(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171528
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】高いバイオアベイラビリティを有する水溶性クルクミン混合物およびその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20221104BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221104BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221104BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221104BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20221104BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221104BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/12
A61K47/22
A61K9/50
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/40
A61K47/26
A61K47/02
A61P29/00
A61P39/06
A61P35/00
A61P9/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021158141
(22)【出願日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】202110484550.5
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521424024
【氏名又は名称】ヘナン・ジョンダ・ヘンユアン・バイオテクノロジー・ストック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HENAN ZHONGDA HENGYUAN BIOTECHNOLOGY STOCK CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】EAST OF JINGER ROAD, NORTH OF WEIER ROAD, LINYING INDUSTRIAL PARK, LUOHE CITY, HENAN, CHINA, 462600
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】リ,ホンロン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジェン
(72)【発明者】
【氏名】リ,リンジェン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,シャオソン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ディ
(72)【発明者】
【氏名】イー,チュンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウェンジン
(72)【発明者】
【氏名】シャ,フイチン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD02
4B018MD08
4B018MD25
4B018MD29
4B018MD32
4B018MD33
4B018MD34
4B018MD35
4B018MD36
4B018MD37
4B018ME14
4B018MF02
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4B018MF07
4B018MF08
4C076AA61
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD26
4C076DD38
4C076DD40
4C076DD59
4C076DD67H
4C076EE30H
4C076EE31
4C076EE38
4C076EE38H
4C076EE39
4C076EE58H
4C076FF21
4C076FF34
4C076GG03
4C076GG05
4C076GG21
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206KA20
4C206MA05
4C206MA58
4C206MA72
4C206NA02
4C206NA11
4C206ZA36
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZC21
(57)【要約】
【課題】バイオアベイラビリティの高い水溶性クルクミン混合物およびその調製方法と応用を提供する。
【解決手段】高いバイオアベイラビリティを有する水溶性クルクミン混合物を調製する方法であって、A)クルクミン、ビタミンCおよびパルミチン酸アスコルビルを水性エタノール溶液に溶解し、減圧下でエタノールを蒸発させ、真空乾燥して、クルクミン-ビタミンC-パルミチン酸アスコルビル共結晶を得るステップ、B)前記クルクミン-ビタミンC-パルミチン酸アスコルビル共結晶と壁材コロイド溶液とを真空下で高速乳化し、2段階の湿式粉砕、均質化、電位調整を順次行い、乳化体を得るステップ、およびC)前記乳化体を壁材で二次マイクロカプセル化し、乾燥させて前記水溶性クルクミン混合物を得るステップを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高いバイオアベイラビリティを有する水溶性クルクミン混合物を調製する方法であって、
A)クルクミン、ビタミンCおよびパルミチン酸アスコルビルを水性エタノール溶液に溶解し、減圧下でエタノールを蒸発させ、真空乾燥して、クルクミン-ビタミンC-パルミチン酸アスコルビル共結晶を得るステップ、
B)前記クルクミン-ビタミンC-パルミチン酸アスコルビル共結晶と壁材コロイド溶液とを真空下で高速乳化し、2段階の湿式粉砕、均質化、および電位調整を順次行い、乳化体を得るステップ、および
C)前記乳化体を壁材で二次マイクロカプセル化し、乾燥させて前記水溶性クルクミン混合物を得るステップ
を含む、方法。
【請求項2】
クルクミン、ビタミンC、およびパルミチン酸アスコルビルの質量比が、100:(0.001~30):(0.001~30)であり、ステップA)において、クルクミン、ビタミンC、パルミチン酸アスコルビル、および水性エタノール溶液を0~60℃で加熱し、エタノールを0.05MPa~1.0MPaの圧力下で、25℃~100℃で蒸発させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記壁材コロイド溶液が、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン、アラビアガム、ガティガム、キサンタンガム、プルラン、フコイダン、トレハロース、およびラクトースからなる群から選択されるうちの1つ以上を含み、
前記壁材コロイド溶液が、充填剤をさらに含み、前記充填剤が、マルトデキストリン、微結晶セルロース、ラクチトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせであり、そして
前記壁材コロイド溶液が、5重量%~65重量%の壁材コロイド濃度、および5重量%~65重量%の充填剤濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2段階の湿式粉砕が、第1粉砕および第2粉砕を含み、前記第1粉砕が、直径0.3mm~0.4mmのジルコニアビーズを使用し、500rpm~3500rpmの速度で1~10時間行われ、前記第2粉砕が、直径0.1mm~0.2mmのジルコニアビーズを使用し、500rpm~3500rpmの速度で1~10時間行われ、
前記高速乳化が、0.05MPa~0.1Mpa、10℃~90℃で行われ、前記均質化が、100MPa~200MPaで行われ、前記電位調整が、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムからなる群から選択されるゼータ電位調整剤を使用し、コロイド乳化体の電位が、-10mv~-60mvに調整され、
前記壁材が、デンプン、マルトデキストリン、またはそれらの混合物であり、マルトデキストリンのDE値が、5~20であり、前記マイクロカプセル化が、160℃~200℃の乾燥入口空気温度、70℃~100℃の出口空気温度、70℃~90℃の底部空気温度で行われ、そして
前記水溶性クルクミン混合物が、0.01重量%~70重量%、好ましくは5重量%~40重量%のクルクミン-ビタミンC-パルミチン酸アスコルビル共結晶濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年4月30日に出願された中国特許出願第202110484550.5号の優先権を主張するものであり、この特許出願は、本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、食品技術、および高いバイオアベイラビリティを有する水溶性クルクミン混合物、ならびにその調製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0003】
クルクミンは、ショウガ科の多年草であるウコン(Curcuma longa L.)の乾燥した根から抽出、精製、結晶化、および乾燥して得られる天然のポリフェノールである。クルクミンは、クルクミン(C21H20O6、分子量368)、デメトキシクルクミン(C21H18O5、分子量338)、ビスデメトキシクルクミン(C21H16O4、分子量308)の3つの主成分を含んでいる。クルクミンは、耐熱性、耐還元性に優れ、強い着色力を有する。食品の着色料および調味料の原料として、クルクミンは、長い間消費されてきた。クルクミンは、エタノール、氷アルキド(glacial alkyd)、およびプロピレングリコールには溶けやすいが、水には基本的に溶けないため、応用効果および応用範囲が限定される。
【0004】
クルクミンの原料として、ウコンは、伝統的な漢方薬で、「Tang Materia Medica」で初めて報告された。現代医学の研究では、クルクミンが優れた抗炎症作用、抗酸化作用、フリーラジカル捕捉能、腫瘍抑制作用、心血管保護作用および他の薬理作用を有し、様々な炎症および病理学的変化に対して良好な予防および治療効果を有することがわかっている。しかし、クルクミンは水溶性が低く、バイオアベイラビリティが低いため、実用的応用には限界がある。
【0005】
科学的な研究によると、天然物の水溶性を高めることが、体への吸収に有益であることがわかっている。そのため、水へのクルクミンの溶解性を向上させ、水溶解性に優れたクルクミンを調製することが求められている。溶解性の向上に関する方法は、例えば、CN109846865A、CN103272245A、CN107712543Aなどが公開されている。これらの方法では、クルクミン、リン脂質、またはシクロデキストリンなどを溶解するために、n-ヘキサン、エタノール、酢酸エチルなどの溶媒が使用されている。これらの有機溶媒を大量に使用することは、安全性のリスクが高く、後続製品に、より多くの溶媒が残留する。CN102283373AおよびCN104922105Aには、Tweenおよびポリグリセロールエステルなどの合成乳化剤を使用することが開示されている。合成乳化剤は、GB2760では使用範囲および使用量が厳しく制限されており、製品の風味に大きな影響を及ぼす。CN107213467Aでは、水へのクルクミン調製物の溶解性が1.5倍に増加したにすぎない。CN1283237Cでは、相対的なバイオアベイラビリティは205.47%であり、その効果は明らかではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらに鑑み、本発明が解決しようとする技術的課題は、バイオアベイラビリティの高い水溶性クルクミン混合物およびその調製方法と応用を提供することである。本発明が提供する調製方法は、合成乳化剤を必要とせず、調製プロセスにおいて無溶媒である。得られたクルクミン混合物は、優れた水溶性を有し、動物実験で検証され、相対的なバイオアベイラビリティは10~18倍以上である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、高いバイオアベイラビリティを有する水溶性クルクミン混合物を調製する方法を提供する。この方法は、A)クルクミン、ビタミンCおよびパルミチン酸アスコルビルを水性エタノール溶液に溶解し、減圧下でエタノールを蒸発させ、真空乾燥して、クルクミン-ビタミンC-パルミチン酸アスコルビル共結晶を得るステップ、B)クルクミン-ビタミンC-パルミチン酸アスコルビル共結晶と壁材コロイド溶液(a wall material colloidal solution)とを真空下で高速乳化し、2段階の湿式粉砕、均質化、および電位調整を順次行い、乳化体を得るステップ、およびC)前記乳化体を壁材(a wall material)で二次マイクロカプセル化し、乾燥させて前記水溶性クルクミン混合物を得るステップ、を含む。
【0008】
別の実施形態では、クルクミン、ビタミンC、およびパルミチン酸アスコルビルの質量比は、100:(0.001~30):(0.001~30)である。
【0009】
別の実施形態では、ステップA)において、クルクミン、ビタミンC、パルミチン酸アスコルビル、および水性エタノール溶液を0~60℃で加熱し、エタノールを0.05MPa~1.0MPaの圧力下で、25℃~100℃で蒸発させる。
【0010】
別の実施形態では、前記壁材コロイド溶液は、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン、アラビアガム、ガティガム、キサンタンガム、プルラン、フコイダン、トレハロース、およびラクトースからなる群から選択されるうちの1つ以上を含む。前記壁材コロイド溶液は、充填剤(filler)をさらに含み、前記充填剤は、マルトデキストリン、微結晶セルロース、ラクチトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせであり、よって、前記壁材コロイド溶液は、5重量%~65重量%の壁材コロイド濃度、および5重量%~65重量%の充填剤濃度を有する。
【0011】
別の実施形態では、2段階の湿式粉砕は、第1粉砕および第2粉砕を含み、前記第1粉砕は、直径0.3mm~0.4mmのジルコニアビーズを使用し、500rpm~3500rpmの速度で1~10時間行われ、前記第2粉砕は、直径0.1mm~0.2mmのジルコニアビーズを使用し、500rpm~3500rpmの速度で1~10時間行われる。
【0012】
別の実施形態では、前記高速乳化は、0.05MPa~0.1Mpa、好ましくは0.075MPa~0.095MPaで、10℃~90℃、好ましくは25℃~60℃で行われ、前記均質化は100MPa~200MPa、好ましくは130MPa~180Mpaで行われ、前記電位調整は、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムからなる群から選択されるゼータ電位調整剤を使用し、コロイド乳化体の電位は、-10mv~-60mv、好ましくは-30mv~-50mvに調整される。
【0013】
別の実施形態では、前記壁材は、デンプン、マルトデキストリン、またはそれらの混合物であり、マルトデキストリンのDE値は5~20であり、前記マイクロカプセル化は、160℃~200℃の乾燥入口空気温度、70℃~100℃の出口空気温度、および70℃~90℃の底部空気温度で行われる。
【0014】
別の実施形態では、前記水溶性クルクミン混合物は、0.01重量%~70重量%、好ましくは5重量%~40重量%のクルクミン-ビタミンC-パルミチン酸アスコルビル共結晶濃度を有する。
【0015】
別の実施形態では、本出願は、本発明の方法によって調製される水溶性クルクミン混合物を開示している。
【0016】
別の実施形態では、本出願は、食品、健康食品または医薬品への前記水溶性クルクミン混合物の応用を開示している。
【発明の効果】
【0017】
その結果は、本発明の水溶性クルクミン混合物が、著しく改善された溶解性および優れた水溶性を有し、動物吸収実験(ラット)で検証され、そのバイオアベイラビリティが原料クルクミンに比べて10~18倍に増加したことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1のクルクミン混合物の水への溶解性を示す写真である。
【
図2】比較例1のクルクミン原料の水への溶解性を示す写真である。
【
図3】実施例1のクルクミン混合物の相対的バイオアベイラビリティ試験結果を示す。
【
図4】実施例2のクルクミン混合物の相対的バイオアベイラビリティ試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
本発明は、高いバイオアベイラビリティを有する水溶性クルクミン混合物の調製方法を提供する。また、本発明は、食品、健康食品または医薬品への、上記の水溶性クルクミン混合物の応用を提供する。中でも、本発明は、食品の形態に特に制限はなく、前記水溶性クルクミン混合物は、液状食品または固形食品、好ましくは飲料に添加され得る。また、本発明では、前記健康食品の剤型に特に制限はなく、カプセルまたは錠剤であってもよい。
【0020】
本発明は、以下のような有益な効果を有する。
1.本発明は、VC、パルミチン酸アスコルビルおよびクルクミンの共結晶を開示しており、これによりクルクミンを効果的に保護し、クルクミンの酸化的分解を低減することができる。同時に、クルクミン-VC-パルミチン酸アスコルビルの共結晶は、クルクミンの水溶性を改善することができる。
2.本発明は、調製プロセスにおいて合成乳化剤を使用せず無溶媒の調製方法を採用する。得られた製品は、品質の安全性および応用の完全性の問題を有していない。前記調製プロセスはより安全であり、このことは当該製品の工業化生産に有益である。
3.本発明は、真空乳化技術、二段湿式粉砕、超高圧均質化技術の効果的な組み合わせを採用しており、このことによりクルクミンの粒子径を効果的に減少させ、クルクミンの水溶性を向上させることができる。
4.本発明は、リン酸塩を採用して、エマルション調製完了の段階でゼータ電位を調整し、このことによりクルクミンエマルションの安定性がより助長され、クルクミン混合製品の品質の均一性が確保される。
【実施例0021】
本発明をさらに理解するために、本発明によって提供される高バイオアベイラビリティ水溶性クルクミン混合物およびその調製方法と応用が、実施例と併せて以下で説明される。なお、本発明の保護範囲は、以下の実施例によって限定されない。
【0022】
実施例1
93%クルクミン100gを秤量し、攪拌しながら95%エタノール1000gに溶解し、VC1.0gおよびパルミチン酸アスコルビル1.0gをゆっくりと加え、混合物を35℃~40℃までゆっくりと加熱し、完全に溶解するまでゆっくりと攪拌した。この混合物を、温度が65℃~75℃になるまで加熱し、0.08MPaの真空下でエタノールを蒸発させて、暗黄色の粘性物質を得た。この粘性物質を真空乾燥炉に移し、0.09MPa、75℃~80℃の環境で12時間乾燥させた。溶媒残留物が50ppm以下であることが検出され、VC-パルミチン酸アスコルビル-クルクミン共結晶が得られた。
【0023】
アラビアガム50g、ガティガム5g、α-シクロデキストリン10g、マルトデキストリン110gを秤量し、それらを脱イオン水467gに溶解して、濃度30重量%の水溶性コロイド溶液Aを調製した。VC-パルミチン酸アスコルビル-クルクミン共結晶25gを秤量し、それを水溶性コロイド溶液Aに加え、物質を35℃~40℃に保ち、0.085MPaの乳化タンク真空下で50分間乳化した。クルクミンは均一に分散され、流動性は良好であった。クルクミンエマルションBが得られた。
【0024】
クルクミンエマルションBを湿式粉砕装置に投入し、1回目の粉砕を行った。粉砕媒体は0.3mm~0.4mmのジルコニアビーズであった。1200rpmで4時間、粒子径D90が0.7um未満になるまで粉砕した。その後、2回目の粉砕を行った。粉砕媒体は0.1mm~0.2mmのジルコニアビーズであった。粒子径D90が0.3um以下になるまで900rpmで3時間粉砕を行い、クルクミンエマルションCを得た。
【0025】
このクルクミンエマルションCを156MPaの圧力下で超高圧均質化にかけ、均一で安定したクルクミンエマルションDを得た。脱イオン水で5%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液を調製し、クルクミンエマルションDのゼータ電位を-38mvに調整し、クルクミンエマルションEを得た。マイクロカプセルのコーティング材料としてデンプンを用い、二次マイクロカプセル乾燥を行い、160℃~200℃の入口空気温度、70℃~100℃の出口空気温度、70℃~90℃の底部空気温度の条件で乾燥させ、水溶性クルクミン混合物を得た。
【0026】
上記の水溶性クルクミン混合物を水に分散させた。
図1は、実施例1で調製した水溶性クルクミン混合物の水への溶解性を示す写真である。
【0027】
この試験は、前記水溶性クルクミン混合物が水への優れた溶解性を有することを示した。クルクミンの含有量は10.5%であり、D90粒子径は278nmであった。濃度1重量%の水溶液を、室温で4日間放置したところ、沈殿は見られなかった。
【0028】
ラットでの実験的試験の後、中華人民共和国薬局方(Pharmacopoeiaof thePeople’s Republicof China)(2015年版)第4付録の「9012生物試料の定量的分析方法の検証に関する指針(Guidelinesfor Validationof 9012Biological SampleQuantitative Analysismethod)」に従って、水溶性クルクミン混合物のバイオアベイラビリティ試験法を検証した。具体的な手順は以下の通りである。
【0029】
24匹の健康なSDラットを1週間適応飼育した後、無作為に4群に分けた(各群6匹)。
【0030】
胃内投与用の用量である200mg・kg-1(クルクミンとして計算)に従い、第1群および第3群にはクルクミン(原料)を、第2群と第4群には実施例1と実施例2の水溶性クルクミン混合物をそれぞれ投与した。
【0031】
各群とも、投与後0.167、0.5、1、1.5、2、3、5、8、12時間後に、各群の眼窩から約0.3mLの血液を採取し、4000rpmで10分間遠心分離した。血漿を、後で使用するために-20℃で保存した。
【0032】
血漿100μLを分離し、酢酸エチル0.3mLを加えて2分間混合した後、4000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを分離した。沈殿物に酢酸エチル0.3mLを加えて2分間混合した後、4000rpmで10分間遠心分離し、40℃で真空乾燥した。残渣にメタノール100μLを加え、遠心管を濡らし、2分間混合した後、0.22μmの微多孔膜でろ過し、分析・試験を行う。
【0033】
検出にはエモジンを内部標準としたHPLC-MS/MSを使用し、DAS2.0ソフトウェアを用いて薬物動態パラメータを算出し、相対的なバイオアベイラビリティを比較した。その結果は、以下の通りである。
表1 バイオアベイラビリティ試験結果
【表1】
【0034】
クルクミン原料に対する水溶性クルクミン混合物のバイオアベイラビリティは、10.28倍に増加した(相対的バイオアベイラビリティ「血中濃度曲線」を
図3に示す)。
【0035】
実施例2
93%クルクミン200gを秤量し、撹拌下で95%エタノール3000gに溶解させ、VC3.0gとパルミチン酸アスコルビル3.5gをゆっくりと加え、混合物を35℃~40℃にゆっくりと加熱し、完全に溶解するまでゆっくりと撹拌した。この混合物を65℃~75℃になるまで加熱し、0.08MPaの真空下でエタノールを蒸発させて、濃い黄色の粘性物質を得た。この粘性物質を真空乾燥炉に移し、0.09MPa、75℃~80℃の環境下で15時間乾燥させた。残留溶媒が50ppm未満であることが検出され、VC-パルミチン酸アスコルビル-クルクミン共結晶を得た。
【0036】
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム70g、アラビアガム5g、γ-シクロデキストリン20g、マルトデキストリン45g、20マルチトールを秤量し、これらを467gの脱イオン水に溶解して濃度26重量%の水溶性コロイド溶液Aを形成した。VC-パルミチン酸アスコルビル-クルクミン共結晶38gを秤量し、これを水溶性コロイド溶液Aに添加し、混合物を35℃~40℃に保ち、乳化槽内で0.085MPaの条件で45分間乳化した。クルクミンは均一に分散され、流動性は良好で、クルクミンエマルションBが得られた。
【0037】
クルクミンエマルションBを湿式粉砕装置に投入し、1回目の粉砕を行った。粉砕媒体は、0.3mm~0.4mmの酸化されたピカックスビーズ(pickaxebeads)を使用した。粒子径D90が0.7um未満になるまで、1100rpmの速度で6時間粉砕した。その後、2回目の粉砕を行った。粉砕媒体は、0.1mm~0.2mmの酸化したピカックスビーズであり、回転速度1000rpmで3時間、粒径D90が0.3um未満になるまで粉砕し、クルクミンエマルションCを得た。このクルクミンエマルションCを180MPaの圧力下で超高圧均質化にかけ、均一で安定したクルクミンエマルションDを得た。脱イオン水で5%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液を調製し、クルクミンエマルションDのゼータ電位を-30mvに調整し、クルクミンエマルションEを得た。マイクロカプセルのコーティング材料としてデンプンを用い、二次マイクロカプセル乾燥を行い、160℃~200℃の入口空気温度、70℃~100℃の出口空気温度、70℃~90℃の底部空気温度の条件で乾燥させ、水溶性クルクミン混合物を得た。
【0038】
試験結果は、水溶性クルクミン混合物が水への優れた溶解性を有することを示した。クルクミンの含有量は21.3%であり、D90粒子径は260nmであった。濃度1重量%の水溶液を、室温で4日間放置したところ、沈殿は見られなかった。
【0039】
ラットでの実験的試験(「前臨床薬物動態研究の技術ガイドライン(TechnicalGuidelines forPreclinical PharmacokineticResearch)」に従って実施)後、クルクミン原料に対する水溶性クルクミン混合物のバイオアベイラビリティは18.46倍に増加した(相対的バイオアベイラビリティ「血中濃度曲線」については、
図4を参照)。
【0040】
実施例3
含有量93%のクルクミン250gを秤量し、攪拌しながら95%エタノール3500gに溶解し、VC2.5gおよびパルミチン酸アスコルビル3.5gをゆっくりと加え、35℃~40℃までゆっくりと加熱し、完全に溶解するまでゆっくりと攪拌した。この混合物を、温度が65℃~75℃になるまで加熱し、0.08MPaの真空下でエタノールを蒸発させて、暗黄色の粘性物質を得た。この粘性物質を真空乾燥炉に移し、0.09MPa、75℃~80℃の環境下で16時間乾燥させた。溶媒残留物が50ppm未満であることが検出され、VC-パルミチン酸アスコルビル-クルクミン共結晶が得られた。
【0041】
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム50g、ヒドロキシプロピルデンプン1.5g、プルラン10g、トレハロース30g、マルトデキストリン52.5gを秤量し、512gの脱イオン水に溶解して、濃度25重量%の水溶性コロイド溶液Aを形成した。VC-パルミチン酸アスコルビル-クルクミン共結晶を62g秤量し、水溶性コロイド溶液Aに添加し、混合物を35℃~40℃に保ち、クルクミンが均一に分散され流動性が良好になるまで、0.085MPaで60分間乳化した。クルクミンエマルションBが得られた。
【0042】
クルクミンエマルションBを湿式粉砕装置に投入し、1回目の粉砕を行った。粉砕媒体は0.3mm~0.4mmのジルコニアビーズであった。粒子径D90が0.7um未満になるまで、1000rpmの速度で4時間かけて粉砕した。次に2回目の粉砕を行い、粉砕媒体は0.1mm~0.2mmのジルコニアビーズであり、回転速度1100rpmで3時間、粒径D90が0.3um未満になるまで粉砕した。クルクミンエマルションCが得られた。
【0043】
175MPaの圧力下で、このクルクミンエマルションCを超高圧均質化にかけ、均一で安定したクルクミンエマルションDを得た。脱イオン水で5%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液を調製し、クルクミンエマルションDのゼータ電位を-35mvに調整し、クルクミンエマルションEを得た。マイクロカプセルのコーティング材料としてデンプンを用い、二次マイクロカプセル乾燥を行い、160℃~200℃の入口空気温度、70℃~100℃の出口空気温度、70℃~90℃の底部空気温度の条件で乾燥させ、水溶性クルクミン混合物を得た。試験結果は、水溶性クルクミン混合物が水への優れた溶解性を有することを示した。クルクミンの含有量は30.5%であり、D90粒子径は286nmであった。濃度1重量%の水溶液を、室温で4日間放置したところ、沈殿は見られなかった。
【0044】
比較例1
クルクミン原料
クルクミン原料を水に分散させ、その結果を
図2に示す。
図2は、水へのクルクミン原料の溶解性を示す写真である。
図2から、クルクミンが水に溶けないことがわかる。
【0045】
比較例2
実施例3のプロセスによれば、93%のクルクミンが調製試験の原料として直接使用された。そのプロセスおよび結果は以下の通りである。
【0046】
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム50g、ヒドロキシプロピルデンプン1.5g、プルラン10g、トレハロース30g、マルトデキストリン52.5gを秤量し、512gの脱イオン水に溶解して、濃度25重量%の水溶性コロイド溶液Aを得た。93%クルクミン60.55gを秤量し、水溶性コロイド溶液Aに添加した。混合物を35℃~40℃に保ち、乳化槽内で0.085MPaの条件で60分間乳化した。クルクミンは均一に分散され、流動性は良好で、クルクミンエマルションBが得られた。
【0047】
クルクミンエマルションBを湿式粉砕装置に投入し、1回目の粉砕を行った。粉砕媒体は0.3mm~0.4mmのジルコニアビーズであった。粒子径D90が0.7um未満になるまで、1000rpmの速度で4時間かけて粉砕した。次に2回目の粉砕を行い、粉砕媒体は0.1mm~0.2mmのジルコニアビーズであり、回転速度1100rpmで3時間、粒径D90が0.3um未満になるまで粉砕した。クルクミンエマルションCが得られた。
【0048】
175MPaの圧力下で、このクルクミンエマルションCを超高圧均質化にかけ、均一で安定したクルクミンエマルションDを得た。脱イオン水で5%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液を調製し、クルクミンエマルションDのゼータ電位を-35mvに調整し、クルクミンエマルションEを得た。マイクロカプセルのコーティング材料としてデンプンを用い、二次マイクロカプセル乾燥を行い、160℃~200℃の入口空気温度、70℃~100℃の出口空気温度、70℃~90℃の底部空気温度の条件で乾燥させ、クルクミン混合物を得た。
【0049】
試験の結果、クルクミン含有量は28.1%、D90粒子径は628nmで、クルクミン混合物は概して水溶性を示した。1重量%水溶液の場合、2時間放置するとクルクミンの沈殿物が発生した。
【0050】
比較例3
クルクミンエマルションDのゼータ電位調整を行わなかった以外は、実施例1のプロセスに従って、試験を行った。そのプロセスおよび結果は、以下の通りである。
【0051】
含有量93%のクルクミン100gを秤量し、撹拌下で95%エタノール1000gに溶解させた。VC1.0gおよびパルミチン酸アスコルビル1.0gをゆっくりと加えた。そのプロセスの間、混合物を35℃~40℃までゆっくりと加熱し、完全に溶解するまでゆっくりと撹拌した。この混合物を、温度が65℃~75℃になるまで加熱し、0.08MPaの真空下でエタノールを蒸発させて、濃い黄色の粘性物質を得た。この粘性物質を真空乾燥炉に移し、0.09MPa、75℃~80℃の環境下で12時間乾燥させた。溶媒残留物が50ppm未満であることが確認され、VC-アスコルビン酸トロンボパルミテート(ascorbic thrombopalmitate)-クルクミン共結晶を得た。
【0052】
アラビアガム50g、ガティガム5g、α-シクロデキストリン10g、マルトデキストリン110gを秤量し、それらを脱イオン水467gに溶解して、濃度30重量%の水溶性コロイド溶液Aを調製した。VC-アスコルビン酸トロンボパルミテート-クルクミン共結晶25g秤量し、水溶性コロイド溶液Aに添加し、混合物を35℃~40℃に保ち、0.085MPaの乳化タンク真空の条件下で、クルクミンが均一に分散され流動性が良好になるまで50分間乳化し、クルクミンエマルションBが得られた。
【0053】
クルクミンエマルションBを湿式粉砕装置に投入し、1回目の粉砕を行った。粉砕媒体は0.3mm~0.4mmのジルコニアビーズであった。1200rpmで4時間、粒子径D90が0.7um未満になるまで粉砕した。その後、2回目の粉砕を行った。粉砕媒体は0.1mm~0.2mmのジルコニアビーズであった。粒子径D90が0.3um以下になるまで900rpmで3時間粉砕を行い、クルクミンエマルションCを得た。このクルクミンエマルションCを156MPaの圧力下で超高圧均質化にかけ、均一で安定したクルクミンエマルションDを得た。
【0054】
クルクミンエマルションDを10~12時間置いたところ、前記エマルションには層状の兆候が見られた。撹拌後、デンプンをマイクロカプセルのコーティング材料として用い、二次マイクロカプセル乾燥を行い、160℃~200℃の入口空気温度、70℃~100℃の出口空気温度、70℃~90℃の底部空気温度の条件で乾燥させ、クルクミン混合物を得た。
【0055】
試験の結果、クルクミンの含有量は10.12%、D90粒子径は432nm、水溶性は良好であった。濃度1重量%の水溶液中に10~12時間放置したところ、わずかにクルクミンが沈殿した。
【0056】
比較例4
クルクミンエマルションCを80MPaの圧力で均質化したこと以外は、実施例1のプロセスプランに従って、試験を行った。そのプロセスおよび結果は以下の通りである。
【0057】
含有量93%のクルクミン100gを秤量し、撹拌下で95%エタノール1000gに溶解させた。VC1.0gおよびパルミチン酸アスコルビル1.0gをゆっくりと加えた。そのプロセスの間、混合物を35℃~40℃までゆっくりと加熱し、完全に溶解するまでゆっくりと撹拌した。混合物を65℃~75℃に加熱し、-0.08Mpaの真空下でエタノールを蒸発させて、濃い黄色の粘性物質を得た。この粘性物質を真空乾燥炉に移し、0.09Mpa、75℃~80℃で12時間乾燥させ、溶媒残留物が50ppm未満であることを確認し、VC-アスコルビン酸トロンボパルミテート-クルクミン共結晶を得た。
【0058】
アラビアガム50g、ガティガム5g、α-シクロデキストリン10g、マルトデキストリン110gを秤量し、それらを脱イオン水467gに溶解して、濃度30重量%の水溶性コロイド溶液Aを調製した。VC-アスコルビン酸トロンボパルミテート-クルクミン共結晶25g秤量し、それを水溶性コロイド溶液Aに添加し、混合物を35℃~40℃に保ち、0.085MPaの乳化タンク真空の条件下で、クルクミンが均一に分散され流動性が良好になるまで50分間乳化し、クルクミンエマルションBが得られた。
【0059】
クルクミンエマルションBを湿式粉砕装置に投入し、1回目の粉砕を行った。粉砕媒体は0.3mm~0.4mmのジルコニアビーズであった。1200rpmで4時間、粒子径D90が0.7um未満になるまで粉砕した。その後、2回目の粉砕を行った。粉砕媒体は0.1mm~0.2mmのジルコニアビーズであった。粒子径D90が0.3um以下になるまで900rpmで3時間粉砕を行い、クルクミンエマルションCを得た。
【0060】
このクルクミンエマルションCを80MPaの圧力下で超高圧均質化にかけ、均一で安定したクルクミンエマルションDを得た。脱イオン水で5%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液を調製し、クルクミンエマルションDのゼータ電位を-38mvに調整し、クルクミンエマルションEを得た。マイクロカプセルのコーティング材料としてデンプンを用い、二次マイクロカプセル乾燥を行い、160℃~200℃の入口空気温度、70℃~100℃の出口空気温度、70℃~90℃の底部空気温度の条件で乾燥させ、クルクミン混合物を得た。
【0061】
試験後、前記クルクミン混合物は良好な水溶性を示し、クルクミンの含有量は10.3%、D90粒子径は398nmであり、濃度1重量%の水溶液中に10~12時間放置したところ、わずかにクルクミンが沈殿した。
【0062】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎない。当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良や修正が可能であり、これらの改良および修正も、本発明の保護範囲であるとみなされるべきである。