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特開2022-171501コルヒチンとメトホルミンとを有効成分とする抗肥満治療剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171501
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】コルヒチンとメトホルミンとを有効成分とする抗肥満治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20221104BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61K31/165
A61K31/155
A61P3/04
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093556
(22)【出願日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0055801
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521242336
【氏名又は名称】エースバイオメッド インク
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ズホ
(72)【発明者】
【氏名】ハム,ソンア
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA02
4C206GA30
4C206HA31
4C206KA06
4C206KA17
4C206KA18
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA43
4C206MA51
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA70
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】肥満症の治療用又は治療効果増進用複合製剤に関し、より具体的にはコルヒチンとメトホルミンを主要有効成分で含んで製造された複合製剤を提供する。
【解決手段】本発明による組成物は、コルヒチンとメトホルミンとのシナジー効果によって、体内に蓄積されている脂肪を効率的に分解させて肥満を予防又は治療することができる優秀な薬学組成物でる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満症を治療するための薬学組成物に関するものであり、前記薬学組成物はコルヒチンとメトホルミンとを含むことを特徴とする肥満症治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記薬学組成物に含まれるコルヒチンの含量は、5μg/kg乃至300μg/kg、前記メトホルミンの含量は、50mg/kg乃至400mg/kgであることを特徴とする請求項1に記載の肥満症治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記薬学組成物に含まれるコルヒチンの含量は、50μg/kg乃至200μg/kg、前記メトホルミンの含量は、100mg/kg乃至200mg/kgであることを特徴とする請求項1に記載の肥満症治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記薬学組成物に含まれるコルヒチンとメトホルミンとの含量比は、コルヒチンの含量に対してメトホルミンの含量が1:1,000乃至1:20,000であることを特徴とする請求項1に記載の肥満症治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記薬学組成物に含まれるコルヒチンとメトホルミンとの含量比は、コルヒチンの含量に対してメトホルミンの含量が1:2,000乃至1:5,000であることを特徴とする請求項1に記載の肥満症治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記薬学組成物は、散剤、料粒剤、精製、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、外用剤、坐剤及び注射溶液でなされる群から選択される何れか一つの製剤に製造されることを特徴とする請求項1乃至5のうちで何れかに記載の肥満症治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記薬学組成物はラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、安息香酸プロピル、タルク及びマグネシウムステアレートでなされる群から選択される一つ以上の成分をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちで何れかに記載の肥満症治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記薬学組成物はチアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン、コバラミン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びN-アセチルシステインでなされる群から選択される一つ以上の成分をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちで何れか一つに記載の肥満症治療用薬学組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満症治療用又は治療効果増進用複合製剤に関するものであり、前記複合製剤はコルヒチンとメトホルミンとを主要有効成分で含んで形成される。より具体的には、従来、肝疾患などの治療剤として知られているコルヒチンとメトホルミンとを混合して肥満症患者に投与した時に、従来の単独投与される薬物よりも優秀な薬理効果を示す薬学組成物に関するものであり、前記薬物らの含量を具体的に限定して製造された抗肥満治療用薬学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥満(obesity)又は肥満症(adipositas)は、人体に脂肪が過度に蓄積される疾病である。肥満は、遺伝的、代謝的、環境的、そして行動学的な複雑な要因の相互作用によって発生する生物学的現象として、一般的に体重過多で認識されている。医学的には、体質量指数(BMI:body mass index)が30以上(すなわち、標準体重の30%以上)の場合又はBMIが27以上の場合に肥満で分類されるが、現代人らは西欧化されたメニューと少ない運動量とによって過体重及び肥満が増加している。
【0003】
世界保健機構(WHO:World Health Organization)は、BMIが30以上の場合を肥満症と称する。大抵、肥満人は体重が正常値より重いものとして認識されるが、身体の構成成分のうち、体脂肪の割合が高い場合にも肥満と称する。
【0004】
また、WHOによれば、全世界的に10億以上の大人が過体重であり、そのうち少なくとも300万人以上が臨床的に肥満であり、毎年25,000人以上が過体重に関連する疾患によって死亡すると報告されている。特に、肥満は、高血圧、第2型糖尿病、癌、胆嚢疾患、高脂血症、動脈硬化などのような各種成人病を起こす重要な要因として知られており、これは結果的に期待寿命の低下を招いている。
【0005】
肥満の原因を遺伝的原因だけであると見ることは難しく、エネルギー均衡を破壊する遺伝的、環境的複合要因が肥満の重要原因であるという認識が拡がっている。
【0006】
肥満は、それ自体でも乾癬、肌の乾燥のような外観上の問題と社会的障害とをもたらすことがあり、なによりも、過多な脂肪によって生ずる2次合併症は健康にとって問題である。
【0007】
また、肥満は、代謝症侯群の重要な因子として、代謝症侯群及び脳卒中、心筋梗塞及び心血管疾患の間に直接的な連関性があることがよく知られている。したがって、肥満は、多くの代謝障害を誘発して、最終的には心血管及び脳血管疾患の発生と密接に関連するといえる。すなわち、健康を阻害する多様な医学的な問題と早期死亡の増加とを誘発する肥満は、それ自体が一つの重要な慢性疾患であって、現代社会の健康上一番重要な脅威である。
【0008】
肥満の治療方法として、生活方式の修正を通じた非薬物療法を優先的に強制することが一番望ましい。しかし、このような治療にも拘わらず体重減量が成功的ではない場合には、薬物治療及び手術治療を考慮するようになる。糖尿病の薬物治療方法として、韓国では向精神薬に分類される食欲抑制剤の市場が大きく拡がっている。向精神薬食欲抑制剤或いは体重減少を目的とする成分未詳の収入薬剤の規模は把握さえままならない。一時、日本で中国産ダイエット食品の摂取による死亡が報告され、中国産ダイエット食品摂取の注意が告示されたことがあった。それと併せて、向精神薬の過用、依存性及び薬物誤・乱用による安全性問題が絶えず申し立てられていて、これら薬剤使用期限の遵守及び愼重な併用投与が必要な状況にある。
【0009】
このため、既存の肥満治療薬剤が有する限界点を乗り越えることができる、新しい効果的な肥満治療薬剤の開発に多くの関心が寄せられている。しかし、肥満の病態生理をなす神経生物学的な面は非常に複雑であり、このような複雑性はある一つの経路のみを標的にして劇的な体重減少を誘発する可能性が多くないという意味を内包する。すなわち、持続的に意味ある体重減量のためには、お互いに異なる機轉に作用する多様な薬剤の開発が必要である。
【0010】
肥満治療剤は、中枢神経系に作用して食欲に影響を与える薬剤、中枢神経系或いは末梢に作用する熱生成促進剤、及び、胃腸管に作用して吸収を低下させる薬剤に分類することができる。
【0011】
肥満治療に適用される大部分の食欲抑制剤は、主に、脳の食欲調節神経伝導物質であるノルエピネフリン、セロトニン、ドパミンなどの効用を増加させ、食欲抑制を誘発する向精神薬食欲抑制剤である。
【0012】
現在韓国で使用可能な肥満薬物には、短期間使用の承認を受けた薬剤として、フェンテルミン(phentermine)、ジエチルプロピオン(diethylpropion)、フェンジメトラジン(phendimetrazine)、マジンドール(mazindol)があって、長期間使用承認を受けた薬剤として、オルリスタット(orlistat)、ナルトレキソン/ブプロピオン徐放錠(naltrexone ER/bupropion ER、NB)、フェンテルミン/トピラメートカプセル(phentermine/topiramate CR、PHEN/TPMCR)、リラグルチド(liraglutide)がある。
【0013】
前記薬物のうち一部の薬物には、腫瘍発生の危険があり、また、患者の現在状態によって体重を増加させてしまう可能性もあるので、肥満を治療するための薬物を選択する場合には、それに先立って、患者の健康状態及び薬物服用状態などを綿密に分析する必要がある。
【0014】
前記のように従来の肥満治療剤らの大部分は、向精神製剤として患者の健康上に影響を与えることがあり、本発明者らはこのような問題点を解決する薬物を開発していく中で、人体に安定的な成分であると知られた肝疾患を治療するためのコルヒチンと高脂血症を治療するための薬物として知られたメトホルミンとを複合した薬物を開発することで、患者の健康状態に影響を与えずに肥満を治療することができる複合製剤を開発して、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】韓国公開特許公報10-2020-0104238
【特許文献2】韓国公開特許公報10-2009-0108230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記のような従来の肥満治療剤の問題点を解決するために開発されたものであり、本発明では、肥満を治療するための複合製剤として、肝疾患や通風関連関節炎などの治療剤として広く用いられているコルヒチンと高脂血症などの治療剤として用いられているメトホルミンとを併用して、服用時に患者に対する向精神などの問題が発生せずに、脂肪性などの誘発される肥満を解決することができた。
【0017】
また、本発明は、前記コルヒチンとメトホルミンを併用し、人体への服用時に、一番好適な効能を示す容量を提供するものである。
【0018】
本発明の用語「肥満」とは、エネルギー不均衡によって過多な体脂肪を有した状態(condition)又は疾患(disease)を意味する。本発明による薬学組成物を個体に投与することで、体重を減量して肥満を予防又は治療することができる。
【0019】
本発明の用語「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与で肥満の発病を抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。
【0020】
本発明の用語「治療」とは、本発明の薬学組成物を投与することで、肥満の症状が好転するか、又は、有利に変更させるすべての行為を意味する。
【0021】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前記課題に制限されず、前記課題と連関する多様な課題であることが、下記の本発明におけるいわゆる当業者であれば明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するために、本発明は、コルヒチンとメトホルミンを主要有効成分として含む肥満症を治療するための薬学組成物を提供する。
【0023】
また、本発明は、コルヒチンとメトホルミンを主要有効成分として含む肥満治療効果増進用薬学的組成物を提供する。前記治療効果増進用薬学組成物は、本発明の対象疾患である肥満症を予防及び治療するための治療補助剤と同一の概念である。
【0024】
本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常用いられる適切な担体、賦形剤又はシンナー(希釈剤)を追加的に含む肥満治療又は予防用薬学組成物の形態で製造することができるが、前記担体は非自然的担体(non-naturally occurring carrier)を含むことができる。具体的に、前記薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって、散剤、料粒剤、精製、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型製剤、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態で製剤化して用いることができる。
【0025】
本発明で、前記薬学組成物に含まめられる、担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デックストロズ、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油を挙げることができる。製剤化する場合には、普通に用いられる、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤によって調剤される。経口投与のための固形製剤には、精製、丸剤、散剤、料粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)又はラクトース(lactose)、ゼラチンなどを交ぜて調剤される。
【0026】
また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤を用いることもできる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられるが、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを用いることもできる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propyleneglycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどを用いることもできる。坐剤の機制としてはウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを用いることもできる。
【0027】
前記本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量を投与することができるが、本発明の用語「薬剤学的に有効な量」とは、医学的治療又は予防に適用可能な合理的な受益/危険の割合で疾患を治療又は予防するのに十分な量を意味し、有効容量水準は疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、本発明の組成物の投与時間、投与経路及び排出の割合治療期間、本発明の組成物と配合又は同時に使われる薬物を含んだ要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決めることができる。本発明の薬学組成物は、個別治療剤で投与する又は他の治療剤と併用して投与することができるし、従来の治療剤に対して順次又は同時に投与することができる。そして、単一又は多重で投与することができる。前記要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要である。
【0028】
本発明で提供される薬学組成物の投与量は、使用目的、疾患の中毒度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、又は、有効成分として用いられる物質の種類などを考慮して、通常の技術者が決めることができるが、本発明の薬学組成物は、人を含む哺乳動物の体重に対して、一日に20mg/kg乃至1,000mg/kg、より望ましくは、50mg/kg乃至400mg/kgを投与することができ、本発明の薬学組成物の投与頻度は、特別にこれに制限されないが、1日1回乃至3回投与するか、又は容量を分割して数回投与することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によって提供されるコルヒチンとメトホルミンを有効成分とする薬学組成物は、前記二つの成分のシナジー効果によって体内に蓄積された脂肪を効率的に分解させて肥満を予防又は治療することができる。
【0030】
本発明によって提供される複合製剤は、低容量で投与しても肥満の予防又は治療効果を効率的に増進させることができ、人類の健康増進、保健医療など関連産業の発展にも大きい一翼を担うであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】高脂肪食餌によって誘導された肥満鼠に本発明で提供する薬物を投与した後に生じる体重の変化を示す。
図2】高脂肪食餌によって誘導された肥満鼠に本発明で提供する薬物を投与した後に生じる鼠の飼料摂取量を示す。
図3】高脂肪食餌によって誘導された肥満鼠に本発明で提供する薬物を投与した後に生じる副睾丸脂肪の重さを示す。
図4】高脂肪食餌によって誘導された肥満鼠に本発明で提供する薬物を投与した後に生じる肥満関連遺伝子の発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によって提供されるコルヒチンとメトホルミンを有効成分で含んで形成される複合剤を肥満鼠に投与する場合、肥満鼠から肥満を改善する効果があることを確認し、これに基礎して本発明を完成することになった。
【0033】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0034】
本発明で用いられる主要有効成分のコルヒチン(colchicine)は、コルキクム(colchicum)属植物から抽出された物質として、通風に対して非ステロイド性抗炎症剤の治療効果が十分でない場合に、代替的薬物として主に使われる薬物であり、家族性地中解熱、心膜炎、ベーチェット病などの治療にも用いられる。
【0035】
本発明で用いられる他の有効成分のメトホルミン(metformin)は、ビグアナイド系(biguanide)薬物として血糖改善効果があって、主に糖尿病治療剤として用いられる薬物である。メトホルミンの作用機轉は、正確ではないが、ミトコンドリアによって生じる細胞呼吸を抑制して、AMPKを活性化させ、グルカゴンによって誘導されるcAMPの濃度上昇を阻み、結果的にPKAの活性を抑制して葡萄糖の生成を抑制することが知られている。
【0036】
本発明の発明者らは、コルヒチンとメトホルミンを併用形態で投与する場合に、肥満に対する治療効能が増進されることを多様な実験を通じて確認した。
【0037】
本発明の一実施例では、肥満が誘導された鼠にコルヒチン単独投与、メトホルミン単独投与、及び、コルヒチンとメトホルミンとを併用投与し、その場合の鼠の体重変化量を対比した結果、コルヒチンとメトホルミンとを併用投与した場合の鼠の体重減量効果が一番大きいことを確認した。
【0038】
また、本発明の一実施例では、肥満が誘導された鼠にコルヒチン単独投与、メトホルミン単独投与、及び、コルヒチンとメトホルミンとを併用投与し、その場合の肥満関連遺伝子であるSREBP-1c及びFAS(fatty acid synthase)の発現量を対比した結果、コルヒチンとメトホルミンとを併用投与した場合に前記遺伝子の発現量が一番大きく減少することを確認した。
【0039】
SREBPs(sterol regulatory element binding proteins)遺伝子は、脂質の恒常性及び代謝を調節する転写因子として、内因性コレステロール、脂肪酸(FA)、トリアシルグリセロール(TG)及びリン脂質合成に必要な酵素の発現を精密に調節する。
【0040】
SREBPsには1a、1c及び2という3種類があり、SREBP-1aとSREBP-1cとは主に脂肪酸及び中性脂肪の合成に関与し、SREBP-2はコレステロール代謝に関与するものとして知られている。肝組織では、SREBP-1cの発現が優勢であり、肝細胞での中性脂肪合成と関連されたFAS、ACC、stearoyl-CaP desaturase、ATP citrate lyase、malic enzymeのような遺伝子の発現を調節する。
【0041】
インスリン抵抗性による高インスリン血症は、肝臓のSREBP-1cの発現を増加させることで脂肪酸の生合成を増加させ、結果的に肝組織に中性脂肪の蓄積を誘発する。このようなインスリン抵抗性と肝臓での中性脂肪の蓄積とに対するSREBP-1cの役割は、動物実験を通じて証明された。高度肥満とインスリン抵抗性との特徴であるob/ob マウスで脂肪肝病変が観察され、肥満が誘導された鼠でSREBP-1遺伝子を非活性化させた場合に、肝組織に中性脂肪の蓄積がおおよそ50%程度減少することを報告した研究があり、それを通じて、SREBP-1cがインスリン抵抗性動物モデルで脂肪肝の発生に重要な役割を担うことが分かる。
【0042】
SREBPsはERストレス、炎症、自己捕食及び細胞死滅のような幾多の病因過程に関与して、肥満、異常脂質血症、糖尿病及び非アルコール性脂肪肝疾患などを誘発するものとして知られている。
【0043】
本発明によって提供される複合製剤を投与する場合には、前記コルヒチンは5μg/kg乃至300μg/kgが望ましく、より望ましくは50μg/kg乃至200μg/kgを添加し、前記メトホルミンは50μg/kg乃至400μg/kgが望ましく、より望ましくは100μg/kg乃至200μg/kgを添加する。
【0044】
前記コルヒチンの含量が5μg/kg未満の場合には、コルヒチンの効能がほとんど発揮されず、その含量が300μg/kgを超過する場合には、服用時に胃腸の不調という副作用が発生する可能性がある。
【0045】
前記メトホルミンの含量が50μg/kg未満の場合には、効能が発揮されず、その含量が400μg/kgを超過する場合には、腹痛、下痢、嘔吐などの副作用が発生する可能性がある。
【0046】
また、本発明によって提供される肥満症治療用薬学組成物では、有効成分である前記コルヒチンとメトホルミンとの含量比は、コルヒチンの含量に対してメトホルミンの含量は1:1,000乃至1:20,000を含むことができるし、より望ましくは1:2,000乃至1:5,000の含量比で含むとよい。
【0047】
本発明で用いられる相違用語である「複合製剤」というのは、本発明で提供する薬学組成物を意味する。
【0048】
本発明の組成物は、薬学的組成物の製造に通常用いられる、適切な担体、賦形剤及びシンナーをさらに含むことができる。また、通常の方法によって、散剤、料粒剤、精製、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型製剤、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態で製剤化して用いることができるし、望ましくは、経口投与に好適な単位投与型の製剤で製剤化させて用いることができる。
【0049】
前記組成物に含めることができる担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油などがある。前記組成物を製剤化する場合には通常用いられる、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤によって調剤される。
【0050】
経口投与のための固形製剤には、精製、丸剤、散剤、料粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は前記組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを交ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も用いることができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられるが、よく用いられる単純希釈剤である、水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。また、非水性溶剤、懸濁プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどが使われることができる。坐剤の機制としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴ-ル、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを用いることができる。
【0051】
また、本発明で提供する肥満症などを治療するための前記組成物には、抗酸化剤をさらに添加することができる。前記抗酸化剤としては、チアミン(thiamin、ビタミンB1)、リボフラビン(riboflavin、ビタミンB2)、ナイアシン(niacin、ビタミンB3)、パントテン酸(pantothenic acid、ビタミンB5)、ピリドキシン(pyridoxine、ビタミンB6)及びコバラミン(cobalamin、ビタミンB12)などのビタミンB群の化合物とビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びN-アセチルシステイン(NAC)などを用いることができる。
【0052】
本発明による薬学的組成物は薬学的に有効な量で投与する。本発明において「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/危険の割合で疾患を治療するために十分な量を意味し、有効水準は患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出の割合、治療期間、同時に用いられる薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決めることができる。本発明による薬学的組成物は、個別治療剤で投与しても、他の治療剤と併用して投与してもよく、従来の治療剤に対して順次又は同時に投与されることができ、単一又は多重で投与することができる。前記要素らを全て考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは通常の技術者であれば容易に決めることができる。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与することができる。投与の全ての方式は、例えば、経口、直腸又は静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜又は脳血管内の注射によって投与することができる。本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重及び疾患の重症度などの多くの関連因子とともに、活性成分である薬物の種類によって決まる。
【0054】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるだけのものであって、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例0055】
(実験動物準備及び実験方法)
6週齢のC57BL/6J種の雄鼠に、低脂肪(Low Fat diet、LFD:10kcal%脂肪含有)又は高脂肪(High Fat diet、HFD:60kcal%脂肪含有)飼料を12週間自律摂取させた。高脂肪飼料摂取で肥満が誘導された鼠は、以後12週間、高脂肪飼料を追加摂取させて、これと共にコルヒチン(Colchicine:50、100、200μg/kg)又はメトホルミン(Metformin:200mg/kg)の単独投与又はコルヒチンとメトホルミンとを併用投与をした。対照薬物であるゼニカル(オルリスタット:Orlistat成分)は60mg/kgで単独投与させた。すべての薬物は一日に一度口腔投与された。
【0056】
前記コルヒチン、メトホルミン単独投与及びコルヒチンとメトホルミンとの併用投与による肥満が誘導された鼠の体重の変化を測定した。この測定結果を図1に示す。
【0057】
図1に示すように、高脂肪食餌によって誘導された体重増加は、コルヒチン単独投与の場合には変化がなく、メトホルミン単独投与の場合には体重が少し減少されたことが確認できた。これらに比べて、コルヒチンとメトホルミンとの併用投与の場合には肥満が誘導された鼠の体重減少が前記二つの成分の単独投与をした場合に比して非常に高いということが確認された。特に、メトホルミンの含量に対してコルヒチンの含量が少ない場合に、比較的体重減少の効果が優れていた。
【0058】
このような効果は、対照薬物であるゼニカルと比べて、より有意なものとして示されている。
【0059】
前記実験動物は、肥満が誘導された鼠に前記薬物を投与した後の飼料の摂取量を比べたが、図2に示すように、各薬物別に飼料の摂取量にはあまり大きい差が示されなかった。
【0060】
つぎに、前記の肥満が誘導された鼠に前記薬物を投与した後、副睾丸脂肪の重さを測定した。この測定結果を図3に示す。
【0061】
図3に示すように、高脂肪食餌によって増加された肥満が誘導された鼠の副睾丸脂肪の重さは、コルヒチン単独投与の場合には変化がなく、メトホルミン単独投与の場合にはやや減少されたことが確認できた。これらと比べて、コルヒチンとメトホルミンとの併用投与の場合には副睾丸脂肪の重さがより減少されることが確認された。特に、メトホルミンの含量に対してコルヒチンの含量が少ない場合に、比較的前記重さ減少の効果が優れていたし、対照薬物であるゼニカルよりも、より減少効果が優れていたことが確認された。
【0062】
一方、肥満が誘導された鼠に前記薬物を投与した後、肥満関連遺伝子であるSREBP-1c及びFASの発現を測定した。その測定結果を図4a及び4bに示す。
【0063】
図4に示すように、高脂肪食餌によって肥満が誘導された鼠の副睾丸脂肪で、肥満関連遺伝子であるSREBP-1c及びFAS発現はコルヒチンの単独投与の場合には変化がなく、メトホルミンの単独投与の場合にはやや減少されることが確認できた。これらと比べて、コルヒチンとメトホルミンとの併用投与の場合には前記肥満が誘導された鼠の副睾丸脂肪でのSREBP-1c及びFAS発現がより減少されることが確認された。特に、メトホルミンの含量に対してコルヒチンの含量が少ない場合に、比較的前記遺伝子の発現がより減少し、対照薬物であるゼニカルよりも、非常に減少効果が優れていたことが確認された。
【0064】
最後に、肥満が誘導された鼠に前記薬物を投与した後の血中AST(aspartate aminotransferase)とALT(alanine transaminase)との数値の変化を測定した。この測定結果を表1に示す。
【0065】
表1に示すように、高脂肪食餌によって増加された血中AST、ALT数値は、コルヒチンの単独投与の場合には変化がなく、メトホルミンの単独投与の場合にはやや減少されることが確認された。これらと比べて、コルヒチンとメトホルミンとの併用投与の場合には血中AST、ALT数値がより減少することが確認された。このような効果は、メトホルミンの含量に対してコルヒチンの含量が少ない場合に、前記数値がより減少し、対照薬物であるゼニカルよりも、非常に減少効果が優れていたことが確認された。
【0066】
【表1】

前記の結果から分かるように、コルヒチンの単独投与の場合には肥満が誘導された鼠の脂肪を減少させる効果がほとんどなく、メトホルミン単独投与の場合には僅かな減少効果が見られたが、コルヒチンとメトホルミンとの併用投与の場合には前記の効果が有意的に示されている。これは、前記二つの薬物が明白なシナジー効果を示して、効率的に肥満を予防或いは治療することができるということを意味しており、本発明で提供するコルヒチンとメトホルミンとを混合した薬学組成物は、肥満を治療又は予防するために優れた薬学組成物として用いることができる。
【0067】
本発明で提供する薬学組成物の投与量は、使用目的、疾患の中毒度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、又は、有効成分として用いられる物質の種類などを考慮して、通常の技術者が決めることができるが、本発明の薬学組成物は人を含む哺乳動物の体重に対して一日に20mg/kg乃至1,000mg/kg、より望ましくは50mg/kg乃至400mg/kgを投与するとよく、本発明の薬学組成物の投与頻度は、特にこれに制限されるものではないが、1日1回乃至3回投与するか、又は容量を分割して数回投与することができる。
【0068】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明における当業者は、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更しなくても、他の具体的な形態で容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。そして、以上の実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的ではないものとして理解しなければならない。
【産業上利用可能性】
【0069】
本発明は、産業上利用可能である。

図1
図2
図3
図4