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特開2022-171584多孔質基材を使用して、UV硬化性材料を用いて三次元(3D)印刷された物体を付加製造するためのシステム及び方法
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  • 特開-多孔質基材を使用して、UV硬化性材料を用いて三次元(3D)印刷された物体を付加製造するためのシステム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171584
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】多孔質基材を使用して、UV硬化性材料を用いて三次元(3D)印刷された物体を付加製造するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/321 20170101AFI20221104BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20221104BHJP
   B29C 64/194 20170101ALI20221104BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20221104BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20221104BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20221104BHJP
   B29C 64/371 20170101ALI20221104BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221104BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221104BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/106
B29C64/194
B29C64/245
B29C64/268
B29C64/205
B29C64/371
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068099
(22)【出願日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】17/244,185
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エー.・マンテル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ.・マッコンビル
(72)【発明者】
【氏名】ディネシュ・クリシュナ・クマール・ジャヤバル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル・スホツキー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL32
4F213WL35
4F213WL43
4F213WL46
4F213WL74
4F213WL76
(57)【要約】      (修正有)
【課題】廃棄される樹脂の量を低減し、樹脂材料の酸素処理を制御しなければならない程度を軽減する、樹脂を放射線に曝露して生成物層を形成する三次元(3D)物体プリンタおよびその動作方法を提供する。
【解決手段】三次元(3D)物体プリンタは、放射線源を動作させて、放射線源によって放射された放射線を、多孔質基材104に含まれる材料を硬化させるのに不十分な第1の強度で多孔質基材を通って導き、放射された放射線が多孔質基材を通過した後に材料を硬化させるのに十分な第2の強度で導く。材料は、1つ以上のワイパ112によって多孔質基材に塗布される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D物体プリンタであって、
支持プラットフォームと、
多孔質基材であって、前記多孔質基材の第1の表面から前記多孔質基材の第2の表面までの複数の通路を有する、多孔質基材と、
放射線を放射し、前記放射された放射線を前記多孔質基材を通して前記支持プラットフォームに向けて方向付けるように構成された放射線源と
を備える、3D物体プリンタ。
【請求項2】
複数のアクチュエータであって、第1のアクチュエータが、前記支持プラットフォームに動作可能に接続され、前記多孔質基材に対してZ軸に沿って前記支持プラットフォームを移動させるように構成され、第2のアクチュエータが、前記放射線源に動作可能に接続され、前記放射された放射線を、前記多孔質基材の前記第1の表面に平行なX-Y平面内で移動させるように構成された、複数のアクチュエータと、
前記放射線源及び前記複数のアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラであって、前記コントローラは、
前記放射線源を動作させて、それにより、前記放射された放射線は、前記多孔質基材と前記支持プラットフォームとの間の位置においてのみ第1の材料を硬化させるのに十分な強度を有し、
前記第1のアクチュエータを動作させて、前記支持プラットフォームを前記多孔質基材から離し、前記第2のアクチュエータを動作させて、前記放射された放射線を前記X-Y平面内で移動させるように構成されている、コントローラと
を更に備える、請求項1に記載の3D物体プリンタ。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記第2のアクチュエータを動作させて、前記放射された放射線を前記X-Y平面内で移動させるために、前記放射線源を前記X-Y平面内で移動させるように更に構成されている、請求項2に記載の3D物体プリンタ。
【請求項4】
前記コントローラが、
前記第2のアクチュエータを動作させて、前記放射線源を前記X-Y平面内でラスタパターンで移動させるように更に構成されている、請求項3に記載の3D物体プリンタ。
【請求項5】
第1のワイパと、
前記複数のアクチュエータのうちの第3のアクチュエータであって、前記第3のアクチュエータが前記第1のワイパに動作可能に接続されている、第3のアクチュエータと、
前記コントローラであって、
前記第3のアクチュエータを動作させて、前記第1のワイパを前記多孔質基材の前記第1の表面を横切って移動させるように更に構成されている、前記コントローラと
を更に備える、請求項2に記載の3D物体プリンタ。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記第1のワイパの移動を前記放射された放射線の前記X-Y平面内での移動と同期させるように更に構成されている、請求項5に記載の3Dプリンタ。
【請求項7】
第2のワイパであって、前記放射された放射線が前記X-Y平面内を移動するときに、前記放射された放射線が前記第1のワイパと前記第2のワイパとの間を通過するように、前記放射された放射線の幅よりも広い前記第1のワイパからの距離だけ離間された、第2のワイパと、
前記複数のアクチュエータのうちの第4のアクチュエータであって、前記第4のアクチュエータが前記第2のワイパに動作可能に接続されている、第4のアクチュエータと、
前記コントローラであって、
前記第4のアクチュエータを動作させて、前記第2のワイパを前記多孔質基材の前記第1の表面を横切って移動させ、前記第1のワイパと前記第2のワイパとの間の距離を維持させるように更に構成されている、前記コントローラと
を更に備える、請求項5に記載の3Dプリンタ。
【請求項8】
不活性ガス源と、
圧力源であって、前記圧力源が、不活性ガスを前記不活性ガス源から前記多孔質基材内の前記複数の通路を通して付勢するように構成されている、圧力源と
を更に備える、請求項2に記載の3Dプリンタ。
【請求項9】
前記圧力源が正圧源である、請求項8に記載の3Dプリンタ。
【請求項10】
前記圧力源が、前記不活性ガスを前記多孔質基材内の前記複数の通路を通して付勢するために、前記不活性ガス源に動作可能に接続された圧縮機である、請求項9に記載の3Dプリンタ。
【請求項11】
前記圧力源が負圧源である、請求項8に記載の3Dプリンタ。
【請求項12】
前記圧力源が、前記多孔質基材に動作可能に接続された真空であり、前記不活性ガス源から放出された不活性ガスを前記多孔質基材内の前記複数の通路を通して引っ張る、請求項11に記載の3Dプリンタ。
【請求項13】
前記コントローラが、
前記多孔質基材内の前記通路のいずれか内で前記樹脂を硬化させるのに十分な前記多孔質基材内の前記通路のいずれか内の前記放射線の平均強度を生成することなく、前記支持プラットフォームと前記多孔質基材との間の前記位置で前記樹脂を硬化させるのに十分な時間にわたって前記放射線源を動作させるように更に構成されている、請求項2に記載の3Dプリンタ。
【請求項14】
3D物体プリンタを動作させる方法であって、
多孔質基材の前記第1の表面から前記多孔質基材の第2の表面まで延在する複数の通路を有する前記多孔質基材の第1の表面に、第1の材料を提供することと、
放射線源を動作させて、放射された放射線を、前記多孔質基材を通して前記多孔質基材の前記第2の表面から前記第1の材料を受け取るように配置された支持プラットフォームに向けて導くことと
を含む、方法。
【請求項15】
前記放射線源を動作させて、それにより、前記放射された放射線は、前記多孔質基材の前記第2の表面と前記支持プラットフォームとの間の位置においてのみ前記第1の材料を硬化させるのに十分な強度を有することと、
第1のアクチュエータを動作させて、前記支持プラットフォームを前記多孔質基材に対してZ軸に沿って前記多孔質基材から離れるように移動させることと、
第2のアクチュエータを動作させて、前記放射された放射線を前記多孔質基材の前記第1の表面及び前記第2の表面に平行なX-Y平面内で移動させることと
を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のアクチュエータの前記動作が、前記放射線源を前記X-Y平面内で移動させて、前記放射された放射線を前記X-Y平面内で移動させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のアクチュエータの前記動作が、前記放射された放射線を前記X-Y平面内のラスタパターンで移動させる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第3のアクチュエータを動作させて、第1のワイパを前記多孔質基材の前記第1の表面を横切って移動させることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第4のアクチュエータを動作させて、第2のワイパを前記多孔質基材の前記第1の表面を横切って移動させ、前記放射された放射線の幅よりも広い前記第1のワイパと前記第2のワイパとの間の距離を維持させることを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
圧力源を動作させて、前記多孔質基材内の前記複数の通路を通して不活性ガス源から不活性ガスを付勢することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体材料を放射線に曝露して三次元(3D)物体を形成する三次元(3D)物体プリンタに関し、より詳細には、物体形成中にUV硬化性材料を酸素処理する3D物体プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造としても知られる三次元印刷は、物体のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、付加製造デバイスが、前に形成された層の上に部品の連続層を形成する付加プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、フォトポリマー、エラストマー及び金属などの溶解した材料の液滴を排出する排出装置を使用する。他の付加製造デバイスは、可視光又はUV光照射を使用して光硬化性樹脂を固化させることによって物体層を形成する。そのような既知の技術の1つは、製造される物体の上面に形成された新しい層を提供することができる。別の技術は、製造されている物体の底面に新しい層を提供することができる。これら全ての付加製造方法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
樹脂を放射線に曝露して生成物層を形成する既知の付加製造プロセスは、非常に複雑である。それらは、典型的には、部分的に硬化した材料を置換するための樹脂材料のUV硬化を阻害し、樹脂材料の流れを調整するために、樹脂のリザーバ内の窓を通る酸素拡散の制御に依存する。より重要なことに、樹脂材料は非常に高価であり、製造される部品の価格の主な決定要因である。部品の印刷に必要であり、物体の形成後に廃棄される可能性がある材料の量は、かなりの量であり得る。これらの欠点を回避するプリンタ及びその動作方法が有益であろう。
【発明の概要】
【0004】
物体層を形成するために樹脂材料を放射線に曝露する付加製造システムを動作させる新しい方法は、廃棄される樹脂の量を低減し、樹脂材料の酸素処理を制御しなければならない程度を軽減する。この方法は、多孔質基材の第1の表面から多孔質基材の第2の表面まで延在する複数の通路を有する多孔質基材の第1の表面に、第1の材料を提供することと、放射線源を動作させて、放射された放射線を、多孔質基材を通して多孔質基材の第2の表面から第1の材料を受け取るように配置された支持プラットフォームに向けて導くこととを含む。
【0005】
物体層を形成するために樹脂材料を放射線に曝露する付加製造システムは、廃棄される樹脂の量を低減し、樹脂材料の酸素処理を制御しなければならない程度を軽減する。システムは、支持プラットフォームと、多孔質基材であって、多孔質基材の第1の表面から多孔質基材の第2の表面までの複数の通路を有する、多孔質基材と、放射線を放射し、放射された放射線を多孔質基材を通して支持プラットフォームに向けて方向付けるように構成された放射線源とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
廃棄される樹脂の量を低減し、樹脂材料の酸素処理を制御しなければならない程度を軽減しながら、物体層を形成するために樹脂材料を放射線に曝露する付加製造システム及び新しい付加製造システム付加製造システムを動作させる方法の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して行われる以下の説明において説明される。以下に記載される方法及びシステムは、多孔質基材を使用して、物体/樹脂界面まで樹脂材料を酸素処理し、次いで、放射線の強度を、酸素処理樹脂を克服し、部分的に硬化させて、熱処理が物体の硬化を終了する前に物体の層を形成するレベルに集中させる。
【0007】
図1】廃棄される樹脂の量を低減し、樹脂材料の酸素処理を制御しなければならない程度を軽減しながら、物体層を形成するために樹脂材料を照射に曝露する3D物体製造システムの一実施形態を示す。
【0008】
図2】廃棄される樹脂の量を低減し、樹脂材料の酸素処理を制御しなければならない程度を軽減しながら、物体層を形成するために樹脂材料を放射線に曝露するように図1のシステムを動作させるコントローラによって実施されるプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
廃棄される樹脂の量を低減し、樹脂材料の酸素化を制御しなければならない程度を軽減しながら、樹脂材料を放射線に曝露して物体層を形成する3D物体プリンタ及びその動作の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は同様の要素を表す。
【0010】
図1は、樹脂材料を照射して物体層を形成する3D物体プリンタ100の一実施形態を示す。以下の説明は、図1の3D物体プリンタを参照して行われるが、本明細書に開示される動作及び構成の原理と一致する他の実施形態が想定され得る。
【0011】
図1のプリンタ100は、多孔質基材104と、樹脂116を少なくとも部分的に硬化させて物体120の層を形成するための放射線110を生成する放射線源108とを含む。本明細書で使用される場合、「多孔質基材」という用語は、60%~95%の空隙率を有する平面構造を意味する。空隙率は、基材中の固体の体積に対する基材中の空気の体積の比×100%である。樹脂116と多孔質基材104の上面との接触は、基材104の上面上でワイパ112を移動させるように1つ以上のアクチュエータ132を動作させるコントローラ128によって調整される。コントローラ128はまた、1つ以上のアクチュエータ132を動作させて、放射線源108を多孔質基材108の領域にわたってラスタパターンで図1の平面に出入りさせる。すなわち、放射線源は、基材104の平面に平行なX-Y平面内で移動される。本明細書で使用される場合、図面平面に出入りする軸はY軸と呼ばれ、この軸に垂直な軸はX軸であるが、この命名は逆であってもよい。本明細書で使用される場合、「ラスタパターン」という用語は、Y軸に沿って第1の方向に移動し、次にX軸に沿って移動し、次にY軸に沿う第1の方向と反対の方向にY軸に沿って移動することを意味する。アクチュエータ132はまた、ワイパをX軸に沿って双方向に多孔質基材104を横切って移動させる。1つ以上のアクチュエータはまた、支持プラットフォーム136に動作可能に接続されているため、コントローラ128は、アクチュエータを動作させて、多孔質基材104に平行なX-Y平面に垂直なZ軸に沿ってプラットフォームを移動させ、物体層が形成されるときに物体120の上面と多孔質基材の下面との間の分離を維持することができる。
【0012】
より詳細には、多孔質基材104は、マイクロチャネルプレートであり得る。一方のマイクロチャネルプレートには、典型的には約10~約15μmの直径を有する複数のガラス管が形成されており、これらは、アレイを形成するために互いに平行になるような配置で融着されている。マイクロチャネルプレートは、電子増倍器に使用されることが多い。管の内部は、材料が電子を受け取ると電子を生成するエミッタ材料でコーティングされている。したがって、管の一端に電子が入ると、管の他端で複数の電子が放出される。しかしながら、プリンタ100において、マイクロチャネルプレートのガラス管は、基材104の上面から、物体120の上面に近接する基材の下面への樹脂の移動のための経路を提供する。チャネルの内側のコーティングを使用して、チャネルを通る材料の湿潤及び流れを確保することができる。以下でより詳細に説明されるワイパの作用は、樹脂を基材104の上面の細孔に付勢し、樹脂のこの進入は、樹脂を基材の下面に押し出す。基材104の上面及び下面は周囲空気に曝されるため、基材104内の樹脂は十分に酸素処理されたままである。この特性は、以下に記載されるような層形成に重要である。既知のマイクロチャネルプレートは多孔質基材の効果的な実施形態であるが、基材を通る樹脂の流れを適切に制御することができる限り、他の実施態様を使用することができる。例えば、金属有機骨格構造体(MOF)、ゼオライト、多孔質シリコン、マクロ多孔質ポリマーなどを使用して、多孔質基材104を実施することができる。多孔質プレートの厚さは、実施にかかわらず、約400ミクロン~約1000ミクロンの範囲である。更に、多孔質プレートは、その形状、屈折率変動、孔の配置、及びこれらの特徴の組み合わせのために、放射線源108によって放射された放射線上のレンズとして動作する構造とすることができる。例えば、多孔質基材は、放射線源108によって放射されるUV放射のためのフレネルレンズとして動作するように製造することができる。UV放射線の反射又は散乱は、式R=((n-n)/(n+n))を使用して計算され、式中、n及びnは多孔質基材及び樹脂の反射指数である。これらの指数が約10%異なる場合、反射値は約0.25%であり、これはUV散乱の許容可能な上限値である。更に、多孔質プレートの永久的な目詰まりを防止するために洗浄手順を含めることができる。そのような基材洗浄器158(図1に示す)の一実施形態は、不活性ガス源154と、不活性ガスを多孔質基材の細孔に押し通すための圧力源150とを含む。圧力源は、それぞれ真空又は圧縮機などの負又は正の圧力源とすることができる。
【0013】
物体120の上面と多孔質基材104の下面との間の樹脂の薄層は、いくつかの理由で有利である。第1に、この界面における材料が少ないことにより、プロセス中の樹脂の廃棄が制限される。第2に、多孔質基材の表面上、基材の細孔内、及び物体の表面上に少量の樹脂を提供することによって、樹脂のリザーバを使用する他の光造形プロセスで露出される樹脂の量よりも少ない樹脂が周囲硬化に曝される。樹脂のリザーバを周囲硬化条件に曝露すると、樹脂が製造に最適な状態にある時間が制限されるため、この文書に開示されたプロセスによって無駄になる樹脂は少なくなる。第3に、ある材料から別の材料への変更は、次の材料を物体の上面に配置するために多孔質基材を介して少量しか排出されなければならないため、迅速に起こり得る。材料の変更は、3D物体において異なる特性を生成するのに有用である。多孔質基材の部品と下面との間の薄い材料界面はまた、基材内の材料及び物体の上面上の材料が十分に酸素処理されることを確実にするのに役立つ。
【0014】
コントローラ128は、1つ以上のアクチュエータ132を動作させて、ワイパを独立して又は同時に同じ方向に移動させるように構成することができる。ワイパ112は図1ではブレードとして示されているが、ローラ、エアナイフなどのワイパの他の実装も同様に使用することができる。一実施形態では、放射線源108がY軸に沿ったその移動の終わりに到達すると、少なくとも1つのワイパは、放射線源が次のラスタパターンスキャンのために以前のY軸移動の反対方向にY軸に沿って移動される前に放射線源が移動される方向に、X軸に沿って放射線源に追従する。放射線源のラスタパターン移動は、X軸の移動によって分離されたY軸に沿った放射線源のこの往復移動において起こり得るが、放射線源は静止していることができ、放射線源内の回転ミラーなどに放射線を向けることによって、放射された放射線はX-Y平面内でラスタパターンで多孔質プレート104を横切って移動する。X軸に沿った放射線ビームに追従するワイパの移動は、樹脂を多孔質基材の上面の開口内に移動させ、放射線ビームに先行するワイパの移動は、上面をきれいに拭き取る。ワイパの移動を一時的に停止させると基材上に樹脂の隆起が生じるため、コントローラ128は、ワイパを連続的に移動させるように1つ以上のアクチュエータ132を動作させる。放射線源及びワイパの両方がX軸の縁部に到達すると、X軸に沿った放射線源の反転した動きに先行及び追従するためにワイパの移動は反転される。材料のこのワイピングは、材料が基材を通って流れて基材と部品の上面との間の空間を満たすことを確実にするのに役立つ。ワイピングはまた、材料が基材の全ての細孔を通るのを強制し、材料がシステム内に長く留まりすぎる可能性を低減することができる。前述のように、ワイパは、システムで使用される材料を変更することもできる。1つの材料が拭き取られると、別の材料を反対のワイパによってシステムに導入して、その生産の様々な高さで物体の特性を変化させることができる。いくつかの実施形態では、単一のワイパが使用される。この実施形態では、単一のワイパは、放射線ビームに追従して樹脂を多孔質基材の上面に供給し、戻り経路上で、放射線ビームが多孔質基材を通って導かれる前に、樹脂を多孔質基材の上面上の均一な薄層に計量する。
【0015】
コントローラ128は、放射線源108を動作させて放射線を集束させ、その強度は、樹脂の酸素阻害を克服して物体120の表面付近のみを硬化させるのに十分である。本明細書で使用される「放射線源」という用語は、レーザ又はLEDを迅速に作動及び停止させるための電子制御インタフェースを有し、放射された放射線を光学部品に導いて放射線を集束させるレーザ又はLEDを意味する。放射線源の活性化時間は、集束された放射線の領域で物体と多孔質基材との間の樹脂を硬化させるのに十分長いが、細孔内のUV放射線の平均強度が多孔質基材の細孔内の樹脂を硬化させないために十分短いものでなければならない。UV材料中の酸素の存在は、材料の硬化を阻害する。放射線の焦点を調節することにより、放射線は、多孔質基材104内の樹脂を硬化させるには不十分なエネルギーを有する。物体120の上面又はその近くでのみ、次の物体層を形成するために樹脂の薄い部分を、少なくとも部分的に、硬化させるのに十分な放射線のエネルギーがある。放射線源108のこの動作は、多孔質プレートへの追加の樹脂の進入によって物体に向かって付勢されるまで、物体と多孔質基材の下面との間の未硬化樹脂の量を維持する。次いで、この未硬化材料は、放射線の集束エネルギーが少なくとも部分的に硬化し、次の物体層を形成することができるゾーンに入る。コントローラ128はまた、放射線源108を選択的にオン及びオフにして、形成されている層を成形する。したがって、このシステム動作の方法は、物体の表面と、物体層の連続的な形成のために放射線が通過する窓との間の樹脂中の酸素拡散の厳密な調整を必要とする従来知られているシステムよりも少ない樹脂を使用する。更に、曝露放射線の焦点制御は、放射線が通過する樹脂中の酸素の調整よりも簡単である。
【0016】
別の実施形態では、物体120が形成されている体積に窒素又はアルゴンなどの不活性ガスを導入して、多孔質基材を通過した後の樹脂中の酸素の量を減少させる。この位置での樹脂中の酸素の減少は、物体の上面での硬化に必要な放射線の強度を減少させるのに役立つ。同様に、樹脂中の酸素レベルが多孔質基材の上面及び内部での望ましくない重合を阻害するので、多孔質基材の上面での酸素レベルを増加させて、多孔質基材においてこの効果を確実にすることができる。これらの手法のいずれかを使用して、樹脂の硬化が物体の上面でのみ起こることを確実にし、樹脂/物体界面での放射線源の強度をより容易に制御できるようにすることができる。
【0017】
より少ない樹脂材料を使用し、樹脂材料全体の酸素レベルの制御をあまり必要としないように3D物体プリンタを動作させるためのプロセスを図2に示す。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを動作させるために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を操作してタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ128は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0018】
図2は、より少ない樹脂を使用し、樹脂材料全体の酸素レベルの制御をあまり必要としないように、プリンタ100などの3D物体プリンタを動作させるプロセスの流れ図である。プロセス200は、多孔質基材の下面と形成される物体の上面との間に樹脂を保持するための間隙を形成するための支持プラットフォームの位置決めから始まる(ブロック204)。ワイパは、多孔質基材の上面を横切って移動して、樹脂を多孔質基材の細孔に装填し、その結果、樹脂が多孔質基材と支持プラットフォームとの間の間隙に入り、放射線曝露の前に基材の上に均一に薄い層を提供する(ブロック208)。放射線源焦点距離は、樹脂を少なくとも部分的に硬化させて物体層を形成する強度で間隙内の放射線を集束させるように設定される(ブロック212)。プロセスは、放射線源が動作され、多孔質基材を横切ってラスタパターンで移動されて(又は放射線がラスタパターンで移動されて)物体層を形成しながら、ワイパが放射線の移動と同期して連続的に移動されて、放射線曝露のために多孔質基材の表面を拭き取り、放射後に多孔質基材の表面上の樹脂を交換する(ブロック220)。すなわち、放射線ビームが多孔質基材の上面を払拭する前に移動するワイパと、放射線ビームに追従して移動するワイパとで、上面の樹脂をリフレッシュして多孔質基材に樹脂を入り込ませることができる。放射線源の動作は、物体の層を形成するための物体のデジタルモデルによる線源の選択的作動を指す。別の物体層が形成される(ブロック224)場合、プラットフォームのZ軸位置が調整され、次の物体層が形成される(ブロック220)。物体層の全てが形成されると、プロセスは停止し、その結果、物体は熱処理されエポキシ要素を樹脂内に固定することができる(ブロック224)。
【0019】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。
図1
図2