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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171453
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】断熱ホースおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/075 20060101AFI20221104BHJP
   F16L 59/147 20060101ALI20221104BHJP
   F16L 11/20 20060101ALI20221104BHJP
   B29D 23/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F16L59/075
F16L59/147
F16L11/20
B29D23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078105
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】591167669
【氏名又は名称】株式会社三洋化成
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】門脇 隆
【テーマコード(参考)】
3H036
3H111
4F213
【Fターム(参考)】
3H036AA01
3H036AB32
3H036AC02
3H111BA15
3H111CA03
3H111CA07
3H111CC07
3H111DA15
3H111DB05
3H111EA17
4F213AC03
4F213AD16
4F213AE02
4F213AG03
4F213AG08
4F213WA09
4F213WB01
(57)【要約】
【課題】外面が結露し難い断熱ホースを提供する。
【解決手段】内面2には、被覆層9aが5層積層された内層4が形成されており、内層4の上には、被覆層9aによって覆われた内側断熱層7aが形成されており、内側断熱層7aの上には、被覆層9aによって覆われた外側断熱層8aが積層されており、外側断熱層8aの上は、被覆層9aが2層積層された外層5によって覆われている。従って、内側断熱層7aに結露が発生しても、外側断熱層8aへの結露による水分の移動を抑え、断熱ホースの内部を流れる冷水から発生する冷気が伝わり難いため、外面3が結露し難い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂により形成された帯状の断熱材と、合成樹脂により形成された帯状の被覆材とをそれぞれ螺旋状に捲回することにより形成される可撓性の断熱ホースであって、
前記断熱材により形成された断熱層が当該断熱ホースの内面と外面との間に複数層形成されており、
各断熱層の周囲は、それぞれ前記被覆材によって覆われており、
各断熱層同士が非接触になっていることを特徴とする断熱ホース。
【請求項2】
前記断熱ホースを自身の軸線の方向に沿って切断した場合に、各断熱層の周面がそれぞれ前記被覆材によって覆われた独立構造になっていることを特徴とする請求項1に記載の断熱ホース。
【請求項3】
前記被覆材は、連続した1つの被覆材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の断熱ホース。
【請求項4】
最も外側に配置された前記断熱層の外側は、前記被覆材による被覆層が複数層積層された外層によって覆われていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の断熱ホース。
【請求項5】
最も内側に配置された前記断熱層の内側には、前記被覆材による被覆層が複数層形成された内層が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の断熱ホース。
【請求項6】
最も内側に配置された断熱層と、その断熱層の内側に配置された前記被覆材との間には、合成樹脂により形成された線状の補強材が介在されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の断熱ホース。
【請求項7】
合成樹脂により形成された帯状の被覆材を供給する被覆材供給装置と、線状の補強材を供給する補強材供給装置と、合成樹脂により形成された帯状の第1の断熱材を供給する第1の断熱材供給装置と、合成樹脂により形成された帯状の第2の断熱材を供給する第2の断熱材供給装置とが、回転する軸部材の周囲に配置されており、
前記被覆材供給装置から供給される前記被覆材を、前記回転する軸部材の周面に螺旋状に重なるように捲回し、
前記補強材供給装置から供給される前記補強材と前記第1の断熱材供給装置から供給される前記第1の断熱材とを、前記軸部材の周面に捲回された前記被覆材と前記第1の断熱材との間に前記補強材が介在するように、前記軸部材の周面に捲回されている前記被覆材と、前記軸部材の周面に捲回されようとしている前記被覆材とによって挟まれた状態で、前記軸部材の周面に捲回された前記被覆材の周面に螺旋状に捲回し、
前記第2の断熱材供給装置から供給される前記第2の断熱材を、前記軸部材の周面に捲回されて前記被覆材により覆われている前記第1の断熱材と、前記軸部材の周面に捲回されようとしている前記被覆材とによって挟まれた状態で、前記軸部材の周面に捲回されて前記被覆材により覆われている前記第1の断熱材の周面に螺旋状に捲回することを特徴とする断熱ホースの製造方法。
【請求項8】
前記被覆材は、連続した1つの被覆材であることを特徴とする請求項7に記載の断熱ホースの製造方法。
【請求項9】
前記第1の断熱材および前記第2の断熱材の各幅は同一であり、
当該断熱ホースの形成が進行する方向を前方とした場合に、前記第1の断熱材を捲回する位置は前記第2の断熱材を捲回する位置よりも後方に存在し、かつ、前記第1の断熱材を捲回する位置と前記第2の断熱材を捲回する位置とは、前記幅よりも長い距離離れていることを特徴とする請求項8に記載の断熱ホースの製造方法。
【請求項10】
前記被覆材同士が溶着可能となるように軟化した前記被覆材を用いることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の断熱ホースの製造方法。
【請求項11】
前記被覆材を前記軸部材の周面に螺旋状に重なるように複数回捲回することにより、前記被覆材による被覆層が複数層積層された内層を形成し、その内層の上に前記補強材および前記第1の断熱材を捲回することを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1つに記載の断熱ホースの製造方法。
【請求項12】
前記補強材は合成樹脂により形成されており、
前記内層と溶着可能となるように軟化した前記補強材を用いることを特徴とする請求項11に記載の断熱ホースの製造方法。
【請求項13】
前記被覆材により覆われている前記第1の断熱材の周面に前記第2の断熱材を螺旋状に捲回するときに、前記被覆材を前記第2の断熱材の周面に螺旋状に重なるように複数回捲回することにより、前記被覆材による被覆層が複数層積層された外層を前記第2の断熱材の外側に形成することを特徴とする請求項8ないし請求項12のいずれか1つに記載の断熱ホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、空気調和装置に用いるドレンホースなどの断熱ホースおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の断熱ホースとして、例えば、図10に示すものが知られている(特許文献1)。図10は、従来の断熱ホースをその軸線に沿って切断して示す断面図である。
従来の断熱ホース100は、ビニールテープにより形成された内壁101と、ビニールテープにより形成された外壁102とを備えており、内壁101と外壁102との間に断熱材103が設けられている。断熱材103は、内層104および外層105から構成されている。内層104と内壁101との間には、補強線109が介在されている。内層104間には継ぎ目106が形成されており、外層105間には継ぎ目107が形成されている。さらに、内層104および外層105間には継ぎ目108が形成されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-305796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、断熱ホース100を空気調和装置(エアコン)のドレンホースとして用いる場合、断熱ホース100の内部をドレン水(冷水)が通過し、内壁101の温度が下がると、内層104が結露する。
しかし、前述した従来の断熱ホース100は、継ぎ目106~108が形成されているため、内層104の結露による水分、または、断熱ホース100の内部を流れる冷水から発生する冷気が各継ぎ目106~108を通過して外壁102に到達すると、外壁102の外面が結露し、その結露による水分が天井裏や床などに落ちるおそれがあった。特に、断熱ホース100を空気調和装置に取り付ける場合に断熱ホース100が屈曲すると、各継ぎ目が広がって隙間(空気層)が形成され、その隙間を通じて水分または冷気が内壁104から外壁102に到達するため、外面が結露し易くなる。
つまり、前述した従来の断熱ホース100は、外面が結露し易いという問題があった。
【0005】
そこで本願発明は、上述した問題を解決するために創出されたものであって、外面が結露し難い断熱ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、合成樹脂により形成された帯状の断熱材と、合成樹脂により形成された帯状の被覆材とをそれぞれ螺旋状に捲回することにより形成される可撓性の断熱ホース(1:図1)であって、
断熱材(7,8:図9)により形成された断熱層(7a,8a:図2)が当該断熱ホース(1)の内面(2)と外面(3)との間に複数層形成されており、
各断熱層の周囲は、それぞれ被覆材(9:図9)により形成された被覆層(9a:図2)によって覆われており、
各断熱層(7a,8a)同士が非接触になっていることを第1の特徴とする。
【0007】
(第2の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第1の特徴において、
断熱ホース(1)を自身の軸線(G)の方向に沿って切断した場合に、各断熱層(7a,8a)の周面がそれぞれ被覆層(9a)によって覆われた独立構造になっていることを第2の特徴とする。
【0008】
(第3の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第1または第2の特徴において、
被覆材(9)は、連続した1つの被覆材であることを第3の特徴とする。
【0009】
(第4の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第1ないし第3のいずれか1つの特徴において、
最も外側に配置された断熱層(8a)の外側は、被覆材(9)による被覆層(9a:図3)が複数層積層された外層(5)によって覆われていることを第4の特徴とする。
【0010】
(第5の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第1ないし第4のいずれか1つの特徴において、
最も内側に配置された断熱層(7a)の内側には、被覆材(9)による被覆層(9a:図3)が複数層積層された内層(4)が配置されていることを第5の特徴とする。
【0011】
(第6の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第1ないし第5のいずれか1つの特徴において、
最も内側に配置された断熱層(7a)と、その断熱層の内側に配置された被覆材(9)との間には、合成樹脂により形成された線状の補強材(6:図3)が介在されていることを第6の特徴とする。
【0012】
(第7の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、合成樹脂により形成された帯状の被覆材(9)を供給する被覆材供給装置(30:図9)と、線状の補強材(6)を供給する補強材供給装置(40)と、合成樹脂により形成された帯状の第1の断熱材(7)を供給する第1の断熱材供給装置(50)と、合成樹脂により形成された帯状の第2の断熱材(8)を供給する第2の断熱材供給装置(60)とが、回転する軸部材(20)の周囲に配置されており、
被覆材供給装置(30)から供給される被覆材(9)を、回転する軸部材(20)の周面に螺旋状に重なるように捲回し、
補強材供給装置(40)から供給される補強材(6)と第1の断熱材供給装置(50)から供給される第1の断熱材(7)とを、軸部材(20)の周面に捲回された被覆材(9)と第1の断熱材(7)との間に補強材(6)が介在されるように、軸部材(20)の周面に捲回されている被覆材(9)と、軸部材(20)の周面に捲回されようとしている被覆材(9)とによって挟まれた状態で、軸部材(20)の周面に捲回された被覆材(9)の周面に螺旋状に捲回し、
第2の断熱材供給装置(60)から供給される第2の断熱材(8)を、軸部材(20)の周面に捲回されて被覆材(9)により覆われている第1の断熱材(7)と、軸部材(20)の周面に捲回されようとしている被覆材(9)とによって挟まれた状態で、軸部材(20)の周面に捲回されて被覆材(9)により覆われている第1の断熱材(7)の周面に螺旋状に捲回することを第7の特徴とする。
【0013】
(第8の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第7の特徴において、
被覆材(9)は、連続した1つの被覆材であることを第8の特徴とする。
【0014】
(第9の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第8の特徴において、
第1の断熱材(7)および第2の断熱材(8)の各幅(w1)は同一であり、
当該断熱ホース(1)の形成が進行する方向を前方とした場合に、第1の断熱材(7)を捲回する位置は第2の断熱材(8)を捲回する位置よりも後方に存在し、かつ、第1の断熱材(7)を捲回する位置と第2の断熱材(8)を捲回する位置とは、上記の幅(w1)よりも長い距離(1.5w1)離れていることを第9の特徴とする。
【0015】
(第10の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第8または第9の特徴において、
被覆材(9)同士が溶着可能となるように軟化した被覆材(9)を用いることを第10の特徴とする。
【0016】
(第11の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第8ないし第10の特徴のいずれか1つにおいて、
被覆材(9)を軸部材(20)の周面に螺旋状に重なるように複数回捲回することにより、被覆材(9)による被覆層(9a)が複数層積層された内層(4)を形成し、その内層(4)の上に補強材(6)および第1の断熱材(7)を捲回することを第11の特徴とする。
【0017】
(第12の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第8ないし第11のいずれか1つの特徴において、
補強材(6)は合成樹脂により形成されており、
内層(4)と溶着可能となるように軟化した補強材(6)を用いることを第12の特徴とする。
【0018】
(第13の特徴)
前述した目的を達成するため、本願発明は、前述した第8ないし第12の特徴のいずれか1つにおいて、
被覆材(9)により覆われている第1の断熱材(7)の周面に第2の断熱材(8)を螺旋状に捲回するときに、被覆材(9)を第2の断熱材(8)の周面に螺旋状に重なるように複数回捲回することにより、被覆材(9)による被覆層(9a)が複数層積層された外層(5)を第2の断熱材(8)の外側に形成することを第13の特徴とする。
【0019】
なお、上記各括弧内の符号および図の番号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0020】
(第1の特徴による効果)
前述した第1の特徴を備える本願発明によれば、最も内側の断熱層において結露が発生した場合であっても、その結露による水分、または、断熱ホース内を流れる冷水から発生する冷気が外側に隣接する断熱層に伝わらないようにすることができる。
従って、前述した第1の特徴を備える本願発明によれば、断熱ホースの外面が結露し難い断熱ホースを提供することができる。
また、断熱ホースを製造するときは、断熱ホースを自身の軸線と直交する方向に沿って切断して所定の長さにするが、その切断面から断熱層が離脱した場合であっても、各断熱層の周囲は、それぞれ被覆材によって覆われているため、離脱した部分からほつれてしまうおそれがない。
さらに、1つの断熱層を覆っている被覆材が破れ、その破れた箇所から断熱層が離脱した場合であっても、その離脱に連動して他の断熱層が離脱してしまうおそれがない。
【0021】
(第2の特徴による効果)
前述した第2の特徴を備える本願発明によれば、最も内側の断熱層において結露が発生した場合であっても、その結露による水分、または、断熱ホース内を流れる冷水から発生する冷気が外側に隣接する断熱層に伝わらないようにすることができる。
従って、前述した第2の特徴を備える本願発明によれば、断熱ホースの外面が結露し難い断熱ホースを提供することができる。
【0022】
(第3の特徴による効果)
前述した第3の特徴を備える本願発明によれば、被覆材は、連続した1つの被覆材であるため、2つの被覆材を用いた断熱ホースと比較すると、被覆材を供給する装置が1つで済むし、被覆材を捲回する工程も1つで済むので、断熱ホースの製造コストを削減することができる。
ところで、複数の被覆材を用いて各断熱層の周囲を覆う構造の場合は、被覆材が不連続になった境界部分が、捻れ、引っ張りおよび曲げに対して弱くなる。
しかし、前述した第3の特徴を備える本願発明は、連続した1つの被覆材により、各断熱層の周囲が覆われており、被覆材が不連続になった部分が存在せず、各断熱層が一体化されているため、捻れ、引っ張りおよび曲げに強い断熱ホースを提供することができる。
【0023】
(第4の特徴による効果)
前述した第4の特徴を備える本願発明によれば、断熱ホースの外側の強度を高めることができるため、断熱ホースが屈曲したときに外側が破損し難くすることができる。また、被覆材による被覆層を複数層積層することにより外層を形成するため、被覆層の積層数をコントロールすることにより、断熱ホースの外側を所望の厚さにすることができる。
また、合成樹脂により形成された被覆層が複数層積層された外層は柔軟性を有し、その外層が断熱ホースの外殻になるため、断熱ホースに柔軟性を持たせることができ、可撓性を高めることもできる。
【0024】
(第5の特徴による効果)
前述した第5の特徴を備える本願発明によれば、断熱ホースの内側の強度を高めることができるため、断熱ホースが屈曲したときなどに内側が破損し難くすることができる。また、被覆材による被覆層を複数層積層することにより内層を形成するため、被覆層の積層数をコントロールすることにより、断熱ホースの内側を所望の厚さにすることができる。
また、合成樹脂により形成された被覆層が複数層積層された内層は柔軟性を有し、その内層が断熱ホースの内殻(芯)になるため、断熱ホースに柔軟性を持たせることができ、可撓性を高めることもできる。
【0025】
(第6の特徴による効果)
前述した第6の特徴を備える本願発明によれば、最も内側に配置された断熱層と、その断熱層の内側に配置された被覆材との間には、合成樹脂により形成された線状の補強材が介在されているため、断熱ホースの強度を高めることができるので、潰れ難く、かつ、折れ難くすることができ、さらに、引っ張りに対して強くすることができる。さらに、断熱ホース全体の強度を高めることができるため、外部荷重が掛かったときや屈曲したときでも、座屈し難く、かつ、潰れ難く、さらに、元の形状に復元し易い断熱ホースを提供することができる。
【0026】
(第7の特徴による効果)
前述した第7の特徴を備える本願発明によれば、被覆材により覆われた第1の断熱材および被覆材により覆われた第2の断熱材を同時に形成し、被覆材により覆われた第1の断熱材の上に、被覆材により覆われた第2の断熱材が積層された構造の断熱ホースを1つの工程にて連続して製造することができるため、製造効率を高めることができる。
【0027】
(第8の特徴による効果)
前述した第8の特徴を備える本願発明によれば、被覆材は、連続した1つの被覆材であるため、2つの被覆材を用いる製造方法と比較すると、被覆材を供給する装置が1つで済むし、被覆材を捲回する工程も1つで済むので、断熱ホースの製造コストを削減することができ、かつ、製造効率を高めることができる。
前述したように、複数の被覆材を用いて各断熱層の周囲を覆う構造の場合は、被覆材が不連続になった境界部分が、捻れ、引っ張りおよび曲げに対して弱くなる。
しかし、前述した第8の特徴を備える本願発明は、連続した1つの被覆材により、各断熱層の周囲を覆うため、被覆材が不連続になった部分が存在せず、各断熱層が一体化されるため、捻れ、引っ張りおよび曲げに強い断熱ホースを提供することができる。
【0028】
(第9の特徴による効果)
前述した第9の特徴を備える本願発明によれば、決められた位置から第1の断熱材および第2の断熱材をそれぞれ軸部材の周面に捲回することにより、第1の断熱材の上に第2の断熱材を自動的に捲回することができる。
また、前述した第9の特徴を備える本願発明によれば、軸部材の周面に捲回された第1の断熱材間の境界と第2の断熱材間の境界とが重ならないようにすることができるため、第1の断熱材の境界から水分または冷気が浸入した場合であっても、第2の断熱材への水分の移動を抑え、冷気を伝わり難くすることができる。
さらに、前述した第9の特徴を備える本願発明によれば、断熱ホースが屈曲したときに、屈曲方向の外側の部分において、断熱ホースの軸線に沿って、第1の断熱材により形成される断熱層間および第2の断熱材により形成される断熱層間にそれぞれ空間が生じた場合であっても、各空間が、断熱ホースの軸線と直交する方向では重ならないため、内側の空間から外側の空間への水分の移動を抑え、冷気を伝わり難くすることができる。
また、断熱ホースが屈曲したときに、屈曲方向の内側の部分において、第1の断熱材により形成される断熱層と第2の断熱材により形成される断熱層との間に空間が形成された場合であっても、断熱ホースの軸線に沿って隣接する各断熱層間には空間が形成されないため、仮に、第1の断熱材により形成される断熱層と第2の断熱材により形成される断熱層との間に水分または冷気が浸入した場合でも、第2の断熱材により形成される断熱層の外側への水分の移動を抑え、冷気を伝わり難くすることができる。
【0029】
(第10の特徴による効果)
前述した第10の特徴を備える本願発明によれば、被覆材同士が溶着した部分が剥がれるおそれがなく、被覆材によって第1の断熱材および第2の断熱材を密閉することができるため、第1の断熱材と第2の断熱材との間を水分が移動するおそれがなく、冷気が伝わり難いので、外面が結露し難くすることができる。
また、前述した第10の特徴を備える本願発明によれば、被覆材同士を溶着するため、接着剤が不要となるので、製造コストを削減することもできる。さらに、被覆材同士を溶着するため、接着剤によって被覆材同士を接着する構造よりも、断熱ホースの強度を高めることができる。
【0030】
(第11の特徴による効果)
前述した第11の特徴を備える本願発明によれば、内層の上に補強材および第1の断熱材を捲回するため、断熱ホースの強度を高めることができるので、潰れ難く、かつ、折れ難くすることができ、さらに、引っ張りに対して強くすることができる。また、潰れ、曲げ、折れ、捻れが生じた場合の復元力を高めることもできる。また、被覆材による被覆層を複数層積層することにより内層を形成するため、被覆層の積層数をコントロールすることにより、断熱ホースの内側を所望の厚さにすることができる。
さらに、合成樹脂により形成された被覆層が複数層積層された内層は柔軟性を有し、その内層が断熱ホースの内殻(芯)になるため、断熱ホースに柔軟性を持たせることができ、可撓性を高めることもできる。
【0031】
(第12の特徴による効果)
前述した第12の特徴を備える本願発明によれば、内層と補強材とを溶着することができるため、内層に対する補強材の配置位置をずれ難くすることができる。また、前述した第12の特徴を備える本願発明によれば、接着剤を使用しなくても内層と補強材とを溶着することができるため、製造コストを削減することもできる。
【0032】
(第13の特徴による効果)
前述した第13の特徴を備える本願発明によれば、断熱ホースの外側の強度を高めることができるため、断熱ホースが屈曲したときに外側が破損し難くすることができる。また、被覆材による被覆層を複数層積層することにより外層を形成するため、被覆層の積層数をコントロールすることにより、断熱ホースの外側を所望の厚さにすることができる。
また、合成樹脂により形成された被覆層が複数層積層された外層は柔軟性を有し、その外層が断熱ホースの外殻になるため、破れ難く、屈曲し易い。さらに、断熱ホースに柔軟性を持たせることができ、可撓性を高めることもできる。
【0033】
上述したように、第1ないし第13の特徴のいずれか1つを備える本願発明によれば、外面が結露し難い断熱ホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本願発明の実施形態に係る断熱ホースの説明図であって、軸線に沿って切断した断面の一部と共に示す説明図である。
図2図1において符号Aにて示す領域の拡大図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】断熱ホースが形成される過程を示す断面説明図である。
図5図4を2つに分割して拡大した拡大図である。
図6】断熱ホースが屈曲したときの断熱ホースの構造を示す断面説明図である。
図7図6のうち、屈曲した外側部分の断面拡大説明図である。
図8図6のうち、屈曲した内側部分の断面拡大説明図である。
図9】本願発明の実施形態に係る断熱ホースの製造方法の説明図であり、(A)は製造装置の説明図、(B)は軸部材に補強部材および第1の断熱材を捲回する方法を示す説明図である。
図10】従来の断熱ホースを軸線に沿って切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[断熱ホースの構造]
本願発明の実施形態に係る断熱ホースの構造について図を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る断熱ホース1は、後述するように各層を螺旋状に捲回することにより製造されるもので、全長がL、外径がφ1、内径がφ2にて形成されており、剛性および可撓性を有する。例えば、断熱ホース1は、空気調和装置(エアコン)に用いるドレンホースであり、全長Lが約1,000mm、外径φ1が30~50mm、内径φ2が10~40mmである。断熱ホース1を自身の軸線(中心軸)Gと直交する方向にて切断した断面は、円環状である(図示せず)。図2および図3に示すように、断熱ホース1の内面2には、断熱ホース1の内殻(芯)となる内層4が配置されている。内層4は、合成樹脂により形成された被覆層9aを5層積層することにより形成されている。各被覆層9aは相互に溶着された状態で一体化されているため、被覆層9aの積層構造が崩れるおそれがない。例えば、被覆層9aの厚さは0.1~2.0mmである。
【0036】
内層4の外側には、発泡樹脂により形成された内側断熱層7aが積層されている。内側断熱層7aを断熱ホース1の軸線Gに沿って切断した場合の断面形状は、軸線Gの方向に長い略長方形である。各内側断熱層7aは、軸線Gに沿って相互に隣接するように配列されている。各内側断熱層7aは、それぞれ被覆層9aによって隙間無く覆われており、隣接する内側断熱層7a同士が非接触になっている。つまり、各内側断熱層7aは、相互に非接触の独立構造になっている。図3に示すように、内側断熱層7a間の境界7bのうち、内側に位置する境界7cは、重ね合わせ部4aによって覆われている。重ね合わせ部4aは、被覆層9aを6層積層することにより形成されており、最内層の被覆層9aは、後側(図では左側)に隣接する内側断熱層7aの下に形成された内層4の最内層の被覆層9aである。図中、符号Eにて示す部分は、連続した1つの被覆材9の後端E(図9)である。後端Eは、境界7cと一致しないように、境界7cよりも後方(図では左方)にずれた位置に存在している。内側断熱層7aの軸線Gに沿った長さを内側断熱層7aの幅w1(図2)とすると、内層4を形成している被覆層9aの重ね代k(図2)は、幅w1と略同じである。
【0037】
内側断熱層7aと、内層4との間には、合成樹脂により形成された補強材6が介在されている。補強材6の断面形状は、略円形である。また、補強材6は、被覆層9aと溶着可能となるように軟化した状態で内層4の上に捲回されるため、補強材6と内層4とが相互に溶着した状態になっているので、内層4に対する補強材6の配置位置がずれ難くなっている。各補強材6の軸線Gに沿った配置間隔(ピッチ)pは、略幅w1と等しい。
【0038】
内側断熱層7aの外側には、発泡樹脂により形成された外側断熱層8aが被覆層9aを介して積層されている。外側断熱層8aを軸線Gに沿って切断した場合の断面形状は、内側断熱層7aと同様の略長方形であり、幅は、内側断熱層7aと同じw1である。各外側断熱層8aは、軸線Gに沿って相互に隣接するように配列されている。各外側断熱層8aは、それぞれ被覆層9aによって隙間無く覆われており、隣接する外側断熱層8a同士が非接触になっている。つまり、各外側断熱層8aは、相互に非接触の独立構造になっている。各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aは、軸線Gに沿った配置位置が相互に0.5w1ずつ、ずれている(変位している)。これにより、内側断熱層7a間の境界7bの軸線Gに対する位置と、外側断熱層8a間の境界8bの軸線Gに対する位置とが、一致せず、0.5w1ずれている(変位している)。内側断熱層7aおよび外側断熱層8aは、本発明の断熱層の一例である。以下、内側断熱層7aおよび外側断熱層8aに共通の事項を説明する場合は、単に断熱層という場合がある。
【0039】
図3に示すように、外側断熱層8aの外側には外層5が形成されている。外層5は、被覆層9aを2層積層することにより形成されている。外側断熱層8a間の境界8bのうち、外側に位置する境界8cは、重ね合わせ部5aによって覆われている。重ね合わせ部5aは、被覆層9aを3層積層することにより形成されており、最外層の被覆層9aは、後側(図では左側)に隣接する外側断熱層8aの最外層の被覆層9aである。図中、符号Sにて示す部分は、被覆材9の前端S(図9)である。前端Sは、境界8cと一致しないように、境界8cよりも前方(図では右方)にずれた位置に存在している。
つまり、断熱ホース1は、螺旋状に重なりながら巻かれる単一の被覆材9(被覆層9a)の重なり部分に、内側断熱層7aおよび補強材6と外側断熱層8aとがそれぞれ挟まれた格好になる。
各被覆層9aは相互に溶着した状態で一体化されているため、外層5の積層構造が崩れるおそれがない。
例えば、被覆層9aは、軟質のポリ塩化ビニル(軟質PVC)により形成されており、補強材6は、硬質のポリ塩化ビニル(硬質PVC)により形成されている。内側断熱層7aおよび外側断熱層8aは、それぞれ発泡ポリエチレン(PE)により形成されている。
【0040】
図6に示すように、断熱ホース1が屈曲すると、軸線Gの外側の外側断熱層8aおよび内側断熱層7aは、それぞれ発泡樹脂の弾性により、屈曲半径方向に伸び(図7)、軸線Gの内側の外側断熱層8aおよび内側断熱層7aは、それぞれ屈曲半径方向に縮む(図8)。また、図7に示すように、軸線Gの外側では、相互に隣接する外側断熱層8a間と、相互に隣接する内側断熱層7a間とにそれぞれ空気層(隙間)10が形成される。また、図8に示すように、軸線Gの内側では、相互に隣接する内側断熱層7aおよび外側断熱層8a間と、外側断熱層8aおよび外層5間とにそれぞれ空気層(隙間)10が形成される。
しかし、内層4、外層5、各外側断熱層8aおよび各内側断熱層7aは破損せず、各外側断熱層8aおよび各内側断熱層7aをそれぞれ覆っている被覆層9aも破損しないため、従来のように、屈曲により形成された隙間を通じて水分が内側断熱層7aから外側断熱層8aに移動するおそれがなく、冷気が伝わり難い。従って、外面3が結露し難い。また、断熱ホース1の断熱特性、屈曲特性および耐久性が損なわれることもない。また、屈曲した断熱ホース1を屈曲前の状態に戻すと、各空気層10が殆ど無くなり、各外側断熱層8aおよび各内側断熱層7aは、変形前の形状に復帰する。
【0041】
[断熱ホースの製造装置]
次に、断熱ホース1の製造装置について図9を参照しながら説明する。図9では、断熱ホース1の形成が進行する方向を前方とする。
断熱ホース1の製造装置80は、軸部材20と、被覆材供給装置30と、補強材供給装置40と、第1の断熱材供給装置50と、第2の断熱材供給装置60と、冷却装置70と、第1の案内部材71と、第2の案内部材72と、ガイドローラ73とを備えている。軸部材20は、略棒状に形成されており、モータなどを備えた回転装置(図示せず)と接続されており、自身の軸線Gを中心にして、矢印Fで示す方向に回転する。被覆材供給装置30は、帯状(シート状)の連続した1つの被覆材9を半溶融した状態、つまり、被覆材9同士が溶着可能となるように軟化した状態で口金31から押出して供給する。第1の断熱材供給装置50は、帯状の第1の断熱材7を供給し、その第1の断熱材7は、第1の案内部材71により、軸部材20の捲回位置に案内される。第1の案内部材71は、自身の取付け位置を前後左右に調節可能な取付け装置(図示せず)に取り付けられており、取付け位置を調節することにより、第1の断熱材7の捲回位置を調節することができる。
【0042】
補強材供給装置40は、線状の補強材6を半溶融した状態、つまり、被覆材9と溶着可能となるように軟化した状態で供給し、その補強材6は、ガイドローラ73により、第1の断熱材7の上に乗った状態で軸部材20の捲回位置に案内される。詳しくは、第1の断熱材7および補強材6は、第1の断熱材7の上面における長手方向の中心線と、補強材6の軸線とが一致した状態で軸部材20の捲回位置に案内される。第2の断熱材供給装置60は、帯状の第2の断熱材8を供給し、第2の案内部材72は、第2の断熱材供給装置60から供給される第2の断熱材8を軸部材20の捲回位置に案内する。第2の案内部材72は、自身の取付け位置を前後左右に調節可能な取付け装置(図示せず)に取り付けられており、取付け位置を調節することにより、第2の断熱材8の捲回位置を調節することができる。
また、第1の断熱材7を捲回する位置は、第2の断熱材8を捲回する位置よりも後方に存在し、かつ、第1の断熱材7を捲回する位置と第2の断熱材8を捲回する位置とは、第1の断熱材7および第2の断熱材8の各幅w1よりも長い、1.5w1離れている。
【0043】
冷却装置70は、製造された断熱ホース1の周面に冷却水を吐出し、断熱ホース1を冷却する。被覆材供給装置30は、軸部材20の軸線Gの左側に配置されており、補強材供給装置40、第1の断熱材供給装置50および第2の断熱材供給装置60は、軸線Gの右側に配置されている。つまり、被覆材供給装置30の配置位置と、補強材供給装置40、第1の断熱材供給装置50および第2の断熱材供給装置60の配置位置とは、軸線Gに対して反対になっている。このような配置にすることにより、第1の断熱材7、補強材6および第2の断熱材8が軸部材20捲回されている様子を被覆材9によって邪魔されることなく見ることができる。以下、第1の断熱材7および第2の断熱材8に共通の事項を説明する場合は、単に断熱材という場合がある。
【0044】
[断熱ホースの製造方法]
最初に、製造方法の特徴について図4および図5を参照しながら説明する。図4は、断熱ホース1が形成される過程を示す断面図であり、図5は、図4を2つに分割して拡大した拡大図である。図4および図5では、断熱ホース1の形成が進行する方向を前方とする。図4および図5において、符号(7-1)~(7-5)は、第1の断熱材7の捲回回数が1回ないし5回のときに形成された内側断熱層7aを示し、符号(8-2)~(8-5)は、第2の断熱材8の捲回回数が2回ないし5回のときに形成された外側断熱層8aを示す。例えば、(7-5)は、第1の断熱材7を5回捲回したときに形成された内側断熱層7aであり、(8-5)は、第2の断熱材8を5回捲回したときに形成された外側断熱層8aである。
以下、説明の都合上、符号(7-1)~(7-5)にて示す内側断熱層7aを内側断熱層7aの1列目~5列目と称し、符号(8-2)~(8-5)にて示す外側断熱層8aを外側断熱層8aの2列目~5列目と称する。
【0045】
図5において、最上部の被覆層9a(ハッチングを施した被覆層9a)は、捲回途中の被覆材9の配置位置を示しており、符号Sは、その被覆材9の幅方向の前端(図9)を示し、符号Eは、被覆材9の幅方向の後端(図9)を示す。被覆材9の前端Sから後端Eまでの範囲では、被覆層9aを5層積層して形成された内層4の上に、内側断熱層7aの1列目(7-1)から5列目(7-5)が形成されており、それらの上に外側断熱層8aの2列目(8-2)から5列目(8-5)が積層されている。第1の断熱材7および第2の断熱材8は同時に軸部材20(図9)に捲回されるため、内側断熱層7aの5列目(7-5)および外側断熱層8aの5列目(8-5)は、今、捲回されたばかりの最新の列を示す。
【0046】
図4において、内側断熱層7aの5列目(7-5)と、外側断熱層8aの5列目(8-5)の捲回位置(形成位置)を比較すると、内側断熱層7aの5列目(7-5)と、外側断熱層8aの5列目(8-5)とは、前後に1.5w1離れている。また、外側断熱層8aの5列目(8-5)が内側断熱層7aの4列目(7-4)に対して前方に0.5w1ずれた状態で積層されている。このような積層構造になる理由については後述する。
【0047】
また、各内側断熱層7aと各外側断熱層8aとの間に被覆層9aが介在されている。これは、図9(B)に示すように、軸部材20の周面に既に捲回されている被覆材9と、軸部材20の周面に捲回されようとしている被覆材9との間に第1の断熱材7および第2の断熱材8をそれぞれ挿入して巻き込ませることにより、第1の断熱材7および第2の断熱材8それぞれの上下面が被覆材9によって挾持された状態で軸部材20の周面に螺旋状に捲回されるからである。
さらに、各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aが被覆層9aによって隙間無く覆われている。これは、軟化した状態の被覆材9を用い、テンションを掛けて被覆材9を捲回するからである。
【0048】
さらに、内側断熱層7aの1列目(7-1)から5列目(7-5)の内側には、被覆層9aを5層積層することにより形成された内層4が形成されている。これは、被覆材9の幅が少なくとも断熱層の幅w1の5倍以上あり、その被覆材9を軸部材20の周面に、重なり代k(図2)が断熱層の幅w1となるように螺旋状に5回捲回して内層4を形成し、その内層4が形成されたタイミングで第1の断熱材7を内層4の周面に螺旋状に捲回するからである。
さらに、図2および図3に示すように、外層5は被覆層9aを2層積層することにより形成されている。これは、被覆材9を、被覆層9aにより覆われた外側断熱層8aの上から重なり代k(図2)が断熱層の幅w1となるように捲回するからである。
【0049】
図4に示す状態から軸部材20が1回転すると、内側断熱層7aの5列目(7-5)の後ろ側(図では左隣り)の被覆層9aが1層増えて5層になり、内層4が形成され、その内層4の上に内側断熱層7aの6列目が形成されると同時に、外側断熱層8aの5列目(8-5)の後ろ側(図では左隣り)に外側断熱層8aの6列目が形成され、外側断熱層8aの4列目(8-4)の上に外層5が形成され、内側断熱層7aの5列目(7-5)および外側断熱層8aの5列目(8-5)の外側に被覆層9aがそれぞれ形成される。このように、軸部材20が1回転する毎に、内層4、内側断熱層7a、外側断熱層8aおよび外層5が連続して形成される。
【0050】
被覆層9aを5層積層した内層4を形成しつつ、重なり代kが0.5w1となるように内側断熱層7aおよび外側断熱層8aを形成し、さらに、各内側断熱層7aおよび外側断熱層8aの周囲が被覆層9aによって覆われるようにするために、本実施形態では、被覆材9の幅を第1の断熱材7および第2の断熱材8の各幅w1の5倍以上に設定する。例えば、断熱材の幅が10mmである場合は、被覆材9の幅を50mm以上に設定する。
【0051】
次に、断熱ホース1の製造方法について図9を参照しながら説明する。
被覆材供給装置30を駆動して、連続した1つの被覆材9を半溶融した状態で口金31から供給可能な状態にする。また、補強材供給装置40を駆動して補強材6を半溶融した状態で供給可能な状態にする。また、第1の断熱材供給装置50を駆動して第1の断熱材7を供給可能な状態にし、第2の断熱材供給装置60を駆動して第2の断熱材8を供給可能な状態にする。また、冷却装置70が冷却水を吐出可能な状態にする。
【0052】
(第1の処理)
そして、図9に示すように、被覆材供給装置30の口金31から押し出される被覆材9を、矢印Fの方向に回転する軸部材20の周面に螺旋状に重なるようにテンションを掛けながら捲回する。このとき、重ね代k(図2)が断熱材の幅w1となるように、被覆材9を軸部材20の周面に5回捲回し、被覆層9aが5層積層された内層4(図3)を形成する。
【0053】
(第2の処理)
続いて、図9(B)に示すように、補強材供給装置40から供給される補強材6と、第1の断熱材供給装置50から供給される第1の断熱材7とを、軸部材20の周面に形成された内層4と第1の断熱材7との間に補強材6が介在されるように、軸部材20の周面に形成されている内層4と、軸部材20の周面に捲回されようとしている被覆材9との間に巻き込ませる。これにより、第1の断熱材7の上下面が、内層4と、軸部材20の周面に捲回されようとしている被覆材9とによって挟まれた状態で、軸部材20の周面に形成された内層4の周面に螺旋状に捲回される。これにより、内層4の上に内側断熱層7aが形成され、内側断熱層7aと内層4との間に補強材6が介在され、さらに、内側断熱層7aが被覆層9aによって覆われた状態になる(図2図3)。
【0054】
(第3の処理)
また、第1の断熱材7および補強材6を内層4の周面に螺旋状に捲回し、捲回された第1の断熱材7が、第2の断熱材8の捲回位置に到達したときに、第2の断熱材供給装置60から供給される第2の断熱材8を、軸部材20の周面に捲回されて被覆材9により覆われている第1の断熱材7と、軸部材20の周面に捲回されようとしている被覆材9との間に巻き込ませる。これにより、第2の断熱材8は、その上下面が、被覆材9により覆われている第1の断熱材7と、軸部材20の周面に捲回されようとしている被覆材9とによって挟まれた状態で、軸部材20の周面に捲回されて被覆材9により覆われている第1の断熱材7の周面に螺旋状に捲回される。これにより、被覆層9aによって覆われた内側断熱層7aの上に、被覆層9aによって覆われた外側断熱層8aが積層される(図4図5)。
第1の断熱材7が内層4と被覆材9との間に挟まれた状態になった部分が、第2の断熱材8を捲回する位置に存在するときに第2の断熱材8を捲回することにより、被覆層9aによって覆われた第1の断熱材7の上に、被覆層9aによって覆われた第2の断熱材8を積層することができる。なお、第2の断熱材8を捲回するタイミングは、捲回された第1の断熱材7が、第2の断熱材8の捲回位置を通過した後の適当なタイミングでも良い。
【0055】
図9(A)において、断熱ホース1の形成が進行して行く方向を前方とした場合、第1の断熱材7を捲回する位置は、第2の断熱材8を捲回する位置から後方に1.5w1離れている、つまり、断熱材の1巻き半分、後方に離れている。別の表現をすると、第1の断熱材の捲回位置は、第2の断熱材の捲回位置よりも後方に存在し、第1の断熱材7と、第2の断熱材8との間隔が、0.5w1になっている。これにより、図4に示したように、外側断熱層8aは内側断熱層7aに対して前方に0.5w1ずれた状態で内側断熱層7aに積層される。仮に、第1の断熱材7を捲回する位置が第2の断熱材8を捲回する位置から後方に1.0w1離れている場合は、つまり、捲回する第1の断熱材7と、第2の断熱材8との間隔が無い場合は、外側断熱層8aは内側断熱層7aに対してずれていない状態で積層されることになる。
【0056】
図4に示す例では、外側断熱層8aの5列目(8-5)は、内側断熱層7aの4列目(7-4)に積層されているが、これは、5回目の捲回時では、そのときに形成された内側断熱層7aの5列目(7-5)は、第2の断熱材8の捲回位置に到達しておらず、4回目の捲回時に形成された内側断熱層7aの4列目(7-4)が捲回位置に到達しているからである。また、外側断熱層8aの(8-5)が内側断熱層7aの(7-4)に対して前方に0.5w1ずれて積層されているのは、第1の断熱材7を捲回する位置が、第2の断熱材を捲回する位置から後方に、断熱材の1巻き半分、離れているからである。換言すると、第2の断熱材8を捲回する位置が、第1の断熱材7を捲回する位置から前方に、断熱材の1巻き半分離れているからである。
【0057】
上述した第1ないし第3の処理を1つの工程において同時に実行することにより製造された断熱ホース1は、冷却装置70の下方を通過するときに、冷却装置70から吐出される冷却水によって冷却される。そして、センサにより、製造された断熱ホース1が目標の長さに達したことが検知されると、切断装置(図示省略)が作動し、自動的に切断され、目標の長さの断熱ホース1を得る。
【0058】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態に係る断熱ホース1は、第1の断熱材7により形成された内側断熱層7aと、第2の断熱材8により形成された外側断熱層8aとが、内面2と外面3との間に形成されており、各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aの周囲は、それぞれ被覆材9により形成された被覆層9aによって覆われており、各内側断熱層7a同士および各外側断熱層8a同士がそれぞれ非接触になっており、さらに、内側断熱層7aおよび外側断熱層8a同士も非接触になっている。
従って、上述した実施形態に係る断熱ホース1によれば、内側断熱層7aにおいて結露が発生した場合であっても、外側断熱層8aへの結露による水分の移動を抑え、断熱ホース1の内部を流れる冷水から発生する冷気を伝わり難くすることができるため、外面3が結露し難い断熱ホースを提供することができる。
また、断熱ホース1を製造するときは、断熱ホースを自身の軸線Gと直交する方向に沿って切断するが、その切断面から断熱層が離脱した場合であっても、各断熱層の周囲は、それぞれ被覆層9aによって覆われているため、離脱した部分からほつれてしまうおそれがない。
従って、製造された断熱ホース1の端部に、空気調和装置側のダクトと接続するためのカフスなどの接続部材を取り付ける場合に、断熱ホース1の切断面から断熱層が離脱していると、その離脱している部分を元の位置に戻す手作業が必要になるが、断熱ホース1の切断面から断熱層が離脱することが少ないため、上記の接続部材の取付け作業効率を高めることができる。
また、各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aの周囲は、それぞれ被覆層9aによって覆われているため、例えば、どちらか一方の断熱層を覆っている被覆層9aが破れ、その破れた箇所から断熱層が離脱して、ほつれが生じた場合であっても、そのほつれに連動して他方の断熱層が離脱してしまうおそれがない。
【0059】
(2)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホース1は、断熱ホース1を自身の軸線Gの方向に沿って切断した場合に、各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aの周面がそれぞれ被覆層9aによって覆われた独立構造になっている。
従って、前述した実施形態に係る断熱ホース1によれば、内側断熱層7aにおいて結露が発生した場合であっても、外側断熱層8aへの結露による水分の移動を抑え、断熱ホース1の内部を流れる冷水から発生する冷気を伝わり難くすることができるため、外面3が結露し難い断熱ホースを提供することができる。
【0060】
(3)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホース1は、被覆材9は連続した1つの被覆材であるため、2つの被覆材を用いた断熱ホースと比較すると、被覆材9を供給する装置が1つで済むし、被覆材9を捲回する工程も1つで済むので、断熱ホース1の製造コストを削減することができる。
ところで、複数の被覆材9を用いて各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aの各周囲を覆う構造の場合は、被覆材9が不連続になった境界部分が、捻れ、引っ張りおよび曲げに対して弱くなる。
しかし、前述した実施形態に係る断熱ホース1は、連続した1つの被覆材9により、各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aの各周囲が覆われており、被覆材9が不連続になった部分が存在せず、各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aが一体化されているため、捻れ、引っ張りおよび曲げに強い断熱ホース1を提供することができる。
(4)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホース1は、外側断熱層8aの外側は、被覆材9による被覆層9aが複数層積層された外層5によって覆われているため、断熱ホース1の外側の強度を高めることができるので、断熱ホース1が屈曲したときに外側が破損し難くすることができる。
また、被覆材9による被覆層9aを複数層積層することにより外層5を形成するため、被覆層9aの積層数をコントロールすることにより、断熱ホース1の外側を所望の厚さにすることができる。
また、合成樹脂により形成された被覆層9aが複数層積層された外層5は、柔軟性を有し、その外層5が断熱ホース1の外殻になるため、断熱ホース1に柔軟性を持たせることができ、可撓性を高めることもできる。
【0061】
(5)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホース1は、内側断熱層7aの内側が、被覆材9による被覆層9aが複数層積層された内層4によって覆われているため、断熱ホース1の内側の強度を高めることができるので、断熱ホース1が屈曲したときに内側が破損し難くすることができる。
また、被覆材9による被覆層9aを複数層積層することにより内層4を形成するため、被覆層9aの積層数をコントロールすることにより、断熱ホース1の内側を所望の厚さにすることができる。
また、合成樹脂により形成された被覆層9aが複数層積層された内層4は、柔軟性を有し、その内層4が断熱ホース1の内殻(芯)になるため、断熱ホース1に柔軟性を持たせることができ、可撓性を高めることもできる。
【0062】
(6)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホース1は、被覆材9の後端Eが、内側断熱層7aの境界7cと一致しないように、境界7cよりも後方にずれた位置に存在しているため、後端Eが剥がれ、その剥がれた部分の被覆層9a間の隙間から水分や冷気が浸入した場合であっても、その水分や冷気が境界7cを通じて内側断熱層7aまで到達し難いので、断熱ホースの耐久性が低下するという現象を発生し難くすることができる。
(7)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホース1は、被覆材9の前端Sが、外側断熱層8aの境界8cと一致しないように、境界8cよりも前方にずれた位置に存在しているため、前端Sが剥がれ、その剥がれ部分の被覆層9a間の隙間から水分や冷気が浸入した場合であっても、その水分や冷気が境界8cを通じて外側断熱層8aまで到達し難いので、断熱ホースの耐久性が低下するという現象を発生し難くすることができる。
【0063】
(8)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホース1は、内層4と、内側断熱層7aとの間には、合成樹脂により形成された線状の補強材6が介在されている。
従って、前述した実施形態に係る断熱ホース1によれば、断熱ホース1全体の強度を高めることができるため、外部荷重が掛かったときや屈曲したときでも、座屈し難く、かつ、潰れ難く、さらに、元の形状に復元し易い断熱ホースを提供することができる。
【0064】
(9)また、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、被覆層9aが積層された内層4と、被覆層9aによって覆われた内側断熱層7aと、被覆層9aによって覆われた外側断熱層8aと、被覆層9aが積層された外層5とを同時に形成し、それらが内側から順に積層された構造の断熱ホース1を1つの工程にて連続して製造することができるため、製造効率を高めることができる。
(10)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、連続した1つの被覆材9を用いるため、2つの被覆材を用いる製造方法と比較すると、被覆材9を供給する装置が1つで済むし、被覆材9を捲回する工程も1つで済むので、断熱ホース1の製造コストを削減することができ、かつ、製造効率を高めることができる。
【0065】
(11)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、第1の断熱材7および第2の断熱材8の各幅w1は同一であり、断熱ホース1の形成が進行する方向を前方とした場合に、第1の断熱材7を捲回する位置は第2の断熱材8を捲回する位置よりも後方に存在し、かつ、第1の断熱材7を捲回する位置と第2の断熱材8を捲回する位置とは、1.5w1離れている。
従って、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、予め決められた位置から第1の断熱材7および第2の断熱材8をそれぞれ軸部材20の周面に捲回することにより、第1の断熱材7の上に第2の断熱材8を自動的に捲回することができる。
また、第1の断熱材7によって形成された内側断熱層7a間の境界7bと、第2の断熱材8によって形成された外側断熱層8a間の境界8bとが重ならないようにすることができるため、内側断熱層7a間の境界7bから水分や冷気が浸入した場合であっても、外側断熱層8aへの水分の移動を抑え、冷気を伝わり難くすることができるので、外面3が結露し難い断熱ホースを提供することができる。
さらに、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、図7に示したように、断熱ホース1が屈曲したときに、屈曲方向の外側の部分において、断熱ホース1の軸線Gに沿って、内側断熱層7a間および外側断熱層8a間にそれぞれ空間10が生じた場合であっても、各空間10が、断熱ホース1の軸線Gと直交する方向では重ならないため、内側の空間10から外側の空間10への水分の移動を抑え、冷気を伝わり難くすることができる。
また、断熱ホース1が屈曲したときに、図8に示したように、屈曲方向の内側の部分において、内側断熱層7aと外側断熱層8aとの間に空間10が形成された場合であっても、断熱ホース1の軸線Gに沿って隣接する各断熱層間には空間10が形成されないため、仮に、内側断熱層7aと外側断熱層8aとの間に水分または冷気が浸入した場合でも、外側断熱層8aの外側への水分の移動を抑え、冷気を伝わり難くすることができる。
【0066】
(12)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、被覆材9同士が溶着可能となるように軟化した被覆材9を用いるため、被覆材9同士が溶着した部分が剥がれるおそれがなく、被覆材9によって覆われた内側断熱層7aおよび外側断熱層8aを密閉することができるため、内側断熱層7aと外側断熱層8aとの間を水分が移動するおそれがなく、冷気が伝わり難いので、外面3が結露し難くすることができる。
また、被覆材9同士を溶着するため、接着剤が不要となるので、製造コストを削減することもできる。さらに、被覆材9同士を溶着するため、接着剤によって被覆材9同士を接着する構造よりも、断熱ホース1の強度を高めることもできる。
【0067】
(13)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、被覆材9を軸部材20の周面に螺旋状に重なるように複数回捲回することにより、被覆材9による被覆層9aが複数層積層された内層4を形成し、その内層4の上に補強材6および第1の断熱材7を捲回するため、断熱ホース1の強度を高めることができるので、潰れ難く、かつ、折れ難くすることができ、さらに、引っ張りに対して強くすることができる。また、潰れ、曲げ、折れ、捻れが生じた場合の復元力を高めることもできる。
また、被覆材9による被覆層9aを複数層積層することにより内層4を形成するため、被覆層9aの積層数をコントロールすることにより、断熱ホース1の内側を所望の厚さにすることができる。
また、合成樹脂により形成された被覆層9aが複数層積層された内層4は、柔軟性を有し、その内層4が断熱ホース1の内殻(芯)になるため、断熱ホース1に柔軟性を持たせることができ、可撓性を高めることもできる。
【0068】
(14)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、被覆材9により覆われている第1の断熱材7の周面に第2の断熱材8を螺旋状に捲回するときに、被覆材9を第2の断熱材8の周面に螺旋状に重なるように複数回捲回することにより、被覆材9による被覆層9aが複数層積層された外層5を外側断熱層8aの外側に形成するため、断熱ホース1の外側の強度を高めることができるので、断熱ホース1が屈曲したときに外側が破損し難くすることができる。
また、被覆材9による被覆層9aを複数層積層することにより外層5を形成するため、被覆層9aの積層数をコントロールすることにより、断熱ホース1の外側を所望の厚さにすることができる。
また、合成樹脂により形成された被覆層9aが複数層積層された外層5は、柔軟性を有し、その外層5が断熱ホース1の外殻になるため、破れ難く、屈曲し易い。さらに、断熱ホース1に柔軟性を持たせることができ、可撓性を高めることもできる。
【0069】
(15)さらに、前述した実施形態に係る断熱ホースの製造方法によれば、内層4と溶着可能となるように軟化した補強材6を用いるため、内層4と補強材6とを溶着することができるので、内側断熱層7aに対する補強材6の配置位置をずれ難くすることができる。
また、接着剤を使用しなくても内層4と補強材6とを接着することができるため、製造コストを削減することもできる。
【0070】
(16)上述したように、前述した実施形態に係る断熱ホースおよびその製造方法によれば、外面3が結露し難い断熱ホースを提供することができる。
【0071】
〈他の実施形態〉
(1)前述した実施形態に係る断熱ホース1は、内側断熱層7aおよび外側断熱層8aを積層した2層構造であるが、断熱ホース1の用途などに応じて3層以上の構造にすることもできる。この構造の断熱ホースを製造する場合は、第2の断熱材の捲回位置から前方に1.5w1離れた位置にて、発泡樹脂により形成された帯状の第3の断熱材を第2の断熱材の上から捲回する。つまり、断熱材の捲回位置を相互に1.5w1離れた位置に設定することにより、3層以上の構造を有し、各層がそれぞれ被覆層9aによって覆われ、かつ、上下の層間が0.5w1ずれて積層された断熱ホースを製造することができる。
(2)内層4は5層構造以外でも良く、2層ないし4層構造でも良いし、6層以上の構造でも良い。また、被覆層9aの積層数を変更することにより、内層4の柔軟性、つまり、断熱ホース1の可撓性を調節することもできる。
(3)被覆層9aを3層以上積層することにより、外層5を形成することもできる。
【0072】
(4)被覆層9aは、軟質のポリ塩化ビニル(軟質PVC)以外の軟質合成樹脂により形成することもできる。また、補強材6は、硬質のポリ塩化ビニル(硬質PVC)以外の硬質材料により形成することもできるし、金属製材料により形成することもできる。また、内側断熱層7aおよび外側断熱層8aを形成する材料は発泡ポリエチレン(PE)以外の材料に変更することができる。例えば、硬質ウレタンフォームやフェノールフォームに変更することもできる。
(5)被覆材9の幅は、断熱層の積層数によって変更することができる。また、被覆材9の厚さは、断熱ホース1の可撓性および強度を考慮して変更することができる。また、断熱材の厚さおよび幅は、断熱ホース1の用途などに応じて変更することができる。
(6)各内側断熱層7aおよび各外側断熱層8aの軸線Gに沿ったずれ幅(変位幅)は、第1の断熱材7または第2の断熱材8の捲回位置を調節することにより、0.5w1以外に調節することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1・・断熱ホース、2・・内面、3・・外面、4・・内層、5・・外層、
6・・補強材、7・・第1の断熱材、7a・・内側断熱層、8・・第2の断熱材、
8a・・外側断熱層、9・・被覆材、9a・・被覆層、10・・空気層、
20・・軸部材、30・・被覆材供給装置、40・・補強材供給装置、
50・・第1の断熱材供給装置、60・・第2の断熱材供給装置、
70・・冷却装置、80・・製造装置、G・・軸線、k・・重なり代、
S・・前端、E・・後端、w1・・断熱材の幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10