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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171524
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】基板保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
H01L21/68 P
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021150138
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】横山 雅樹
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA15
5F131EB04
5F131EB72
5F131EB73
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板の吸着を解除するときに、給気流路からの給気によってダストが放出され基板に付着することを抑制できる基板保持装置を提供する。
【解決手段】基板保持装置1は、基板10が載置される保持面21を有する保持部2と、保持部に設けられ、基板を保持面に吸着させるための吸着孔3と、保持部に設けられる吸引流路4及び給気流路5と、を備える。基板の保持面に対する吸着を解除するとき、給気流路から基板に向けて給気し、さらに吸引流路によって吸着孔近傍の空気を吸引する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される保持面を有する保持部と、
前記保持部に設けられ、前記基板を前記保持面に吸着させるための吸着孔と、
前記保持部に設けられる吸引流路及び給気流路と、を備え、
前記基板の前記保持面に対する吸着を解除するとき、前記給気流路から前記基板に向けて給気し、さらに前記吸引流路によって前記吸着孔近傍の空気を吸引する、基板保持装置。
【請求項2】
前記吸引流路は、前記吸着孔に接続されており、
前記給気流路は、前記吸着孔の吸引流れ下流側の合流箇所で前記吸引流路に合流する、請求項1記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記合流箇所は、前記吸着孔の近傍に設けられる、請求項2記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記給気流路における給気流量は、前記吸引流路における吸引流量より大きくなっている、請求項1~3のいずれか1つに記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記吸引流路の少なくとも1つは、前記基板を前記保持面から持ち上げるリフトピンが挿通されるピン孔を兼用している、請求項1~4のいずれか1つに記載の基板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持する基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板を保持面に吸着保持しながら、基板に対して塗工等の加工を行った後、リフトピンで基板を持ち上げる前に、保持面に対する基板の吸着を解除し、さらに基板に空気圧を付与することによって基板を持ち上げやすくする機構が、特許文献1~3に開示されている。また、リフトピンの孔と基板を吸着するための吸着孔とを兼用した機構が、特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-68592号公報
【特許文献2】特開2019-83286号公報
【特許文献3】特開2009-64950号公報
【特許文献4】特開2017-174855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記いずれの機構においても、保持面に対する基板の吸着を解除するためには、給気流路による給気によって基板に空気圧を付与するのみとなっており、この場合、基板の保持面に対する吸着が解除されると、給気流路の内部に存在するダストが給気と共に吸着孔から放出され、基板に付着するという懸念があった。
【0005】
そこで本発明では、基板の吸着を解除するときに、給気流路からの給気によってダストが放出され基板に付着することを抑制できる基板保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、基板保持装置は、基板が載置される保持面を有する保持部と、
前記保持部に設けられ、前記基板を前記保持面に吸着させるための吸着孔と、
前記保持部に設けられる吸引流路及び給気流路と、を備え、
前記基板の前記保持面に対する吸着を解除するとき、前記給気流路から前記基板に向けて給気し、さらに前記吸引流路によって前記吸着孔近傍の空気を吸引する。
【0007】
前記構成によれば、基板の吸着を解除するときに、吸引流路によって吸着孔近傍の空気を吸引することによって、給気流路からの給気によってダストが放出され基板に付着することを抑制できる。
【0008】
上記実施形態は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
【0009】
(1)前記吸引流路は、前記吸着孔に接続されており、
前記給気流路は、前記吸着孔の吸引流れ下流側の合流箇所で前記吸引流路に合流する。
【0010】
(2)前記構成(1)において、前記合流箇所は、前記吸着孔の近傍に設けられる。
【0011】
(3)前記給気流路における給気流量は、前記吸引流路における吸引流量より大きくなっている。
【0012】
(4)前記吸引流路の少なくとも1つは、前記基板を前記保持面から持ち上げるリフトピンが挿通されるピン孔を兼用している。
【0013】
前記構成(1)によれば、給気流路からの給気によって吸着孔から放出されるダストの量を低減することができる。
【0014】
前記構成(2)によれば、給気流路からの給気によって吸着孔から放出されるダストの量をより低減することができる。
【0015】
前記構成(3)によれば、放出されるダストの量を低減しながら、基板の吸着を容易に解除することができる。
【0016】
前記構成(4)によれば、吸引流路がリフトピンのピン孔を兼用することによって、保持部をコンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、基板の吸着を解除するときに、給気流路からの給気によってダストが放出され基板に付着することを抑制できる基板保持装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る基板保持装置の概念図である。
図2】基板をリフトピンに載置させた状態を示す基板保持装置の概念図である。
図3】リフトピンを下降させ、基板を保持面に載置させた状態を示す基板保持装置の概念図である。
図4】真空排気部によって基板を保持面に吸着させた状態を示す基板保持装置の概念図である。
図5】保持面に対する基板の吸着を解除させた状態を示す基板保持装置の概念図である。
図6】リフトピンを上昇させ、保持面に対する吸着が解除された基板にリフトピンを接触させた状態を示す基板保持装置の概念図である。
図7】リフトピンを上方位置に上昇させ、基板を持ち上げた状態を示す基板保持装置の概念図である。
図8】吸引流路が、リフトピンが挿通するピン孔を兼用していない基板保持装置の概念図である。
図9】給気流路が吸引流路に合流せず、保持面に開口する基板保持装置の概念図である。
図10】保持面に溝を設けて給気通路と吸着孔とを連結させた、別の実施形態に係る基盤保持装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る基板保持装置1の概念図である。図1に示されるように、基板保持装置1は、基板10が載置される保持面21を有する保持部2と、保持部2に設けられ、基板10を保持面21に吸着させるための吸着孔3と、保持部2に設けられる吸引流路4及び給気流路5と、を備えている。
【0020】
吸着孔3は、保持面21に例えば格子状に分散して形成されている。これらの吸着孔3で基板10が吸着されることによって、塗工処理の際に、基板10が所定の位置で略水平に保持されるようになっている。
【0021】
吸引流路4は、例えば真空ポンプのような真空排気部41と連通しており、真空排気部41を作動させることによって、吸引流路4を介して吸着孔3に負圧を発生させ、基板10を保持面21に吸着させる。なお、吸着孔3は、吸引流路4の保持面21における流路出口に相当する。
【0022】
吸引流路4には、吸引流路4を開閉する吸引弁42が設けられている。吸引弁42は、吸着孔3と真空排気部41との間であって、保持部2より下方に位置している。
【0023】
給気流路5は、例えばコンプレッサのような気体供給部51と連通しており、気体供給部51を作動させることによって、給気流路5を介して吸着孔3に給気し、保持面21に対する基板10の吸着を解除する。本実施形態では、給気流路5は、吸着孔3の吸引流れ下流側の合流箇所5aで吸引流路4に合流しており、合流箇所5aは、吸着孔3の近傍に設けられている。より詳細には、合流箇所5aは吸着孔3と肉厚bを介して接しており、給気流路5の合流箇所5a近傍部分は、保持面21の直下に形成されている。
【0024】
給気流路5には、給気流路5を開閉する給気弁52が設けられている。給気弁52は、合流箇所5aと気体供給部51との間であって、保持部2より下方に位置している。
【0025】
リフトピン6は、吸着孔3及び吸引流路4を挿通可能となっており、保持面21より上方に突出する上方位置に位置することにより、基板10をリフトピン6の頂部で支持し、また、保持面21より下方に位置する下方位置に位置することにより、基板10を保持面21に載置することが可能となっている。なお、基盤保持装置1の稼働中は、真空排気部41と気体供給部51とは作動した状態にある。
【0026】
基板保持装置1の動作は、以下のとおりである。
【0027】
まず、図2に示されるように、リフトピン6を上方位置、すなわち保持面21より上方に突出するように上昇させる。そして、図示しない搬送装置により、基板10を搬入しリフトピン6の頂部に載せる。
【0028】
次に、図3に示されるように、リフトピン6を下方位置、すなわち保持面21より下方に位置するように降下させ、基板10を保持面21に載置させる。そして、リフトピン6の降下と共に、図4に示されるように、吸引弁42を開放して、基板10を保持面21に吸着させる。このとき、給気弁52を閉止しておく。なお、図では、吸引弁42と給気弁52の開状態を白抜きで示し、閉状態を黒塗りで示している。
【0029】
次に、基板10を図示しない塗工装置によって塗工処理する。
【0030】
基板10の塗工処理が終了すると、図5に示されるように、給気弁52を開放して吸着孔3に給気し、給気の圧力により保持面21に対する基板10の吸着を解除する。このとき、吸引弁42を開放したままとして、気体供給部51からの給気により給気流路5から排出されるダストを、吸引流路4を介して吸引し、当該ダストが吸着孔3から基板10側に放出され基板10に付着することを抑制する。つまり、基板10の裏側(保持面21と接触している側)を陽圧としつつ吸引するため、基板10をリフトピン6で持ち上げやすくしながら、その際に発生するダストを吸引することができる。ここで、給気によって、保持面21に対する基板10の吸着を解除しながら、吸引によってダストを吸引するために、気体供給部51による給気流路5における給気流量は、真空排気部41による吸引流路4における吸引流量より大きくなっている。また、給気流路5における給気の圧力は、吸引流路4における吸引の圧力よりも大きくなっている。なお、給気流路5における給気流量や給気圧力は、気体供給部51の作動状態に加え、給気弁52の開度によっても調整可能である。同様に、吸引流路4における吸引流量や吸引圧力は、真空排気部41の作動状態に加え、吸引弁42の開度によっても調整可能である。
【0031】
保持面21に対する基板10の吸着が解除されると、図6に示されるように、リフトピン6を上昇させ、基板10をリフトピン6の頂部で支持し、さらにリフトピン6を上昇させて、基板10が保持面21から離れると同時に吸引弁42及び給気弁52を閉止する。そして、図7に示されるように、リフトピン6を上方位置まで上昇させ、基板10を保持面21より上方に位置させる。このとき、給気のほとんどは直接吸引されるが、給気流路5の吸引流路4への合流箇所5aよりも上方の部分では上向きの流れとなり、その部分に溜まっていたダストが吸着孔3から外部に放出されることになるので、肉厚bはできるだけ小さいほうがよい。そして、図示しない搬送装置により基板10を搬出する。
【0032】
前記構成の基板保持装置1によれば、次のような効果を発揮できる。
【0033】
(1)基板10の吸着を解除するときに、吸引流路4によって吸着孔3近傍の空気を吸引することによって、給気流路5からの給気によってダストが放出され基板10に付着することを抑制できる。
【0034】
(2)給気流路5は、吸着孔3の吸引流れ下流側の合流箇所で吸引流路4に合流しているので、給気流路5からの給気によって吸着孔3から放出されるダストの量を低減することができる。
【0035】
(3)給気流路5による吸引流路4への合流箇所5aは、吸着孔3の近傍に設けられるので、給気流路5からの給気によって吸着孔3から放出されるダストの量をより低減することができる。
【0036】
(4)給気流路5における給気流量は、吸引流路4における吸引流量より大きくなっているので、放出されるダストの量を低減しながら、保持面21に対する基板10の吸着を容易に解除することができる。
【0037】
(5)吸引流路4の少なくとも1つは、基板10を保持面21から持ち上げるリフトピン6が挿通されるピン孔を兼用しているので、保持部2をコンパクトに構成することができる。
【0038】
上記実施形態では、吸引流路4は、リフトピン6が挿通するピン孔を兼用しているが、すべての吸引流路がリフトピン6のピン孔を兼用する必要はなく、一部の吸引流路4がピン孔を兼用すればよい。図8は、吸引流路4が、リフトピン6が挿通するピン孔を兼用していない基板保持装置1の概念図である。
【0039】
上記実施形態では、給気流路5は、吸着孔3の吸引流れ下流側の合流箇所で吸引流路4に合流しているが、給気流路5は、吸引流路4に合流せず、保持面21で開口するように設けられてもよい。図9は、給気流路5が吸引流路4に合流せず、保持面21に開口する基板保持装置1の概念図である。図9に示されるように、給気流路5が吸引流路4に合流せず保持面21で開口する場合、給気流路5と吸引流路4とは互いに隣接するように設けられ、給気流路5の保持面21での開口である給気孔53と吸着孔3とは近接していることが好ましい。図10は、保持面21に溝を設けて給気通路5と吸着孔3とを連結させた、別の実施形態に係る基盤保持装置の概念図である。図10に示されるように、保持面21に、吸着孔31と給気流路5とを連結するように溝7を設けてもよい。この場合、基板10の吸着面積が増加し、基板10への吸着力が増加すると同時に給気面積も増加するので、基板10を保持面21から離そうとする力も大きくすることができる。
【0040】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明では、基板の吸着を解除するときに、給気流路からの給気によってダストが放出され基板に付着することを抑制できる基板保持装置を提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0042】
1 基板保持装置
2 保持部
21 保持面
3 吸着孔
4 吸引流路
41 真空排気部 42 吸引弁
5 給気流路
5a 合流箇所
51 気体供給部 52 給気弁 53 給気孔
6 リフトピン
7 溝
10 基板
b 肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される保持面を有する保持部と、
前記保持部に設けられ、前記基板を前記保持面に吸着させるための吸着孔と、
前記保持部に設けられる吸引流路及び給気流路と、を備え、
前記基板の前記保持面に対する吸着を解除するとき、前記給気流路から前記基板に向けて給気し、同時に前記吸引流路によって前記吸着孔近傍の空気を吸引する、基板保持装置。
【請求項2】
前記吸引流路は、前記吸着孔に接続されており、
前記給気流路は、前記吸着孔の吸引流れ下流側の合流箇所で前記吸引流路に合流しており、
前記合流箇所は、前記吸着孔の近傍であって、前記吸着孔に対して前記保持面の肉厚を介して接しており、前記合流箇所の近傍部分は、前記保持面の直下に形成されている、請求項1記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記保持面には、前記吸着孔と前記給気流路とを連結する溝が形成されている、請求項1記載の基盤保持装置。
【請求項4】
前記給気流路における給気流量は、前記吸引流路における吸引流量より大きくなっている、請求項1~3のいずれか1つに記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記吸引流路の少なくとも1つは、前記基板を前記保持面から持ち上げるリフトピンが挿通されるピン孔を兼用している、請求項1~4のいずれか1つに記載の基板保持装置。