(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171541
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】酸化染毛剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20221104BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20221104BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61K8/41
A61Q5/10
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194667
(22)【出願日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021076956
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭実
(72)【発明者】
【氏名】唐渡 誠
(72)【発明者】
【氏名】園田 朋也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB012
4C083AB082
4C083AB282
4C083AB332
4C083AB352
4C083AB412
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC352
4C083AC532
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC642
4C083AC692
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD512
4C083BB53
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD08
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE26
4C083EE27
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、脱染性能を向上でき、さらに均染性を向上できる酸化染毛剤を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、第1剤と第2剤を混合することにより得られる酸化染毛剤であって、(A)カプラーを含有し、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、前記(A)成分の含有量が0.3質量%以上であり、前記第1剤と第2剤を混合し、混合の20分後における体積増加率が30%以上であることを特徴とする酸化染毛剤が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤と第2剤を混合することにより得られる酸化染毛剤であって、
(A)カプラーを含有し、
(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、
前記(A)成分の含有量が0.3質量%以上であり、
前記第1剤と第2剤を混合し、混合の20分後における体積増加率が30%以上であることを特徴とする酸化染毛剤。
【請求項2】
前記(A)成分として2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有し、
酸化染毛剤中の2,4-ジアミノフェノキシエタノールの含有量が0.3質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
さらに(C)触媒、及び(D)酸化剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化染毛剤。
【請求項4】
前記(C)成分の含有量が0.005質量%以上0.25質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の酸化染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプラーを含有する酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される酸化染毛剤が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させる。酸化剤は、毛髪中のメラニン色素を分解するとともに、毛髪内部で酸化染料重合体を形成させる。アルカリ剤が除去された後、毛髪のキューティクルが閉じて、酸化染料重合体が毛髪内部に封入される。
【0003】
毛髪内部の酸化染料重合体は、容易に分解しないため、脱染性能が低く、通常酸化染毛剤を用いて染毛処理を行った後、別の色に再染毛する場合、一旦脱染剤を用いて脱染処理する必要があった。さらに一度の脱染処理では十分に脱染できない場合もあった。
【0004】
従来より、毛髪内部の暗い色調の酸化染料重合体を脱染剤による脱染処理を行うことなく分解させ、毛髪をクリアな明るい色調に再染色するために用いられる酸化染毛剤が知られている。例えば特許文献1に開示される酸化染毛剤は、染料の主成分としてジアミン系の染料中間体等を含有することにより、脱染性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、脱染性能を向上でき、さらに均染性を向上できる酸化染毛剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、カプラーの含有量に対する染料中間体の比率を特定の質量比とし、さらに発泡後の体積増加率を特定値以上とすることにより、脱染性能と均染性を向上できることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、第1剤と第2剤を混合することにより得られる酸化染毛剤であって、
(A)カプラーを含有し、
(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、
前記(A)成分の含有量が0.3質量%以上であり、
前記第1剤と第2剤を混合し、混合の20分後における体積増加率が30%以上であることを特徴とする酸化染毛剤である。
これにより、本発明の酸化染毛剤は、脱染性能を向上することができる。さらに、本発明の酸化染毛剤は、体積増加率が30%以上として、酸化染毛剤の体積を増加させることにより、限られた量の剤でも塗りムラを抑制することができ、均染性を向上することができる。
【0009】
また、本発明は、前記(A)成分として2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有し、
酸化染毛剤中の2,4-ジアミノフェノキシエタノールの含有量が0.3質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸化染毛剤である。
これにより、本発明の酸化染毛剤は、染毛力をより向上することができる。
【0010】
また、本発明は、さらに(C)触媒、及び(D)酸化剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化染毛剤である。
これにより、本発明の酸化染毛剤は、触媒と酸化剤の反応により、発泡し、染毛力を向上することができる。
【0011】
また、本発明は前記(C)成分の含有量が0.005質量%以上0.25質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の酸化染毛剤である。
これにより、本発明の酸化染毛剤は、触媒と酸化剤による発泡量を適切に制御し、均染性をより向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脱染性能を向上し、さらに均染性を向上できる酸化染毛剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[酸化染毛剤]
本発明は、第1剤と第2剤を混合することにより得られる酸化染毛剤であって、
(A)カプラーを含有し、
(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、
前記(A)成分の含有量が0.3質量%以上であり、
前記第1剤と第2剤を混合し、混合の20分後における体積増加率が30%以上であることを特徴とする酸化染毛剤である。
これにより、本発明の酸化染毛剤は、脱染性能を向上することができる。さらに、本発明の酸化染毛剤は、体積増加率を30%以上として、酸化染毛剤の体積を増加させることにより、限られた量の剤でも塗りムラを抑制することができ、均染性を向上することができる。
【0014】
本発明の酸化染毛剤は、多剤式酸化染毛剤、好ましくは2剤式酸化染毛剤の酸化染毛剤である。2剤式酸化染毛剤は、酸化染料を含む第1剤及び酸化剤を含む第2剤からなり、使用に際して、第1剤と第2剤が混合されて使用される。本発明における酸化染毛剤とは、多剤式の酸化染毛剤の、例えば第1剤と第2剤の混合物の状態を示し、その組成とは、例えば第1剤と第2剤の混合物の組成を示す。
【0015】
本発明の酸化染毛剤は、第1剤と第2剤の混合の際に自己発泡するか又は混合する際の使用者による泡の形成により体積が増加する。これらの中でも染毛力の観点から自己発泡が好ましい。酸化染毛剤の混合による自己発泡としては、例えば、酸化剤と酸化剤を分解する触媒の混合による酸素の発生、炭酸塩と炭酸塩を分解可能な酸の混合による炭酸ガスの発生などが挙げられる。このような自己発泡の例としては、酸化剤と酸化剤を分解する触媒であるヨウ素化合物の反応による自己発泡などが挙げられる。使用者による泡の形成としては、酸化染毛剤を振とう容器に充填して振とうにより泡を形成することが挙げられ、ノンエアゾールフォーマー等の公知の起泡装置による泡の形成が挙げられる。
【0016】
本発明の酸化染毛剤は、混合の20分後における体積増加率が30%以上である。体積増加率の下限値としては、均染性の向上の観点から、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70以上である。上限値としては、染毛力の向上の観点から好ましくは350%以下であり、より好ましくは200%以下である。混合の20分後における体積増加率とは混合前と混合の際に第1剤と第2剤が接触した時から20分後における酸化染毛剤の体積の増加率であり、混合前に予め測定した第1剤、第2剤それぞれの体積の和(mL)をα、第1剤、第2剤の接触直後から20分経過後の酸化染毛剤の体積(mL)をβとしたとき以下の式で求められる。
体積増加率(%)=[(β―α)/α]×100
【0017】
2剤式の酸化染毛剤の第1剤と第2剤の混合比は、酸化染毛剤の混合物中の各成分の濃度、混合性、適用方法等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは0.1~10:1で、より好ましくは0.5~2:1である。酸化染毛剤の剤型は、毛髪に適用できる剤型であれば特に限定されず、具体例として25℃における剤型が、例えばゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。刷毛での取り易さや毛髪への伸び及び密着性が向上して、塗布操作性に優れるという観点から、クリーム状、フォーム状とすることが好ましい。
【0018】
酸化染毛剤を毛髪に適用する手段としては、櫛、ブラシ、刷毛、アプリケーター等の塗布具を用いて毛髪に適用すればよい。また、手袋を着用した手で酸化染毛剤を毛髪に適用してもよい。
【0019】
酸化染毛剤は、2剤式に限定されず、第1剤及び第2剤に含有される各成分の一部を別剤として構成し、3剤式以上に構成してもよい。例えば、2剤式の第1剤について、カプラー及び任意成分であるアルカリ剤を含有する剤と、それ以外の組成を有する剤の2つに分け、3剤式の酸化染毛剤として構成してもよい。この場合、乳化安定性がより向上する。
【0020】
以下、本発明の酸化染毛剤の成分について例示する。尚、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤を使用する場合、それらも含めた剤型中における数値である。
【0021】
[(A)カプラー]
本発明の酸化染毛剤は、カプラーを含有する。(A)カプラーの具体例としては、例えば2,4-ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール(1-ナフトール)、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。一種の(A)成分を単独で使用してもよく、二種以上の(A)成分を組み合わせて使用してもよい。(A)カプラーとしては、好ましくは2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2,6-ジアミノピリジン、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、1-ナフトール、5-アミノ-o-クレゾール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、m-アミノフェノール、及びそれらの塩が使用できる。
【0022】
本発明の酸化染毛剤中には(A)カプラーは0.3質量%以上含有される。これにより、酸化染毛剤の染毛力を向上することができる。染毛力の観点から、下限値は、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上、よりさらに好ましくは0.7質量%以上である。上限値は、脱染性能の向上の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3.5質量%以下である。(A)カプラーの含有量が10質量%以下であると、脱染性能をより向上でき、可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上できる。なお、(A)カプラーが塩である場合、(A)カプラーの含有量はその脱塩型での値とする。
【0023】
また、酸化染毛剤中の2,4-ジアミノフェノキシエタノールの含有量が0.3質量%以上であることが好ましい。これにより染毛力を向上することができる。2,4-ジアミノフェノキシエタノールの含有量が0.3質量%以上であると、塗りムラが多くなる傾向があるが、本発明の酸化染毛剤においては、体積増加率が30%以上であり、酸化染毛剤の体積が増加しているため、塗りムラが抑制され、均染性が向上される。
【0024】
[(B)染料中間体]
本発明の酸化染毛剤は染料中間体を含有してもよい。染料中間体としては、主としてo-又はp-のフェニレンジアミン類あるいはアミノフェノール類である染料前駆物質であり、通常、それ自体は無色か又は弱く着色した化合物である。
具体的には、p-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(p-トルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール及びそれらの塩類等が例示される。
【0025】
酸化染料には、上記した各化合物の酸付加塩等が含まれる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸の付加塩、酢酸塩等の有機酸の付加塩が挙げられる。酸化染料の酸付加塩の含有量は、特に制限されないが、乳化安定性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0026】
これらの酸化染料は、所望する色調に応じて1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0027】
酸化染毛剤中において、(A)カプラーの含有量に対する全(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)は、0.4以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。かかる質量比(B/A)が0.4以下であると、脱染性能を向上できる。なお、(A)カプラー及び(B)染料中間体が塩である場合、上記質量比の算出に用いられる含有量は、(A),(B)ともにそれらの脱塩型での値とする。
【0028】
酸化染毛剤中における(B)染料中間体の含有量の上限は、上記含有量の質量比(B/A)の範囲内において適宜設定されるが、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは酸化染毛剤は(B)染料中間体を実質的に含有しない。本発明において「実質的に含有しない」とは、含有量が0.1質量%以下であることを意味する。(B)染料中間体の含有量が1質量%以下であると、脱染性能をより向上でき、可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上できる。なお、(B)染料中間体が塩である場合、(B)染料中間体の含有量はその脱塩型での値とする。
【0029】
[(C)触媒]
本発明の酸化染毛剤は、酸化剤を分解する(C)触媒を含有することが好ましい。酸化剤を分解する触媒は、酸化剤と混合した際に反応し、その結果、酸化染毛剤が自己発泡する。このような(C)触媒としては、ヨウ素化合物、金属化合物、非金属触媒、などが挙げられる。
【0030】
ヨウ素化合物としては、ヨウ素(I2)の他、可溶化剤中で遊離する対イオンを伴うヨウ素化合物、使用時にヨウ素を遊離する化合物等が挙げられる。ヨウ素化合物の具体例としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化アンモニウム等のヨウ素化合物のアルカリ金属塩や、ヨウ化水素、ヨウ化セシウム、ヨウ化銀等が挙げられる。また、ヨウ素を含有する天然素材、例えばヨウ化ニンニクエキス等のヨウ素化合物を含有するエキス等を適用してもよい。一種のヨウ素化合物を単独で使用してもよく、二種以上のヨウ素化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
金属化合物としては、鉄、銅、銀、白金、リチウム、セリウム、コバルト、マンガン、ニッケル、バナジウム、ナトリウム、カリウムなどの金属化合物が挙げられる、金属のヨウ素化合物が好ましい。金属化合物の具体例としては、オキシ硫酸バナジウム水和物、塩化銅、硫酸銅、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化リチウム、酢酸マグネシウム、重クロム酸カリウム、硝酸バリウム、塩化コバルト、硫酸セリウム、塩化セリウム、硫酸バナジウム、二酸化マンガンなどが挙げられる。
【0032】
非金属触媒としては、活性炭、カタラーゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素、それらを含むドライイーストなどが挙げられる。
【0033】
これらの中でも、染毛力の観点から、ヨウ素化合物が好ましく、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウムが好ましく、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウムがより好ましい。
【0034】
酸化染毛剤中における(C)触媒の含有量は、特に制限されないが、例えば0.001~5質量%である。下限値は、発泡量の観点から、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上である。上限値は、過大な発泡による染毛力の低下を抑制する観点から、好ましくは、0.3質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下である。
【0035】
また、ヨウ素化合物は、ヨウ素化合物を構成するヨウ素が過酸化水素を分解させて、酸化染料の重合を促進することで、染毛力を向上させる効果を有する。この観点から、下限値は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。
【0036】
[炭酸塩]
本発明の酸化染毛剤は、炭酸塩を含有してもよい。炭酸塩は、炭酸塩を分解可能な酸と混合した際に反応して自己発泡する。炭酸塩としては、特に限定されないが、炭酸イオンのカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩類、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類、またはアンモニウム塩などが挙げられる。炭酸水素イオンのカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩類、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類、または、アンモニウム塩などが挙げられる。これら炭酸塩のうち、好ましくは、発泡量の観点から、炭酸イオンのカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩類、マグネシウム塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類、またはアンモニウム塩、炭酸水素イオンのカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩類、マグネシウム塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類、またはアンモニウム塩から選択される炭酸塩であり、より好ましくは、炭酸イオンのカリウム、ナトリウムのアルカリ金属塩、またはアンモニウム塩、炭酸水素イオンのカリウム、ナトリウムのアルカリ金属塩、アンモニウム塩から選択される炭酸塩である。これらの炭酸塩は、少なくとも1または2種以上を含有してもよい。
【0037】
自己発泡を目的とした場合の炭酸塩の含有量は、特に制限されないが、例えば0.5~15質量%である。下限値は、発泡量の観点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上である。上限値は、過大な発泡による体積増加による染毛力の低下を抑制する観点から、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは7.5質量%以下である。
【0038】
上記した炭酸塩を分解可能な酸は、特に制限されないが、グリコール酸、酢酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸などの有機酸、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過酸化水素などの無機酸などが挙げられる。これらの中でも、好ましくはクエン酸、乳酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、安息香酸、リン酸、過酸化水素であり、より好ましくはヒドロキシエタンジホスホン酸、リン酸である。これらの酸は、少なくとも1または2種以上を含有してもよい。
【0039】
炭酸塩による自己発泡を用いる場合、さらに炭酸塩以外の2価金属塩を含有することが好ましい。炭酸塩以外の2価金属塩は炭酸塩を含有する剤と他の剤との混合を補助することにより、発泡性、泡の持続性を向上させることができる。このような2価金属塩は、典型金属、遷移金属を問わず特に限定されないが、マグネシウム、カルシウム、バリウムおよび亜鉛の塩酸塩、硫酸塩、乳酸塩、酢酸塩および臭素酸塩などが挙げられる。これら炭酸塩以外の2価金属塩のうち、好ましくは、マグネシウム、カルシウム、バリウム、または亜鉛の塩酸塩、硫酸塩および臭素酸塩から選択される2価金属塩であり、より好ましくは、マグネシウム、カルシウムの塩酸塩または硫酸塩から選択される2価金属塩である。これらの炭酸塩以外の2価金属塩は、少なくとも1または2種以上を含有してもよい。
【0040】
[(D)酸化剤]
本発明の酸化染毛剤は、酸化剤を含有することが好ましい。酸化剤は、酸化剤を分解する触媒との反応により酸素を発生し、発泡する。酸化剤は通常、酸化染毛剤の第2剤に含有される。酸化剤の具体例としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。一種の酸化剤を単独で使用してもよく、二種以上の酸化剤を組み合わせて使用してもよい。第2剤中における酸化剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは2.0質量%以上である。酸化剤の含有量が0.1質量%以上の場合、メラニンの脱色性をより向上することができる。また、第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。酸化剤の含有量が15.0質量%以下の場合、毛髪の損傷等をより抑制することができる。
【0041】
[アルカリ剤]
アルカリ剤は、毛髪を膨潤させて、染料や酸化剤の浸透を促進する作用を有するものである。アルカリ剤としては、例えば、アルカノールアミン、アンモニア、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が例示される。具体的には、アルカノールアミンとしてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、イソプロピルアミン等が例示され、ケイ酸塩としてはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が例示され、炭酸塩としては炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸グアニジン等が例示され、炭酸水素塩としては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が例示され、メタケイ酸塩としてはメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が例示され、リン酸塩としてはリン酸第1アンモニウム、リン酸第2アンモニウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が例示され、硫酸塩としては硫酸アンモニウムなどが例示され、塩化物としては塩化アンモニウムが例示され、有機アミンとしては2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジンが例示され、塩基性アミノ酸としてはアルギニン、リジン及びそれらの塩等が例示され、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物としては水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示される。
【0042】
酸化染毛剤におけるアルカリ剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.5~10質量%である。下限値として、より好ましくは0.75質量%であり、さらに好ましくは1質量%以上である。上限値として、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0043】
[その他の成分]
本発明の酸化染毛剤は、上記成分以外にも、必要に応じて以下の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、直接染料、油性成分、界面活性剤、無水亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、ソルビトール、マルトース等の糖類、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム二水塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム液等のキレート剤、酸、pH調整剤、育毛成分、植物抽出物、生薬抽出物、アミノ酸・ペプチド、尿素、ビタミン類、香料、及び紫外線吸収剤が挙げられる。
【0044】
<直接染料>
本発明の酸化染毛剤は直接染料を含有してもよい。直接染料は、色を有する化合物であり、毛髪に付着、又は浸透して染毛する染料であれば特に制限されるものではない。例えば、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、HC染料、分散染料等が挙げられる。染毛力の観点から酸性染料を含むことが好ましい。
また、これらの直接染料は、所望する毛髪の色調に応じて単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0045】
酸性染料の具体例としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色401号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、かっ色201号、黒色401号等が挙げられる。
【0046】
塩基性染料の具体例としては、例えば、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Blue 75、Basic Blue 99、Basic Blue 124、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Orange 31、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等が挙げられる。
【0047】
天然染料の具体例としては、例えば、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素、ヘナ等が挙げられる。
【0048】
ニトロ染料の具体例としては、例えば、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩等が挙げられる。
【0049】
HC染料の具体例としては、例えば、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Blue No.16、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等が挙げられる。
【0050】
分散染料の具体例としては、例えば、Disperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等が挙げられる。
【0051】
酸化染毛剤における直接染料の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.001質量%以上20.0質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは15.0質量%以下であり、さらに好ましくは10.0質量%以下であり、特に好ましくは5.0質量%以下である。
【0052】
<油性成分>
本発明の酸化染毛剤は油性成分を含有してもよい。油性成分は、例えば、高級アルコール、油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、エステル類、シリコーン油、フッ素油等が例示される。これらの油性成分から、1種又は2種以上を選んで用いることができる。
【0053】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、フィトステロール、フィトスタノール、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、エルゴステロール等が挙げられる。
【0054】
油脂は、トリグリセリドすなわち脂肪酸とグリセリンとのトリエステルである。例えば、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0055】
ロウ類は、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルである。例えば、ミツロウ(蜜蝋)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等が挙げられる。
【0056】
炭化水素は、炭素と水素よりなる化合物である。例えば、流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、イソパラフィン類、オゾケライト、セレシン、ポリエチレン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、合成スクワラン、スクワレン、水添スクワラン、リモネン、テレビン油等が挙げられる。
【0057】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0058】
エステル類は、脂肪酸とアルコールとの脱水反応によって得られる化合物である。例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルへキシル、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、脂肪酸(C10-30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0059】
シリコーン油は、有機基のついたケイ素と酸素が化学結合により交互に連なった合成高分子である。例えば、ジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650~10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0060】
上記のうち、アミノ変性シリコーンとしては、例えば、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。
【0061】
酸化染毛剤における油性成分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.1~20質量%である。下限値として、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、よりさらに好ましくは1質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。上限値としては、より好ましくは17質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、よりさらに好ましくは12質量以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
【0062】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
なお、以下の記載において、POEはポリオキシエチレン鎖、POPはポリオキシプロピレン鎖を示し、これに続くカッコ内の数字は、その付加モル数を示している。また、アルキルに続くカッコ内の数字は、脂肪酸鎖の炭素数を示している。
【0063】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが例示される。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンは、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンのいずれであってもよい。
【0064】
より具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、POEラウリルエ-テルリン酸及びその塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩類(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-ラウロイルメチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの高級脂肪酸の塩が例示される。これらのアニオン性界面活性剤は1又は2種以上を使用することができる。
【0065】
酸化染毛剤におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.01~5質量%である。下限値として、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.07質量%以上であり、特に0.1質量%以上である。上限値として、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、よりさらに好ましくは2.5質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。
【0066】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩類、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩等のアミン塩類、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリウム塩等の環式4級アンモニウム塩類、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0067】
好ましくは、アルキル4級アンモニウム塩類であり、更に好ましくは、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩であり、特に好ましくは、モノアルキル型4級アンモニウム塩である。
【0068】
モノアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化アルキル(28)トリメチルアンモニウム、塩化ジPOE(2)オレイルメチルアンモニウム、塩化ジPOEステアリルメチルアンモニウム、塩化POE(1)POP(25)ジエチルメチルアンモニウム、塩化POPメチルジエチルアンモニウム、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。特に好ましくは、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムである。
【0069】
ジアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジアルキル(12~15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0070】
酸化染毛剤におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.01~10質量%である。下限値として、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.07質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。上限値として、より好ましくは7.5質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、よりさらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1.5質量%以下である。
【0071】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEモノ脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、アルキルポリグルコシド類等が挙げられる。POEアルキルエーテル類の具体例としては、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEラノリン、POEフィトステロール等が挙げられる。
POE、POPの繰り返し単位数としては、例えば、2~100が挙げられ、界面活性作用を示すものであればいずれのものも使用可能である。
【0072】
酸化染毛剤におけるノニオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.001~30質量%である。下限値として、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.05質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは0.2質量%以上である。上限値として、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、よりさらに好ましくは7質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
【0073】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(ラウロアンホ酢酸Na)、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエトキシエチル-N’-カルボキシエチルエチレンジアミン二ナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシメトキシエチル-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、パーム油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のグリシン型両性界面活性剤;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミン等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;等が挙げられる。
ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0074】
酸化染毛剤における両性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.001~5質量%である。下限値として、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。上限値として、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2.5質量%以下である。
【0075】
酸化染毛剤における全ての界面活性剤の総含有量としては、特に制限されないが、好ましくは0.01~50質量%である。下限値として、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上である。上限値として、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下である。
【0076】
本発明の酸化染毛剤の作用及び効果について説明する。
【0077】
(1)本発明の酸化染毛剤は、染料中間体を実質的に含有せず酸化染料としてカプラーのみを含有するか、又はカプラーを全染料中間体に対して所定比率以上含有する。したがって、脱染性能を向上できる。
【0078】
染料中間体同士の重合体、又は染料中間体とカプラーの重合物は、アルカリ剤や酸化剤で分解されにくいといった特徴をもつため、次回以降に明るい色調に染毛処理できないという問題があった。本発明の酸化染毛剤は、染料中間体を実質的に含有せず酸化染料としてカプラーのみを含有するか、又はカプラーを全染料中間体に対して所定比率以上含有することにより、アルカリ剤にて分解されやすい重合物を形成するため、脱染性能に優れ、次回以降のヘアカラーへの影響が少なくなる。それにより、次回のヘアカラーを考慮せずに様々なヘアカラーを楽しむことができる。
【0079】
(2)本発明の酸化染毛剤は染料中間体を実質的に含有しない又はその含有量が微量であるため、例えば特定の染料中間体に対してアレルギーを有する対象者にも使用できる可能性がある。
【0080】
(3)本発明の酸化染毛剤は、混合20分後の体積増加率が30%以上であり、酸化染毛剤の体積を増加しているため、限られた量の剤でも塗りムラを抑制することができ、均染性を向上することができる。
【0081】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
【0082】
[酸化染毛剤の評価]
酸化染毛剤として、表1に示す各成分を含有するクリーム状の第1剤、表2に示す各成分を含有する乳液状の第2剤をそれぞれ調製した。以下各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。
【0083】
以下表中の2,4-ジアミノフェノキシエタノールは、原料である2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩を、pH調整剤としてNaOHを用いて中和したものである。2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩は1モルあたり2モルの塩酸を生じるため、2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩:NaOH=1:2モルの割合で配合することにより中和した。つまり、第1剤中には2,4-ジアミノフェノキシエタノールがフリー態として含有される。
【0084】
【0085】
【0086】
(体積増加率の評価方法)
表1、2に示す第1剤及び第2剤を、表3に示す組み合わせで1:1の質量比で混合して、各例の酸化染毛剤の混合物の体積増加率を評価した。
評価は、100mLメスシリンダに第1剤を5g、第2剤を5gそれぞれ投入し、ガラス棒にて均一になるまで撹拌し、25℃における混合前に予め測定した第1剤、第2剤それぞれの体積の和と20分後における体積を測定して比較することにより体積増加率を算出し、以下の基準で評価した。
(体積増加率)
過大:混合20分後の体積増加率が350%以上
大:混合20分後の体積増加率が200%以上350%未満
中:混合20分後の体積増加率が50%以上200%未満
小:混合20分後の体積増加率が30%以上50%未満
微小:混合20分後の体積増加率が30%未満
なお、体積増加率は混合前後における酸化染毛剤体積の増加率であり、混合前に予め測定した第1剤、第2剤それぞれの体積の和(mL)をα、第1剤、第2剤の接触直後から20分経過後の酸化染毛剤の体積(mL)をβとして以下の式を用いて算出した。
体積増加率(%)=[(β―α)/α]×100
【0087】
(脱染性能の評価方法)
下記表3に示す各実施例及び比較例について、第1剤及び第2剤を、1:1の質量比で混合して、各例の酸化染毛剤の混合物を調製した。長さ10cmの評価用の白毛の毛束サンプル(ビューラックス社製)(以下、単に毛束という。)1gに対して、得られた混合物3gを刷毛を用いて塗布した。混合物を毛束に塗布してから40分後に、毛束に付着した混合物を水で洗い流し、毛束にシャンプー(ホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(ホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥し、各例の染毛処理毛束を得た。
【0088】
染毛処理が施された各例の毛束について、上記染毛処理の翌日、下記に示す方法に従い脱染性能又は染毛力について評価を行った。
【0089】
上記のように得られた各例の染毛処理毛束に対し、更に一般的な脱色・脱染剤である「レセパウダーブリーチ」(ホーユー社製)を用いて、常法に従い脱染処理を行うことにより脱染処理毛束を得た。
【0090】
そして、パネラー10名が、脱染処理毛束の染毛色調について、非処理の白毛の毛束との対比により、脱染性能が良好であるか否かを標準光源下で目視にて観察した。これらの毛束との対比観察の結果を総合して、脱染性能を評価し、以下の基準で判断した。脱染性能が優れる場合を、優れる(5点)、脱染性能が良好な場合を、良好(4点)、脱染性能がやや良好な場合を、可(3点)、脱染性能がやや悪い場合を、やや不良(2点)、脱染性能が悪い場合を、不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.7点以上を「非常に優れる:6」、4.0点以上4.7点未満を「優れる:5」、3.3点以上4.0点未満を「良好:4」、2.6点以上3.3点未満を「可:3」、1.9点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.9点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。
【0091】
(均染性の評価方法)
上記した脱染性能の評価と同様の方法で得られた各例の染毛処理毛束について、色ムラの程度を10名のパネラーが目視で観察し、色ムラがあるか否かを評価(官能評価)した。具体的には、「ムラなく染まっている」場合を「4」、「ほぼムラなく染まっている」場合を「3」、「ムラが多い」場合を「2」、「ムラが非常に多い」場合を「1」とした。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が3.6点以上を「◎」、2.6点以上3.6点未満を「〇」、1.6点以上2.6点未満を「△」、及び1.6点未満を「×」とし、評価結果とした。
【0092】
(染毛力の評価方法)
上記のように得られた各例の染毛処理毛束について、パネラー10名が、標準光源下で目視にて発色度合いを、以下の基準で評価することにより、発色が良いか否かについて判断した。非常に良く染まっている(5点)、良く染まっている(4点)、染まっている(3点)、染まりが僅かに浅い(2点)、染まりが浅い(1点)の5段階で採点し、そして、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。
【0093】
【0094】
表3に示されるように、各実施例は、脱染性能に優れることが確認された。
【0095】
また、混合の20分後の体積増加率30%以上である実施例においては、塗りムラが抑制され、均染性に優れることが確認できた。発泡量の観点から酸化剤を分解する触媒であるヨウ化カリウムの量は0.005質量%以上が好ましいことが分かった。
【0096】
また、過大な発泡(体積増加率350%以上)が見られた実施例1では、体積増加により酸化染毛剤が希釈され、染毛力が低下することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の酸化染毛剤は、ヒトの頭髪、髭、眉毛、すね毛等の体毛を染毛するための染毛剤として利用することができる。その他、ペット等の動物の体毛を染毛するために利用してもよい。
本発明の酸化染毛剤は、美容室、理容室等におけるカラーリング用の染毛剤、セルフカラーリング用の染毛剤に利用することができる。