(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171510
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】屋外水耕栽培用カバー
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20221104BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20221104BHJP
【FI】
A01G31/00 617
A01G31/00 611Z
A01G9/02 103W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021099757
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】519147289
【氏名又は名称】株式会社岡建産
(72)【発明者】
【氏名】岡 謙二
【テーマコード(参考)】
2B314
2B327
【Fターム(参考)】
2B314NA18
2B314NA25
2B314NA29
2B314NC21
2B314NC55
2B314ND19
2B314PD16
2B314PD19
2B314PD27
2B314PD31
2B327NC24
2B327NC39
2B327NC54
2B327ND15
2B327UB02
2B327UB11
2B327VA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】植物の成長に伴い茎の大きさが変わっても、常に植物の茎を傷つけずに密着し続けることができ、雨水や日光から養液を保護し、1年以上の長期間、水耕栽培用カバーの交換等の手間をかけず使用し続けられる、水耕栽培用カバーを提供する。
【解決手段】本発明の水耕栽培用カバーは、シート材である第一部材10aと、紐材である第二部材10bで構成され、栽培している植物の茎Cと水耕栽培用容器との間にできる間隙を第一部材10aが空気の循環を邪魔せずに覆い、可撓性のある第二部材10bが縛ることによって植物の茎Cと第一部材10aを密着させ、植物の成長に応じて茎Cの太さが変化しても植物を傷つけず、植物の根および養液を長期間保護できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培により栽培されている植物の茎と、水耕栽培用容器との間にできる間隙を、覆うカバーであって、
耐水性および遮光性を有し、栽培する植物の茎と、水耕栽培用容器との間にある間隙を、十分に覆う大きさを有し、その中心から外延部に亘って延びる切欠又は切断線を有するシート材である第一部材と、
屋外耐候性および可撓性を有する紐材である第二部材と、を備え、
前記シート材である第一部材は、水耕栽培する植物の茎に巻き付けた上で、前記紐材である第二部材を用いて結ばれ、水耕栽培されている植物の茎と水耕栽培用容器との間にできる間隙を覆う傘を形成し、
第二部材が可撓性を有することによって、植物の成長に応じて茎の太さが変化しても植物を傷つけずに、植物の根および養液を保護できる、水耕栽培用カバー。
【請求項2】
請求項1の前記第一部材が有する中心から外延部に亘って延びる切欠又は切断線に対して垂直かつ第一部材の中心を挟むようにして対に第二部材が通すための孔にそれぞれなるように第一部材同士が粘着手段によって仮止めされており、
植物に巻き付ける前に、前記の第一部材が有する両方の孔に第二部材がそれぞれ通してあることによって、より簡易に結び付けることができるようにしつつ、茎とカバーとの密着を妨げないようにした水耕栽培用カバー。
【請求項3】
請求項1の水耕栽培用カバーにおける第一部材と、水耕栽培用容器と、の間に間隙ができるように接着手段を用いて配置し、
水耕栽培用容器内と外部の温度差、および自然風によって、水耕栽培用容器内の空気循環を可能にした水耕栽培用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培における、屋外水耕栽培用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜等の植物の栽培方法には、天然の環境と土壌で栽培する露地栽培と、栽培環境を制御し、成長に必要な養分を養液として植物に供給することで植物を栽培する養液栽培がある。養液栽培でも、土壌を用いらない方法は、水耕栽培と呼ばれている。水耕栽培は、栽培環境を最適化するため、植物の成長に必要な養分を供給するだけでなく、光、不要物の除去、養液濃度等を調整することで、環境の変化や季節に関係なく、植物の生産が可能になるという利点を有する。水耕栽培はビニールハウスで行われるなどの屋内で行われることが多いが、屋内の栽培環境を常に最適な条件に制御しつつ植物の栽培を行うと、手間やコストがかかり、採算が取れないことが多い。より低コストで採算を取れるようにすることが水耕栽培の課題であり、制御コストを抑えるため、日光が利用できる屋外での水耕栽培も望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1では、屋外耐候性および可撓性を有したシート材を含む水耕栽培用カバーが開示されている。特許文献1の水耕栽培用カバーは、植物の根圏を遮光し、根圏に雨水や土が入らず、なおかつ設置する際に植物を傷つけずにカバーが交換しやすいよう工夫されている。このように、特に屋根等を有さない屋外における水耕栽培では、循環する養液が著しく変化させないため、水耕栽培用容器と植物自体の間隙を減らし、雨水の侵入およびそれに伴う養液濃度の変動、日光の侵入およびそれに伴う藻の繁殖等、を防ぐことが望まれている。加えて、前記にも述べた通り、屋外における水耕栽培では、より低コストで実現されることも望まれている。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の水耕栽培用カバーは、雨水や土、日光が根圏に入り込まないよう、交換しやすい水耕栽培用カバーが用いられているが、植物の成長に応じて、茎の太さも変化するため、水耕栽培用カバーを交換する手間や労力がかかる問題がある。また、特許文献1の水耕栽培用カバーが植物の茎よりも大きいため、水耕栽培用カバーと植物が密着しておらず、茎を伝って落ちてくる雨水が侵入した場合、養液が十分に保護できているとは言えず、養液の濃度が変化してしまう。また養液を保護しようと水耕栽培容器内の空気を密閉すると、根が窒息してしまうので、雨が入らないようにしながらも、空気の出入り口が必要である。更にコスト面においても十分な検討がなされていなかった。
【0006】
特許文献1に記載されているいずれの水耕栽培用カバーでも、屋外耐候性と可撓性を持ち合わせるシート材をカバーの主材としており、またカバーの形状が複雑であり、特に特許文献1の第二次形態のカバー材は、水耕栽培用容器に取り付けられるよう成型しているため、その成型のためにコストがかかることが想定される。
【0007】
本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、水耕栽培用容器と、植物の茎との間にできる間隙を低コストで覆い、可撓性を有する紐材で縛ることによって、植物の成長に伴い茎の大きさが変わっても、常に植物の茎を傷つけずに密着し続けることができ、雨水や日光から養液を保護し、1年以上の長期間、水耕栽培用カバーの交換等の手間をかけず使用し続けられる、水耕栽培用カバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水耕栽培用カバーは、水耕栽培用容器と茎の隙間を覆う水耕栽培用カバーであって、耐水性および遮光性を有するシート材である第一部材を含み、水耕栽培用容器と、水耕栽培している植物の茎との間にできる間隙よりも大きい面積を有し、その中心から外延部に亘って延びる切欠又は切断線を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の水耕栽培用カバーでは、前記第一部材とは別に、屋外耐候性と可撓性を有する紐材である第二部材を含み、第二部材は、前記第一部材と、植物の茎と、を結び付けて隙間なく密着させることを特徴とする。
【0010】
本発明の水耕栽培用カバーでは、中心から外延部に亘って延びる切欠又は切断線に対して垂直かつ第一部材の中心を挟むようにして対に第二部材が通すための孔にそれぞれなるように第一部材同士が粘着手段によって仮止めしてもよい。また、本発明の水耕栽培カバーを植物に取り付ける前に、あらかじめ第二部材を前記の第一部材の孔に通すことで、設置自体を簡易にしてもよい。
【0011】
本発明の水耕栽培用カバーでは、第一部材が風等に影響される場合は、第一部材のシート材同士、あるいは第一部材のシート材と水耕栽培用容器を接着手段で固定してもよいが、間隙ができるように配置してもよい。
第一部材のシート材は、複数色および複数枚重ねて用いてもよい。
【0012】
本発明の水耕栽培用カバーは、屋内栽培に用いてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、水耕栽培用容器と、植物の茎との間にできる間隙を低コストで覆い、可撓性の有する紐材で縛ることによって、植物の成長に伴い茎の大きさが変わっても植物を傷つけずにシート材を密着させ続け、雨水の侵入およびそれに伴う養液濃度の変動、日光の侵入およびそれに伴う藻の繁殖、を防いで保護し、水耕栽培用カバーの交換等の手間をかけずに1年以上の長期間使用し続けられる効果を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の水耕栽培用カバーの使用を想定している水耕栽培用容器の一部を示した側断面図である。
【
図2】本発明に係る水耕栽培用カバーの第一部材であり、第二部材を結び付ける前の一例の平面図である。
【
図3】本発明に係る水耕栽培用カバーの第一部材と、植物の茎と、を第二部材によって結び付けた時の一例の平面図である。
【
図4】本発明に係る水耕栽培用カバーの第一部材であり、第一部材が外延部に亘って延びる切欠又は切断線に対して垂直かつ第一部材の中心を挟むようにして対に第二部材が通すための孔にそれぞれなるよう第一部材同士が粘着手段によって仮止めされ、第二部材をあらかじめ孔に通して、茎と結び付ける前の一例の平面図である。
【
図5】本発明に係る水耕栽培用カバーの第一部材と、水耕栽培用容器と、の間に間隙ができるように配置した時の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る水耕栽培用カバーについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、模式的なものである。図面中の各要素の長さ、幅、及び厚みの比例等のものと同一とは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されない。以下で説明する内容は、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更可能である。
【0016】
第一部材であるシート材10aは、厚みについて特に制限はないが、例えば、シート材10aの厚みは、0.3mm~0.01mmが好ましい。シート材と茎が隙間なく密着でき、また耐久性を十分に保持できる。尚、シート材10aは、複数枚重ねて構成してもよく、また第二部材である紐材によって結んで縛るために、孔をあけてもよい。また、風等による影響で、シート材10aがめくれる場合は、10b以外に加えてさらに接着手段を用いて、10aのシート材同士または10aと水耕栽培用容器を、接着あるいは固定することは当然可能である。
【0017】
茎Cにカバー10を簡易に取付けるため、
図4のように、第一部材であるシート材10aが有する中心から外延部に亘って延びる切欠又は切断線30に対して垂直かつ第一部材10aの中心を挟むようにして対に第二部材10bが通すための孔32にそれぞれなるように第一部材同士が粘着手段34によって仮止めしてもよい。
この仮止めに用いる粘着手段34は、第二部材10bを固定しなければ第二部材10bに触れても構わず、また茎Cと第一部材10aとを第二部材10bが結び付ける際に取り除いてもよい。この粘着手段34に特に指定はないが、例えば、両面テープのように固定をしつつも簡易に除けるものが好ましい。紐材10bは、シート材10aの中途部を十分に挟むようにしなければ傘として役割を果たせないため、シート材10aが外れないように固定したほうが取り付けやすい。しかし、紐材10bによって結び付けて縛って、茎Cとシート材10aを密着させるが、固定した部分が密着の妨げとなりやすいので、取付け時に簡易に粘着剤を除けた方が好ましい。
粘着手段34を用いる位置は、結び付けいく際にシート材10aが重なり合う部分を避けるため、中心から外延部に亘って延びる切欠又は切断線30の左右ではないほうが好ましく、また、紐材10bがゆるやかなU字になって紐材10bの両先端が手前に来るようにするため、孔34の向きは、中心から外延部に亘って延びる切欠又は切断線30に対して垂直にならない方が好ましい。植物に巻き付ける前に紐材10bが手前に来るようにしておくことで、葉等で隠れにくくなり、結び付けやすくなる。
【0018】
第一部材であるシート材10aの大きさは、茎Cと水耕栽培用容器20との間にできる間隙20eを十分に覆う大きさを有するが、例えば、水耕栽培用容器20がポリ塩化ビニル管を用いている場合は、その容器の下部にまで届く大きさを有することで、雨が溜まりにくいようにしてもよい。
また、空気を循環させやすくするため、シート材10aと水耕栽培用容器20に接着手段を用いる際に、密着させず、間隙を有するように配置することで、空気の循環ができるようにしてもよい。例えば、シート材10aの一部を引き寄せあうように接着手段を用いて配置することでひだを作り、
図7のように開口部22eを複数作成してもよい。屋外栽培であれば風の出入り口となり、水耕栽培用容器内にある根が接する空気が入れ替わり、根が窒息しづらくなる。
【0019】
第一部材であるシート材10aの素材は、耐水性および遮光性を有していれば、特に制限されない。第一部材10aの好ましい素材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンである。
尚、本発明において「耐水性」を有するとは、屋外での雨を防ぎ、具体的には、昇圧速度60cm/minまたは10cm/minで試験片に水圧をかけていき、水滴が3滴出水した時点の水圧が2000mm以上であるものと定義する。
また、本発明において「遮光性」を有する目的は、日光の侵入および養液に藻が繋殖するのを防ぐためである。
【0020】
また、紐材10bの直径については特に制限はないが、例えば、紐材10bの直径は、3mm~0.3mmであることが好ましく、2mm~0.8mmであることがより好ましく、さらに2mm~1mmであることがさらに好ましい。紐材2の直径が上記上限以下であれば、結び目が小さくなり茎とシート材10aの間隙を減らして、雨水の侵入を防ぐのに有利になり、上記下限以上であれば1年における栽培の耐久性を十分に確保できる。
また紐材10bの長さに関して特に制限はなく、栽培する栽培する植物の種類と使用する紐材10bの直径に応じて適宜決定することができる。例えば、直径0.3mmであれば、植物の茎を4周させて結ぶことが好ましく、直径3mmであれば、植物の茎に2周させて結ぶことが好ましい。紐材10bを適宜周回巻き付けておくことによって、植物が成長しても痛めつけずに、シート材10aを密着し続けることができる。
紐材10bによる結ぶ箇所は、必ずしも一箇所だけでなくてもよい。
【0021】
紐材10bの素材は、屋外耐候性及び可撓性を有していれば、特に制限されない。紐材10bの素材は、例えばシリコンゴムやフッ素ゴムである。紐材10bが前述のゴム材から構成される場合、ゴム硬度に特に制限はないが、例えば、ゴム硬度が、デュロメータ タイプAの50~60度が好ましい。製造が容易で低コストであり、結ぶことが容易でありながら、尚且つ植物を傷つけずにその成長に応じて伸縮できる。常に茎Cとカバー10を密着させることで、雨による養液濃度の変動を防ぐことができる。
尚、本発明において「屋外耐候性」を有するとは、屋外で使用された場合、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質であり、具体的には、例えば以下の方法により屋外耐候性を評価する。放射照度255W/m2(300~700nm)、シャワーリング120分中18分間、ブラックパネル温度63±3℃、屋外用ガラスフィルター使用、槽内温度23℃、湿度50%の試験条件にてJIS K 7350に準拠したオープンフレームカーボンアークランプ(サンシャインカーボンアークランプ)照射を実施する。オープンカーボンアークランプの照射開始から1500時間経過後の管材について1/2偏平試験を行った結果、割れやヒビがなければ、「屋外耐候性」を有する。照射するランプが、キセノンアークランプの場合、試験条件を放射照度60W/m2(300~400nm)、シャワーリングは120分中18分間、ブラックパネル温度63±3℃、屋外用ガラスフィルターを使用、槽内温度23℃、湿度50%としてもよい。
【産業上の利用の可能性】
【0022】
本発明は、水耕栽培に関する分野で広く利用可能であり、特に屋根のない屋外におけるより安価な水耕栽培に貢献できる。また、本発明に係る水耕栽培用カバーは、茎と栽培用容器との間にできる間隙を覆い、可撓性のある紐材で結ぶことによって、植物の成長に応じて茎の太さが変化しても、植物の茎を傷つけずシート材を密着させ続け、雨水の侵入およびそれに伴う養液濃度の変化を防ぐ、日光の侵入および藻の繋殖を防ぐといった養液や根の保護の役割を果たせる。水耕栽培用カバーの交換等の手間をかけず1年以上の長期間使用し続けられる、水耕栽培用カバーを提供できる。
【符号の説明】
10 水耕栽培用カバー
10a 水耕栽培用カバーの第一部材
10b 水耕栽培用カバーの第二部材
20 水耕栽培用容器
20e 水耕栽培用容器と、植物の茎との間にできる間隙
22e 水耕栽培用容器と、第一部材との間にできる間隙
30 第一部材が有する、中心から外延部に亘って延びる切欠又は切断線
32 第一部材のシート材が有する、第二部材を通す孔
34 粘着手段
50 接着手段の一例としてのテープ
P 植物
W 養液