(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171515
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ディファレンシャルのロック構造
(51)【国際特許分類】
B60K 23/04 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
B60K23/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115793
(22)【出願日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】202110480211.X
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】余 平
(72)【発明者】
【氏名】曹 ▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】李 建文
【テーマコード(参考)】
3D036
【Fターム(参考)】
3D036GC01
3D036GD08
3D036GF10
3D036GH03
3D036GH05
3D036GJ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた安定性、高い制御性、及び長い耐用寿命を有するディファレンシャルのロック構造を提供する。
【解決手段】ディファレンシャルのロック構造は、ディファレンシャルの一方側の出力アクスルシャフトに外装された電磁クラッチを含み、電磁クラッチは、可動ロックディスクと固定ロックディスクとを含み、固定ロックディスクがディファレンシャルハウジングに固定接続されており、可動ロックディスク及び固定ロックディスクには、互いに噛合可能な可動端面歯及び固定端面歯がそれぞれ設けられており、可動ロックディスクが、出力アクスルシャフトに軸方向にのみ摺動可能に外装されており、電磁クラッチが通電されると、可動ロックディスクが軸方向に移動するように駆動され、可動端面歯と固定端面歯とが噛み合う構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディファレンシャルのロック構造であって、
前記ディファレンシャルの一方側の出力アクスルシャフトに外装された電磁クラッチを含み、
前記電磁クラッチは、可動ロックディスクと固定ロックディスクとを含み、前記固定ロックディスクがディファレンシャルハウジングに固定接続されており、前記可動ロックディスク及び前記固定ロックディスクには、互いに噛合可能な可動端面歯及び固定端面歯がそれぞれ設けられており、
前記可動ロックディスクが、前記出力アクスルシャフトに軸方向にのみ摺動可能に外装されており、前記電磁クラッチが通電されると、前記可動ロックディスクが軸方向に移動するように駆動され、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが噛み合うことによって、前記出力アクスルシャフトと前記ディファレンシャルハウジングとがロックされ、前記ディファレンシャルの両側の出力アクスルシャフトと前記ディファレンシャルハウジングとの同じ回転速度の確保が実現される
ことを特徴とするディファレンシャルのロック構造。
【請求項2】
前記出力アクスルシャフトに雄スプラインが設けられ、前記可動ロックディスクには、前記雄スプラインに合わせた雌スプラインが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のロック構造。
【請求項3】
前記電磁クラッチは、自己保持型電磁クラッチであり、前記自己保持型クラッチは、それぞれ弾性部材又は磁性鋼によって自己保持し、分離状態及び係合状態を保持する時には、通電される必要がなく、
前記自己保持型電磁クラッチは、
前記自己保持型電磁クラッチが係合状態にある時、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが分離状態にあり、ディファレンシャルが正常に作動し、電磁クラッチが逆方向通電されて分離状態にある時、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが噛み合い、前記出力アクスルシャフトと前記ディファレンシャルハウジングとがロックされ、又は、
前記自己保持型電磁クラッチが分離状態にある時、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが分離状態にあり、ディファレンシャルが正常に作動し、電磁クラッチが逆方向通電されて係合状態にある時、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが噛み合い、前記出力アクスルシャフトと前記ディファレンシャルハウジングとがロックされるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のロック構造。
【請求項4】
前記ロック構造は、前記可動ロックディスクの外側に設けられ、前記可動ロックディスクの位置を感知し、前記電磁クラッチの状態を監視するための位置センサをさらに含む
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のロック構造。
【請求項5】
前記電磁クラッチは、アーマチュアディスク、磁気ヨーク、及び弾性部材をさらに含み、
前記アーマチュアディスクには、いくつかの磁性鋼が設けられ、前記磁気ヨークには、いくつかの鉄心が設けられ、各前記鉄心にコイルが設けられており、前記アーマチュアディスクが前記磁気ヨークと対応して設けられ、前記鉄心が前記磁性鋼と対応して設けられており、前記弾性部材は、前記アーマチュアディスクを前記磁気ヨークとの分離位置又は係合位置にあるように保持するために、前記アーマチュアディスクと前記磁気ヨークとの間に設けられており、
前記可動ロックディスクの外周にベアリングが固定的に外装され、前記アーマチュアディスクは、前記ベアリングの外周に固定的に外装されている
ことを特徴とする請求項4に記載のロック構造。
【請求項6】
前記鉄心及び前記磁性鋼は、個別又は組み合わせの形で存在し、
各前記コイルの間は、並列、直列、又は、グループ化された直列および並列の形で接続される
ことを特徴とする請求項5に記載のロック構造。
【請求項7】
前記磁気ヨーク内には、複数の前記鉄心が均等に分布しており、前記鉄心は、その数が前記磁性鋼の数と同じであり、且つ両者の位置が1対1で対応しており、対応する各前記鉄心と前記磁性鋼とが同じ軸線上にある
ことを特徴とする請求項5に記載のロック構造。
【請求項8】
前記磁性鋼の頂端面は、矩形、正方形、三角形又は円形であり、
前記アーマチュアディスクに磁性鋼溝が設けられており、前記磁性鋼は、ポッティング又は射出成形の方式によって前記磁性鋼溝内に固定されている
ことを特徴とする請求項5に記載のロック構造。
【請求項9】
前記磁気ヨークに衝撃吸収パッドが設けられており、前記衝撃吸収パッドは、前記アーマチュアディスクと前記磁気ヨークとの間の隙間が保持されるように位置決めするためのものであり、前記衝撃吸収パッドは、衝撃吸収及び騒音低減にも使用される
ことを特徴とする請求項5に記載のロック構造。
【請求項10】
前記固定ロックディスクと前記ディファレンシャルハウジングとの間は、ネジ又はボルトを介して固定接続され、又は、
前記固定ロックディスクと前記ディファレンシャルハウジングとが一体的に製造されている
ことを特徴とする請求項1に記載のロック構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディファレンシャルの技術分野に属し、特に、ディファレンシャルのロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のディファレンシャルは、左右(又は前後)の駆動輪を異なる回転速度で回転させる機構であり、主に、左右のアクスルシャフトギア、2つの遊星歯車、及びギアキャリアで構成されている。その機能は、自動車が旋回走行したり、不整地を走行したりするときに、左右の車輪を異なる回転速度で転がらせ、即ち、両側の駆動輪の純転がり運動を保証することである。自動車が泥だらけの道路や非常に悪い道路条件に遭遇したとき、一方側のタイヤがスリップし、他方側のタイヤが回転しなくなるという問題は発生するが、ディファレンシャルの作動原理により、ディファレンシャルの両側のアクスルシャフトに等量のトルクが配分されるため、自動車は苦境から抜け出すための十分な牽引力を持たなくなる。
【発明の概要】
【0003】
上記課題に対して、本発明は、上記問題を解消するか、又は少なくともその一部を解決するためのディファレンシャルのロック構造を開示する。
【0004】
上記目的を達成するために、本発明には、以下の技術案が用いられている。
【0005】
本発明には、ディファレンシャルのロック構造が開示されており、前記ロック構造は、前記ディファレンシャルの一方側の出力アクスルシャフトに外装された電磁クラッチを含み、
前記電磁クラッチは、可動ロックディスクと固定ロックディスクとを含み、前記固定ロックディスクがディファレンシャルハウジングに固定接続されており、前記可動ロックディスク及び前記固定ロックディスクには、互いに噛合可能な可動端面歯及び固定端面歯がそれぞれ設けられており、
前記可動ロックディスクが、前記出力アクスルシャフトに軸方向にのみ摺動可能に外装されており、前記電磁クラッチが通電されると、前記可動ロックディスクが軸方向に移動するように駆動され、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが噛み合うことによって、前記出力アクスルシャフトと前記ディファレンシャルハウジングとがロックされ、前記ディファレンシャルの両側の出力アクスルシャフトと前記ディファレンシャルハウジングとの同じ回転速度の確保が実現される。
【0006】
また、前記出力アクスルシャフトに雄スプラインが設けられ、前記可動ロックディスクには、前記雄スプラインに合わせた雌スプラインが設けられているようにしてもよい。
【0007】
また、前記電磁クラッチは、自己保持型電磁クラッチであり、前記自己保持型クラッチは、それぞれ弾性部材又は磁性鋼によって自己保持し、分離状態及び係合状態を保持する時には、通電される必要がなく、
前記自己保持型電磁クラッチは、
前記自己保持型電磁クラッチが係合状態にある時、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが分離状態にあり、ディファレンシャルが正常に作動し、電磁クラッチが逆方向通電されて分離状態にある時、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが噛み合い、前記出力アクスルシャフトと前記ディファレンシャルハウジングとがロックされ、又は、
前記自己保持型電磁クラッチが分離状態にある時、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが分離状態にあり、ディファレンシャルが正常に作動し、電磁クラッチが逆方向通電されて係合状態にある時、前記可動端面歯と前記固定端面歯とが噛み合い、前記出力アクスルシャフトと前記ディファレンシャルハウジングとがロックされるように構成されているようにしてもよい。
【0008】
また、前記ロック構造は、前記可動ロックディスクの外側に設けられ、前記可動ロックディスクの位置を感知し、前記電磁クラッチの状態を監視するための位置センサをさらに含むようにしてもよい。
【0009】
また、前記電磁クラッチは、アーマチュアディスク、磁気ヨーク、及び弾性部材をさらに含み、
前記アーマチュアディスクには、いくつかの磁性鋼が設けられ、前記磁気ヨークには、いくつかの鉄心が設けられ、各前記鉄心にコイルが設けられており、前記アーマチュアディスクが前記磁気ヨークと対応して設けられ、前記鉄心が前記磁性鋼と対応して設けられており、前記弾性部材は、前記アーマチュアディスクを前記磁気ヨークとの分離位置又は係合位置にあるように保持するために、前記アーマチュアディスクと前記磁気ヨークとの間に設けられており、
前記可動ロックディスクの外周にベアリングが固定的に外装され、前記アーマチュアディスクは、前記ベアリングの外周に固定的に外装されているようにしてもよい。
【0010】
また、前記鉄心及び前記磁性鋼は、個別又は組み合わせの形で存在し、
各前記コイルの間は、並列、直列、又は、グループ化された直列および並列の形で接続されているようにしてもよい。
【0011】
また、前記磁気ヨーク内には、複数の前記鉄心が均等に分布しており、前記鉄心は、その数が前記磁性鋼の数と同じであり、且つ両者の位置が1対1で対応しており、対応する各前記鉄心と前記磁性鋼とが同じ軸線上にあるようにしてもよい。
【0012】
また、前記磁性鋼の頂端面は、矩形、正方形、三角形又は円形であり、
前記アーマチュアディスクに磁性鋼溝が設けられており、前記磁性鋼は、ポッティング又は射出成形の方式によって前記磁性鋼溝内に固定されているようにしてもよい。
【0013】
また、前記磁気ヨークに衝撃吸収パッドが設けられており、前記衝撃吸収パッドは、前記アーマチュアディスクと前記磁気ヨークとの間の隙間が保持されるように位置決めするためのものであり、前記衝撃吸収パッドは、衝撃吸収及び騒音低減にも使用されるようにしてもよい。
【0014】
また、前記固定ロックディスクと前記ディファレンシャルハウジングとの間は、ネジ又はボルトを介して固定接続され、又は、
前記固定ロックディスクと前記ディファレンシャルハウジングとが一体的に製造されているようにしてもよい。
【0015】
本発明の利点及び有益な効果は、次の通りである。
【0016】
本発明のロック構造では、ディファレンシャルの一方側の出力アクスルシャフトに電磁クラッチが外装され、当該電磁クラッチが、出力アクスルシャフトに軸方向にのみ摺動可能な可動ロックディスクと、ディファレンシャルハウジングに固定接続された固定ロックディスクとを含み、電磁クラッチが通電されると、可動ロックディスクが軸方向に移動するように駆動され、可動ロックディスクにおける可動端面歯と固定ロックディスクにおける固定端面歯とが噛み合うことによって、出力アクスルシャフトとディファレンシャルハウジングとがロックされ、ひいては、ディファレンシャルの両側の出力アクスルシャフトとディファレンシャルハウジングとの同じ回転速度の確保が実現されるため、当該ロック構造は、優れた安定性、高い制御性、及び長い耐用寿命という利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、様々な他の利点及びメリットが当業者にとって明らかになる。図面は、好ましい実施形態を例示するためのものだけであり、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。また、図面全体において、同じ部品には同じ参照符号が付されている。図面において、
【
図1】
図1は、本発明の一つの実施例におけるディファレンシャルのロック構造の軸方向断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施例における別のディファレンシャルのロック構造の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、本発明の具体的な実施例及び対応する図面と併せて、本発明の技術案を明確かつ完全に説明する。明らかなことに、記載された実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の各実施例による技術案を詳しく説明する。
【0020】
本発明の一つの実施例には、ディファレンシャルのロック構造が開示されており、
図1~2に示すように、当該ロック構造は、電磁クラッチを含み、当該電磁クラッチが特定のタイプに限られない。また、当該電磁クラッチは、ディファレンシャルの一方側の出力アクスルシャフト1に外装されており、当該出力アクスルシャフトは、左側出力アクスルシャフトであってもよいし、右側出力アクスルシャフトであってもよく、左側出力アクスルシャフト及び右側出力アクスルシャフトは、それぞれ、自動車の左右のタイヤに接続されることが可能である。
【0021】
そのうち、ディファレンシャルは、ディファレンシャルハウジング4と、ディファレンシャルハウジング4内に設けられた2つの遊星歯車16及び2つのアクスルシャフトギア18とを含み、2つの遊星歯車16が、遊星歯車軸17に外装され、2つのアクスルシャフトギア18がそれぞれ、2つの出力アクスルシャフト1に外装されており、遊星歯車16とアクスルシャフトギア18とは、互いに噛み合う。
【0022】
具体的に、電磁クラッチは、可動ロックディスク2と固定ロックディスク3とを含み、固定ロックディスク3が隙間ばめで出力アクスルシャフト1に外装されているとともに、ディファレンシャルハウジング4に固定接続されており、可動ロックディスク2及び固定ロックディスク3には、互いに噛合可能な可動端面歯5及び固定端面歯6がそれぞれ設けられている。
【0023】
可動ロックディスク2は、出力アクスルシャフト1に軸方向にのみ摺動可能に外装されているとともに、当該出力アクスルシャフト1と同期して回転可能であり、そして、電磁クラッチの電磁吸引部分が通電されると、可動ロックディスク2が出力アクスルシャフト1に沿って軸方向に移動するように駆動され、可動端面歯5と固定端面歯6とが噛み合うことによって、出力アクスルシャフト1とディファレンシャルハウジング4とがロックされ、ディファレンシャルの両側の出力アクスルシャフト1とディファレンシャルハウジング4との同じ回転速度の確保が実現される。
【0024】
さらに、ディファレンシャルの一方側の出力アクスルシャフト1とディファレンシャルハウジング4とがロックされると、当該出力アクスルシャフト1が遊星歯車軸17と相対的に静止し、遊星歯車16とアクスルシャフトギア18との噛み合いの作用で、他方側の出力アクスルシャフト1も遊星歯車軸17と相対的に静止し、ひいては、2つの出力アクスルシャフト1の同じ回転速度の確保が実現される。
【0025】
以上をまとめて、本実施のロック構造は、電磁クラッチへの通電により、可動ロックディスク2における可動端面歯5と固定ロックディスク3における固定端面歯6とが噛み合い、出力アクスルシャフト1とディファレンシャルハウジング4との相対的な固定が実現され、可動ロックディスク2が軸方向に移動する時に、及び固定ロックディスク3と噛み合って固定される時に、均一に力を受けることができ、特に、可動ロックディスク2及び固定ロックディスク3がディファレンシャルハウジング4に連れられて高速で回転する場合、当該ロック構造は、より安定となり、耐用寿命がより長くなる。
【0026】
また、当該ロック構造は、電磁クラッチへの通電と非通電によって制御されるため、高い制御性を有する。
【0027】
一つの好ましい実施形態において、
図1~2に示すように、出力アクスルシャフト1に雄スプライン7が設けられ、可動ロックディスク2には、雄スプライン7に合わせた雌スプラインが設けられている。そのうち、出力アクスルシャフト1における雄スプライン7は、凸状の雄スプラインであってもよいし、凹状の雄スプラインであってもよい。雄スプライン7が凹状の雄スプラインである場合、出力アクスルシャフト1の一端が細いため、可動ロックディスク2が当該雄スプライン7に外装され易くなり、その結果、同期回転の接続がより安定になる。
【0028】
一つの具体的な実施形態において、電磁クラッチは、自己保持型電磁クラッチであることが好ましく、自己保持型電磁クラッチは、双安定機能を有し、それぞれ弾性部材又は磁性鋼によって自己保持し、継続的な通電なしにノーマルオープン/ノーマルクローズとの2つの状態を実現でき、分離状態及び係合状態では、いかなる形のエネルギーを消費する必要もない。
【0029】
前記自己保持型電磁クラッチは、
図1に示すように、自己保持型クラッチが係合状態にある時、可動端面歯5と固定端面歯6とが分離状態にあり、ディファレンシャルが正常に作動し、2つの出力アクスルシャフト1が異なる回転速度を達成可能であり、電磁クラッチが逆方向通電されて分離状態にある時、可動端面歯5と固定端面歯6とが噛み合い、出力アクスルシャフト1とディファレンシャルハウジング4とがロックされ、2つの出力アクスルシャフト1が同じ回転速度になり、
又は、
図2に示すように、自己保持型クラッチが分離状態にある時、可動端面歯5と固定端面歯6とが分離状態にあり、ディファレンシャルが正常に作動し、2つの出力アクスルシャフト1が異なる回転速度を達成可能であり、電磁クラッチが逆方向通電されて係合状態にある時、可動端面歯5と固定端面歯6とが噛み合い、出力アクスルシャフト1とディファレンシャルハウジング4とがロックされ、2つの出力アクスルシャフト1が同じ回転速度になるように構成されている。
【0030】
自己保持型電磁クラッチは、分離状態及び吸引状態では、通電される必要がないため、消費エネルギーが少なく、発熱が少なく、耐用寿命が長い。したがって、本実施例におけるロック構造は、出力アクスルシャフト1とディファレンシャルハウジング4とをロックするときに、消費エネルギーが少なく、安定性が良い。
【0031】
一つの好ましい実施例において、
図1~2に示すように、ロック構造は、可動ロックディスク2の外側に設けられ、可動ロックディスク2の位置を感知し、電磁クラッチの状態を監視するための位置センサ8をさらに含む。仮に電磁クラッチが故障したとしても、位置センサ8によって電磁クラッチの状態を特定できる。位置センサ8は、光電センサであることが好ましく、電磁クラッチのハウジングに設けられてもよい。
【0032】
一つ又はいくつかの実施例において、
図1~2に示すように、自己保持型電磁クラッチは、アーマチュアディスク9、磁気ヨーク10、及び弾性部材11をさらに含み、磁気ヨーク10が電磁クラッチのハウジングと固定接続される。アーマチュアディスク9は、磁気ヨーク10と可動ロックディスク2との間に設けられてもよいし、磁気ヨーク10における可動ロックディスク2から離れた側に設けられてもよい。
【0033】
アーマチュアディスク9には、いくつかの磁性鋼12が設けられ、磁気ヨーク10には、いくつかの鉄心13が設けられ、各鉄心13には、通電時に磁力を発生可能なコイル14が設けられており、そのうち、鉄心13及び磁性鋼12の数は、必要に応じて設定可能である。アーマチュアディスク9が磁気ヨーク10と対応して設けられ、両者の軸心が一つの直線上にあり、鉄心13と磁性鋼12との相互吸引を容易にするように、鉄心13が磁性鋼12と対応して設けられており、弾性部材11は、アーマチュアディスク9を磁気ヨーク10との分離位置又は係合位置にあるように保持するために、アーマチュアディスク9と磁気ヨーク10との間に設けられており、弾性部材11は、その一端がアーマチュアディスク9に接続され、他端が磁気ヨーク10又は電磁クラッチハウジングに接続され、弾性部材11は、スプリング又はスプリングパックであることが好ましい。
【0034】
可動ロックディスク2の外周にベアリング15が固定的に外装され、アーマチュアディスク9がベアリング15の外周に固定的に外装されていることで、アーマチュアディスク9が出力アクスルシャフト1の回動に伴って回転することはない。
【0035】
本実施例において、いくつかの鉄心13が独立して設けられていることで、磁気誘導線が磁性鋼12に対してより集中して高密度になり、電磁変換率がより高くなるようにすることができ、また、同極同士が反発し合い、異極同士が引き寄せ合うという原理によれば、コイル14は、順方向通電される時と、逆方向通電される時とで、電磁力に大きな差があり、その結果、アーマチュアディスク9と磁気ヨーク10との分離又は吸引が実現される。
【0036】
好ましくは、鉄心13及び磁性鋼12は、個別又は組み合わせの形で存在する。鉄心13及び磁性鋼12は、個別の形で均一又は対称的に分布してもよいが、もちろん、鉄心13及び磁性鋼12は、組み合わせた形で均一又は対称的に分布してもよく、例えば、2つを1組として分布したり、3つを1組として三角形を形成したりなどする。
【0037】
各コイル14の間は、並列、直列、又は、グループ化された直列および並列の形で接続される。各コイル14は、直列に接続されてもよいし、並列に接続されてもよく、又は、例えば複数のコイル14を選択して1組に直列してから、直列に接続されたいくつかの組のコイル14を並列に接続するように、直列および並列に接続されてもよい。
【0038】
一つの実施例において、
図1~2に示すように、磁気ヨーク10内には、複数の鉄心13が均等に分布しており、鉄心13は、その数が磁性鋼12の数と同じであり、且つ両者の位置が1対1で対応しており、対応する各鉄心13と磁性鋼12とが同じ軸線上にあり、鉄心13と磁性鋼12とが吸引し合い易くなる。
【0039】
好ましくは、磁性鋼12の頂端面は、矩形、正方形、三角形又は円形であるが、もちろん、他の形状も可能である。
【0040】
アーマチュアディスク9に磁性鋼溝が設けられており、磁性鋼12は、ポッティング又は射出成形の方式によって磁性鋼溝内に固定されているが、もちろん、他の方式によって固定されることも可能である。
【0041】
一つの実施例において、磁気ヨーク10の外周に衝撃吸収パッドが設けられており、衝撃吸収パッドは、複数あってもよく、均一及び/又は対称的に配置可能である。衝撃吸収パッドは、アーマチュアディスク9と磁気ヨーク10との間の隙間が保持されるように位置決めするためのものであり、また、衝撃吸収パッドは、衝撃吸収及び騒音低減にも使用される。衝撃吸収パッドは、アーマチュアディスク9と磁気ヨーク10との吸引時の直接衝撃を回避することができる一方で、電磁クラッチの吸引時にアーマチュアディスク9と磁気ヨーク10との間に一定の隙間を確保し、伝動時に発生する振動を低減することもできる。
【0042】
一つの実施例において、固定ロックディスク3とディファレンシャルハウジング4との間は、ネジ又はボルトを介して固定接続される。
【0043】
一つの好ましい実施例において、
図1~2に示すように、固定ロックディスク3とディファレンシャルハウジング4とが一体的に製造されており、固定ロックディスク3とディファレンシャルハウジング4の強度が高くなるとともに、全体の構造がより簡単になる。
【0044】
上記したのは、あくまでも本発明の具体的な実施形態であり、本発明の上記教示の下で、当業者は、上記実施例に基づいて他の改良又は変形を行うことができる。当業者であれば、上記具体的な記載は本発明の目的をより良く解釈するためのものであり、本発明の保護範囲が特許請求の範囲の保護範囲に基づくものであることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0045】
1 出力アクスルシャフト、2 可動ロックディスク、3 固定ロックディスク、4 ディファレンシャルハウジング、5 可動端面歯、6 固定端面歯、7 雄スプライン、8 位置センサ、9 アーマチュアディスク、10 磁気ヨーク、11 弾性部材、12 磁性鋼、13 鉄心、14 コイル、15 ベアリング、16 遊星歯車、17 遊星歯車軸、18 アクスルシャフトギア。