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特開2022-171375マスキング部材及び中空部材の塗装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171375
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】マスキング部材及び中空部材の塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/115 20060101AFI20221104BHJP
   B05D 1/32 20060101ALI20221104BHJP
   B05D 1/18 20060101ALI20221104BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20221104BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20221104BHJP
   B05B 12/26 20180101ALN20221104BHJP
【FI】
B05C11/115
B05D1/32 E
B05D1/18
B05D3/02 Z
B05D7/00 K
B05B12/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077977
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲也
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F042
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073DB03
4D073DB06
4D073DB27
4D075AB01
4D075AD12
4D075BB24Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA15
4D075DA20
4D075DB01
4F042AA03
4F042AB00
4F042DG08
4F042DG09
4F042DG15
(57)【要約】
【課題】中空部材の塗装工程で該中空部材の口部を塞ぐマスキング部材において、簡単な構造で、塗料の加熱乾燥時における中空部材内の圧力上昇を抑制する。
【解決手段】マスキング部材は、弾性材料によって形成され、中空部材の口部に挿入されることによって前記口部を塞ぐマスキング本体と、前記マスキング本体に形成され、前記マスキング本体の外周面に開口し、前記口部を塞いだ状態の前記マスキング本体が挿入方向と反対方向に移動することによって前記外周面の開口の少なくとも一部が前記中空部材の外側に露出して前記中空部材の外側と内側をつなぐ通路部と、を有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料によって形成され、中空部材の口部に挿入されることによって前記口部を塞ぐマスキング本体と、
前記マスキング本体に形成され、前記マスキング本体の外周面に開口し、前記口部を塞いだ状態の前記マスキング本体が挿入方向と反対方向に移動することによって前記外周面の開口の少なくとも一部が前記中空部材の外側に露出して前記中空部材の外側と内側をつなぐ通路部と、
を有するマスキング部材。
【請求項2】
前記通路部は、前記マスキング本体の外周面に開口し、かつ、前記マスキング本体の挿入方向の先端面に開口している、請求項1に記載のマスキング部材。
【請求項3】
前記通路部は、前記マスキング本体の前記外周面に形成された溝である、請求項1又は請求項2に記載のマスキング部材。
【請求項4】
前記マスキング本体は、前記挿入方向と反対方向へ向けて次第に外径が拡がる拡径部を有しており、
前記マスキング本体が前記口部を塞いだ状態では前記拡径部の外周面が前記口部の内周面に接触する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のマスキング部材。
【請求項5】
前記マスキング本体は、前記挿入方向と反対方向の端部側から径方向外側へ向けて張り出す張出部を有しており、
前記マスキング本体が前記口部を塞いだ状態では前記張出部の前記挿入方向の面が前記口部の端面に対向する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のマスキング部材。
【請求項6】
前記中空部材における前記口部の内周面には、周方向に沿って延びる環状の凹部が形成されており、
前記マスキング本体は、前記挿入方向の先端面側から径方向外側へ向けて張り出し、前記凹部に嵌ることにより前記マスキング本体の前記挿入方向と反対方向の移動を制限する制限部を有している、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のマスキング部材。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のマスキング部材のマスキング本体を中空部材の口部に挿入することによって前記口部を塞ぎ、
前記中空部材を塗料に浸け、
前記中空部材に付着した前記塗料を加熱乾燥する、中空部材の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスキング部材及び中空部材の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管状部材の口部をマスキング部材で塞いだ状態で、管状部材を塗料に浸ける塗装方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、電着塗装工程において、パイプの口部を塞ぐマスキング部材が開示されている。このマスキング部材は、電着塗装工程の焼き付き乾燥時に、パイプ内の圧力をパイプの外側に逃すため、一方向弁の機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59-73370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示のマスキング部材は、塗料の焼き付き乾燥時にパイプ内で膨張する空気の圧力をパイプの外側に逃すため、マスキング本体に弁構造が適用されている。このため、マスキング部材の構造が複雑化している。
【0006】
本発明は、中空部材の塗装工程で該中空部材の口部を塞ぐマスキング部材において、簡単な構造で、塗料の加熱乾燥時における中空部材内の圧力上昇を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様のマスキング部材は、弾性材料によって形成され、中空部材の口部に挿入されることによって前記口部を塞ぐマスキング本体と、前記マスキング本体に形成され、前記マスキング本体の外周面に開口し、前記口部を塞いだ状態の前記マスキング本体が挿入方向と反対方向に移動することによって前記外周面の開口の少なくとも一部が前記中空部材の外側に露出して前記中空部材の外側と内側をつなぐ通路部と、を有する。
【0008】
第1態様のマスキング部材では、マスキング本体で中空部材の口部を塞ぐことができる。マスキング本体で中空部材の口部を塞いだ状態で中空部材を塗料に浸けた場合、口部内への塗料の侵入がマスキング本体によって阻止される。また、中空部材に付着した塗料を加熱乾燥する場合、中空部材内の気体が熱膨張し、中空部材内の圧力が上昇する。この圧力上昇によってマスキング本体が挿入方向と反対方向へ押されて移動すると、通路部の一部であるマスキング本体の外周面に形成された開口が中空部材の外側に露出する。すなわち、中空部材の外側と内側が通路部を介してつながる。そして、中空部材内の気体が通路部を介して中空部材の外側に流出するため、例えば、マスキング本体に通路部が形成されない構成と比べて、中空部材内の圧力上昇を抑制することができる。その結果、中空部材内の圧力上昇によってマスキング本体が中空部材内から勢いよく押し出されることによるマスキング本体の中空部材からの脱落が抑制される。
ここで、第1態様のマスキング部材では、例えば、弁構造が適用されたマスキング部材と比べて、マスキング本体に該マスキング本体の外周面に開口する通路部を形成する簡単な構造で、塗料の加熱乾燥時における中空部材内の気体の熱膨張にともなう圧力上昇を抑制することができる。
【0009】
本発明の第2態様のマスキング部材は、第1態様のマスキング部材において、前記通路部は、前記マスキング本体の外周面に開口し、かつ、前記マスキング本体の挿入方向の先端面に開口している。
【0010】
第2態様のマスキング部材では、通路部がマスキング本体の外周面に開口し、かつ、マスキング本体の挿入方向の先端面に開口している。これにより、上記マスキング部材では、例えば、通路部の入口と出口がマスキング本体の外周面に形成される構成と比べて、マスキング本体が挿入方向と反対方向へ移動することによって出口となる外周面の開口が中空部材の外側に露出した場合に、通路部を介して中空部材の内側と外側を確実につなぐことができる。
【0011】
本発明の第3態様のマスキング部材は、第1態様又は第2態様のマスキング部材において、前記通路部は、前記マスキング本体の前記外周面に形成された溝である。
【0012】
第3態様のマスキング部材では、通路部がマスキング本体の外周面に形成された溝であることから、例えば、通路部がマスキング本体に形成された孔である構成と比べて、マスキング本体に対して通路部を成形しやすい。
【0013】
本発明の第4態様のマスキング部材は、第1態様~第3態様のいずれか一態様のマスキング部材において、前記マスキング本体は、前記挿入方向と反対方向へ向けて次第に外径が拡がる拡径部を有しており、前記マスキング本体が前記口部を塞いだ状態では前記拡径部の外周面が前記口部の内周面に接触する。
【0014】
第4態様のマスキング部材では、マスキング本体を中空部材の口部に挿入することによって拡径部の外周面が口部の内周面と接触する。この状態で、中空部材を塗料に浸けた場合、拡径部の外周面と口部の内周面との接触部よりも口部の内側への塗料の侵入が阻止される。一方、塗料は、中空部材における拡径部の外周面と口部の内周面との接触部まで進入可能で、該接触部まで進入することによって中空部材の外周から口部端面に亘って付着する。したがって、中空部材の塗装工程において、上記マスキング部材を用いることにより、中空部材の口部端面まで塗装することができる。言い換えると、口部端面まで塗装された中空部材を製造することができる。
【0015】
本発明の第5態様のマスキング部材は、第1態様~第3態様のいずれか一態様のマスキング部材において、前記マスキング本体は、前記挿入方向と反対方向の端部側から径方向外側へ向けて張り出す張出部を有しており、前記マスキング本体が前記口部を塞いだ状態では前記張出部の前記挿入方向の面が前記口部の端面に対向する。
【0016】
第5態様のマスキング部材では、マスキング本体が口部を塞いだ状態において、張出部の挿入方向の面が口部の端面に対向する。ここで、例えば、マスキング本体を中空部材の口部に挿入する場合、張出部の挿入方向の面が口部の端面に接するまでマスキング本体を口部内に挿入することで、マスキング本体が口部を確実に塞ぐ。すなわち、上記マスクング部材では、張出部の挿入方向の面と口部の端面との距離が口部内へのマスキング本体の挿入量の目安となるため、例えば、マスキング本体の挿入量の目安がない構成と比べて、中空部材の口部をマスキング本体で塞ぐ作業が確実かつ容易に行える。
【0017】
本発明の第6態様のマスキング部材は、第1態様~第5態様のいずれか一態様のマスキング部材において、前記中空部材における前記口部の内周面には、周方向に沿って延びる環状の凹部が形成されており、前記マスキング本体は、前記挿入方向の先端面側から径方向外側へ向けて張り出し、前記凹部に嵌ることにより前記マスキング本体の前記挿入方向と反対方向の移動を制限する制限部を有している。
【0018】
第6態様のマスキング部材では、中空部材に付着した塗料を加熱乾燥する場合に、マスキング本体が挿入方向と反対方向へ押されて移動しても、凹部にマスキング本体の制限部が嵌ることによってマスキング本体の移動が制限される。これにより、上記マスキング部材では、例えば、マスキング本体が制限部を有さない構成と比べて、中空部材内の圧力上昇によってマスキング本体が中空部材内から勢いよく押し出されることにより、マスキング本体が中空部材から脱落するのが抑制される。
【0019】
本発明の第7態様の中空部材の塗装方法は、第1態様~第6態様のいずれか一態様のマスキング部材のマスキング本体を中空部材の口部に挿入することによって前記口部を塞ぎ、前記中空部材を塗料に浸け、前記中空部材に付着した前記塗料を加熱乾燥する。
【0020】
本発明の第7態様の中空部材の塗装方法では、まず、第1態様~第6態様のいずれか一態様のマスキング部材のマスキング本体を中空部材の口部に挿入することによって中空部材の口部を塞ぐ。次に、マスキング本体で中空部材の口部を塞いだ状態で中空部材を塗料に浸ける。ここで、口部内への塗料の侵入がマスキング本体によって阻止される。次に、中空部材に付着した塗料を加熱乾燥する。この加熱乾燥時には、中空部材内の気体が熱膨張し、中空部材内の圧力が上昇する。この圧力上昇によってマスキング本体が挿入方向と反対方向へ押されて移動すると、通路部の一部であるマスキング本体の外周面に形成された開口が中空部材の外側に露出する。すなわち、中空部材の外側と内側が通路部を介してつながる。そして、中空部材内の気体が通路部を介して中空部材の外側に流出するため、例えば、マスキング本体に通路部が形成されない構成と比べて、中空部材内の圧力上昇を抑制することができる。その結果、中空部材内の圧力上昇によってマスキング本体が中空部材内から勢いよく押し出されることによるマスキング本体の中空部材からの脱落が抑制される。
ここで、第7態様の中空部材の塗装方法では、例えば、弁構造が適用されたマスキング部材を用いる場合と比べて、簡単な構造のマスキング部材で、塗料の加熱乾燥時における中空部材内の気体の熱膨張にともなう圧力上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、中空部材の塗装工程で該中空部材の口部を塞ぐマスキング部材において、簡単な構造で、塗料の加熱乾燥時における中空部材内の圧力上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るマスキング部材の正面図である。
図2図1のマスキング部材の2X-2X線に沿った断面図である。
図3図1のマスキング部材を矢印3Xの方向から見た側面図である。
図4図1のマスキング部材が用いられる中空部材の軸方向に沿った断面図である。
図5図1のマスキング部材を中空部材の口部に挿入する前の状態を示す、マスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
図6図1のマスキング部材を中空部材の両側の口部にそれぞれ挿入した状態を示す、マスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
図7図6の中空部材を塗料に浸けた状態を示す、マスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
図8図7の矢印8Xで指し示す部分の拡大図である。
図9図7の中空部材を加熱乾燥装置に搬送した状態を示す、マスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
図10図9のマスキング部材が中空部材の加熱乾燥により、挿入方向と反対方向へ移動した状態を示す、マスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係るマスキング部材を中空部材の口部に挿入する前の状態を示す、マスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
図12図11のマスキング部材を中空部材の口部に挿入した状態を示す、マスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
図13図12の矢印13Xで指し示す部分の拡大図である。
図14】本発明の他の実施形態に係るマスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
図15】本発明の他の実施形態に係るマスキング部材の軸方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明に係る一実施形態のマスキング部材及び中空部材の塗装方法について説明する。
【0024】
図1図3には、本実施形態のマスキング部材20が示されている。本実施形態のマスキング部材20は、図4に示される中空部材50の口部52を塞ぐ部材である。このマスキング部材20は、例えば、中空部材50の塗装工程において用いられる。
【0025】
まず、中空部材50について説明した後で、マスキング部材20の詳細を説明する。
【0026】
(中空部材50)
図4に示されるように、中空部材50は、中空部51と、該中空部51とつながる口部52とを有している。本実施形態の中空部材50は、例えば、直線状の管状部材(一例としてストレートパイプ)である。したがって、中空部材50の内部が中空部51に相当し、中空部材50の軸方向の端部が口部52に相当する。なお、図4では、中空部材50の中心線を符号CL2で示している。
【0027】
本実施形態では、中空部材50を直線状の管状部材としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、中空部材50は、湾曲する(一例としてL字状に折れ曲がる)管状部材でもよいし、複数に分岐(一例としてT字状に分岐)する管状部材でもよい。
【0028】
また、図4に示されるように、中空部材50の口部52には、端末加工が施されている。なお、ここでいう端末加工とは、例えば、バルジ加工、スプール加工等を指す。この端末加工により、中空部材50における口部52の内周面には、中空部材50の周方向に沿って延びる環状の凹部54が形成されている。
【0029】
また、本実施形態の中空部材50は、金属材料によって形成されている。
【0030】
(マスキング部材20)
次に、マスキング部材20について詳細に説明する。図1図3図5及び図6に示されるように、マスキング部材20は、マスキング本体22と、通路部30と、を有している。
【0031】
図1及び図2に示されるように、マスキング本体22は、マスキング部材20の本体部を構成している。このマスキング本体22は、弾性材料によって略円柱状に形成されている。このマスキング本体22を、図6に示されるように、中空部材50の口部52に挿入する、言い換えると、口部52に押し込むことにより、口部52が塞がれる。
【0032】
ここで、図2図3及び図5では、マスキング本体22の中心線を符号CL1で示し、中心線CL1に沿った方向であるマスキング本体22の軸方向を矢印ADで示している。また、図2図3及び図5では、マスキング本体22の軸方向のうち、マスキング本体22を中空部材50へ挿入する方向を矢印IDで示し、マスキング本体22の挿入方向と反対方向を矢印ODで示している。なお、図6図7図9及び図10に示されるように、マスキング本体22を中空部材50の口部52に挿入した状態では、中空部材50の中心線CL2の図示を省略している。
【0033】
マスキング本体22を構成する弾性材料としては、耐熱性に優れる弾性材料を用いることが好ましい。例えば、200℃以上の温度に耐えられる(言い換えると、200℃以上でも物性値の変化が少ない)弾性材料を用いることが好ましい。一例として、シリコンゴム等が挙げられる。
【0034】
図2図3及び図5に示されるように、マスキング本体22は、軸方向の一端面である先端面22Aと、軸方向の他端面(言い換えると、軸方向において先端面22Aに対して反対側に位置する端面)である押圧面22Bと、外周面22Cとを有している。ここで、先端面22Aはマスキング本体22の挿入方向の端面であり、押圧面22Bはマスキング本体22の挿入方向と反対方向の端面である。なお、押圧面22Bは、マスキング本体22を口部52に押し込むときに押圧する部分である。
【0035】
また、図2図3及び図5に示されるように、マスキング本体22は、挿入方向と反対方向へ向けて次第に外径が拡がる拡径部24を有している。言い換えると、マスキング本体22は、軸方向の他端面である押圧面22Bへ向けて次第に外径が拡がる拡径部24を有している。具体的には、拡径部24は、マスキング本体22の軸方向の中間部から押圧面22Bに亘って形成されている。なお、拡径部24の外周面24Aは、マスキング本体22の外周面22Cに含まれている。
【0036】
拡径部24の外径は、少なくとも外周面24Aの終端(押圧面22B側の端)において口部52の開口径よりも大きい。本実施形態では、例えば、拡径部24の外径は、外周面24Aの始端(先端面22A側の端)側で口部52の開口径よりも大きい。このため、図6及び図8に示されるように、マスキング本体22が口部52を塞いだ状態では拡径部24の外周面24Aが口部52の内周面52Aに接触する。具体的には、拡径部24の外周面24Aは、口部52の内縁部52B及び該内縁部52B周辺の内周面52Aに接触する。
【0037】
また、図1図3及び図6に示されるように、マスキング本体22は、挿入方向の先端面22A側から径方向外側へ向けて張り出す制限部26を有している。この制限部26は、略円環状に形成されている。また、制限部26の径方向外側の外端部26Aの断面形状は、径方向外側へ向けて凸となる円弧状である。なお、図2及び図3では、マスキング本体22の径方向を矢印RD方向で示している。また、外端部26Aは、口部52の凹部54に嵌る大きさである。
【0038】
図5に示されるように、制限部26の外径(最大外径)は、口部52の開口径よりも大きく、中空部材50の内径よりも大きい。このため、図6及び図8に示されるように、マスキング本体22が口部52を塞いだ状態では、制限部26の外端部26Aが中空部材50の内周面に接触する。そして、図9に示されるように、制限部26の外端部26Aが凹部54に嵌ることによりマスキング本体22の挿入方向と反対方向の移動が制限される。
【0039】
図1図3に示されるように、通路部30は、マスキング本体22に形成されている。通路部30は、マスキング本体22の先端面22Aに開口し、かつ、マスキング本体22の外周面22Cに開口している。通路部30の先端面22Aの開口を以下では符号30Aで示し、通路部30の外周面22Cの開口を以下では符号30Bで示す。また、本実施形態の通路部30は、マスキング本体22の外周面22Cに形成された溝である。具体的には、通路部30は、先端面22Aから押圧面22Bに向けてマスキング本体22の軸方向に沿って延びて途中で終端する溝である。この溝の始端が通路部30の開口30Aに相当し、溝の上部開口(言い換えると溝の底と反対側に位置する開口)が通路部30の開口30Bに相当している。
【0040】
また、図2に示されるように、通路部30は、マスキング本体22の拡径部24の始端よりも押圧面22B側まで延びている。具体的には、図7に示されるように、通路部30は、マスキング本体22で口部52を塞いだ状態で、マスキング本体22の外周面22Cと口部52の内周面52Aとの接触部分よりも先端面22A側の位置で終端している。このため、通路部30は、マスキング本体22で口部52を塞いだ状態では、口部52内に配置されて、中空部材50の外側から遮蔽されている。また、通路部30は、図10に示されるように、マスキング本体22が挿入方向と反対方向に移動することによって開口30Bが中空部材50の外側に露出する。通路部30の開口30Bが中空部材50の外側に露出すると、中空部材50の内側と外側が通路部30を介してつながる。
【0041】
次に、本実施形態の中空部材50の塗装方法について説明する。
なお、中空部材50の塗装方法としては、例えば、電着塗装、静電塗装及び浸漬塗り等が挙げられる。
【0042】
まず、中空部51と該中空部51とつながる口部52とを有する中空部材50を準備し、図6に示されるように、マスキング部材20のマスキング本体22を中空部材50の口部52に挿入することによって口部52を塞ぐ。
【0043】
次に、塗料Pが充填された槽60に中空部材50を搬送する。そして、図7に示すように、マスキング本体22で中空部材50の口部52を塞いだ状態で中空部材50を塗料に浸ける。
【0044】
次に、図9に示すように、中空部材50を槽60から加熱乾燥装置62へ搬送する。そして、加熱乾燥装置62から中空部材50へ向けて熱風を吹き出して中空部材50に付着した塗料Pを加熱乾燥する。
【0045】
塗料Pの乾燥後は、マスキング部材20を中空部材50から取り外す。これにより、中空部材50の塗装工程が終了する。
【0046】
次に、本実施形態のマスキング部材20及び中空部材50の塗装方法の作用並びに効果について説明する。
【0047】
本実施形態のマスキング部材20では、マスキング本体22で中空部材50の口部52を塞ぐことができる。図7に示されるように、マスキング本体22で中空部材50の口部52を塞いだ状態で中空部材50を塗料Pに浸けた場合、口部52内への塗料Pの侵入がマスキング本体22によって阻止される。また、中空部材50に付着した塗料Pを加熱乾燥する場合、中空部材50内の気体G(一例として空気)が熱膨張し、中空部材50内の圧力が上昇する。この圧力上昇によってマスキング本体22が挿入方向と反対方向へ押されて移動すると(図10参照)、通路部30の開口30Bが中空部材50の外側に露出する。すなわち、中空部材50の外側と内側が通路部30を介してつながる。そして、中空部材50内の気体Gが通路部30を介して中空部材50の外側に流出するため、例えば、マスキング本体22に通路部30が形成されない構成と比べて、中空部材50内の圧力上昇を抑制することができる。その結果、中空部材50内の圧力上昇によってマスキング本体22が中空部材50内から勢いよく押し出されることによるマスキング本体22の中空部材50からの脱落が抑制される。
【0048】
ここで、マスキング部材20では、例えば、弁構造が適用されたマスキング部材と比べて、マスキング本体22に該マスキング本体22の先端面22Aに開口しかつ外周面22Cに開口する通路部30を形成する簡単な構造で、塗料Pの加熱乾燥時における中空部材50内の気体Gの熱膨張にともなう圧力上昇を抑制することができる。
【0049】
また、マスキング部材20では、通路部30がマスキング本体22の外周面22Cに開口しかつマスキング本体22の先端面22Aに開口している。これにより、マスキング部材20では、例えば、通路部の入口と出口がマスキング本体の外周面に形成される構成と比べて、マスキング本体22が挿入方向と反対方向へ移動することによって気体の出口である開口30Bが中空部材50の外側に露出した場合に、通路部30を介して中空部材50の内側と外側を確実につなぐことができる。
【0050】
また、マスキング部材20では、通路部30がマスキング本体22の外周面22Cに形成された溝であることから、例えば、通路部30がマスキング本体22に形成された孔である構成と比べて、マスキング本体22に対して通路部30を成形しやすい。
【0051】
また、マスキング部材20では、マスキング本体22を中空部材50の口部52に挿入することによって拡径部24の外周面24Aが口部52の内周面52Aと接触する。この状態で、中空部材50を塗料Pに浸けた場合、拡径部24の外周面24Aと口部52の内周面52Aとの接触部よりも口部52の内側への塗料の侵入が阻止される。一方、塗料Pは、中空部材50における拡径部24の外周面24Aと口部52の内周面52Aとの接触部まで侵入可能で、該接触部まで進入することによって中空部材50の外周から口部52の端面52Cに亘って付着する。したがって、中空部材50の塗装工程において、マスキング部材20を用いることにより、中空部材50の口部52の端面52Cまで塗装することができる。言い換えると、口部52の端面52Cまで塗装された中空部材50を製造することができる。このように塗装された中空部材50には、外面に塗装の境界(塗装面と未塗装面との境界)が形成されないため、見栄えが向上する。
【0052】
さらに、マスキング部材20では、中空部材50に付着した塗料Pを加熱乾燥する場合に、図10に示されるように、マスキング本体22が挿入方向と反対方向へ押されて移動しても、制限部26の外端部26Aが凹部54に嵌ることによりマスキング本体22の挿入方向と反対方向の移動が制限される。これにより、マスキング部材20では、例えば、マスキング本体22が制限部26を有さない構成と比べて、中空部材50内の圧力上昇によってマスキング本体22が中空部材50内から勢いよく押し出されることにより、マスキング本体22が中空部材50から脱落するのが抑制される。
【0053】
また、中空部材50の塗装方法では、マスキング部材20のマスキング本体22を中空部材50の口部52に挿入することによって中空部材50の口部52を塞ぐ。このため、中空部材50を塗料Pに浸けた場合に、口部52内への塗料Pの侵入を阻止することができる。また、中空部材50に付着した塗料Pを加熱乾燥する場合、中空部材50内の気体Gが熱膨張し、中空部材50内の圧力が上昇する。この圧力上昇によってマスキング本体22が挿入方向と反対方向へ押されて移動すると、通路部30の開口30Bが中空部材50の外側に露出する。これにより、中空部材50の外側と内側が通路部30を介してつながる。そして、中空部材50内の気体Gが通路部30を介して中空部材50の外側に流出することで、例えば、マスキング本体22に通路部30が形成されない構成と比べて、中空部材50内の圧力上昇を抑制することができる。その結果、中空部材50内の圧力上昇によってマスキング本体22が中空部材50内から勢いよく押し出されることによるマスキング本体22の中空部材50からの脱落が抑制される。これにより、中空部材50の塗装ラインを停止させて、脱落したマスキング部材20を回収する手間を削減することができる。
さらに、中空部材50の塗装方法では、例えば、弁構造が適用されたマスキング部材を用いる場合と比べて、簡単な構造のマスキング部材20で、塗料Pの加熱乾燥時における中空部材50内の気体Gの熱膨張にともなう圧力上昇を抑制することができる。
【0054】
マスキング部材20では、マスキング本体22をシリコンゴムで形成した場合、中空部材50からマスキング本体22を外すことで、マスキング本体22を未塗装の中空部材50に再使用可能となる。
【0055】
また、マスキング部材20では、マスキング本体22の挿入方向と反対側の部分を拡径部24の外周面24Aと押圧面22Bとで形成している。このため、中空部材50の塗装工程で使用した後のマスキング部材20から付着した塗料を容易に剥離することができる。言い換えると、塗料Pは、マスキング本体22の平坦状の外周面24Aと平坦状の押圧面22Bにのみ付着するため、例えば、複雑な形状部分に付着する場合と比べて、剥離作業がしやすい。
【0056】
また、マスキング部材20では、マスキング本体22を中空部材50の口部52に押し込むことによって口部52を塞ぐことができる。したがって、マスキング部材20は、例えば、マスキング本体の雄ねじを中空部材の口部の雌ねじにねじ込む構成と比べて、構造が簡単かつ口部52への取付作業性がよい。
【0057】
前述の実施形態のマスキング部材20では、マスキング本体22が拡径部24を有しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図11及び図12に示されるマスキング部材40のように、マスキング本体42が第1張出部44及び第2張出部46を有していてもよい。マスキング本体42は、マスキング本体22と同様に、弾性材料を略円柱状に形成したものである。このマスキング本体42は、先端面42Aと、押圧面42Bと、外周面42Cと、を有している。また、マスキング本体42は、制限部48と、通路部49と、を有している。ここで、マスキング本体42の制限部48及び通路部49の構成は、マスキング本体22の制限部26及び通路部30の構成と同じため、説明を省略する。また、図11及び図12に示されるように、第1張出部44は、マスキング本体42の挿入方向と反対方向の端部側から径方向外側へ向けて張り出している。具体的には、第1張出部44は、マスキング本体42の軸方向の押圧面42B側の端部から径方向外側へ向けて円環状に張り出している。また、第1張出部44の外径は、中空部材50の口部52の開口径よりも大きい。そのため、マスキング本体42が口部52を塞いだ状態では第1張出部44の挿入方向の面44A(言い換えると、第1張出部44の先端面42A側の面)が口部52の端面52Cに対向する(図12及び図13参照)。また、第2張出部46は、マスキング本体42における第1張出部44と通路部49との間の部分から径方向外側へ向けて円環状に張り出している。第2張出部46の外径は、中空部材50の内径よりも大きい。ここで、マスキング部材40では、マスキング本体42に通路部49が形成されているため、前述の実施形態のマスキング部材20と同様の作用並びに効果を奏することができる。ただし、拡径部24によって得られる作用並びに効果を除く。また、マスキング部材40では、マスキング本体42を口部52に挿入する場合、第1張出部44の面44Aが口部52の端面52Cに接するまでマスキング本体42を口部52内に挿入することで、マスキング本体42が口部52を確実に塞ぐ。すなわち、マスキング部材40では、第1張出部44の面44Aと口部52の端面52Cとの距離が口部52内へのマスキング本体42の挿入量の目安となるため、例えば、マスキング本体42の挿入量の目安がない構成と比べて、口部52をマスキング本体42で塞ぐ作業が確実かつ容易に行える。
【0058】
前述の実施形態のマスキング部材20では、通路部30をマスキング本体22の外周面22Cに形成された溝としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図14に示されるマスキング部材70のように、通路部72をマスキング本体22に形成した孔としてもよい。この通路部72は、マスキング本体22の先端面22Aから外周面22Cに向けて延びて開口している。一例として、通路部72は、マスキング本体22の先端面22Aから押圧面22Bに向けて軸方向に沿って延び、途中で曲がって径方向外側へ延びて外周面22Cに開口している。ここで、マスキング部材70では、マスキング本体22に通路部72が形成されているため、前述の実施形態のマスキング部材20と同様の作用並びに効果を奏することができる。ただし、通路部30が溝であることによって得られる作用並びに効果を除く。なお、通路部を孔とする構成については、マスキング部材40に適用してもよい。
【0059】
前述の実施形態のマスキング部材20では、図1に示されるように、マスキング本体22に通路部30を一つ形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、マスキング本体22に通路部30を複数形成してもよい。一例として、図15では、マスキング本体22に通路部30を径方向で互いに逆の位置に一対形成している。なお、マスキング本体に通路部を複数形成する構成については、マスキング部材40に適用してもよい。
【0060】
前述の実施形態のマスキング部材20では、図6に示されるように、中空部材50の端末加工された口部52にマスキング本体22を挿入しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、中空部材の端末加工されていない口部にマスキング本体22を挿入してもよい。なお、中空部材の端末加工されていない口部にマスキング本体を挿入する構成については、マスキング部材40に適用してもよい。
【0061】
前述の実施形態のマスキング部材20では、通路部30をマスキング本体22の先端面22Aに開口し、かつ、外周面22Cに開口する溝としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、通路部30を外周面22Cに開口し、マスキング本体22の先端面22Aに開口しない溝状の凹部としてもよい。この構成においても前述の実施形態のマスキング部材20と同様に、マスキング本体22が挿入方向と反対方向へ押されて移動すると、通路部の開口の一部が中空部材50の外側に露出し、通路部30を介して中空部材50の外側と内側がつながる。したがって、通路部を溝状の凹部とした場合でも、前述の実施形態のマスキング部材20と同様に、簡単な構造で、塗料Pの加熱乾燥時における中空部材50内の気体Gの熱膨張にともなう圧力上昇を抑制することができる。
【0062】
前述の実施形態のマスキング部材20では、マスキング本体22が制限部26を有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。マスキング本体22が制限部26を有していなくてもよい。なお、マスキング本体が制限部を有さない構成については、マスキング部材40に適用してもよい。
【0063】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
20 マスキング部材
22 マスキング本体
22A 先端面
22C 外周面
24 拡径部
24A 外周面
26 制限部
30 通路部
30B 開口(外周面の開口の一例)
40 マスキング部材
42 マスキング本体
42A 先端面
42C 外周面
44 第1張出部(張出部の一例)
44A 面(挿入方向の面の一例)
48 制限部
49 通路部
50 中空部材
52 口部
52A 内周面
52C 端面
54 凹部
70 マスキング部材
72 通路部
ID マスキング本体の挿入方向
OD マスキング本体の挿入方向と反対方向
P 塗料
RD マスキング本体の径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15