(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171374
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】金属被覆方法
(51)【国際特許分類】
B21D 39/00 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
B21D39/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077974
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩二
(57)【要約】
【課題】
機械的接合により金属を被覆する金属被覆方法を提供する。
【解決手段】
金属材料でなる被覆材20で、金属材料でなる基材10を覆う金属被覆方法であって、被覆材は中実軸部23の先端に有底中空円筒状の円筒部21を形成した構成であり、基材10は被覆材20の円筒部の中空穴と略等しい外径および長さの軸状に構成されており、基材を被覆材の円筒部に嵌合した状態で当該部分の外周を拘束し、この状態で被覆材を圧縮することにより、基材の外周壁面に被覆材を圧着して被覆する金属被覆方法による。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料でなる被覆材で、金属材料でなる基材を覆う金属被覆方法であって、
被覆材は中実軸部の先端に有底中空円筒状の円筒部を形成した構成であり、
基材は被覆材の円筒部の中空穴と略等しい外径および長さの軸状に構成されており、
基材を被覆材の円筒部に嵌合した状態で当該部分の外周を拘束し、この状態で被覆材を圧縮することにより、基材の外周壁面に被覆材を圧着して被覆することを特徴とする金属被覆方法。
【請求項2】
前記基材は、その先端に凸部を有し、この凸部の外周部には係合部が形成されるとともに、被覆材は、その円筒部の有底部には基材の凸部が嵌合可能な凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の金属被覆方法。
【請求項3】
前記被覆材は、鉄鋼材料でなることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を機械的に被覆する金属被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用材料として鉄はもっとも重要な金属の一つであり、その用途によりさまざまな研究開発がされている。熱処理技術や切削や研磨といった加工技術、接合技術、塗装技術、めっき技術(例えば、特許文献1)など、鉄鋼材料の取扱いについても長い歴史の中で培わされた技術の蓄積がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、めっき技術を例に挙げると、被めっき処理物としての鉄系合金の取り扱いは優れているものの、他金属への鉄系合金めっきは、ほかのめっき種と比較してあまり一般的とは言えない。これは、めっきは鉄系合金の錆を防止するのを目的として用いられるとの意識が強いためだと考えられる。
【0005】
加えて、技術的な課題として、めっき浴中の鉄イオンが空気によって酸化され、これがめっき面に付着することによりザラツキの原因となることがある。つまり、鉄系合金めっきは、技術的な課題が多く、めっき以外の方法で高品質に鉄系合金を被覆する技術が待ち望まれていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、機械的接合により金属を被覆する金属被覆方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、金属材料でなる被覆材で、金属材料でなる基材を覆う金属被覆方法であって、被覆材は中実軸部の先端に有底中空円筒状の円筒部を形成した構成であり、基材は被覆材の円筒部の中空穴と略等しい外径および長さの軸状に構成されており、基材を被覆材の円筒部に嵌合した状態で当該部分の外周を拘束し、この状態で被覆材を圧縮することにより、基材の外周壁面に被覆材を圧着して被覆することを特徴とする金属被覆方法によって解決できる。
【0008】
なお、上記基材は、その先端に凸部を有し、この凸部の外周部には係合部が形成されるとともに、被覆材は、その円筒部の有底部には基材の凸部が嵌合可能な凹部を有することが好ましい。
【0009】
なお、被覆材は、鉄鋼材料でなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械的接合により金属を被覆するので、金属めっきと比較して、低コストで、かつ安定した品質で金属を被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る金属被覆方法によって被覆される素材を示す正面図である。
【
図2】本発明に係る金属被覆方法を示す説明図であり、両部材を組み合わせた状態を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る金属被覆方法を示す説明図であり、基材に被覆材を被覆した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の第1の実施形態を説明する。
図1において、10及び20は、本発明である金属被覆方法によって被覆される素材を示すものである。
【0013】
前記基材10は銅材料で構成されている。この基材10は、中実軸状を成しており、その先端には本体より小径の凸部11が一体成形されている。また、この凸部11の基部外周には、全周に渡って係合部の一例である環状溝12が形成されている。
【0014】
前記被覆材20は鉄鋼材料で構成されている。この被覆材20は、前記基材10を挿入可能な有底中空円筒状の円筒部21を有し、この円筒部21の底部には、前記基材10の凸部11が嵌合可能な凹部22が設けられている。
【0015】
次に、
図2及び
図3に基づき、基材10に被覆材20を被覆して複合部品を得る方法を説明する。被覆前の素材としての被覆材20は、被覆後に鍔部24となる中実軸部23を有しており、この中実軸部23に前記円筒部21が一体に連設する構造を成す。また、基材10は、このブランクの状態における被覆材20の円筒部21の内径および長さと略等しい外径および長さに構成されている。
【0016】
被覆にあたっては、
図2に示すように、被覆材20の円筒部21に基材10を挿入し、この嵌合部分を受け型4の成形穴41に嵌合させる。挿入深さとしては、基材10の凸部11が受け型4の成形穴41内に収納される位置である。この位置に設定することにより、基材10の凸部11は、その外周側が受け型4によって拘束されているので、後述する方法で圧縮した際に半径方向に扁平することはない。反対に、基材10の凸部11が受け型4の成形穴41の上部から突出する位置に設定した場合においては、外周側が受け型4に拘束されないので、圧縮した際に半径方向に扁平する。
【0017】
このとき、成形穴41の奥、所定位置には、成形穴41と同径でこれに沿って摺動可能なノックアウトピンNpが配置されており、これら成形穴41とノックアウトピンNpにより、被覆材20の円筒部21と基材10の嵌合部分の端面を含む外周全体を拘束し、当該円筒部21に連設された中実軸部23は非拘束とする。受け型4の成形穴41は、円筒部21の外径と同径に構成されており、よって、円筒部21はこの成形穴41にすきまばめ程度のはめあいで嵌合する。
【0018】
続いて、
図3に示すように、被覆材20の中実軸部23をパンチPにより押圧して圧縮すると、中実軸部23は円形鍔状に塑性変形して鍔部24に成形され、これによって生じた材料の流動で、基材10の凸部11の環状溝12には被覆材20の余肉が密に充填される。
【0019】
このとき、被覆材20の円筒部21側は受け型4とノックアウトピンNpとに拘束されているため、円筒部21の内周壁面が基材10の外周壁面に押圧されて圧着する。これにより、基材10には被覆材20が極めて高い密着度で被覆される。
【0020】
上述のようにして被覆された複合部品は、鍔部24を有するものであるが、これを切削等により除去し、所望の形状に成形してもよい。
【符号の説明】
【0021】
10 基材
11 凸部
12 環状溝
20 被覆材
21 円筒部
22 凹部
23 中実軸部
24 鍔部
4 受け型
41 成形穴
Np ノックアウトピン
P パンチ