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特開2022-171451半導体装置の製造方法及び半導体装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171451
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20221104BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01L21/92 602J
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078101
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宮森 雄壱
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA08
4M118AB01
4M118BA14
4M118FA06
4M118GA02
4M118GC07
4M118GD01
4M118GD07
4M118HA30
(57)【要約】
【課題】半導体装置の製造歩留まりの向上を図る。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、側壁で囲まれた開口部から露出するボンディングパッドを流動性の導電材料で覆い、前記ボンディングパッドに導電部材を接続する前に、前記ボンディングパッドから前記流動性の導電材料を除去する、ことを含む。
【選択図】図5E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁で囲まれた開口部から露出するボンディングパッドを流動性の導電材料で覆い、
前記ボンディングパッドに導電部材を接続する前に、前記ボンディングパッドから前記流動性の導電材料を除去する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記流動性の導電材料は、前記ボンディングパッドを介して回路の電気特性を検査した後に除去する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記検査は、前記ボンディングパッドから離間した状態で前記流動性の導電材料にフローブ針を接触させて行う、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記検査は、前記ボンディングパッド及び前記流動性の導電材料にプローブ針を接触させて行う、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記流動性の導電材料は、液体金属である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記流動性の導電材料は、ガリウム系の液体金属である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記導電部材は、ボンディングワイヤ、若しくはメタライズ層である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
ボンディングパッドと、
前記ボンディングパッドに開口部を通して接続された導電部材と、
前記ボンディングパッドと前記導電部材との間に形成され、かつゲルマニウムを含有する層間合金層と、
を備えている、半導体装置。
【請求項9】
前記層間合金層は、Al-Au-Ga組成を含む、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記導電部材の周囲の前記ボンディングパッドの表面に、ゲルマニウムを含むと共に前記層間合金層とは異なる組成で形成された表面合金層を更に備えている、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記層間合金層は、Al-Au-Ga組成を含み、
前記表面合金層は、Al-Ga組成を含む、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ボンディングパッドは、アルミニウムを含有し、
前記導電部材は、ボールボンディング法で接続された金ワイヤである、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ボンディングパッドの周縁領域は、絶縁層で覆われ、
前記表面合金層は、前記絶縁層の側壁と前記導電部材との間に配置されている、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記導電部材は、メタライズ層である、請求項8に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術(本開示に係る技術)は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関し、特に、ボンディングパッドを有する半導体装置の製造方法及び半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、集積回路が搭載された半導体チップを様々な形態のパッケージに組み込んでいる。半導体チップは、半導体装置の製造プロセスにおいて、半導体ウエハに設定された複数のチップ形成領域を個々に個片化することによって形成される。半導体ウエハのチップ形成領域には、ボンディング開口部から露出するボンディングパッドが配置されている。
【0003】
ボンディングパッドには、半導体装置の製造プロセスにおいて、ボンディングワイヤや、バンプ電極の下地膜であるメタライズ層などの導電部材が接続される。また、半導体装置の製造プロセス中の検査工程では、ボンディングパッドにプローブ針を圧接して回路の電気特性を検査している。
【0004】
なお、本技術に関連する先行技術文献としては、特許文献1や特許文献2が挙げられる。特許文献1及び2には、他種金属によりボンディングパッドの表面を保護しつつ導電性を確保する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-79936号公報
【特許文献2】特開2017-53839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体装置の製造では、ボンディング開口部から露出するボンディングパッドの表面に腐食作用に抵抗する不働態(酸化被膜)が形成されることにより、ボンディングパッドの耐腐食性を確保している。不働態は、ボンディング開口部の形成工程から、ボンディングパッドに導電部材(ボンディングワイヤ、メタライズ層)を接続する工程までの間に、主にボンディングパッド中の金属元素(Al)と大気中の水分や酸素とが反応して形成される。
【0007】
しかしながら、ボンディング開口部の形成時に用いられるフッ素系ガスの残留成分などにより不働態が緻密な膜で形成されず、膜質が劣化することがあり、ボンディングパッドの酸化が進行する。このボンディングパッドの酸化の進行は、ボンディングパッドと、このボンディングパッドに接続される導電部材との接続不良を引き起こし、半導体装置の製造歩留まりが低下する要因となることから、改良の余地があった。
【0008】
また、半導体装置の検査工程では、ボンディングパッドにプローブ針を圧接して不働態を破ることで電気的な接続を行っているため、ボンディングパッドの表面にプローブ針の圧接による打痕が残存することがある。この打痕も、ボンディングパッドと、このボンディングパッドに接続される導電部材との接続不良を引き起こし、半導体装置の製造歩留まりが低下する要因となることから、改良の余地があった。上述の特許文献1及び2でも、フローブ針の圧接による打痕が発生する。
【0009】
本技術の目的は、半導体装置の製造歩留まりの向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術の一態様に係る半導体装置の製造方法は、側壁で囲まれた開口部から露出するボンディングパッドを流動性の導電材料で覆い、上記ボンディングパッドに導電部材を接続する前に、上記ボンディングパッドから上記流動性の導電材料を除去する、ことを含む。
【0011】
本技術の他の態様に係る半導体装置は、ボンディングパッドと、上記ボンディングパッドに開口部を通して接続された導電部材と、上記ボンディングパッドと上記導電部材との間に形成され、かつゲルマニウムを含有する層間合金層と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本技術の第1実施形態に係る半導体装置の樹脂封止体を除去した状態を模式的に示す平面図である。
図2図1のII-II切断線に沿った断面構造を模式的に示す断面図である。
図3A図2のボンディングパッドの部分を拡大した要部断面図である。
図3B図3Bに示すボンディングパッド部分の要部平面図である。
図3C図3Bにおいてボンディングワイヤを除去した状態を示す要部平面図である。
図4A】半導体ウエハの平面構成を示す図である。
図4B図5AのA領域を拡大してチップ形成領域の構成を示す図である。
図5A】本技術の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図5B図5Aに続く模式的工程断面図である。
図5C図5Bに続く模式的工程断面図である。
図5D図5Cに続く模式的工程断面図である。
図5E図5Dに続く模式的工程断面図である。
図5F図5Eに続く模式的工程断面図である。
図5G図5Fに続く模式的工程断面図である。
図5H図5Gに続く模式的工程断面図である。
図5I図5Hに続く模式的工程断面図である。
図5J図5Iの一部を拡大した要部断面図である。
図5K図5Hに続く模式的工程断面図である。
図6】検査工程の一例を示す図である。
図7】第1実施形態の変形例1を模式的に示す要部断面図である。
図8】第1実施形態の変形例を模式的に示す要部断面図である
図9】本技術の第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図10図9のボンディングパッドの部分を拡大した要部断面図である。
図11A】本技術の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図11B図11Aに続く模式的工程断面図である。
図12】第2実施形態の変形例を模式的に示す要部断面図である。
図13】本技術の第3実施形態に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図14図13のIII-III切断線に沿った断面構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本技術の実施形態を詳細に説明する。
以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0014】
また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。また、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0015】
また、以下の実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものではない。即ち、本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本技術の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0017】
また、以下の実施形態では、空間内で互に直交する三方向において、同一平面内で互に直交する第1の方向及び第2の方向をそれぞれX方向、Y方向とし、第1の方向及び第2の方向のそれぞれと直交する第3の方向をZ方向とする。そして、以下の実施形態では、後述する半導体チップ20の厚さ方向をZ方向として説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
この第1実施形態では、ボンディングパッドに接続される導電部材(接続部材)としてボンディングワイヤを備えた半導体装置に本技術を適用した一例ついて説明する。
【0019】
≪半導体装置の全体構成≫
図1及び図2に示すように、本技術の第1実施形態に係る半導体装置1Aは、互いに反対側に位置する第1の面10x及び第2の面10yを有し、インターポーザと呼称される配線基板10と、この配線基板10の第1の面10x側にフェイスアップ実装された半導体チップ20とを備えている。
また、本技術の第1実施形態に係る半導体装置1Aは、半導体チップ20の主面側に配置されたボンディングパッド23と、このボンディングパッド23に開口部25(図3A参照)を通して接続された導電部材としてのボンディングワイヤ33と、を更に備えている。
また、本技術の第1実施形態に係る半導体装置1Aは、半導体チップ20及びボンディングワイヤ33を収納する収納体(パッケージ)16を更に備えている。収納体16は、これに限定されないが、配線基板10と、この配線基板10の第1の面10x側に設けられ、かつ半導体チップ20及びボンディングワイヤ33を封止する樹脂封止体15とを含む。
【0020】
<配線基板>
図1及び図2に示すように、配線基板10は、その厚さ方向(Z方向)と交差する平面形状が方形状で構成され、この第1実施形態では例えば正方形で構成されている。配線基板10の第1の面10X側には、半導体チップ20が配置されている。半導体チップ20は、詳細に図示していないが、配線基板10の第1の面10xの中央領域に接着材を介して接着固定されている。
配線基板10の第1の面10x側には、複数の電極パッド11が配置されている。複数の電極パッド11は、半導体チップ20の複数のボンディングパッド23に対応して半導体チップ20の外側に配置されている。
【0021】
配線基板10の第2の面10y側には、複数の電極パッド12が配置されている。複数の電極パッド12は、平面視で配線基板10の中央領域を囲む周辺領域においてアレイ状に配置されている。第2の面20y側の電極パッド12は、配線基板10の配線を介して第1の面10x側の電極パッド11と電気的に接続されている。
【0022】
複数の電極パッド12の各々には、バンプ電極18が固着され、電気的及び機械的に接続されている。バンプ電極18としては、例えばPbを実質的に含まないPbフリー組成の半田バンプを用いている。
【0023】
<樹脂封止体>
図1及び図2に示すように、樹脂封止体15は、平面形状が配線基板10と同様の正方形で構成され、配線基板10の平面サイズよりも若干小さい平面サイズになっている。樹脂封止体15は、例えばエポキシ系の熱硬化性樹脂で構成されている。樹脂封止体15の形成方法としては、例えば大量生産に好適なトランスファ・モールディング法を用いている。
【0024】
<半導体チップ>
図1及び図2に示すように、半導体チップ20は、その厚さ方向(Z方向)と交差する平面形状が方形状で形成され、この第1実施形態では例えば正方形で形成されている。半導体チップ20は、これに限定されないが、主に、半導体基板21と、半導体基板21の素子形成面(主面)に設けられた複数のトランジスタ(図示せず)と、半導体基板21の素子形成面側において絶縁層及び配線層を交互に複数段積み重ねて形成された積層体(多層配線層)22と、を含む。
【0025】
半導体基板21は、例えば単結晶シリコンで構成されている。積層体22の絶縁層は例えば酸化シリコン膜で構成されている。積層体22の配線層は、例えば、アルミニウム(Al)膜、又はAlにシリコン(Si)及び銅(Cu)の少なくとも何れかが添加されたアルミニウム合金膜で構成されている。Siは主にエレクトロマイグレーション耐性の向上を図る目的で添加される。Cuは主にアロイスパイク耐性の向上を図る目的で添加される。この第1実施形態の配線層は、例えばAlにSi及びCuが添加されたAl-Si-Cu組成のAl合金膜で構成されている。
【0026】
半導体チップ20には、集積回路が内蔵されている。この集積回路は、主に、半導体基板21に形成されたトランジスタ素子と、積層体22の配線層に形成された配線によって構成されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、半導体チップ20は、その主面側に設けられた複数のボンディングパッド23を備えている。複数のボンディングパッド23は、半導体チップ20の二次元平面における4つの辺に沿って配列されている。ボンディングパッド23は、集積回路の構成要素として形成され、信号入出力端子や、電源供給端子などの外部端子として機能する。半導体チップ20は、ボンディングパッド23が配置された主面とは反対側の裏面を配線基板10の第1の面10xと向かい合わせた状態で配線基板10の第1の面10x側に実装されている。
【0028】
<ボンディングワイヤ>
図1及び図2に示すように、ボンディングワイヤ33は、一端側が半導体チップ20のボンディングパッド23に接続され、他端側が配線基板10の電極パッド11に接続されている。ボンディングワイヤ33としては、例えば金(Au)ワイヤを用いている。そして、ボンディングワイヤ33の接続方法としては、例えば熱圧着に超音波振動を併用したボールボンディング(ネイルヘッドボンディング)法を用いている。この第1実施形態では、ボンディングワイヤ33のボール側(第1ボンド側)が半導体チップ20のボンディングパッド23に接続され、ボンディングワイヤ33の非ボール側(第2ボンド側)が配線基板10の電極パッド11に接続されている。
【0029】
図3Aに示すように、ボンディングパッド23は、積層体22の配線層のうちの最上層の配線層に構成されている。即ち、この第1実施形態のボンディングパッド23は、Alを主成分とするAl-Si-Cu組成の合金膜で構成されている。ボンディングパッド23は、その中央領域が積層体22の絶縁層のうちの最上層の絶縁層24に設けられた開口部(ボンディング開口部)25から露出し、その周縁領域が最上層の絶縁層24で覆われている。即ち、開口部25は、図3A及び図3Bに示すように、平面視での輪郭がボンディングパッド23の輪郭よりも内側に位置している。
【0030】
<表面合金層及び層間合金層>
図3A及び図3Bに示すように、ボンディングワイヤ33の一端側は、半導体チップ20のボンディングパッド23に絶縁層24の開口部25を通して接続されている。そして、ボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側との間には、層間合金層34が形成されている。また、ボンディングパッド23の表面において、ボンディングワイヤ33の一端側が接合されたワイヤ接合部の外側には、表面合金層32が形成されている。この表面合金層32は、絶縁層24の開口部25内の側壁とボンディングワイヤ33の一端側(ワイヤ接合部)との間に配置されている。
【0031】
表面合金層32は、後述する半導体装置1Aの製造プロセスにおいて、ボンディングパッド23中の元素と、ボンディングパッド23の表面を覆う流動性の導電材料中の元素とが反応することによって形成される。そして、層間合金層34は、後述する半導体装置1Aの製造プロセスにおいて、ボンディングパッド23の表面合金層32にボンディングワイヤ33の一端側を接続する際、表面合金層32中の元素と、ボンディングワイヤ33中の元素とが反応することによって形成される。この第1実施形態では、後述する半導体装置1Aの製造プロセスにおいて、ボンディングパッド23の表面を覆う流動性の導電材料として、例えばガリウム(Ga)系の液体金属31(図5C参照)を用いている。そして、ボンディングパッド23は、上述したように、例えばAl-Si-Cu組成の配線層に構成されている。したがって、表面合金層32は、Al-Ga組成を含む。また、層間合金層34は、Al-Au-Ga組成を含む。すなわち、この第1実施形態の半導体装置1Aは、ボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側との間に形成され、かつボンディングパッド23中のAl、ボンディングワイヤ33中のAu、及び液体金属31中のGaを含有するAl-Au-Ga組成の層間合金層34を備えている。また、この第1実施形態の半導体装置1Aは、ボンディングワイヤ33の一端側の周囲のボンディングパッド23の表面に形成され、かつGaを含むと共に層間合金層34の組成とは異なるAl-Ga組成の表面合金層32を備えている。
【0032】
図3A及び図3Cに示すように、層間合金層34は、これに限定されないが、例えばボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側との間の全域に亘って拡がる1つの層で形成されている。
また、図3A及び図3Cに示すように、表面合金層32は、層間合金層34と互いに隣り合って一体に形成されている。
【0033】
≪半導体装置の製造方法≫
次に、半導体装置1Aの製造方法について、図4A及び図4B図5Aから図5K、並びに図6を用いて説明する。
図4Aは、半導体装置1Aの製造に用いられる半導体ウエハの平面構成を示す図であり、図4Bは、図4AのA領域を拡大してチップ形成領域の構成を示す図である。
また、図5Aから図5Kは、半導体装置1Aの製造方法を説明するための模式的断面図である。
また、図6は、半導体装置1Aの製造プロセス中の検査の一例として、抵抗測定を示す図である。
【0034】
ここで、集積回路は、図4A及び図4Bに示す半導体ウエハ40のチップ形成領域41に製作される。チップ形成領域41は、スクライブライン(ダイシング領域)42で区画され、スクライブライン42を介してX方向及びY方向のそれぞれの方向に繰り返し配置されている。即ち、チップ形成領域41は、行列状に複数配置されている。そして、この複数のチップ形成領域41をスクライブライン42に沿って個々に個片化することにより、集積回路を搭載した半導体チップ20(図5G参照)が形成される。チップ形成領域41の個片化は、以下に説明する製造工程が施された後に実施される。
【0035】
なお、スクライブライン42は、物理的に形成されているものではない。
また、図4Aは、複数の半導体チップに個片化する前にウエハ状態での半導体基板全体を示す図である。そして、図5Aから図5Kは、ウエハ状態の半導体基板に区画されたチップ形成領域での断面構造を示す要部断面図である。
【0036】
まず、図4Bに示すチップ形成領域41に集積回路を形成する。集積回路は、図5Aに示す半導体基板21の素子形成面にトランジスタ素子を形成し、その後、図5Aに示すように、半導体基板21の素子形成面上に積層体22を形成することによって構築される。積層体22は、半導体基板21の素子形成面側において、絶縁層及び配線層を交互に積層することによって形成される。図5Aに示すように、積層体22の最上層の配線層にはボンディングパッド23が形成されている。そして、ボンディングパッド23は、積層体22の最上層の絶縁層24で覆われている。半導体基板21は、例えば単結晶シリコンで構成されている。トランジスタ素子としては、例えば、pチャネル導電型のMOSFET((Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor))及びnチャネル導電型のMOSFETが用いられている。即ち、集積回路は、CMOS(Complementary MOS)回路構成になっている。ボンディングパッド23は、集積回路の構成要素として形成され、信号入出力端子や、電源供給端子などの外部端子として機能する。
【0037】
次に、図5Bに示すように、絶縁層24に開口部(ボンディング開口部)25を形成してボンディングパッド23を露出する。開口部25は、平面視での輪郭がボンディングパッド23の輪郭よりも内側に位置する平面パターンで形成される。ボンディングパッド23は、絶縁層24の側壁で囲まれた開口部25から露出する。開口部25は、フッ素系ガスを用いたドライエッチング法によって形成することができる。
【0038】
次に、図5Cに示すように、開口部25内に、流動性の導電材料として例えばガリウム(Ga)系の液体金属31を塗布し、開口部25から露出するボンディングパッド23の表面全体を液体金属31で覆う。この液体金属31は洗浄水と比較して表面張力が大きいので、開口部25内においてボンディングパッド23の表面全体を覆った状態で液体金属31を開口部25内に貯蓄することができる。
【0039】
ここで、開口部25内において、ボンディングパッド23中の元素と、ボンディングパッド23の表面を覆う液体金属31の元素とが反応し、図5Dに示すように、ボンディングパッド23の表面に表面合金層32が形成される。この第1実施形態では、ボンディングパッド23がAl-Si-Cu組成のAl合金膜で形成され、液体金属31がGa系であることから、形成された表面合金層32はAl-Ga組成を含む。この表面合金層32は、時間の経過や熱履歴によって成長が進行する。
【0040】
また、ボンディングパッド23の表面を液体金属31で覆うことにより、主にボンディングパッド23の金属成分と大気中の水分や酸素との反応による不働態の形成を抑制することができる。ボンディングパッド23の表面を液体金属31で覆わなかった場合、不働態は、主に、この開口部25の形成工程から、この後のワイヤボンディング工程までの間に形成される。そして、不働態は、開口部25の形成時に用いられるフッ素系ガスの残留成分などにより緻密な膜で形成されず、膜質が劣化することがあり、ボンディングパッド23の表面酸化が進行することがある。
【0041】
次に、ボンディングパッド23を介して集積回路の電気特性を検査する。検査には、様々な種類があるが、ここでは、一例として、図6に示す測定器45でボンディングパッド23間の抵抗値を検査する。検査は、開口部25内においてボンディングパッド23の表面全体が液体金属31で覆われた状態(開口部25内に液体金属31が蓄積された状態)で行う。具体的には、図5Eに示すように、プローブ針46がボンディングパッド23の表面(表面合金層32)から離間した状態(非接触状態)で液体金属31にプローブ針46を接触させて行う。
【0042】
この工程において、液体金属31は導電性を有するので、ボンディングパッド23の表面からプローブ針46を離間させた状態においても、ボンディングパッド23とプローブ針46との電気的な導通を取ることができる。
【0043】
また、ボンディングパッド23にプローブ針46を非接触の状態でボンディングパッド23とプローブ針46との電気的な導通を取ることができるので、ボンディングパッド23にプローブ針46を圧接して電気的な導通を取る場合と比較して、プローブ針46の圧接によってボンディングパッド23の表面に生じる打痕を抑制することができる。
【0044】
次に、開口部25内においてボンディングパッド23(表面合金層32)を覆っている液体金属31を、図5Fに示すように、ボンディングパッド23から除去する。
この工程において、液体金属31は流動性を有するので、清浄などによって容易に除去することができる。
この工程により、図4A及び図4Bに示す半導体ウエハ40がほぼ完成する。半導体ウエハ40の複数のチップ形成領域41の各々には、トランジスタ素子、積層体22、集積回路、ボンディングパッド23及び開口部25などが形成されている。
【0045】
次に、図4Bに示す半導体ウエハ40の複数のチップ形成領域41をスクライブライン42に沿って個々に個片化して、図5Gに示すように、半導体チップ20を形成する。
【0046】
次に、図5Hに示すように、配線基板10の第1の面10x側に接着材を介して半導体チップ20をダイボンディングする。半導体チップ20は、ボンディングパッド23が形成された主面とは反対側の裏面が配線基板10の第1の面10xと向かい合う状態(フェイスアップ状態)で配線基板10の第1の面10xに接着固定される。
【0047】
次に、図5Iに示すように、半導体チップ20のボンディングパッド23と配線基板10の電極パッド11とを導電部材としてのボンディングワイヤ33で電気的に接続する。ボンディングワイヤ33は、一端側が半導体チップ20のボンディングパッド23に接続され、他端側が配線基板10の電極パッド11に接続される。ボンディングワイヤ33としては、例えば金(Au)ワイヤを用いる。そして、ボンディングワイヤ33の接続方法としては、例えば熱圧着に超音波振動を併用したボールボンディング(ネイルヘッドボンディング)法を用いる。この第1実施形態では、ボンディングワイヤ33のボール側(第1ボンド側)が半導体チップ20のボンディングパッド23に接続され、ボンディングワイヤ33の非ボール側(第2ボンド側)が配線基板10の電極パッド11に接続される。
【0048】
この工程において、ボンディングパッド23にボンディングワイヤ33の一端側を接続する際、ボンディングパッド23の表面には表面合金層32が形成されているので、表面合金層32中の元素と、ボンディングワイヤ33中の元素とが反応し、図5Jに示すように、ボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側との間に層間合金層34が形成される。この第1実施形態では、表面合金層32がAl-Ga組成を含み、ボンディングワイヤ33がAuワイヤであることから、層間合金層34は、Al-Au-Ga組成を含む。ボンディングワイヤ33の一端側の周囲のボンディングパッド23の表面には、層間合金層34の組成(Al-Au-Ga組成)とは異なる組成(Al-Ga組成)の表面合金層32が残存する。
【0049】
また、この工程において、ボンディングパッド23の表面には、プローブ針46の圧接による打痕が存在しないので、ボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側との接続を良好に行うことができる。
【0050】
次に、図5Kに示すように、配線基板の第1の面10x側に、半導体チップ20及びボンディングワイヤ33などを封止する樹脂封止体15を形成する。樹脂封止体は、例えばトランスファ・モールディング法で形成する。
【0051】
この工程により、配線基板10及び樹脂封止体15を含み、半導体チップ20及びボンディングワイヤ33を収納する収納体(パッケージ)16が形成される。
【0052】
この後、配線基板10の第2の面側の電極パッドにバンプ電極18を形成することにより、図1から図3に示す半導体装置1Aがほぼ完成する。
【0053】
なお、液体金属31の除去は、検査工程の後であって、ワイヤボンディング工程の前に実施することが好ましい。
【0054】
≪第1実施形態の主な効果≫
次に、この第1実施形態の主な効果について説明する。
従来の半導体装置の製造では、この第1実施形態の図面を参照して説明すると、開口部25から露出するボンディングパッド23の表面に腐食作用に抵抗する不働態(酸化被膜)が形成されることにより、ボンディングパッド23の耐腐食性を確保している。不働態は、開口部25の形成工程から、ボンディングパッド23にボンディングワイヤ33(導電部材)を接続するワイヤボンディング工程までの間に、主にボンディングパッド23中の金属元素(Al)と大気中の水分や酸素とが反応して形成される。
【0055】
しかしながら、開口部25の形成時に用いられるフッ素系ガスの残留成分などにより不働態が緻密な膜で形成されず、膜質が劣化することがあり、ボンディングパッド23の酸化が進行する。このボンディングパッド23の酸化の進行は、ボンディングパッド23と、このボンディングパッド23に接続されるボンディングワイヤ33との接続不良を引き起こし、半導体装置の製造歩留まりが低下する要因となる。
【0056】
これに対し、この第1実施形態に係る半導体装置1Aの製造では、絶縁層24の側壁で囲まれた開口部25から露出するボンディングパッド23の表面を液体金属31(流動性の導電材料)で覆い、ボンディングパッド23にボンディングワイヤ33(導電部材)の一端側を接続するワイヤボンディング工程の前に、ボンディングパッド23から液体金属31を除去している。このように、ボンディングパッド23の表面を液体金属31で覆うことにより、主にボンディングパッド23の金属成分と大気中の水分や酸素との反応による不働態の形成を抑制することができる。そして、不働態の形成を抑制できることから、開口部25の形成時に用いられるフッ素系ガスの残留成分などにより不働態が緻密な膜で形成されず、膜質が劣化することでボンディングパッド23の酸化が進行するといった現象を抑制することができる。したがって、この第1実施形態に係る半導体装置1Aの製造によれば、半導体装置1Aの製造歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0057】
また、従来の半導体装置の製造プロセス中の検査工程では、ボンディングパッド23にプローブ針46を圧接して不働態を破ることで電気的な接続を行っているため、ボンディングパッド23の表面にプローブ針46の圧接による打痕が残存することがある。この打痕も、ボンディングパッド23と、このボンディングパッド23に接続されるボンディングワイヤ33との接続不良を引き起こし、半導体装置の製造歩留まりが低下する要因となる。
【0058】
これに対し、この第1実施形態に係る半導体装置1Aの製造プロセスにおける検査工程では、プローブ針46がボンディングパッド23の表面(表面合金層32)から離間した状態(非接触状態)で液体金属31にプローブ針46を接触させて行っている。そして、液体金属31は導電性を有するので、ボンディングパッド23の表面(表面合金層32)からプローブ針46を離間させた状態においても、ボンディングパッド23とプローブ針46との電気的な導通を取ることができる。そして、ボンディングパッド23にプローブ針46を非接触の状態でボンディングパッド23とプローブ針46との電気的な導通を取ることができるので、プローブ針46の圧接によってボンディングパッド23の表面に生じる打痕を抑制することができる。したがって、この第1実施形態に係る半導体装置1Aの製造によれば、半導体装置1Aの製造歩留まりの向上をより一層図ることが可能となる。
【0059】
また、この第1実施形態に係る半導体装置1Aの製造によれば、ボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側との間に形成されたAl-Au-Ga組成の層間合金層34と、ボンディングワイヤ33の一端側の周囲のボンディングパッド23の表面に形成されたAl-Ga組成の表面合金層32と、を含む半導体装置1Aを提供することができる。
【0060】
また、この第1実施形態に係る半導体装置1Aは、ボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側との間に形成されたAl-Au-Ga組成の層間合金層34を備えているので、ボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側とのボンダビリティの向上を図ることができる。
【0061】
また、この第1実施形態に係る半導体装置1Aは、ボンディングワイヤ33の一端側の周囲のボンディングパッド23の表面がAl-Ga組成の表面合金層32で覆われているので、ボンディングパッド23の耐腐食性を確保することができる。
【0062】
≪第1実施形態の変形例≫
<変形例1-1>
上述の第1実施形態では、検査工程において、プローブ針46がボンディングパッド23の表面(表面合金層32)から離間した状態(非接触状態)で液体金属31にプローブ針46を接触させて行う場合について説明した。しかしながら、本技術は、ボンディングパッド23にプローブ針46を非接触状態で検査を行う場合に限定されない。即ち、図7に示すように、ボンディングパッド23の表面(表面合金層32)及び液体金属31にプローブ針46を接触させて検査を行ってもよい。この場合、ボンディングパッド23の表面(表面合金層32)を液体金属31で覆うことにより、ボンディングパッド23の金属成分と大気中の水分や酸素との反応による不働態の形成を抑制できるので、従来のように、ボンディングパッド23にプローブ針46を圧接して不働態を破る必要が無い。したがって、ボンディングパッド23へのプローブ針46の圧接を抵圧化することができ、この変形例1-1においても、ボンディングパッド23にプローブ針46の圧接による打痕の発生を抑制することができる。
【0063】
また、液体金属31も導電性を有するので、ボンディングパッド23へのプローブ針46の圧接を抵圧化し、プローブ針46の押し込み量を低減しても、ボンディングパッド23とプローブ針46との導通性を確保でき、安定した検査を実施することができる。
【0064】
<変形例1-2>
上述の第1実施形態では、層間合金層34がボンディングパッド23とボンディングワイヤ33の一端側との間の全域に亘って拡がる1つの層で形成され、表面合金層32も、絶縁層24の側壁とボンディングワイヤ33の一端側との間において、ボンディングパッド23の表面の全域に亘って拡がる1つの層で形成された場合について説明した。しかしながら、本技術は、層間合金層34及び表面合金層32が1つの層で形成される場合に限定されない。表面合金層32は、時間の経過や熱履歴によって成長が進行する。一方、層間合金層34は、表面合金層32の形状に依存する。したがって、図8に示すように、表面合金層32が複数個点在するように形成し、層間合金層34も複数個点在するように形成してもよい。
【0065】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態では、ボンディングパッドに接続される導電部材(接続部材)として、バンプ電極の下地層であるメタライズ層を備えた半導体装置に本技術を適用した一例について説明する。
図9は、本技術の第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図10は、本技術の第2実施形態に係る半導体装置において、配線基板に実装する前の半導体チップの概略構成を示す要部模式的断面図である。
【0066】
≪半導体装置の全体構成≫
図9及び図10に示すように、本技術の第2実施形態に係る半導体装置1Bは、互いに反対側に位置する第1の面10x及び第2の面10yを有し、インターポーザと呼称される配線基板10と、この配線基板10の第1の面10x側にフェイスダウン実装された半導体チップ20Bとを備えている。
また、本技術の第2実施形態に係る半導体装置1Bは、半導体チップ20Bの主面側に配置されたボンディングパッド23と、このボンディングパッド23に開口部25(図10参照)を通して接続された導電部材としてのメタライズ層35と、このメタライズ層35と配線基板10の第1の面10x側の電極パッド11との間に介在され、かつメタライズ層35及び電極パッド11の各々に接続されたバンプ電極36と、を更に備えている。
また、本技術の第2実施形態に係る半導体装置1Bは、半導体チップ20B、メタライズ層35及びバンプ電極36を収納する収納体(パッケージ)16と、配線基板10の第2の面10y側の電極パッド12に接続されたバンプ電極18とを更に備えている。収納体16は、これに限定されないが、配線基板10と、この配線基板10の第1の面10x側に設けられ、かつ半導体チップ20B、メタライズ層35及びバンプ電極36を封止する樹脂封止体15とを含む。
【0067】
図10に示すように、この第2実施形態の半導体チップ20Bは、基本的に上述の第1実施形態の図3に示す半導体チップ20と同様の構成になっており、以下の構成が異なっている。
【0068】
すなわち、図10に示すように、この第2実施形態の半導体チップ20Bは、絶縁層24の開口部25を通してボンディングパッド23に接続されたメタライズ層35と、このメタライズ層35に接続されたバンプ電極36とを備えている。
【0069】
メタライズ層35は、ボンディングパッド23側からチタン(Ti)膜及びニッケル(Ni)膜を順次積層した複合膜で構成されている。そして、ボンディングパッド23とメタライズ層35との間には、層間合金層34bが形成されている。層間合金層34bは、絶縁層24の側壁で囲まれた開口部25内の全域に亘って拡がる1つの層で形成されている。
【0070】
層間合金層34bは、半導体装置1Bの製造プロセスにおいて、ボンディングパッド23中の元素と、ボンディングパッド23の表面を覆う流動性の導電材料中の元素とが反応してボンディングパッド23の表面に表面合金層が形成され、この表面金属層にメタライズ層35を接続する際、表面合金層中の元素と、メタライズ層35のチタン膜中の元素とが反応することによって形成される。この第2実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、半導体装置1Bの製造プロセスにおいて、ボンディングパッド23の表面を覆う流動性の導電材料として、例えばガリウム(Ga)系の液体金属31(図5C参照)を用いている。そして、ボンディングパッド23は、Al-Si-Cu組成の配線層に構成されている。したがって、表面合金層は、Al-Ga組成を含み、層間合金層34は、Al-Ni-Ga組成を含む。
【0071】
この第2実施形態に係る半導体装置1Bの製造は、上述の第1実施形態に係る半導体装置1Aの製造において、図5Aから図5Gに示す工程を含んでいる。
【0072】
そして、この第2実施形態に係る半導体装置1Bの製造は、図11Aに示すように、絶縁層24の開口部25から露出するボンディングパッド23の表面の表面合金層32にメタライズ層35を成膜し、表面合金層32にメタライズ層35を接続する工程を含む。メタライズ層35は、例えば、表面合金層32側からチタン膜及びニッケル膜をスパッタ法で順次成膜して形成する。
【0073】
また、この第2実施形態に係る半導体装置1Bの製造は、図11Bに示すように、メタライズ層にバンプ電極36を接続する工程を含む。バンプ電極36は、メタライズ層35に例えばSn(錫)-Ag(銀)組成の半田層を無電解メッキ法で形成し、その後、リフローを施すことによって形成される。
【0074】
この工程において、表面合金層32中の元素と、メタライズ層35のチタン膜中の元素とが反応し、図11Bに示すように、ボンディングパッド23とメタライズ層35との間に層間合金層34bが形成される。この第2実施形態では、表面合金層32がAl-Ga組成を含み、メタライズ層35の層間合金層34側がチタン膜であることから、層間合金層34bは、Al-Au-Ga組成を含む。
【0075】
この第2実施形態に係る半導体装置1Bの製造においても、上述の第1実施形態と同様に、半導体装置1Bの製造歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0076】
また、この第2実施形態2に係る半導体装置1Bの製造によれば、ボンディングパッド23とメタライズ層35との間に形成されたAl-Ti-Ga組成の層間合金層34bを含む半導体装置1Bを提供することができる。
【0077】
また、この第2実施形態に係る半導体装置1Bによれば、ボンディングパッド23とメタライズ層35との間に形成されたAl-Ti-Ga組成の層間合金層34bを備えているので、ボンディングパッド23とメタライズ層35とのボンダビリティの向上を図ることができる。
【0078】
≪第2実施形態の変形例≫
<変形例2-1>
上述の第2実施形態では、層間合金層34bがボンディングパッド23とメタライズ層35との間の全域に亘って拡がる1つの層で形成された場合について説明した。しかしながら、本技術は、層間合金層34bが1つの層で形成される場合に限定されない。表面合金層32は、時間の経過や熱履歴によって成長が進行する。一方、層間合金層34bは、表面合金層32の形状に依存する。したがって、上述の変形例1-2と同様に、図12に示すように、層間合金層34bを複数個点在するように形成してもよい。
【0079】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態では、裏面照射型のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである固体撮像素子(半導体チップ)を備えた半導体装置に本技術を適用した一例について説明する。
図13は、本技術の第3実施形態に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図14は、図13のIII-III切断線に沿った断面構造を模式的に示す断面図である。
【0080】
この第3実施形態に係る半導体装置1Cは、図13及び図14に示す固体撮像素子(半導体チップ)50を備えている。固体撮像素子50は、平面視したときの二次元平面形状が方形状になっている。固体撮像素子50は、光学レンズを介して被写体からの像光(入射光)を取り込み、撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。
【0081】
図13及び図14に示すように、固体撮像素子50は、二次元平面において、中央部に配置された方形状の画素領域51Aと、この画素領域51Aの外側に画素領域51Aを囲むようにして配置された周辺領域51Bとを備えている。
【0082】
画素領域51Aは、例えば光学レンズ(光学系)により集光される光を受光する受光面である。そして、画素領域51Aには、X方向及びY方向を含む二次元平面において複数の画素53が行列状に配置されている。換言すれば、画素53は、二次元平面内で互いに直交するX方向及びY方向のそれぞれの方向に繰り返し配置されている。
【0083】
図13に示すように、周辺領域51Bには、複数のボンディングパッド23が配置されている。複数のボンディングパッド23の各々は、例えば、固体撮像素子50の二次元平面における4つの辺に沿って配列されている。複数のボンディングパッド23の各々は、固体撮像素子50を外部装置と電気的に接続する際に用いられる入出力端子である。
【0084】
固体撮像素子50は、垂直駆動回路、カラム信号処理回路、水平駆動回路、出力回路及び制御回路などを含むロジック回路を備えている。ロジック回路は、例えば、CMOS(Complenentary MOS)回路で構成されている。
【0085】
複数の画素53の各々の画素53は、光電変換素子を有している。そして、各画素53の光電変換素子には、読出し回路が接続されている。光電変換素子は、図14に示す半導体層61に画素53毎に構成されている。そして、光電変換素子は、光を受光量に応じた信号電荷に光電変換して保持する。
【0086】
図14に示すように、固体撮像素子50は、各々の厚さ方向(Z方向)において、互いに向かい合って積層された受光基板部(第1半導体基体)60及び回路基板部(第2半導体基体)70を備えている。受光基板部60には、上述の画素領域51Aなどが構成されている。回路基板部70には、上述のロジック回路、ボンディングパッド23、読出し回路などが構成されている。
【0087】
図14に示すように、受光基板部60は、厚さ方向(Z方向)において互いに反対側に位置する第1の面S1及び第2の面S2を有する半導体層61と、この半導体層61の第1の面S1及び側面(端面)を覆う絶縁層62と、を備えている。
【0088】
絶縁層62及び半導体層61は、二次元平面形状が方形状になっている。そして、半導体層61は、主に画素領域51Aに設けられ、平面視での輪郭が絶縁層62の輪郭よりも内側に位置している。一方、絶縁層62は、平面視で画素領域51A及び周辺領域51Bに亘って設けられ、半導体層61の周囲に位置する部分の厚さが半導体層61と重畳する部分の厚さより厚くなっている。
【0089】
図14に示すように、受光基板部60は、半導体層61の第2の面S2側(光入射面側)に、この第2の面S2側から順次積層された平坦化膜64、カラーフィルタ65及びマイクロレンズ66を更に備えている。平坦化膜64は、半導体層61の第2の面S2側(光入射面側)を平坦化する。マイクロレンズ66は、半導体層61への入射光を集光する。カラーフィルタ65は、半導体層61への入射光を色分離する。カラーフィルタ65及びマイクロレンズ66は、それぞれ画素53毎に設けられている。平坦化膜64は、平面視で画素領域51A及び周辺領域51Bに亘って設けられている。カラーフィルタ65及びマイクロレンズ66は、例えば樹脂性の材料で構成されている。
【0090】
図14に示すように、回路基板部70は、半導体基板71と、この半導体基板71の互いに反対側に位置する第1の面及び第2の面のうちの第1の面側に設けられた多層配線層72と、を備えている。
【0091】
回路基板部70の半導体基板71には、上述のロジック回路や、読出し回路などの回路を構成する電界効果トランジスタとして、例えば複数のMOSFETが構成されている。半導体基板71としては、例えば単結晶シリコン基板を用いることができる。
【0092】
回路基板部70の多層配線層72は、絶縁層及び配線層を交互に複数段積層した積層構造になっている。多層配線層72の半導体基板71側とは反対側の最上層の配線層には、ボンディングパッド23が構成されている。ボンディングパッド23は、上述の第1及び第2実施形態と同様に、Alを主成分とするAl-Si-Cu組成のAl合金膜で構成されている。
【0093】
多層配線層72の各配線層は、詳細に図示していないが、平面視で画素領域51A及び周辺領域51Bに亘って設けられている。そして、ボンディングパッド23は、平面視で周辺領域51Bに配置されている。この多層配線層72の各配線及びボンディングパッド23を介して、上述のロジック回路や読出し回路を構成するトランジスタが駆動される。
【0094】
図14に示すように、固体撮像素子50は、受光基板部60の光入射面側から回路基板部70のボンディングパッド23に到達してボンディングパッド23の表面を露出するボンディング開口部67を更に備えている。ボンディング開口部67は、ボンディングパッド23毎に設けられている。ボンディングパッド23には、図示していないが、ボンディング開口部67を通して、ボンディングワイヤの一端側が接続されている。
【0095】
この第3実施形態に係る半導体装置1Cは、通常、カラーフィルタ65及びマイクロレンズ66を形成した後、ボンディング開口部67を形成している。ボンディング開口部67は、上述の実施形態と同様に、フッ素系ガスを用いたドライエッチング法によって形成することができる。フッ素系ガスの残留成分は薬液によって除去することができる。しかしながら、カラーフィルタ65及びマイクロレンズ66を樹脂性の材料で形成する場合、フッ素系ガスの残留成分を薬液で除去することは難しい。したがって、第3実施形態の半導体装置の製造においては、ボンディングパッド23を液体金属で覆い、ボンディングパッド23の金属成分と大気中の水分や酸素との反応による不働態の形成を抑制する技術は特に有効である。
【0096】
また、この第3実施形態に係る半導体装置1Cのボンディング開口部67は、回路基板部70の光入射面側から反対側の回路基板部70のボンディングパッド23に到達しているため、上述の第1及び第2実施形態の開口部25と比較して深い。したがって、この第3実施形態に係る半導体装置1Cの製造では、ボンディング開口部67内に液体金属31を安定して貯蓄することができるため、ボンディングパッド23を液体金属で覆い、ボンディングパッド23の金属成分と大気中の水分や酸素との反応による不働態の形成を抑制する技術を有効に活用することができる。
【0097】
なお、上述の実施形態では、Alを主成分とするAl-Si-Cu組成のボンディングパッド23について説明したが、本技術は、他の組成のボンディングパッドの場合にも適用することができる。例えばCu組成のボンディングパッドの場合にも適用することができる。
【0098】
また、上述の実施形態では、流動性の導電材料としてGa系の液体金属31を例示したが、常温で液体の金属であれば他の液体金属でもよく、また、金属以外でも液体で導電性を示す物質であればよい。例えば水銀や導電性ポリマーを例示することができる。
また、上述の第1及び第2実施形態では、ボンディングワイヤ33として金ワイヤを用いた場合について説明したが、ボンディングワイヤ33としては他の材料のワイヤを用いてもよい。
【0099】
なお、本技術は、以下のような構成としてもよい。
(1)
側壁で囲まれた開口部から露出するボンディングパッドを流動性の導電材料で覆い、
前記ボンディングパッドに導電部材を接続する前に、前記ボンディングパッドから前記流動性の導電材料を除去する、半導体装置の製造方法。
(2)
前記流動性の導電材料は、前記ボンディングパッドを介して回路の電気特性を検査した後に除去する、上記(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(3)
前記検査は、前記ボンディングパッドから離間した状態で前記流動性の導電材料にフローブ針を接触させて行う、上記(2)記載の半導体装置の製造方法。
(4)
前記検査は、前記ボンディングパッド及び前記流動性の導電材料にプローブ針を接触させて行う、上記(2)に記載の半導体装置の製造方法。
(5)
前記流動性の導電材料は、液体金属である、上記(1)から(4)の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
(6)
前記流動性の導電材料は、ガリウム系の液体金属である、上記(1)から(4)の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
(7)
前記導電部材は、ボンディングワイヤ、若しくはメタライズ層である、上記(1)から(6)の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
(8)
ボンディングパッドと、
前記ボンディングパッドに開口部を通して接続された導電部材と、
前記ボンディングパッドと前記導電部材との間に形成され、かつゲルマニウムを含有する層間合金層と、
を備えている、半導体装置。
(9)
前記層間合金層は、Al-Au-Ga組成を含む、上記(8)に記載の半導体装置。
(10)
前記導電部材の周囲の前記ボンディングパッドの表面に、ゲルマニウムを含むと共に前記層間合金層とは異なる組成で形成された表面合金層を更に備えている、上記(8)又は(9)に記載の半導体装置。
(11)
前記層間合金層は、Al-Au-Ga組成を含み、
前記表面合金層は、Al-Ga組成を含む、上記(10)に記載の半導体装置。
(12)
前記ボンディングパッドは、アルミニウムを含有し、
前記ボンディングワイヤは、ボールボンディング法で接続された金ワイヤである、上記(8)に記載の半導体装置。
(13)
前記ボンディングパッドの周縁領域は、絶縁層で覆われ、
前記表面合金層は、前記絶縁層の側壁と前記導電部材との間に配置されている、上記(10)又から(12)の何れかに記載の半導体装置。
(14)
前記導電部材は、メタライズ層である、上記(8)に記載の半導体装置。
【0100】
本技術の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本技術が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本技術の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0101】
1A,1B,1C 半導体装置
10 配線基板
10x 第1の面(主面)
10y 第2の面(裏面)
11 電極パッド
12 電極パッド
15 樹脂封止体
16 収納体(パッケージ)
18 バンプ電極
20 半導体チップ
21 半導体基板
22 積層体
23 ボンディングパッド(BP)
24 絶縁層
25 開口部
31 液体金属(流動性の導電材料)
32 表面合金層
33 ボンディングワイヤ
34 層間合金層
35 メタライズ層
36 バンプ電極
40 半導体ウエハ
41 チップ形成領域
42 スクライブライン(ダイシング領域)
45 測定器
46 プローブ針
60 受光基板部(第1半導体基体)
61 半導体層
62 絶縁層
64 平坦化膜
65 カラーフィルタ
66 マイクロレンズ
67 ボンディング開口部
70 回路基板部(第2半導体基体)
71 半導体基板
72 多層配線層
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14