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特開2022-1715954-メチル-1-ペンテン系重合体およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171595
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】4-メチル-1-ペンテン系重合体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/14 20060101AFI20221104BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221104BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20221104BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C08F10/14
C08J5/18 CES
C08F4/6592
B32B27/32 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070182
(22)【出願日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021077335
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊明
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4F071AA21
4F071AA82
4F071AA85
4F071AA88
4F071AF05Y
4F071AF08
4F071AF11Y
4F071AF20
4F071AH03
4F071AH04
4F071AH05
4F071AH12
4F071AH13
4F071AH15
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC07
4F071BC12
4F100AK08A
4F100AT00A
4F100BA01
4F100EH36A
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JA06A
4F100JA13A
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4J100AA02Q
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4J100AA16Q
4J100AA17P
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA10
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4J100DA41
4J100DA42
4J100JA00
4J100JA15
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4J100JA44
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4J100JA59
4J100JA64
4J100JA67
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4J128AC28
4J128AD07
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC25A
4J128BC27A
4J128BC27B
4J128DA05
4J128DA08
4J128EA01
4J128EB07
4J128EB10
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA09
4J128GA04
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA15
4J128GA19
4J128GA21
4J128GA26
(57)【要約】
【課題】本発明は、融点が高く耐熱性に優れるとともに、軽量で、ガス透過を抑制したフィルム等の成形体を製造しうる、4-メチル-1-ペンテン系重合体、およびそれを含む成形体、ならびにフィルムの製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】下記要件(a)~(f)をすべて満たす、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)。(a)4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.4モル%を超え100モル%以下、α-オレフィン由来の構成単位の含有量が0モル%以上0.6モル%未満である。(b)メソダイアッド分率(m)が、98.5%以上100%以下である。(c)極限粘度[η]が、0.1~6.0dl/gである。(d)23℃デカン可溶部量が、5.0質量%以下である。(e)融点(Tm)が、200~260℃である。(f)融解熱量(ΔHm)が、45J/g以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a)~(f)をすべて満たす、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)。
(a)4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.4モル%を超え100モル%以下であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位の含有量が0モル%以上0.6モル%未満である。
(b)13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)が、98.5%以上100%以下である。
(c)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、0.1~6.0dl/gである。
(d)23℃デカン可溶部量が、5.0質量%以下である。
(e)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融点(Tm)が、200~260℃である。
(f)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔHm)が、45J/g以上である。
【請求項2】
さらに下記要件(g)を満たす、請求項1に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)。
(g)JIS K7112の密度勾配管法に準拠して測定した密度が、815~850kg/m3である。
【請求項3】
さらに下記要件(h)を満たす、請求項1に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)。
(h)ASTM D1238に準拠して260℃、5kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1~500g/10分である。
【請求項4】
請求項1に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む成形体。
【請求項5】
最大肉厚が100mm以下であり、最小肉厚が0.001mm以上である、請求項4に記載の成形体。
【請求項6】
射出成形体または押出成形体である、請求項4に記載の成形体。
【請求項7】
フィルム状またはシート状である、請求項4に記載の成形体。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載の成形体からなる、食品包装資材または食品保存容器。
【請求項9】
少なくとも1つの層が、請求項1~3のいずれか1項に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む層である、積層体。
【請求項10】
200~320℃のダイス温度、70~120℃のチルロール温度のフィルム成形条件下で、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含むフィルムを成形する工程を有し、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)が、下記要件(a)~(f)をすべて満たす、フィルムの製造方法。
(a)4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.4モル%を超え100モル%以下であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位の含有量が0モル%以上0.6モル%未満である。
(b)13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)が、98.5%以上100%以下である。
(c)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、0.1~6.0dl/gである。
(d)23℃デカン可溶部量が、5.0質量%以下である。
(e)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融点(Tm)が、200~260℃である。
(f)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔHm)が、45J/g以上である。
【請求項11】
前記4-メチル1-ペンテン系重合体(X)が、さらに下記要件(g)を満たす、請求項10に記載のフィルムの製造方法。
(g)JIS K7112の密度勾配管法に準拠して測定した密度が、815~850kg/m3である。
【請求項12】
前記4-メチル1-ペンテン系重合体(X)が、さらに下記要件(h)を満たす、請求項10または11に記載のフィルムの製造方法。
(h)ASTM D1238に準拠して260℃、5kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1~500g/10分である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-メチル-1-ペンテン系重合体、およびそれを用いたフィルム等の成形体およびその用途、ならびにフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4-メチル-1-ペンテンを主たる構成モノマーとする4-メチル-1-ペンテン系重合体は、ポリエチレンやポリプロピレンに比べて、耐熱性、透明性および電気特性等の特性に優れ、また、離型性、耐溶剤性にも優れることから、各種用途に広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、フィルムは良好な離型性などの特長を活かしてFPC離型フィルム、複合材料成形用離型フィルムなどに使用され、成形体では耐薬品性、耐水性、透明性などの特長を活かして、実験器具用途およびゴムホース製造用マンドレルなどに使用されている。
一方で、公知の4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂組成物からなる成形体は、耐熱性の観点で、さらに改善が必要な場合が存在する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/099876号パンフレット
【特許文献2】特開2013-122061号公報
【特許文献3】国際公開第2014/050817号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食品向けなどのパッケージ材料においては、ガスの透過を抑制した材料が求められる場合がある。4-メチル-1-ペンテン系重合体などのポリオレフィン材料は、一般にガスの透過度合いが比較的高いため、ガス透過を抑制したい用途に用いる場合には、ガスバリア層を形成する他素材との多層構成とすることが考えられる。しかし、環境配慮の観点から、リサイクルを容易にするためにパッケージ材料をモノマテリアル化したいというニーズもある。また、単素材のパッケージ材料でガス透過を抑制するには、パッケージ材料の厚さを大きくしたり、高密度化したりすることが考えられるが、輸送エネルギーを低減するなどの観点からは、パッケージ材料を軽量化したいというニーズもある。
また生鮮食品向けのパッケージ材料では、内容物の鮮度を保持するために、食品から排出されるガス成分を外部に逃がして、外気と内容気体の組成を近づけたいというニーズがあり、このようなニーズに対応するパッケージ材料においては、ガスの透過量がガスの種類によって異なるのは好ましくない場合がある。
【0005】
上述した通り、4-メチル-1-ペンテン系重合体は、各種フィルムや成形体に使用されているが、用途によってはさらに高い耐熱性や、ガス透過量の抑制が望まれる。本願出願人は、特定の触媒を用いて4-メチル-1-ペンテン系重合体を製造することにより、耐熱性を改善することを提案してはいるが(特許文献3参照)、ガス透過を抑制したフィルム等を製造する手段については見出されておらず、さらなる改良が望まれていた。
【0006】
本発明は、耐熱性に優れるとともに、軽量で、ガス透過を抑制可能なフィルム等の成形体を製造しうる、4-メチル-1-ペンテン系重合体、およびそれを含むフィルム等の成形体、ならびにフィルムの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成を有し、かつ特定の特性を有する4-メチル-1-ペンテン系重合体が、上記の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の〔1〕~〔12〕に関する。
〔1〕下記要件(a)~(f)をすべて満たす、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)。
(a)4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.4モル%を超え100モル%以下であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位の含有量が0モル%以上0.6モル%未満である。
(b)13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)が、98.5%以上100%以下である。
(c)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、0.1~6.0dl/gである。
(d)23℃デカン可溶部量が、5.0質量%以下である。
(e)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融点(Tm)が、200~260℃である。
(f)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔHm)が、45J/g以上である。
【0009】
〔2〕さらに下記要件(g)を満たす、前記〔1〕に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)。
(g)JIS K7112の密度勾配管法に準拠して測定した密度が、815~850kg/m3である。
〔3〕さらに下記要件(h)を満たす、前記〔1〕または〔2〕に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)。
(h)ASTM D1238に準拠して260℃、5kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1~500g/10分である。
【0010】
〔4〕前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む成形体。
〔5〕最大肉厚が100mm以下であり、最小肉厚が0.001mm以上である、前記〔4〕に記載の成形体。
〔6〕射出成形体または押出成形体である、前記〔4〕または〔5〕に記載の成形体。
〔7〕フィルム状またはシート状である、前記〔4〕~〔6〕のいずれかに記載の成形体。
〔8〕前記〔4〕~〔7〕のいずれかに記載の成形体からなる、食品包装資材または食品保存容器。
〔9〕少なくとも1つの層が、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む層である、積層体。
【0011】
〔10〕200~320℃のダイス温度、70~120℃のチルロール温度のフィルム成形条件下で、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含むフィルムを成形する工程を有し、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)が、下記要件(a)~(f)をすべて満たす、フィルムの製造方法。
(a)4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.4モル%を超え100モル%以下であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位の含有量が0モル%以上0.6モル%未満である。
(b)13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)が、98.5%以上100%以下である。
(c)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、0.1~6.0dl/gである。
(d)23℃デカン可溶部量が、5.0質量%以下である。
(e)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融点(Tm)が、200~260℃である。
(f)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔHm)が、45J/g以上である。
【0012】
〔11〕前記4-メチル1-ペンテン系重合体(X)が、さらに下記要件(g)を満たす、前記〔10〕に記載のフィルムの製造方法。
(g)JIS K7112の密度勾配管法に準拠して測定した密度が、815~850kg/m3である。
〔12〕前記4-メチル1-ペンテン系重合体(X)が、さらに下記要件(h)を満たす、前記〔10〕または〔11〕に記載のフィルムの製造方法。
(h)ASTM D1238に準拠して260℃、5kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1~500g/10分である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱性に優れるとともに、軽量で、ガス透過を抑制可能なフィルム等の成形体を製造しうる、4-メチル-1-ペンテン系重合体、およびそれを含むフィルム等の成形体を提供することができる。
また、本発明によれば、耐熱性に優れ、ガス透過を抑制可能な、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むフィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明する。本明細書において、数値範囲A~Bは、特に言及のない限り、A以上B以下を意味する。また「重合」なる記載および「(共)重合」なる記載は、別途の記載がない限り、いずれも単独重合および共重合を包括する意味で用いられる。
【0015】
<4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)>
本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、下記要件(a)~(f)をすべて満たす。
【0016】
《要件(a)》
(a)4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.4モル%を超え100モル%以下であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位の含有量(α-オレフィン由来の構成単位の含有量)が0モル%以上0.6モル%未満である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、好ましくは4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.5~100モル%、α-オレフィン由来の構成単位の含有量が0~0.5モル%であり、より好ましくは、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.5モル%を超え100モル%以下、α-オレフィン由来の構成単位の含有量が0モル%以上0.5モル%未満であり、さらに好ましくは、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.6~100モル%、α-オレフィン由来の構成単位の含有量が0~0.4モル%であり、特に好ましくは、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が99.6モル%を超え100モル%以下、α-オレフィン由来の構成単位の含有量が0モル%以上0.4モル%未満である。
【0017】
本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)が、上記のような構成単位の含有量を満たすと、耐熱性や軽量性の観点から好ましい。また、α-オレフィン由来の構成単位の含有量が少なく結晶化度が高いものとなり、当該4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含むフィルム等の成形体のガス透過が抑制されるため好ましい。
【0018】
エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。本明細書において、エチレンはα-オレフィンに包含されるものとする。これらの中でも、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)から得られる成形体の可撓性を付与するという観点から、炭素数5~20の直鎖状α-オレフィンが好ましく、炭素数6~20の直鎖状α-オレフィンがより好ましく、炭素数8~20の直鎖状α-オレフィンがさらに好ましく、炭素数10~20の直鎖上α-オレフィンが特に好ましい。具体的には、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンが好ましく、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンが特に好ましい。4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)が、α-オレフィン由来の構成単位を有する場合、α-オレフィン由来の構成単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0019】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、本発明の目的を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィン以外の他の重合性化合物由来の構成単位をさらに有することができる。他の重合性化合物としては、例えば、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン;1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の非共役ポリエンが挙げられる。4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)中において、他の重合性化合物由来の構成単位の含有割合は、全構成単位100モル%中、通常0.5モル%以下、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、含有しないことが特に好ましい。
【0020】
《要件(b)》
(b)13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)が、98.5%以上100%以下である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)のメソダイアッド分率(m)は、好ましくは98.7~100%、より好ましくは99.0~100%、さらに好ましくは99.3~100%、特に好ましくは99.5~100%である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)のメソダイアッド分率(m)が、上記範囲を満たすと、得られる成形体の耐熱性や機械的強度が充分なものとなる。 本発明において、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)のメソダイアッド分率(m)は、たとえば後述するオレフィン重合用触媒の種類によって調整することができる。
【0021】
《要件(c)》
(c)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、0.1~6.0dl/gである。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の極限粘度[η]は、好ましくは1.2~3.6dl/g、より好ましくは1.4~3.4dl/g、さらに好ましくは1.6~3.2dl/gである。極限粘度[η]が大きすぎると、成形時のダイス内部での樹脂流れの乱れや、メルトフラクチャーによる現象により、得られるフィルム等の成形体の表面粗度や厚みムラが大きくなる傾向がある。また、極限粘度[η]が小さすぎると、溶融張力の低下により、耳揺れやチルロールからの浮き上がりが生じて厚みムラが大きくなる傾向があると考えられる。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の極限粘度[η]が、上記範囲を満たすと、成形性に優れ、厚みムラのない成形体が得られやすいため好ましい。
【0022】
《要件(d)》
(d)23℃デカン可溶部量が、5.0質量%以下である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、23℃デカン可溶部量が好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の23℃デカン可溶部量が上記範囲を満たすと、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の結晶性が高いものとなり、これを含む成形体がガス透過を抑制することが可能となるため好ましい。
【0023】
《要件(e)》
(e)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融点(Tm)が、200~260℃である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の融点(Tm)は、好ましくは210~255℃、より好ましくは220~250℃、さらに好ましくは230~245℃である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、上記範囲を満たすため、これを含む成形体が耐熱性に優れたものとなり好ましい。
【0024】
《要件(f)》
(f)示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔHm)が、45J/g以上である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の融解熱量(ΔHm)は、好ましくは48J/g以上、より好ましくは50J/g以上、さらに好ましくは52J/g以上である。この融解熱量(ΔHm)の上限値は、特に限定されるものではないが、たとえば70J/gである。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、上記範囲を満たすため結晶化度が高く、これを含む成形体が耐熱性に優れ、ガス透過を抑制することが可能となるため好ましい。
【0025】
本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、上述した融点(Tm)と、融解熱量(ΔHm)とが、好ましくは下記式(1)を、より好ましくは下記式(2)を、さらに好ましくは下記式(3)を、特に好ましくは下記式(4)満たす。
ΔHm-(0.5×Tm-76)≧0 …(1)
ΔHm-(0.5×Tm-76)>0 …(2)
ΔHm-(0.5×Tm-76)≧6 …(3)
ΔHm-(0.5×Tm-76)≧8 …(4)
【0026】
また、ΔHm-(0.5×Tm-76)の上限値は特に限定されるものではないが、たとえば20である。この範囲にあると、耐熱性に優れ、ガス透過を抑制することが可能となり、成形性に優れ、厚みムラのない成形体が得られやすいため好ましい。
上記式を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、従来公知の4-メチル-1-ペンテン系重合体と比べて、同程度の融点(Tm)における融解熱量(ΔHm)が大きい、すなわち結晶化度が高いものである。
【0027】
本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、上記要件(a)~(f)をすべて満たすことにより、耐熱性に優れるとともに、軽量で、ガス透過が抑制可能なフィルム等の成形体を得ることができる。上記効果は以下の理由によると推測されるが、これに限定されない。
本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)はエチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位の含有量(α-オレフィン由来の構成単位の含有量)が比較的少ない。さらにメソダイアッド分率(m)が比較的高く立体規則性が高い。加えて23℃デカン可溶部量が比較的少ない。このため、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は従来公知の4-メチル-1-ペンテン系重合体と比べて結晶化度が高い。一般的に、結晶化した領域はその運動性の低さからガスを通しにくいため、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含むフィルム等の成形体は、ガス透過が抑制されたと推測される。また、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、α-オレフィン由来の構成単位の含有量が比較的少なく、融点(Tm)が高いことから、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含むフィルム等の成形体は耐熱性に優れる。さらに、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の極限粘度[η]によれば、成形性に優れ、厚みムラのない成形体が得られやすい。
以上の理由により、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は耐熱性に優れるとともに、軽量で、ガス透過を抑制可能なフィルム等の成形体を得ることができると推測される。
【0028】
本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、上記の要件(a)~(f)に加え、好ましくは、要件(g)、要件(h)の一つ以上をさらに満たす。
【0029】
《要件(g)》
(g)JIS K7112の密度勾配管法に準拠して測定した密度が、好ましくは815~850kg/m3である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の密度は、より好ましくは820~840kg/m3であり、さら好ましくは825~835kg/m3であり、特に好ましくは825~832kg/m3である。
本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の密度が、上記の範囲を満たす場合には、これを含む成形体が軽量なものとなるため好ましい。上記の範囲を満たす本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、これを含む成形体が軽量なものとなるにも関わらず、上述の要件(a)~(f)を満たすことにより、優れた耐熱性を有し、ガス透過を抑制することが可能となる。
【0030】
《要件(h)》
(h)ASTM D1238に準拠して260℃、5kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1~500g/10分である。本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)のメルトフローレート(MFR)は、より好ましくは2~100g/10分、さらに好ましくは3~30g/10分である。メルトフローレート(MFR)が上記範囲にあると、成形体製造時の樹脂流動性の点で好ましい。本発明において、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)のメルトフローレート(MFR)は、例えば重合反応中に反応器内に水素を併存させることにより調整することができる。
【0031】
さらに、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、射出成形体のビカット軟化温度が好ましくは145~250℃、より好ましくは150~230℃、さらに好ましくは190~230℃、特に好ましくは195~230℃であることが望ましい。ビカット軟化温度の測定に用いる射出成形体は、後述する実施例に記載の方法により作成することができる。このようなビカット軟化温度を有する4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、耐熱性に優れ、形状安定性に優れた成形体を提供することができる。
【0032】
<4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の製造方法>
本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、上述の要件(a)~(f)を満たせばよく、その製造方法を特に限定するものではないが、たとえば、後述するオレフィン重合用触媒の存在下、4-メチル-1-ペンテンと、必要に応じてエチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを重合する工程を有する製造方法により好適に製造することができる。
【0033】
《オレフィン重合用触媒》
4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の製造において、好適に用いられるオレフィン重合用触媒は、後述する一般式[I]で表される遷移金属化合物およびその鏡像異性体から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物(A)を含有する。この遷移金属化合物(A)を含むオレフィン重合触媒の存在下に4-メチル-1-ペンテンを主とするモノマーを重合すると、立体規則性の高い重合体が得られやすく、融点(Tm)に対する融解熱量(ΔHm)が高く、結晶化度の高い、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を好適に製造することができる。
【0034】
このオレフィン重合用触媒は、さらに、
(B)(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下「化合物(B)」ともいう。)
を含有することが好ましい。
【0035】
前記オレフィン重合用触媒は、さらに必要に応じて、
(C)担体
を含有することがより好ましい。
また前記オレフィン重合用触媒は、さらに必要に応じて、
(D)有機化合物成分
を含有することもできる。
【0036】
以下、遷移金属化合物(A)、化合物(B)、担体(C)、有機化合物成分(D)の各成分の好ましい態様について具体的に説明する。
【0037】
〈遷移金属化合物(A)〉
本発明で用いられる遷移金属化合物(A)は、一般式[I]で表される遷移金属化合物(以下、遷移金属化合物[I]ともいう)およびその鏡像異性体から選ばれる少なくとも1種である。本明細書において鏡像異性体については特に言及していないが、遷移金属化合物(A)は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、遷移金属化合物[I]の全ての鏡像異性体、例えば一般式[I']で表される遷移金属化合物を包含する。
【化1】
【0038】
式[I]中、R1、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R2は炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R4は水素原子であり、R4を除くR1からR16までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0039】
式[I]中、Mは第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1~4の整数であり、jが2以上の整数であるとき、Qは同一または異なる組合せで選んでもよい。
【0040】
なお、式[I]および[I']の表記において、MQj部分が紙面手前に、架橋部が紙面奥側に存在するものとする。すなわち、遷移金属化合物(A)では、シクロペンタジエン環のα位(架橋部位が置換した炭素原子を基準とする)に、中心金属側に向いた水素原子(R4)が存在する。
【0041】
遷移金属化合物[I]は、R2が水素原子ではなく、かつR4が水素原子であるため、従来公知のメタロセン化合物では困難であった、経済性の高い重合条件下においても、高い立体規則性や高い融点と、高い分子量とを有するオレフィン重合体を製造することが可能である。
【0042】
遷移金属化合物[I]が優れた性能を示す理由について、ポリマーの分子量に与える影響を例に挙げ、以下に推定される重合反応機構を用いて説明する。
【0043】
重合反応によって生成するポリマーの分子量が大きいということは、モノマーが触媒の中心金属/ポリマー鎖間に挿入される反応である生長反応の速度が、ポリマー鎖の生長が停止する反応である連鎖移動反応の速度に対して、著しく大きいということである。メタロセン触媒によるオレフィン重合反応では、主な連鎖移動反応としては、水素原子が触媒の中心金属Mに移動するβ-水素移動と、水素原子がモノマーへ移動するβ-水素移動との2種類が知られており、主に後者のβ-水素移動が支配的であるとされている(Chem. Rev. (2000), 100, 1253他参照)。
【0044】
それぞれの遷移状態の模式図を式(i)~(iii)に示す。なお、触媒の配位子は省略してあり、式(i)~(iii)中のM'は触媒の活性中心金属を表し、Pはポリマー鎖を表す。
【0045】
【化2】
【0046】
モノマーへのβ-水素移動における遷移状態は、M'を中心とした6員環構造である(式(ii))。モノマーの挿入反応は、α位の水素がM'に配位するため5員環構造をとる(式(i))。触媒の配位子によってM'近傍の空間を狭めると、より大きな空間を必要とする6員環構造の遷移状態は5員環構造の遷移状態よりも不安定化され、すなわちモノマーへのβ-水素移動の反応速度が小さくなり、相対的にモノマーの挿入反応の反応速度が大きくなる。その結果、生成するポリマーの分子量が大きくなることが知られている(Macromolecules (1996), 29, 2729参照)。
【0047】
一方、中心金属Mへのβ-水素移動における遷移状態は,モノマーの挿入反応の遷移状態よりも、空間がさらに小さい4員環構造をとる(式(iii))。そのため、配位子によってM'近傍の空間が小さくなりすぎると中心金属Mへのβ-水素移動の反応速度が相対的に高まり、生成するポリマーの分子量は小さくなることが予想される。
【0048】
以上の反応機構を、遷移金属化合物[I]に当てはめる。当該遷移金属化合物[I]は、シクロペンタジエン環とフルオレン環とを結ぶ架橋部分に5員環構造を有する。ここで、R2が水素原子ではない骨格に対し、R4に、水素原子よりも大きい、すなわち水素原子以外の置換基を導入すると、中心金属M周辺の空間が小さくなる。その結果、6員環構造の遷移状態を経るモノマーへのβ-水素移動を抑制することができるが、同時に5員環構造の遷移状態を経るモノマーの挿入反応の反応速度を低下させてしまうと考えられる。このため、4員環構造の遷移状態を経る中心金属Mへのβ-水素移動が促進され、分子量が充分に大きくならない。
【0049】
一方、R2が水素原子ではない骨格に対し、R4を水素原子にすると、モノマーの挿入反応を阻害することなく、モノマーへのβ-水素移動のみを抑制することができるため、より高分子量のポリマーを生成することができると考えられる。
【0050】
上記の理由により、シクロペンタジエン環とフルオレン環とを結ぶ架橋部分に5員環構造を有し、R2が水素原子ではなく、かつR4が水素原子の場合のみ、優れた性能を示す触媒となるものと考えられる。
【0051】
〈R 1 からR 16
1からR16(ただし、R4を除く。)における炭化水素基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10である。
【0052】
直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基等の直鎖状アルキル基;アリル基等の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0053】
分岐状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0054】
環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基等の多環式基が挙げられる。
【0055】
環状不飽和炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等のアリール基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;5-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エニル基等の多環の不飽和脂環式基が挙げられる。
【0056】
飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基としては、例えば、ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基が有する1または2以上の水素原子をアリール基に置換してなる基が挙げられる。
【0057】
1からR16(ただし、R4を除く。)におけるヘテロ原子含有炭化水素基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フリル基などの酸素原子含有炭化水素基;N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-フェニルアミノ基等のアミノ基、ピリル基などの窒素原子含有炭化水素基;チエニル基などの硫黄原子含有炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子含有炭化水素基の炭素数は、通常1~20、好ましくは2~18、より好ましくは2~15である。ただし、ヘテロ原子含有炭化水素基からはケイ素含有基を除く。
【0058】
1からR16(ただし、R4を除く。)におけるケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の式-SiR3(式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1~15のアルキル基またはフェニル基である。)で表される基が挙げられる。
【0059】
4を除くR1からR16までの置換基のうち、隣接した2つの置換基(例:R1とR2、R2とR3、R5とR7、R6とR8、R7とR8、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R13とR14、R14とR15、R15とR16)が互いに結合して環を形成していてもよく、R6およびR7が互いに結合して環を形成していてもよく、R1およびR8が互いに結合して環を形成していてもよく、R3およびR5が互いに結合して環を形成していてもよい。前記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。
【0060】
本明細書において、2つの置換基が互いに結合して形成された環(付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環、ヘテロ環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環;ベンゼン環;水素化ベンゼン環;シクロペンテン環;フラン環、チオフェン環等のヘテロ環およびこれに対応する水素化ヘテロ環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環;ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
【0061】
1およびR3は、立体規則性の観点から、水素原子であることが好ましい。
5、R6およびR7から選ばれる少なくとも1つは、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であることが好ましく、R5が炭化水素基であることがより好ましく、R5が直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基等の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であることがさらに好ましく、R5が炭素数2以上のアルキル基であることがとりわけ好ましい。また、合成上の観点からは、R6およびR7は水素原子であることも好ましい。また、R5およびR7が互いに結合して環を形成していることがより好ましく、当該環がシクロヘキサン環等の6員環であることが特に好ましい。
【0062】
8は、炭化水素基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
2は、立体規則性の観点から、炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~20の炭化水素基であることがより好ましく、アリール基ではないことがさらに好ましく、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基または環状飽和炭化水素基であることがとりわけ好ましく、遊離原子価を有する炭素(シクロペンタジエニル環に結合する炭素)が3級炭素である置換基であることが特に好ましい。
【0063】
2としては、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、tert-アミル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基が例示でき、より好ましくはtert-ブチル基、tert-ペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基等の遊離原子価を有する炭素が3級炭素である置換基であり、特に好ましくはtert-ブチル基、1-アダマンチル基である。
【0064】
一般式[I]において、フルオレン環部分は公知のフルオレン誘導体から得られる構造であれば特に制限されないが、R9、R12、R13およびR16は、立体規則性、分子量の観点から、好ましくは水素原子である。
【0065】
10、R11、R14およびR15は、好ましくは水素原子、炭化水素基、酸素原子含有炭化水素基または窒素原子含有炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~20の炭化水素基である。
【0066】
10とR11が互いに結合して環を形成し、かつR14とR15が互いに結合して環を形成していてもよい。このような置換フルオレニル基としては、例えば、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基、1,1,3,3,6,6,8,8-オクタメチル-2,3,6,7,8,10-ヘキサヒドロ-1H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基、1',1',3',6',8',8'-ヘキサメチル-1'H,8'H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基が挙げられ、特に好ましくは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基である。
【0067】
〈M、Q、j〉
Mは、第4族遷移金属であり、好ましくはTi、ZrまたはHfであり、より好ましくはZrまたはHfであり、特に好ましくはZrである。
【0068】
Qでのハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
Qにおける炭化水素基としては、R1からR16(ただし、R4を除く。)における炭化水素基と同様の基が挙げられ、好ましくは直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基等のアルキル基である。
【0069】
Qにおけるアニオン配位子としては、例えば、メトキシ、tert-ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ等のアリールオキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基;ジメチルアミド、ジイソプロピルアミド、メチルアニリド、ジフェニルアミド等のアミド基が挙げられる。
【0070】
Qにおける孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテルが挙げられる。
【0071】
Qは、少なくとも1つがハロゲン原子またはアルキル基であることが好ましい。
jは、好ましくは2である。
【0072】
以上、遷移金属化合物[I]の構成、すなわちR1~R16、M、Qおよびjについて、好ましい態様を説明した。本発明では、それぞれの好適態様の任意の組合せも好ましい態様である。遷移金属化合物[I]の具体例としては、特開2015-183141号公報に記載の化合物を例示することができる。
【0073】
遷移金属化合物[I]の命名に用いる位置番号については、 [1-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレン-12'-イル)(5-tert-ブチル-1-メチル-3-iso-プロピル-1,2,3,4-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド、および[8-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレン-12'-イル)(2-tert-ブチル-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)]ジルコニウムジクロライドと、その鏡像異性体の一つについてを例にとると、それぞれ以下の式[I-1]、式[I-2]中に示すとおりである。
【0074】
【化3】
【0075】
〔遷移金属化合物(A)の製造方法〕
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒を構成する遷移金属化合物(A)は、公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。以下では、本発明で好適に用いられる遷移金属化合物[I]の製造方法の一例を説明するが、その鏡像異性体の製造方法についても同様である。
【0076】
遷移金属化合物[I]の製造方法は、例えば、一般式(1a)で表されるペンタレン化合物を調製する工程(1)を有する。ペンタレン化合物(1a)においては、目的とする遷移金属化合物[I]の立体配置に応じた異性体を用いることができる。
【0077】
【化4】
【0078】
式(1a)中、R1、R3、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R2は炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R4は水素原子であり、R4を除くR1からR8までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。これらの好適態様は、一般式[I]中で説明したものと同様である。
【0079】
一実施態様は、工程(1)に続いて、ペンタレン化合物(1a)とフルオレン誘導体(2a)とを反応させて、遷移金属化合物[I]の前駆体化合物(3a)を得る工程(2)、および前駆体化合物(3a)から遷移金属化合物[I]を得る工程(3)を有する。
【0080】
〈工程(1)〉
ペンタレン化合物(1a)は、例えば、反応[A]に示すようにシクロペンタジエン誘導体(1a-1)とα,β-不飽和カルボニル化合物(1a-2)とを反応させる方法;反応[B]に示すようにシクロペンタジエン誘導体(1a-1)とカルボニル化合物(1a-3)とアルデヒド化合物(1a-4)とを反応させる方法によって、合成することができる。
【0081】
【化5】
【0082】
反応[A]中、R1~R6、R8はそれぞれ一般式[I]中の同一記号と同義であり、R7は水素原子である。反応[B]中、R1~R8はそれぞれ一般式[I]中の同一記号と同義である。これらの好適態様は、一般式[I]中で説明したものと同様である。上記原料化合物においては、目的とするペンタレン化合物(1a)の立体配置に応じた異性体を用いることができる。
【0083】
また、シクロペンタジエン誘導体(1a-1)および後述するフルオレン誘導体(2a)、前駆体化合物(3a)は、シクロペンタジエニル環における二重結合の位置のみが異なる異性体の存在を考えることができ、各反応ではそれらのうちの1種のみを例示してある。シクロペンタジエン誘導体(1a-1)および後述するフルオレン誘導体(2a)、前駆体化合物(3a)は、シクロペンタジエニル環における二重結合の位置のみが異なる他の異性体であってもよく、またはそれらの混合物であってもよい。
【0084】
〈反応[A]〉
反応[A]に基づくペンタレン化合物(1a)は、シクロペンタジエン誘導体(1a-1)とα,β-不飽和カルボニル化合物(1a-2)とから公知の条件によって製造することができる(例えば、J. Org. Chem. 1989, 54, 4981-4982参照)。
【0085】
また、反応[A]に沿ってペンタレン化合物(1a)を製造する方法としては、シクロペンタジエン誘導体(1a-1)を塩基によって処理した後にα,β-不飽和カルボニル化合物(1a-2)に対して1,4-付加させることでケトンまたはアルデヒドを合成し、その後脱水縮合させることによって製造する方法(方法A')もある。
【0086】
方法A'で用いる塩基としては、公知のものを用いることができ、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化バリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、水素原子化カリウム、水素原子化ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩;ジエチルアミン、アンモニア、ピロリジン、ピペリジン、アニリン、メチルアニリン、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムアミド等の含窒素塩基;ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等の有機アルカリ金属化合物;メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド等のグリニヤール試薬が挙げられる。
【0087】
方法A'においてさらに効率よく反応を行うために触媒を加えてもよい。触媒は公知の触媒を用いることができ、例えば、18-クラウン-6-エーテル、15-クラウン-5-エーテル等のクラウンエーテル類;クリプタント類;テトラブチルアンモニウムフルオライド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、トリカプリルメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩;鎖状ポリエーテルに代表される相間移動触媒が挙げられる。また、マグネシウム、カルシウム、リチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、鉄、ジルコニウム、ハフニウム、ホウ素、スズ、希土類のハロゲン化物や、トリフラート等のルイス酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトリルスルホン酸等の酸類を用いてもよい。方法A'における1,4-付加反応の触媒として、塩化銅、ヨウ化銅等のハロゲン化銅を用いてもよい。
【0088】
〈反応[B]〉
反応[B]の反応では、塩基や触媒を加えることでより効率よく反応を行うことができる。反応[B]で用いることのできる塩基や触媒は、反応[A]にて上述のものを挙げることができる。
【0089】
反応[B]では、シクロペンタジエン誘導体(1a-1)に対し、カルボニル化合物(1a-3)やアルデヒド化合物(1a-4)を同時に反応させてもよいし、あるいはカルボニル化合物(1a-3)またはアルデヒド化合物(1a-4)の一方を反応させ、その後に他方を反応させることもできる。その際に、カルボニル化合物(1a-3)またはアルデヒド化合物(1a-4)に対し、リチウムプロピルアミド等を用いてエノラート型にした後に反応させてもよく、さらにはカルボニル化合物(1a-3)またはアルデヒド化合物(1a-4)に対応するエノラートを公知の方法で合成して反応させてもよい。また、カルボニル化合物(1a-3)およびアルデヒド化合物(1a-4)をそれぞれ別の条件で反応させてもよい。
【0090】
その他にペンタレン化合物(1a)を合成する方法としては、例えば、Angew. Chem. internal. Edit. 1970, 9, 892-893、J. Am. Chem. SOC. 1985, 107, 5308-5309、J. Org. Chem. 1990, 55, 4504-4506等で示される方法でもよい。
【0091】
反応[A]および[B]で用いることのできる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル;トリエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、アニリン、ピリジン、アセトニトリル等のアミン、ニトリルまたは含窒素化合物;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、メトキシエタノール等のアルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等のアミド;ジメチルスルホキシド;二硫化炭素等の含硫黄化合物;アセトンやメチルエチルケトン等のケトン、特に基質として用いるアルデヒド、ケトンそのもの;などの有機溶媒;水、イオン性液体などの非有機溶媒;またはこれらのうち2種以上を混合して得られる溶媒が挙げられる。また、反応[A]および[B]の反応温度は、好ましくは-100~150℃、より好ましくは-40~120℃である。
【0092】
〈工程(2)〉
一実施態様は、工程(1)に続いて、ペンタレン化合物(1a)とフルオレン誘導体(2a)とを反応させて、遷移金属化合物[I]の前駆体化合物(3a)を得る工程(2)を有する。
【0093】
【化6】
【0094】
上記反応中、R1~R16はそれぞれ一般式[I]中の同一記号と同義であり、Lはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。
【0095】
例えば、R4(水素原子)およびR5の大きさの相違等によって、シクロペンタジエン環のα位に、錯体を形成した場合には中心金属側に向いた水素原子(R4)を有する前駆体化合物(3a)を得ることができる。
フルオレン誘導体(2a)は従来公知の方法によって得ることができる。
【0096】
上記反応で用いることのできる有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;またはこれらのうち2種以上を混合して得られる溶媒が挙げられる。
【0097】
ペンタレン化合物(1a)とフルオレン誘導体(2a)との反応は、好ましくはモル量比10:1~1:10、より好ましくは2:1~1:2、特に好ましくは1.2:1~1:1.2で行う。反応温度は、好ましくは-100~150℃、より好ましくは-40~120℃である。
【0098】
〈工程(3)〉
前駆体化合物(3a)から遷移金属化合物[I]を製造する例を以下に示す。これは、本発明の範囲を制限するものではなく、遷移金属化合物[I]は、公知のいかなる方法で製造されてもよい。
【0099】
〈ジアルカリ金属塩の合成〉
前駆体化合物(3a)と、アルカリ金属、水素原子化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、有機アルカリ金属および有機アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分とを、有機溶媒中で接触させることで、ジアルカリ金属塩を得る。
【0100】
上記反応で用いることのできるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ;水素原子化アルカリ金属としては、水素原子化ナトリウム、水素原子化カリウムなどが挙げられ;アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-tert-ブトキシドなどが挙げられ;有機アルカリ金属としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどが挙げられ;有機アルカリ土類金属としては、メチルマグネシウムハライド、ブチルマグネシウムハライド、フェニルマグネシウムハライドなどが挙げられ;またはこれらのうち2種以上を併用してもよい。
【0101】
上記反応で用いられる有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;またはこれらのうち2種以上を混合して得られる溶媒が挙げられる。
【0102】
前駆体化合物(3a)と上記金属成分との反応は、好ましくはモル量比(前駆体化合物(3a):上記金属成分)=1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:4、特に好ましくは1:1.8~1:2.5で行う。反応温度は、好ましくは-100~200℃、より好ましくは-80~120℃である。
【0103】
上記反応を促進させるため、テトラメチルエチレンジアミン等に代表されるルイス塩基や、国際公開第2009/072505号パンフレットに記載されているようにα-メチルスチレン等を使用することもできる。
【0104】
〈遷移金属化合物の合成〉
上記反応で得られたジアルカリ金属塩と、一般式(4a)で表される化合物とを、有機溶媒中で反応させることで、遷移金属化合物[I]を合成する。
【0105】
MZk …(4a)
式(4a)中、Mは第4族遷移金属であり、複数あるZはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、kは3~6の整数である。MおよびZとして列挙される原子または基等は、一般式[I]の欄にて説明したMおよびQとそれぞれ同様である。
【0106】
化合物(4a)としては、例えば、三価または四価のチタニウムフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物;四価のジルコニウムフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物;四価のハフニウムフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物;またはこれらとテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンまたは1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類
との錯体が挙げられる。
【0107】
上記反応で用いられる有機溶媒としては、〈ジアルカリ金属塩の合成〉の欄に記載した有機溶媒が挙げられる。ジアルカリ金属塩と化合物(4a)との反応は、好ましくはモル量比10:1~1:10、より好ましくは2:1~1:2、特に好ましくは1.2:1~1:1.2で行う。反応温度は、好ましくは-80~200℃、より好ましくは-75~120℃である。
【0108】
〈その他の方法〉
その他の方法として、前駆体化合物(3a)を、有機金属試薬、例えばテトラベンジルチタン、テトラベンジルジルコニウム、テトラベンジルハフニウム、テトラキス(トリメチルシリルメチレン)チタン、テトラキス(トリメチルシリルメチレン)ジルコニウム、テトラキス(トリメチルシリルメチレン)ハフニウム、ジベンジルジクロロチタン、ジベンジルジクロロジルコニウム、ジベンジルジクロロハフニウムや、チタン、ジルコニウム、ハフニウムのアミド塩と直接反応させてもよい。
【0109】
上記反応で得られた遷移金属化合物[I]に対しては、抽出、再結晶、昇華等の方法により、単離・精製を行うことができる。このような方法で得られる遷移金属化合物[I]は、プロトン核磁気共鳴スペクトル、13C-核磁気共鳴スペクトル、質量分析、および元素分析等の分析手法を用いることによって同定される。
【0110】
〈化合物(B)〉
オレフィン重合用触媒に含まれていてもよい化合物(B)は、(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0111】
《有機金属化合物(B-1)》
有機金属化合物(B-1)としては、例えば、一般式(B-1a)で表される有機アルミニウム化合物、一般式(B-1b)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、一般式(B-1c)で表される第2族または第12族金属のジアルキル化合物等の、第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が挙げられる。
【0112】
(B-1a):RamAl(ORb)npq
式(B-1a)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であり、かつm+n+p+q=3である。有機アルミニウム化合物(B-1a)としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、トリシクロアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0113】
(B-1b):M2AlRa4
式(B-1b)中、M2はLi、NaまたはKであり、Raは炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基である。錯アルキル化物(B-1b)としては、例えば、LiAl(C254、LiAl(C7154が挙げられる。
【0114】
(B-1c):RaRbM3
式(B-1c)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基であり、M3はMg、ZnまたはCdである。化合物(B-1c)としては、例えば、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジ-n-ブチルマグネシウム、エチル-n-ブチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ-n-ブチル亜鉛、ジフェニル亜鉛が挙げられる。
【0115】
有機金属化合物(B-1)のなかでは、有機アルミニウム化合物(B-1a)が好ましい。
有機金属化合物(B-1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
《有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)》
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、例えば、従来公知のアルミノキサンであってもよく、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼンに対して不溶性または難溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。従来公知のアルミノキサンは、例えば、下記(1)~(4)の方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
【0117】
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物等の炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0118】
(2)ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
【0119】
(3)デカン、ベンゼン、トルエン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド等の有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0120】
(4)トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウムと、3級アルコール、ケトン、およびカルボン酸等の炭素-酸素結合を持つ有機化合物とを反応させて生成する化合物を、熱分解反応等の非加水分解的転化をする方法。
【0121】
なお、上記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また、回収された上記アルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0122】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、有機アルミニウム化合物(B-1a)として例示したものと同一の有機アルミニウム化合物が挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0123】
その他、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、例えば、修飾メチルアルミノキサンが挙げられる。修飾メチルアルミノキサンとは、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムとを用いて調製されるアルミノキサンである。このような化合物は、一般にMMAOと呼ばれている。MMAOは、US4960878号公報およびUS5041584号公報で挙げられている方法で調製することができる。また、東ソー・ファインケム社等からもトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとを用いて調製された、Rがイソブチル基であるアルミノキサンが、MMAOやTMAOといった名称で商業生産されている。
【0124】
このようなMMAOは、各種溶媒への溶解性および保存安定性を改良したアルミノキサンであり、具体的には上記のようなベンゼンに対して不溶性または難溶性のものとは違い、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解するという特徴を持つ。
【0125】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、例えば、ホウ素原子を含む有機アルミニウムオキシ化合物や、国際公開第2005/066191号パンフレット、国際公開第2007/131010号パンフレットに例示されているようなハロゲンを含むアルミノキサン、国際公開第2003/082879号パンフレットに例示されているようなイオン性アルミノキサンを挙げることもできる。
化合物(B-2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
《遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)》
遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下「イオン性化合物(B-3)」ともいう。)としては、例えば、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US5321106号公報等に記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
イオン性化合物(B-3)は、一般式(B-3a)で表される化合物が好ましい。
【0127】
【化7】
【0128】
式(B-3a)中、Re+としては、例えば、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンが挙げられる。Rf~Riはそれぞれ独立に有機基、好ましくはアリール基である。
【0129】
カルベニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオン等の三置換カルベニウムカチオンが挙げられる。
【0130】
アンモニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0131】
ホスホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0132】
e+としては、例えば、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0133】
カルベニウム塩としては、例えば、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0134】
アンモニウム塩としては、例えば、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0135】
トリアルキル置換アンモニウム塩としては、例えば、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレートが挙げられる。
【0136】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩としては、例えば、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0137】
ジアルキルアンモニウム塩としては、例えば、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0138】
イオン性化合物(B-3)としては、その他、本出願人によって開示(例:特開2004-51676号公報)されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
イオン性化合物(B-3)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
〈担体(C)〉
担体(C)としては、例えば、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体が挙げられる。遷移金属化合物(A)は、担体(C)に担持された形態で用いることが好ましい。
【0140】
《無機化合物》
担体(C)における無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0141】
多孔質酸化物としては、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の酸化物、またはこれらを含む複合物もしくは混合物を使用することができる。例えば、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOを使用することができる。これらの中でも、SiO2および/またはAl23を主成分として含有する多孔質酸化物が好ましい。
【0142】
多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なる。本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が好ましくは1~300μm、より好ましくは3~100μmであり;比表面積が好ましくは50~1300m2/g、より好ましくは200~1200m2/gであり;細孔容積が好ましくは0.3~3.0cm3/g、より好ましくは0.5~2.0cm3/gである。このような担体は、必要に応じて100~1000℃、好ましくは150~700℃で乾燥および/または焼成して使用される。粒子形状については特に制限はないが、特に好ましくは球状である。
【0143】
無機塩化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0144】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有されるイオンが交換可能である。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物としては、粘土、粘土鉱物、または六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物を例示することができる。
【0145】
粘土、粘土鉱物としては、例えば、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、ペクトライト、テニオライトが挙げられる。
【0146】
イオン交換性層状化合物としては、例えば、α-Zr(HAsO42・H2O、α-Zr(HPO42、α-Zr(KPO42・3H2O、α-Ti(HPO42、α-Ti(HAsO42・H2O、α-Sn(HPO42・H2O、γ-Zr(HPO42、γ-Ti(HPO42、γ-Ti(NH4PO42・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩が挙げられる。
【0147】
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、何れも使用できる。化学処理としては、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
【0148】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。
【0149】
インターカレーションするゲスト化合物としては、例えば、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+等の金属水酸化物イオンが挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)などを加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。
【0150】
ピラーとしては、例えば、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物が挙げられる。
【0151】
担体(C)の中でも、SiO2および/またはAl23を主成分として含有する多孔質酸化物が好ましい。また、粘土または粘土鉱物も好ましく、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成ウンモである。
【0152】
《有機化合物》
担体(C)における有機化合物としては、例えば、粒径が5~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体が挙げられる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体、ビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0153】
〈有機化合物成分(D)〉
本発明において、有機化合物成分(D)は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。有機化合物(D)としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、アミド、ポリエーテルおよびスルホン酸塩等が挙げられる。
【0154】
〈各成分の使用法および添加順序〉
オレフィン重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。以下では、遷移金属化合物(A)、化合物(B)、担体(C)および有機化合物成分(D)を、それぞれ「成分(A)~(D)」ともいう。
(1)成分(A)を単独で重合器に添加する方法。
(2)成分(A)および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)成分(A)を成分(C)に担持した触媒成分と、
成分(B)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)成分(B)を成分(C)に担持した触媒成分と、
成分(A)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)成分(A)と成分(B)とを成分(C)に担持した触媒成分を
重合器に添加する方法。
【0155】
上記(2)~(5)の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2種は予め接触されていてもよい。成分(B)が担持されている上記(4)、(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない成分(B)を、任意の順序で添加してもよい。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。また、成分(C)に成分(A)が担持された固体触媒成分、成分(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
【0156】
当該製造方法において、「重合」とは、単独重合および共重合を総称する意味で用いる。また「オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合する」とは、上記(1)~(5)の各方法のように、任意の方法でオレフィン重合用触媒の各成分を重合器に添加してオレフィンを重合する態様を包含する。
【0157】
当該製造方法では、重合は、溶液重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。不活性炭化水素媒体は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、重合に供給されうる液化オレフィン自身を溶媒として用いる、いわゆるバルク重合法を用いることもできる。
【0158】
オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うに際して、オレフィン重合用触媒を構成しうる各成分の使用量は以下のとおりである。また、オレフィン重合用触媒において、各成分の含有量を以下のとおりに調節することができる。
【0159】
成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-10~10-2モル、好ましくは10-8~10-3モルとなるような量で用いられる。成分(B-1)は、成分(B-1)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が通常1~50,000、好ましくは10~20,000、特に好ましくは50~10,000となるような量で用いることができる。成分(B-2)は、成分(B-2)中のアルミニウム原子と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔Al/M〕が通常10~5,000、好ましくは20~2,000となるような量で用いることができる。成分(B-3)は、成分(B-3)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が通常1~1000、好ましくは1~200となるような量で用いることができる。
【0160】
成分(C)を用いる場合は、成分(A)と成分(C)との重量比〔(A)/(C)〕が好ましくは0.0001~1、より好ましくは0.0005~0.5、さらに好ましくは0.001~0.1となるような量で用いることができる。
【0161】
成分(D)を用いる場合は、成分(B)が成分(B-1)の場合には、モル比〔(D)/(B-1)〕が通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で、成分(B)が成分(B-2)の場合には、モル比〔(D)/(B-2)〕が通常0.005~2、好ましくは0.01~1となるような量で、成分(B)が成分(B-3)の場合は、モル比〔(D)/(B-3)〕が通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いることができる。
【0162】
当該製造方法において、オレフィンの重合温度は、通常-50~200℃、好ましくは0~180℃であり;重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる二段以上に分けて行うこともできる。得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素等を存在させるか、重合温度を変化させるか、または成分(B)の使用量により調節することができる。
【0163】
当該製造方法は、工業的製法において有利な高温条件下であっても、高い触媒活性を維持しつつ、高立体規則性・高融点および高分子量を有するオレフィン重合体を製造することが可能である。このような高温条件下では、重合温度は、通常40℃以上、好ましくは40~200℃、より好ましくは45~150℃、特に好ましくは50~150℃(換言すれば、特に好ましくは工業化可能な温度である。)である。
【0164】
特に水素は、触媒の重合活性を向上させる効果や、重合体の分子量を増加または低下させる効果が得られることがあり、好ましい添加物であるといえる。系内に水素を添加する場合、その量はオレフィン1モルあたり0.00001~100NL程度が適当である。系内の水素濃度は、水素の供給量を調整する以外にも、水素を生成または消費する反応を系内で行う方法や、膜を利用して水素を分離する方法、水素を含む一部のガスを系外に放出することによっても調整することができる。
【0165】
当該製造方法で得られたオレフィン重合体に対しては、上記方法で合成した後に、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行ってもよい。
【0166】
<成形体>
本発明の成形体は、上述した本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む成形体である。
このような本発明の成形体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)のみから成形されていてもよく、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む樹脂組成物から成形されていてもよい。
【0167】
本発明の成形体が、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む樹脂組成物から成形されたものである場合、樹脂組成物中には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種樹脂用添加剤および4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)以外の樹脂成分から選ばれる1種以上を含有することができる。
【0168】
前記樹脂組成物に含まれてもよい、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)以外の樹脂成分としては、たとえば、以下の熱可塑性樹脂が挙げられる。
熱可塑性ポリオレフィン系樹脂、たとえば、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン、およびこれらのオレフィン系樹脂を変性した変性ポリオレフィン樹脂;
熱可塑性ポリアミド系樹脂、たとえば、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612);
熱可塑性ポリエステル系樹脂;たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー;
熱可塑性ビニル芳香族系樹脂、たとえば、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、スチレン系エラストマー(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソブチレン・スチレンブロックポリマー、前述の水素添加物);
熱可塑性ポリウレタン;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;フッ素系樹脂ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイドポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ロジン系樹脂;テルペン系樹脂および石油樹脂;
共重合体ゴム、たとえば、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体、プロピレン・α-オレフィン・ジエン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン・ジエン共重合体、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム等が例示される。
【0169】
ポリプロピレンとしては、アイソタクティックポリプロピレンとシンジオタクティックポリプロピレンが挙げられる。アイソタクティックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンであっても、プロピレン・炭素数2~20のα-オレフィン(ただしプロピレンを除く)ランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよい。
ポリ4-メチル-1-ペンテンおよび4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)とは異なる重合体であり、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体、または4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィンランダム共重合体である。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィンランダム共重合体の場合、4-メチル-1-ペンテンと共重合するα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数2~20 、好ましくは6~20のα-オレフィンが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上組み合せて用いることができる。メルトフローレート(MFR;ASTMD1238 、260℃、5.0kg荷重)は、0.1~200g/10分であることが好ましく、より好ましくは1~150g/10分である。ポリ4-メチル-1-ペンテンは、市販品を使用することもでき、例えば三井化学(株)製のTPX(商標名)などが挙げられる。その他のメーカーのポリ4-メチル-1-ペンテンでも、上記要件を満たせば好ましく使用することができる。
【0170】
ポリエチレンとしては、従来公知の手法で製造されている、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンを使用することが出来る。
ポリブテンとしては、1-ブテンのホモポリマー、あるいは1-ブテンと、1-ブテンを除くオレフィンとの共重合体を挙げることができる。ポリブテンと共重合するオレフィンとしては、4-メチル-1-ペンテンと共重合するα-オレフィンとして挙げた前記α-オレフィンが挙げられ、これらのオレフィンは、単独で、または2種以上混合して用いられる。共重合体として、例えば、1-ブテン・エチレンランダム共重合体、1-ブテン・プロピレンランダム共重合体、1-ブテン・メチルペンテン共重合体、1-ブテン・メチルブテン共重合体、1-ブテン・プロピレン・エチレン共重合体などが挙げられる。このような共重合体において、耐熱性の点から、1-ブテン由来の構成単位の含有量が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、85%以上であることが特に好ましい。
【0171】
変性ポリオレフィン樹脂は、上述したポリオレフィン樹脂にエチレン性不飽和結合含有モノマーを、有機過酸化物を用いてグラフト変性することにより得ることができる。変性ポリオレフィンが有する官能基の種類としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基、エステル基、アルコキシシラン基、酸ハライド基およびニトリル基等が挙げられる。
ロジン系樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸などで変性した変性ロジン、ロジン誘導体が挙げられる。また、このロジン誘導体としては、前記の天然ロジン、重合ロジンまたは変性ロジンのエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物などが挙げられる。さらに、これらの水素添加物も挙げることができる。
【0172】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン、テルペンフェノール、テルペンアルコール、テルペンアルデヒドなどからなる樹脂が挙げられ、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテンなどにスチレンなどの芳香族モノマーを重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂なども挙げられる。また、これらの水素添加物も挙げることができる。
【0173】
石油樹脂としては、たとえば、タールナフサのC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂およびそれらの共重合石油樹脂が挙げられる。すなわち、C5系石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分を重合した樹脂)、C9系石油樹脂(ナフサ分解油のC9留分を重合した樹脂)、C5C9共重合石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分とC9留分とを共重合した樹脂)が挙げられ、タールナフサ留分のスチレン類、インデン類、クマロン、その他ジシクロペンタジエンなどを含有しているクマロンインデン系樹脂、p-ターシャリブチルフェノールとアセチレンの縮合物に代表されるアルキルフェノール類樹脂、ο-キシレン、p-キシレンまたはm-キシレンをホルマリンと反応させてなるキシレン系樹脂なども挙げられる。
【0174】
また、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる1つ以上の樹脂は、耐候性および耐変色性に優れるために水素添加誘導体が好ましい。前記樹脂の環球法による軟化点は、40~180℃の範囲にあることが好ましい。また、前記樹脂のGPCにより測定される数平均分子量(Mn)分子量は100~10,000程度の範囲にあることが好ましい。ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂は市販品を使用することもできる。
【0175】
これらの熱可塑性樹脂の中で、好ましいのは、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体、アイオノマー、フッ素系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂であり、より好ましいのは、耐熱性向上、低温耐性向上、柔軟性の点で、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、酢酸ビニル共重合体、スチレン系エラストマー、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂である。
【0176】
また熱可塑性樹脂として、好ましくはポリ3-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテンなどが挙げられ、これらは本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の核剤として働くことにより、得られるフィルム等の剛性の向上に寄与する。
熱可塑性樹脂としては、上記熱可塑性樹脂の中から1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
これらの熱可塑性樹脂等の樹脂あるいは重合体成分の添加量は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む前記樹脂組成物の総質量に対して、0.1~30質量%であることが好ましい。
【0177】
樹脂用添加剤としては、例えば、核剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独でも、適宜2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0178】
核剤としては、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の成形性をさらに改善させる、すなわち結晶化温度を高め、結晶化速度を速めるために、公知の核剤を使用することが可能である。具体的には、ジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム(商品名「アデカスタブNA-11」、株式会社ADEKA製)、ピメリン酸やその塩、2,6-ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等が挙げられる。核剤の配合量は、特に限定されないが、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)100質量部に対して、好ましくは0.1~1質量部である。核剤は、重合中、重合後、あるいは成形加工時などの時点で適宜添加することが可能である。
【0179】
アンチブロッキング剤としては、公知のアンチブロッキング剤が使用可能である。具体的には、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状もしくは液状のシリコン樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、微粉末架橋樹脂、例えば架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末等をあげることができる。これらのうちでは、微粉末シリカおよび架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末が好ましい。
【0180】
顔料としては、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としてはアゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等が挙げられる。これら顔料および染料の添加量は、特に限定されないが、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む前記樹脂組成物の総質量に対して、合計で、通常5質量%以下、好ましくは0.1~3質量%である。
【0181】
充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維、カーボンブラック、シリカ、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等)、金属の炭酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム)および各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。これらの充填剤は1種単独または2種以上の併用のいずれでもよい。
滑剤としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
【0182】
可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジアルボン酸エステル(アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)、石油樹脂等が挙げられる。
【0183】
離型剤としては、高級脂肪酸の低級(C1~4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4~30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸のグリコールエステル、流動パラフィン等が挙げられる。
【0184】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、フェノール系(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等)、多環フェノール系(2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール等)、リン系(テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレンジホスフォネート等)、イオウ系(チオジプロピオン酸ジラウリル等)、アミン系(N,N-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン等)、ラクトン系の酸化防止剤等が挙げられ、これらを数種類組み合わせても使用できる。
【0185】
難燃剤としては、有機系難燃剤(含窒素系、含硫黄系、含珪素系、含リン系等)、無機系難燃剤(三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、赤リン等)が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系等が挙げられる。
【0186】
抗菌剤としては、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素等が挙げられる。
界面活性剤としては非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキル時ヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0187】
帯電防止剤としては、上記の界面活性剤、脂肪酸エステル、高分子型帯電防止剤が挙げられる。脂肪酸エステルとしてはステアリン酸やオレイン酸のエステルなどが挙げられ、高分子型帯電防止剤としてはポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
上記充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤などの各種添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、特に限定されないが、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む前記樹脂組成物の総質量に対して、それぞれ、0.1~30質量%であることが好ましい。
【0188】
本発明にかかる4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む前記樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)と、必要に応じて他の任意成分とを上述の添加割合で混合したのち、溶融混練して得られる。
溶融混練の方法は、特に制限されず、一般的に市販されている押出機などの溶融混練装置を用いて行うことが可能である。
【0189】
例えば、混練機にて混練を行う部分のシリンダ温度は、通常220~320℃、好ましくは250~300℃である。温度が220℃よりも低いと溶融不足により混練が不十分となり、樹脂組成物の物性の向上が見られない。一方、温度が320℃よりも高いと、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の熱分解が起こる場合がある。混練時間は、通常0.1~30分間、特に好ましくは0.5~5分間である。混練時間が0.1分に満たないと十分に溶融混練が行われず、また、混練時間が30分を超えると4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)の熱分解が起こる場合があり好ましくない。
【0190】
本発明の成形体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)、あるいは4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む樹脂組成物を、公知の方法により所望の形状に成形して製造することができ、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、スタンピング成形、真空成形、カレンダー成形、フィラメント成形、発泡成形、パウダースラッシュ成形等の公知の熱成形方法により得られる。また、本発明の成形体は、押出成形、射出成形、溶液流延等の方法で得られた一次成形体を、ブロー成形、延伸等の方法でさらに加工して得られた成形体であってもよい。これらの中では、射出成形体または押出成形体が好ましい。
【0191】
本発明の成形体の用途としては、例えば、包装用容器、包装用フィルム、食品包装資材、食品包装用容器、食品包装用フィルム、食品用フィルム、食品保存容器、各種パッケージ材料、自動車部品(フロントエンド、ファンシェラウド、クーリングファン、エンジンアンダーカバー、エンジンカバー、ラジエターボックス、サイドドア、バックドアインナー、バックドアアウター、外板、ルーフレール、ドアハンドル、ラゲージボックス、ホイールカバー、ハンドル、クーリングモジュール、エアークリーナー、スポイラー、燃料タンク、プラットフォームおよびサイドメンバ、モータコネクタ筐体、バンパー、インストルメントパネル表皮材、コントロールケーブル被覆材、電線被覆材)、家電材料部品、電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材および日用品等を例示できる。
【0192】
本発明では、ガス透過を抑制した成形体を製造しうることから、成形体の一実施態様においては、例えば、最大肉厚が100mm以下であり、最小肉厚が0.001mm以上(1μm以上)である成形体が好適である。
また、上述した本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、単独で成形した場合であっても優れた耐熱性やガス透過の抑制を達成でき、本発明の成形体は、食品包装資材、食品保存容器等として好適である。
さらに本発明の成形体は、少なくとも一つの層が、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む層である、積層体であることも好ましく、後述する積層フィルムであることも好ましい。
【0193】
《フィルム》
本発明の成形体としては、一実施態様においてフィルム(フィルム状またはシート状である成形体)が好ましい。本実施形態のフィルムは、機械物性、電気特性(絶縁破壊電圧等)、離型性といった従来からある4-メチル-1-ペンテン共重合体の特性を有するとともに、耐熱性とガス透過抑制のバランスにも優れる。本実施形態のフィルムは、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含んでなり、例えば、通常は180~320℃の範囲で溶融成形して得ることができる。本実施形態のフィルムの厚さは、例えば1~1000μm、好ましくは2~500μm、より好ましくは10~500μmである。
【0194】
本実施形態のフィルムは、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)、あるいは4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む樹脂組成物から得られる単層フィルムであってもよく、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)あるいはそれを含む樹脂組成物から得られる層を有する積層フィルムであってもよい。
なお、本発明において、フィルムとは平面状の成形物の総称であり、これにはシート、膜(メンブレン)、テープなども含まれる。
本実施形態のフィルムは、その成形方法を特に限定されるものではないが、押出成形により製造されることが好ましい。
【0195】
本発明に係るフィルムは、延伸フィルムであってもよく、例えば、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)あるいはそれを含む樹脂組成物をTダイ押出成形法などによりフィルム状またはシート状に成形して得られた一次成形体を、さらに一軸延伸または二軸延伸して得られた延伸フィルムが挙げられる。延伸倍率は、MD方向およびTD方向でそれぞれ独立に、2~20倍とすることができる。延伸フィルムの具体的な用途としては、例えば、キャパシタ用フィルムが挙げられる。
【0196】
本発明に係るフィルムは、上述した4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む単層フィルムのほか、少なくとも一層が4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む層である、積層フィルムであってもよい。積層フィルムとしては、少なくとも一つの表面層が、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む層であることが好ましい。
【0197】
積層フィルムが、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を含む層以外の基材層を有する場合、該基材層は、樹脂、紙、金属等どのような素材の層であってもよい。基材層をなす樹脂としては例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、プロピレンの単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、ブテンの単独重合体、エチレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂を不飽和カルボン酸やその誘導体によりグラフト変性した樹脂を用いてもよい。あるいはポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド46、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T等のポリアミド樹脂、または、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートなどのポリエステル樹脂、あるいはポリカーボネート樹脂、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリウレタンなどが挙げられる。さらに、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、およびこれらの部分イオン架橋物が挙げられる。基材層としては、上記の樹脂を単独あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0198】
積層フィルムは、各層が直接積層されていてもよく、接着層を介して積層されていてもよい。接着層としては例えば不飽和カルボン酸あるいは不飽和カルボン酸無水物による変性ポリオレフィン樹脂、より具体的には変性ポリ4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂が挙げられる。
【0199】
積層フィルムを得る方法については特に制限は無いが、あらかじめTダイ成形、押出キャスト成形またはインフレーション成形にて得られた表面層フィルム上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により積層する方法や、複数のフィルムを独立して成形した後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法、複数の成分を多層の押出機に供して成形する共押出成形法等が挙げられる。これらのうちでは、生産性の点から、複数の成分を多層の押出機に供して成形する共押出成形が好ましい。前記表面層フィルムは、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)あるいはそれを含む樹脂組成物から得られる層である。
【0200】
《フィルムの製造方法》
本実施形態のフィルムは、その成形方法を特に限定されるものではなく、押出成形、インフレーション成形などの公知の製造方法により製造することができ、好ましくは押出成形を伴う方法により製造することができる。
本発明のフィルムの製造方法は、好ましくは押出成形を伴うものであって、200~320℃のダイス温度、70~120℃のチルロール温度のフィルム成形条件下で、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)を成形する工程を有する。
ここで、4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)は、上述した要件(a)~(f)をすべて満たす前記本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)であり、好ましくは、さらに上述した要件(g)および要件(h)の一つ以上を満たす前記本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体(X)である。
フィルム成形条件は、前記のとおり200~320℃のダイス温度、70~120℃のチルロール温度であることが好ましく、ダイス温度は250~300℃であることがより好ましく、チルロール温度は75~110℃であることがより好ましく、ダイス温度は260~290℃であることがさらに好ましく、チルロール温度は80~110℃であることがさらに好ましい。
【0201】
ダイス温度が上記範囲より高いと、樹脂の劣化に因る目ヤニが発生して外観を損ねたり、フィルムの引張破断強度などの機械物性が低下する場合がある。ダイス温度が上記範囲より低いと樹脂粘度が高まり、成形時のダイス内部での樹脂流れの乱れや、メルトフラクチャーが起こることで、得られるフィルム等の成形体の表面粗度や厚みムラが大きくなる傾向がある。チルロール温度が上記範囲より高いとチルロールからフィルムが剥がれずに巻き付くことで成形が困難となる傾向にあり、チルロール温度が上記範囲より低いと、フィルムにシワが入り厚薄精度が低下する傾向がある。
【0202】
《フィルムの用途》
本実施形態のフィルムの用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、
延伸フィルム:例えば、キャパシタ用フィルム;
半導体工程フィルム:例えば、ダイシングテープ、バックグラインドテープ、ダイボンディングフィルム、偏光板用フィルム;
包装用フィルム:例えば、食品包装用フィルム、ストレッチフィルム、ラップフィルム、通気性フィルム、シュリンクフィルム、イージーピールフィルム;
セパレーター:例えば、バッテリーセパレーター、リチウムイオン電池用セパレーター、燃料電池用電解質膜、粘着・接着材セパレーター;
電子部材用フィルム:例えば、拡散フィルム、反射フィルム、耐放射線フィルム、耐γ線フィルム、多孔フィルム;
離型フィルム:例えば、フレキシブルプリント基板用、ACM基板用、リジットフレキシブル基板用、先端複合材料用、炭素繊維複合材硬化用、ガラス繊維複合材硬化用、アラミド繊維複合材硬化用、ナノ複合材硬化用、フィラー充填材硬化用、ウレタン硬化用、エポキシ硬化用、半導体封止用、偏光板用、拡散シート用、プリズムシート用、反射シート用、燃料電池用または各種ゴムシート用の離型フィルム;
表面保護フィルム:例えば、偏光板用、液晶パネル用、光学部品用、レンズ用、電気部品・電化製品用、携帯電話用、パソコン用またはタッチパネル用の保護フィルム、マスキングフィルム;
建材フィルム:例えば、建材用ウインドウフィルム、合わせガラス用フィルム、防弾材、防弾ガラス用フィルム、遮熱シート、遮熱フィルム;
が挙げられる。
【実施例0203】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0204】
測定方法
各種物性は、以下のようにして測定した。
【0205】
[構成単位の含量]
4-メチル-1-ペンテン系重合体中の、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量、および、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来の構成単位(α-オレフィン由来の構成単位の含有量)の含量は、以下の装置および条件により、13C-NMRスペクトルより算出した。
【0206】
ブルカー・バイオスピン製AVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置を用いて、溶媒はo-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1 v/v)混合溶媒、試料濃度は55mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は5.0μ秒(45°パルス)、繰返し時間は5.5秒、積算回数は64回とし、ベンゼン-d6の128ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。主鎖メチンシグナルの積分値を用い、下記式によってα-オレフィン由来の構成単位の含量を算出した。
【0207】
α-オレフィン由来の構成単位の含量(%)=[P/(P+M)]×100
ここで、Pはα-オレフィン主鎖メチンシグナルの全ピーク面積を示し、Mは4-メチル-1-ペンテン主鎖メチンシグナルの全ピーク面積を示す。
【0208】
[メソダイアッド分率(m)]
4-メチル-1-ペンテン系重合体のメソダイアドアイソタクティシティー(メソダイアッド分率(m))は、ポリマー鎖中の任意の2個の頭尾結合した4-メチル-1-ペンテン単位連鎖を平面ジグザグ構造で表現した時、そのイソブチル分岐の方向が同一である割合と定義し、13C-NMRスペクトルから下記式により求めた。
アイソダイアッドタクティシティー(%)=[m/(m+r)]×100
(式中、m、rは下記式で表される頭-尾で結合している4-メチル-1-ペンテン単位の主鎖メチレンに由来する吸収強度を示す。)
【0209】
13C-NMRスペクトルは、バルカー・バイオスピン製AVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置を用いて、溶媒はo-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1 v/v)混合溶媒、試料濃度は60mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は5.0μ秒(45°パルス)、繰返し時間は5.5秒とし、ベンゼン-d6の128ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
ピーク領域は、41.5~43.3ppmの領域をピークプロファイルの極小点で区切り、高磁場側を第1領域、低磁場側を第2領域に分類した。
【0210】
第1領域では、(m)で示される4-メチル-1-ペンテン単位2連鎖中の主鎖メチレンが共鳴するが、4-メチル-1-ペンテン単独重合体とみなした積算値を「m」とした。第2領域では、(r)で示される4-メチル-1-ペンテン単位2連鎖中の主鎖メチレンが共鳴し、その積算値を「r」とした。なお、0.01%未満を検出限界以下とした。
【0211】
[極限粘度[η]]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0212】
[メルトフローレート(MFR)]
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠して260℃、5kg荷重の条件で測定した。
【0213】
[デカン可溶部量]
各重合体5gにn-デカン200mLを加え、145℃で1時間加熱溶解した。23℃まで冷却し、30分間放置した。その後、析出物(n-デカン不溶部)をろ別した。ろ液を約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させた。析出物をアセトンからろ別し、乾燥した。その析出物の質量を測定した。なお、ろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。n-デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n-デカン可溶部量(質量%)=[析出物質量/重合体質量]×100
【0214】
[分子量分布(Mw/Mn)]
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。GPC測定は、以下の条件で行った。また、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、下記の換算法に基づいて求めた。
(測定条件)
装置:ゲル浸透クロマトグラフ HLC-8321 GPC/HT型 (東ソー社製)
有機溶媒:o-ジクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMH6-HT 2本、TSKgel GMH6-HTLカラム 2本(何れも東ソー社製)
流速:1.0 ml/分
試料:0.15mg/mL o-ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
分子量換算 :PS換算/汎用較正法
なお、汎用較正の計算には、Mark-Houwink粘度式の係数を用いた。PSのMark-Houwink係数はそれぞれ、文献(J.Polym.Sci.,Part A-2,8,1803(1970))に記載の値を用いた。
【0215】
[密度]
密度(kg/m3)は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定した。
ここで、密度が低いことは、重合体およびこれから得られる成形体が軽量であることを表す。
【0216】
[融点(Tm)、融解熱量(ΔHm)]
セイコーインスツルメンツ社製DSC測定装置(DSC220C)を用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、10℃/minで280℃まで昇温した。280℃で5分間保持した後、10℃/minで20℃まで降温させた。20℃で5分間保持した後、10℃/minで280℃まで昇温した。2回目の昇温時に観測された結晶溶融ピークの頂点が現れる温度を融点(Tm)とした。また、この結晶溶融ピークの積算値から融解熱量(ΔHm)を算出した。なお、測定時に複数のピークが検出される場合は、最も高温側で検出されるピークにおける温度およびピークの積算値をそれぞれ、融点および融解熱量とした。
【0217】
[ビカット軟化温度]
射出成形品について、ASTM D1525に準拠して、安田精機株式会社製の試験機を用い、シリコーン油中、昇温速度50℃毎時間、試験荷重10Nにてビカット軟化温度試験を実施した。
【0218】
[170℃における高温弾性率(E’170℃)]
試験用フィルムに対して、TA instruments社製 RSA-IIIを用いて、測定モードを引張とし、昇温速度4℃毎分、周波数1Hz、歪み0.1%の条件で、-20℃から250℃まで測定して、170℃における貯蔵弾性率E’の値を読み取った。
【0219】
[ガス透過量およびガス透過量の標準偏差]
差圧法ガス透過率測定装置BT-3(東洋精機製作所)を使用した。23℃、0%RH条件下にて、試験用フィルム7cm2を用いて、水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)の各ガスの透過量を測定し、測定面積で除した値を各ガス透過量とした。
また、ガス透過量の標準偏差を下記式にて算出し、ガス透過量標準偏差として求めた。
【数1】
【0220】
[フィルム厚さおよびフィルム厚さの標準偏差]
試験用フィルムに対し、マイクロメーターを用いて、フィルムの幅方向中央部分を、流れ方向に10点測定した。その平均値をフィルム厚さの平均値として求めた。
また、フィルムの標準偏差を、上記式にてガス透過量の標準偏差と同様に算出し、フィルム厚さの標準偏差として求めた。
【0221】
[製造例1]
触媒の調製
(遷移金属化合物(A)の製造)
国際公開第2014/050817号の合成例4に従い、(8-オクタメチルフルオレン-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド(遷移金属化合物(A))を合成した。
【0222】
(固体触媒成分の調製)
30℃下、充分に窒素置換した100mLの攪拌機を付けた三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製デカン32mL及び固体状ポリメチルアルミノキサン(東ソーファインケム社製)をアルミニウム原子換算で14.65mmol装入し、懸濁液とした。その懸濁液に、先に合成した遷移金属化合物(A)50mg(ジルコニウム原子換算で0.059mmol)を4.6mmol/Lのトルエン溶液とし、この溶液12.75mLを撹拌しながら加えた。1.5時間後攪拌を止め、得られた触媒成分をデカンテーション法によりデカン50mLで3回洗浄し、デカンに懸濁させてスラリー液(B)50mLを得た。この触媒成分においてZr担持率は100%であった。
【0223】
(予備重合触媒成分の調製)
上記で調製したスラリー液(B)に、窒素気流下、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのデカン溶液(アルミニウム原子換算で2.0mmol/mL)を2.0mL、さらに4-メチル-1-ペンテンを7.5mL(5.0g)装入した。1.5時間後攪拌を止め、得られた予備重合触媒成分をデカンテーション法によりデカン50mLで3回洗浄した。この予備重合触媒成分をデカンに懸濁させて、デカンスラリー(C)50mLを得た。デカンスラリー(C)における予備重合触媒成分の濃度は20g/L、1.05mmol-Zr/Lであり、Zr回収率は90%であった。
【0224】
[実施例1]
(重合体[A-1]の製造)
室温、窒素気流下で、内容積1Lの攪拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのデカン溶液(アルミニウム原子換算で2.0mmol/mL)を0.5mL(1mol)装入した。次いで、先に調製した予備重合触媒成分のデカンスラリー溶液(C)をジルコニウム原子換算で0.0005mmol加え、水素を47NmL装入した。次いで、4-メチル-1-ペンテン250mLを2時間かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。この装入開始時点を重合開始とし、重合開始から30分かけて45℃へ昇温した後、45℃で4時間保持した。重合開始から1時間後、2時間後に水素をそれぞれ47NmL装入した。重合開始から4.5時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、重合体[A-1]を得た。収量は131gであった。得られた重合体[A-1]の分析結果を表1に示す。
【0225】
(評価用ペレットの作製)
必要に応じて重合を複数回実施してペレット作製に十分な量の重合体を用意した。上記で得られた重合体100質量部に対して、二次抗酸化剤としてトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1質量部、耐熱安定剤としてn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.1質量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT-30(スクリュー径30mmφ、L/D 46)を用い、設定温度260℃、樹脂押出量60g/minおよび回転数200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
得られた評価用ペレットを用いて、上述した方法によってMFR測定、密度測定、DSC測定を行った。結果を表1に示す。
【0226】
(射出成形体の作製)
前記評価用ペレットを用いて、株式会社名機製作所製射出成形機M70Bで、シリンダ温度300℃、金型温度65℃の条件下で、1次射出を320kg/cm2で5秒かけて行い、続けて2次射出を260kg/cm2で3秒かけて行うことで、厚さ4mm、平行部80mmのISダンベル形状(ISO3167:93)の射出成形体を得た。
得られた射出成形体に対して、上述した方法によって、ビカット軟化温度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0227】
(試験用フィルムの作製)
前記評価用ペレットを用いて、サーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ、L/D 28)にコートハンガー式T型ダイス(リップ形状 270×0.8mm)を装着した。チルロールは100mmφの引取機を用いた。シリンダ及びダイス温度280℃の条件下、表1に記載のチルロール温度、巻き取り速度1.0m/minで成形を行い、試験用フィルムを得た。
得られた試験用フィルムを用い、上述した方法によって、平均厚さ、高温弾性率およびガス透過性を評価した。結果を表1に示す。
【0228】
[実施例2]
(重合体[A-2]の製造、評価)
3回に分けて47mLずつ添加した水素の量を、39mLずつに変更したこと以外は、実施例1の重合体[A-1]の製造と同様にして重合体[A-2]を得た。分析結果を表1に示す。また、得られた重合体[A-2]を用いて、実施例1と同様に、評価用ペレットの作製、射出成形体の作製、および試験用フィルムの作製を行い、上述の方法にてそれぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0229】
[実施例3]
(重合体[A-3]の製造、評価)
挿入した原料を4-メチル-1-ペンテン250mLと1-デセン0.86mLとの混合溶液とした以外は、実施例1の重合体[A-1]の製造と同様にして、重合体[A-3]を得た。分析結果を表1に示す。また、得られた重合体[A-3]を用いて、実施例1と同様に、評価用ペレットの作製、射出成形体の作製、および試験用フィルムの作製を行い、上述の方法にてそれぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0230】
[実施例4]
(重合体[A-4]の製造、評価)
3回に分けて47mLずつ添加した水素の量を、48mLずつに変更したこと以外は、実施例1の重合体[A-1]の製造と同様にして重合体[A-4]を得た。分析結果を表1に示す。
得られた重合体[A-4]100質量部に対して、さらにナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート(株式会社ADEKA製、アデカスタブ NA-11)を0.1質量部添加した以外は実施例1と同様に、評価用ペレットの作製を行った。
前記評価用ペレットを用いて、実施例1と同様に、射出成形体の作製、および試験用フィルムの作製を行い、上述の方法にてそれぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0231】
[実施例5]
(重合体[A-5]の製造、評価)
3回に分けて47mLずつ添加した水素の量を、51mLずつに変更したこと以外は、実施例1の重合体[A-1]の製造と同様にして重合体[A-5]を得た。分析結果を表1に示す。また、得られた重合体[A-5]を用いて、実施例1と同様に、評価用ペレットの作製、射出成形体の作製、および試験用フィルムの作製を行い、上述の方法にてそれぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0232】
[比較例1]
(重合体[B-1]の製造、評価)
挿入した原料を4-メチル-1-ペンテン250mLと1-デセン1.3mLとの混合溶液としたこと以外は、実施例1の重合体[A-1]の製造と同様にして、重合体[B-1]を得た。分析結果を表1に示す。また、得られた重合体[B-1]を用いて、実施例1と同様に、評価用ペレットの作製、射出成形体の作製、および試験用フィルムの作製を行い、上述の方法にてそれぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0233】
[比較例2]
(重合体[B-2]の製造、評価)
挿入した原料を4-メチル-1-ペンテン250mLと1-デセン2.4mLとの混合溶液としたこと以外は、実施例1の重合体[A-1]の製造と同様にして、重合体[B-2]を得た。分析結果を表1に示す。また、得られた重合体[B-2]を用いて、実施例1と同様に、評価用ペレットの作製、射出成形体の作製、および試験用フィルムの作製を行い、上述の方法にてそれぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0234】
[比較例3]
(重合体[B-3]の製造、評価)
挿入した原料を4-メチル-1-ペンテン250mLと1-デセン6.7mLとの混合溶液とした以外は、実施例1の重合体[A-1]の製造と同様にして重合体[B-3]を得た。分析結果を表1に示す。また、得られた重合体[B-3]を用いて、実施例1と同様に、評価用ペレットの作製、射出成形体の作製、および試験用フィルムの作製を行い、上述の方法にてそれぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0235】
[比較例4~9]
(重合体[B-4]~重合体[B-6]の製造、評価)
国際公開2006/054613号パンフレットの、比較例7及び比較例9の方法に準じ、それぞれ、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、水素の割合を変更することによって、重合体[B-4]、[B-5]、[B-6]を得た。分析結果を表1に示す。また、得られた各重合体を用いて、実施例1と同様に、評価用ペレットの作製、射出成形体の作製、および試験用フィルムの作製を行い、上述の方法にてそれぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0236】
【表1】
【0237】
各実施例及び比較例の結果を示す表1より、本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いた実施例では、得られたフィルムについての水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)の各ガスの透過量がいずれも比較例よりも小さく、ガス透過が抑制されていることが分かった。また、各実施例では、ガス透過量のガスの種類に対する標準偏差が各比較例よりも小さく、ガスの種類によって透過量の抑制度合が異なることが示された。この結果は、ガス透過量の標準偏差は変化しにくいという予想とは異なるものであった。このことから本発明のフィルム、容器等の成形体は、外気と内容気体の組成差が小さいことが求められる用途にも、従来の4-メチル-1-ペンテン系重合体からなるものよりも好適に使用できると考えられる。
また、各実施例及び比較例の結果では、4-メチル-1-ペンテン系重合体の融解熱量(ΔHm)が大きいと、フィルム厚みのばらつきが比較的大きく、厚さの標準偏差が大きかった。このことは、ダイスから出た溶融樹脂がチルロールへ密着して固化する瞬間に、ΔHmが大きい水準ほどチルロールから浮き上がりやすい傾向にあり安定した密着性に乏しいことを示すと考えられる。チルロール温度を高めることでチルロールへの密着性が向上し、フィルム厚みのばらつき及びその標準偏差を小さくすることができた。