(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171399
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】包装品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 53/00 20060101AFI20221104BHJP
B65B 53/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B65B53/00 B
B65B53/00 J
B65B53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078011
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】柄本 修平
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガスバリア性を有する熱収縮性フィルムでラップ包装をした場合でもフィルムに皺が発生することが抑制される、包装品の製造方法を提供する。
【解決手段】縦シール工程と、横シール工程と、熱収縮工程を備えた製造方法で、熱収縮性フィルム2は、ガスバリア層を備え、フィルムのMD方向の引張弾性率をEmとし、TD方向の引張弾性率をEtとすると、Em及びEtは、それぞれ、650MPa以下であり、かつEm/Et≧1.1であり、フィルムを100℃で30分加熱したときのMD方向の熱収縮率をSmとし、TD方向の熱収縮率をStとすると、Sm及びStは、それぞれ25%以上であり、かつSm/St≧1.1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装品の製造方法であって、
縦シール工程と、横シール工程と、熱収縮工程を備え、
前記縦シール工程では、フィルムの幅方向の両端を重ね合わせて形成した重ね合わせ部において、前記フィルムの対向する部位を溶着して縦シール部を形成することによって筒体を形成し、
前記横シール工程では、前記筒体内に被包装品に配置した状態で、前記被包装品の前後のそれぞれに隣接した位置において前記筒体に横シール部を形成することによって前記被包装品が前記フィルム内に密閉された包装体を形成し、
前記熱収縮工程では、前記包装体を取り囲む前記フィルムを収縮させ、
前記フィルムは、ガスバリア層を備え、
前記フィルムのMD方向の引張弾性率をEmとし、TD方向の引張弾性率をEtとすると、Em及びEtは、それぞれ、650MPa以下であり、かつEm/Et≧1.1であり、
前記フィルムを100℃で30分加熱したときのMD方向の熱収縮率をSmとし、TD方向の熱収縮率をStとすると、Sm及びStは、それぞれ25%以上であり、かつSm/St≧1.1である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被包装品に対してラップ包装を施して得られる包装品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、底の深いトレーに被包装物を入れ、被包装物と共に脱酸素剤をトレーに投入し、該トレーの開口部分を、ガスバリア性を有するプラスチックフィルムで覆うことによって、包装品を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスバリア性を有する熱収縮性フィルムは、ガスバリア性を有しない一般の熱収縮性フィルムに比べて柔軟性が低く、ラップ包装時にフィルムに皺が形成されやすい。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性を有する熱収縮性フィルムでラップ包装をした場合でもフィルムに皺が発生することが抑制される、包装品の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、包装品の製造方法であって、縦シール工程と、横シール工程と、熱収縮工程を備え、前記縦シール工程では、フィルムの幅方向の両端を重ね合わせて形成した重ね合わせ部において、前記フィルムの対向する部位を溶着して縦シール部を形成することによって筒体を形成し、前記横シール工程では、前記筒体内に被包装品に配置した状態で、前記被包装品の前後のそれぞれに隣接した位置において前記筒体に横シール部を形成することによって前記被包装品が前記フィルム内に密閉された包装体を形成し、前記熱収縮工程では、前記包装体を取り囲む前記フィルムを収縮させ、前記フィルムは、ガスバリア層を備え、前記フィルムのMD方向の引張弾性率をEmとし、TD方向の引張弾性率をEtとすると、Em及びEtは、それぞれ、650MPa以下であり、かつEm/Et≧1.1であり、前記フィルムを100℃で30分加熱したときのMD方向の熱収縮率をSmとし、TD方向の熱収縮率をStとすると、Sm及びStは、それぞれ25%以上であり、かつSm/St≧1.1である、方法が提供される。
【0007】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、引張弾性率及び熱収縮率が上記条件を充足する場合には、ガスバリア性を有する熱収縮性フィルムでラップ包装をした場合でもフィルムに皺が発生しにくいことを見出し、本発明の完成に到った。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明一実施形態の包装品1の製造工程を示す斜視図である。
【
図4】横シール部8が包装品1の側面1aから突出している状態を示す、
図2Bに対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.包装品1の製造方法
本発明の一実施形態の包装品1は、の製造方法は、縦シール工程と、横シール工程と、熱収縮工程を備える。以下、
図1~
図2を用いて、各工程について詳細に説明する。各工程は、横ピロー方式の自動包装機を用いて実行することができる。
【0011】
<縦シール工程>
縦シール工程では、フィルム2の幅方向の両端を重ね合わせて形成した重ね合わせ部4において、フィルム2の対向する部位を溶着して縦シール部5を形成することによって筒体6を形成する。
【0012】
フィルム2は、ガスバリア性を有する熱収縮性フィルムであり、その詳細は、「2.フィルム2の詳細」において説明する。フィルム2は、長尺状のフィルムが巻かれたフィルムロール7から巻き戻すことによって供給される。フィルムロール7から巻き戻されたフィルム2の進行方向がMD方向であり、フィルムロール7の幅方向がフィルム2のTD方向である。別の表現では、MD方向は、縦シール部5の長手方向であり、TD方向は、後述する横シール部8の長手方向である。
【0013】
縦シール部5は、例えば、互いに逆方向に回転する一対のシールローラ10で重ね合わせ部4を挟着してフィルム2の対向する部位を溶着することによってフィルム2を下流側に送りながら連続的に形成することができる。
【0014】
<横シール工程>
横シール工程では、筒体6内に被包装品3に配置した状態で、被包装品3の前後のそれぞれに隣接した位置において筒体6に横シール部8を形成することによって被包装品3がフィルム2内に密閉された包装体9を形成する。
【0015】
被包装品3は、一例では、食品などの内容物を盛り付けた容器である。被包装品3は、筒体6の形成後に筒体6内に挿入してもよく、被包装品3を取り囲むように筒体6を形成してもよい。被包装品3は、被包装品3の長手方向が縦シール部5の長手方向に平行になるように配置することが好ましい。
【0016】
一例では、被包装品3の平面形状は、角が丸められていてもよい長方形状である。被包装品3の長辺方向の長さは、例えば120~250mmであり、具体的には例えば、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。被包装品3の短辺方向の長さは、例えば80~200mmであり、具体的には例えば、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。角部の曲率半径が最小の部位の曲率半径は、例えば5~50mmであり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。被包装品3の高さは、例えば10~50mmであり、具体的には例えば、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
横シール部8は、例えば、一対のシールバー11で筒体6を挟着してフィルム2の対向する部位を溶着することによって形成することができる。横シール部8を形成する際に又は横シール部8を形成した後に、横シール部8を分割することによって、下流側の包装体9の上流側横シール部8aと、上流側の筒体6の下流側横シール部8bを形成することができる。横シール部8の分割は、シールバー11に内蔵されたカッターを用いて行ってもよく、シールバーよりも下流側に配置されたカッターを用いて行ってもよい。
【0018】
<熱収縮工程>
熱収縮工程では、包装体9を取り囲むフィルム2を熱収縮させる。この工程は、熱収縮トンネルを通るように包装体9を移動させることによって行うことができる。
【0019】
フィルム2は、熱収縮性であるので、包装体9を熱処理してフィルム2を熱収縮させることによって、フィルム2が被包装品3に密着した包装品1が得られる。熱処理は、例えば、80~120℃で行うことができる。熱処理の時間は、例えば、5~30秒である。
【0020】
2.フィルム2の詳細
図3に示すように、フィルム2は、ガスバリア層2bを備える熱収縮性フィルムであればよく、被包装品3に対向する内面側から順に、内側層2aと、ガスバリア層2bと、外側層2cを備えることが好ましい。内側層2a又は外側層2cとガスバリア層2bの接着性が良好でない場合は、内側層2a又は外側層2cとガスバリア層2bの間に接着層2dを設けることが好ましい。
【0021】
内側層2aは、ヒートシールされる層であり、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン)などのヒートシール性に優れた樹脂で形成することが好ましい。外側層2cは、ガスバリア層2bが吸湿して性能低下することを抑制するための層であり、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン)などの水分バリア性に優れた樹脂で形成することができる。
【0022】
接着層2dは、接着性樹脂で構成される。接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。接着層2dを設けることによって、接着層2dに隣接する層間の接着性が向上する。
【0023】
ガスバリア層2bは、ガスバリア性樹脂で構成される。本明細書において、ガスバリア性樹脂は、厚さ20μmのフィルムにした状態で、20℃・65%RHの環境下での酸素透過度が50cc/(m2・24時間・atm)未満であるものを意味する。上記酸素透過度は、例えば0~49cc/(m2・24時間・atm)であり、具体的には例えば、0.01、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、49cc/(m2・24時間・atm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。
【0024】
ガスバリア性樹脂は、EVOHや、ポリアミドのようなガスバリア性が高い樹脂のみで構成されていてもよく、上記樹脂と別の樹脂との混合樹脂であってもよい。別の樹脂としては、接着性樹脂が挙げられる。ガスバリア層に接着性樹脂を配合することによって、ガスバリア層とこれに隣接する層の間の接着層2dを省略することができ、フィルム2を構成する層数をへらすことができる。
【0025】
フィルム2の厚さは、例えば、5~60μmであり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
フィルム2は、フィルム2のMD方向の引張弾性率をEmとし、TD方向の引張弾性率をEtとすると、Em及びEtは、それぞれ、650MPa以下であり、かつEm/Et≧1.1であり、フィルムを100℃で30分加熱したときのMD方向の熱収縮率 をSmとし、TD方向の熱収縮率をStとすると、Sm及びStは、それぞれ25%以上であり、かつSm/St≧1.1である。
【0027】
後述の実施例で示すように、引張弾性率及び熱収縮率が上記条件を充足する場合には、ガスバリア性を有する熱収縮性フィルムでラップ包装をした場合でもフィルムに皺が発生しにくいことが分かった。
【0028】
また、引張弾性率及び熱収縮率が上記条件を充足しない場合には、横シール部8が
図4のように包装品1の側面1aから突出した状態になりやすいが、引張弾性率及び熱収縮率が上記条件を充足する場合、
図2Bに示すように、横シール部8が包装品1の側面1aに沿って折り畳まれた状態になりやすい。
図2Bの状態は、
図4の状態に比べて、見栄えがよく、且つ輸送時等に横シール部8に衝撃が加わりにくいので、横シール部8に衝撃が加わることに伴うピンホールの発生が抑制される。
【0029】
本明細書において、引張弾性率は、ASTM-D-882に準拠して23℃、50%RHの雰囲気中で測定することができ、熱収縮率は、ASTM-D2732に準拠して測定することができる。
【0030】
Em及びEtは、それぞれ、例えば250~650MPaであり、具体的には例えば、250、300、350、400、450、500、550、600、650MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Em/Etは、例えば、1.1~2.0であり、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
Sm及びStは、それぞれ、例えば、25~40%であり、具体的には例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Sm/Stは、1.1~2.0であり、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
フィルム2の熱収縮率は、主に両表面層と中間層の厚み構成と延伸倍率や、インフレーションによってフィルム2を形成する際のブローアップ比(バブル直径/ダイ直径)及び延伸温度や冷却条件などの温度条件を変化させることにより所定の範囲に調整することができる。例えば、熱収縮率が所望の値よりも小さい場合には、より低温での熱収縮歪を大きくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を上げたり、外面冷却における冷却ブロアー量のUPや内面冷却を併用するなどの冷却効率を適宜調整すればよい。逆に、熱収縮率が所望の値よりも大きい場合には、より低温での熱収縮歪を小さくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を下げたり、外面冷却における冷却ブロアー量のDOWNや内面冷却を弱くするなどの冷却効率を適宜調整すればよい。フィルム2の引張弾性率も同様に、両表面層と中間層の厚み構成と延伸倍率などを変化させることによって調整することが可能である。
【実施例0033】
1.実施例1
アンチブロッキング剤を添加していないAPET製の非発泡樹脂シート(厚さ0.35mm)を真空成形することによって容器(170mm×109mm×17mm)を製造した。
【0034】
次に、横ピロー方式の自動包装機を用いて、表1に示す物性を有するガスバリア性熱収縮フィルム(EVOHのガスバリア層が接着層を介してポリエチレン層で挟まれた構成)を筒状に成形し、該筒状内に充填用のガスを吹き付けながら、内容物を盛り付けた容器を挿入させ、フィルムの幅方向の両端を重ね合わせてヒートシールすることによって縦シール部を形成すると共に、余分の充填用ガスを排出させながら容器の周囲にできるだけ空間を生じさせないように容器の前後をヒートシールすることによって横シール部を形成してガス充填密封包被体を得た。得られた包被体を熱収縮トンネル内に導き、フィルムを熱収縮させて、実施例1の包装品を得た。
【0035】
2.実施例2及び比較例1~2
表1に示す物性を有するフィルムを用いた点以外は、実施例1と同様の方法で包装品を得た。
【0036】
3.評価
実施例1~2と比較例1~2の包装品を比較したところ、実施例1~2の方がフィルムに皺が少なかった。また、比較例1では、横シール部8が包装品1の側面1aから突出していたが、実施例1~2では、横シール部8が包装品1の側面1aから突出していなかった。
【0037】