bに隣接する二つの外歯109のうちリングギヤ106の回転中心C2により近い先端部109aを有する外歯109と、の間に定められる。
【0092】
複数の外歯109を有するリングギヤ106において、上述のように基準位置P1を定めることによって、以下の効果が得られる。ピニオン4とリングギヤ106とのバックラッシは、ピニオン4が周方向D1において最外側外歯109bと噛み合う位置に位置するときに、最も小さくなる。これに対して、上述のように基準位置P1を定めることによって、計測工程において、ピニオン4が最外側外歯109bと噛み合った状態を基準として、バックラッシが計測される。また、このように計測されたバックラッシに基づいて、後述する判定工程及び調整工程が行われる。このため、調整工程においてピニオン4の位置を調整した後にピニオン4が最外側外歯109bと噛み合っているときのバックラッシが小さくなり過ぎてしまうことを、抑制することができる。
【0093】
なお、上述の実施形態におけるリングギヤ106の内歯108及び最内側内歯108bに関する説明は、矛盾しない限り、本変形例に係るリングギヤ106の外歯109及び最外側外歯109bに関しても適用される。
【0094】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0095】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 駆動機構
2 駆動装置
3 駆動部
30 アクチュエータ
31 制動部
32 減速機
33 軸
4 ピニオン
41 歯
10 風車
101 風車本体
102 タワー
103 ナセル
104 ロータ
105 ブレード
106 リングギヤ
107 歯
107a 基準歯
108 内歯
108a 先端部
108b 最内側内歯
109 外歯
109a 先端部
109b 最外側外歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9