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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171416
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】車両用シートヒータ
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20221104BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20221104BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20221104BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 B
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078035
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】高月 涼太
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JF02
3B084JF04
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】骨盤、仙骨の近傍部分を過剰に温めることを抑制できる車両用シートヒータを得る。
【解決手段】車両用シートヒータ10では、シートクッションヒータ50及びバックレストヒータ40の双方が作動される際、第13のヒータ部48の発熱体の温度がバックレストヒータ40のみ作動される際よりも下げられる。これによって、仙骨、骨盤を温めすぎることがない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗員が着座するシートクッションの少なくともシート後部まで設けられ、発熱されることで前記シートクッションに着座した前記車両乗員の少なくとも骨盤を含む領域が温められるシートクッションヒータと、
前記シートクッションのシート後部に立設されたシートバックの少なくともシート下部まで設けられ、発熱されることで前記シートクッションに着座した前記車両乗員の少なくとも仙骨を含む領域が温められるバックレストヒータと、
を有し、
前記シートクッションヒータのシート後部側の部分及び前記バックレストヒータのシート下部側の部分の双方が作動された場合には、少なくとも一方の温度が前記シートクッションヒータのシート後部側の部分及び前記バックレストヒータのシート下部側の部分の一方が作動された場合よりも低くされた車両用シートヒータ。
【請求項2】
前記シートクッションヒータのシート後部側の部分及び前記バックレストヒータのシート下部側の部分の双方が作動された場合には、前記バックレストヒータのシート下部側の部分の温度が前記シートクッションヒータのシート後部側の部分及び前記バックレストヒータのシート下部側の部分の一方が作動された場合よりも低くされた請求項1に記載の車両用シートヒータ。
【請求項3】
前記バックレストヒータの最下部に対応する部分よりもシート上側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分が温められ、
前記バックレストヒータにおいて前記車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分よりもシート上側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも心臓及び肺に対応する部分が温められ、
前記バックレストヒータにおいて前記車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分を温める部分よりもシート下側の部分で且つ前記バックレストヒータの最下部の領域よりもシート上側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも腰部を含む領域が温められる請求項1又は請求項2に記載の車両用シートヒータ。
【請求項4】
前記シートクッションヒータの最後部の部分よりもシート前側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも膝裏を含む部分が温められ、
前記シートクッションヒータにおいて前記車両乗員の少なくとも膝裏を含む部分を温める部分よりもシート後側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも臀部直下及び臀部から大腿部の少なくとも一方を含む部分が温められる請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用シートヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートバック及びシートクッションの各々にヒータ部が設けられる車両用シートヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1、2に開示された車両用シートヒータでは、車両のシートバック又はシートクッションにそれぞれヒータ部がそれぞれ設けられている。シートバックに設けられたヒータ部は、シートバックの高さ方向に所定の順番に並んでいる。シートクッションに設けられたヒータ部は、シートクッションのシート後側からシート前側へ並んでいる。車両のシートバック又はシートクッションに設けられた各ヒータ部毎に適宜に温度調節されることで、医学的ロジックに基づいて車両乗員の身体を温められる。
【0003】
しかしながら、シートバックとシートクッションとの双方にヒータ部を設けた場合には、過剰に骨盤、仙骨の近傍が温められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-283932号公報
【特許文献2】特開2018-193057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、骨盤、仙骨の近傍部分を過剰に温めることを抑制できる車両用シートヒータを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用シートヒータは、車両乗員が着座するシートクッションの少なくともシート後部まで設けられ、発熱されることで前記シートクッションに着座した前記車両乗員の少なくとも骨盤を含む領域が温められるシートクッションヒータと、前記シートクッションのシート後部に立設されたシートバックの少なくともシート下部まで設けられ、発熱されることで前記シートクッションに着座した前記車両乗員の少なくとも仙骨を含む領域が温められるバックレストヒータと、を有し、前記シートクッションヒータのシート後部側の部分及び前記バックレストヒータのシート下部側の部分の双方が作動された場合には、少なくとも一方の温度が前記シートクッションヒータのシート後部側の部分及び前記バックレストヒータのシート下部側の部分の一方が作動された場合よりも低くされている。
【0007】
請求項1に記載の車両用シートヒータは、シートクッションヒータと、バックレストヒータと、を備えている。シートクッションヒータは、車両乗員が着座するシートクッションの少なくともシート後部まで設けられる。シートクッションヒータは、発熱されることでシートクッションに着座した車両乗員の少なくとも骨盤を含む領域が温められる。
【0008】
一方、バックレストヒータは、シートクッションのシート後部に立設されたシートバックの少なくともシート下部まで設けられる。バックレストヒータは、発熱されることでシートクッションに着座した車両乗員の少なくとも仙骨を含む領域が温められる。
【0009】
ところで、本車両用シートヒータは、シートクッションヒータのシート後部側の部分及びバックレストヒータのシート下部側の部分の双方が作動されると、少なくとも一方の温度がシートクッションヒータのシート後部側の部分及びバックレストヒータのシート下部側の部分の一方が作動された場合よりも低くなる。このため、車両乗員が熱く感じることを抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートヒータは、請求項1に記載の車両用シートヒータにおいて、前記シートクッションヒータのシート後部側の部分及び前記バックレストヒータのシート下部側の部分の双方が作動された場合には、前記バックレストヒータのシート下部側の部分の温度が前記シートクッションヒータのシート後部側の部分及び前記バックレストヒータのシート下部側の部分の一方が作動された場合よりも低くされている。
【0011】
請求項2に記載の車両用シートヒータは、シートクッションヒータのシート後部側の部分及びバックレストヒータのシート下部側の部分の双方が作動されると、バックレストヒータのシート下部側の部分の温度がシートクッションヒータのシート後部側の部分及びバックレストヒータのシート下部側の部分の一方が作動された場合よりも低くされる。このため、車両乗員が熱く感じることを抑制できる。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートヒータは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートヒータにおいて、前記バックレストヒータの最下部に対応する部分よりもシート上側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分が温められ、前記バックレストヒータにおいて前記車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分よりもシート上側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも心臓及び肺に対応する部分が温められ、前記バックレストヒータにおいて前記車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分を温める部分よりもシート下側の部分で且つ前記バックレストヒータの最下部の領域よりもシート上側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも腰部を含む領域が温められる。
【0013】
請求項3に記載の車両用シートヒータは、バックレストヒータの最下部よりもシート上側の部分は、作動されることによって車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分が温められる。このバックレストヒータにおいて車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分を温める部分よりもシート上側の部分は、作動されることによって車両乗員の少なくとも心臓及び肺を含む部分が温められる。これに対して、バックレストヒータにおいて車両乗員の少なくとも腎臓に対応する部分を温める部分よりもシート下側の部分で且つバックレストヒータの最下部の領域よりもシート上側の部分は、作動されることによって車両乗員の少なくとも腰部が温められる。このため、車両乗員の上半身を各部位枚に温めることができる。
【0014】
請求項4に記載の車両用シートヒータは、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用シートヒータにおいて、前記シートクッションヒータの最後部の部分よりもシート前側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも膝裏を含む部分が温められ、前記シートクッションヒータにおいて前記車両乗員の少なくとも膝裏を含む部分を温める部分よりもシート後側の部分は、作動されることによって前記車両乗員の少なくとも臀部直下及び臀部から大腿部の少なくとも一方を含む部分が温められる。
【0015】
請求項4に記載の車両用シートヒータは、シートクッションヒータの最後部よりもシート前側の部分は、作動されることによって車両乗員の少なくとも膝裏が含む部分が温められる。シートクッションヒータにおいて車両乗員の少なくとも膝裏を含む部分を温める部分よりもシート後側の部分は、作動されることによって車両乗員の少なくとも臀部直下及び臀部から大腿部の少なくとも一方を含む部分が温められる。このため、車両乗員の仙骨から膝裏までを各部位枚に温めることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、請求項1に記載の車両用シートヒータでは、シートクッションヒータのシート後部側の部分及びバックレストヒータのシート下部側の部分の双方が作動されると、少なくとも一方の温度がシートクッションヒータのシート後部側の部分及びバックレストヒータのシート下部側の部分の一方が作動された場合よりも低くなる。このため、車両乗員が熱く感じること、特に骨盤、仙骨の近傍部分を過剰に温めることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る車両用シートの側面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る車両用シートの斜視図である。
図3】経過時間に対するインピーダンスの変化を示すグラフで、黒丸が従来品を示し、白丸が開発品(本発明の一実施の形態に係る車両用シート)を示す。
図4】経過時間に対する感応評価(温熱快適性)の評価結果を示すグラフで、点線が従来品を示し、実線が開発品(本発明の一実施の形態に係る車両用シート)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、車両用シートヒータ10が適用されたシート11は、シート本体12を備えており、シート本体12は、シートクッション14、シートバック16、ヘッドレスト18を備えている。
【0019】
シートクッション14は、クッションフレーム20を備えている。クッションフレーム20は、シートクッション14の骨格を構成している。クッションフレーム20は、一対のクッションサイドフレーム(図示省略)を備えている。クッションサイドフレームの各々の長手方向は、シート前後方向(図1の矢印FR方向及びその反対方向)とされている。一対のクッションサイドフレームは、シートクッション14のシート左右方向両側でシート左右方向に互いに対向して配置される。
【0020】
一対のクッションサイドフレームのシート前側には、第1連結フレーム22が設けられている。これに対して、一対のクッションサイドフレームのシート後側には、第2連結フレーム24が設けられている。第1連結フレーム22及び第2連結フレーム24の長手方向は、シート左右方向とされている。第1連結フレーム22及び第2連結フレーム24は、シート前後方向に互いに対向配置される。第1連結フレーム22及び第2連結フレーム24は、シート左側のクッションサイドフレームとシート右側のクッションサイドフレームとを連結している。
【0021】
クッションフレーム20には、シートクッションパッド26が設けられている。シートクッションパッド26は、例えば、ポリウレタンフォーム(発泡ポリウレタン)等の弾性を有する合成樹脂材等によって厚肉の板状に形成されており、シートクッションパッド26の厚さ方向は、シート上下方向(図1の矢印UP方向及びその反対方向)とされている。シートクッションパッド26のシート下側面には、第1凹部28が形成されている。第1凹部28は、シート下側へ開口されており、第1凹部28の内側には、クッションフレーム20が入っている。
【0022】
シートクッションパッド26には、表皮(図示省略)が設けられている。表皮は、皮、合成皮革、布等の可撓性を有するシート(sheet)部材によって形成されており、シートクッションパッド26のシート前側面、シート前後方向を軸方向とする軸周り方向のシート外周面等は、表皮によって覆われている。
【0023】
シートクッション14は、シート11の座面部分を構成しており、車両乗員S(図1参照)は、シートクッション14のシート上側(シート表側)に着座する。
【0024】
シートクッション14のシート後側には、シートバック16が立設されている。シートバック16は、シートバックフレーム29を備えている。シートバックフレーム29は、シートバック16の骨格を構成している。シートバックフレーム29は、一対のバックサイドフレーム(図示省略)を備えている。バックサイドフレームの各々の長手方向は、シートクッション14からのシートバック16が立設方向とされている。一対のバックサイドフレームは、シートバック16のシート左右方向両側でシート左右方向に互いに対向して配置される。
【0025】
一対のバックサイドフレームにおけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側には、第3連結フレーム30が設けられている。第3連結フレーム30の長手方向は、シート左右方向とされており、第3連結フレーム30は、シート左側のバックサイドフレームとシート右側のバックサイドフレームとを連結している。
【0026】
シートバックフレーム29には、シートバックパッド32が設けられている。シートバックパッド32は、例えば、ポリウレタンフォーム(発泡ポリウレタン)等の弾性を有する合成樹脂材等によって厚肉の板状に形成されている。シートバックパッド32の厚さ方向は、シートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向側とされている。シートバックパッド32の背面には、第2凹部34が形成されている。第2凹部34は、シート背面側へ開口されており、第2凹部34の内側には、シートバックフレーム29が入っている。
【0027】
シートバックパッド32には、表皮(図示省略)が設けられている。表皮は、皮、合成皮革、布等の可撓性を有するシート(sheet)部材によって形成されており、シートバックパッド32のシート前側面、シート前後方向を軸方向とする軸周り方向のシート外周面等は、表皮によって覆われている。シートバック16は、シートクッション14に着座した車両乗員S(図1参照)の背もたれとなる。
【0028】
シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側には、ヘッドレスト18が設けられており、シートクッション14に着座した車両乗員Sの頭部をシート後側から支えることができる。
【0029】
一方、シートバック16のシートバックパッド32のシート前側には、バックレストヒータ40が設けられている。バックレストヒータ40は、第11のヒータ部42、第12のヒータ部44、第13のヒータ部46、第14のヒータ部48を備えている。これらの第11のヒータ部42から第14のヒータ部48は、矩形のシート(sheet)状とされており、可撓性を有している。第11のヒータ部42から第14のヒータ部48の各々には、発熱体(図示省略)が設けられている。発熱体は、通電されることで発熱される。各発熱体は、電気的に制御装置に接続されていると共に、電気的に車両に搭載されたバッテリ(何れも図示省略)に接続されている。第11のヒータ部42から第14のヒータ部48の各々は、制御装置によって制御された電流が流れて発熱される。
【0030】
シートクッション14からのシートバック16の立設方向側から第11のヒータ部42、第12のヒータ部44、第14のヒータ部48、第13のヒータ部46と並んでいる。シートクッション14からのシートバック16の立設方向最上位の第11のヒータ部42は、第12のヒータ部44、第14のヒータ部48、第13のヒータ部46よりも低い温度である摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される。また、第11のヒータ部42は、バックレストヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から42%から52%の範囲(本実施の形態では47%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの心臓及び肺に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0031】
第11のヒータ部42の下側で第14のヒータ部48の上側の第12のヒータ部44は、第11のヒータ部42の発熱温度よりも高い温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、第12のヒータ部44は、バックレストヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から21%から31%の範囲(本実施の形態では26%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの腎臓に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0032】
シートクッション14からのシートバック16の立設方向最下位の第13のヒータ部46は、第12のヒータ部44の発熱温度と同程度以上の温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、第13のヒータ部46は、バックレストヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から10%から20%の範囲(本実施の形態では15%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの骨盤に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0033】
第12のヒータ部44の下側で第13のヒータ部46の上側の第14のヒータ部48は、最も発熱温度よりも高い温度である摂氏40度から摂氏42度、好ましくは摂氏41度から摂氏42度(本実施の形態では、摂氏41度)で発熱される。また、第14のヒータ部48は、バックレストヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から7%から17%の範囲(本実施の形態では12%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの腰部に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0034】
これに対して、シートクッション14のシートクッションパッド26には、シートクッションヒータ50が設けられている。シートクッションヒータ50は、第21のヒータ部52、第22のヒータ部54、第23のヒータ部56、第24のヒータ部58を備えている。これらの第21のヒータ部52から第24のヒータ部58は、矩形のシート(sheet)状とされており、可撓性を有している。第21のヒータ部52から第24のヒータ部58の各々には、発熱体(図示省略)が設けられている。発熱体は、通電されることで発熱される。各発熱体は、電気的に制御装置に接続されていると共に、電気的に車両に搭載されたバッテリ(何れも図示省略)に接続されている。第21のヒータ部52から第24のヒータ部58の各々は、制御装置によって制御された電流が流れて発熱される。
【0035】
シートクッション14のシート前側から第21のヒータ部52、第22のヒータ部54、第23のヒータ部56、第24のヒータ部58と並んでいる。シートクッション14のシート最前部の第21のヒータ部52は、第22のヒータ部54、第23のヒータ部56、第24のヒータ部58よりも高い温度である摂氏40度から摂氏42度、好ましくは摂氏41度から摂氏42度(本実施の形態では、摂氏41度)で発熱される。また、第21のヒータ部52は、シートクッションヒータ50のうち、シートクッション14の最前部から27%から37%の範囲(本実施の形態では32%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの膝裏に対してシートクッション14におけるシート前後方向及びシート左右方向の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0036】
第21のヒータ部52のシート後側の第22のヒータ部54は、第21のヒータ部52の発熱温度よりも低温である摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される。また、第22のヒータ部54は、シートクッションヒータ50のうち、シートクッション14における第21のヒータ部52の後端部から27%から37%の範囲(本実施の形態では32%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの大腿部から臀部に対してシートクッション14におけるシート前後方向及びシート左右方向の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0037】
第22のヒータ部54のシート後側の第23のヒータ部56は、第21のヒータ部52の発熱温度よりも低温である摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される。また、第23のヒータ部56は、シートクッションヒータ50のうち、シートクッション14における第22のヒータ部54の後端部から17%から27%の範囲(本実施の形態では22%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの臀部に対してシートクッション14におけるシート前後方向及びシート左右方向の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0038】
第23のヒータ部56のシート後側の第24のヒータ部58は、第22のヒータ部54及び第23のヒータ部56の発熱温度よりも高温で第21のヒータ部52の発熱温度よりも低温とされ、摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、第24のヒータ部58は、シートクッションヒータ50のうち、シートクッション14における第23のヒータ部56の後端部から9%から19%の範囲(本実施の形態では14%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの臀部に対してシートクッション14におけるシート前後方向及びシート左右方向の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0039】
ここで、バックレストヒータ40の第13のヒータ部46は、シートクッションヒータ50及びバックレストヒータ40の双方がON状態になった場合には発熱温度が上がる。
【0040】
<本実施の形態の作用、効果>
本実施の形態に係るシート11では、シートクッション14に着座した車両乗員Sは、シートバック16に背中を凭れ掛ける。ここで、シート11のシートバック16にはバックレストヒータ40が設けられている。したがって、シートクッションヒータ50の制御装置がOFF状態で、バックレストヒータ40の制御装置がON状態になると、バックレストヒータ40が通電される。この状態では、第11のヒータ部42から第14のヒータ部48の各々には、バックレストヒータ40の制御装置によって制御された電流が流れて発熱される。これにより、車両乗員Sの身体は、背中側から温められる。
【0041】
ここで、シート11の第11のヒータ部42の発熱体の発熱温度は、他の第12のヒータ部44、第14のヒータ部48、第13のヒータ部46よりも低い温度である摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される。また、第11のヒータ部42は、車両乗員Sの心臓及び肺に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。心臓は、比較的低温で温めると、むくみ改善ホルモン(ナトリウム利尿ペプチド)が分泌される。また、肺が暖められると、肺胞が拡張される。これによって、血管への酸素の供給能力が向上される。以上のことから、車両乗員Sのむくみが効果的に抑制される。
【0042】
また、第12のヒータ部44の発熱体は、第11のヒータ部42の発熱温度よりも高い温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、第12のヒータ部44は、車両乗員Sの腎臓に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。したがって、第12のヒータ部44によって車両乗員Sの腎臓が温められると、腎臓でむくみの原因となる水分と疲労物質とが効果的に除去される。これによって、車両乗員Sのむくみが効果的に抑制される。
【0043】
さらに、第14のヒータ部48の発熱体は、第11のヒータ部42、第12のヒータ部44、第13のヒータ部46の各発熱体に比べて最も発熱温度よりも高い温度である摂氏40度から摂氏42度、好ましくは摂氏40度から摂氏41度(本実施の形態では、摂氏41度)で発熱される。また、第14のヒータ部48は、車両乗員Sの腰部に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。ここで、腰部は冷点が多い。したがって、車両乗員Sの腰部を高温で温めると、車両乗員Sの身体を迅速に温めることができる。
【0044】
また、第13のヒータ部46の発熱体は、第12のヒータ部44の発熱温度と同程度以上の温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、車両乗員Sの骨盤に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。このため、車両乗員Sの骨盤と正対する範囲及びその周辺を第12のヒータ部44の発熱温度と同程度以上の温度で温めることで、仙骨神経や座骨神経等の副交感神経を主として効果的に車両乗員Sの身体を温めることができる。
【0045】
一方、バックレストヒータ40の制御装置がOFF状態になり、シートクッションヒータ50の制御装置がON状態になると、シートクッションヒータ50が通電される。シートクッションヒータ50が通電されると、第21のヒータ部52、第22のヒータ部54、第23のヒータ部56、第24のヒータ部58の各々の発熱体が発熱される。これにより、車両乗員Sの身体は、車両下側から温められる。
【0046】
ここで、第21のヒータ部52の発熱体の発熱温度は、他の第22のヒータ部54、第23のヒータ部56、第24のヒータ部58の各発熱体の発熱温度よりも高い温度である摂氏40度から摂氏42度、好ましくは摂氏41度から摂氏42度(本実施の形態では、摂氏41度)で発熱される。また、第21のヒータ部52は、車両乗員Sの膝裏に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。膝裏は、動脈及び静脈が皮膚から近い場所にある。このため、第21のヒータ部52によって温める効果が高い。
【0047】
また、第22のヒータ部54の発熱体は、第21のヒータ部52の発熱体の発熱温度よりも低い温度である摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される。また、第22のヒータ部54は、車両乗員Sの大腿部から臀部含んだ範囲に設けられる。この車両乗員Sの大腿部から臀部含んだ範囲では、動脈及び静脈が車両乗員Sの大腿部から臀部における皮膚よりも車両乗員Sの内側に入る。このため、疲労低減という意味では、第22のヒータ部54によって温める効果が薄い。
【0048】
さらに、第23のヒータ部56の発熱体は、第21のヒータ部52の発熱体の発熱温度よりも低い温度である摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される。また、第23のヒータ部56は、車両乗員Sの臀部直下を含んだ範囲に設けられる。ここで、車両乗員Sの臀部及びその近傍では、車両乗員Sの他の部位に比べて肉が多く、このため、車両乗員Sの臀部直下を含んだ範囲では、動脈及び静脈が車両乗員Sの大腿部から臀部における皮膚よりも車両乗員Sの内側に入る。このため、疲労低減という意味では、第23のヒータ部56によって温める効果が薄い。
【0049】
また、第24のヒータ部58の発熱体は、第22のヒータ部54及び第23のヒータ部56の各々の発熱体の発熱温度よりも高く、第21のヒータ部52の発熱体の発熱温度よりも低い温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、第24のヒータ部58は、車両乗員Sの仙骨を含んだ範囲に設けられる。ここで、仙骨には、太い血管が多数集中している。さらに、仙骨には、神経が多数集中している。このため、温める効果が大きい。
【0050】
このように、本実施の形態では、適切な温度で車両乗員Sの身体を温めつつ医学的ロジックに基づいてむくみ等を抑制できる。
【0051】
一方で、シートバックパッド32及びシートクッションパッド26の各々には、それぞれ制御装置が設けられている。これらの制御装置が、共にON状態にされると、第11のヒータ部42、第12のヒータ部44、第14のヒータ部48の各々がシートバックパッド32の制御装置がON状態、シートクッションパッド26の制御装置がOFF状態の場合と同じように作動する。また、これらの制御装置が、共にON状態にされると、第21のヒータ部52、第22のヒータ部54、第23のヒータ部56、第24のヒータ部58の各々がシートクッションパッド26の制御装置がON状態、シートバックパッド32の制御装置がOFF状態の場合と同じように作動する。
【0052】
これに対して、シートバックパッド32の第13のヒータ部46の発熱体の発熱温度は、第12のヒータ部44の発熱体の発熱温度よりも低い摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。ところで、シートクッションパッド26の制御装置及びシートバックパッド32の制御装置がそれぞれON状態で第13のヒータ部46及び第24のヒータ部58のそれぞれが、充分に加温されると、第13のヒータ部46が暖める骨盤と、第24のヒータ部58が暖める仙骨とが余剰加温になる。骨盤及び仙骨は太い神経が集中するため、加温し過ぎると、疲労に繋がる。
【0053】
そこで、シートバックパッド32の第13のヒータ部46の発熱体の発熱温度は、第12のヒータ部44の発熱体の発熱温度よりも低い摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される構成とした。これによって、図3に示される定量評価(むくみインピーダンスの変化率)では、本車両用シートヒータ10は、全体的に量産ヒータよりもむくみインピーダンスの変化率が低い。また、40時間経過時で本車両用シートヒータ10は、第13のヒータ部46の発熱体の発熱温度を下げないヒータよりもむくみインピーダンスの変化率が低い。
【0054】
一方、図4に示される官能評価(温熱快適性)では、一点鎖線で示されるように、シートバックパッド32の第13のヒータ部46の発熱体及びシートクッションパッド26の第24のヒータ部の発熱体の双方が60分使用された場合には、しばし熱くなりすぎた。これに対して、第13のヒータ部46の発熱体の発熱温度を下げる本車両用シートヒータ10は、60分使用しても快適な温度を維持できた。
【0055】
なお、本実施の形態では、シートバック16の側の第13のヒータ部46の発熱体の温度を下げた。しかしながら、シートクッション14の側の第24のヒータ部58の発熱体の温度を下げてもよいし、シートバック16の側の第13のヒータ部46の発熱体及びシートクッション14の側の第24のヒータ部58の発熱体の双方の温度を下げてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、バックレストヒータ40は、第11のヒータ部42から第14のヒータ部48まで4枚のヒータ部を備え、シートクッションヒータ50は、第21のヒータ部52から第24のヒータ部58までの4枚のヒータ部を備えた構成であった。しかしながら、バックレストヒータ40及びシートクッションヒータ50の少なくとも一方のヒータ部は、2枚でもよいし、3枚でもよいし、5枚以上であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 車両用シートヒータ
14 シートクッション
16 シートバック
40 バックレストヒータ
50 シートクッションヒータ
図1
図2
図3
図4