(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171535
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ガラスセラミック誘電体材料、焼結体及び高周波用回路部材
(51)【国際特許分類】
C03C 10/04 20060101AFI20221104BHJP
C04B 35/22 20060101ALI20221104BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C03C10/04
C04B35/22
H05K1/03 610D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181817
(22)【出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021077382
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】馬屋原 芳夫
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA10
4G062AA11
4G062BB01
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4G062QQ08
(57)【要約】
【課題】1000℃以下の温度で焼成でき、しかも20GHz以上での高周波領域において、低い誘電特性と高い熱膨張係数を有するガラスセラミック誘電体材料、焼結体及び高周波用回路部材を提供する。
【解決手段】本発明のガラスセラミック誘電体材料は、結晶性ガラス粉末とα石英粉末を含有するガラスセラミック誘電体材料であって、結晶性ガラス粉末の含有量が50~90質量%、α石英粉末の含有量が10~50質量%であり、且つ、結晶性ガラス粉末が、ガラス組成として、質量%で、SiO2 40~60%、CaO 20~40%、MgO 15~30%、Al2O3 1~8%、CuO 0.05~1%を含有することを特徴とするガラスセラミック誘電体材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ガラス粉末とα石英粉末を含有するガラスセラミック誘電体材料であって、
結晶性ガラス粉末の含有量が50~90質量%、α石英粉末の含有量が10~50質量%であり、
且つ、結晶性ガラス粉末が、ガラス組成として、質量%で、SiO2 40~60%、CaO 20~40%、MgO 15~30%、Al2O3 1~8%、CuO 0.05~1%を含有することを特徴とするガラスセラミック誘電体材料。
【請求項2】
結晶性ガラス粉末が、熱処理すると主結晶としてディオプサイド系結晶を析出することを特徴とする請求項1に記載のガラスセラミック誘電体材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガラスセラミック誘電体材料を焼結させた焼結体であって、
熱膨張係数が9~11ppm/℃であることを特徴とする焼結体。
【請求項4】
ディオプサイド系結晶とα石英を含有する焼結体であって、
ディオプサイド系結晶の含有量が50~90質量%、α石英の含有量が10~50質量%であることを特徴とする焼結体。
【請求項5】
28GHzでの比誘電率が5.2~5.9であることを特徴とする請求項3又は4に記載の焼結体。
【請求項6】
28GHzでの誘電正接が0.0010~0.0020であることを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の焼結体。
【請求項7】
誘電体層を有する高周波用回路部材であって、
誘電体層が請求項3~6のいずれかに記載の焼結体であることを特徴する高周波回路部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20GHz以上の高周波領域において、低い比誘電率及び誘電正接、高い熱膨張係数を有するガラスセラミック誘電体材料、焼結体及び高周波用回路部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミナセラミックは、配線基板や回路部品として広く使用されている。アルミナセラミックは、比誘電率が10と高いため、信号処理の速度が遅いという欠点がある。また、導体材料に高融点のタングステンを使用しなければならないため、導体損失が高くなるという欠点もある。
【0003】
その欠点を補うために、結晶性ガラス粉末とセラミック粉末からなるガラスセラミック誘電体材料が開発されており、その焼結体が誘電体層として使用されている。例えば、アルカリ硼珪酸ガラスからなる結晶性ガラス粉末を用いたガラスセラミック誘電体材料は、比誘電率が6~8であり、アルミナセラミック材料のそれよりも低い。また1000℃以下の温度で焼成し得るため、導体損失の低いAg、Cu等の低融点の金属材料との同時焼成が可能であり、これらを内層導体として使用し得るという長所がある(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-120436号
【特許文献2】特開平11-049531号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、5Gに代表される移動体通信機器、WiFi等のローカルネットワーク通信分野において、利用される周波数帯域が20GHz以上と高くなってきており、高周波領域において、ガラスセラミック誘電体材料の更なる低誘電正接化が強く求められるようになってきている。
【0006】
電磁波の電子回路での伝送損失は、回路基板の誘電率の平方根、誘電正接、電磁波の周波数の積に比例する。上記特許文献で開示されているガラスセラミック誘電体材料は、高周波領域における誘電特性、特に誘電正接が十分に低くないため、伝送損失が大きくなるという問題があった。
【0007】
また、従来のガラスセラミック誘電体材料は、熱膨張係数が4~8ppm/℃と低いため、樹脂のマザーボードに半田付けした後、ヒートサイクルをかけると、熱膨張差によって歪が生じ、断線や亀裂が生じるという不具合が発生することがあった。更に、従来のガラスセラミック誘電体材料は、銀配線と同時焼成したときの銀導体を変色させる虞があった。
【0008】
本発明の目的は、1000℃以下の温度で導体のAgを変色することなく焼成でき、しかも20GHz以上での高周波領域において、低い誘電特性と高い熱膨張係数を有するガラスセラミック誘電体材料、焼結体及び高周波用回路部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々の実験を重ねた結果、特定のガラス組成を有する結晶性ガラス粉末とα石英粉末とを複合化することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。即ち、本発明のガラスセラミック誘電体材料は、結晶性ガラス粉末とα石英粉末を含有するガラスセラミック誘電体材料であって、結晶性ガラス粉末の含有量が50~90質量%、α石英粉末の含有量が10~50質量%であり、且つ、結晶性ガラス粉末が、ガラス組成として、質量%で、SiO2 40~60%、CaO 20~40%、MgO 15~30%、Al2O3 1~8%、CuO 0.05~1%を含有することを特徴とする。
【0010】
なお、本発明において「結晶性ガラス粉末」とは、熱処理するとガラスマトリクス中から結晶を析出する性質を有する非晶質のガラス粉末を意味する。「熱処理」とは、700~1000℃で10分以上の熱処理をいう。
【0011】
本発明のガラスセラミック誘電体材料は、結晶性ガラス粉末が、熱処理すると主結晶としてディオプサイド系結晶を析出することが好ましい。「ディオプサイド系結晶」とは、ディオプサイド結晶(diopside、CaMg(Si2O6))、ディオプサイド固溶体結晶を指す。
【0012】
本発明の焼結体は、上記のガラスセラミック誘電体材料を焼結させた焼結体であって、熱膨張係数が9~11ppm/℃であることが好ましい。「熱膨張係数」は、30~380℃の温度範囲において、熱機械分析装置にて測定した値を指す。
【0013】
本発明の焼結体は、ディオプサイド系結晶とα石英を含有する焼結体であって、ディオプサイド系結晶の含有量が50~90質量%、α石英の含有量が10~50質量%であることを特徴とする。
【0014】
本発明の焼結体は、28GHzでの比誘電率が5.2~5.9であることが好ましい。
【0015】
本発明の焼結体は、28GHzでの誘電正接が0.0010~0.0020であることが好ましい。
【0016】
「比誘電率」と「誘電正接」は、ファインセラミックス基板のマイクロ波誘電特性の測定方法(JIS R1641)に基づいて、測定温度25℃、周波数28GHzで測定した値を指す。
【0017】
本発明の高周波回路部材は、誘電体層を有する高周波用回路部材であって、誘電体層が上記の焼結体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガラスセラミック誘電体材料は、1000℃以下の低温で焼成可能であり、Ag、Cu等の低融点の金属材料を内層導体として使用することができる。しかも20GHz以上の高周波領域において低い誘電特性を有し、熱膨張係数が9~11pm/℃と高い。よって、本発明のガラスセラミック誘電体材料は、樹脂製マザーボードに実装する高周波用回路部材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のガラスセラミック誘電体材料において、結晶性ガラス粉末の含有量が50~90質量%、α石英粉末の含有量が10~50質量%であり、結晶性ガラス粉末の含有量が55~85質量%、α石英粉末の含有量が15~45質量%、結晶性ガラス粉末の含有量が60~80質量%、α石英粉末の含有量が20~40質量%、特に結晶性ガラス粉末の含有量が65~75質量%、α石英粉末の含有量が25~35質量%であることが好ましい。α石英粉末は熱膨張係数を上昇させ、かつ比誘電率、誘電正接を低下させる効果があるため、α石英粉末が少なすぎると、熱膨張係数が低下し難く、比誘電率、誘電正接が上昇しやすくなる。一方、α石英粉末が多すぎると、焼成体の緻密化が困難になり、焼成体の曲げ強度が低下し易くなる。また、気孔が増加して電磁波が散乱されるため、誘電正接が上昇し易くなる。
【0020】
セラミック粉末として、α石英以外に他のセラミック粉末を導入してもよい。例えば、βトリジマイト、ムライト、ジルコニア、コージエライトの一種又は二種以上を使用することができる。
【0021】
なお、クリストバライトは低温型から高温型の相転移温度が200~275℃と低温にあり、かつ体積収縮が2~3%と大きく200℃までのヒートサイクルテストに弱いため、セラミック粉末として使用するには好ましくない。それに対しα石英の高温型石英への相転移温度は573℃と高温にあり、200℃までのヒートサイクルテストで体積が変化し難いため信頼性が高い。
【0022】
本発明のガラスセラミック誘電体材料において、結晶性ガラス粉末は、ガラス組成として、質量%で、SiO2 40~60%、CaO 20~40%、MgO 15~30%、Al2O3 1~8%、CuO 0.05~1%を含有する。各成分の含有範囲を上記のように限定した理由を以下に述べる。
【0023】
SiO2は、ディオプサイド系結晶の構成成分であり、ガラスのネットワークフォーマーとなる成分である。SiO2の含有量は40~60%であり、45~55%、46~54%、特に47~53%であることが好ましい。SiO2の含有量が少なすぎると、ガラス化が困難になる。また低誘電特性を得難くなる。一方、SiO2の含有量が多すぎると、焼成温度が高くなる傾向にあり、導体や電極としてAgやCuを使用できなくなる虞がある。
【0024】
CaOは、ディオプサイド系結晶の構成成分であり、結晶性ガラス粉末の軟化点を低下させる成分である。CaOの含有量は20~40%であり、21~35%、22~30%、23~30%、24~29%であることが好ましい。CaOの含有量が少なすぎると、軟化点が高くなり過ぎる。また、結晶化度が低下して誘電正接が0.0020以上になり易くなる。一方、CaOの含有量が多すぎると、ガラス化が困難になる。また、誘電正接が0.0020以上になり易くなる。
【0025】
MgOは、ディオプサイド系結晶の構成成分であり、結晶性ガラス粉末の軟化点を低下させる成分である。MgOの含有量は15~30%であり、16~25%、16~22%、特に17~19%であることが好ましい。MgOの含有量が少なすぎると、軟化点が高くなり過ぎる。また、誘電正接が大きくなり易くなる。一方、MgOの含有量が多すぎると、ガラス化が困難になる。また、結晶化度が低下して誘電正接が大きくなり易くなる。
【0026】
ディオプサイドはSiO2:MgO:CaO=2:1:1のモル比で構成されている。ガラス組成がこのモル比に近づくほど結晶化度が上昇し、誘電正接は減少し易くなる。そのため、
モル比SiO2/MgOは、1.3~2.2、特に1.4~2.1であることが好ましく、モル比SiO2/CaOは、1.3~2.2、特に1.4~2.1であることが好ましく、モル比MgO/CaOは、0.8~1.2、特に0.9~1.1であることが好ましい。
【0027】
Al2O3は溶融時のガラスの失透を抑える成分である。Al2O3の含有量は1~8%であり、2~7%、特に3~6%であることが好ましい。Al2O3の含有量が少なすぎると、ガラスが失透し易くなる。一方、Al2O3の含有量が多すぎると、軟化点が上昇し1000℃以下での焼結が困難となる。
【0028】
CuOは銀配線と同時焼成したときの銀の変色を抑える成分である。CuOの含有量は0.05~1%であり、0.07~0.6%、特0.1~0.4%であることが好ましい。CuOの含有量が少なすぎると、銀の変色を抑える効果が少なくなる。一方、CuOの含有量が多すぎると、誘電正接が大きくなり易くなる。
【0029】
上記成分以外にも、誘電特性を損なわない範囲でB2O3、ZnO等の成分をそれぞれ3%まで添加してもよい。
【0030】
なお、アルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、K2O)は、焼成温度を低下させる成分であるが、誘電正接を上昇させる成分である。よって、Li2O+Na2O+K2Oの含有量は3%未満であり、好ましくは2%以下、1%未満、0.5%未満、特に0.1%未満であることが好ましい。なお、Li2Oの含有量は、好ましくは0.5%未満、特に0.1%未満である。Na2Oの含有量は、好ましくは0.5%未満、特に0.1%未満である。K2Oの含有量は、好ましくは0.5%未満、特に0.1%未満である。
【0031】
上記組成を有する結晶性ガラスを熱処理すると、ディオプサイド系結晶が析出することが好ましい。ディオプサイド系結晶をガラス中に析出させることにより、比誘電率、誘電正接を低下させ易くなる。なお、ディオプサイド結晶の他に、アケルマナイト(akermanite、Ca2Mg(Si2O7))、ゲーレナイト(gehlenite、Ca2Al(AlSiO7))、エンスタタイト(enstatite、Mg2(Si2O6))、ウォルステライト(wollastonite、CaSiO3))、フォルステライト(forsterite、Mg2(SiO4))、モンティセライト(monticellite、CaMg(SiO4))等の結晶相を同時に析出させてもよい。
【0032】
本発明の焼結体は、上記のガラスセラミック誘電体材料を焼結させた焼結体である。本発明の焼結体において、焼結体の熱膨張係数は9~11ppm/℃、特に9.2~10.8ppm/℃であることが好ましい。焼結体の熱膨張係数が低過ぎると、樹脂のマザーボードに半田付けした後、ヒートサイクルをかける場合に、熱膨張差によって歪が生じ易くなる。
【0033】
本発明の焼結体において、28GHzでの比誘電率は5.2~5.9、5.3~5.8、特に5.4~5.7であることが好ましく、28GHzでの誘電正接は0.0010~0.0020、0.0012~0.0019、特に0.0013~0.0018であることが好ましい。比誘電率や誘電正接が高くなると、伝送信号の損失が大きくなり易く、また信号処理の速度が遅くなり易い。
【0034】
本発明の焼結体は、ディオプサイド系結晶の含有量が50~90質量%、α石英の含有量が10~50質量%、ディオプサイド系結晶の含有量が55~85質量%、α石英の含有量が15~45質量%、ディオプサイド系結晶の含有量が60~80質量%、α石英の含有量が20~40質量%、特にディオプサイド系結晶の含有量が65~75質量%、α石英の含有量が25~35質量%であることが好ましい。α石英が少なすぎると、熱膨張係数が低下し難く、比誘電率、誘電正接が上昇しやすくなる。一方、α石英が多すぎると、焼結体の緻密化が困難になり、焼結体の曲げ強度が低下し易くなる。また、気孔が増加して電磁波が散乱されるため、誘電正接が上昇し易くなる。なお、焼結体中にガラス相が残存していても構わない。
【0035】
次に本発明の焼結体の製造方法を以下に述べる。
【0036】
まず、上記の結晶性ガラス粉末とα石英粉末の混合粉末に、所定量の結合剤、可塑剤及び溶剤を添加してスラリーを調製する。結合剤としては例えばポリビニルブチラール樹脂、メタアクリル酸樹脂等、可塑剤としては例えばフタル酸ジブチル等、溶剤としては例えばトルエン、メチルエチルケトン等が好適である。
【0037】
次いで上記のスラリーを、ドクターブレード法によってグリーンシートに成型した後、乾燥させ、所定寸法に切断してから、機械的加工を施してバイアホールを形成し、例えば、銀導体や電極となる低抵抗金属材料をバイアホール及びグリーンシート表面に印刷する。次いでこのようなグリーンシートを複数枚積層し、熱圧着によって一体化する。
【0038】
更に、積層グリーンシートを焼成すると焼結体を得ることができる。このようにして作製された焼結体は、内部や表面に導体や電極を備えている。なお、導体損失の低いAg、Cu等の低融点の金属材料を使用する観点から、焼成温度は1000℃以下、特に800~950℃の温度であることが望ましい。
【0039】
焼結体の製造方法として、グリーンシートを用いる例を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、バインダーを含む顆粒を作製して、プレス成型を行う等の各種方法を適用することができる。
【0040】
本発明の高周波用回路部材は、配線でコイルを形成したり、上記のようにして作製した焼結体表面上にSi系やGaAs系の半導体素子のチップを接続したりすることで作製することができる。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
表1は本発明の実施例(試料No.1~4)および比較例(試料No.5、6)を示す。
【0043】
【0044】
まず、表1の組成となるように、各種酸化物のガラス原料を調合し、均一に混合した後、白金坩堝に入れて1400~1500℃で3~8時間溶融し、水冷ローラーによって溶融ガラスを薄板状に成形した。次いで、これを粗砕した後、アルコールを加えてボールミルにより湿式粉砕し、平均粒径が1.5~3μmとなるように分級して結晶性ガラス粉末を得た。
【0045】
次に、上記の結晶性ガラス粉末に、表に示す量のα石英粉末(平均粒径:2μm)又はアルミナ粉末(平均粒径:2μm)を均一に混合してガラスセラミック誘電体材料を得た。
【0046】
続いて、上記のガラスセラミック誘電体材料に、結合剤としてポリビニルブチラールを15質量%、可塑剤としてブチルベンジルフタレートを4質量%、及び溶剤としてトルエンを30質量%添加してスラリーを調整した。次いで、上記のスラリーをドクターブレード法によってグリーンシートに成形し、乾燥させ、所定寸法に切断した後、複数枚を積層し、熱圧着によって一体化した。更に、積層グリーンシートを、焼成することによって焼結体を得た。
【0047】
このようにして得られた各試料について、焼成温度、析出結晶、銀導体の変色、誘電特性、熱膨張係数、焼結体中のディオプサイド系結晶及びα石英の含有量を評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
焼成温度は、種々の温度で焼成した焼結体にインクを塗布した後に拭き取り、インクが残らない(=緻密に焼結した)最低の温度を表記したものである。
【0049】
析出結晶は、粉末X線回折装置(株式会社リガク RINT2100)によって同定した。
【0050】
銀導体の変色の有無はグリーンシートに銀ペーストを印刷し、所定の焼成温度で焼成した後、銀の色調を目視で観察した。銀が茶色に変色している場合は変色ありとした。
【0051】
比誘電率と誘電正接は、グリーンシート成型したものを表中に示す焼成温度で焼結した後、25mm×50mm×0.1mmの大きさに加工して、測定試料とした上で、ファインセラミックス基板のマイクロ波誘電特性の測定方法(JIS R1641)に基づいて、測定温度25℃、周波数28GHzで測定したものである。
【0052】
熱膨張係数は、30~380℃の温度範囲において、熱機械分析装置にて測定したものである。
【0053】
焼結体中のディオプサイド系結晶及びα石英の含有量は、粉末X線回折装置(株式会社リガク RINT2100)によって測定した。
【0054】
表1から明らかなように、実施例である試料No.1~4は、ガラスセラミック誘電体材料の比誘電率は5.2~5.9であり、誘電損失は0.0013~0.0016と小さかった。また、焼成温度も900℃以下と低く、熱膨張係数は、9.3~11.0ppm/℃であった。一方、試料No.5は、CuOを含まないため銀導体が変色した。試料No.6は、セラミック粉末がアルミナであるため、比誘電率が7.5と高く、熱膨張係数が8.2ppm/℃と低かった。