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特開2022-171542酸化染毛剤及び酸化染毛剤の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171542
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】酸化染毛剤及び酸化染毛剤の使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20221104BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61K8/41
A61Q5/10
A61K8/34
A61K8/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194668
(22)【出願日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021076957
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭実
(72)【発明者】
【氏名】唐渡 誠
(72)【発明者】
【氏名】園田 朋也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB012
4C083AB082
4C083AB282
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB412
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC152
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC352
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC582
4C083AC692
4C083AC792
4C083AD042
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD262
4C083AD512
4C083AD642
4C083BB53
4C083CC36
4C083DD31
4C083EE07
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上し、さらに混合によって過度な発熱を抑制することができる酸化染毛剤及び酸化染毛剤の使用方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備える酸化染毛剤であって、酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、酸化染毛剤は、(A)成分を0.3質量%以上含有し、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、(C)炭酸塩を含有することを特徴とする酸化染毛剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備える酸化染毛剤であって、
前記酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、
前記酸化染毛剤は、前記(A)成分を0.3質量%以上含有し、
前記(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、
前記(A2)その他のカプラー及び/又は前記(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、
(C)炭酸塩を含有すること、を特徴とする酸化染毛剤。
【請求項2】
前記酸化染毛剤は、(A1)成分の含有量が、0.2質量%以上であることを特徴とする、請求項1記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
(A)カプラーを含有する酸化染毛剤用の第1剤であって、
前記第1剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、
前記第1剤は、前記(A)成分を0.6質量%以上含有し、
前記(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、
前記(A2)その他のカプラー及び/又は前記(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、
(C)炭酸塩を含有すること、を特徴とする酸化染毛剤用の第1剤。
【請求項4】
(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備え、前記第1剤と、前記第2剤とが混合された酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、
前記酸化染毛剤は、前記(A)成分を0.3質量%以上含有し、
前記(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、
前記(A2)その他のカプラー及び/又は前記(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、
(C)炭酸塩を含有する、酸化染毛剤の使用方法であって、
前記第1剤と前記第2剤とを、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3未満で混合する混合工程を備えることを特徴とする、酸化染毛剤の使用方法。
【請求項5】
(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備え、前記第1剤と、前記第2剤とが混合された酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、
前記酸化染毛剤は、前記(A)成分を0.3質量%以上含有し、
前記(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、
(C)炭酸塩を含有する、酸化染毛剤の使用方法であって、
前記第1剤と前記第2剤とを、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3以上で混合することを特徴とする、酸化染毛剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプラーを含有する酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される酸化染毛剤が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させる。酸化剤は、毛髪中のメラニン色素を分解するとともに、毛髪内部で酸化染料重合体を形成させる。アルカリ剤が除去された後、毛髪のキューティクルが閉じて、酸化染料重合体が毛髪内部に封入される。
【0003】
毛髪内部の酸化染料重合体は、容易に分解しないため、脱染性能が低く、通常酸化染毛剤を用いて染毛処理を行った後、別の色に再染毛する場合、一旦脱染剤を用いて脱染処理する必要があった。さらに一度の脱染処理では十分に脱染できない場合もあった。
【0004】
従来より、毛髪内部の暗い色調の酸化染料重合体を脱染剤による脱染処理を行うことなく分解させ、毛髪をクリアな明るい色調に再染色(リカラー)するために用いられる酸化染毛剤が知られている。例えば特許文献1に開示される酸化染毛剤は、染料の主成分としてジアミン系の染料中間体等を含有することにより、染毛性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/057228号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上し、さらに混合時における過度な発熱を抑制することができる酸化染毛剤及び酸化染毛剤の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、カプラーとして2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有し、その他のカプラー及び/又は染料中間体を所定量含有し、かつ炭酸塩を含有することにより、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上し、さらに過度な発熱を抑制できることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備える酸化染毛剤であって、
酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、
酸化染毛剤は、(A)成分を0.3質量%以上含有し、
(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、
(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、
(C)炭酸塩を含有することを特徴とする。
この特徴によれば、本発明の酸化染毛剤は、(A1)成分として、2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有し、その他のカプラー及び/又は染料中間体を所定量含有し、かつ炭酸塩を含有することを特定することにより、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上し、さらに混合による発熱を抑制し、毛髪への適用がしやすい効果がある。
【0009】
さらに、本発明の酸化染毛剤は、(A1)成分の含有量が、0.2質量%以上であることを特徴とする。
この特徴によれば、より染毛性能を向上することができる。
【0010】
また、本発明は、(A)カプラーを含有する酸化染毛剤用の第1剤であって、第1剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、第1剤は、(A)成分を0.6質量%以上含有し、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、(C)炭酸塩を含有することを特徴とする。
この特徴によれば、本発明の第1剤は、(A1)成分として、2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有し、その他のカプラー及び/又は染料中間体を所定量含有し、かつ炭酸塩を含有することを特定することにより、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上させ、さらに第2剤との混合による過度な発熱を抑制し、毛髪への適用がしやすい効果がある。
【0011】
また、本発明は、(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備え、第1剤と、第2剤とが混合された酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、酸化染毛剤は、(A)成分を0.3質量%以上含有し、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、(C)炭酸塩を含有する、酸化染毛剤の使用方法であって、第1剤と第2剤とを、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3未満で混合する混合工程を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、本発明の酸化染毛剤の使用方法は、(A1)成分として、2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有し、その他のカプラー及び/又は染料中間体を所定量含有し、かつ炭酸塩を含有する酸化染毛剤において、特定の条件で混合することにより、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上させることができ、さらに、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有していることから、第1剤と第2剤との混合による過度な発熱を抑制でき、毛髪への適用がしやすい効果がある。
【0012】
また、本発明は、(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備え、第1剤と、第2剤とが混合された酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、酸化染毛剤は、(A)成分を0.3質量%以上含有し、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、(C)炭酸塩を含有する、酸化染毛剤の使用方法であって、第1剤と第2剤とを、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3以上で混合することを特徴とする。
この特徴によれば、本発明の酸化染毛剤の使用方法は、(A1)成分として、2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有し、その他のカプラー及び/又は染料中間体を所定量含有し、かつ炭酸塩を含有する酸化染毛剤において、特定の条件で混合することにより、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上させることができ、さらに酸化染毛剤が適度に空気と接触することから、第1剤と第2剤との混合当初の熱を効率よく放熱させやすく、第1剤と第2剤との混合によって過度な発熱が生じない。よって、毛髪への適用がしやすい効果がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上し、さらに混合による過度な発熱を抑制することができる酸化染毛剤及び酸化染毛剤の使用方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[酸化染毛剤]
本発明を実施するための最良の形態を含めて説明する。本発明の酸化染毛剤は、(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備える酸化染毛剤であって、酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、酸化染毛剤は、(A)成分を0.3質量%以上含有し、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、(C)炭酸塩を含有することを特徴とするものである。
(A1)成分として、2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有し、その他のカプラー及び/又は染料中間体を所定量含有し、(A2)成分及び/又は(B)成分を合計で3種以上含有し、かつ炭酸塩を含有することを特定することにより、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上し、さらに混合による過度な発熱を抑制することができる効果がある。また、第1剤と第2剤との混合において、酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm)を一定以上とすることで、混合による過度な発熱を抑制することができる効果がある。
【0015】
本発明の酸化染毛剤は、染料中間体を実質的に含有せず酸化染料としてカプラーのみを含有するか、又は全染料中間体をカプラーに対して所定量以下含有することにより、アルカリ剤にて分解されやすい重合物を形成し、脱染性能に優れ、次回以降のヘアカラーへの影響が少なくなる。つまり、リカラー性能を向上させた酸化染毛剤である。
【0016】
酸化染毛剤は、酸化剤と酸化染料を別の剤に分けて流通し、酸化染料を毛髪内部で発色させるものである。通常、酸化染料を含有する第1剤と、過酸化物を含有する第2剤を備え、これらの剤を混合して使用する。ここで、「混合して使用する」とは、一度の塗布操作で複数の剤を毛髪に適用することを意味し、直前に混合して使用する操作だけでなく、第1剤と第2剤をコーム等に取り、毛髪上でコーム等を用いて混合する操作も含む概念である。また、酸化染毛剤を毛髪に適用する手段としては、櫛、ブラシ、刷毛、アプリケーター等の塗布具を用いて毛髪に適用したり、手袋を着用した手で酸化染毛剤を毛髪に適用したりしてもよい。
【0017】
本発明の酸化染毛剤を形成する各剤の形態は、どのような形態であってもよい。
2剤式の酸化染毛剤の第1剤と第2剤の混合比は、酸化染毛剤の各成分の濃度、混合性、適用方法等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは0.1~10:1で、より好ましくは0.3~3:1である。酸化染毛剤の剤型は、毛髪に適用できる剤型であれば特に限定されず、例えば25℃において、液状、クリーム状、ジェル状等が挙げられる。また、各剤の混合後の酸化染毛剤が、液状、クリーム状、ジェル状等の塗布性を有する剤型であればよく、一部の剤に粉末状や固形状のものが含まれていてもよい。また、使用時に泡状やミスト状としてもよい。泡状とする場合には、エアゾールフォーマー容器、ノンエアゾールフォーマー容器、振とう容器等を使用すればよい。ミスト状とする場合には、噴霧器を使用すればよい。
【0018】
酸化染毛剤は、上記のように、第1剤及び第2剤からなる2剤式のものが代表的であるが、3剤以上からなる多剤式であってもよい。例えば、2剤式の第1剤について、カプラー及び任意成分であるアルカリ剤を含有する剤と、それ以外の組成を有する剤の2つに分け、3剤式の酸化染毛剤として構成してもよい。この場合、乳化安定性がより向上する。
【0019】
以下、本発明の酸化染毛剤に使用する各成分について、詳細に説明する。なお、各成分の含有量については、特に断りがない場合には、各剤を混合した酸化染毛剤中の含有量を示す。
【0020】
本発明の酸化染毛剤は、(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノールと、その他のカプラー(A2)及び/又は(B)染料中間体と、(C)炭酸塩とを含有する。
【0021】
[(A)カプラー]
本発明の酸化染毛剤は、(A)カプラーを含有する。(A)成分は、(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノールと(A2)他のカプラーとを含有する。
<(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール>
本発明の酸化染毛剤は、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノールを含有する。具体例としては、2,4-ジアミノフェノキシエタノールの塩酸塩や硫酸塩が例示できる。
なお、(A1)成分が塩である場合、(A1)成分の含有量はその脱塩型での値とする。
【0022】
酸化染毛剤中の(A1)成分の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.1~5.0質量%である。下限値として、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.25質量%以上であり、上限値として、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下である。0.1質量%以上とすることにより染毛性能が向上し、5.0質量%以下とすることにより、脱染性能をより向上でき、混合による発熱抑制効果を高め、毛髪への適用を容易とすることができる。
【0023】
<(A2)他のカプラー>
本発明の酸化染毛は、(A)成分として、(A1)成分を除く(A2)他のカプラーを含有する。
(A2)成分としては、主としてm-のジアミン類、アミノフェノール類又はジフェノール類が挙げられ、具体例としては、例えばレゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール(1-ナフトール)、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、カテコール、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、3,3’-イミノジフェニール、タンニン酸及びそれらの塩等が例示される。
これらの中でも、染毛性能の観点から、より好ましくは、レゾルシン、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、2,6-ジアミノピリジン、m-アミノフェノール、1,5-ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
一種の(A2)成分を単独で使用してもよく、二種以上の(A2)成分を組み合わせて使用してもよい。
(A2)その他のカプラーが塩である場合、(A2)その他のカプラーの含有量はその脱塩型での値とする。
【0024】
酸化染毛剤中の(A)成分((A1)成分と(A2)成分の和)の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.3~10.0質量%である。下限値として、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上であり、さらにより好ましくは0.7質量%以上であり、上限値として、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.5質量%以下である。0.3質量%以上とすることにより染毛性能が向上し、10.0質量%以下とすることにより、脱染性能及び発熱抑制効果をより向上できる。
【0025】
また、本発明の酸化染毛剤は、(A2)他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有する。(A2)他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有することにより、第1剤と第2剤との混合による過度な発熱をより抑制でき、酸化染毛剤の毛髪への適用が容易となる効果がある。
なお、4種、5種以上であってもよいが、3種以上で顕著な効果を奏する。
【0026】
本発明者は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下というカプラーの比率が高い酸化染毛剤において、(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノールと炭酸塩を含有し、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体が合計で2種以下の場合、第1剤と第2剤との混合の際に発熱が起こることを見出した。そして、この発熱は、2,4-ジアミノフェノキシエタノール同士の染料重合物が、(C)炭酸塩に由来する炭酸イオンと過酸化水素の反応(pH8~9.5付近で反応がより促進される)に起因する、ペルオキソ炭酸イオンによって結合が切断される際に発生する熱に由来すると推測される。
この発熱を抑制するためには、炭酸塩を減らすか、pHを7.5以下にするか、pHを10以上にするか、過酸化水素を減らすか、2,4-ジアミノフェノキシエタノールの重合物自体を減らすか又は、2,4-ジアミノフェノキシエタノールのみの重合物以外の重合物の割合を増やし、炭酸塩に由来するペルオキソ炭酸イオンの反応確率を低くする方法が考えられる。
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、多くの種類の(A2)成分又は/及び(B)成分を酸化染毛剤に含有させた方が、少ない種類の(A2)成分又は/及び(B)成分を酸化染毛剤に含有させた場合よりも発熱抑制効果が高いことを見出した。特に、合計で3種以上含有することで、発熱抑制効果がより顕著であることを見出した。
つまり、発明者は、酸化染毛剤中に(A1)成分を一定量含有し、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上させ、さらに過度な発熱を抑制できることで、毛髪への適用がしやすいことを見出した。
【0027】
また、本発明の効果としては、混合の際に酸化染毛剤と空気との接触面積の小さいアプリケーターと呼ばれる容器で混合した場合であっても、酸化染毛剤の過度な発熱を抑制することができ、使用できる混合容器の選択肢が多くなる効果がある。
【0028】
[(B)染料中間体]
本発明の酸化染毛剤は、(B)染料中間体を含有してもよい。染料中間体としては、主としてo-又はp-のフェニレンジアミン類あるいはアミノフェノール類である染料前駆物質であり、通常、それ自体は無色か又は弱く着色した化合物である。
(B)染料中間体の具体例としては、例えばp-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(p-トルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール、2,4-ジアミノフェノール、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。一種の(B)成分を単独で使用してもよく、二種以上の(B)成分を組み合わせて使用してもよい。第1剤は、前記酸化染料の具体例以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料を適宜含有してもよい。なお、(B)染料中間体が塩である場合、(B)染料中間体の含有量はその脱塩型での値とする。
【0029】
酸化染毛剤中における(B)成分の含有量は特に限定されないが、例えば、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)は、0.0~0.4であり、上限値として、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。
質量比を0.4以下とすることにより、脱染性能をより向上できる。よって、リカラー性能の向上となる効果がある。
なお、質量比0.0とは、酸化染毛剤中に実質的に(B)成分を含有していないことを意味する。また、上記質量比の算出に用いられる含有量は、(A)及び(B)ともにそれらの脱塩型での値とする。
【0030】
酸化染毛剤中における(B)染料中間体の含有量の上限は、上記含有量の質量比(B/A)の範囲内において適宜設定されるが、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは、酸化染毛剤が(B)染料中間体を実質的に含有しない。(B)染料中間体の含有量が1質量%以下であると、脱染性能をより向上できる。
【0031】
[(C)炭酸塩]
本発明の酸化染毛剤は、(C)炭酸塩を含有する。(C)炭酸塩は、アルカリ剤であり、毛髪を膨潤させて、染料や酸化剤の浸透を促進する作用を有するものである。(C)成分の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸グアニジン等が例示される。また、(C)成分には、カルバミン酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオンを含む。これらのイオンは、通常、酸化染毛剤の第1剤に含有される。カルバミン酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオンは、可溶化剤中で遊離する対イオンを伴うカルバミン酸塩、炭酸塩、及び/又は炭酸水素塩の形態で第1剤に添加されてもよい。カルバミン酸塩の具体例としては、カルバミン酸アンモニウム等が挙げられ、炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
なお、一種の(C1)成分を単独で使用してもよく、二種以上の(C1)成分を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
酸化染毛剤における成分(C)の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.1~20質量%である。下限値として、より好ましくは0.25質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、さらにより好ましくは0.75質量%以上であり、最も好ましくは1.0質量%以上である。上限値として、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、さらにより好ましくは5.0質量%以下であり、最も好ましくは3.0質量%以下である。
0.1質量%以上とすることにより染毛性能が向上し、20質量%以下とすることにより、混合による過度の発熱を抑制し、毛髪への適用をしやすくできる効果がある。なお、ここでの含有量は、カルバミン酸塩、炭酸アンモニウム塩、又は炭酸水素アンモニウム塩換算での値を示す。
【0033】
[その他の成分]
本発明の酸化染毛剤は、上記成分以外にも、必要に応じて以下の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、直接染料、(C)成分を除く他のアルカリ剤、油性成分、界面活性剤、可溶化剤、無水亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、ソルビトール、マルトース等の糖類、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム二水塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム液等のキレート剤、酸、pH調整剤、育毛成分、植物抽出物、生薬抽出物、アミノ酸・ペプチド、尿素、ビタミン類、香料、及び紫外線吸収剤が挙げられる。
【0034】
<直接染料>
本発明の酸化染毛剤は直接染料を含有してもよい。直接染料は、色を有する化合物であり、毛髪に付着、又は浸透して染毛する染料であれば特に制限されるものではない。例えば、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、HC染料、分散染料等が挙げられる。染毛性能の観点から酸性染料を含むことが好ましい。
また、これらの直接染料は、所望する毛髪の色調に応じて単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0035】
酸性染料の具体例としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色401号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、かっ色201号、黒色401号等が挙げられる。
【0036】
塩基性染料の具体例としては、例えば、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Blue 75、Basic Blue 99、Basic Blue 124、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Orange 31、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等が挙げられる。
【0037】
天然染料の具体例としては、例えば、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素、ヘナ等が挙げられる。
【0038】
ニトロ染料の具体例としては、例えば、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩等が挙げられる。
【0039】
HC染料の具体例としては、例えば、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Blue No.16、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等が挙げられる。
【0040】
分散染料の具体例としては、例えば、Disperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等が挙げられる。
【0041】
酸化染毛剤における直接染料の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.001質量%以上20.0質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは15.0質量%以下であり、さらに好ましくは10.0質量%以下であり、特に好ましくは5.0質量%以下である。
【0042】
<その他のアルカリ剤>
(C)成分を除くその他のアルカリ剤は、毛髪を膨潤させて、染料や酸化剤の浸透を促進する作用を有するものである。その他のアルカリ剤としては、例えば、アルカノールアミン、アンモニア、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が例示される。具体的には、アルカノールアミンとしてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、イソプロピルアミン等が例示され、ケイ酸塩としてはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が例示され、メタケイ酸塩としてはメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が例示され、リン酸塩としてはリン酸第1アンモニウム、リン酸第2アンモニウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が例示され、硫酸塩としては硫酸アンモニウムなどが例示され、塩化物としては塩化アンモニウムが例示され、有機アミンとしては2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジンが例示され、塩基性アミノ酸としてはアルギニン、リジン及びそれらの塩等が例示され、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物としては水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示される。
【0043】
酸化染毛剤におけるその他のアルカリ剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.5~10質量%である。下限値として、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは0.75質量%以上であり、さらにより好ましくは、1.0質量%以上である。上限値として、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0044】
<油性成分>
本発明の酸化染毛剤は、油性成分を含有してもよい。油性成分を含有する場合、さらに染毛性能を向上させることができる。油性成分としては、例えば高級アルコール、油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、エステル類、シリコーン油、フッ素油等が例示される。これらの油性成分から、1種又は2種以上を選んで用いることができる。
【0045】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール、フィトステロール、フィトスタノール、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、エルゴステロール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール等が挙げられる。
【0046】
油脂は、トリグリセリドすなわち脂肪酸とグリセリンとのトリエステルである。オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油、アルガニアスピノサ核油、ラノリン、月見草油等が挙げられる。
【0047】
ロウ類は、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルである。ロウ類の具体例としては、例えばミツロウ(蜜蝋)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ、ラノリンロウ、等が挙げられる。
【0048】
炭化水素は、炭素と水素とよりなる化合物である。炭化水素の具体例としては、例えば流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、イソパラフィン類、オゾケライト、セレシン、ポリエチレン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、合成スクワラン、スクワレン、水添スクワラン、リモネン、テレビン油、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル等が挙げられる。
【0049】
高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0050】
エステル類は、脂肪酸とアルコールとの脱水反応によって得られる化合物である。エステルの具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2-エチルヘキサン酸セチル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、イソオクタン酸セチル、セバシン酸ジイソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0051】
シリコーン油は、有機基のついたケイ素と酸素が化学結合により交互に連なった合成高分子である。シリコーン油の具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0052】
上記のうち、アミノ変性シリコーンとしては、例えば、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。
【0053】
酸化染毛剤における油性成分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.1~20質量%である。下限値として、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、さらにより好ましくは1.0質量%以上であり、特に好ましくは2.0質量%以上である。上限値としては、より好ましくは17質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、さらにより好ましくは12質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
【0054】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
なお、以下の記載において、POEはポリオキシエチレン鎖、POPはポリオキシプロピレン鎖を示し、これに続くカッコ内の数字は、その付加モル数を示している。また、アルキルに続くカッコ内の数字は、脂肪酸鎖の炭素数を示している。
【0055】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEモノ脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、アルキルポリグルコシド類等が挙げられる。POEアルキルエーテル類の具体例としては、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEラノリン、POEフィトステロール等が挙げられる。
POE、POPの繰り返し単位数としては、例えば、2~100が挙げられ、界面活性作用を示すものであればいずれのものも使用可能である。
【0056】
酸化染毛剤におけるノニオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.001~30質量%である。下限値として、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは0.2質量%以上である。上限値として、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、さらにより好ましくは7.0質量%以下であり、特に好ましくは5.0質量%以下である。
【0057】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩類、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩等のアミン塩類、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリウム塩等の環式4級アンモニウム塩類、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0058】
好ましくは、アルキル4級アンモニウム塩類であり、更に好ましくは、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩であり、特に好ましくは、モノアルキル型4級アンモニウム塩である。
【0059】
モノアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化アルキル(28)トリメチルアンモニウム、塩化ジPOE(2)オレイルメチルアンモニウム、塩化ジPOEステアリルメチルアンモニウム、塩化POE(1)POP(25)ジエチルメチルアンモニウム、塩化POPメチルジエチルアンモニウム、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。特に好ましくは、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムである。
【0060】
ジアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジアルキル(12~15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0061】
酸化染毛剤におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.01~10質量%である。下限値として、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。上限値として、より好ましくは5.0質量%以下であり、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0062】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが例示される。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンは、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンのいずれであってもよい。
【0063】
より具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、POEラウリルエ-テルリン酸及びその塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩類(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-ラウロイルメチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの高級脂肪酸の塩が例示され、1又は2種以上を使用することができる。
【0064】
酸化染毛剤におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.01~5質量%である。下限値として、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上である。上限値として、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0065】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(ラウロアンホ酢酸Na)、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエトキシエチル-N’-カルボキシエチルエチレンジアミン二ナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシメトキシエチル-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、パーム油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムなどのグリシン型両性界面活性剤;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミンなどのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;などが挙げられる。
ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0066】
酸化染毛剤における両性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.001~5質量%である。下限値として、より好ましくは0.005質量%以上であり、更に好ましくは0.01質量%以上である。上限値として、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2.5質量%以下である。
【0067】
酸化染毛剤における全ての界面活性剤の総含有量としては、特に制限されないが、好ましくは0.01~50質量%である。下限値として、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上である。上限値として、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下である。
【0068】
[可溶化剤]
可溶化剤は、例えば、剤型を液状等にする場合に配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルオキシエタノール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。一種の可溶化剤を単独で使用してもよく、二種以上の可溶化剤を組み合わせて使用してもよい。これらの中で、第1剤中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく適用される。溶媒として水が用いられる場合、混合物中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0069】
[多価アルコール]
本発明の酸化染毛剤は、多価アルコールを含有していてもよい。多価アルコールの具体例としては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。また、これらの多価アルコールは単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。グリコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG1000、PEG1500、PEG1540など)、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどが挙げられる。グリセリンの具体例としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられる。一種の多価アルコールを単独で使用してもよく、二種以上の多価アルコールを組み合わせて使用してもよい。
【0070】
[第2剤の組成]
本発明の酸化染毛剤を2剤式の酸化染毛剤の第1剤として用いる場合、第2剤としては、酸化染毛剤の分野で使用される一般的な第2剤を使用することができる。第2剤の組成としては、特に制限されないが、酸化剤を含有することが好ましく、酸化剤としては、過酸化水素が好ましい。第2剤中の過酸化水素の含有量としては、0.1~9.0質量%であり、下限値としては、好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上である。上限値としては、発熱抑制効果を高める観点から、好ましくは8.0質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以下である。0.1質量%以上の濃度とすることにより酸化剤としての十分な効果を得ることができ、2.0質量%以上とすることで、酸化剤としてより大きな効果を得ることができる。
【0071】
なお、上記では、第1剤と第2剤とが混合された後の酸化染毛剤の状態の場合を説明したが、本発明は、(A)カプラーを含有する酸化染毛剤用の第1剤において、第1剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、第1剤は、(A)成分を0.6質量%以上含有し、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、(C)炭酸塩を含有する酸化染毛剤用の第1剤としてもよい。
この特徴を有する第1剤であれば、酸化染毛剤の分野で使用される一般的な第2剤を使用した際に、本発明の酸化染毛剤とすることができる。
また、第1剤と第2剤との混合後の酸化染毛剤は、染毛性能を維持したまま、脱染性能を向上させ、さらに第2剤との混合によって、生じる過度な発熱を抑制できる。
【0072】
また、(A)成分の含有量と(B)染料中間体の含有量との合計の含有量に対する(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノールの含有量の質量比((A1)/((A)+(B)))は、0.01以上~1.0未満である。下限値としては、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。また、上限値としては、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.60以下、さらにより好ましくは0.5以下である。
上記の質量比を0.01以上~1.0未満とすることで、染毛力とリカラー性と発熱抑制との全ての効果の調和がとれた酸化染毛剤とすることができる。
【0073】
(A)成分の含有量に対する(C)炭酸塩の含有量の質量比((C)/(A))は、0.01以上~20.0以下ある。下限値としては、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上、さらにより好ましくは0.9以上である。また、上限値としては、好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは5.0以下、さらにより好ましくは3.0以下である。
上記の質量比を0.01以上~20.0以下とすることで、染毛力を有しつつ発熱抑制の効果に優れた調和のよい酸化染毛剤とすることができる。
【0074】
(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノールの含有量に対する(C)炭酸塩の含有量の質量比((C)/(A1)は、0.1以上~20.0以下ある。下限値としては、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上である。また、上限値としては、好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは7.5以下、さらにより好ましくは5.0以下である。
上記の質量比を0.01以上~20.0以下とすることで、染毛力を有しつつ発熱抑制の効果に優れた調和のよい酸化染毛剤とすることができる。
【0075】
(A)成分の含有量と(B)染料中間体の含有量との合計の含有量に対する(C)炭酸塩の含有量の質量比((C)/((A)+(B)))は、0.1以上~20.0以下ある。下限値としては、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.9以上、さらに好ましくは1.5以上である。また、上限値としては、好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは7.5以下、さらにより好ましくは5.0以下である。
上記の質量比を0.01以上~20.0以下とすることで、染毛力とリカラー性と発熱抑制との全ての効果の調和がとれた酸化染毛剤とすることができる。
【0076】
混合後の酸化染毛剤のpHは、特に限定されないが、好ましくは、8~12である。下限値として、より好ましくは8.5以上であり、さらに好ましくは9.0以上である。上限値として、より好ましくは11.5以下であり、さらに好ましくは11以下である。染毛性能向上の観点から、pHを8以上とすることが好ましく、発熱抑制効果を高める観点から、pHを12以下とすることが好ましい。
【0077】
第1剤の粘度は、特に限定されないが、好ましくは、10~100000mPa・sである。また、第2剤の粘度は、特に限定されないが、好ましくは、10~100000mPa・sである。なお、第1剤及び第2剤の粘度は、TVB-10型粘度計などのB型粘度計を用いて測定することができ、25℃、1分間の条件でそれぞれの粘度に適したローターを用いて測定することができる。
また、本発明の酸化染毛剤における粘度は、特に制限されないが、25℃における粘度が、例えば、1000~100000mPa・sである。垂れ落ち抑制の観点から、下限値は、好ましくは2000mPa・s以上であり、より好ましくは5000mPa・s以上であり、さらに好ましくは10000mPa・s以上である。毛髪への適用の際の操作性の観点から、上限値は、好ましくは50000mPa・s以下であり、より好ましくは40000mPa・s以下であり、さらに好ましくは30000mPa・s以下である。酸化染毛剤の粘度は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤の添加、水溶性ポリマーなどの増粘剤の添加などにより調整することができる。酸化染毛剤の混合粘度は、TVB-10型粘度計などのB型粘度計を用いて行うことができ、25℃、1分間の条件でそれぞれの粘度に適したローターを用いて測定することができる。
【0078】
[酸化染毛剤の使用方法について]
本発明の酸化染毛剤の使用方法は、混合工程と適用工程とを有する。混合工程の後の酸化染毛剤は、毛髪に塗布される適用工程が行われて、酸化染毛剤が使用される。
混合工程とは、第1剤と第2剤とを、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3未満で混合することをいう。
【0079】
本発明の酸化染毛剤の使用方法は、(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備え、第1剤と、第2剤とが混合された酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、酸化染毛剤は、(A)成分を0.3質量%以上含有し、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有し、(C)炭酸塩を含有する、酸化染毛剤の使用方法であって、第1剤と第2剤とを、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3未満で混合する混合工程を備えることを特徴とする。
【0080】
上記混合工程を有することにより、染毛性能及び脱染性能を向上させつつ、第1剤と第2剤との混合によっても、過度な発熱が生じない。さらに、(A2)その他のカプラー及び/又は(B)染料中間体を合計で3種以上含有していることから、第1剤と第2剤との混合によって過度な発熱を抑制でき、毛髪に適用しやすくなる効果がある。
【0081】
また、混合工程に替えて、放熱混合工程と適用工程を有することもできる。放熱混合工程の後の酸化染毛剤は、毛髪に塗布される適用工程が行われて、酸化染毛剤が使用される。
放熱混合工程とは、第1剤と第2剤とを、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3以上で混合することをいう。
【0082】
本発明の酸化染毛剤の使用方法は、(A)カプラーを含有する第1剤と、第2剤とを備え、第1剤と、第2剤とが混合された酸化染毛剤は、(A)成分の含有量に対する(B)染料中間体の含有量の質量比(B/A)が0.4以下であり、酸化染毛剤は、(A)成分を0.3質量%以上含有し、(A)成分として(A1)2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び(A2)その他のカプラーを含有し、(C)炭酸塩を含有する、酸化染毛剤の使用方法であって、第1剤と第2剤とを、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3以上で混合する放熱混合工程を備えることを特徴とする。
上記放熱混合工程を有することにより、染毛性能及び脱染性能を向上させつつ、酸化染毛剤が適度に空気と接触することから、第1剤と第2剤との混合当初の熱を効率よく放熱させやすく、過度な発熱を抑制し、毛髪に適用しやすくなる効果がある。
【0083】
[混合工程について]
上記の混合工程及び放熱混合工程における、第1剤と第2剤を混合する方法は、どのような方法により混合してもよく、例えば、第1剤と第2剤を容器に投入して、容器を振とうして混合する方法や、攪拌棒や、撹拌羽根等により混合する方法や、刷毛等の塗布具により混合する方法等が挙げられる。
【0084】
また、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比(酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm))が0.3未満で混合する混合工程としては、具体的には、アプリケーターと呼ばれる混合容器での混合が例示できる。さらに、酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm)が、0.3以上で混合する場合を放熱混合工程とし、具体的には皿やカップのような上部が解放された混合容器での混合が該当する。
【0085】
混合工程に使用される混合容器としては、特に制限されないが、例えば、容器の内部空間の水平方向の断面積が、3.1cm(直径2.0cm)以上~180cm(直径15cm)以下である。
また、放熱混合工程に使用される混合容器としては、特に制限されないが、例えば、容器の内部空間の水平方向の断面積が、50cm(直径8cm)以上~180cm(直径15cm)以下である。
【0086】
なお、アプリケーターと呼ばれる混合容器の場合、酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)/酸化染毛剤の体積(cm)は、0.01以上0.3未満であり、容器の内部空間の水平方向の断面積が、3.1cm(直径2.0cm)以上~56cm(直径9.5cm)以下であり、下限値として、好ましくは4.9cm(直径2.5cm)以上、より好ましくは7.0cm(直径3.0cm)以上であり、上限値として、好ましくは38cm(直径7cm)以下、より好ましくは33cm(直径6.5cm)以下、最も好ましくは28cm(直径6.0cm)以下である。
なお、酸化染毛剤の空気との接触面積とは、第1剤と第2剤とを混合容器に投入し混合を始める前の状態における空気との接触面積をいう。
【実施例0087】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
【0088】
[評価について]
<発熱抑制>
表1~3に示す第1剤と上記第2剤を25℃の恒温槽に置き、25℃に調温した。次に、調温した第1剤(40g)と第2剤(40g)を混合し、酸化染毛剤(80g)を調製した。
表1ではアプリケーター用いた振とうによる混合を行った結果を示した。アプリケーターの混合は、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比が0.2であり、混合工程による混合である。なお、表2の「アプリケーターによる混合」も同じ混合方法である
表2の「カップによる混合」は、カップを用いた撹拌棒による混合を行った。カップの混合は、酸化染毛剤の体積(cm)に対する酸化染毛剤の空気との接触面積(cm)の比が1であり、放熱混合による混合である。
上記で調製した酸化染毛剤80gを混合容器(アプリケーター、カップ)に入れた状態で、混合時~60分間、容器の外面を触って、最高温度に達したときに感じた熱さを評価した。なお、使用したアプリケーターは、ホーユー社製ビューティラボ バニティカラー HL オキサイド(A)2剤の容器であり、カップは、樹脂製の一般的なカップを使用した。パネラー10名が混合後60分以内に感じた熱さを以下の基準で評価した。熱さを感じない(5点)、わずかに温かく感じる(4点)、温かさを感じる(3点)、わずかに熱く感じる(2点)、熱く感じる(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が3.6点以上を「良好:◎」、2.6点以上3.6点未満を「可:〇」、及び2.6点未満を「不良:×」とし、評価結果とした。結果を下記表1及び表2の発熱抑制の欄に示す。
【0089】
<酸化染毛剤の中心の最高温度>
また、混合後、酸化染毛剤を25℃の恒温槽に置き、混合から10分後、20分後、30分後、40分後、50分後、60分後において、酸化染毛剤の中心の温度を測定し、測定した最高温度を表1の酸化染毛剤中の最高温度に記載した。なお、温度計は、日本工業規格の棒状温度計にて測定を行った。
【0090】
<脱染性能及び染毛方法>
酸化染毛剤として、表1,2に示す各成分を含有するクリーム状の第1剤、表3に示す各成分を含有する乳液状の第2剤をそれぞれ調製した。以下各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。各表中「成分」欄における(A)~(C)の表記は、本願請求項記載の各(A)~(C)成分に対応する化合物を示す。
【0091】
以下表中の2,4-ジアミノフェノキシエタノールは、原料である2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩を、pH調整剤としてNaOHを用いて中和したものである。2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩は1モルあたり2モルの塩酸を生じるため、2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩:NaOH=1:2モルの割合で配合することにより中和した。つまり、第1剤中には2,4-ジアミノフェノキシエタノールがフリー態として含有される。
【0092】
各実施例及び各比較例について、第1剤及び第2剤を、1:1の質量比で混合して、各例の酸化染毛剤の混合物を調製した。長さ10cmの評価用の白毛の毛束サンプル(ビューラックス社製)(以下、単に毛束という。)1gに対して、得られた混合物3gを刷毛を用いて塗布した。混合物を毛束に塗布してから40分後に、毛束に付着した混合物を水で洗い流し、毛束にシャンプー(ホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(ホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥し、各例の染毛処理毛束を得た。
【0093】
染毛処理が施された各例の毛束について、上記染毛処理の翌日、下記に示す方法に従い脱染性能又は染毛性能について評価を行った。
【0094】
(脱染性能の評価方法)
上記のように得られた各例の染毛処理毛束に対し、更に一般的な脱色・脱染剤である「レセパウダーブリーチ」(ホーユー社製)を用いて、常法に従い脱染処理を行うことにより脱染処理毛束を得た。
【0095】
そして、パネラー10名が、脱染処理毛束の染毛色調について、脱染性が良好であるか否かを標準光源下で目視にて、脱染性能を評価し、以下の基準で判断した。脱染性能が優れる場合を、優れる(5点)、脱染性能が良好な場合を、良好(4点)、脱染性能がやや良好な場合を、可(3点)、脱染性能がやや悪い場合を、やや不良(2点)、脱染性能が悪い場合を、不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.7点以上を「非常に優れる:6」、4.0点以上4.7点未満を「優れる:5」、3.3点以上4.0点未満を「良好:4」、2.6点以上3.3点未満を「可:3」、1.9点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.9点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。その結果を表1,2の「脱染性能」欄に示した。
【0096】
(染毛性能の評価方法)
また、上記のように得られた各例の染毛処理毛束について、パネラー10名が標準光源下で目視にて発色度合いを、以下の基準で評価することにより、発色が良いか否かについて判断した。非常に良く染まっている(5点)、良く染まっている(4点)、染まっている(3点)、染まりが僅かに浅い(2点)、染まりが浅い(1点)の5階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値が4.7点以上を「非常に優れる:6」、4.0点以上4.7点未満を「優れる:5」、3.3点以上4.0点未満を「良好:4」、2.6点以上3.3点未満を「可:3」、1.9点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.9点未満を「不良:1」とした。そして、その評価結果を表1及び2の「染毛性能」欄に示した。とした。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
表1に示されるように、実施例1~3と比較例1~6とを比較すると、(A2)成分と(B)の合計の含有量が同じであっても、(A2)成分又は/及び(B)成分を合計で3種以上含有すると、発熱抑制の効果が向上することが確認できる。よって、染毛性能を維持したまま、脱染性能を有しかつ過度な発熱を抑制できることが確認できる。
また、実施例3-1~3-6、3-8~3-12においても同様の傾向があることが確認できる。
発熱抑制の効果は、(A2)成分又は/及び(B)成分の含有量を酸化染毛剤に対して同じにした場合、多くの種類の(A2)成分又は/及び(B)成分を酸化染毛剤に含有させた方が、発熱抑制効果が高い。特に、合計で3種以上にすることでより顕著な効果があることが確認できた。
【0101】
表2に示すように、実施例7と比較例6について比較すると、(A2)成分又は/及び(B)成分を合計で3種以上含有していないが、放熱混合工程で混合することで、比較例6よりも染毛性能の評価が良好な結果となった。以上のことから混合による発熱を抑制したほうが染毛性能の向上の観点で好ましいことが確認できる。
また、実施例2、3、5、6では、アプリケーターでの混合でも、カップでの混合(放熱混合工程)でも良好な染毛性能が得られることがわかる。一方で、放熱混合工程(実施例5、6)の方が、アプリケーターでの混合(実施例2、3)よりも染毛性能の評価は、よりよい結果となった。
以上のことから、酸化染毛剤に(A2)成分及び/又は(B)成分を合計で3種以上含有することで、混合条件の幅が広がり、様々な混合方法が選択可能となる。さらに、良好な染毛性能を確保できる酸化染毛剤とすることができることがわかった。
なお、実施例1と実施例4とを比較すると、アプリケーターでの混合でもカップでの放熱混合工程でも、染毛性能の評価は同じ結果となった。この結果は、(A2)成分及び(B)成分が合計で3種を超えて(合計5種)含有していることから、アプリケーターでの混合であっても、十分な発熱抑制効果が得られており、発熱抑制による染毛性能の向上効果が十分に発揮されている結果であると推測される。
また、実施例1~7については発熱抑制の効果が高いことが確認でき、酸化染毛剤を毛髪に適用しやすいことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の酸化染毛剤は、ヒトの頭髪、髭、眉毛、すね毛等の体毛を染毛するための染毛剤として利用することができる。その他、ペット等の動物の体毛を染毛するために利用してもよい。
本発明の酸化染毛剤は、美容室、理容室等におけるカラーリング用の染毛剤、セルフカラーリング用の染毛剤に利用することができる。