(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171506
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】電源装置及びその補正方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20221104BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01R19/00 B
G01R35/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099608
(22)【出願日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】17/245,874
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505436014
【氏名又は名称】ケースレー・インスツルメンツ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Keithley Instruments,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・シー・ウィーマン
【テーマコード(参考)】
2G035
【Fターム(参考)】
2G035AA00
2G035AB02
2G035AC01
2G035AC08
2G035AC16
2G035AD13
2G035AD26
2G035AD28
2G035AD47
2G035AD56
2G035AD65
(57)【要約】
【課題】電源電圧の補正を安定して行えるようにする。
【解決手段】電源装置には、第1電圧V
sourceを出力する第1電圧源100と、第1電圧源100を被試験デバイス(DUT)108に接続するソース経路104及び106と、DUT108に結合されたセンス経路114及び116とがある。更に、DUT108の第2電圧V
measureをサンプルし、第1電圧と第2電圧間の電圧差を求め、第1電圧と第2電圧間の電圧差に基づいて第1電圧を調整する回路がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧を出力するように構成された第1電圧源と、
該第1電圧源を被試験デバイスに接続するソース経路と、
上記被試験デバイスと電気的に結合されたセンス経路と、
上記被試験デバイスの第2電圧をサンプルし、上記第1電圧と上記第2電圧間の電圧差を求め、上記第1電圧と上記第2電圧間の上記電圧差に基づいて上記第1電圧を調整するように構成された回路と
を具える電源装置。
【請求項2】
上記回路が、
上記電圧差を受けて、該電圧差を補正制限値と比較するように構成された閾値検出回路と、
上記補正制限値に違反していない場合に、上記電圧差に基づいて上記調整電圧を変更する調整電圧セレクタと
を有する請求項1の電源装置。
【請求項3】
上記調整電圧が1つ以上の所定値を突破した場合に、補正制限値に違反したとする請求項1又は2の電源装置。
【請求項4】
上記調整電圧セレクタは、負荷電流と、上記被試験デバイスを流れる既知の電流及び上記電圧差から求められる抵抗補償値とに基づいて、上記調整電圧を選択するように構成される請求項1から3のいずれかの電源装置。
【請求項5】
上記電圧差が補正制限値に違反しているか否かを定める際には、上記抵抗補償値が1つ以上の所定値に違反しているか否かを判断する請求項4の電源装置。
【請求項6】
被試験デバイスの電圧に基づいて電源装置を補正する方法であって、
第1電圧を生成する処理と、
上記第1電圧を上記被試験デバイスに伝送する処理と、
上記被試験デバイスの第2電圧をサンプリングする処理と、
上記第1電圧と上記第2電圧との間の電圧差を求める処理と、
上記電圧差に基づいて調整電圧を求める処理と、
上記調整電圧に基づいて上記第1電圧を調整する処理と
を具える電源装置の補正方法。
【請求項7】
上記調整電圧が補正制限に違反しているかどうかを判断する処理と、
上記補正制限に違反していない場合に、上記調整電圧に基づいて上記第1電圧を調整する処理と
を更に具える請求項6の電源装置の補正方法。
【請求項8】
上記調整電圧は、負荷電流と、上記被試験デバイスを流れる既知の電流及び上記電圧差から求められる抵抗補償値に基づいて決定される請求項6又は7の電源装置の補正方法。
【請求項9】
上記第2電圧を、該第2電圧を表すデジタル信号に変換する処理と、
上記第2電圧を表す上記デジタル信号を記憶する処理と、
上記第2電圧を表す記憶された上記デジタル信号に基づいて周期的に上記調整電圧を決定する処理と
を更に具える請求項6から8のいずれかの電源装置の補正方法。
【請求項10】
コンピュータ・プログラムであって、電源装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、上記電源装置が、請求項6から9のいずれかの方法を実行する命令を含むコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、電源装置に関連するシステム及び方法に関し、特に、被試験デバイスで検出される電圧に基づいて、電源装置を正確に調整することに関する。
【背景技術】
【0002】
一部の電源装置は、4端子測定補正(Four-terminal sensing correction;ケルビン・センス補正とも呼ばれる)を使用して、電源装置に取り付けられた被試験デバイス(DUT)において、又は、その近くで電圧を検出し、DUTにつながるソース経路中の経路及び接続部(connections)における電圧低下を補正する。ケルビン・センス補正は、供給される電圧が、DUTに存在する電圧を正確に反映していることを保証するのに有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Four-terminal sensing」の記事、Wikipedia(英語版)、[オンライン]、[2021年6月10日検索]、インターネット<https://en.wikipedia.org/wiki/Four-terminal_sensing>
【非特許文献2】「Source measure unit」の記事、Wikipedia(英語版)、[オンライン]、[2021年6月10日検索]、インターネット<https://en.wikipedia.org/wiki/Source_measure_unit>
【非特許文献3】「ケースレーのソース・メジャー・ユニット」、テクトロニクス/ケースレー、[オンライン]、[2021年6月10日検索]、インターネット<https://jp.tek.com/keithley-source-measure-units>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のケルビン・センシングは、DUTでの電圧を非常に正確に検出できるが、電源電圧を補正するのに使用すると、制御ループの安定性が低くなるか、又は、不安定になる可能性があって、問題になることがある。一部の装置は、DUTの結線における電気的短絡(ショート)を利用して、DUTの電圧のセンシングを補正することで、この問題に対処している。既知の電流で経路を駆動し、電圧降下を測定することで補償係数を生成でき、この補償係数は、電源電圧を生成するときに利用されて、DUTの電圧が、確実に意図した電圧レベルであるようする。しかし、電気的短絡を利用するには、補償係数をアップデート又は確認して、電気的短絡が適切に設定されている状態を確保することが必要なときは、試験を中断して、電気的短絡を形成する必要がある。
【0006】
本開示技術の例では、これら及び他の先行技術の欠陥に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示は、限定するものではないが、例えば、ソース・メジャー・ユニット(SMU)のような電源供給機能を有する装置のためのケルビン・センス補正を用いる方法の改良に関し、これは、従来のケルビン・センス補正方法及び回路短補償方法にかかる多くの問題を緩和する。
【0008】
本開示技術の例は、電圧の測定を遠隔で行うことを可能にするセンス経路を保持し、検知した電圧を直接使用することなく、このセンス経路を利用して、ソース(信号供給)経路における電圧降下及びソース経路におけるエラーのレベルを求めて補正する。これにより、ソース・ループから独立した制御ループを形成することができ、ローカル制御に関連する速度と安定性の利点がある。また、本開示技術の例では、エラー・チェックと制限範囲チェックが可能であるため、センス経路(センス・リード線)が脱落、破損、その他の欠落が生じた場合に、ソース制御ループが開かず、取り付けられた負荷(被試験デバイス)に損傷を与える可能性を排除できる。更に、ソース経路に関連する電圧降下を監視して、所望の誤差レベル又はソースの仕様が、DUT又は負荷で確実に維持させることができる。
【0009】
本開示技術の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照し、以下の実施形態の説明を読むことで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示技術の例による電源装置の簡略化した回路図である。
【
図2】
図2は、本開示技術の別の例による電源装置の簡略化した回路図である。
【
図3】
図3は、
図1又は2の電源装置の各種動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示技術の例による電源装置の簡略化した回路図である。当業者であればわかるように、
図1に示されていない追加のコンポーネントが、回路又は信電源装置(ソース・ユニット)内に含まれていても良い。当業者であれば容易にわかるように、例えば、コンパレータ、アナログ・デジタル・コンバータ、プロセッサ、その他のデバイスのような追加のハードウェアが、電源装置内にあって、
図1に関して説明するいくつかの機能を実行しても良い。
【0012】
図1に示すように、公称電圧源100は、調整電圧源102に電気的に結合されている。
図1は、公称電圧源100と調整電圧源102を別々の信号源(ソース)として示しているが、当業者であればわかるように、公称電圧源100と調整電圧源102を、一部の例では、単一の信号源として組み合わせることもできる。ソース経路104及び106は、電圧源100及び102からDUT108に電圧を伝送する。ソース経路104は、典型的には、リード線であっても良く、また、プリント回路基板のトレース、スイッチ、センサ、コネクタ、その他の経路が含まれていても良い。
【0013】
ソース経路104及び106は、抵抗を有し、これは、抵抗110及び112として示される。抵抗110及び112は、ソース経路104及び106上の抵抗を示すために使用され、必ずしもソース経路上に実際の抵抗であるわけではない。ソース経路104及び106の抵抗は、リード線の長さ、材料の導電率、導体の幾何的な形状によって決定される。更に、負荷(被試験デバイス)の電流やその他のパラメータを測定するために用いられるセンサ、スイッチ及びコネクタのような各種回路部品が、経路には含まれていて、抵抗110及び112として現れる値に含まれても良い。この抵抗は、電圧降下を生じ、そのために、DUT108が受ける電圧は、信号源100及び102が出力する電圧と同じではなくなる。センス経路114及び116もDUT108に接続されており、検出電圧は、Vmeasureとして表すことができる。当業者であればわかるように、センス経路114及び116は、リード線であっても良く、更に、他のコンポーネントが含まれていても良い。電流センサは、本願での用法のように、通常、センス経路114及び116に直接的には含まれていないが、当業者であればわかるように、「センス経路」と呼ぶものに、実施例によっては、電流センサが含まれていても良い。
【0014】
V
measureは、あらゆる測定ニーズに利用可能であり、電源装置の表示部や任意の形式の表示装置その他の出力装置上において、ユーザに提示されても良い。
図1では、図及び説明を簡潔にするため、電圧発生回路117を示している。電圧発生回路117は、最大でも、センス経路114、116を介して受けた電圧に基づいて電圧を発生させるものである。つまり、電圧発生回路117として示されてはいるが、コンポーネント117は、実施例によっては、バッファや利得/スケーリング回路であっても良く、このため、センス経路114及び116からのDUT108の両端間電圧のコピーなら生成できるが、任意の電圧としてV
measureを生成するものではない。電源装置(ソース・ユニット:信号源装置)は、例えば、ユーザへ表示するために、DUTの電圧値を出力できる表示部を有していても良い。図示していないが、当業者であればわかるように、DUT108の両端間電圧を表示部上に表示したり、DUT108の電圧を他のデバイスに送ったりするため、V
measureは、必要に応じて、アナログ・デジタル・コンバータその他のデバイスに送られてても良い。デジタル化されたV
measureの値は、必要に応じて、更なる処理のためにプロセッサが受けるようにしても良い。
【0015】
調整電圧源102(又は、電圧源を1つだけとした場合では主電圧源)が出力する補正電圧量は、コンデンサ118の両端間で受ける電圧Vsampleに基づいて制御されても良い。電源装置(ソース・ユニット)の初期起動時には、調整電圧源102はゼロに設定される。単純な電圧検出回路が、コンデンサ118とスイッチ120を含んでいても良い。Vsample(つまり、コンデンサ118)がVmeasureに接続される時間は、スイッチ120によって制御及び最小化できる。即ち、信号源(ソース)電圧を常に監視(モニタ)及び調整するのではなく、サンプル・コンポーネントとしてスイッチ120を導入することで、Vsampleの一部として、フィルタ処理、制限処理、その他の補正処理を行う手段を提供し、調整電圧源102が許容制限値を超えないようにさせたり、調整電圧源102が余分なノイズやエラーを信号源(ソース)制御ループに入れないようにさせる。即ち、Vsampleは、連続的ではなく、離散的又は周期的な時間間隔で測定及び監視されても良く、スイッチ120は、VsampleがVadjを修正するために使用されていない時にのみ、Vsampleを更新できるようにする(Vadjの修正と、Vsampleの更新が同時にならないようにする)。
【0016】
例として、
図1に示すようにアナログ制御ループでは、調整電圧源102をゼロに設定でき、電圧源100は、既知の電流を負荷(被試験デバイス)に流がすようにする方法で制御される。既知の電流が流れると、電圧検出回路は、DUTに存在する電圧をコンデンサ118で捕捉するために、スイッチ120を閉じさせても良い。この電圧V
sampleは、電圧源100が供給する電圧V
sourceと比較することができ、電流が流れることで生じる誤差(エラー)を調整電圧V
adjで補正するためのルールを決定するために利用できる。電圧検出回路は、コンパレータや、その他のデバイス(プロセッサやアナログ・デジタル・コンバータなど)を含み、V
sampleと電圧源100の電圧V
sourceと間の電圧差を求めることができる。測定が行われるときには、過渡の影響(transient effect:遷移の影響)が完全に落ち着いていると仮定すると、V
adjは、次の数式1に基づいて、調整電圧セレクタによって計算又は決定することができる。
【0017】
Vadj=ILoad*Rcomp (1)
【0018】
ここで、Rcompは、上述の回路の特性を測定する時に、Vsource、Vsample及び既知の負荷電流ILoad_Knownに関して捕捉された値に基づいて、次の数式2に示すように計算される。
【0019】
Rcomp=(Vsource-Vsample)/ILoad_Known (2)
【0020】
通常の動作時における任意のVsource、任意の負荷電流ILoadの場合に関しては、数式2を変形するとと共に、VsourceにVadjを加算することで、以下の数式3となり、理想的には、Vsampleが、Vsourceの値と同じ値を取るように回路が動作することがわかる。
【0021】
Vsample=Vsource+Vadj-Rcomp*ILoad (3)
【0022】
いくつかの例では、コンデンサ118及びスイッチ120で示されるようなサンプル・ホールド回路を含む電圧検出回路ではなく、補償抵抗の値Rcompを表すコードを記憶するのに、乗算型デジタル・アナログ・コンバータ(multiplying digital-to-analog converter)を利用することもできる。乗算型デジタル・アナログ・コンバータの乗算端子は、負荷を流れる電流量を表す電圧を入力するのに利用できる。この例では、時間の経過に伴って回路の有効性に影響がでてくるサンプル・ホールド回路の制約を心配する必要がないという利点がある。更に、Rcompの値の更新(アップデート)を、乗算型デジタル・アナログ・コンバータに新しい値を書き込むことで行える。乗算型デジタル・アナログ・コンバータの更新は、負荷の両端間の電圧値Vmeasureを、信号源によって定まる許容範囲内に維持するのに必要なときに行うように、管理又は制限することができる。
【0023】
サンプリング又は乗算型デジタル・アナログ・コンバータの更新が非常に高速に発生する状況では、この回路の制御ループ応答は、従来のケルビン・ソース制御ループの性能に近づき始めるであろう。しかし、
図3に関して以下に説明する制限補正のような利点を、依然として持ち続けることができる。
【0024】
更に、Rcompの値を計算するのではなく、調整電圧セレクタは、所望の調整電圧を得るために必要なデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)コード(DAC code:DACでアナログ信号に変換されるデジタル・コード)を求めるプロセッサを含んでいても良く、制限範囲(limits)は、このDACコードの許容範囲として直接適用することができる。
【0025】
しかし、本開示技術の例としては、アナログ制御ループ又はアナログ制御ループとデジタル制御ループの組み合わせに限定されず、いくつかの実施例では、デジタル制御ループが用いられても良い。
図2は、本開示技術の例によるデジタル制御ループの例示的な回路図を示す。しかしながら、当業者であればわかるように、
図2の回路図が、限定するものではないが、図示していない、表示部、ユーザ入力部(ノブ、操作ボタン、キーボード、マウス等)、その他の様々なハードウェア・コンポーネントのようなその他の構成要素を有していても良い。
【0026】
図2の例示的な回路図では、
図1に関して上述したものと同じコンポーネントには、同じ参照番号を与え、
図2では更なる説明は行わない。
図1にコンデンサ118及びスイッチ120として示すようなサンプル・ホールド回路ではなく、サンプル・コンポーネントが、デジタル制御ループを含んでいても良い。デジタル制御ループには、電圧検出回路があっても良く、これは、メモリ200、アナログ・デジタル・コンバータ202、及びプロセッサ204を有していてもよい。電圧検出回路は、アナログ・デジタル・コンバータ202によってV
measureの値をデジタル値に変換した後、V
measureの値をメモリ200内に記憶させることができる。V
measureは、メモリ200に連続的に記憶されても良いし、又は、スイッチ(図示せず)を用意して、離散的な時間間隔で、V
measureをメモリ200内に記憶しても良い。
【0027】
記憶されたVmeasureの値は、プロセッサ204において、既知の電流ILoad_Knownの値に基づいて、Rcompの値を計算するのに利用され、次いで、Rcompの値は記憶されて、通常動作時において、適切なVadj値をダイナミックに計算するために利用されても良い。プロセッサは、調整電圧セレクタを有していても良く、これは、調整電圧源102によって出力される所望のVadj値を出力できる。しかし、上述のように、いくつかの実施例では、独立した調整電圧源102を用意する必要はなく、調整電圧が、公称電圧源100の出力値に付加されても良い。
【0028】
上記のいずれの例でも、閾値検出回路を含まれていて良く、これは、補償後にDUT108の両端間に現れるVmeasureの値と所望の電圧源の値との差を監視するルールを実現する仕組みを有している。Vmeasureと所望のDUT108の電圧源の値との差の比較に基づいて、例えば、ユーザに警告を発したり、Rcompの計算をリフレッシュ(再計算)するなどのアクションが行われても良い。
【0029】
更に、いくつかの例では、閾値検出回路は、センス・リード線が壊れたりや欠落したような状態のために、DUT108を損傷する可能性のある状態を形成しないようにするため、必要に応じて、電圧を調整する動作を抑制する制限範囲を設定しても良い。
【0030】
図3は、本開示技術の例によるDUT108の検知電圧に基づいて、電圧源を制御する動作例を示す。工程300において、第1電圧が生成され、ソース経路104及び106によってDUT108に伝送される。
【0031】
工程302において、電圧検出回路は、DUT108における電圧のサンプル電圧を取得しても良い。例えば、サンプル電圧は、
図1に示すサンプル・ホールド回路か、又は、
図2に示すメモリ及びプロセッサに基づいて決定されても良い。サンプル電圧は、いくつかの例では、サンプル調整ループがソース・ループから独立して動作するように、連続的ではなく、周期的に取得されても良い。いくつかの例では、サンプル電圧が、既知の電流を利用しているときに、求められても良い。既知の電流を利用していると、上述のように、R
compを計算できる。
【0032】
工程304において、調整電圧セレクタは、
図1及び2に関して先に詳細に説明したように、サンプル電圧に基づいて調整電圧を決定できる。例えば、いくつかの例では、求めた補償抵抗を、実際の電流と共に使用して、調整電圧を求めることもできる。ただし、調整電圧は、別の方法でも求めることができ、こうした別の方法としては、V
measureの電圧を、所望の信号源電圧値と比較し、周期的に調整電圧を加えることで、V
measureを所望の信号源電圧値に近づけるようにするものがある。
【0033】
いくつかの例では、工程308に示すように、調整電圧を第1電圧に直接加えても良い。しかし、別の例では、工程306に示すように、閾値検出回路を利用して、補正制限の違反が発生しないようにしても良い。補正制限違反(correction limit violation)とは、例えば、第1電圧とサンプル電圧の差が許容値より大きい場合に発生することがある。補正制限違反が発生した場合、電源装置は、ユーザに対して、その条件を警告する出力を生成したり、制限範囲外の状態を補正する機能を使用するのを自動的に防止するように信号源を調整する何らかの動作を実行しても良い。いくつかの例では、エラーが所定の量を超える場合にのみ警告が生成されても良い。例えば、エラーが所定の量より小さい場合、信号源には、調整電圧が加えられず、ユーザに警告もしない。しかし、エラーが所定の量より大きい場合は、ユーザは状態に関する警告を受ける。
【0034】
補正制限の別の例としては、補償抵抗Rcompや調整電圧Vadjの値の範囲に制限値を設定する最大値や最小値を選択するものがある。例としては、いくつかの実施形態では、Rcompの値をリフレッシュ又は更新し、Rcompの計算値がゼロ未満又は2オームより大きい場合に、補正制限違反が発生するとしても良い。別の例では、Rcompの使用の有無にかかわらず、調整電圧が1ボルトより大きい場合に、補正制限違反が発生するとしても良い。ユーザ又は装置メーカーは、必要に応じて、任意の数の補正限界パラメータを設定しても良い。例えば、いくつかの実施形態では、ユーザが、電源装置内に所望の補正制限範囲を構成しても良い。別の例では、補正制限範囲が、電源装置の製造中に設定される。また、信号源の設計又は製造中に設定されたいくつかの範囲内でのみ、ユーザが制限を設定することが許容されるようにすることも可能である。
【0035】
また、
図3では、工程306が工程304後に発生することを示しているが、実施例によっては、工程306が工程304の前にあって、調整電圧が決定される前に、補正制限違反がチェックされても良い。もし違反が発生すると、警告(アラート)が生成され、調整電圧は決定されない。違反のために調整電圧が決定されなかった場合、第1電圧にゼロの調整(つまり、調整なし)が加えられることも可能で、その後、処理は、工程302に戻り、新たな(別の:another)離散的時点又は周期的な時点において、サンプル電圧をチェックする。その時点(時刻)は、スケジュールに基づいて設定されても良いし、ユーザが指定したり、又は、特定の状況が発生したときに、設定することもできる。
【0036】
本開示技術の例は、DUT108の両端間の電圧を正確に測定できると同時に、信号源の値を周期的又は離散的な時点で補正するためのセンス経路からの情報を利用することによって、信号源を補正することができる。これは、上述したように、ソース・ループがセンス・ループから独立して動作するように行うことができるため、特定の条件下での不安定性やノイズを防ぐことができる。
【0037】
また、本開示技術の例は、信号源に適用される調整量に関する制限又はエラー・チェックが可能である。DUT108から調整するソースに直接検知された電圧を送るのではなく、従来のシステムに関して上述したように、エラー・チェックを行うことができるので、誤った電圧が電圧量の調整に使用されず、接続されたDUT108が損傷する可能性が生じないようにできる。これにより、プローブの位置合わせの問題、端末の誤配線、経路の破損など、センス経路(例えば、センス・リード線)が正しく接続されていない場合の問題を防ぐことができる。
【0038】
また、本開示技術の例は、ローカル(2線式)とリモート(4線)のセンシング方法の間で簡単にモード切り替えができる。本開示技術の例のエラー補正の制限は、信号源エラー、又は、ローカルとリモートのセンシング方法の間の移行中に発生する、その他の問題若しくは誤作動(glitches)を制限することができる。また、どのリモート・センスの調整も、ローカルからリモートのセンス・ポイントに制御を完全に移行させるのではなく、独特なVadjの項を組み込むことによって実現されるため、ローカル・センスの場合は、単純に、Vadj又はRcompが装置内の既知のパラメータに基づいて固定又は設定され、場合によっては、ゼロに設定されることもあるという特別な条件を表している。
【0039】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0040】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0041】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Versatile Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0042】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
実施例
【0043】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0044】
実施例1は、電源装置(電圧ソース・ユニット)あって、第1電圧を出力するように構成された第1電圧源と、第1電圧源を被試験デバイスに接続するソース経路と、被試験デバイスと電気的に結合されたセンス経路と、被試験デバイスの第2電圧をサンプルし、第1電圧と第2電圧間の電圧差を求め、第1電圧と第2電圧間の電圧差に基づいて第1電圧を調整するように構成された回路とを有している。
【0045】
実施例2は、実施例1の電源装置であって、上記回路が、上記電圧差を受け、この電圧差を補正制限値と比較するように構成された閾値検出回路と、補正制限値に違反していない場合に、上記電圧差に基づいて調整電圧を変更する調整電圧セレクタとを有している。
【0046】
実施例3は、実施例2の電源装置であって、調整電圧が1つ以上の所定値を突破した場合に、補正制限値に違反したとされる。
【0047】
実施例4は、実施例3の電源装置であって、調整電圧が所定の電圧より大きい場合に、補正制限値に違反したとされる。
【0048】
実施例5は、実施例2から4のいずれかの電源装置であって、調整電圧セレクタは、負荷電流と、被試験デバイスを流れる既知の電流及び上記電圧差から求められる抵抗補償値とに基づいて調整電圧を選択するように構成される。
【0049】
実施例6は、実施例5の電源装置であって、ここで、上記電圧差が補正制限値に違反しているか否かを定める際には、抵抗補償値が1つ以上の所定値に違反しているか否かを判断する。
【0050】
実施例7は、実施例1から6のいずれかの電源装置であって、上記回路が、センス経路に結合され、第2電圧の検出値を測定又はスケーリングする電圧検出回路と、サンプリングされた第2電圧を捕捉して一時的に保存するように構成されたサンプル・ホールド回路とを有している。
【0051】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの電源装置であって、上記回路が、第2電圧を離散的な時間間隔で捕捉して一時的に保存するように構成されている。
【0052】
実施例9は、実施例1から8のいずれかの電源装置であって、上記回路が、第2電圧をサンプリングするために、コンデンサを第2電圧に電気的に結合するように構成されたスイッチを有する。
【0053】
実施例10は、実施例1から9のいずれかの電源装置であって、上記回路が、サンプリングされた第2電圧をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ・デジタル・コンバータと、第2電圧を表す上記デジタル信号を記憶するように構成されたメモリと、プロセッサとを有している。
【0054】
実施例11は、実施例1から10のいずれかの電源装置であって、上記回路が、乗算型デジタル・アナログ・コンバータを有している。
【0055】
実施例12は、被試験デバイスの電圧に基づいて、電源装置(ソース・ユニット)を補正する方法であって、第1電圧を生成する処理と、第1電圧を被試験デバイスに伝送する処理と、被試験デバイスの第2電圧をサンプリングする処理と、第1電圧と記憶された第2電圧との間の電圧差を求める処理と、電圧差に基づいて調整電圧を求める処理と、調整電圧に基づいて第1電圧を調整する処理とを具えている。
【0056】
実施例13は、実施例12の方法であって、調整電圧が補正制限に違反している(violate)かどうかを判断する処理と、補正制限に違反していない場合に調整電圧に基づいて第1電圧を調整する処理とを更に具えている。
【0057】
実施例14は、実施例13の方法であって、調整電圧が補正制限に違反しているかどうかを判断する処理が、調整電圧が1つ以上の所定値を突破している(violate)かどうかを判断する処理を有する。
【0058】
実施例15は、実施例14の方法であって、調整電圧が所定の電圧より大きい場合に、補正制限値に違反したとされる。
【0059】
実施例16は、実施例12から15のいずれかの方法であって、調整電圧は、負荷電流と、被試験デバイスを流れる既知の電流及び上記電圧差から求められる抵抗補償値とに基づいて決定される。
【0060】
実施例17は、実施例12から16のいずれかの方法であって、調整電圧が補正制限に違反しているかどうかを判定する処理は、抵抗補償が1つ以上の所定値に違反しているかどうかを判断判定する処理を有する。
【0061】
実施例18は、実施例12から17のいずれかの方法であって、被試験デバイスの第2電圧をサンプリングする処理が、第2電圧にコンデンサを電気的に結合するスイッチを動作させる処理を有する。
【0062】
実施例19は、実施例12から18のいずれかの方法であって、第2電圧を第2電圧を表すデジタル信号に変換する処理と、第2電圧を表すデジタル信号を記憶する処理と、第2電圧を表す記憶されたデジタル信号に基づいて周期的に調整電圧を決定する処理とを更に具えている。
【0063】
実施例20は、実施例12から19のいずれかの方法であって、第2電圧を一時的に記憶する処理を更に具えている。
【0064】
実施例21は、コンピュータ・プログラムであって、電源装置(ソース・ユニット)の1つ以上のプロセッサによって実行されると、電源装置が、第1電圧を生成する処理と、第1電圧を生成する処理と、第1電圧に基づいて被試験デバイスにおける第2電圧をサンプリングする処理と、第1電圧と記憶された第2電圧の間の電圧差を決定する処理と、電圧差に基づいて調整電圧を決定する処理と、調整電圧に基づいて第1電圧を調整する処理とを実行する命令を含んでいる。
【0065】
実施例22は、実施例21のコンピュータ・プログラムであって、電源装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、電源装置が、調整電圧が補正制限に違反しているかどうかを判断する処理と、補正制限に違反していない場合には調整電圧に基づいて第1電圧を調整する処理とを更に実行する命令を含んでいる。
【0066】
実施例23は、実施例21のコンピュータ・プログラムであって、調整電圧が補正制限に違反しているかどうかを判断する処理が、調整電圧が1つ以上の所定値に違反しているかどうかを判断する処理を有している。
【0067】
実施例24は、実施例21から23のいずれかのコンピュータ・プログラムであって、調整電圧は、負荷電流と、被試験デバイスを流れる既知の電流及び上記電圧差から求められる抵抗補償値とに基づいて決定される。
【0068】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0069】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書、特許請求の範囲、要約及び図面に開示される全ての特徴と、開示される全ての方法又は処理における全ての工程は、互いに少なくとも一部分が排他的でない限り、任意に組み合わせても良い。本明細書、特許請求の範囲、要約及び図面に開示される特徴の夫々は、特に明記されていない限り、同じ、等価又は類似の目的に寄与する代替の特徴で置き換えても良い。
【0070】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0071】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0072】
100 公称電圧源
102 調整電圧源
104 ソース経路
106 ソース経路
108 負荷(被試験デバイス)
110 抵抗
112 抵抗
114 センス経路
116 センス経路
117 電圧発生回路
118 コンデンサ
120 スイッチ
200 メモリ
202 アナログ・デジタル・コンバータ
204 プロセッサ