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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171423
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】MRI装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221104BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20221104BHJP
   G01R 33/483 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61B5/055 342
A61B5/055 312
G01N24/00 600Y
G01R33/483
【審査請求】未請求
【請求項の数】34
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021078048
(22)【出願日】2021-04-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年8月8日~14日ISMRM & SMRT Virtual Conference & Exhibition,仮想会議及び展示会(Web上)にて発表。
(71)【出願人】
【識別番号】521191414
【氏名又は名称】テスラ ダイナミック コイルズ ベーフェー
(71)【出願人】
【識別番号】521191425
【氏名又は名称】フーツラ コンポジッツ ベー.フェー.
(71)【出願人】
【識別番号】514116305
【氏名又は名称】ユーエムセー・ユトレヒト・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デニス クロンプ
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン ヴェルステーグ
(72)【発明者】
【氏名】イェルーン シエロ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーノ ボルゴ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA14
4C096AC01
4C096AD07
4C096AD09
4C096AD10
4C096BA10
4C096BA42
4C096BB02
4C096CB06
4C096CB07
4C096CB11
4C096CC26
(57)【要約】
【課題】MRIシステムと共に使用されるMRIシステム用コイル・インサート、コイル・インサートを含むMRIシステム又は他の構成要素を含むMRIシステムを備えるMRIシステム装置、並びにMRIシステム装置を備えるエコー・プラナー法分光イメージング・システム、及びMRIシステムを動作させる方法を提供する。
【解決手段】主要MRIシステム1のボアB内で使用されるMRIシステム用コイル・インサート2は、それぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作ると共に、超音波周波数で電気的に駆動されるように配置された、少なくとも1つの勾配磁場コイルを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要MRIシステムのボア内で使用されるMRIシステム用コイル・インサートであって、それぞれの軸線に沿って空間的に変動する磁場を作ると共に、超音波周波数で電気的に駆動されるように配置された、少なくとも1つの勾配磁場コイルを備える、MRIシステム用コイル・インサート。
【請求項2】
勾配磁場コイル巻線がない中央領域を有する、請求項1に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項3】
患者の頭部が前記インサート内に位置するときに前記患者が見通すことができる窓を前記インサートに有する、請求項2に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項4】
前記インサートの主軸に沿った空間的に変動する磁場を作るZ勾配磁場コイルを備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項5】
前記Z勾配磁場コイルが、前記インサートの第1の端部に提供される第1の組の巻線と、前記インサートの第2の端部に提供される第2の組の巻線とを備える、請求項4に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項6】
前記Z勾配磁場コイルが二組を超える巻線を備え、前記巻線が前記Z軸上に区分された勾配を提供するのを可能にするように配置される、請求項4に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項7】
前記インサートの前記主軸に対して横断方向の空間的に搬送する磁場を作る、X勾配磁場コイル又はY勾配磁場コイルを備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項8】
第1のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る第1の勾配磁場コイルと、第2のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る第2の勾配磁場コイルとを備える、請求項1から7までのいずれか一項に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項9】
前記主軸に対して横断方向の空間的に変動する磁場を作るX勾配磁場コイル又はY勾配磁場コイルを更に備え、前記X又はY勾配磁場コイルが、前記インサートの径方向で対向する側に、また軸線方向で前記Z勾配磁場コイルの前記第1及び第2の組の巻線の間に提供される、第3の組の巻線及び第4の組の巻線を備える、請求項5に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項10】
前記インサートに前記Z勾配磁場コイルの巻線及び前記X又はY勾配磁場コイルの巻線がない領域が存在するように、前記第3及び第4の組の巻線の間に円周方向の隙間が提供される、請求項9に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項11】
前記第3の組の巻線及び前記第4の組の巻線がそれぞれ、複数のらせん状に巻かれた巻回を備え、一周の巻回がそれぞれ、内側弓状セグメントと、外側弓状セグメントまで外側に延在する第1の端部セグメントと、前記外側弓状セグメントから次の巻回の対応する内側弓状セグメントまで内側に延在する第2の端部セグメントとを有する、請求項9又は請求項10に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項12】
前記インサートが、前記それぞれの勾配磁場コイルを所定の超音波周波数で共振させるように、少なくとも1つの勾配磁場コイルに電気的に接続された少なくとも1つのコンデンサを備える、請求項1から11までのいずれか一項に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項13】
前記インサートが、第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備え、前記第1の勾配磁場コイルを第1の所定の超音波周波数で共振させるように、少なくとも1つの第1のコンデンサが前記第1の勾配磁場コイルに電気的に接続され、少なくとも1つの第2のコンデンサが前記第2の所定の超音波周波数に電気的に接続される、請求項12に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項14】
前記第1の所定の超音波周波数が前記第2の所定の超音波周波数とは異なる、請求項13に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項15】
前記第1の所定の超音波周波数と前記第2の所定の超音波周波数との間の周波数の前記差が非可聴周波数である、請求項14に記載のMRIシステム用コイル・インサート。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一項に記載のコイル・インサートと、前記少なくとも1つの勾配磁場コイルを超音波周波数で電気的に駆動する信号発生器装置とを備える、MRIシステム用コイル・インサート装置。
【請求項17】
前記インサートが第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備え、前記信号発生器装置が、前記第1の勾配磁場コイルを第1の選択された超音波周波数で駆動し、前記第2の勾配磁場コイルを第2の選択された超音波周波数で駆動するように配置された、請求項1から16までのいずれか一項に記載のMRIシステム用コイル・インサート装置。
【請求項18】
前記第1の選択された超音波周波数と前記第2の選択された超音波周波数との間の周波数の差が非可聴周波数である、請求項17に記載のMRIシステム用コイル・インサート装置。
【請求項19】
前記第1の選択された周波数が前記第1の所定の周波数と同じであり、前記第2の選択された周波数が前記第2の所定の周波数と同じである、請求項14又は請求項15に従属するとき請求項18に記載のMRIシステム用コイル・インサート装置。
【請求項20】
前記コイルの前記巻線及び前記信号発生器装置が前記Z軸上に区分された勾配を提供するように配置される、請求項6に従属するとき請求項16に記載のMRIシステム用コイル・インサート装置。
【請求項21】
主要ボアと、前記ボア内で使用される請求項1から15までのいずれか一項に記載のMRIシステム用コイル・インサートとを有する、MRIシステムを備える、MRIシステム装置。
【請求項22】
主要ボアを有するMRIシステムと、前記ボア内で使用されるように配置された前記コイル・インサートを含む、請求項16から19までのいずれか一項に記載のMRIシステム用コイル・インサート装置と備える、MRIシステム装置。
【請求項23】
磁気共鳴データを獲得する獲得部と、獲得した磁気共鳴データから画像及び分光情報を再構築する再構築部とを有する、MRIシステム装置を備える、エコー・プラナー法分光イメージング・システムであって、
前記獲得部が、
単バンド又はマルチバンドRFパルスを出力するように配置された、RF送信装置と、
第1のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る、超音波周波数で駆動されるように配置された第1の勾配磁場コイルと、第2のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る、超音波周波数で駆動されるように配置された第2の勾配磁場コイルと、
前記第1の勾配磁場コイルを第1の選択された超音波周波数で電気的に駆動し、前記第2の勾配磁場コイルを第2の選択された超音波周波数で駆動する、信号発生器装置と、を備え、
前記信号発生器装置が、前記磁気共鳴データを獲得する一部として、読出し期間中に、複数のチャープ・パルスを前記第1の勾配磁場コイルに適用し、複数のチャープ・パルスを前記第2の勾配磁場コイルに適用して、スペクトル符号化及び空間符号化を前記第1及び第2それぞれの軸線において達成するように構成され、
前記獲得部が、前記読出し期間中、磁気共鳴データを読み出すように配置され、前記再構築部が、前記読出し期間中に読み出された前記磁気共鳴データから、画像及び前記画像に関するスペクトル情報を再構築するように配置された、エコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項24】
各チャープ・パルスが10ミリ秒未満の長さを有する、請求項23に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項25】
前記信号発生器装置が、前記読出し期間中、少なくとも10のチャープ・パルスを適用するように構成された、請求項23又は24に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項26】
前記獲得部が、一組の磁気共鳴データを生成するために、複数の読出し期間中に磁気共鳴データを獲得するように配置され、前記獲得部が、各読出し期間の開始前に前記RF送信装置に単バンド又はマルチバンドRFパルスを出力させるように配置され、前記獲得が、各読出し期間中に、それぞれの複数のチャープ・パルスを前記第1の勾配磁場コイルに適用し、それぞれの複数のチャープ・パルスを前記第2の勾配磁場コイルに適用して、スペクトル符号化及び空間符号化を前記第1及び第2それぞれの軸線において達成するように構成された、請求項23から25までのいずれか一項に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項27】
前記第1の選択された超音波周波数が前記第2の選択された超音波周波数とは異なる、請求項23から26までのいずれか一項に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項28】
前記第1の選択された超音波周波数と前記第2の選択された超音波周波数との間の周波数の前記差が非可聴周波数である、請求項27に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項29】
前記獲得部が、前記第1の勾配磁場コイルを第1の所定の超音波周波数で共振させるように、前記第1の勾配磁場コイルに電気的に接続された少なくとも1つの第1のコンデンサと、前記第2の勾配磁場コイルを第2の所定の超音波周波数で共振させるように、前記第2の勾配磁場コイルに電気的に接続された少なくとも1つの第2のコンデンサとを備える、請求項23から28までのいずれか一項に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項30】
前記第1の選択された周波数が前記第1の所定の周波数と同じであり、前記第2の選択された周波数が前記第2の所定の周波数と同じである、請求項29に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項31】
前記獲得部が、第3のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作るため、電気的に駆動されるように配置された第3の勾配磁場コイルを更に備え、前記信号発生器装置が、前記第3の勾配磁場コイルを電気的に駆動するように配置されて、前記第3のそれぞれの軸線における空間符号化を提供して、前記それぞれの読出し期間中若しくはそれぞれの複数の読出し期間中に前記磁気共鳴データ又は一組の磁気共鳴データが獲得される、検査を受けている被検体のスライスの選択を可能にする、請求項23から30までのいずれか一項に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項32】
前記MRIシステム装置が、主要ボアを有するMRIシステムと、前記主要ボア内で使用されるMRIシステム用コイル・インサート装置とを備え、前記インサートが、前記第1の勾配磁場コイルと前記第2の勾配磁場コイルとを備える、請求項23から31までのいずれか一項に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項33】
前記MRIシステム装置が、主要ボアを有するMRIシステムと、前記主要ボア内で使用される請求項1から15までのいずれか一項に記載のMRIシステム用コイル・インサートとを備える、請求項23から31までのいずれか一項に記載のエコー・プラナー法分光イメージング・システム。
【請求項34】
磁気共鳴データを獲得する獲得部と、獲得した磁気共鳴データから画像及びスペクトル情報を再構築する再構築部とを有する、MRIシステム装置を使用する、エコー・プラナー法分光イメージング方法であって、
単バンド又はマルチバンドRFパルスを、検査を受けている被検体に適用することと、
第1の勾配磁場コイルを第1の超音波周波数で電気的に駆動して、第1のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作り出すことと、第2の勾配磁場コイルを第2の超音波周波数で電気的に駆動して、第2のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作り出すことと、
磁気共鳴データを獲得する一部として、読出し期間中に、複数のチャープ・パルスを前記第1の勾配磁場コイルに適用し、複数のチャープ・パルスを前記第2の勾配磁場コイルに適用して、スペクトル符号化及び空間符号化を前記第1及び第2それぞれの軸線において達成することと、
前記読出し期間中に磁気共鳴データを読み出すことと、
前記読出し期間中に読み出された前記磁気共鳴データから、画像及び前記画像に関するスペクトル情報を再構築することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI装置に関し、特に、MRIシステムと共に使用されるMRIシステム用コイル・インサート、コイル・インサートを含むMRIシステム又は他の構成要素を含むMRIシステムを備えるMRIシステム装置、並びにMRIシステム装置を備えるエコー・プラナー法分光イメージング・システム、及びMRIシステムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)システムは、被検体のイメージングに、また磁気共鳴分光イメージング(MRSI:Magnetic Resonance Spectroscopy Imaging)の場合はスペクトル情報を獲得するのにも、広く使用されている。MRIシステムは、一般的に、大きい静磁場Bを作る磁石構成と、交流磁場Bを発生させ、磁気共鳴信号を収集する(即ち、磁気共鳴データを獲得する)一組の高周波数コイル又はアンテナと、B磁場における空間符号化を可能にして断層撮影イメージングができるようにする一組の勾配磁場コイルとを備える。更に、MRSIの場合、勾配磁場コイルは分光符号化(spectroscopic encoding)を可能にするのにも使用される。
【0003】
磁気共鳴信号の空間符号化は、一般的に、検査される被検体が中に位置するスキャナ・ボアの周りに位置する勾配磁場コイルによって作られる、3つの磁場勾配(X、Y、Z)の高速スイッチングによって達成される。
【0004】
一般的に、既存のシステムでは、勾配磁場コイルは、0~10kHzの範囲で駆動される。勾配磁場コイルは可聴範囲(20Hz~20kHz)内で駆動されるので、切り替わる勾配において、またそれによって誘発されるローレンツ力によって生じるノイズを低減するのに、相当の労力が払われてきた。かかる方法としては、生じるノイズを減衰する材料を使用することが挙げられる。
【0005】
MRIの時空間解像度を強化するため、勾配系を「より高速で」「より強力に」駆動することができる。即ち、より大きい勾配スルー・レート(T/m/s)及びより大きい勾配強度(mT/m)を有する。現在の勾配性能は、主に、強力な磁場勾配の速すぎるスイッチングによって誘発される、不快な末梢神経刺激(PNS:Peripheral Nerve Stimulations)によって限定される場合がある。勾配のスイッチングは、筋肉及び神経などの導電性組織における電界及び電流を誘発し、神経脱分極及び最終的には神経刺激をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、聴覚効果及び/又は末梢神経刺激による患者にとっての物理的不快感を増加させることなく、性能を向上させることができる、MRI装置及びMRI装置の操作方法を開発することが望ましい。同様に、MRIプロセス自体の性能の向上の有無にかかわらず、聴覚効果及び/又は末梢神経刺激及び/又は他の不快感の原因を低減することができる、MRI装置及びMRI装置の使用方法を作成することが望ましいであろう。また、患者の不快感を最小限に抑え、並びに/或いはスキャンを獲得するのに掛かった時間による影響がより少ない結果を得るため、スキャンをより迅速に完了することができるかも興味深い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、MRIシステムのボア内で使用されるMRIシステム用コイル・インサートであって、それぞれの軸線に沿って空間的に変動する磁場を作ると共に、超音波周波数で電気的に駆動されるように配置された、少なくとも1つの勾配磁場コイルを備える、コイル・インサートが提供される。
【0008】
これにより、主要MRIシステムの機能性をインサートと組み合わせて使用して、検査を行うのを可能にすることができる。超音波周波数の使用には様々な利点がある。第1に、ローレンツ力が支配する時間が少ないので、コイル自体に掛かる力をより少なくすることができる。これは、コイルが、より従来的な周波数で駆動される場合よりも軽量であり得ることを意味するので、コイルは物理的に異なるものであり得、それらを支持する構造は異なるものであり得る。第2に、勾配のスイッチングが患者には聞こえなくなる。第3に、超音波周波数が使用される場合、検査を受けている患者の末梢神経刺激(PNS)を少なくできることが見出されている。これは、神経が切り替わる磁場に反応するのに十分な時間がないためと考えられる。
【0009】
コイル・インサートは、勾配磁場コイル巻線がない中央領域を有してもよい。これは、患者の頭部がインサート内に位置するときに患者が見通すことができる窓をインサートに設けるのを可能にすることができる。これは、より軽量のコイル/コイルに対するより少ない力を使用することによって容易にすることができる。
【0010】
インサートはほぼ円筒状であってもよい。インサートは主軸を有してもよい。主軸は、インサートが使用される主要MRIシステムのボアの主軸と整列させるように配置されてもよい。そのような場合、インサート及び主要MRIシステムの軸線は、互いに平行であるか又は互いに一致することによって整列されてもよい。
【0011】
少なくとも1つの勾配磁場コイルは、インサートの主軸に沿った空間的に変動する磁場を作るZ勾配磁場コイルを備えてもよい。少なくとも1つの勾配磁場コイルは、インサートの主軸に対して横断方向の空間的に変動する磁場を作る、X勾配磁場コイル又はY勾配磁場コイルを備えてもよい。
【0012】
コイル・インサートは、第1のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る第1の勾配磁場コイルと、第2のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る第2の勾配磁場コイルとを備えてもよい。
【0013】
第1の勾配磁場コイルは、インサートの主軸に沿った空間的に変動する磁場を作るZ勾配磁場コイルであってもよく、第2の勾配磁場コイルは、インサートの主軸に対して横断方向の空間的に変動する磁場を作る、X勾配磁場コイル又はY勾配磁場コイルであってもよい。
【0014】
コイル・インサートが第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備える場合、コイル・インサートは、勾配磁場コイル巻線を有さない中央領域を依然として有していてもよい。
【0015】
コイル・インサートは、第1の軸線及び第2の軸線に対して横断方向である第3のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る、第3の勾配磁場コイルを備えてもよい。しかしながら、一般的に、勾配磁場コイル巻線を有さない中央領域を提供するのが容易になることから、1つ又は2つの勾配磁場コイルを提供し、第3の勾配磁場コイルは提供しないことが好ましい。
【0016】
主要MRIシステムは、それ自体の勾配磁場コイルを有することになり、それらは動作中、インサートの勾配磁場コイルと協働して使用されてもよい。したがって、例えば、インサートが、特定の軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る勾配磁場コイルを有さない場合、その軸線における空間符号化は、主要MRIシステムの勾配磁場コイルを使用して遂行されてもよい。
【0017】
Z勾配磁場コイルは、少なくとも一組の巻線を備えてもよい。
【0018】
Z勾配磁場コイルは、インサートの第1の端部に提供される第1の組の巻線と、インサートの第2の端部に提供される第2の組の巻線とを備えてもよい。一連の実施例では、第1及び第2の組の巻線の間の領域は、Z勾配磁場コイル巻線を有さなくてもよい。
【0019】
巻線がない中央領域を作成することは、線形性が低い磁場に結び付くことがあるが、この種のインサートでは許容できるものと判断されてきた。特に、インサートが、患者の頭部に関与する検査に使用される場合である。ここでは、インサートが長い長さを有する必要はない。
【0020】
いくつかの例では、Z勾配磁場コイルは二組を超える巻線を備えてもよい。例えば、四組以上の巻線が提供されてもよい。
【0021】
巻線は、Z軸上で区分された勾配(segmented gradient)を提供するのを可能にするように配置されてもよい。即ち、Z軸に沿って連続した、つまり線形の勾配を提供するのではなく、軸線に沿った一連の勾配部分が提供される。これは、Z軸全体に沿った勾配を設定するのに、より小さい最大絶対磁場が使用されてもよいことを意味する。これは次いで、検査を受けている患者の末梢神経刺激(PNS)を最小限に抑える助けとなり得る。この配置は、より長いインサートの場合、つまりZ軸がより長い場合に、より有用である。かかるインサートは、患者のより長い領域を検査するためのものであってもよく、全身用インサートであってもよい。
【0022】
換言すれば、巻線は、Z軸に沿った空間的に単調でない勾配を提供するのを可能にするように配置されてもよい。
【0023】
巻線は、Z軸に沿った空間的に多葉性の(multi-lobed)勾配を提供するのを可能にするように配置されてもよい。
【0024】
巻線は、Z軸に沿った空間的に振動する勾配を提供するのを可能にするように配置されてもよい。
【0025】
巻線は、Z軸に沿った多項式状又は正弦曲線状の空間的変動を有する勾配を提供するのを可能にするように配置されてもよい。
【0026】
ここで、これらの勾配パターンに言及する際、Z軸に沿って見た磁場の振幅/サイズの変動に言及していることが理解されるであろう。
【0027】
Z勾配磁場コイルの巻線は2つの層で提供されてもよく、2つの層のうち第1の層の巻回は、2つの層のうち第2の層の巻回と整列せずに提供される。これは、達成可能な空間符号化を改善する助けとなり得る。
【0028】
Z勾配磁場コイルの第1の組の巻線は2つの層で提供されてもよく、2つの層のうち第1の層の巻回は、2つの層のうち第2の層の巻回と整列せずに提供される。Z勾配磁場コイルの第2の組の巻線は2つの層で提供されてもよく、2つの層のうち第1の層の巻回は、2つの層のうち第2の層の巻回と整列せずに提供される。
【0029】
X勾配磁場コイル又はY勾配磁場コイルは、少なくとも一組の巻線を備えてもよい。
【0030】
X勾配磁場コイル又はY勾配磁場コイルは、インサートの径方向で対向する側に提供される一対の巻線を備えてもよい。対の各巻線は、複数のらせん状に巻かれた巻回を備えてもよく、一周の巻回はそれぞれ、内側弓状セグメントと、外側弓状セグメントまで外側に延在する第1の端部セグメントと、外側弓状セグメントから次の巻回の対応する内側弓状セグメントまで内側に延在する第2の端部セグメントとを有する。各内側弓状セグメントはインサートの側壁に沿ってもよい。各外側弓状セグメントはインサートの側壁に沿ってもよい。
【0031】
Z勾配磁場コイルが提供され、上述したような第1及び第2の組の巻線を備える場合、X又はY勾配磁場コイルが提供され、軸線方向でZ勾配磁場コイルの第1及び第2の組の巻線の間にインサート内に配設されてもよい。
【0032】
X又はY勾配磁場コイルは、インサートの径方向で対向する側に、また軸線方向でZ勾配磁場コイルの第1及び第2の巻線の間に提供される、第3の組の巻線及び第4の組の巻線を備えてもよい。したがって、第3及び第4の組の巻線は、Z勾配磁場コイル巻線がない領域に提供されてもよい。ここで、第3及び第4の組の巻線は、一対の巻線として上述したのと同じ巻線であり、この一連の実施例では、第1及び第2の巻線がZ勾配磁場コイルに関連して定義されているという意味で、第3及び第4であることに留意されたい。
【0033】
インサートに、Z勾配磁場コイルの巻線及びX又はY勾配磁場コイルの巻線がない領域が存在するように、第3及び第4の組の巻線の間に、円周方向の隙間が提供されてもよい。この領域は、患者の頭部がインサート内に配設されたときに患者が見通すことができる、窓として配置されてもよい。
【0034】
第3の組の巻線及び第4の組の巻線はそれぞれ、複数のらせん状に巻かれた巻回を備えてもよく、一周の巻回はそれぞれ、内側弓状セグメントと、外側弓状セグメントまで外側に延在する第1の端部セグメントと、外側弓状セグメントから次の巻回の対応する内側弓状セグメントまで内側に延在する第2の端部セグメントとを有する。
【0035】
各内側弓状セグメントはインサートの側壁に沿ってもよい。各外側弓状セグメントはインサートの側壁に沿ってもよい。
【0036】
かかる配置は、X又はY勾配磁場コイルがその長さにわたる線形磁場を生成することができる、インサートの軸線方向長さを最大限にする助けとなり得る。また、第3及び第4の組の巻線の端部間の円周方向の隙間を最大限にするのを可能にして、患者のための窓を作成するのを可能にすることができる。
【0037】
インサートは、少なくとも1つの勾配磁場コイルに対する部分遮蔽コイルを備えてもよく、又は更には遮蔽コイルを備えていなくてもよい。インサートが第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備える場合、インサートは、第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルに対する部分遮蔽コイルを備えてもよく、又は更には遮蔽コイルを備えていなくてもよい。
【0038】
インサートは、それぞれの勾配磁場コイルを所定の超音波周波数で共振させるように、少なくとも1つの勾配磁場コイルに電気的に接続された少なくとも1つのコンデンサを備えてもよい。これは、所定の周波数で効率よく勾配磁場コイルを駆動する助けとなる。また、高インピーダンス信号源からの低電流を使用して勾配磁場コイルを駆動できることを意味し、これにより、その領域内の他のコイル/金属物に対する誘導結合を低減することができる。
【0039】
インサートが第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備える場合、第1の勾配磁場コイルを第1の所定の超音波周波数で共振させるように、少なくとも1つの第1のコンデンサは第1の勾配磁場コイルに電気的に接続されてもよく、第2の勾配磁場コイルを第2の所定の超音波周波数で共振させるように、少なくとも1つの第2のコンデンサは第2の勾配磁場コイルに電気的に接続されてもよい。
【0040】
第1の所定の超音波周波数は、第2の所定の超音波周波数と同じであってもよい。
【0041】
しかしながら、好ましくは、第1の所定の超音波周波数は第2の所定の超音波周波数とは異なる。
【0042】
これにより、2つの勾配磁場コイルを異なる周波数で動作させることが容易になり、それが次いで、この組み合わせによって円形又はらせん状の符号化ではなくリサジューの符号化(Lissajous encoding)が生成されるので、イメージング中により多くの空間周波数をサンプリングすることにつながり得る。次に、これによってイメージングの加速の可能性を増加させることができる。
【0043】
2つの周波数を使用することによって、可聴音が生じ得るという潜在的な課題があると判断されてきた。これは、2つの周波数で作られる音の間に「うなり」が発生することによると判断されてきた。
【0044】
好ましくは、第1の所定の超音波周波数と第2の所定の超音波周波数との間の周波数差は非可聴周波数である。つまり、超低周波数又は超音波周波数のどちらかである。一般的に、実際には、第1の所定の超音波周波数及び第2の所定の超音波周波数は、それらの間の周波数差が超低周波数であるように選択される。
【0045】
本発明の別の態様によれば、上述したようなコイル・インサートと、少なくとも1つの勾配磁場コイルを超音波周波数で電気的に駆動する信号発生器装置とを備える、MRIシステム用コイル・インサート装置が提供される。
【0046】
少なくとも1つの勾配磁場コイルがZ勾配磁場コイルを備える場合、コイルの巻線及び信号発生器装置は、Z軸上で区分された勾配を提供するように配置されてもよい。
【0047】
巻線及び信号発生器装置は、Z軸に沿った空間的に単調でない勾配を提供するように配置されてもよい。
【0048】
巻線及び信号発生器装置は、Z軸に沿った空間的に多葉性の勾配を提供するように配置されてもよい。
【0049】
巻線及び信号発生器装置は、Z軸に沿った空間的に振動する勾配を提供するように配置されてもよい。
【0050】
巻線及び信号発生器装置は、Z軸に沿った多項式状又は正弦曲線状の空間的変動を有する勾配を提供するように配置されてもよい。
【0051】
インサートが第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備える場合、信号発生器装置は、第1の勾配磁場コイルを第1の選択された超音波周波数で駆動し、第2の勾配磁場コイルを第2の選択された超音波周波数で駆動するように配置されてもよい。第1及び第2の周波数は互いに同じであってもよい。第1及び第2の周波数は互いに異なってもよい。
【0052】
好ましくは、第1の選択された超音波周波数と第2の選択された超音波周波数との間の周波数差は非可聴周波数である。つまり、超低周波数又は超音波周波数のどちらかである。一般的に、実際には、第1の選択された超音波周波数及び第2の選択された超音波周波数は、それらの間の周波数差が超低周波数であるように選択される。
【0053】
第1の選択された周波数は、第1の所定の周波数と同じであってもよい。第2の選択された周波数は、第2の所定の周波数と同じであってもよい。
【0054】
したがって、第1及び第2のコイルは、コイルを選択された周波数で共振させるコンデンサが提供されるか否かにかかわらず、選択された周波数で駆動されてもよいが、コンデンサが提供され、コイルがそれぞれの共振周波数で駆動されることが好ましいことが注目される。
【0055】
本発明の別の態様によれば、主要ボアを有するMRIシステムと、前記ボア内で使用される上述したようなMRIシステム用コイル・インサートとを備える、MRIシステム装置が提供される。
【0056】
本発明の別の態様によれば、主要ボアを有するMRIシステムと、前記ボア内で使用するようにコイル・インサートが配置された、上述したようなMRIシステム用コイル・インサート装置とを備える、MRIシステム装置が提供される。
【0057】
MRIシステム用コイル・インサートの文脈で上述の特徴について述べてきたが、文脈が許容すれば、MRIシステム自体に上述の特徴及び発想を使用することができる。
【0058】
したがって、本発明の別の態様によれば、コイル装置を備え、コイル装置が、それぞれの軸線に沿って空間的に変動する磁場を作ると共に、超音波周波数で電気的に駆動されるように配置された、少なくとも1つの勾配磁場コイルを備える、コイル装置を備えるMRIシステムが提供される。
【0059】
概して、上述の任意の特徴は、文脈が許容すれば、本発明のこの態様に対する任意の特徴でもある。簡潔にするため、全てが本明細書で繰り返されるものではないが、一部は例として明示的に記述される。
【0060】
MRIシステムは、少なくとも1つの勾配磁場コイルを超音波周波数で電気的に駆動する信号発生器装置を備えてもよい。
【0061】
一連の実施例では、少なくとも1つの勾配磁場コイルはZ勾配磁場コイルを備え、コイルの巻線及び信号発生器装置は、Z軸上に区分された勾配を提供するように配置される。
【0062】
換言すれば、巻線及び信号発生器装置は、Z軸に沿った空間的に単調でない勾配を提供するように配置されてもよい。
【0063】
巻線及び信号発生器装置は、Z軸に沿った空間的に多葉性の勾配を提供するように配置されてもよい。
【0064】
巻線及び信号発生器装置は、Z軸に沿った空間的に振動する勾配を提供するように配置されてもよい。
【0065】
巻線及び信号発生器装置は、Z軸に沿った多項式状又は正弦曲線状の空間的変動を有する勾配を提供するように配置されてもよい。
【0066】
MRIシステムは、それぞれの勾配磁場コイルを所定の超音波周波数で共振させるように、少なくとも1つの勾配磁場コイルに電気的に接続された少なくとも1つのコンデンサを備えてもよい。
【0067】
コイル装置は、第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備えてもよく、第1の勾配磁場コイルを第1の所定の超音波周波数で共振させるように、少なくとも1つの第1のコンデンサは第1の勾配磁場コイルに電気的に接続されてもよく、第2の勾配磁場コイルを第2の所定の超音波周波数で共振させるように、少なくとも1つの第2のコンデンサは第2の勾配磁場コイルに電気的に接続される。
【0068】
第1の所定の超音波周波数は、第2の所定の超音波周波数と同じであってもよい。
【0069】
しかしながら、好ましくは、第1の所定の超音波周波数は第2の所定の超音波周波数とは異なる。
【0070】
好ましくは、第1の所定の超音波周波数と第2の所定の超音波周波数との間の周波数差は非可聴周波数である。つまり、超低周波数又は超音波周波数のどちらかである。一般的に、実際には、第1の所定の超音波周波数及び第2の所定の超音波周波数は、それらの間の周波数差が超低周波数であるように選択される。
【0071】
コイル装置が第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備える場合、信号発生器装置は、第1の勾配磁場コイルを第1の選択された超音波周波数で駆動し、第2の勾配磁場コイルを第2の選択された超音波周波数で駆動するように配置されてもよい。第1及び第2の周波数は互いに同じであってもよい。第1及び第2の周波数は互いに異なってもよい。
【0072】
好ましくは、第1の選択された超音波周波数と第2の選択された超音波周波数との間の周波数差は非可聴周波数である。つまり、超低周波数又は超音波周波数のどちらかである。一般的に、実際には、第1の選択された超音波周波数及び第2の選択された超音波周波数は、それらの間の周波数差が超低周波数であるように選択される。
【0073】
第1の選択された周波数は、第1の所定の周波数と同じであってもよい。第2の選択された周波数は、第2の所定の周波数と同じであってもよい。
【0074】
本発明の別の態様によれば、上述したようなMRIシステム装置の操作方法が提供される。
【0075】
本発明の更なる態様によれば、磁気共鳴データを獲得する獲得部と、獲得した磁気共鳴データから画像及び分光情報を再構築する再構築部とを有する、MRIシステム装置を備える、エコー・プラナー法分光イメージング・システムが提供され、
獲得部が、
単バンド又はマルチバンドRFパルスを出力するように配置された、RF送信装置と、
第1のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る、超音波周波数で駆動されるように配置された第1の勾配磁場コイルと、第2のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作る、超音波周波数で駆動されるように配置された第2の勾配磁場コイルと、
第1の勾配磁場コイルを第1の選択された超音波周波数で電気的に駆動し、第2の勾配磁場コイルを第2の選択された超音波周波数で駆動する、信号発生器装置と、を備え、
信号発生器装置が、磁気共鳴データを獲得する一部として、読出し期間中に、複数のチャープ・パルスを第1の勾配磁場コイルに適用し、複数のチャープ・パルスを第2の勾配磁場コイルに適用して、スペクトル符号化及び空間符号化を第1及び第2それぞれの軸線において達成するように構成され、
獲得部が、前記読出し期間中、磁気共鳴データを読み出すように配置され、再構築部が、前記読出し期間中に読み出された磁気共鳴データから、画像及び画像に関するスペクトル情報を再構築するように配置される。
【0076】
これによって、各チャープの持続時間での空間符号化、及び読出し期間の持続時間にわたる空間符号化を可能にすることができる。超音波周波数及び一連のチャープを使用することによって、既存の技術を用いて達成されるよりも著しく短い検査期間に関連するMRSIデータ、つまりMRI画像及び関連するスペクトル・データを取得することが可能である。これは、時間に伴う変化、例えば、検査期間中の被検体における代謝物の流れ又は代謝物の化学変化によって、情報が損失又は混乱するのを回避することができる。
【0077】
各チャープ・パルスは、100ミリ秒未満、好ましくは10ミリ秒未満の長さを有してもよい。一実施例では、各チャープ・パルスは1ミリ秒程度の長さを有する。別の実施例では、各チャープ・パルスは0.5ミリ秒程度の長さを有する。
【0078】
信号発生器装置は、前記読出し期間中に少なくとも10のチャープ・パルスを、好ましくは少なくとも50のパルスを適用するように構成されてもよい。一実施例では、200のチャープ・パルスが読出し期間に適用されてもよい。
【0079】
したがって、読出し期間は、例えば約100ミリ秒程度、例えばそれぞれが0.5ミリ秒の200個のチャープ・パルス、又は200ミリ秒、例えばそれぞれが1ミリ秒の200個のチャープ・パルスであってもよいことが分かる。これは次に、それぞれ2kHz及び1kHzの帯域幅、並びにそれぞれ10Hz及び5Hz程度のスペクトル・データの解像度につながり得る。
【0080】
獲得部は、一組の磁気共鳴データを生成するために、複数の読出し期間中に磁気共鳴データを獲得するように配置されてもよい。
【0081】
獲得部は、各読出し期間の開始前にRF送信装置に単バンド又はマルチバンドRFパルスを出力させるように配置されてもよく、獲得は、各読出し期間中に、それぞれの複数のチャープ・パルスを第1の勾配磁場コイルに適用し、それぞれの複数のチャープ・パルスを第2の勾配磁場コイルに適用して、スペクトル符号化及び空間符号化を第1及び第2それぞれの軸線において達成するように構成されてもよい。
【0082】
再構築部は、前記複数の読出し期間中に読み出された一組の磁気共鳴データから、画像及び画像に関するスペクトル情報を再構築するように配置されてもよい。
【0083】
第1の選択された超音波周波数及び第2の選択された超音波周波数は同じ周波数であってもよい。
【0084】
好ましくは、第1の選択された超音波周波数は第2の選択された超音波周波数とは異なる。
【0085】
好ましくは、第1の選択された超音波周波数と第2の選択された超音波周波数との間の周波数差は非可聴周波数である。つまり、超低周波数又は超音波周波数のどちらかである。一般的に、実際には、第1の選択された超音波周波数及び第2の選択された超音波周波数は、それらの間の周波数差が超低周波数であるように選択される。
【0086】
獲得部は、第1の勾配磁場コイルを第1の所定の超音波周波数で共振させるように、第1の勾配磁場コイルに電気的に接続された少なくとも1つの第1のコンデンサと、第2の勾配磁場コイルを第2の所定の超音波周波数で共振させるように、第2の勾配磁場コイルに電気的に接続された少なくとも1つの第2のコンデンサとを備えてもよい。
【0087】
第1の所定の超音波周波数は、第2の所定の超音波周波数と同じであってもよい。
【0088】
しかしながら、好ましくは、第1の所定の超音波周波数は第2の所定の超音波周波数とは異なる。
【0089】
好ましくは、第1の所定の超音波周波数と第2の所定の超音波周波数との間の周波数差は非可聴周波数である。つまり、超低周波数又は超音波周波数のどちらかである。一般的に、実際には、第1の所定の超音波周波数及び第2の所定の超音波周波数は、それらの間の周波数差が超低周波数であるように選択される。
【0090】
第1の選択された周波数は、第1の所定の周波数と同じであってもよい。第2の選択された周波数は、第2の所定の周波数と同じであってもよい。
【0091】
獲得部は更に、第3のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作るため、電気的に駆動されるように配置される、第3の勾配磁場コイルを備えてもよい。信号発生器装置は、第3の勾配磁場コイルを電気的に駆動するように配置されてもよく、特に、第3のそれぞれの軸線における空間符号化を提供して、それぞれの読出し期間中若しくはそれぞれの複数の読出し期間中に上述の磁気共鳴データ又は一組の磁気共鳴データが獲得される、検査を受けている被検体のスライスを選択するのを可能にするように配置されてもよい。
【0092】
獲得部は、獲得されたデータの信号対雑音比の改善を容易にするように、後続の過程において更なる磁気共鳴データ又は更なる一連の磁気共鳴データを獲得するように配置されてもよい。
【0093】
獲得部は、後続の過程において更なる磁気共鳴データ又は更なる一連の磁気共鳴データを獲得して、検査を受けている被検体の異なるスライスが、第3のそれぞれの軸線における空間符号化を使用して選択されるように配置されてもよい。
【0094】
MRIシステム装置は、主要ボアを有するMRIシステム、と前記ボア内で使用されるMRIシステム用コイル・インサート装置とを備えてもよい。
【0095】
インサートは、第1の勾配磁場コイル及び第2の勾配磁場コイルを備えてもよい。
【0096】
インサートは、本発明の第1の態様によるコイル・インサートを備えてもよい。
【0097】
第3の勾配磁場コイルは、MRIシステム自体の勾配磁場コイルであってもよい。これによって、この勾配磁場コイルが患者から遠ざけられて、インサートの窓が妨げられないようにする助けとするのを可能にすることができる。
【0098】
一般的に、MRIシステムは、やはり、第1のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作り、第2のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作るように配置された、更なるそれぞれの勾配磁場コイルを備える。しかしながら、本発明の上述の更なる態様にしたがって磁気共鳴データの獲得を実施する際、少なくとも幾つかの例では、これらの更なるそれぞれの勾配磁場コイルは使用されないままのことがある。
【0099】
他の実現例では、インサートが存在しないことがあり、それよりもむしろ、本発明の上述の更なる態様の第1及び第2の勾配磁場コイルが、MRIシステムの主本体に提供されることがある。
【0100】
他の実現例では、主要MRIシステム及びインサートの両方において、更には同じ軸線上で、勾配磁場コイルが利用されることがある。したがって、例えば、インサート内及び主要MRIシステム内のZ勾配磁場コイルは両方とも、符号化に使用されることがある。
【0101】
本発明の別の態様によれば、磁気共鳴データを獲得する獲得部と、獲得した磁気共鳴データから画像及びスペクトル情報を再構築する再構築部とを有する、MRIシステム装置を使用する、エコー・プラナー法分光イメージング方法が提供され、
方法は、
単バンド又はマルチバンドRFパルスを、検査を受けている被検体に適用することと、
第1の勾配磁場コイルを第1の超音波周波数で電気的に駆動して、第1のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作ることと、第2の勾配磁場コイルを第2の超音波周波数で電気的に駆動して、第2のそれぞれの軸線に沿った空間的に変動する磁場を作ることと、
磁気共鳴データを獲得する一部として、読出し期間中に、複数のチャープ・パルスを第1の勾配磁場コイルに適用し、複数のチャープ・パルスを第2の勾配磁場コイルに適用して、スペクトル符号化及び空間符号化を第1及び第2それぞれの軸線において達成することと、
前記読出し期間中に磁気共鳴データを読み出すことと、
前記読出し期間中に読み出された磁気共鳴データから、画像及び画像に関するスペクトル情報を再構築することとを含む。
【0102】
一般用語において、また文言の必要な修正を含めて、上記した本発明の任意の態様に従う上記に定義した更なる特徴は全て、上記に定義した本発明の他の全ての態様の更なる特徴として適用可能であることに留意されたい。これら更なる特徴は、簡潔にするため、本発明の各態様の後に再記述されない。
【0103】
以下、本発明の実施例について、単なる例として、添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】MRIシステム装置の概略図である。
図2図1に示されるMRIシステム装置で使用されてもよいタイプであって、Z勾配磁場コイルを有する、MRIシステム用コイル・インサートを示す概略図である。
図3】Z勾配磁場コイルのみを示す代替のMRIシステム用コイル・インサートの一部、及びインサートのX又はY勾配磁場コイルを示す概略図である。
図4図3に示されるX又はY勾配磁場コイルの巻線パターンを、従来のX又はY勾配磁場コイルの一部と比較して、更に詳細に示す図である。
図5】区分されたZ軸勾配を作る、代替のMRIシステム用コイル・インサートにおけるZ勾配磁場コイルの代替の一組の巻線を示す図である。
図6図1に示されるタイプのMRIシステム装置を用いて実施されてもよい、エコー・プラナー法分光イメージング技術を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
図1は、この例では、主要MRIシステム1とMRIシステム用コイル・インサート2とを備える、MRIシステム装置を概略的に示している。この実施例では、主要MRIシステム1の構造及び動作は大部分が従来的である。したがって、主要MRIシステムの様々な態様を図面に図示し後述する一方で、MRIシステム1の他の態様は詳細には図示又は記載しないが、当然ながら、これらの詳細はMRI検査の分野で良く知られ理解されている。
【0106】
MRIシステム・インサート2は、既存のMRIシステムと協働して供給され使用されるように配置される。当然ながら、これは、全く新しいMRIシステムを開発する必要があるというよりも、既存のMRIシステムが本発明の発想を利用するように適合されてもよいことを意味するので、商業的に有利である。つまり、代替例では、図1に示されるMRIシステム装置は最初から作製されてもよく、更なる代替例では、そのように所望ならば、インサート2の特徴及び機能がMRIシステム1の主本体に組み込まれてもよい。
【0107】
図1では、MRIシステム用コイル・インサート2は、明瞭にするため、主要MRIシステム1の外部に示されている。しかしながら、動作の際、インサート2は、主要MRIシステム1の主要ボアB内の位置へ、図1に点線で示される位置へと移動される。図2は、インサート2がMRIシステム1のボアBの外部にある図1に示される位置に対応する図2に示される位置と、MRIシステム1のボアB内部の位置との間で摺動的に移動可能であるようにして、MRIシステム1のベッド3に取り付けられた、図1に示されるタイプのインサート2を概略的に示している。
【0108】
様々な異なる形態のインサートが提供されてもよい。
【0109】
図2に示されるインサート2’は、インサート2の各端部に1つずつ設けられた第1の組の巻線2z1と第2の組の巻線2z2とを備える、インサートZ勾配磁場コイル2zを備える。
【0110】
Zコイル巻線が、第1の組の巻線2z1と第2の組の巻線2z2との間の中央領域にはないことが、最適ではない磁場につながり得るが、少なくとも一部の状況では、これらの不完全さは許容可能であると判断されている。一例として、人の頭部の診察で使用されるインサートにおける、第1の組の巻線2z1及び2z2の間の空間が比較的小さいので、これらの不完全さは許容可能である。
【0111】
図1に示されるインサート2は、第1及び第2の組の巻線2z1及び2z2を備える類似のインサートZ勾配磁場コイル2zを備え、第1及び第2の組の巻線2x1及び2x2を備えるインサートX勾配磁場コイル2xを更に備える。これらの組の巻線は、図3に分離して更に明確に示されている。
【0112】
図1及び3のインサート2及び図2のインサート2’の両方において、各組のZ巻線2z1、2z1自体が、二組のらせん状に巻かれた巻回2z1a、2z1b、2z2a、2z2bを備える。第2の層2z1b、2z2bは、それぞれの第1の層2z1a、2z2aの上に、ただしわずかに整列せずに巻かれるので、外側の組の導体は逆の電流方向を提供することができる。これは、勾配磁場の遮蔽を改善して、周囲の導体材料における渦電流を最小限に抑えることが見出されている。
【0113】
図1及び3のインサート2におけるX勾配磁場コイル2xの巻線2x1、2x2の巻線パターンは、図3と組み合わせて図4を検討することによってより明白に分かる。
【0114】
図4は、Xインサート勾配磁場コイル2xの巻線の組2x1、2x2を、より従来的に巻かれたX勾配磁場コイル(図4では「従来技術」と名づけている)の内層と比較して示している。巻線の各組2x1、2x2はらせん状に巻かれ、一周の巻回はそれぞれ、第1の端部セグメント2x1b、2x2bを介して外側弓状セグメント2x1c、2x2cに接続される内側弓状セグメント2x1a、2x2aを備える。巻回は、次の巻回の始まりに向かって内側に戻る、第2の端部セグメント2x1d、2x2dによって完成する。次の巻回は、後続の巻回の対応する内側弓状セグメント2x1a、2x2aで始まり、同様に続く。
【0115】
各内側弓状セグメントの円弧は、他の内側弓状セグメントと同じ半径を有することが分かる。同様に、各外側弓状セグメントの円弧は、他の外側弓状セグメントと同じ半径を有する。内側セグメントの円弧の半径は外側セグメントの円弧の半径よりも小さい。
【0116】
この巻線の配置は、インサートの軸線方向で、従来技術の巻線の配置よりも長い線形領域につながり、二組の巻線2x1、2x2の端部間における、従来技術のパターンよりも大きい円周方向の隙間が可能になる。かかる巻線によって作られる磁場の性質における妥協があり得るが、本発明のシステムではこれらの問題を上回る利益があることが見出されている。
【0117】
図1及び3に示されるインサート2は、患者の頭部、当然ながら特に脳の検査を行う際の使用のために設計されている。したがって、インサート2は、患者の頭部がインサートのボア内に配設されるように配置される。インサートにおけるZ勾配磁場コイル及びX勾配磁場コイル2z、2xの配置によって、ユーザの頭部がインサート2に挿入されたときにそこを通して見ることができる、窓W(図3に概略的に示され、その位置は図1に概略的に示される)をインサート2に設けることが可能になる。この窓Wは、所望の場合インサートの開口部であってもよく、又は透明材料が充填された開口部であってもよい。
【0118】
更に、X勾配磁場コイルがない、図2に示されるタイプのインサート2’では、やはり、ユーザの頭部がインサート1内にあるときにそこを通して見ることができる、1つ又は複数の窓Wを作成する可能性がある。当然ながら、かかる窓を提供することは、患者の閉所恐怖の感覚に対抗する助けとなる。
【0119】
MRIシステム装置は、インサート2の勾配磁場コイル2z、2xを駆動するために提供される、信号発生器装置4を備える。
【0120】
商用の用語では、この信号発生器装置4はインサート2と共に提供されてもよく、これらを併せて、既存のMRIシステム1で使用することができる、MRIシステム用コイル・インサート装置と見なすことができる。当然ながら、他の代替例でもやはり、完全なシステムが開発される場合、別個の信号発生器装置は不要なことがあり、その代わりにこれが、主要MRIシステム内に提供されるシステムに組み込まれてもよい。
【0121】
信号発生器装置4は、インサート2の勾配磁場コイル2z、2xを超音波周波数で駆動するように配置される。即ち、可聴範囲を超える周波数である。
【0122】
2つ以上の勾配磁場コイルがインサート2に、例えば図1及び3に示されるタイプのインサート2にある場合、いくつかの例では、同じ超音波周波数が勾配磁場コイル2z、2xそれぞれを駆動するのに使用されてもよい。
【0123】
或いは、好ましくは、2つの勾配磁場コイル、例えば2つの勾配磁場コイル2z、2xがインサート2にある場合、信号発生器装置4は、これらをそれぞれ異なる超音波周波数で駆動するように配置される。
【0124】
一例として、いくつかの実施例では、単一の超音波周波数が使用され、20.2kHzで設定されてもよい。2つの異なる周波数が使用される他の実施例では、これらは例えば、一方では22kHz、他方では19.9kHzであってもよく、一方はX勾配磁場コイル2xを駆動するのに使用され、もう一方はZ勾配磁場コイル2zを駆動するのに使用される。実際には、認識されるように、どの周波数が選択されてもよいかについて非常に多くの自由度がある。
【0125】
しかしながら、第一に2つの異なる周波数が選択され、第二にこれら2つの異なる周波数の差自体が非可聴周波数であることが、特に有利であると判断されている。これは、導入部で言及したように、2つの周波数が異なる場合、好ましい空間符号化を達成することができ、非可聴範囲の周波数差を有することで、2つの選択された非可聴周波数において発生する音の間に作られる可聴の「うなり」信号の発生を回避できる。一般的に、2つの周波数は、周波数差が人間の聴覚範囲を下回るように選択されてもよい。即ち、周波数差は20Hz以下である。
【0126】
図1に概略的に示されるように、それぞれのコンデンサCx、Czを介してインサートの各勾配磁場コイル2x、2zを駆動する、信号発生器装置4が配置される。これらのコンデンサの値は、それぞれの勾配磁場コイル2x、2zを、信号発生器装置4によって駆動される周波数で共振させるために選択される。これによって、高インピーダンス信号発生器を使用し、より低い電流を勾配磁場コイル2x、2cに送達することが容易になり、それが次いで、それらの間の結合を低減する助けとなり得る。
【0127】
勾配磁場コイルを所定の周波数で共振させるという発想は、勾配磁場コイルが1つの信号発生器によって駆動される1つの電気的実体である状況、及び勾配磁場コイルが個別に駆動されてもよい複数の別個の電気的実体で構成されるという状況を包含することに留意されたい。したがって、例えば勾配磁場コイルに複数の個別の巻線がある場合、適切なコンデンサを提供することによってそれぞれ共振するようにされる。
【0128】
本発明の装置では、RF遮蔽はインサート2に、又はインサート2と主要MRIシステムとの間に提供されない。これは、別の場合であればインサート勾配磁場コイル2x、2zが超音波周波数で駆動されたときに起こるような、渦電流の発生による損失を最小限に抑える助けとなる。同時に、インサート、及び特に勾配磁場コイル2x、2zは、主要MRIシステムによって送信及び受信される信号に対して比較的透明である。したがって、主要MRIシステムの動作は、インサート2が主要MRIシステムのボアB内の定位置にある状態で継続してもよい。
【0129】
一般用語では、インサート勾配磁場コイル2x、2z(又は超音波周波数で動作する任意の勾配磁場コイル)の近傍における導電性材料の量を最小限に抑えることは、渦電流の影響を最小限に抑えることによる効率の改善を助ける。超音波周波数で駆動される勾配磁場コイルと金属物との間の隔間が増加するほど、問題は低減される。したがって、本発明の装置では、アクティブな勾配磁場遮蔽は最適ではなく、又は更には主要MRIシステムに対しては存在せず、他の金属物が主要MRIシステム内にあるという事実は許容可能である。超音波駆動される勾配磁場コイルの近傍にある金属を最小限に抑えるというこの要求により、i)かかる周波数の使用が実用的であるということが明白でなくなり、ii)主要MRI機械ではなくインサートにそれらを含めることが、少なくとも一部の状況ではより便利になる。
【0130】
図5は、インサートの代替形態に提供されてもよい、Z勾配磁場コイルの代替の形態を概略的に示している。同様に、代替例でも、この形態のZ勾配磁場コイルは新たに構築されたMRI機械1の主本体に提供されてもよい。
【0131】
ここで、Z勾配磁場コイルは、上述したZ巻線の組2z1、2z2と同じ構造をそれぞれ有する、四組の巻線2z1~2z4を備える。やはり、これらの巻線は、信号発生器装置4によって駆動されるように配置され、1つ又は複数のコンデンサ(図示なし)を含めることによって、選択された駆動周波数で共振させるように配置される。
【0132】
この場合、従来の場合のようにZ勾配磁場コイルによってインサート内に、また図1~4に関して上述したインサート内に設定されるZ勾配磁場を単調に変化させるのではなく、ここでは、区分されたZ勾配が作られる。即ち、Z勾配磁場を単調に変化させるのではなく、図5のインサートは、より複雑に変動するZ勾配磁場を作るように配置される。特に、これは、多葉性であるように、また例えば、Z軸に沿って多項式状又は正弦曲線状の変動を有するように設定されてもよい。これは次に、インサートに沿った単位長さ当たりの勾配の適切な変化を依然として提供しながら、軸線の一端から他端までの勾配磁場の差の最大振幅を制御できることを意味する。区分されたZ勾配磁場を提供することは、特に、より長いインサートが使用される場合、即ち頭部だけよりも長い領域を検査する場合、例えばインサートが全身検査に使用されるか、又は勾配巻線が全身MRI機械に組み込まれる場合に、有利であり得ると判断されている。更に、SENSE(感度符号化)再構築技術は、MRIの分野で良く知られているように、図5に示されるインサートによって生成されるタイプの区分されたZ勾配を使用して、磁気共鳴データを獲得する際に得られた情報を成功裏に明らかにすることができると判断されている。更に、かかる区分されたZ勾配を使用することで、検査される被検体におけるPNSの発現を低減することができるか、或いはPNSの発現が得られる前により強力なZ勾配の使用を可能にすると判断されている。
【0133】
主要MRIシステム1の簡潔な紹介に続いて、MRIシステム装置の動作について以下に記載する。
【0134】
一般用語では、主要MRIシステム1は、磁気共鳴データを獲得する獲得部Iと、獲得した磁気共鳴データから画像及びそれらの画像に関する分光情報を再構築する再構築部Rとを備える。図1に示される装置では、インサート2及び信号発生器装置4は獲得部Iの一部を形成する。即ち、それらは、主要MRI機械の獲得部Iと協働して磁気共鳴データを獲得し、データは次に、再構築部Rによって再構築されてもよい。
【0135】
主要MRI機械1の獲得部Iの要素は、一般用語では、磁石及びコイル装置5と制御システム6とを備える。制御システム6は、磁石及びコイル装置5の動作を制御する出力部61と、磁石及びコイル装置5から帰ってくる情報を受信する受信部62とを有する。コイル・インサート2が使用されている本発明の装置では、出力部61は制御信号を信号発生器装置4にも発行し、いくつかの実施例では、受信部62はインサート2からの出力も受信するが、これは任意選択である。ここに記載する装置では、磁気共鳴データの受信は主要MRI機械1自体で実施される。
【0136】
上記から示唆されるように、代替例では、インサート2及び信号発生器装置の構成要素はMRI機械自体に組み込まれてもよい。
【0137】
MRI機械は、一般的に、動作を制御し受信データを処理する、1つ又は複数の「コンピュータ」を備えることが認識されるであろう。かかるコンピュータはそれぞれ、プロセッサと、メモリと、少なくとも1つのデータ記憶デバイスとを備えてもよい。制御システム6はコンピュータ実装されてもよい。再構築部Rはコンピュータ実装されてもよい。
【0138】
磁石及びコイル装置5は、静的磁場を作る主要磁石51と、X、Y、及びZ勾配磁場コイル52と、高周波数送信コイル53と、高周波数受信コイル54とを備える。
【0139】
動作の際、出力部61は、駆動電流を勾配磁場コイル52に送達し、適切な高周波数送信パルスを送信コイル53によって出力させ、受信部62は受信コイル54からの入力を受信する。
【0140】
本発明の実施例では、出力部61はまた、制御トリガ信号を信号発生器装置4に提供して、インサート勾配磁場コイル2x、2zを駆動する勾配駆動信号を発生させる適切なタイミングを取ることを可能にする。
【0141】
原則的に、主要MRIシステム1の勾配磁場コイル52及びインサート2の勾配磁場コイル2x、2zの任意の組み合わせが、所望の符号化効果をもたらすのに使用されてもよい。
【0142】
最も一般的には、恐らく、インサート2がX勾配磁場コイル2x及びZ勾配磁場コイル2zを含む場合、これらは主要MRI機械1のY勾配磁場コイル52yと組み合わせて使用されることがある。
【0143】
したがって、特定の実例では、主要MRI機械1の勾配磁場コイル52yは、被検体の特定のスライスを選択して検査するために空間符号化に使用されてもよく、インサート2のZ及びX勾配磁場コイル2z、2yは、そのスライス内の空間符号化に使用することができる。
【0144】
インサートがZ勾配磁場コイルのみを含む状況では(例えば、図2に示されるインサートでは)、主要MRI機械1のX及びY勾配磁場コイル52x、52yが、インサート2のZ勾配磁場コイル2zと協働して使用されてもよい。
【0145】
他の状況では、主要MRI機械1及びインサート2の1つの特定の軸線上にある両方の勾配磁場コイルが、共に使用されてもよい。
【0146】
例えば、図2に示されるインサートは、MRI機械1からのX、Y、及びZ勾配磁場コイル52x、52y、52zが、インサートのZ勾配磁場コイル2zと併せて使用される状況で、使用されてもよい。これは、空間符号化に対する異なる選択肢を提供することができる。
【0147】
上述の状況では、主要MRI機械1の勾配磁場コイル52は従来の周波数で駆動されるが、インサート2の勾配磁場コイルは超音波周波数で駆動される。
【0148】
図6は、上述のタイプのMRIシステム装置を使用して実施することができる、エコー・プラナー法分光イメージング(EPSI:Echo Planar Spectroscopic Imaging)技術のタイミング図を示している。特に、図1のMRIシステム装置は、上記図1~3に関して記載したタイプのインサートと併せて使用されたとき、エコー・プラナー法分光イメージング・システムとして使用され、図6に示されるタイミング図にしたがって操作されてもよい。
【0149】
この技術では、インサート2のZ勾配磁場コイル2zは、インサート2xのX勾配磁場コイル、及び主要MRI機械1のY勾配磁場コイル52yと共に使用される。タイミング図6は、図6の技術を実施したときに、これらの勾配磁場コイルに適用される信号を概略的に示している。認識されるように、「Gzインサート」はインサートのZ勾配磁場コイル2zに適用される信号を指し、「Gxインサート」はインサートのX勾配磁場コイル2xに適用される信号を指し、「Gy本体」は主要MRI機械のY勾配磁場コイル52yに適用される信号を指す。
【0150】
更に、タイミング図では、RFは、主要MRI機械1の送信コイル53を使用して適用される信号を示す。
【0151】
各反復期間(TR)の開始時に、マルチバンド・パルスがRF送信コイル53によって適用され、スライス選択パルスがMRI機械1のY勾配磁場コイル52yに適用される。次に、続く読出し期間に、それぞれの複数のチャープ・パルスが、一方ではインサート2のZ勾配磁場コイル2zに、他方ではインサート2のX勾配磁場コイル2xに適用される。本発明の実施例では、各チャープは500マイクロ秒の長さを有し、合計200のかかるチャープが、読出し期間にZ勾配磁場コイル及びX勾配磁場コイル2z、2xそれぞれに適用される。
【0152】
本発明の実施例では、チャープはそれぞれ、他方のチャープそれぞれと同じ波形のものであり、Z勾配磁場コイル2zのチャープ及びX勾配磁場コイル2xのチャープは互いに同位相で適用される。しかしながら、他の可能性が使用可能である。
【0153】
チャープを適用する目的は、大きいK空間(軸線当たりの振幅がその軸線の空間解像度を規定する)、及びK空間の地点/円間の距離(減衰する振幅が視野を規定する)を得ることである。
【0154】
この技術を用いて、全ての空間符号化を各チャープにおいて規定することができ、一方でスペクトル情報がチャープ群にわたって、即ちこの実例では200のチャープにわたって符号化される。チャープの数及びそれらの長さ、並びにチャープの合計長さによって、スペクトル帯域幅及び解像度が決まる。したがって、この実例では、各チャープの長さが500マイクロ秒である場合、帯域幅は2kHzとなり、チャープの合計長さは100ミリ秒であり、これによって10Hz程度の解像度が得られる(緩和及び他の小さい単位の影響は除外する)。
【0155】
別の実施例では、各チャープは1ミリ秒の長さであってもよい。そのような例では、200のチャープがやはり適用される場合、これによって1kHzの帯域幅と、上述の例のような10Hzではなく、5Hz程度の解像度がもたらされる。
【0156】
各チャープは、それぞれのインサート勾配磁場コイル2z、2xが稼働するように構成される、超音波周波数の限定された時間変動する振幅の適用から成る。この実例では、2つの超音波周波数は同じであるが、他の例では、それらは異なっており、上述した更なる利益がもたらされてもよい。
【0157】
本実施例では、タイミング図に示されるような結果の精度を向上するのに4つのショットが使用される。MB2における第2のマルチバンド・パルスは、第2のショットの開始に提供され、更に適切なスライス選択信号は、主要MRI機械1のY勾配磁場コイル52yに適用される。これに続いて、チャープの第2のシーケンスが、この第2のショットの読出し期間中に、インサート2のZ勾配磁場コイル及びX勾配磁場コイル2z、2xに適用される。プロセス全体が第3及び第4のショットで再び繰り返されるので、獲得された磁気共鳴データは、画像及び画像と関連付けられたスペクトル・データを再構築するため、再構築部Rに供給されてもよい。再構築システムRは、SENSE(感度符号化)再構築を実施するソフトウェア下で構成されてもよい。
【0158】
所望される場合、信号対雑音比を改善する目的でより多くのデータを得るために、上述したような更なる過程が実施されてもよい。
【0159】
別の方法として、又はそれに加えて、被検体の異なる「Yスライス」に関して更なる過程が実施されてもよい。即ち、検査のためにスライスの第2のバッチを選択するなどのために、スライス選択の異なる一組のオフセット周波数が、MR機械1のRFコイル54に適用されてもよい。
【0160】
この技術を用いて各チャープで空間符号化が実施され、一組のスライスに対する完全な空間符号化及びスペクトル符号化が、1つのショットのみが使用される場合は、合計100ミリ秒程度で、図6に示される実例のように4つのショットが使用される場合は、400ミリ秒程度で実施されてもよいことが注目される。
【0161】
これは、非常に短い期間にわたって収集された画像データ及びスペクトル・データを考慮できることを意味する。これは、はるかに長い符号化時間が必要な、より従来的な技術では起こるであろう、結果における情報の損失又は混乱を回避する助けとなり得る。より従来的なエコー・プラナー法分光イメージング技術では、データは、関心範囲全体にわたって一度に1ボクセルずつ符号化され、空間符号化が実際には最初に特定のボクセルを選択し、次に分光サンプリングがそのボクセルに関して行われてから、次のボクセルに移る。これは、数秒程度のはるかに長い検査期間につながる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】