(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171557
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ノルボルナン骨格とシクロヘキサジオン骨格とを有するジオール化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 49/497 20060101AFI20221104BHJP
C07C 45/61 20060101ALI20221104BHJP
C07C 49/423 20060101ALI20221104BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20221104BHJP
C08G 63/199 20060101ALI20221104BHJP
C08G 64/02 20060101ALI20221104BHJP
C08F 20/28 20060101ALI20221104BHJP
C08F 16/32 20060101ALI20221104BHJP
C08G 65/22 20060101ALI20221104BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221104BHJP
【FI】
C07C49/497 CSP
C07C45/61
C07C49/423
C07C69/54 B
C08G63/199
C08G64/02
C08F20/28
C08F16/32
C08G65/22
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028199
(22)【出願日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2021077117
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笹田 康幸
(72)【発明者】
【氏名】島田 太一
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4J005
4J029
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC41
4H006BA21
4H006BB14
4H006BE20
4H006BJ30
4H006BN10
4H006BP20
4H006BR70
4H006KA06
4H039CA60
4H039CB20
4J005AA09
4J005BA00
4J029AA03
4J029AB01
4J029BD10
4J029BE03
4J029CA02
4J029CA06
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC05A
4J029CD03
4J029CF08
4J029EA03
4J029EB04A
4J029ED07A
4J029HA01
4J029HC01
4J029HC03
4J029HC07
4J029HC08
4J029JE162
4J029JF221
4J029JF321
4J029JF361
4J029JF471
4J100AE75P
4J100AE76P
4J100AE78P
4J100AL08P
4J100AL66P
4J100AL69P
4J100BA12P
4J100BC04P
4J100BC08P
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】入手容易な化合物を原料とすることにより、簡便に製造できるジオール化合物であり、各種化合物の合成中間体として非常に有用であり、各種ポリマーの原料となる新規な化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるジオール化合物とする。
[式(1)中、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、およびこれらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるジオール化合物。
[式(1)中、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、およびこれらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【請求項2】
水素化反応による、請求項1に記載のジオール化合物の製造方法。
【請求項3】
式(2)で表される9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,6-ジカルボアルデヒドまたは9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,7-ジカルボアルデヒドを水素化反応させる工程を含む請求項2に記載のジオール化合物の製造方法。
[式(2)中、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、および、これらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【請求項4】
式(3)で表されるジオレフィン化合物をオキソ反応によりジアルデヒド化合物に変換させた反応生成物を単離生成せず、引き続き水素化反応させる工程を含む請求項2に記載のジオール化合物の製造方法。
[式(2)中、ノルボルネン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、およびこれらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【請求項5】
水素ガスを含む雰囲気下で、ニッケル触媒、パラジウム触媒、鉄触媒、銅触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、プラチナ触媒、コバルト触媒、またはマンガン触媒を用いる請求項3または4に記載のジオール化合物の製造方法。
【請求項6】
水素化ホウ素試薬、水素化アルミニウム試薬、または水素化リチウム試薬の水素化試薬を用いる請求項3または4に記載のジオール化合物の製造方法。
【請求項7】
式(4)で表されるシス体、式(5)で表されるトランス体、または式(4)で表されるシス体と式(5)で表されるトランス体との混合比が0.001:100~100:0.001である異性体混合物である、請求項1に記載のジオール化合物。
【請求項8】
請求項1に記載のジオール化合物を用いて重合してなるポリマー。
【請求項9】
請求項1に記載のジオール化合物を用いて重合してなるポリエステル樹脂。
【請求項10】
請求項1に記載のジオール化合物を用いて重合してなるポリカーボネート樹脂。
【請求項11】
式(6)に記載の化合物。
式中、同じ記号が複数ある場合は、それらは同じ構造であってもよいし、それぞれが独立して異なる構造であってもよい。Pは独立して、式(P1)、(P2)、(P3)または(P4)の重合性基のいずれかであり;R
dは水素、ハロゲン、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。
【請求項12】
式(P1)、(P2)または(P4)において、Rdが水素である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
請求項11に記載の式(6)において、Pが基(PM1)、(PM2)、(PM3)、または(PM4)で表される、少なくとも1つの構成単位を有し、請求項11または12に記載の化合物から得られる重合体。
式中、同じ記号が複数ある場合は、それらは同じ構造であってもよいし、それぞれが独立して異なる構造であってもよい。R
dは水素、ハロゲン、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料添加剤、接着剤や樹脂原料として有用なジオール化合物およびその製造方法に関し、特に分子中にノルボルナン骨格とシクロヘキサジオン骨格とを有する新規なジオール化合物およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルナン骨格と脂肪族環状骨格とを有するアルコール化合物は、接着剤や樹脂原料として用いた場合に優れた特徴を有することが知られている(特許文献1および2)。
【0003】
しかしながら、ベンゾキノンにシクロペンタジエンを付加させた1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,8,8a,9a,10a-オクタヒドロアントラセン-9,10-ジオン(非特許文献1)は誘導体としてテトラカルボン酸およびテトラカルボン無水物(特許文献3)、もしくは、ケトン部位をアルコールやエーテルに変換した化合物(特許文献4および5、非特許文献2~6)が報告されているのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2017-047555号
【特許文献2】特開平5-125329号公報
【特許文献3】特開2010-184898号公報
【特許文献4】国際公開2017-209197号
【特許文献5】国際公開2017-209199号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Organic synthesis, 2005, 82, 1.
【非特許文献2】J. Org. Chem. 1991, 56, 5253.
【非特許文献3】J. Org. Chem. 1995, 60, 4399.
【非特許文献4】Tetrahedron, 1997, Vol.53, 11257.
【非特許文献5】Beilstein J. Org. Chem. 2015, 11, 2159.
【非特許文献6】Eur. J. Org. Chem. 2017, 6793.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新たな化合物としてノルボルナン骨格とシクロヘキサジオン骨格とを有する新規なジオール化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、水素添加反応を用いることで、3環式化合物からジオール体を効率よく生成することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
[1] 式(1)で表されるジオール化合物。
[式(1)中、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、およびこれらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【0009】
[2] 水素化反応による、項[1]に記載のジオール化合物の製造方法。
【0010】
[3] 式(2)で表される9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,6-ジカルボアルデヒドまたは9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,7-ジカルボアルデヒドを水素化反応させる工程を含む項[2]に記載のジオール化合物の製造方法。
[式(2)中、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、および、これらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【0011】
[4] 式(3)で表されるジオレフィン化合物をオキソ反応によりジアルデヒド化合物に変換させた反応生成物を単離生成せず、引き続き水素化反応させる工程を含む項[2]に記載のジオール化合物の製造方法。
[式(3)中、ノルボルネン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、およびこれらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【0012】
[5] 水素ガスを含む雰囲気下で、ニッケル触媒、パラジウム触媒、鉄触媒、銅触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、プラチナ触媒、コバルト触媒、またはマンガン触媒を用いる項[3]または項[4]に記載のジオール化合物の製造方法。
【0013】
[6] 水素化ホウ素試薬、水素化アルミニウム試薬、または水素化リチウム試薬の水素化試薬を用いる項[3]または項[4]に記載のジオール化合物の製造方法。
【0014】
[7] 式(4)で表されるシス体、式(5)で表されるトランス体、または式(4)で表されるシス体と式(5)で表されるトランス体との混合比が0.001:100~100:0.001である異性体混合物である、項[1]記載のジオール化合物。
【0015】
[8] 項[1]に記載のジオール化合物を用いて重合してなるポリマー。
【0016】
[9] 項[1]に記載のジオール化合物を用いて重合してなるポリエステル樹脂。
【0017】
[10] 項[1]に記載のジオール化合物を用いて重合してなるポリカーボネート樹脂。
【0018】
[11] 式(6)に記載の化合物。
式中、同じ記号が複数ある場合は、それらは同じ構造であってもよいし、それぞれが独立して異なる構造であってもよい。Pは独立して、式(P1)、(P2)、(P3)または(P4)の重合性基のいずれかであり;R
dは水素、ハロゲン、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。
【0019】
[12] 式(P1)、(P2)または(P4)においてRdが水素である項[11]に記載の化合物。
【0020】
[13] 項[11]に記載の式(6)において、Pが基(PM1)、(PM2)、(PM3)、または(PM4)で表される、少なくとも1つの構成単位を有し、項[11]または[12]に記載の化合物から得られる重合体。
式中、同じ記号が複数ある場合は、それらは同じ構造であってもよいし、それぞれが独立して異なる構造であってもよい。R
dは水素、ハロゲン、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、新規なノルボルナン骨格とシクロヘキサジオン骨格とを有するジオール化合物を、工業的、簡便かつ経済的に優れる方法で提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1で得られた化合物(4)と化合物(5)の混合物の
1H-NMR測定の結果である。
【
図2】実施例1で得られた化合物(4)と化合物(5)の混合物の
13C-NMR測定の結果である。
【
図3】実施例1で得られた化合物(4)と化合物(5)の混合物のGC/MASS測定のGCチャートである。
【
図4】実施例1で得られた化合物(4)と化合物(5)の混合物のGC/MASS測定のMASSチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<化合物>
本発明のジオール化合物は、式(1)で表される。以下、式(1)で表される本発明の化合物を「化合物(1)」ともいう。本明細書において、他の式で表される化合物も同様に表記する場合がある。
[式(1)中、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、およびこれらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【0024】
化合物(1)で表されるノルボルナン骨格とシクロヘキサジオン骨格とを有するジオール化合物は、接着剤や樹脂原料として用いた場合、優れた特徴を示す。また、反応中間体としても広く利用できる。
【0025】
化合物(1)で表されるジオール化合物は、メタノールの付加位置により、式(4)で表されるシス体と、式(5)で表されるトランス体とがあり、これらの位置異性体の各単体であっても、これらの位置異性体の混合物であってもよい。混合物の場合は、化合物(4)のシス体と化合物(5)のトランス体との混合比が0.001:100~100:0.001である異性体混合物である。
【0026】
<製造法>
化合物(1)で表されるジオール化合物は、式(2)で表される9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,6-ジカルボアルデヒドまたは9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,7-ジカルボアルデヒドを水素化反応することにより製造できる。
[式(2)中、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの水素は独立して、ハロゲン、硫黄を含む一価基、酸素を含む一価基、窒素を含む一価基、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数3~20の飽和または不飽和環状炭化水素基、炭素数3~20の飽和または不飽和複素環基、およびこれらの基中の少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基からなる群より選ばれる1種の置換基で置き換えられてもよく、ノルボルナン骨格の少なくとも1つの炭素は独立して、ヘテロ原子で置き換えられてもよい。]
【0027】
本実施形態の水素化反応で使用される触媒は、反応方式として、化合物(2)と水素ガスを含む雰囲気下で、水素化ができる金属触媒であり、添加物および溶媒を用い反応させることにより、化合物(1)を容易に製造できる。
【0028】
本実施形態の水素化反応で使用される金属触媒は特に制限されることはないが、ニッケル、パラジウム、鉄、銅、ロジウム、ルテニウム、プラチナ、コバルト、またはマンガンが好ましく、ニッケル、パラジウム、リチウム、またはロジウムがより好ましい。
【0029】
本実施形態の水素化反応で使用されるニッケル触媒は、特に制限されることはないが、スポンジニッケルが特に好ましい。
本実施形態の水素化反応で使用されるパラジウム触媒は、特に制限されることはないが、カーボン担持パラジウムまたはアルミナ担持パラジウムが特に好ましい。
【0030】
本実施形態の水素化反応で用いる触媒は、化合物(2)に対して、0.01~100mol%を使用することが好ましい。
【0031】
本実施形態の水素化反応を効率よく進行させるためには、反応温度としては室温から200℃の間であることが好ましく、特に室温から120℃の間であることが特に好ましい。また、溶媒として、炭化水素類、アルコール類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類を使用することが可能であり、効率よく反応を進めるために、アルコール類またはトルエンであることが好ましい。
【0032】
本実施形態の水素化反応において、水素化試薬を用いる場合、水素化ホウ素試薬、水素化アルミニウム試薬、または水素化リチウム試薬が好ましい。
【0033】
本実施形態の水素化反応の反応方式としては、槽型反応器等による回分式、半回分式、塔型反応器を流通させる連続流通式等様々な反応方式を用いることが可能である。
【0034】
本実施形態の水素化反応の反応方式としては、化合物(3)をオキソ反応することにより得られる化合物(2)を単離精製せずに行うことも可能である。
【0035】
<ポリマー>
本発明は、式(1)で表されるジオール化合物を用いて重合してなるポリマーを包含する。このようなポリマーの具体例としては、式(1)で表されるジオール化合物と、エピクロロヒドリン等のエポキシ化合物との共重合で得られるエポキシ樹脂、テレフタル酸等のジカルボン酸との重縮合で得られるポリエステル樹脂、ホスゲンとの重縮合またはジフェニルカーボネートとのエステル交換反応で得られるポリカーボネート等、種々の重合体を挙げることができる。
【0036】
(ポリエステル)
本発明の式(1)で表されるジオール化合物を用いて重合してなるポリエステルは特に限定されるものではないが、好ましくはテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体をジカルボン酸とし、式(1)で表されるジオール化合物とからなるポリエステルである。
【0037】
なお、ジカルボン酸はテレフタル酸の他、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、ドデカンジオン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、などの脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸、ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸を用いてもよい。また市販のポリエステルを用いることもできる。
【0038】
前記のテレフタル酸を含むジカルボン酸は、化石燃料由来であってもよいが、植物を由来とし、発酵法等を通じて得られたものであってもよい。植物由来の原料としては、テレフタル酸が知られている。
【0039】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は連続式であっても回分式であってもよい。
【0040】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法におけるエステル交換工程、エステル化工程、重縮合工程は従来公知の方法を採用しうる。
【0041】
重縮合においては、通常、反応性を高めるために重縮合触媒が用いられる。該重縮合反応の触媒としては、アンチモン元素を含有するもの、ゲルマニウム元素を含有するもの、チタン元素を含有するもの、アルミニウム元素を含有するものなどが知られている。
【0042】
(ポリカーボネート)
ポリカーボネートは、式(1)で表されるジオール化合物に由来するモノマー単位及びカルボニル基を含む、直鎖状又は分岐していてもよい重合体である。ポリカーボネートは、一般に、ジヒドロキシ化合物と、塩化カルボニル(ホスゲン)、炭酸ジエステル(例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート)、又は一酸化炭素若しくは二酸化炭素との重合反応により生成する。
【0043】
式(1)で表されるジオール化合物に由来するポリカーボネートは、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法等の通常の方法により合成することができる。またポリカーボネートの市販品を用いることもできる。
(式(6)に記載の化合物)
【0044】
式(P1)~(P4)で示される重合部位は、公知の有機合成化学的手法を用いて導入できる。例えば、それぞれ、特願2001-378508号、特願2002-115270号、特願2002-335266号、および特願2002-300068号を参照できる。
【0045】
(式(6)に記載の化合物を重合して得られるポリマー)
本発明の重合体は、化合物(6)を少なくとも1つ含む重合性組成物に、必要に応じて触媒や溶剤を加えて重合させて得られる。共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。また、繰り返し構造は、イソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれでもよい。
【0046】
化合物(6)から本発明の重合体を得るには、種々の重合反応形式を用いることができる。利用できる重合反応形式は、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法などである。本発明の重合体を製造するには、その用途に適した重合法を選択することが好ましい。
【0047】
光ラジカル重合の開始剤の一例は、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:ダロキュアー1173)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュアー184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:イルガキュアー651)、イルガキュアー500(商品名)、イルガキュアー2959(商品名)、イルガキュアー907(商品名)、イルガキュアー369(商品名)、イルガキュアー1300(商品名)、イルガキュアー819(商品名)、イルガキュアー1700(商品名)、イルガキュアー1800(商品名)、イルガキュアー1850(商品名)、ダロキュアー4265(商品名)、イルガキュアー784(商品名)、p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、2,4-ジエチルキサントン/p-ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物などである。
【0048】
本発明の組成物には光カチオン重合開始剤を添加してよい。光カチオン重合開始剤には、ジアリールヨードニウム塩(以下DASと略す)、トリアリールスルホニウム塩(以下TASと略す)などがあげられる。DASとしては、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム-p-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム-p-トルエンスルホナート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどがあげられる。
【0049】
DASには、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルブレンなどの光増感剤を添加することで高感度化することもできる。
【0050】
TASとしては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0051】
光カチオン重合開始剤の具体的な商品名として、UCCの製品のサイラキュアーUVI-6990、サイラキュアーUVI-6974およびサイラキュアーUVI-6992、旭電化工業(株)の製品のアデカオプトマーSP-150、SP-152、SP-170およびSP-172、ローディア(株)の製品のPHOTOINITIATOR2074、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)の製品のイルガキュアー250、GEシリコンズの製品のUV-9380C、サンアプロ(株)の製品のHSシリーズ、CPIシリーズの他、みどり化学(株)のTPSシリーズ、TAZシリーズ、DPIシリーズ、BPIシリーズ、MDSシリーズ、DTSシリーズ、SIシリーズ、PIシリーズ、NDIシリーズ、PAIシリーズ、NAIシリーズ、NIシリーズ、DAMシリーズ、MBZシリーズ、PYRシリーズ、DNBシリーズ、NBシリーズ等を挙げることができる。
【0052】
本発明の組成物は光カチオン重合開始剤と組み合わせ、光ラジカル重合開始剤を添加してハイブリッド硬化することもできる。光ラジカル重合開始剤の例は、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)の製品のうちから、ダロキュアー1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン)、イルガキュアー184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュアー651(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン)、イルガキュアー500、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、ダロキュアー4265、イルガキュアー784である。
【0053】
光ラジカル重合開始剤のその他の例は、p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4-ジエチルキサントン/p-ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
【0054】
本発明では、熱重合開始剤を添加してもよい。具体的な商品名の例は、三新化学工業(株)の製品のサンエイド(主剤) SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-145、SI-150、SI-160、SI-180、およびサンエイド(助剤)SIである。これらは光ラジカル開始剤および光カチオン重合開始剤と共に使用してもよく、あるいは光ラジカル開始剤と共に使用してもよい。
【0055】
本発明の重合性化合物は、熱硬化剤を含有してもよい。熱硬化剤としてはアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、などを有する酸性あるいは塩基性の化合物、フェノール部位を有する化合物または酸無水物部位を有する化合物などである。より好ましくは、アミノ基を有する塩基性の化合物、フェノールを有する化合物および酸無水物を有する化合物である。これらは、光カチオン重合開始剤または光ラジカル開始剤と共に使用してもよい。
【0056】
アミノ基を有する熱硬化剤の例は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ラロミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン混合物、N-アミノエチルピペラジンである。
【0057】
フェノール系硬化剤の例は、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラックである。
【0058】
酸無水物を有する熱硬化剤の例は、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、クロレンド酸無水物である。
【0059】
本発明の式(1)化合物を原料として、式(6)化合物を製造できるが、式(6)の化合物は両末端に重合性部位を持つため、容易に大きな重合度および大きな分子量を持つ重合体を調製できる。式(6)の化合物と式(6)以外の化合物の組成物において、式(1)以外の化合物が1つの重合部位を持つ化合物を多く含む場合、得られる重合体の分子量は小さく、ガラス転移点および融点が低く加工性に優れる。この様な特性が必要な用途として好ましい分子量の範囲は、重量平均分子量で500~500,000である。式(1)以外の化合物が多官能性である場合、得られる重合体の分子量は大きく、耐薬品性および耐熱性に優れる。この様な特性が必要な用途として好ましい分子量の範囲は、重量平均分子量で500,000以上である。基板上に本発明の組成物を塗布重合し分子の配向を固定し光学異方性を得る場合、更に加工を施すことがないので、分子量の大小は問題とならない。使用環境において条件を満足すればよい。
【0060】
より分子量を上げるために、架橋剤を添加することも可能である。分子量は無限大となり、耐薬品性および耐熱性に極めて優れた重合物を得る事が可能である。架橋剤として、当該業者に公知のものであればいずれのものでも使用できる。
【0061】
本発明の化合物および組成物は高い重合性を有する。取扱いを容易にするために、安定剤を添加することも可能である。安定剤として、当該業者に公知のものであればいずれのものでも使用できるが、例えば、ハイドロキノン、4-エトキシフェノールおよび3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)があげられる。
【0062】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
[1H-NMR分析]
実施例で得られた化合物をDMSO-d6またはCDCl3に溶解させた溶液を用い、これらの化合物の1H-NMR分析を、室温にて核磁気共鳴装置(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いて行った。なお、δ値のゼロ点の基準物質にはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0064】
[13C-NMR分析]
実施例で得られた化合物をDMSO-d6に溶解させた溶液を用い、これらの化合物の13C-NMR分析を、室温にて核磁気共鳴装置(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いて行った。なお、δ値のゼロ点の基準物質にはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0065】
[GC-MS分析]
実施例で得られた化合物をクロロホルムに溶かし、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製 GC/MS-TQ8040)を用いて測定した。
【0066】
<重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分酸度(Mw/Mn)の分析は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)で、ポリスチレン換算により求めた。スタンダードにはポリスチレンスタンダードサンプルを用いた。なお、測定サンプルは、試料2mgを溶離液2mLに溶解した後、得られた溶解物を分析用の試料とした。
島津製作所製の島津LC-9A型ゲル浸透クロマトグラフ、昭和電工製のカラムShodex GF-7M HQ(展開溶剤はDMF)を用いた。
【実施例0067】
9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,7-ジカルボアルデヒド、9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,6-ジカルボアルデヒド、またはこれらの混合物(化合物(2))からの化合物(4)、化合物(5)、またはこれらの混合物の合成
【0068】
特開2021-31452に準拠して合成した、9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,7-ジカルボアルデヒドと9,10-ジオキソテトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-2,6-ジカルボアルデヒドとの混合物(化合物(2))(37.5g)、スポンジニッケル(0.50g)と、溶媒として2-エチルヘキサノール(150mL)を500mLのオートクレーブ(日東高圧社製)に加えた。オートクレーブに、窒素ライン、水素ガスライン、圧力計、マントルヒーター、および温度計を取り付けた。窒素で系内を3回置換した後、水素ガスで系内を2.6MPaに加圧した後、120℃で4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却後、大気圧まで落圧し反応液を回収した。触媒をろ別した後、回収した反応液をエバポレータにて減圧濃縮した後、得られた固体を再結晶した。更に得られた結晶を減圧乾燥させ、化合物(4)と化合物(5)の混合物を20g(収率53%)得た。
1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,8,8a,9a,10a-オクタヒドロアントラセン-9,10-ジオン(化合物(3))(30g)、トリフェニルホスフィン(0.32g)、[Rh(acac)(CO)2](64mg)と、ジクロロメタン(120mL)を500mLのオートクレーブ(日東高圧社製)に加えた。オートクレーブに、窒素ライン、オキソガス(CO/H2)ライン、圧力計、マントルヒーター、および温度計を取り付けた。窒素で系内を3回置換した後、オキソガスで系内を2MPaに加圧した後、80℃で3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却後、大気圧まで落圧させた。そこに、スポンジニッケル(0.5g)を加え、水素ガスで系内を2.6MPaに加圧した後、120℃で4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却後、大気圧まで落圧し反応液を回収した。回収した反応液をエバポレータにて減圧濃縮後、得られた固体を再結晶した。この結晶を減圧乾燥させ、化合物(4)と化合物(5)の混合物を18.8g(収率50%)得た。