(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171505
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ウェハキャリア、及びこれを用いる工程管理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20221104BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01L21/68 U
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021099047
(22)【出願日】2021-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】521257673
【氏名又は名称】株式会社TAK薄膜デバイス研究所
(74)【代理人】
【識別番号】597125863
【氏名又は名称】株式会社ケミトロニクス
(71)【出願人】
【識別番号】597125863
【氏名又は名称】株式会社ケミトロニクス
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆満
(72)【発明者】
【氏名】本間 康之
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA36
5F131DA05
5F131DA22
5F131DA42
5F131DD34
5F131DD73
5F131DD76
5F131EB01
5F131EB15
5F131EB31
5F131EB75
5F131EB78
5F131KA12
5F131KA22
5F131KA23
5F131KA24
5F131KA27
5F131KA48
(57)【要約】
【課題】ウェハ(ウェハキャリアに装着)が受けた加工処理実績条件データを、ウェハキャリア自身が収集、記憶・蓄積し、必要に応じて外部の管理装置に上記のデータを送信することが可能なウェハキャリアを提供する。
【解決手段】
ウェハキャリアは、静電チャック部と、この裏面に接合する収納室とを備えており、収納室内には静電チャックを駆動させるための駆動部を設け、さらに、静電チャック部、及び/又は、収納室内に物理センサを設け、また、収納室内に、通信・情報蓄積部を設ける。加工すべきウェハを上記のウェハキャリアに装着した後、上記のウェハは各種の加工処理が施される。このとき、物理センサは加工処理時の処理実績条件データを収集するので、これをログデータとして情報蓄積部に記憶・蓄積する。また、必要に応じて、通信/情報蓄積部から外部の管理装置に上記のログデータを送信することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを固定・保持するウェハキャリアであって、前記ウェハキャリアは前記ウェハを固定するためのチャック部と、前記チャック部を機能させるための駆動ユニットを収納する収納室とを備えており、
前記チャック部のチャック方式は、静電チャック方式、真空チャック方式、メカニカルチャック方式の何れか一種類であり、
また、前記収納室は、前記チャック部の裏面に接合しており、
前記駆動ユニットと前記チャック部とは、電気的、機械的、又は電気・機械的に接続されている
ことを特徴とするウェハキャリア。
【請求項2】
前記チャック部が静電チャック方式の静電チャック部であり、
また、前記駆動ユニットは電源と駆動回路を含む電子回路とを備えており、
さらに前記電源は、電池、又は充電式の蓄電デバイスを用いる電源であって、
前記ウェハキャリアの外側からの有線よる給電によって蓄電デバイスを充電、
又は、前記ウェハキャリアの外側からの無線による送電電力を受電・変換して充電用電源とし、これにより蓄電デバイスを充電する2方式のうちの何れか1方式の充電手段を備える電源であり、
前記の電源を用いて前記の駆動回路により前記の静電チャック部の駆動に必要な駆動電圧を得て、前記駆動電圧を前記の静電チャック部に給電する
ことを特徴とする請求項1に記載のウェハキャリア。
【請求項3】
前記の静電チャック部は絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に形成する金属電極と、誘電体膜とを備えており、前記の金属電極に前記の駆動ユニットから駆動電圧を給電することを特徴とする請求項2に記載のウェハキャリア。
【請求項4】
前記の絶縁性基板の材質がシリコンであり、前記シリコンの表面抵抗率が好ましくは500Ω/□以上であり、
また、前記シリコン基板上及び前記金属電極上に形成する前記誘電体膜として、シリコン酸化膜、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜、金属酸化膜、金属酸窒化膜、又はペロブスカイト構造をなす酸化物膜の何れか一つを用いる
ことを特徴とする請求項3に記載のウェハキャリア。
【請求項5】
前記の誘電体膜を、前記の金属電極の表面部分を酸化又は窒化させて得られる酸化膜又は窒化膜で形成する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のウェハキャリア。
【請求項6】
前記の誘電体膜の厚みが0.05~30μmであり、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1~10μmであることを特徴とする請求項3~5の何れか一項に記載のウェハキャリア。
【請求項7】
前記静電チャック部の平面内にある前記金属電極は、前記静電チャック部の側壁部分にまで沿わせた延長電極、又は前記静電チャック部を貫通する貫通電極を備えており、
前記の延長電極又は前記の貫通電極を介して、前記駆動ユニットからの前記駆動電圧を前記金属電極に給電する
ことを特徴とする請求項3~6の何れか一項に記載のウェーハキャリア。
【請求項8】
前記の誘電体膜の一部分に、前記誘電体膜を上下から挟むように上下金属電極を設け、
前記の上下金属電極は、前記静電チャック部の側壁部分にまで沿わせた延長電極、又は前記静電チャック部の絶縁性基板を貫通する貫通電極を備えることで物理センサを形成する
ことを特徴とする請求項3又は4、又は請求項6又7の何れか一項に記載のウェハキャリア。
【請求項9】
前記の誘電体膜が圧電体膜であって、前記の物理センサとして圧電センサを形成することを特徴とする請求項8に記載のウェハキャリア。
【請求項10】
前記ウェハキャリアに固定・保持されているウェハ内にある面内パターン形状に対して、前記静電チャック部の前記金属電極の表面側平面パターン形状に相関性をもたせ、製造過程にある前記ウェハ内にある個別デバイスの「電界破損」を防止する
ことを特徴とする請求項3~9の何れか一項に記載のウェハキャリア。
【請求項11】
前記の静電チャック部、及び/又は、収納室内に物理センサを備える
ことを特徴とする請求項2~10の何れか一項に記載のウェハキャリア。
【請求項12】
前記の物理センサは、温度センサ、湿度センサ、ガス圧センサ、応力センサ、歪センサ、振動センサ、加速度センサの何れか1以上の種類と個数であり、
また、前記の収納室内に双方向通信機能を有する通信/情報蓄積部を設け、
所定のサンプリングレートにより前記の物理センサからの検知データを日付・時刻とともにログデータとして前記の通信/情報蓄積部に記憶・蓄積し、
同時に、前記の収納室内にある駆動ユニットの電源電圧及び駆動回路の出力電圧(即ち、前記静電チャック部を駆動するための駆動電圧)を前記のサンプリングレートで収集してログデータとし、これを前記物理センサの検知データに由来するログデータとともに前記の通信/情報蓄積部に記憶・蓄積し、
前記ウェハキャリア外にあって双方向通信機能を有する管理装置に、自発的に又は前記の管理装置からの指令に基づき、前記の通信/情報蓄積部が記憶・蓄積している前記のログデータを前記の管理装置に有線又は無線により送信する機能を有する
ことを特徴とする請求項11に記載のウェハキャリア。
【請求項13】
電子デバイスの製造工程における「前工程」の工程管理システムであって、
前記ウェハキャリアに固定・保持されているウェハを製造装置で加工処理を施し、このときの加工実績条件をログデータとして記憶・蓄積する請求項12に記載のウェハキャリアを用いる
ことを特徴とする工程管理システム。
【請求項14】
前記の前工程における前記の製造装置は、
加工処理を施す前記ウェハの搬入(チェックイン)、搬出(チェックアウト)、及び前記加工処理中の細目工程(ステップ)の開始/終了ごとに、前記ウェハキャリアに対して有線又は無線により「合図信号」を送信する機能を有し、
前記加工実績条件のログデータとともに、
前記ウェハキャリアが受信した合図信号の情報を前記ログデータに加えて記憶・蓄積している前記ウェハキャリアを用いる
ことを特徴とする請求項13に記載の工程管理システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェハキャリアと、これを用いる工程管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSデバイスなどは、製造工程の出発段階では、板状形状の“ウェハ”と呼ばれる材料形状で取り扱われる。そして、ウェハを取り扱う「前工程(又は、ウェハプロセス)」と呼ばれる工程の最終段階では、多くの場合にウェハの厚みを薄くする「研削・研磨」工程が存在する。
【0003】
上記の研削・研磨工程における仕上がり厚みは、近年、ますます薄くなる傾向にある。一例を示せば、常用されている8インチ(直径)のシリコンウェハの未加工状態の厚みが約725μmであるのに対し、研削・研磨工程終了時には30数μmになることもある。
【0004】
以上のように研削・研磨工程後の厚みが極端に薄くなると、ウェハには非常に大きな「反り」が発生し、その後の製造工程に移行できなくなる。このため、「サポート基板」と称する剛性のある「ガラス基板」や「シリコン基板」などにウェハを貼り付けてから研削・研磨を行い、見かけ上の反りを抑制し、後続のウェハプロセスを実行することが多い。
【0005】
上記の方式では、接着用ワックスや粘着テープなどを用いてウェハをサポート基板に貼り付けている。ウェハプロセスを管理する面からは、接着層を均一、かつ、一定値に制御することが必要であり、工程管理項目の増加を招いていた。また、ウェハプロセスの種類によっては接着層が汚染の発生源になるので、限られた工程にしか用いられていない。
【0006】
一方、前工程におけるプロセス装置では、ウェハの固定・保持に「静電チャック」が多用されている。しかし、これは処理装置内部に設置されているので、当然ながら、各処理工程を通じて連続してウェハを固定・保持するという用途には用いられていない。
【0007】
しかし、近年、サポート基板自体が上記の「静電チャック」として機能する、コードレスのサポート基板が出現している。これによれば、上記の問題点は解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“Thin Wafer Supporter”、[online]、[令和3年1月18日検索]、インターネット <URL:https://www.tsukubaseiko.co.jp/wafersupporter.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、冒頭から述べてきた「サポート基板」は、主としてウェハの「裏打ち支持板」として機能している。本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来のサポート基板の機能に加え、更なる新規な機能を有するサポート基板(以下では、「ウェハキャリア」と呼ぶ。)を提供することにある。
【0011】
上記の「更なる新規な機能」とは、ウェハキャリアに固定・保持されるウェハの個体識別に係る属性と、各種の加工処理工程でウェハが受けた加工履歴を、ログ形式でウェハキャリア自体が記憶・蓄積することができることであり、更に、ウェハキャリアには外部との通信手段が装備されており、適宜のタイミングで上記の蓄積情報を外部にある管理装置(ホストコンピュータ等)に送信することが可能であることを特徴とする機能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のウェハキャリアは、ウェハを固定・保持するためのチャック部と、チャック部を機能させるための駆動ユニットを収納する収納室とを備えている。チャック部のチャック方式は、静電チャック方式、真空チャック方式、メカニカルチャック方式の何れか一種類である。また、収納室はチャック部の裏面に接合しており、更にチャック部は収納室内にある駆動ユニットと電気的または機械的、あるいは電気的・機械的に接続されている。このような構成とすることにより、本発明のウェハキャリア単体だけでウェハを固定・保持できる。
【0013】
上記のチャック部が静電チャック方式を採る場合には、上記の駆動ユニットは電源と、駆動回路を含む電子回路とを備えている。さらに、上記の電源は電池、又は充電式の蓄電デバイスを用いる電源であって、上記のウェハキャリアの外側からの有線による給電によって蓄電デバイスを充電するか、又は無線による送電電力を充電用電源に変換して蓄電デバイスを充電する2方式のうちの何れか1方式の充電手段を備える電源である。
上記のいずれかの電源を用いて、上記の駆動回路(例えば、昇圧回路)により上記の静電チャック部の駆動に必要な電圧を得て、この電圧を静電チャック部に給電している。
【0014】
上記の静電チャック部は絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に形成する金属電極と、誘電体膜とを備えており、この金属電極に上記の駆動ユニットから駆動電圧を給電し、静電チャック部を機能させる。
【0015】
上記の絶縁性基板の材質をシリコンとすることが可能であり、このときのシリコンの表面抵抗率は好ましくは500Ω/□以上である。また、このシリコン基板上に形成する誘電体膜として、シリコン酸化膜、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜、金属酸化膜、金属酸窒化膜、又はペロブスカイト構造をなす酸化物膜の何れか一つを用いることができる。
【0016】
また、上記の誘電体膜を、金属電極自身の表面部分を酸化又は窒化させて得られる酸化膜又は窒化膜で形成することも可能である。
【0017】
以上で述べてきた誘電体膜の厚みは0.05~30μmであり、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1~10μmである。
【0018】
また、静電チャック部の構成要素である金属電極は、静電チャック部の側壁部分にまで沿わせた延長電極、又は静電チャック部を貫通する貫通電極を備えており、この延長電極又は貫通電極を介して上記の駆動ユニットからの駆動電圧を金属電極に給電し、静電チャック部を機能させる。
【0019】
また、上記の誘電体膜に圧電体を用い、その一部分の誘電体膜を上下から挟むようにして上下金属電極を設け、さらに、この上下金属電極に、静電チャック部の側壁部分にまで沿わせた延長電極、又は静電チャック部の基板を貫通する貫通電極を設けることにより、ウェハキャリア自体に圧電センサを形成することができる。
【0020】
また、静電チャック部の金属電極の表面側平面パターン形状を、ウェハ面にあるパターン形状(例えば、電極配線パターンなど)と相関性をもたせて構成することにより、製造過程にあるウェハ内にある個別デバイスの「電界破損」を防止することが可能となる。
【0021】
以上で述べた静電チャック部、及び/又は、収納室内に物理センサを備えることも可能である。ここで言う物理センサは、温度センサ、湿度センサ、ガス圧センサ、応力センサ、歪センサ、振動センサ、加速度センサの何れか一以上の種類であり、又その個数は一個以上である。
【0022】
さらに、上記の収納室内に双方向通信機能を有する通信/情報蓄積部を設けておき、所定のサンプリングレートにより上記の物理センサからの検知データをカレンダ時刻とともにログ形式を採るログデータとして上記の通信/情報蓄積部に記憶・蓄積することができる。
なお、上記の「カレンダ時刻」とは、上記の通信/情報蓄積部に備わっているカレンダ/時計機能を用いた「年/月/日/時/分/秒」データのことである。
【0023】
このとき同時に、上記の収納室内にある駆動ユニットの電源電圧及び駆動回路の出力である駆動電圧を上記のサンプリングレートで収集し、これを上記の物理センサの検知データに由来するログデータとともに上記の通信/情報蓄積部に記憶・蓄積する。さらに、ウェハキャリアの外にあって双方向通信機能を有する管理装置に、自発的に又は上記の管理装置からの指令に基づき、上記の通信/情報蓄積部が記憶・蓄積している上記のログデータを、上記の管理装置に有線又は無線により送信する機能をウェハキャリア自体に装備させることが可能である。
【0024】
さらに、電子デバイスの製造工程における「前工程」の工程管理システムに本発明のウェハキャリアを応用することができる。
これは、ウェハキャリアに固定・保持されているウェハを上記の製造装置で加工処理する場合に、このときの加工処理実績条件を物理センサが収集することができるので、これをログデータとして記憶・蓄積しておき、工程管理の一環として実行される個別ウェハの加工処理実績条件データの収集・記録に利用する工程管理システムである。
【0025】
更には、上記の前工程における製造装置に、加工を施すウェハの搬入(チェックイン)、搬出(チェックアウト)、及び上記の加工処理中の細目工程(ステップ)の開始/終了ごとに「合図信号」をウェハキャリアに対して有線又は無線により送信する機能が装備されている場合には、上記の加工処理実績条件のログデータとともに、ウェハキャリアが当該製造装置から発信された合図信号の受信情報を上記のログデータに加えて記憶・蓄積することができる。
これにより、上記のウェハキャリアは加工処理の細目工程に対応する詳細なデータを収集・記録できるので、工程管理の自動化、省力化に寄与できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のウェハキャリアを用いれば、加工プロセスの当初からでも厚さの薄いウェハをハンドリングすることができる。また、本発明のウェハキャリアは、それ自体で独立してチャック機構が動作し続けるので、プロセス装置の外側に置かれていても、また、移送中であっても、ウェハを固定・保持することができる。
【0027】
さらに、薄膜を用いて静電チャック部を構成するウェハキャリアでは、全体を小型化(薄型化)できる。これにより、ウェハキャリアを用いていても、搬送ロボットによる受け渡しに支障はなく、また、ウェハキャリアの保管・移送用容器の容積増加も軽微にできる。
【0028】
また、加工処理工程段階にあるウェハの個体識別に係る属性と、各ウェハが受けた個別の加工履歴をログ形式でウェハキャリア自体が記録・蓄積しているので、ウェハキャリアに内装されている通信手段によって上記の蓄積情報を外部の管理装置(例えば、ホストコンピュータ等)に適宜のタイミングで送信することができる。
【0029】
さらに、本発明のウェハキャリアを半導体デバイスやMEMSデバイスなどの製造工程に用いることにより、その工程管理・品質管理に用いることができる。また、上記の管理を担っているホストコンピュータ等に対する情報入力を大幅に省力化できる。
【0030】
更には、複数個のウェハを一括して加工処理する、いわゆる「バッチ処理」工程においては、各ウェハの加工条件は一律に設定される。このため、従来の加工条件のモニター方式では個別のウェハの加工処理実績条件までは把握できないが、本発明のウェハキャリアを用いることにより、個別のウェハの加工処理実績条件のモニターが可能となる。これにより、従来の一括モニター方式では不可能であった「バッチ内の個別の不良品の摘出」、即ち、「加工条件の許容変動幅を逸脱した個別ウェハや個別ロットの摘出」が可能となる。
【0031】
工程終了時には、「加工処理に係るウェハの良否判定」が直ちに自動的に実行されるので、不良ウェハは製造ラインから迅速に除外される。このことは製造コストの削減にもつながり、同時に、得られたデータから不良解析も容易となる。
【0032】
上述のように、本発明のウェハキャリアを半導体デバイスやMEMSデバイスなどの製造工程における工程管理・品質管理に用いることにより、工程管理・品質管理の省力化が図れる。同時に、本発明のウェハキャリアを活用することで製造歩留まりも向上するので、本発明のウェハキャリアは、原価低減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図6A】 本発明の実施の形態-6(貫通電極式センサ)に係る構成図
【
図6B】 本発明の実施の形態-6(延長電極式センサ)に係る構成図
【
図7】 本発明の実施の形態-7に係る工程管理システムの説明図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。なお、「発明を実施するための形態」を「発明の実施の形態」、又は単に「実施形態」等と略記する場合がある。また、用いる図面には、「模式断面図」が含まれているが、このときの図面描画においては、概して横方向よりも縦方向を拡大して描いている。更に、図面を見やすくするため、模式断面図における断面の明示のための「ハッチング」、又はこれに類する「パターン付け」を省略している部分があることに留意いただきたい。
【0035】
〔実施形態-1〕
図1は本発明の実施の形態の一例を示す構成図である。
図1(a)は、本発明のウェハキャリア100の模式平面図、
図1(b)は同上の模式断面図である。チャック部120の上にウェハ110が固定・保持されている。また、チャック部の裏側に収納室130が接合されており、この中に、駆動部145と制御部150とを備える駆動ユニット140が収納されている。
【0036】
(メカニカルチャック方式)
上記のチャック部は、メカニカルチャック方式、真空チャック方式、静電チャック方式のいずれかの方式を採っている。メカニカルチャック方式では、スプリング力を利用したクランプ(図示せず)がウェハの外周部をチャック部120の表面に固定・保持している。
一方、クランプを解除するには、制御部150からの解除信号で電磁アクチュエーター(図示せず)をONにし、電磁アクチュエーターがクランプを押し上げることでウェハをチャック部から解放する。
【0037】
電磁アクチュエーターの駆動電圧141は、駆動ユニット140内の蓄電デバイス(図示せず)から与えられる。一方、駆動ユニットにおける蓄電デバイスは、充電用端子144に充電器(図示せず)を接続して、適宜、充電することができる。また、制御端子151にリモートコントローラ(図示せず)を接続し、制御部150を介して制御信号により電磁アクチュエーターの駆動電圧をON/OFF操作できる。なお、電磁アクチュエーターを用いない場合は、手動によりウェハをクランプする機構を用いても良い。
【0038】
(真空チャック方式)
チャック部120を真空チャック方式とする場合には、駆動ユニット140内に、蓄電デバイスを電源とする超小型真空ポンプ(図示せず)を設ける。この真空ポンプには、排気圧を確認するための真空ゲージ(図示せず)が付属している。また、チャック部には、一般的に用いられている「真空チャックヘッド」(図示しないが、細孔、同心円状溝、又は螺旋形溝、等の真空排気口備えている)を設け、真空排気管142を介して真空排気し、ウェハ110をチャック部120の表面に吸着固定・保持する。
【0039】
一方、駆動ユニットにおける蓄電デバイスは、充電用端子144に充電器(図示せず)を接続して、適宜、充電することができる。また、制御端子151にリモートコントローラ(図示せず)を接続し、制御部150を介して制御信号により真空排気の開始/停止ができる。更に、排気圧力もモニターできる。
【0040】
(静電チャック方式)
チャック部120を静電チャック方式とする場合には、蓄電デバイスと駆動回路(いずれも図示せず)とで駆動部145を構成する。駆動回路で得られる静電チャック用駆動電圧143を静電チャックの電極(図示せず)に給電する。静電チャックの電極は、例えば、「一対の櫛歯状電極」であり、この他、広く用いられている構造でよい。
【0041】
一方、充電用端子144に充電器(図示せず)を接続して、上記の蓄電デバイスを、適宜、充電することができる。また、制御端子151にリモートコントローラ(図示せず)を接続し、制御部150を通して静電チャック用の駆動電圧143のON/OFFを操作できる。また、制御部150を介して、上記の駆動電圧をモニターしながら電圧値を調整することができる。
【0042】
さらに、リモートコントローラの操作により、駆動ユニット140からの駆動電圧の極性を短時間、反転させて、静電チャックの蓄積電荷を中和することにより、ウェハキャリアからウェハをリリースさせることが容易になる。
なお、上記の駆動電圧については、直流電圧の他に、適宜のデューティーレシオをもつ矩形波とすることもできる。上記の矩形波駆動によれば、直流駆動に比べて蓄電デバイスの蓄電量の消耗を抑制できる。
【0043】
上述の3方式(メカニカルチャック方式、真空チャック方式、静電チャック方式)のウェハキャリアで用いている蓄電デバイスについては、蓄電池の他に、「大容量キャパシタ」を使用することも可能である。また、電磁誘導コイルをウェハキャリアの内部及び外部に設けて、この電磁誘導コイルを介して「ワイヤレス」で外部から電力給電を受け、これを整流した上で蓄電池や大容量キャパシタの充電をすることもできる。
【0044】
以上の本発明のウェハキャリアは、それ自体で独立してチャック機構が動作し続けるので、プロセス装置の外側に置かれていても、また、移送中であっても、ウェハをウェハキャリアに固定・保持することができる。また、加工プロセスの当初からでも厚さの薄いウェハをハンドリングすることができる。
【0045】
〔実施形態-2〕
図2は本発明の別の実施形態を示す構成図である。
図2(a)は、本発明のウェハキャリア200の模式断面図である。ここでは、チャック部220は静電チャック部であり、絶縁性基板221上に金属電極225を設けてあり、更にその上に誘電体膜222が積層されている。上記の金属電極については、広く知られている構造・形状でよく、例えば、後述の
図3(a)に示す一対の櫛歯状電極などである。
【0046】
上記の誘電体膜222については、シリコン酸化膜、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜、金属酸化膜、金属酸窒化膜、又はペロブスカイト構造をなす酸化物膜などを用いることができる。
【0047】
また、誘電体膜222としては、AlN、Al2O3、TiO2、ZnO等の材料を用いることができる。更に、GaN、Ga2O3、あるいは添加物元素を含有するGaN、Ga2O3、更には、Pb(Zr,Ti)O3(一般的にPZTと表される)、(K,Na)NbO3(一般的にKNNと表される)やBaTiO3などの強誘電体材料も使用可能である。このうちPZTについては、Nbなどを含み配向した薄膜であることが好ましい。
【0048】
上記の誘電体膜の厚みは0.05~30μmであり、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1~10μmである。また、上記の誘電体膜を上記の金属電極の表面部分を酸化、又は窒化させて得られる酸化膜、又は窒化膜で形成してもよい。
【0049】
上記の誘電体膜の厚みが0.05μm未満であると、膜の均一性、ピンホール、凹凸などの影響で静電チャック部にリーク電流が生じる確率が著しく高くなる。また、30μmを超えると誘電体の厚みによる応力で静電チャック部の基板自体に反りが発生しやすく、誘電体膜222と基板221との間の応力により誘電体膜が剥離しやすくなる。このため、誘電体膜の膜厚としては、1~10μmが好適である。
【0050】
なお、上述した誘電体膜の材質は主にセラミックスであるが、これに限定されるものではなく、ポリイミド樹脂など、静電チャックの誘電体として広く用いられている材質を用いることができる。更に、上記の誘電体膜として、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの薄膜形成法により成膜した薄膜誘電体膜を用いると、静電チャック部の小型化(薄型化)が可能となる。
【0051】
さらに、静電チャック部の一部をなす絶縁性基板の材質についても、広く用いられているセラミックスや、ポリイミド樹脂をはじめとする合成樹脂を用いることができる。また、ガラス(石英ガラス、硼珪酸ガラス、など)基板や、表面をセラミックスや合成樹脂で被覆した金属基板も使用可能である。
【0052】
更にまた、静電チャック部の一部をなす金属電極の材質についても、静電チャックで用いられている周知の材質でよく、また、場合によってはITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)も用いることができる。
【0053】
静電チャック部220の下側には、収納室230が接合されている。収納室には、電源部243と駆動回路242、及び制御部250を備える駆動ユニット240が収納されている。電源部は蓄電池又は大容量キャパシタなどの蓄電デバイスであり、制御部と駆動回路の電源になっている。駆動回路242で得られる静電チャック用の駆動電圧241は、金属電極225に給電される。
【0054】
電源部を充電するには(a)図に示すように充電ステージ246の上にウェハキャリア200を載せ、電源部243から延びる充電入力端子244を介して外部の充電器245を用いて充電する。
【0055】
また、制御部250から延びる制御用入力端子251を介して外付けリモートコントローラ252を接続し、制御部250を通して静電チャック部(金属電極225)への駆動電圧241をモニターしながら駆動電圧値を調整する。また、上記のリモートコントローラにより駆動電圧のON/OFFを操作する。
【0056】
さらに、ウェハをウェハキャリアからリリースする場合には、リモートコントローラの操作により駆動電圧241の極性を短時間、反転させた後に、駆動電圧をOFFにする。これにより金属電極225と誘電体膜222の蓄積電荷が中和されるので、単に駆動電圧をOFFとしたときに比べてウェハのリリースが容易になる。
なお、上記の駆動電圧については直流電圧の他に、適宜のデューティーレシオをもつ矩形波とすることもできる。上記の矩形波駆動によれば、蓄電デバイスの蓄電量の消耗を抑制できる。
【0057】
電源の充電については、外付けの充電器からの充電方式の他に、ワイヤレス充電方式とすることもできる。更に、電源部の制御もワイヤレス化することができる。
図2(b)に、収納室内に格納されるワイヤレス充電方式による電源部をもつ駆動ユニット255のブロック図を示す。
【0058】
駆動ユニット255は、
図2(a)における収納室内の駆動ユニット(制御部、電源部、駆動回路)240に替わるものであり、ウェハキャリアの外部から電磁誘導方式で送電される電力248を受電アンテナ249で受信し、受電/電源部247で整流した後、これにより蓄電デバイス(蓄電池、大容量キャパシタ、など)を充電する。
【0059】
一方、通信/制御部253は、ウェハキャリアの外部からの無線通信波258を通信用送受アンテナ254で受信し、これから得た制御信号によって受電/電源部247や駆動回路242を制御している。これにより、充電電圧の調整や駆動回路からの駆動電圧241の電圧値などを、通信/制御部253を介してウェハキャリアの外部からワイヤレスで制御することができる。
【0060】
〔実施形態-3〕
以下では、静電チャック部の構成要素の一つである絶縁性基板にシリコン基板(ウェハ)を用いる実施形態について説明する。
図3(a)は、静電チャック部320の模式平面図、
図3(b)は静電チャック部の模式断面図である。
【0061】
図3(a)では、金属電極325の形状をわかりやすく示すために、誘電体膜322を取り除いた状態で描画している。(b)図に示すように、絶縁性基板としてシリコン基板(ウェハ)321を用いている。また、本例ではシリコン基板321上に絶縁性薄膜323を設けた後、金属電極325と誘電体膜322を設けている。
【0062】
金属電極325の形状は、二つの櫛歯状電極を対向させる形式を採っているが、これに限定されることはなく、同心円状電極の組合せ、螺旋形状電極の組合せ等、静電チャックの電極としての周知の構造を採用できる。
【0063】
また、固定・保持すべきウェハの面内の個別デバイスに対応するパターン形状と、静電チャック部の金属電極325の平面パターン形状とに相関性をもたせ、製造過程にある上記ウェハ内にある個別デバイスの「電界破損」を防止できるように、相関性のある形状で金属電極を設けることも可能である。そのためのアライメントマークなどを付与することも可能である。
【0064】
上記のシリコン基板321の表面抵抗値率は500Ω/□以上であることが望ましい。上記未満の値であると基板材料(シリコン)の導電性が高くなり、シリコン基板内にリーク電流が発生するようになる。その結果、静電チャックとしての吸着力が低下してしまうので、表面抵抗率が500Ω/□未満であるのは好ましくない。
【0065】
前述のように、シリコン基板321上に絶縁性薄膜323を設けた後、金属電極325と誘電体膜322を設けている。このときの絶縁性薄膜323は、金属の酸化膜、金属の窒化膜、金属の酸窒膜の何れかであり、厚みは数μmである。また、上記の絶縁膜の体積抵抗率は、その上部に位置している誘電体膜のそれよりも高いことが望ましく、例えば、1E10Ωcm以上である。本例では、絶縁性薄膜323として膜質に優れ、かつ、製作も容易なシリコンの熱酸化膜(1μm)を採用している。
【0066】
次に、金属電極325のリード電極の取り出し方を説明する。本例では、
図3(b)に示すように、シリコン基板321と絶縁性薄膜323を貫く貫通電極327でリードを採っている。貫通電極を形成する際には、貫通孔をあけた後に、貫通孔の内面を熱酸化膜で被覆して更なる絶縁処理を施してから金属導体を充填するのが望ましい。
【0067】
(b)図においては、金属電極325の正確な形状描画を省略し、説明上、模式的形状で断面を示している。同様に、収納室及び室内の詳細な描画を省略している。上記の貫通電極327には、駆動回路として用いている昇圧回路342からの駆動電圧341が給電される。
なお、前述の〔実施形態-2〕と同様に、上記の駆動電圧については、直流電圧の他に、適宜のデューティーレシオをもつ矩形波とすることもできる。上記の矩形波駆動によれば、直流駆動に比べて蓄電デバイスの蓄電量の消耗を抑制できる。
【0068】
なお、本例では絶縁性基板にシリコンウェハを用い、かつ、その上に絶縁性薄膜を設けている。この構成を採ることが望ましいが、必須ではなく、上記の絶縁性薄膜を設けない構成とすることも可能である。
【0069】
さらに、本例で用いているシリコンウェハは、品質・形状の揃った基板材料として入手できるので好都合である。更にはまた、シリコンウェハ自体を適宜の厚さに加工して用いることができるので、薄膜の誘電体膜と組み合わせることにより、ウェハキャリア自体の小型(薄型)化を図ることができる。
【0070】
〔実施形態-4〕
図4は、本発明の実施の形態-4に係るウェハキャリアの説明図である。(a)図は、静電チャック部420の模式断面図である。ここでは、絶縁性基板としてシリコン基板(シリコンウェハ)421を用いている。また、シリコン基板上には絶縁性薄膜としてシリコン熱酸化膜423を、厚さ約1μm設け、さらにその上に、パタニングされた金属電極425を設けている。ここまでの形態は前述の〔実施形態-3〕と同じであるので、詳細な説明を省略する。なお、金属電極425の断面形状、配置なども、前述〔実施形態-3〕で述べたように説明の便宜上の模式的な断面形状で図示している。
【0071】
本形態の特徴は、静電チャック部を構成する誘電体膜を金属電極425自身の表面酸化膜422で形成していることである。例えば、パタニングされた厚さ約0.5μmのAl(アルミニウム)の金属電極425の表面に酸素プラズマを照射し、その表面に酸化膜(酸化アルミニウム:Al2O3、約100nm)を形成している。なお、上記のプラズマ酸化法の他に、プラズマ陽極酸化法も酸化膜の形成に応用できる。
【0072】
以上では、金属電極自身の「表面酸化膜」を用いる例を示したが、金属電極自身の表面を窒化させた「表面窒化膜」であっても良い。例えば、アルミニウム電極の表面窒化膜(AlN:窒化アルミニウム)である。
【0073】
上述の静電チャック部420における金属電極425へは、貫通電極427を介して昇圧回路442からの駆動電圧441が給電される。これらの形態の詳細は、前述〔実施の形態-3〕と同様であるので、詳述を省略する。なお、昇圧回路は駆動回路の一例である。
【0074】
上記の形成法による酸化アルミニウム膜、あるいは窒化アルミニウム膜は、均一で良質な薄膜誘電体膜となる。周知のように、静電チャックの吸着力は、駆動電圧が一定であるならば、誘電体の膜厚の二乗に反比例するので、膜厚が薄いほど有利になる。このことから、薄膜誘電体膜として上述の酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などを用いることにより、低駆動電圧動作の静電チャックを実現できる。
【0075】
図4(b)は、貫通電極を用いずに、金属電極425からのリードを採る場合の配線構成を示す模式断面図である。まず、静電チャック部の表面から側壁と裏面にまで回り込む延長電極428aを設ける。このとき、延長電極428aと静電チャック部の側壁とを絶縁するために、予め下地絶縁膜424を設けている。
【0076】
また、収納室430の側壁431の上部端面には、電極中継のための延長電極428bを設けている。本例では、収納室は絶縁物で製作されているので、側壁の上部端面をメタライズして延長電極428bを形成する。次いで、図示のように昇圧回路の出力端を延長電極428bに結線する。
【0077】
最終的には、収納室上端面と静電チャック部の裏面周縁部とをソルダー、または導電性接着剤などを用いて電気的に接合する。このとき、電気的接合が不要な部分には非導電性の接着剤を用いて接合する。
なお、収納室に内装されている電子回路は、例えば前出の
図2(b)に示す通りであるが、
図4(a)、(b)においては、これらの描画の大部分を省略している。
【0078】
以上では、静電チャック部の絶縁性基板としてシリコン基板(シリコンウェハ)を用いる例を示したが、これに限定されるものではない。周知の材料であるセラミックスや、ポリイミド樹脂をはじめとする合成樹脂を用いることができる。また、ガラス(石英ガラス、硼珪酸ガラス、など)基板や、表面をセラミックスや合成樹脂で被覆した金属基板も使用可能である。
【0079】
〔実施形態-5〕
本発明のさらに別の実施の形態を
図5に示す。
図5(a)は、本発明のウェハキャリア500の模式断面図、同(b)図は、(a)図における通信/情報蓄積部570のブロック図である。
ここでのウェハキャリア500の特徴は、ウェハキャリア自体が物理センサと、通信/情報蓄積機能を備えていることである。なお、静電チャック部520は、シリコン基板521、シリコン熱酸化膜523、金属電極525、誘電体膜522で構成されており、前述の実施形態-3と類似するので、詳細な説明を省略する。
【0080】
まず、静電チャック部520の表面近傍や表面に各種の物理センサ561~563、564が、また、収納室530内にもセンサ565が設けられている。ここで言う物理センサは、例えば、温度センサ、湿度センサ、ガス圧センサ、応力センサ、歪センサ、振動センサ、加速度センサなどである。
【0081】
上記のセンサの配置については、同種のセンサを複数箇所に、また、異種のセンサを複数箇所の所望の場所に設置することができる。上記センサの設置の際には、各センサの設置箇所と金属電極525の設置箇所とが干渉しないように、両者の配置、形状を相互に調整すればよい。
【0082】
各センサのリードの採り方は、例えば、図示のS1~S3(561~563)ように、静電チャック部520に貫通孔を設け、この中にリード線を通して収納室530内に導けばよい。このとき、必要に応じて、上記の貫通孔に絶縁性樹脂を充填しても良い。また、センサS5(565)は、収納室の内壁に樹脂で接着・固定した例である。これらの方式は、既製品センサを利用する場合に好適である。
【0083】
一方、センサS4(564)では、MEMS技術を利用して静電チャック部の表面に薄膜構造の温度センサや歪センサを作り付けている。本例では、静電チャック部に予め貫通電極(詳細、図示せず)を設けておき、この貫通電極を介してセンサS4(564)のリードを収納室530内に導いている。
【0084】
収納室530は天井部に見立てた天板部532と、これと一体化している側壁部531と、組立途中では上記部材とは分離している底板部533とで構成されている。収納室の天板部表面を静電チャック部520の裏面に固着させている。上記の各種センサからのリードは、プリント基板535上の所定位置に接続される。また、(b)図に示す駆動ユニット550と通信/情報蓄積部570もプリント基板535を用いて実装される。
【0085】
駆動ユニット550は、通信/情報蓄積部570に電源電力544を給電し、また、静電チャック部の金属電極525にも駆動回路(図示せず)から駆動電圧541を給電している。ここでの駆動ユニット550は、前出の
図2(b)に示す電源部255と大略、同じであり、詳細な説明を省略する。ここでは、
図2(b)におけるTx/Rxアンテナ254と通信/制御部253に替えて、
図5(b)に示す通信用送受アンテナ(Tx/Rx)577と、送受信部576と、CPU(中央処理装置)575とが連携して、駆動ユニット550を制御(572)している。
【0086】
通信/情報蓄積部570は、通信用送受アンテナ577と、送受信部576と、CPU(中央処理装置)575と、メモリー573と、I/Oインターフェイス571と、センシング回路569と、LED表示部567とを備えている。
上記の各種物理センサからの検知出力は、センシング回路569とI/Oインターフェイス571を介して、物理量データとしてメモリー573に記憶・蓄積される。このときの物理量データは、予めCPU575内に設定しているサンプリングレートで採取される。
このときのメモリーへのデータ格納では、CPU内にあるカレンダ/時計機能を用いて、上記のサンプリングレート(周期)に対応する日付・時刻(年/月/日/時/分/秒)とともに、採取した上記の物理量データをログ形式でメモリー573に記憶・蓄積する。
【0087】
なお、上記の「日付・時刻(年/月/日/時/分/秒)」を、以下では「カレンダ時刻」と略称する。また、駆動ユニット550内の電源の出力電圧(受電電源部の出力電圧、及び駆動回路からの出力電圧=静電チャック部への駆動電圧)も、センサからの検知データとともにログ形式でメモリーに記憶・蓄積して、ウェハキャリアの動作状況をモニターする。
【0088】
さらに、上述の駆動ユニット内の出力電圧の変動がCPU内に設定している許容変動範囲から逸脱した場合には、LED表示部567を介してLED警告ランプ566(収納室側壁531に設置)を点灯させる。これにより、ウェハキャリア500の動作異常の注意喚起が可能になる。また、金属電極への駆動電圧の変動についても上記と同様の警報機能を持たせることが可能である。
【0089】
なお、図示のウェハキャリアは外部との無線通信ができるので、予め、通信/情報蓄積部570内に「電源電圧等の異常時」には、これをウェハキャリア自身が外部の管理装置580に自発的に発信することをプログラミングしておけば、ウェハキャリアの異常の早期発見が可能になる。
【0090】
本例でのウェハキャリア500の特徴は、ウェハキャリア自体が物理センサと通信/情報蓄積機能とを備えていることである。これにより、ウェハキャリアに装着されるウェハが受ける様々な環境ストレスや、ウェハが製造過程(主として前工程)で受ける加工処理時の処理実績条件データ、すなわち、加工処理中の温度、ガス圧力、応力、歪、振動、加速度、などのデータであり、これらをウェハキャリアの動作状況データ(電源電圧、静電チャック用駆動電圧、収納室内温度、など)とともにウェハキャリア内の通信/情報蓄積部にログデータとして記憶、蓄積することができる。
【0091】
また、管理装置580は、通常、複数のウェハキャリアを管理するので、個々のウェハキャリアを特定するための「デバイス識別番号」を個々のウェハキャリアに予め付与し、記憶させておくこと必要がある。そして、ウェハキャリアと管理装置との間の無線通信時には、例えば、このデバイス識別番号を個々のウェハキャリアに対する「コールサイン」と定めておけば、混乱なく複数個のウェハキャリアを管理することができる。
【0092】
以上述べた本例のウェハキャリアは、その特徴を活かした様々な用途がある。中でも、次段の実施の形態で述べる「前工程の管理」への適用は好事例であり、工程管理の省力化や品質向上に寄与するものである。
【0093】
なお、以上に説明したウェハキャリアは、静電チャック方式の自立型ウェハキャリアであり、これに物理センサと通信/情報蓄積機能を内蔵させている。以下では、格別な通信/情報蓄積機能は付加せず、物理センサと若干の制御手段のみを付加したウェハキャリアの形態(図示せず)について説明する。
【0094】
例えば、物理センサとして温度センサを用いて、これを静電チャック部、又は/及び、収納室内に設置し、上記の設置箇所の温度が許容範囲を逸脱した場合には、ペルチェ素子や、気体液化ヒートポンプなどを用いて、静電チャック部、又は/及び、収納室内の温度制御をすることができる。この場合には、通信/情報蓄積機能は不要である。
【0095】
本例では、ウェハキャリア500と管理装置580との間の通信手段として無線通信回線を用いる方式を採っているが、有線通信回線を用いる方式を採ることも可能である。このときには、例えば、ウェハキャリアの側壁などに通信用のプラグ又は接点を設けておき、また、通信/情報蓄積部の送受信部576を有線通信対応とする手直しをすればよい。
【0096】
図5(b)に示すような無線通信方式を採る場合には、ウェハキャリアは常時、「待ち受け」状態としておくことが望ましい。また、近距離の無線通信であれば、「BLE」(Bluetooth〔登録商標〕Low Energy)通信規格を採っておけば、無線通信の省電力化が図れる。さらに、無線LAN(Local Erea Network)の通信方式による場合には、通信規格を「Wi-Fi(登録商標)」とすれば、接続機器に対する汎用性が増大するので好都合である。
なお、通信方式は特に拘るものではなく、技術の発展やコスト、特徴などを考慮して適宜選択することができる。
【0097】
更には、送受信部576をインターネットに接続可能とする構成としておけば、ウェハキャリアをIoT(Internet of Things)デバイスとして取り扱うことができる。
図5(b)に示す無線通信回線をインターネット回線に置き換えれば、ウェハキャリアと管理装置とが遠く離れていても、ウェハキャリアと管理装置とはインターネット回線を介して自由に通信することができる。
この結果、ウェハキャリアが取得したログデータの活用範囲も広がり、工程管理だけでなく、品質管理や他部門との連携管理にも寄与できる。
【0098】
〔実施形態-6〕
以下の
図6A、
図6Bは、静電チャック部の誘電体膜が圧電体膜であるときに、この圧電体膜を利用して静電チャック部に圧電センサを構成する例を示す模式構造図である。
図6Aは、圧電センサの電極からのリードを貫通電極で形成する例を示す。
図6A(a)は模式平面図、
図6A(b)はS-S部分の模式断面図である。静電チャック部620は、シリコン基板621と、その表面にシリコン熱酸化膜623と、圧電体膜622(例えば、AlN:窒化アルミニウム)とで構成されている(静電チャック部の金属電極を図示せず)。
【0099】
まず、シリコン熱酸化膜623まで形成した後に、周知の方法を用いて貫通電極662hを設ける。次に、センサ下部電極となる金属層を蒸着法又はスパッタリング法により被着する。次いで、周知の選択パタニング手法を用いて電極タブ662cをもつセンサ下部電極662dを形成する。その後、圧電体膜622を成膜する。
【0100】
次に、上記と同様の手法を用いて貫通電極661h設けた後に、電極タブ661cをもつセンサ上部電極661uを形成する。これにより、圧電体膜622をセンサ上部電極661uとセンサ下部電極662dとで挟んだ構造の圧電センサを静電チャック部に作り付けることができる。電極タブ661c、662cと接続している貫通電極661h、662hから引き出されたリードは、収納室(図示せず)内のセンシング回路に導かれる。
【0101】
図6B(a)、(b)には貫通電極によることなく、センサ電極のリードを採る別の手法を示す。静電チャック部620は、
図6Aに示した構成と同じであるので、詳しい説明を省略する。なお、
図6B(b)におけるP-P断面の描画は、模式的なものであり、説明の便宜上、模式平面図に見える表面延長電極650Sのすべてを模式断面図に描いている。
【0102】
センサ上部電極663u、センサ下部電極664d、タブ電極663c、664cは、上述の貫通電極方式のときと同様の手法で形成される。このとき、圧電体膜の表面及び下面(シリコン熱酸化膜623の表面)に、タブ電極663c、664cから引き出されるストライプ状の表面延長電極650Sを形成する。
【0103】
また、(b)図に示すように、静電チャック部620の側面と裏面の周縁部には予め配線下地絶縁膜640を設けておき、さらにこの上に先の表面延長電極650Sと接続するようにストライプ状の側壁延長電極650Eを形成する。上記の側壁延長電極650Eは、収納室(図示せず)内のセンシング回路へ導かれる。このときの具体的な結線方法は、前出の
図4(b)における「昇圧回路」を「センシング回路」に置き換えた形になる。
【0104】
以上のように、圧電体膜(誘電体膜)にセンサ電極を設けることにより、圧電体センサを静電チャック部に作り付けができる。この手法は、静電チャック部の表面、あるいは誘電体膜の下面にプレーナ型の物理センサ、例えば、薄膜温度センサ、薄膜応力センサ、薄膜歪センサなどを作り付けるときにも応用できる。
【0105】
〔実施形態-7〕
電子デバイス、例えば半導体デバイスやMEMSデバイスなどの製作工程においては、その前半ではウェハに加工処理を施す、いわゆる「前工程」(又は、ウェハプロセス)と呼ぶ工程群がある。ここでは、上記の前工程における工程管理に本発明のウェハキャリアを応用する例を、
図7によって説明する。
使用するウェハキャリア700は、前述の〔実施の形態-5〕に示したものと同じであり、ウェハ710がウェハキャリア700の上に固定・保持されている。
【0106】
(初期設定)
ウェハキャリアを工程管理に使用するにあたり、まず、ウェハキャリアの「初期設定」を行う。ウェハキャリアには、それ自身を特定するための「デバイス識別番号」が予め付与されている。このデバイス識別番号は、外部の「工程管理装置」(ここでは、ホストコンピュータ750)から無線LAN(Local Eria Network)751を介して、無線通信によりウェハキャリア内のメモリーに書き込まれ、記憶・保持される。
【0107】
(ログデータの取得)
ウェハキャリア内にあるセンサからの検知データを所定のサンプリングレートで取得する。一方、〔実施の形態-5〕で説明したように、ウェハキャリア700中のCPUにはカレンダ/時計機能があるので、上記のサンプリングレートに対応する、日付・時刻(年/月/日/時/分/秒)とともに、上記のセンサ検知データをログ形式でウェハキャリア700に記憶・蓄積することができる。
以下では、日付・時刻(年/月/日/時/分/秒)のことを、「カレンダ時刻」と呼ぶ。さらに、混同のおそれのない場合には、センサ検知データをログ形式で記憶・蓄積するデータのことを、単に、ログデータと呼ぶことがある。
【0108】
(登録)
実際にウェハキャリア700をウェハプロセス(前工程)で使用するには、まず、装着(固定・保持)するウェハ710に係る属性(ウェハの個体識別番号、工程編成時のロット番号、完成時の品種番号(コード番号)、その他の備考など)を登録する。この登録は、工程管理装置(ホストコンピュータ)750から無線LAN751を通じて、前述の要領でウェハキャリア700に書き込みされ、記憶される。
【0109】
これ以降のウェハキャリアとホストコンピュータとの通信においては、上記の「デバイス識別番号」と「ウェハ個体識別番号」とを組み合わせたコードを「コールサイン」として用いる。また、ウェハキャリアは常時、無線LANによる通信の「待ち受け状態」とする。
また、「工程No.1」720は、複数のウェハを同時処理する“バッチ処理”の工程である、との設定をする。この場合、毎回のバッチ処理毎に“バッチ識別番号”が付与される。更に、プロセス装置721は、ウェハキャリア700との双方向無線通信機能を備えている。
【0110】
(チェックイン)
「工程No.1」720に使用するプロセス装置721は、図示のようなステップを実行し、装置へのウェハキャリアの搬入/搬出は、搬送用ロボットが実行する。最初に、ウェハキャリア700がプロセス装置721に搬入されるときには、プロセス装置がウェハキャリア700を呼び出し、チェックイン信号を発信する。
【0111】
上記のチェックイン信号とは、「工程の開始宣言」、「工程名称(ここでは、工程No.1)」720、「バッチ識別番号」であり、これらがウェハキャリアに書き込まれる。同時に、カレンダ時刻も記録され、ログデータとして蓄積される。
さらに、上記のチェックインに係るログデータは、ウェハキャリア700から無線LAN751を介して工程管理装置(ホストコンピュータ)750に通知される。これにより、ウェハがプロセス装置内に搬入され、所定の工程(ここでは、工程No.1)が開始されたことが認識される。
【0112】
(各ステップでの加工処理)
本例では、プロセス装置内での加工処理には図示のように、STEP-1(725)~FIN(最終ステップ、727)の各段階があり、各ステップの開始時と終了時にはプロセス装置内からの無線通信により「開始信号(開始宣言と当該ステップの名称)」と「終了信号(終了宣言と当該ステップの名称)」が発信される。これを受信したウェハキャリアは、カレンダ時刻とともに、上記の「開始信号」、「終了信号」の内容をウェハキャリア内に記憶、蓄積する。「STEP-1」725を例にとれば、ステップ開始時に開始信号725-Sが、ステップ終了時には終了信号725-Fが、プロセス装置内からウェハキャリアに無線送信される。
【0113】
上記の各ステップでの加工処理中においても、キャリア内にあるセンサからの検知データを所定のサンプリングレートで取得し、ログデータとしてウェハキャリア700に記憶・蓄積する。ここで、ステップでの加工処理の種類によっては、センサの検知出力の時間変化が急速であり、サンプリングの標準レート(既定値)では変化に追従できない場合がある。
これに対応するためには、当該ステップの開始信号の中にサンプリングレート変更命令を追加しておけばよい。変更されたサンプリングレートの値は、当該ステップが終了すると同時に既定値に戻される。
【0114】
(チェックアウト)
最終ステップ(STEP-FIN)727が終了すると、ウェハキャリア700はプロセス装置721から搬出される。これと同時に、プロセス装置がウェハキャリア700を呼び出し、チェックアウト信号を発信する。ここでチェックアウト信号とは、工程の終了宣言、「工程名称(ここでは、工程No.1)700」720、「バッチ識別番号」であり、これらがウェハキャリアに書き込まれる。同時に、カレンダ時刻も記録され、ログデータとして蓄積される。
【0115】
さらに、上記のチェックアウトに係るログデータは、ウェハキャリア700から無線LAN751を介して工程管理装置(ホストコンピュータ)750に通知される。これにより、ウェハがプロセス装置外に搬出されており、当該工程(ここでは、工程No.1)が終了したことを工程管理装置750が認識する。
【0116】
(ログデータの払い出し)
当該工程の終了通知を受け取った工程管理装置750は、ウェハキャリア700を呼び出して、当該工程(ここでは、工程No.1)中に得られたすべてのログデータを工程管理装置750に送信することを指令する。これにより、当該ログデータは工程管理装置に格納される。上記のデータ格納が正常に実行されたことを確認後、ウェハキャリア700が記憶・蓄積しているログデータについては、チェックイン/チェックアウト信号、ステップ開始/終了信号に係るログデータ以外のログデータを消去してもよい。
【0117】
以上のように、ウェハ(ウェハキャリア)が一つの工程を通過したときに、ウェハが受けた加工処理の処理実績条件をログデータとして取得できる。工程終了ごとに上記のログデータは工程管理装置に送信され、格納・蓄積される。これにより、各種のログデータの一元的な管理が容易になる。
【0118】
複数のウェハを一括して加工処理する「バッチ処理」においては、設定加工処理条件に対して、実際の処理条件がどのようになっていたかは、通常、加工処理装置(プロセス装置)内に設けた複数箇所での定点観測を行って確認している。一方、プロセス装置内には温度分布やガス圧分布など、各種の分布が存在するので、複数枚のウェハがバッチ処理を受ける場合には、個々のサンプルの実処理条件を把握することが極めて困難である。
【0119】
一方、本発明のウェハキャリアを用いて加工処理をすれば、個々の製品ウェハの加工処理実績条件の把握が可能となる。このときの加工処理条件のデータ(ログデータ)を利用すれば、当該工程終了後に直ちに、加工処理後のウェハの「合否判定」を実施できる。
例えば、設定加工条件の許容変動幅が事前に検証されていれば、これを工程管理装置(ホストコンピュータ)にプログラムして「合否判定基準」を設定できるので、「加工処理条件の許容変動幅から逸脱した個々のウェハの摘出」が可能となる。
【0120】
これにより、従来の定点観測方式では不可能であった「バッチ内の個々の不良品の摘出」が可能となり、製造ラインから迅速に不良品を排除できるので、製造コストの削減にもつながる。
【0121】
上述のように、本発明のウェハキャリアを半導体デバイスやMEMSデバイスなどの製造工程の前工程における工程管理に応用することにより、工程管理の省力化が図れる。同時に、得られたログデータの活用により、不良解析が容易になり、製造品質と製造歩留まりも向上するので、本発明のウェハキャリアは原価低減にも寄与できる。
【0122】
なお、本例では、プロセス装置内におけるウェハキャリアと装置間の通信として、無線通信による方式を採っているが、プロセス装置の構造によっては無線通信が困難な場合がある。このときには、ウェハキャリアとプロセス装置の双方に有線通信機能を付加しておけばよい。
さらに、外部にある工程管理装置750とプロセス装置内にあるウェハキャリア700とが、直接、通信することに備えて、無線又は有線通信用の中継器をプロセス装置内に装備しておくことも可能である。
【0123】
上述のように、本発明の物理センサ内蔵ウェハキャリアによれば、温度、圧力、応力、振動などのデータを取得できるが、これに限定されることなく、各種の物理センサを内蔵させることで様々な情報を取得できる。
【0124】
また、本発明のウェハキャリアの用途は本実施の形態に記載した用途に限定されるものではなく、例えば、ウェハの製作工程間の移動、運搬、保管などにおいても、ウェハの周囲環境(温度、湿度、気圧、振動、など)の監視に用いることが可能である。
上記の監視データをログデータとして記憶・蓄積できるので、工程管理以外にも本発明のウェハキャリアを幅広く活用できる。
【0125】
〔付記〕
上述の実施の形態-1~7に示したウェハキャリアの平面形状は円形を基本としているが、これに限定されるものではなく、不定形であってもよい。この場合には、ウェハキャリアが装着すべきウェハの形状と静電チャック部の形状が同一(合同形状)であることが望ましい。これは、ウェハキャリアの表面に露出部分があると、場合によっては、この露出部分がウェハの加工処理工程中に損傷を受ける可能性があるためである。
【0126】
ウェハキャリアの収納室の材質は、金属又はセラミックス、合成樹脂などである。ただし、無線通信機能をもたせている場合には、電気的絶縁性のある材質とする必要がある。
また、静電チャック部と収納室は気密封止(ハーメチックシール)接合、又は非気密封止接合としている。腐食性ガスや液体を用いる加工処理工程に用いる場合には気密封止型のウェハキャリアを用いることが望ましい。
【0127】
一方、気密封止型のウェハキャリアでは加熱又は冷却処理が加わる工程に使用した場合には、収納室内の封止ガス圧が変化する。収納室内の封止ガス圧が外気圧よりも高くなる場合には、収納室に逆止弁をベントバルブとして設けておけばよい。
【0128】
さらに、収納室の“天井部”と“底板部”との間の空間に、“支柱”、“梁”、“隔壁”等を設けることにより、収納室の機械的強度を増強することができる。更には、収納室に内装されている部材一式を合成樹脂モールドすることも可能である。
また、収納室を設置する代わりに、収納室相当部分を合成樹脂モールドしてもよい。合成樹脂モールドにより、収納室内の封止ガス圧が周囲温度の変化により増減するという問題点は解消される。
【符号の説明】
【0129】
100、200、300、500、700・・・・・ウェハキャリア
110、510、710・・・・・ウェハ
130、230、430、530・・・・・収納室
140、240、255、550・・・・・駆動ユニット
220、320、420、426、520、620・・・・・静電チャック部
221・・・・・絶縁性基板
222、322、522・・・・・誘電体膜
225、325、425、525・・・・・金属電極
242・・・・・駆動回路
247・・・・・受電/電源部
253・・・・・通信/制御部
321、421、521、621・・・・・シリコン基板
323・・・・・絶縁性薄膜
327、427、661h、662h・・・・・貫通電極
342、442・・・・・昇圧回路
422・・・・・表面酸化膜
423、523、623・・・・・シリコン熱酸化膜
561~565・・・・・物理センサ
570・・・・・通信/情報蓄積部
580・・・・・管理装置
750・・・・・工程管理装置