(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171449
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】塗装鋼板の塗装方法、塗装鋼板及び塗装評価方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20221104BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20221104BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D7/14 G
B05D3/00 D
B05D3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078098
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】島 直貴
(72)【発明者】
【氏名】岸野 啓司
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC28
4D075AC29
4D075AC35
4D075AC72
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC94
4D075AC95
4D075AC96
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB02
4D075EA05
(57)【要約】
【課題】塗装鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価でき、欠陥がなく外観性に優れた塗膜を形成できる塗装鋼板の塗装方法を提供する。
【解決手段】上記目的を達成するべく、本発明は、ピックアップロール4及びアプリケーターロール5を備えたロールコーターによって、連続的に走行する鋼板6に塗布液2をコーティングする、塗装鋼板の塗装方法であって、前記コーティング時の、前記ロール3に形成した塗布液2の塗膜状態及び前記ピックアップロール4と前記アプリケーターロール5とのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液の状態(カーテン7の状態)を撮影し、撮影した画像の評価結果に基づいて、前記塗布液2のコーティングを行うことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップロール及びアプリケーターロールを備えたロールコーターによって、連続的に走行する鋼板に塗布液をコーティングする、塗装鋼板の塗装方法であって、
前記コーティング時の、前記ピックアップロールに形成した塗布液の塗膜状態、前記アプリケーターロールに形成した塗布液の塗膜状態、及び、前記ピックアップロールと前記アプリケーターロールとのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液の状態(カーテンの状態)を撮影し、
撮影した画像の評価結果に基づいて、前記ピックアップロール及び前記アプリケーターロールの、ロール周速及びギャップ若しくはニップ圧を調整しながら、前記塗布液のコーティングを行うことを特徴とする、塗装鋼板の塗装方法。
【請求項2】
前記ピックアップロールに形成した塗布液の塗膜状態及び前記アプリケーターロールに形成した塗布液の塗膜状態は、それぞれのロール上に形成されたローピングの、均一性、幅及びピッチの状態であり、
前記カーテンの状態は、前記掻き落とされている余剰塗布液の均一性及び前記余剰塗布液のイレギュラーな持ち上げ不良の有無であることを特徴とする、請求項1に記載の塗装鋼板の塗装方法。
【請求項3】
前記塗布液のフォードカップ粘度(FordカップNo.4)が45~80秒であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗装鋼板の塗装方法。
【請求項4】
前記ロールコーターは、2ロールコーターであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗装鋼板の塗装方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の塗装方法によって形成された塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記塗膜は、3D顕微鏡を用いて表面の凹凸高さ(H)及び粗度(R)を測定し、凹凸高さの平均(Have)、粗度の平均(Rave)及び膜厚(T)(μm)が、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする、塗装鋼板。
0.30×T≦Have≦0.50×T ・・・(1)
Rave≦0.09×T ・・・(2)
【請求項6】
ピックアップロール及びアプリケーターロールを備えたロールコーターによって鋼板上に形成された、塗布液のコーティングの状態を評価する塗装評価方法であって、
前記コーティング時の、前記ピックアップロールに形成した塗布液の塗膜状態、前記アプリケーターロールに形成した塗布液の塗膜状態、及び、前記ピックアップロールと前記アプリケーターロールとのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液の状態(カーテンの状態)を撮影し、撮影された画像から塗布液のコーティング状態の評価を行うことを特徴とする、塗装評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価でき、外観性に優れた塗膜を形成できる塗装鋼板の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に連続して走行する亜鉛めっき鋼帯などの金属帯の表面に、化成剤、塗料等の塗布液をコーティングする手段として、金属帯を塗布液中に浸漬したり、金属帯表面に塗布液をスプレー噴射したり、ロールコーターやブラシ等を用いて塗布液を塗布するなど各種の手段がある。
【0003】
これらの各種の手段のうち、ロールコーターは、連続して走行するされる鋼板表面に、塗装用ロールが2本(2ロールコーター)又は3本(3ロールコーター)配設されたロールコーターを用いて行われるのが一般的である。
【0004】
図1は、2ロールコーターの一例を示したものである。ピックアップロール4とアプリケーターロール5を備え、コーターパン1内の塗布液2をピックアップロール4で汲み上げ、汲み上げた塗布液2をアプリケーターロール5へ転写し、アプリケーターロール5は、転写した塗布液2を鋼帯(鋼板)6へと転写することで、鋼板上に塗布液をコーティングする。鋼板上へ塗布液をコーティングする方法には、ナチュラルコートとリバースコートがある。
図1に示したロールコーターは、リバースコートであり、中の実線矢印はロールの回転方向を示す。
【0005】
なお、上述したようなロールコーターを用いた塗装鋼板の塗装方法については、塗装後に塗膜の形成状態を確認し、不具合があった場合等には、その後コーティング条件を調整することが通常である。
そのため、鋼帯や塗布液等の材料の無駄をなくす観点から、塗布液をコーティングする際に鋼板上に形成された塗膜状態を推定でき、推定した塗膜状態に基づいて塗布液のコーティング条件を制御できる技術の開発が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、塗装鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価でき、欠陥がなく外観性に優れた塗膜を形成できる塗装鋼板の塗装方法、欠陥がなく外観性に優れた塗膜の形成された塗装鋼板、及び、塗装鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価できる塗装評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ピックアップロール及びアプリケーターロールを備えたロールコーターによって、連続して走行する鋼板に塗布液をコーティングする、塗装鋼板の塗装方法について、上記の課題を解決すべく検討を行った結果、コーティング時の、ピックアップロール、アプリケーターロール、及び、該ピックアップロールと該アプリケーターロールとのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液の状態を評価することで、鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価できること、さらに、得られた評価結果に基づいて、ピックアップロール及びアプリケーターロールの条件を調整することで、欠陥がなく外観性に優れた塗膜を形成できることを見出した。
【0008】
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
1.ピックアップロール及びアプリケーターロールを備えたロールコーターによって、連続的に走行する鋼板に塗布液をコーティングする、塗装鋼板の塗装方法であって、
前記コーティング時の、前記ピックアップロールに形成した塗布液の塗膜状態、前記アプリケーターロールに形成した塗布液の塗膜状態、及び、前記ピックアップロールと前記アプリケーターロールとのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液の状態(カーテンの状態)を撮影し、
撮影した画像の評価結果に基づいて、前記ピックアップロール及び前記アプリケーターロールの、ロール周速及びギャップ若しくはニップ圧を調整しながら、前記塗布液のコーティングを行うことを特徴とする、塗装鋼板の塗装方法。
【0009】
2.前記ピックアップロールに形成した塗布液の塗膜状態及び前記アプリケーターロールに形成した塗布液の塗膜状態は、それぞれのロール上に形成されたローピングの、均一性、幅及びピッチの状態であり、
前記カーテンの状態は、前記掻き落とされている余剰塗布液の均一性及び前記余剰塗布液のイレギュラーな持ち上げ不良の有無であることを特徴とする、上記1に記載の塗装鋼板の塗装方法。
【0010】
3.前記塗布液のフォードカップ粘度(FordカップNo.4)が45~80秒であることを特徴とする、上記1又は2に記載の塗装鋼板の塗装方法。
【0011】
4.前記ロールコーターは、2ロールコーターであることを特徴とする、上記1又は2に記載の塗装鋼板の塗装方法。
【0012】
5.上記1~4のいずれか1項に記載の塗装方法によって形成された塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記塗膜は、3D顕微鏡を用いて表面の凹凸高さ(H)及び粗度(R)を測定し、凹凸高さの平均(Have)、粗度の平均(Rave)及び膜厚(T)(μm)が、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする、塗装鋼板。
0.30×T≦Have≦0.50×T ・・・(1)
Rave≦0.09×T ・・・(2)
【0013】
6.ピックアップロール及びアプリケーターロールを備えたロールコーターによって鋼板上に形成された、塗布液のコーティングの状態を評価する塗装評価方法であって、
前記コーティング時の、前記ピックアップロールに形成した塗布液の塗膜状態、前記アプリケーターロールに形成した塗布液の塗膜状態、及び、前記ピックアップロールと前記アプリケーターロールとのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液の状態(カーテンの状態)を撮影し、撮影された画像から塗布液のコーティング状態の評価を行うことを特徴とする、塗装評価方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、塗装鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価でき、欠陥がなく外観性に優れた塗膜を形成できる塗装鋼板の塗装方法、欠陥がなく外観性に優れた塗膜の形成された塗装鋼板、及び、塗装鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価できる塗装評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ピックアップロール及びアプリケーターロールを備えたロールコーターを模式的に示した斜視図である。
【
図2】本発明の塗装鋼板の塗装方法に用いられるロールコーターの一実施形態を模式的に示した断面図である。
【
図3】ロール上に形成されたローピングを模式的に示した断面図である。
【
図4】ピックアップロールに形成した塗布液の塗膜状態、アプリケーターロールに形成した塗布液の塗膜状態、及び、前記カーテンの状態について、それぞれ5段階評価を行う際の基準となる評価点例を示したものである。
【
図5】ピックアップロールに形成した塗布液の塗膜状態、アプリケーターロールに形成した塗布液の塗膜状態、及び、前記カーテンの状態について、それぞれ、最も良い評価点(5点)と最も悪い評価点(1点)とを対比したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
(塗装鋼板の塗装方法)
本発明の塗装鋼板の塗装方法(以下、単に「本発明の塗装方法」ということがある。)は、
図1に示すように、ピックアップロール4及びアプリケーターロール5(以下、これらをまとめて「ロール3」ということがある。)を備えたロールコーターによって、連続的に走行する鋼板6に塗布液2をコーティングする塗装方法である。
【0017】
ここで、前記ピックアップロール4は、
図2に示すように、ロール下部がコーターパン1内の塗布液2に浸漬するように設けられる。前記ピックアップロール4は、回転に伴い、コーターパン1内の塗布液2を汲み上げる。
図2では、前記ピックアップロール4が反時計回りに回転する場合を例示している。
【0018】
前記アプリケーターロール5は、前記ピックアップロール4の周面に対し、所定のニップ圧又はギャップで接触し、その転写部の位置まで移動したピックアップロール4上の塗布液2が、ニップ圧又はギャップで所定の膜厚に絞られながら、アプリケーターロール5の周面に転写される。前記アプリケーターロール5に転写された塗布液2は、アプリケーターロール5の回転に伴い、鋼板6側に移動し、鋼板6の表面に連続して塗布される。
図2に示す例では、前記アプリケーターロール5は時計回りに回転し、前記ピックアップロール4から転写された塗布液2が、前記アプリケーターロール5の回転に伴って鋼板6側に移動することで、塗布液2を鋼板6上にコーティングしている。
【0019】
前記ピックアップロール4の材質や寸法については、特に限定はされず、塗布液2の種類や、要求される性能に応じて適宜選択することができる。
前記アプリケーターロール5の材質や寸法についても、特に限定はされず、塗布液2の種類や、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、前記アプリケーターロール5が金属製のロールの場合には、前記ピックアップロール4と接触することがないため、前記ピックアップロール4との接触面にはギャップが形成される。一方、前記アプリケーターロール5がゴムロールの場合には、前記ピックアップロール4と所定の圧力で接触しているため、前記ピックアップロール4との接触面は所定のニップ圧が形成される。
【0020】
なお、
図1は、前記アプリケーターロール5から鋼板6への塗布液2の転写は、前記鋼板(鋼帯)6がバックアップロール8に巻き付けられた状態で行っているが、鋼板6を挟み両面にロールコーターを配設、あるいは、塗装面の反対側にサポートロールを配設することで、バックアップロールを無くすことも可能である。
また、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5には、それぞれ転写されずに残った塗布液2を除去するための掻取装置(図示せず)を設けることもできる。
【0021】
前記塗布液2の種類については、特に限定はされず、前記鋼板6上に形成される塗膜の種類(化成皮膜、下塗塗膜、上塗塗膜など)に応じて適宜選択することができる。
さらに、本発明による欠陥がなく外観性に優れた塗膜を形成できるという効果をより顕著に発揮できる観点から、前記塗布液2の粘度は高いほうが好ましく、具体的には、フォードカップ粘度(FordカップNo.4)で45~80秒程度であることが好ましく、50~60秒程度であることがより好ましい。前記塗布液2のフォードカップ粘度(FordカップNo.4)が45秒以上の場合には、ローピング等の欠陥により塗膜の外観性が悪化しやすいため、本発明による効果がより顕著に発揮できる。
【0022】
なお、前記ロールコーターは、
図1及び2に示すように、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5を備えた2ロールコーターであってもよいし、中間ロールや補助ロール等のその他のロール(図示せず)をさらに備えたマルチロールコーターであってもよい。
それらの中でも、前記ロールコーターは、2ロールコーターであることが好ましい。本発明による欠陥がなく外観性に優れた塗膜を形成できるという効果をより顕著に発揮できるためである。
【0023】
そして、本発明の塗装方法は、
図2に示すように、前記塗布液2をコーティングする際の、前記ピックアップロール4に形成した塗布液2の塗膜状態、前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2の塗膜状態、及び、前記ピックアップロール4と前記アプリケーターロール5とのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液7の状態(カーテン7の状態)を撮影し、
撮影した画像の評価結果に基づいて、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5の、ロール周速及びギャップ若しくはニップ圧を調整しながら、前記塗布液2のコーティングを行うことを特徴とする。
【0024】
前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2のローピング等の塗膜状態や、前記カーテン7の状態は、前記鋼板6上に形成される塗膜6Aの表面性状に大きく影響を与えることから、これらの状態を正確に把握し、評価することによって、鋼板6に形成された塗膜6Aの状態を実際に観察することなく、コーティング中に精度良く推定し、評価を行うことができる。
そして、評価の結果に基づいて、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5の、ロール周速及びギャップ若しくはニップ圧の調整を行うことで、上述した前記ピックアップロール4に形成した塗布液2、前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2及び前記カーテン7の状態を良好な状態へと導き、欠陥がなく外観性に優れた塗膜6Aを形成することができる。
【0025】
前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5に形成した塗膜状態とは、それぞれのロール3上に転写された塗布液2が形成した塗膜の、存在や形状等の状態のことである。前記ロール3に形成された塗布液2の塗膜状態は、前記鋼板6上に形成される塗膜6Aの状態を把握できるものであれば特に限定はされず、例えば、それぞれのロール4、5上に形成されたローピング2’、2”の、有無、均一性、大きさ、幅若しくはピッチ、又は、塗膜のムラ若しくは厚さ等が挙げられる。これらの中でも、より確実に塗膜6Aの状態を推定でき、評価を行える観点から、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5に形成した塗膜状態は、それぞれのロール4、5上に形成されたローピング2’、2”の、均一性、幅及びピッチの状態であることが好ましい。
【0026】
なお、前記ローピング2’、2”とは、
図1及び
図3に示すように、前記ロール3上の塗布液2の塗膜に形成された隆起のことである。このローピング2’、2”の発生は、主にロール3の周速、ニップ圧又はギャップ、塗布液の物性値(粘度、表面張力等)に起因し、塗布液2の粘度が高いほど、また、ピックアップロール4、アプリケーターロール5の周速差が小さいほど発生しやすい。ただし、このローピングは、前記鋼板6上に塗布液2がコーティングされた後、徐々にレベリングされ、平滑化されるため、ある程度の大きさであれば生じることは問題がなく、塗布液2がコーティングされた後に均一に平滑化されるため、ピックアップロール4、アプリケーターロール5上に形成されたローピング2’、2”が均一に形成されることが重要である。
また、前記ローピング2’、2”の幅については、
図3に示すように、ローピング2’、2”の凸部分幅であり、前記ローピング2’、2”のピッチについては、
図3に示すように、ローピング2’、2”の形成される間隔のことである。
【0027】
前記カーテン7の状態とは、前記ピックアップロール4と前記アプリケーターロール5とのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液の、存在や形状等の状態である。前記カーテン7の状態は、前記鋼板6上に形成される塗膜6Aの状態を把握できるものであれば特に限定はされず、例えば、前記余剰塗布液の、有無、均一性、大きさ、イレギュラーな持ち上げ不良の有無等が挙げられる。これらの中でも、より確実に塗膜6Aの状態を推定でき、評価を行える観点から、前記余剰塗布液の均一性及び前記余剰塗布液のイレギュラーな持ち上げ不良の有無であることが好ましい。
なお、前記余剰塗布液の均一性とは、掻き落とされた余剰塗布液が落下する際の形状の均一性(カーテン7の形状の均一性)であり、前記余剰塗布液が同じ状態で落下している場合(カーテン7の形状が同じ状態で続く場合)には均一であり、落下の仕方が均一でない箇所があったり、落下の仕方に揺らぎがある場合(カーテン7の形状に統一性、連続性がない場合)には均一性がない。また、前記余剰塗布液の持ち上げ不良とは、前記余剰塗布液の落下の仕方にムラがある状態のことである。
【0028】
ここで、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2の塗膜状態、並びに、前記カーテン7の状態の撮影は、いずれも撮影装置10によって行うことができる。例えば、
図2では、前記ピックアップロール4に形成した塗布液2の塗膜状態、前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2の塗膜状態、及び、前記カーテン7の状態を観察できる位置に、それぞれ撮影装置11、12、13を設けており、各状態の撮影を行うことができる。
前記撮影装置10の種類については、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5に形成した塗膜状態、並びに、前記カーテン7の状態を精度よく撮影できるものであれば特に限定はされず、例えば高速度カメラ等を用いることができる。
なお、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5に形成した塗膜状態、並びに、前記カーテン7の状態の撮影画像は、静止画および、動画で観察することが望ましい。
【0029】
前記撮影した静止画および動画の評価方法については、前記鋼板6上に形成される塗膜6Aの状態を精度よく推定し、評価できる方法であれば特に限定はされない。
前記評価方法の1つとして、例えば、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5に形成した塗膜状態、並びに、前記カーテン7の状態の撮影画像について、それぞれ5段階評価を行う方法が挙げられる。
ここで、
図4は、前記ピックアップロール4に形成した塗布液2の塗膜状態、前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2の塗膜状態、及び、前記カーテン7の状態について、それぞれ5段階評価を行う際の基準となる状態の画像(評価点例)を示したものである。例えば、前記ピックアップロール4に形成した塗布液2の塗膜状態、前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2の塗膜状態、及び、前記カーテン7の状態を撮影した画像を、
図4に示された評価点例と照らし合わることで、点数を付し、評価を行うことができる。
【0030】
ここで、
図5は、前記ピックアップロール4に形成した塗布液2の塗膜状態、前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2の塗膜状態、及び、前記カーテン7の状態の撮影画像について、それぞれ、最も良い評価点(5点)と最も悪い評価点(1点)とを対比したものである。
図5からわかるように、評価点が1点の撮影画像は、塗膜のローピング2’、2”の均一性や明確性が劣っており、カーテン7の状態も不均一であることがわかる。
【0031】
そして、前記ピックアップロール4に形成された塗膜のローピングの状態及び前記アプリケーターロール5に形成された塗膜のローピングの状態、並びに、前記カーテン7の状態がいずれも良好なものである場合には、後述するロール3のロール周速やギャップ・ニップ圧等を調整する必要はないが、良好なものではない場合には、ロール3のロール周速及びギャップ若しくはニップ圧を調整する。
なお、前記ピックアップロール4に形成された塗膜のローピングの状態及び前記アプリケーターロール5に形成された塗膜のローピングの状態が良好であるか否かの判断基準は、要求される性能に応じて適宜設定できる。例えば、上述した5段階評価を行う場合には、評価値の合計値の閾値を設け、その閾値を下回るか否かで、ロール3のロール周速及びギャップ若しくはニップ圧を調整するかどうかの判断を行うことができる。
【0032】
また、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5の、ロール周速及びギャップ若しくはニップ圧を調整する方法については、特に限定はされず、通常行われている手順や条件に従って行えばよい。
例えば、前記ピックアップロール4およびピックアップロール5上に形成された塗膜のローピングが不均一である場合には、前記ピックアップロール4およびピックアップロール5のロール周速差を調整することでローピングを均一化することができる。また、前記カーテン7が不均一である場合や、前記余剰塗布液のイレギュラーな持ち上げ不良がある場合には、前記ピックアップロール4およびピックアップロール5のロール周速差を調整することでカーテン7の状態を調整することができる。
【0033】
なお、前記ピックアップロール4およびの前記アプリケーターロール5のロール周速のロール周速については、特に限定はされず、塗装装置の条件に従って適宜設定することができる。例えば、前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5のロール周速のロール周速は、10~200mpmの範囲で各々設定することが好ましく、前記ピックアップロール4及びピックアップロール5のロール周速差を調整するため、前記ピックアップロール4のロール周速を20~30mpmとすることがより好ましい。
【0034】
(塗装鋼板)
本発明の塗装鋼板は、上述した本発明の塗装方法によって形成された塗膜を有する塗装鋼板である。
そして、前記塗膜は、3D顕微鏡を用いて表面の凹凸高さ(H)及び粗度(R)を測定し、凹凸高さの平均(Have)、粗度の平均(Rave)及び膜厚(T)(μm)が、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする。
0.30×T≦Have≦0.50×T ・・・(1)
Rave≦0.09×T ・・・(2)
【0035】
前記塗膜が、上記(1)及び(2)の関係を満足することで、欠陥がなく外観性に優れた塗膜を得ることができる。
同様の観点から、上記(1)式は、下記式(1)’であることが好ましく、上記(2)式は、下記式(2)’であることが好ましい。
0.35×T≦Have≦0.45×T ・・・(1)’
Rave≦0.07×T ・・・(2)’
【0036】
前記凹凸高さ(H)及び前記粗度(R)については、前記塗膜表面に形成された凹凸の高さ及び粗さであり、3D顕微鏡によって測定できる。また、前記凹凸高さの平均(Have)、前記粗度の平均(Rave)は、これらの平均値であり、任意に選択した3箇所の凹凸高さ(H)及び粗度(R)の平均値を算出したものである。
【0037】
なお、前記塗膜については、鋼板上に形成される皮膜全般のことを意味し、下塗塗膜(プライマー)や上塗塗膜だけでなく、化成皮膜やその他の保護膜についても、塗膜に含まれる。
【0038】
(塗装評価方法)
本発明の塗装評価方法は、
図1及び2に示すように、ピックアップロール4及びアプリケーターロール5を備えたロールコーターによって鋼板6上に形成された、塗布液2のコーティングの状態を評価する塗装評価方法であって、
前記コーティング時の、前記ピックアップロール4に形成した塗布液2の塗膜状態、前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2の塗膜状態、及び、前記ピックアップロール4と前記アプリケーターロール5とのギャップ又はニップにより掻き落とされた余剰塗布液の状態(カーテン7の状態)を撮影し、撮影された画像から塗布液2のコーティング状態の評価を行うことを特徴とする。
前記ピックアップロール4及び前記アプリケーターロール5に形成した塗布液2のローピング等の塗膜状態や、前記カーテン7の状態は、前記鋼板6上に形成される塗膜6Aの表面性状に大きく影響を与えることから、これらの状態を正確に把握し、評価することによって、鋼板6に形成された塗膜6Aの状態を実際に観察することなく、コーティング中に精度良く推定し、評価を行うことができる。
【0039】
なお、本発明の塗装評価方法の構成については、上述した本発明の塗装方法の中で説明した内容と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により、塗装鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価でき、欠陥がなく外観性に優れた塗膜を形成できる塗装鋼板の塗装方法、欠陥がなく外観性に優れた塗膜の形成された塗装鋼板、及び、塗装鋼板に形成される塗膜状態をコーティング中に精度良く推定評価できる塗装評価方法を提供できる。