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▶ メドス・インターナショナル・エスエイアールエルの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171631
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】スペーサインプラントシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/40 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
A61F2/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074608
(22)【出願日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】17/245,327
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ビー・スペンシナー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・エム・ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】メフメット・ジヤ・センガン
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・イー・バリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・トキッシュ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・チェンバレン
(72)【発明者】
【氏名】アンマリー・ブリジット・フォン・レッヒェンベルク
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・モロダー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジャコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリー・マッカリスター
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA11
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097CC04
4C097EE13
4C097EE16
(57)【要約】
【課題】肩の修復装置及び技術を改良すること。
【解決手段】インプラントが提供される。例示的な一実施形態では、インプラントは、関節内に植え込まれるように構成されたスペーサを含む。スペーサは、第1の端部から第2の端部まで延在し、第1の端部と第2の端部との間を延在する長手方向軸を有する細長中央本体と、細長中央本体の第1及び第2の端部からそれぞれ延在する第1の翼部及び第2の翼部と、を含む。細長中央本体は、長手方向軸を横切る方向に第1の最大高さを有し、第1の翼部及び第2の翼部の各々は、第1の最大高さよりも大きい最大高さを有する。植え込まれて、膨張状態にあるとき、第1の翼部及び第2の翼部のうちの少なくとも一方が、解剖学的構造の一部と機械的に噛み合い、それによってスペーサを関節に自己固定し、スペーサの移行を抑制するように構成されている。筋機能を生体力学的に増強するためのインプラントシステム及び方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントであって、
関節内に植え込まれるように構成されたスペーサを備え、前記スペーサが収縮状態と膨張状態とで構成可能であり、前記スペーサが、
第1の端部から第2の端部まで延在する細長中央本体であって、前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する長手方向軸を有し、前記長手方向軸を横切る方向に第1の最大高さを有する、細長中央本体と、
前記細長中央本体の前記第1の端部及び前記第2の端部からそれぞれ延在する第1の翼部及び第2の翼部であって、前記第1の翼部及び前記第2の翼部の各々が、前記第1の最大高さよりも大きい最大高さを有する、第1の翼部及び第2の翼部と、
を有し、
植え込まれて、前記膨張状態にあるとき、前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの少なくとも一方が、解剖学的構造の一部と機械的に噛み合い、それによって前記スペーサを前記関節に自己固定し、前記スペーサの移動を抑制するように構成されている、インプラント。
【請求項2】
前記関節が肩関節であり、前記スペーサが前記肩関節の肩峰と上腕骨との間に植え込まれるように構成されており、前記膨張状態にあるとき、前記スペーサが、前記肩峰を少なくとも部分的に取り囲むように構成されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が、上向きに、かつ前記細長中央本体の前記長手方向軸から離れるように湾曲することで、前記スペーサが植え込まれて、前記膨張状態にあるときに、前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの前記少なくとも一方の前記一部が前記肩峰の最深面の上方で延在するように構成されている、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が、上向きに、かつ前記細長中央本体の前記長手方向軸から離れるように湾曲することで、前記スペーサが植え込まれて、前記膨張状態にあるときに、前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの前記少なくとも一方の前記一部が前記肩峰の最外面と面一に、又はその上方で延在するように構成されている、請求項2に記載のインプラント。
【請求項5】
前記スペーサが実質的にU字形である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記スペーサが、実質的にドッグボーン形状である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記スペーサの少なくとも1つの表面がテクスチャ加工され、それによって前記スペーサが植え込まれたときの前記スペーサの移動を更に抑制する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記スペーサが、内部に配置された少なくとも1つの薬剤を含み、前記スペーサが、前記スペーサが植え込まれている間に前記少なくとも1つの薬剤を放出するように構成されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記スペーサが、膨張しているときに少なくとも1つの薬剤を受容するように構成され、前記スペーサが、前記スペーサが植え込まれている間に前記少なくとも1つの薬剤を放出するように構成されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
インプラントシステムであって、
関節の第1の空間内に位置付けられるように構成されている第1のスペーサであって、第1の容積と第2の容積との間を可逆的に移行するように構成された、内部に画定された第1の膨張可能なチャンバを有する、第1のスペーサと、
前記関節の第2の空間内に位置付けられるように構成されている第2のスペーサであって、第3の容積と第4の容積との間を可逆的に移行するように構成された、内部に画定された第2の膨張可能なチャンバを有する、第2のスペーサと、
前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間に延在する第1の流体通路と、
前記第1の流体通路内に位置付けられている第1のバルブであって、少なくとも第1の状態と前記第1の状態とは異なる第2の状態との間を移行するように構成されており、前記第1の状態が、前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間の流体移送を阻止して、それぞれの容積間の移行を防止し、前記第2の状態が、前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移行することができるように、前記関節の第1の位置に基づいて、第1の流体移送が前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間で行われることを可能にする、第1のバルブと、
を備える、インプラントシステム。
【請求項11】
前記流体通路と流体連通している少なくとも1つのポンプを更に備え、前記少なくとも1つのポンプが、前記少なくとも1つのバルブが前記第2の状態にあるときに、前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間の流体流を駆動するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のバルブが、前記第1の膨張可能なチャンバ及び前記第2の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移行することができるように、前記肩関節の第2の位置に基づいて、前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間の第2の反対の流体移送を促進するように構成されており、前記第2の位置が前記第1の位置と異なる、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記関節が肩関節であり、前記第1の空間が前記肩関節の上腕骨頭の後方にあり、前記第2の空間が前記上腕骨頭の上方又は前方にある、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記関節の第3の空間内に位置付けられるように構成されている第3のスペーサであって、第5の容積と第6の容積との間を可逆的に移行するように構成された、内部に画定された第3の膨張可能なチャンバを有する、第3のスペーサと、
前記第2の膨張可能なチャンバと前記第3の膨張可能なチャンバとの間に延在する第2の流体通路と、
前記第2の流体通路内に位置付けられている第2のバルブであって、少なくとも第3の状態と前記第3の状態とは異なる第4の状態との間を移行するように構成されており、前記第3の状態が、前記第2の膨張可能なチャンバと前記第3の膨張可能なチャンバとの間の流体移送を阻止して、それぞれの容積間の移行を防止し、前記第4の状態が、前記第2の膨張可能なチャンバと前記第3の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移行することができるように、前記関節の前記第1の位置又は第3の位置のうちの少なくとも一方に基づいて、流体移送が前記第2の膨張可能なチャンバと前記第3の膨張可能なチャンバとの間で行われることを可能にする、第2のバルブと、
を更に備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記関節が前記肩関節であり、前記第1の空間が前記肩関節の上腕骨頭の後方にあり、前記第2の空間が前記上腕骨頭の上方にあり、前記第3の空間が前記上腕骨頭の前方にある、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
中央管腔及び3つの分岐管腔を有する主流体通路を更に備え、前記第1の分岐管腔が、前記中央管腔と前記第1の膨張可能なチャンバとの間に延在し、前記第2の分岐管腔が、前記中央管腔と前記第2の膨張可能なチャンバとの間に延在し、前記第3の分岐管腔が、前記中央管腔と前記第3の膨張可能なチャンバとの間に延在する、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の分岐管腔、前記第2の分岐管腔、及び前記第3の分岐管腔のうちの少なくとも1つの中に位置付けられた少なくとも1つの第3のバルブを更に備え、前記少なくとも1つの第3のバルブが、内部を通る流体移送を阻止する第5の状態と、内部に流体を通過させる第6の状態との間を移行するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記中央管腔の端部に位置付けられ、第7の状態と第8の状態との間を移行するように構成されている第4のバルブを更に備え、前記第8の状態において、前記第4のバルブが、前記少なくとも1つの第3のバルブが第6の状態にあるときに、前記第4のバルブを通る流体移送を可能にして、前記第1の膨張可能なチャンバ、前記第2の膨張可能なチャンバ、及び前記第3の膨張可能なチャンバのうちの少なくとも1つの膨張及び収縮の少なくとも一方を行うように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、スペーサインプラント及びスペーサインプラントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
肩関節は人体の関節の中で最大の運動範囲を有する。この関節は臼状関節であり、肩甲骨、鎖骨、及び上腕骨の3つの骨を有する。上腕骨の丸い骨頭部(上腕骨頭)は、関節窩と呼ばれる、肩甲骨内の浅い臼部内にフィットする。上腕骨頭は通常、関節窩よりもはるかに大きく、これらが合わせられることにより本質的に安定性が低い。肩関節を主に安定させるものは、腕の前側の上腕二頭筋と回旋腱板の腱を含む。回旋腱板は、以下の4つの筋肉及びそれらの腱を含む:棘上筋、棘下筋、小円筋及び肩甲下筋。
【0003】
回旋腱板が断裂した状況下では(回旋腱板断裂)、肩関節を安定させるその能力が損なわれる可能性がある。例えば、回旋腱板断裂は、肩関節の臼状関節が関節窩から上方に移動することを可能にし、上腕骨の上方化をもたらし得る。これにより、腕機能が低下し、治療を要する可能性がある。
【0004】
部分的な断裂の場合、一定の十分な時間が与えられ、外傷を更なる過度のストレスにさらさないように注意が払われれば、外傷は、多くの場合、それ自体で治癒する。しかしながら、完全な断裂の場合、回旋腱板を関連する骨又は複数の骨、例えば、上腕骨及び/又は肩甲骨に再付着させる手術が必要な場合が多い。回旋腱板を骨に再付着させるために、多数の装置が現在も利用可能である。現在存在する装置の例としては、ねじ、ステープル、縫合糸アンカー、及び鋲が挙げられる。そのような現在利用可能な装置は、回旋腱板を骨に再付着するのに有効とすることができるが、場合によっては、回旋腱板断裂が完全に治癒しないか、又は患者が日常生活の過程で肩を動かすのにともない回旋腱板断裂が術後に再発する。したがって、患者は、疼痛を再び経験し、腕機能を低下させることがあり、欠陥のある回旋腱板に対処するために別の手術及び/又は他の処置を必要とすることがある。更に、患者が夜間に疼痛を経験し、その結果、睡眠が困難になることは珍しくない。
【0005】
更に、特定の例では、筋肉不全は、肩関節の不安定性を引き起こす可能性もある。これは、神経機能障害、又は三角筋弛緩を引き起こす上腕骨の上方移動などの自然な解剖学的構造の変化によって引き起こされ得る。例えば、上腕骨の過剰な上方移動は、三角筋の過度の弛緩を引き起こし、よって、収縮を防止して腕を上昇させることがある。したがって、弱い三角筋は、偽麻痺を含む重篤な肩機能障害につながる可能性がある。筋肉不全を改善するためにインプラントが開発されているが、そのようなインプラントは、典型的には剛性であり、骨に恒久的に固定する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、肩の修復装置及び技術の改良が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
インプラントが提供される。例示的な一実施形態では、インプラントは、関節内に植え込まれるように構成されたスペーサを含み、スペーサは、収縮状態と膨張状態とで構成可能である。スペーサは、第1の端部から第2の端部まで延在する細長中央本体であって、第1の端部と第2の端部との間に延在する長手方向軸を有する細長中央本体と、細長中央本体の第1及び第2の端部からそれぞれ延在する第1の翼部及び第2の翼部と、を含む。細長中央本体は、長手方向軸を横切る方向に第1の最大高さを有し、第1の翼部及び第2の翼部の各々は、第1の最大高さよりも大きい最大高さを有する。植え込まれて、膨張状態にあるとき、第1及び第2の翼部のうちの少なくとも一方が、解剖学的構造の一部と機械的に噛み合い、それによってスペーサを関節に自己固定し、スペーサの移行を抑制するように構成されている。
【0008】
関節は、様々な構成を有し得る。いくつかの実施形態では、関節が肩関節であり得、スペーサが肩関節の肩峰と上腕骨との間に植え込まれるように構成され得、膨張状態にあるとき、スペーサが、肩峰を少なくとも部分的に取り囲むように構成されている。一実施形態では、第1の翼部及び第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が、上向きに、かつ細長中央本体の長手方向軸から離れるように湾曲することで、スペーサが植え込まれ、膨張状態にあるときに、第1の翼部及び第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が肩峰の最深面の上方に延在するように構成され得る。別の実施形態では、第1の翼部及び第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が、上向きに、かつ細長中央本体の長手方向軸から離れるように湾曲することで、スペーサが植え込まれ、膨張状態にあるときに、第1の翼部及び前2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が肩峰の最外面と面一に、又はその上方で延在するように構成され得る。
【0009】
スペーサは、様々な構成を有し得る。いくつかの実施形態では、スペーサは、実質的にU字形であり得る。他の実施形態では、スペーサは、実質的にドッグボーン形状であり得る。特定の実施形態では、スペーサの少なくとも1つの表面は、テクスチャ加工され、それによって、スペーサが植え込まれたときのスペーサの移動を更に抑制し得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、スペーサは、内部に配置された少なくとも1つの薬剤を含むことができ、スペーサは、スペーサが植え込まれている間に少なくとも1つの薬剤を放出するように構成され得る。他の実施形態では、スペーサは、膨張されるときに少なくとも1つの薬剤を受容するように構成され得、スペーサは、スペーサが植え込まれている間に少なくとも1つの薬剤を放出するように構成され得る。
【0011】
インプラントシステムもまた提供される。例示的な一実施形態では、インプラントシステムは、関節の第1の空間内に位置付けられるように構成された第1のスペーサ、関節の第2の空間内に位置付けられるように構成された第2のスペーサ、第1の流体通路、及び第1の流体通路内に位置付けられた第1のバルブを含む。第1のスペーサは、内部に画定された、第1の容積と第2の容積との間を可逆的に移動するように構成されている第1の膨張可能なチャンバを有し、第2のスペーサは、内部に画定された、第3の容積と第4の容積との間を可逆的に移行するように構成されている第2の膨張可能なチャンバを有する。第1の流体通路は、第1の膨張可能なチャンバと第2の膨張可能なチャンバとの間に延在する。第1のバルブは、少なくとも第1の状態と第1の状態とは異なる第2の状態との間を移行するように構成されている。第1の状態は、第1及び第2の膨張可能なチャンバ間の流体移送を阻止して、それぞれの容積間の移動を防止し、第2の状態は、第1及び第2の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移動することができるように、関節の第1の位置に基づいて、第1の流体移送が第1の膨張可能なチャンバと第2の膨張可能なチャンバとの間で行われることを可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態では、インプラントシステムは、流体通路と流体連通し得る少なくとも1つのポンプを含み得る。少なくとも1つのポンプは、少なくとも1つのバルブが第2の状態にあるときに、第1の膨張可能なチャンバと第2の膨張可能なチャンバとの間の流体流を駆動するように構成され得る。
【0013】
第1のバルブは、様々な構成を有し得る。いくつかの実施形態では、第1のバルブは、第1の膨張可能なチャンバ及び第2の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移行することができるように、肩関節の第2の位置に基づいて、第1及び第2の膨張可能なチャンバ間の第2の反対の流体移送を促進するように構成され得る。第2の位置は、第1の位置とは異なっていてもよい。
【0014】
関節は、様々な構成を有し得る。いくつかの実施形態では、関節は肩関節であり得、第1の空間は肩関節の上腕骨頭の後方にあり得、第2の空間は上腕骨頭の上方又は前方にあり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、インプラントシステムは、関節の第3の空間内に位置付けられるように構成され得る第3のスペーサ、第2の流体通路、及び第2の流体通路内に位置付けられ得る第2のバルブを含み得る。第3のスペーサは、第5の容積と第6の容積との間を可逆的に移行するように構成され得る、内部に画定された第3の膨張可能なチャンバを有し得る。第2の流体通路は、第2の膨張可能なチャンバと第3の膨張可能なチャンバとの間に延在することができる。第2のバルブは、少なくとも第3の状態と第3の状態とは異なる第4の状態との間を移行するように構成することができる。第3の状態は、第2の膨張可能なチャンバと第3の膨張可能なチャンバとの間の流体移送を阻止して、それぞれの容積間の移動を防止し得、第4の状態は、第2の膨張可能なチャンバ及び第3の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移動することができるように、関節の第1の位置又は第3の位置のうちの少なくとも一方に基づいて、流体移送が第2の膨張可能なチャンバ及び第3の膨張可能なチャンバ間で行われることを可能にし得る。
【0016】
関節は、様々な構成を有し得る。いくつかの実施形態では、関節は肩関節であり得、第1の空間は肩関節の上腕骨頭の後方にあり得、第2の空間は上腕骨頭の上方にあり得、第3の空間は上腕骨頭の前方にあり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、インプラントシステムは、中央管腔及び3つの分岐管腔を有する主流体通路を含み得る。第1の分岐管腔は、中央管腔と第1の膨張可能なチャンバとの間に延在し得、第2の分岐管腔は、中央管腔と第2の膨張可能なチャンバとの間に延在し得、第3の分岐管腔は、中央管腔と第3の膨張可能なチャンバとの間に延在し得る。一実施形態では、インプラントシステムは、第1の分岐管腔、第2の分岐管腔、及び第3の分岐管腔のうちの少なくとも1つ内に位置付けられ得る少なくとも1つの第3のバルブを含むことができ、少なくとも1つの第3のバルブは、内部を通る流体移送を阻止する第5の状態と、内部に流体を通過させる第6の状態との間を移行するように構成され得る。そのような実施形態では、インプラントシステムは、中央管腔の端部に位置付けられ得、第7の状態と第8の状態との間を移行するように構成され得る第4のバルブを含み得、第8の状態において、第4のバルブは、少なくとも1つの第3のバルブが第6の状態にあるときに、第4のバルブを通る流体移送を可能にして、第1の膨張可能なチャンバ、第2の膨張可能なチャンバ、及び第3の膨張可能なチャンバのうちの少なくとも1つの膨張及び収縮の少なくとも一方を行うように構成され得る。
【0018】
筋機能を生体力学的に増強するための方法も提供される。例示的な一実施形態では、本方法は、上腕骨と筋肉との間の収縮状態でスペーサを植え込むことと、スペーサが上腕骨に貫入せずに上腕骨と筋肉との間で自己固定し、筋肉を伸長させて、上腕骨の上腕骨頭の周りの圧縮を増加させることを可能にするように、スペーサを収縮状態から膨張状態へ膨張させることと、を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、スペーサは、上腕骨の横に位置付けられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を添付図面と併せて読むことで、より完全に理解されるであろう。
図1】膨張状態のインプラントを示す、インプラントの例示的な実施形態の側面図である。
図2図1のインプラントの上面図である。
図3】膨張状態のインプラントを示す、インプラントの別の実施形態の側面図である。
図4】肩の肩峰下空間に植え込まれた図3のインプラントを示す肩の側面図である。
図5】肩の肩峰下空間に植え込まれた図3のインプラントを示す肩の上面図である。
図6】肩の肩峰下空間に植え込まれた膨張状態のインプラントを示す、インプラントの別の実施形態の側面図である。
図7】膨張状態のインプラントの別の実施形態の側面図である。
図8図7のインプラントの上面図である。
図9】肩の肩峰下空間に植え込まれた膨張状態のインプラントを示す、インプラントを伴う肩の上面図である。
図10】弱い/機能不全の三角筋を有する肩の正面図である。
図11】膨張状態のインプラントを示す、インプラントが肩の三角筋と上腕骨との間に位置付けられたインプラントの別の実施形態による、図10の肩の正面図である。
図12】第1及び第2のスペーサを有するインプラントシステムの例示的な実施形態の正面図である。
図13】収縮状態の第1のスペーサと膨張状態の第2のスペーサを示す、左肩甲骨のそれぞれの第1及び第2の空間内に位置付けられた図12のインプラントシステムの第1及び第2のスペーサを有する肩関節の左側肩甲骨の側面図である。
図14】膨張状態の第1のスペーサと収縮状態の第2のスペーサを示す、左肩甲骨のそれぞれの第1及び第2の空間内に位置付けられた図12のインプラントシステムの第1及び第2のスペーサを有する肩関節の左側肩甲骨の側面図である。
図15A】収縮状態の各スペーサを示す、3つのスペーサを有するインプラントシステムの別の実施形態である。
図15B】膨張状態の各スペーサを示す、図15Aのインプラントである。
図16A】左上腕骨、肩甲骨、肋骨、及び脊椎の一部を示す解剖学的環境の上面図である。
図16B】肩甲骨と上腕骨との間に植え込まれた図15Bのインプラントシステムを更に示す、図16Aの一部の拡大図である。
図17A図16Aの解剖学的環境の左側面図である。
図17B】肩甲骨と上腕骨との間に植え込まれた図15Bのインプラントシステムを更に示す、図17Aの一部の拡大図である。
図18A図16Aの解剖学的環境の後側面図である。
図18B】肩甲骨と上腕骨との間に植え込まれた図15Bのインプラントシステムを更に示す、図18Aの一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願で開示するインプラント、システム、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理が総括的に理解されるように、特定の例示的実施形態について、これから説明する。これらの実施形態のうちの1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に例解される。当業者であれば、本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示されるインプラント、システム、及び方法は、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義されることが理解されるであろう。例示的な一実施形態に関連して例解又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0022】
概して、インプラント、インプラントシステム、及びその使用方法が提供される。例示的な一実施形態では、インプラントは、関節を安定させるために関節(例えば、肩関節)内に植え込まれるように構成された(例えば、1つ以上の膨張可能なチャンバ)を有するスペーサであり、自己固定するように構成されることによってスペーサの移動を抑制するという特定の特徴を有する。このような自己固定が存在しない場合、植え込まれたときに関節に対するスペーサの位置を維持するために追加の固定機構が必要とされ得ることが理解されよう。有益なことに、縫合糸、縫合糸アンカーなどの追加の固定機構を必要とせず、本スペーサの植え込みは侵襲性が低い。
【0023】
別の例示的な実施形態では、インプラントは、骨と筋肉間(例えば、椎体間植え込み)、又は筋肉間(例えば、筋間植え込み)、又は筋繊維間(例えば、筋内間植え込み)に植え込まれるように構成されて、筋機能を向上させるように筋肉(複数可)又は筋繊維を増強させる(例えば、1つ以上の膨張可能なチャンバを有する)スペーサである。すなわち、スペーサは、筋機能の生体力学的増強のために構成することができる。典型的には剛性であり、(例えば、骨に貫入することによって)骨に恒久的に固定される必要がある従来のインプラントとは異なり、本スペーサは、自己固定し可撓性であるように設計されている。結果として、本スペーサの使用による筋機能増強は、繊維侵襲が少なく、筋内位置決めのための柔軟性を有し、骨の関与が少ないか又は全くない状態で実行され得る。
【0024】
スペーサは、一般に、内部に画定された1つ以上の内部膨張可能なチャンバを含み、収縮状態と膨張状態とで構成可能であり得る。使用時、スペーサは、収縮状態の関節内に挿入され、関節内(例えば、肩峰下空間内)の所望の位置に位置付けられ、次いで、その場で膨張され得る。肩峰下空間は、肩甲上腕関節(臼状関節)の上方、かつ肩の肩甲骨の最表面の骨突起部の下方にある空間を指す。スペーサは、様々な異なる関節に植え込まれるように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、関節は肩関節であり得、スペーサは肩関節の肩峰と上腕骨との間に植え込まれるように構成され得る。更に、膨張状態にあるとき、スペーサは、肩峰を少なくとも部分的に取り囲むように構成され得る。
【0025】
スペーサは、開放処置、ミニ開放処置、又は全関節鏡処置を使用して挿入されるように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、スペーサは、小径送達チューブ又はカニューレを使用して所望の位置に挿入され得る。他の実施形態では、他の適切な既知の方法が使用され得る。スペーサは、1つ以上の充填材料をスペーサの1つ以上の膨張可能なチャンバに注入することによって、収縮状態から膨張されるように構成され得る。任意の好適な充填方法を使用して、スペーサを膨張させ得る。例えば、いくつかの実施形態では、充填ポートは、充填管を介してスペーサの1つ以上の膨張可能なチャンバに接続され、流体連通し得る。したがって、使用時、流体移送機構(例えば、ポンプ及び/又はバルブ)は、充填ポートに接続され得、作動時に、充填管を介して、1つ以上の充填材料をスペーサの1つ以上の膨張可能なチャンバに導入し得る。本明細書で使用される場合、「流体移送」は、1つ以上の充填材料の移送を包含する。好適な充填材料の非限定的な例としては、1つ以上のガス、1つ以上の液体、1つ以上のゲル、又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、空気、生理食塩水、ヒアルロン酸、及び/又はシリコーン)が挙げられる。
【0026】
「充填」又は「膨張」という用語は、スペーサ又はその膨張可能なチャンバ(複数可)が、内部に充填剤材料を有するか、又は所望の量又は圧力を加えられることを意味すると意図される。これらの用語は、膨張可能なチャンバ(複数可)が「膨張されている」とき、又はスペーサが「膨張」状態にあるとき、スペーサ又は膨張可能なチャンバ(複数可)が、必ずしも完全に又は100%充填材料で充填されていることを意味することを意図するものではない(しかしながら、そのような実施形態は、「充填」という用語の範囲内である)。同様に、「収縮」という用語は、スペーサ又はその膨張可能なチャンバ(複数可)が完全に空であるか、又は圧力がゼロであることを必ずしも意味するものではない。いくつかの充填剤材料及びチャンバは、「収縮した」膨張可能なチャンバ内で、又はスペーサが「収縮」状態にあるときに、非ゼロ圧力を有し得る。「収縮した」スペーサ又は膨張可能なチャンバ(複数可)は、スペーサ又は膨張可能なチャンバ(複数可)が、スペーサ又は膨張可能なチャンバ(複数可)の充填後、所望される量又は圧力で充填剤材料を含む/含まないことを意味することを意図する。
【0027】
特定の実施形態では、スペーサは、2つ以上の膨張可能なチャンバを含む。一実施形態では、2つ以上の膨張可能なチャンバは、スペーサが異なる剛性及び/又は形状を有する異なる部分を有することを可能にし得る。このようにして、スペーサは、関節内の異なる位置でスペーサの位置安定性を向上させる形状に更に調整され得る。例えば、肩峰下での使用のために、スペーサの上部は、スペーサの下部よりも高い剛性を有し得る。上位及び下位チャンバの両方の膨張は、関節窩内の上腕骨頭の近位遠位(上位-下位)安定性を向上させることができるが、上位チャンバのより高い剛性は、上腕骨の位置をより下位に留置するように付勢することができ、これにより、筋肉の中でも特に三角筋の作動を通じて腕の上昇を助けることができる。更に、上腕骨頭は、肩甲骨よりもはるかに大きな運動範囲を有する。スペーサの比較的軟らかい下部は、スペーサを過度に引きずることなく、上腕骨頭のより大きな相対運動を可能にすることができるが、スペーサの比較的硬い上部は、肩峰により強く噛み合うことができ、本体に対するスペーサのより良好な位置安定性をもたらす。
【0028】
スペーサは、様々な生体適合性材料で形成することができる。当業者であれば、材料(複数可)の種類が、少なくともスペーサの意図される使用に依存し得ることを理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、スペーサは、1つ以上の吸収性材料で形成され得るが、他の実施形態では、スペーサは、1つ以上の非吸収性材料で形成され得る。特定の実施形態では、スペーサは、1つ以上の吸収性材料及び1つ以上の非吸収性材料の組合せで形成され得る。
【0029】
スペーサは、スペーサが解剖学的構造(例えば、肩峰)の一部と機械的に噛み合うことを可能にすることにより、自己固定し、関節からの移動を抑制する様々な構成を有し得る。例えば、スペーサは、実質的にドッグボーン形状、実質的にU字形、又は実質的にドーム形状であり得る。当業者であれば、スペーサの特定の構造的構成が、少なくともインプラント部位(例えば、関節内)と患者の解剖学的構造とに依存することを理解するであろう。例えば、肩峰下での使用のために、スペーサは、肩峰によって回旋腱板に単純に保持されるのではなく、肩峰の周りに嵌合するように成形され得る。したがって、スペーサは、上腕骨頭を中心とし、肩甲骨に対する上腕骨の上方、前方、及び/又は後方の位置付けに抵抗するように成形され得る。代替的に又は追加的に、スペーサの少なくとも1つの表面は、スペーサが植え込まれたときのスペーサの移動を更に抑制するためにテクスチャ加工され得る。
【0030】
スペーサが実質的にドーム形状であるいくつかの実施形態では、スペーサは、膨張状態において、中空球体の半球部分よりも小さく、凸側及び凹側を含む形状を有し得る。スペーサの凹側は、凹部がスペーサを所定の位置に保持するのを助けるように肩峰の一部の反対側に位置付けられ得、スペーサの凸側は、上腕骨の上側で軟組織と連結し、軟組織を上方へ移動するように付勢する。
【0031】
特定の実施形態では、スペーサは、薬剤を溶出するように構成され得る(例えば、即時放出又は長期放出)。例えば、スペーサは、半透性材料から形成することができ、少なくとも1つの薬剤を充填材料に添加することができ、その結果、膨張すると、スペーサは、(例えば、スペーサが植え込まれている間に)少なくとも1つの薬剤を放出するように構成され得る。スペーサが吸収性材料から形成される実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、スペーサが植え込まれている間にスペーサが分断し始めると、スペーサから(例えば、スペーサの1つ以上の膨張可能なチャンバから)放出され得る。他の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、例えば、少なくとも1つの薬剤が経時的に放出され得るように(例えば、長期放出)、スペーサ自体を形成する1つ以上の材料内に組み込むことができる。少なくとも1つの薬剤は、任意の好適な薬剤(複数可)であり得る。好適な薬剤の非限定的な例としては、抗炎症、凝固防止、鎮痛、感染防止、抗バイオフィルム、抗又はプロ生物接着、及び/又は成長因子特性を有する、1つ以上の薬剤が挙げられる。
【0032】
図1及び図2は、スペーサ100であるインプラントの例示的な一実施形態を示す。スペーサ100は、関節(例えば、肩関節)内に植え込まれるように構成されており、植え込まれると、スペーサ100は、解剖学的構造の一部と係合し、それによって自己固定するように構成されている。この自己固定は、関節に対するスペーサの移動を阻止し得る。スペーサ100は、収縮状態と膨張状態とで構成可能であるが、スペーサ100は、膨張状態で示されている。
【0033】
スペーサ100は、第1の端部104aから第2の端部104bまで延在する細長中央本体102を含み、長手方向軸Lが両端部間に(例えば、X方向に)延在する。細長中央本体102は、長手方向軸Lを横切る方向(例えば、Y方向)に高さHを有する。細長中央本体102の最大高さは、細長中央本体102の最上面108aと最下面108bとの間の最大距離である。図示されるように、細長中央本体102の高さHは、(例えば、長手方向軸Lに沿って、X方向に延在する)長さに沿ってほぼ一定である(例えば、製造公差内で名目上同一である)。したがって、細長中央本体102の高さHは、細長中央本体102の最大高さに等しい。他の実施形態では、例えば、図3に示すように、細長中央本体の高さは、その長さに沿って変動し得る。
【0034】
図2に更に示すように、細長中央本体102は、長手方向軸Lを横切る方向(例えば、Z方向)に延在する幅Wを有する。細長中央本体102の最大幅は、細長中央本体102の前面及び後面110a、110bとの間の最大距離である。図示された実施形態では、細長中央本体102の幅Wは、その長さに沿ってほぼ一定である(例えば、製造公差内で名目上同一である)。したがって、細長中央本体102の幅Wは、細長中央本体102の最大幅に等しい。他の実施形態では、細長中央本体102の幅は、その長さに沿って変動し得る。当業者であれば、細長中央本体の寸法(例えば、高さ、幅、及び長さ)は、少なくとも、意図されたインプラント部位及びそのような部位での患者の解剖学的構造(例えば、スペーサが自己固定される関節の解剖学的構造)に依存することを認識するであろう。
【0035】
スペーサ100はまた、細長中央本体102の第1及び第2の端部104a、104bからそれぞれ延在する第1及び第2の翼部112、114を含む。第1及び第2の翼部112、114は、様々な構成を有することができるが、図示された実施形態では、第1及び第2の翼部112、114は、実質的に円筒形状を有する。更に、第1の翼部及び第2の翼部112、114は、形状及びサイズがほぼ一定である(例えば、製造公差内で名目上同一である)。図示されるように、第1の翼部の高さは、(例えば、長手方向軸Lに沿ってX方向に延在する)長さに沿って変化する。したがって、第1の翼部112の最大高さHは、第1の翼部112の上面と下面116a、116bとの間の最大距離である。同様に、第2の翼部114の高さHは、(例えば、長手方向軸Lに沿ってX方向に延在する)長さに沿って変化する。したがって、第2の翼部114の最大高さHは、第2の翼部114の上面118aと下面118bとの間の最大距離である。第1及び第2の翼部112、114の最大高さH、Hは、この図示された実施形態では、互いに変動し得、第1の翼部112の最大高さHと第2の翼部114の最大高さHは実質的に等しい(例えば、製造公差内で名目上同一である)。更に、この図示の実施形態では、第1及び第2の翼部112、114は、その細長中央本体102の最大高さHよりも大きい最大高さH、Hを有する。その結果、スペーサ100は、実質的にドッグボーン形状である。
【0036】
図2に更に示すように、第1の翼部112は、長手方向軸Lを横切る方向(例えば、Z方向)に延在する幅Wを有する。第1の翼部112の最大幅は、第1の翼部112の最前面120aと最後面120bとの間の最大距離である。図示された実施形態では、第1の翼部112の幅Wは、その長さに沿ってほぼ一定である(例えば、製造公差内で名目上同一である)。したがって、第1の翼部112の幅Wは、第1の翼部112の最大幅に等しい。同様に、第2の翼部114は、長手方向軸Lを横切る方向(例えば、Z方向)に幅Wを有する。第2の翼部114の最大幅は、第2の翼部114の最前面122aと最後面122bとの間の最大距離である。図示された実施形態では、第2の翼部114の幅Wは、長さに沿ってほぼ一定である(例えば、製造公差内で名目上同一である)。したがって、第2の翼部114の幅Wは、第2の翼部114の最大幅に等しい。当業者であれば、第1の翼部と第2の翼部の寸法(例えば、高さ、幅、及び長さ)は、少なくとも、意図されたインプラント部位及びそのような部位での患者の解剖学的構造(例えば、スペーサが自己固定される関節の解剖学的構造)に依存することを認識するであろう。
【0037】
図3は、スペーサ200であるインプラントの例示的な一実施形態を示す。スペーサ200は、関節(例えば、肩関節)内に植え込まれるように構成されており、植え込まれると、スペーサ200は、解剖学的構造の一部と係合し、それによって自己固定するように構成されている。スペーサ200は、収縮状態と膨張状態とで構成可能であるが、スペーサ200は、膨張状態で示されている。以下に詳細に記載される相違点以外に、スペーサ200は、スペーサ100(図1及び2)と同様であってよく、したがって、共通の特徴は本明細書で詳細には説明しない。
【0038】
スペーサ200は、第1の端部204aから第2の端部204bまで延在する細長中央本体202を含み、長手方向軸Lが両端部間に延在する。細長中央本体202は、長手方向軸Lを横切る方向(例えば、Y方向)に延在する高さを有する。図示されるように、細長中央本体202の高さは、(例えば、長手方向軸Lに沿ってX方向に延在する)長さに沿って変化する。したがって、細長中央本体202の第1の最大高さHは、細長中央本体202の最上面208aと最下面208bとの間の最大距離である。当業者であれば、細長中央本体の寸法(例えば、高さ、幅、及び長さ)が、少なくとも意図される植え込み部位及び患者の解剖学的構造に依存することを認識するであろう。
【0039】
スペーサ200はまた、細長中央本体202の第1及び第2の端部204a、204bからそれぞれ延在する第1及び第2の翼部212、214を含む。第1及び第2の翼部212、214は、様々な構成を有することができるが、第1及び第2の翼部212、214の各々は、細長中央本体202の最大高さHよりも大きい最大高さH、Hを有する。その結果、スペーサ200は、実質的にドッグボーン形状である。
【0040】
図示されるように、第1の翼部212の高さは、(例えば、長手方向軸Lに沿ってX方向に延在する)長さに沿って変化する。したがって、第1の翼部212の最大高さHは、第1の翼部212の最上面216aと最下面216bとの間の最大距離である。同様に、第2の翼部214の高さは、(例えば、長手方向軸Lに沿ってX方向に延在する)長さに沿って変化する。したがって、第2の翼部214の最大高さHは、第2の翼部214の最上面218aと最下面218bとの間の最大距離である。第1の翼部212と第2の翼部214の最大高さH、Hは、この図示の実施形態では、互いに対して変化し得るが、第1の翼部212の最大高さHは第2の翼部214の最大高さHよりも大きい。他の実施形態では、第1の翼部212の最大高さは、第2の翼部214の最大高さ未満であり得る。更に他の実施形態では、第1の翼部212及び/又は第2の翼部214の高さは、それぞれに長さに沿ってほぼ一定であり得る(例えば、製造公差内で名目上同一である)。当業者であれば、第1及び第2の翼部の寸法(例えば、高さ、幅、及び長さ)が、少なくとも意図される植え込み部位及び患者の解剖学的構造に依存することを認識するであろう。
【0041】
図4及び図5は、肩関節250の肩峰下空間252内、よって、肩峰260と上腕骨270との間に植え込まれたスペーサ200を示す。図示されるように、スペーサ200が収縮状態で植え込まれ、続いて膨張状態に膨張すると、細長中央本体202は、肩峰260の下方で、かつ上腕骨270の上方で延在している。更に、第1の翼部212の部分220(例えば、上部)は、第1の翼部212の部分220が肩峰260の最深面262の上方で延在するように、上向きに、かつ細長中央本体202の長手方向軸Lから離れるように湾曲している。したがって、スペーサ200は、肩峰260を部分的に取り囲む。結果として、第1の翼部212は、この実施形態では肩峰260である解剖学的構造の一部と機械的に噛み合い得る。すなわち、第1の翼部212は、スペーサ200自体と肩峰260の骨構造との間の係合が、スペーサ200を肩関節250に自己固定することを可能にするように成形されている。したがって、スペーサ200の位置が維持され得、スペーサ200が移動を阻止され得る。
【0042】
特定の実施形態では、例えば、図4に示すように、第2の翼部214の部分222(例えば、底部)は、下方に、かつ細長中央本体202の長手方向軸Lから離れるように湾曲され得る。したがって、第2の翼部214の部分222は、スペーサ200が肩関節250に自己固定するのを更に助けるように、上腕骨270に係合し得る。
【0043】
代替的に又は追加的に、第2の翼部の一部(例えば、上部)が、スペーサが植え込まれ、膨張状態にあるときに、第2の翼部のその部分が肩峰の最深面の上方に延在するように、上向きに、かつ細長中央本体の長手方向軸から離れるように湾曲され得る。これにより、第2の翼部が解剖学的構造の一部と機械的に噛み合うことが可能になる。
【0044】
他の実施形態では、第1の翼部及び第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が、上向きに、かつ細長中央本体の長手方向軸から離れるように湾曲することで、スペーサが植え込まれて、膨張状態にあるときに、第1の翼部及び第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が肩峰の最外面と面一に、又はその上方で延在するように構成されている。例えば、図6に示すように、スペーサ200’は、肩関節250’の肩峰下空間252’内、したがって肩峰260’と上腕骨270’との間に植え込まれる。スペーサ200’は、第1の翼部212’の部分220’が、肩峰260’の最上面264の上方で延在するように、第1の翼部212’の部分222’が上向きに、かつ長手方向軸L’から離れるように更に湾曲していることを除いて、図3図5のスペーサ200と同様である。
【0045】
いくつかの実施形態では、スペーサはU字形であり得、その結果、関節内に植え込まれると、細長中央本体が肩峰の下に延び、第1の翼部が肩峰の一方の側に位置付けられ、第2の翼部が肩峰の他方の側に位置付けられる。したがって、スペーサは、肩峰を部分的に取り囲むことができる。第1及び第2の翼部は、様々な構成を有し得るが、第1及び第2の翼部は各々、細長中央本体の高さよりも大きい高さを有し得る。したがって、細長中央本体は、第1及び第2の翼部に対して高さが小さい。更に、第1及び第2の翼部は各々、異なる幅及び/又は高さを有し得、第1の翼部の幅及び/又は高さは、第2の翼部の幅及び/又は高さよりも小さい。
【0046】
図7及び図8は、スペーサ300であるインプラントの別の実施形態を示す。スペーサは、第1の端部306aから第2の端部306bまで延在する中央セグメント304と、第1の端部306aから外向きに延在する第1の翼部308と、第2の端部306bから外向きに延在する第2の翼部310と、を含む細長外側本体302を有する。この図示された実施形態では、細長外側本体302はU字形であり、スペーサ300の内側部分312を画定する。図7に示すように、内側部分312の(例えば、Y方向に延在する)高さHは、細長外側本体302の最大高さH未満である。細長外側本体302の最大高さHは、最上面314aから最下面314bまで延在する。したがって、内側部分312は比較的薄く、スペーサ300が関節内、例えば、内部の肩峰下空間内に植え込まれるときに、内側部分312の少なくとも一部は肩峰の下に位置付けられ得る。更に、植え込まれると、第1の翼部308は、肩峰の片側に位置付けられ得、第2の翼部310は、肩峰の他方の側に位置付けられ得る。本明細書では、他の実施形態では、内側部分は部分的又は完全に省略され得ることも企図される。
【0047】
図9は、スペーサ400であるインプラントの別の実施形態を示す。スペーサ400は、肩関節402内の肩峰404と上腕骨406との間に植え込まれる。スペーサ400は、図7及び図8のスペーサ300と実質的に同様であり、したがって、共通の特徴は、本明細書で詳細に説明しない。図示されるように、第1の翼部408(部分的に閉塞されている)は、肩峰404の一方の側に位置付けられ、第2の翼部410(部分的に閉塞されている)は、肩峰404の他方の側に位置付けられ、内側部分412の大部分は、肩峰404の下方に位置付けられる。
【0048】
上述したように、本スペーサは、筋肉が機能不全であり得るか、又は不十分な強度しか有していない場合に、筋肉の生体力学を変更するように設計され得る(図10を参照)。そのような例では、本明細書に開示されるスペーサは、筋肉増強のために使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、収縮状態のスペーサ(例えば、収縮したスペーサ)は、上腕骨と三角筋との間に位置付けられ得、次いで、位置決めされると、スペーサは、収縮状態から膨張状態(例えば、膨張したスペーサ)に膨張し得る(図11を参照)。結果として、インプラントは、延長を介してデルトイドを延伸させ、上腕骨頭の周りの筋肉の包囲を増加させて、関節窩上の凹部圧縮を増強し、腕の筋肉とアームの回転中心との間の距離を増加させる(例えば、筋肉のモーメントアームを増加させる)。更に、スペーサの膨張は、スペーサが、上腕骨に貫入することなく、上腕骨と筋肉との間で自己固定することを可能にし得る。特定の実施形態では、スペーサは、上腕骨の横に位置付けられ得る。
【0049】
図10は、弱い/機能不全の三角筋502を示し、図11は、膨張状態にあるスペーサ500の例示的な実施形態を使用した三角筋機能の増強を概略的に示す。図示されるように、スペーサ500は、三角筋502と上腕骨504との間に位置付けられる。その結果、スペーサ500は、三角筋502を延伸し、上腕骨504の上腕骨頭504aの周りの圧縮を増加させる。更に、図11に示すように、スペーサ500は、上腕骨504へのいかなる貫入もなく、スペーサ500が三角筋502と上腕骨504との間を自己固定することを可能にするような構造である。この図示された実施形態では、スペーサ500は、上腕骨504の側面510の上部508の形状に沿って形状に一致して延びる最外の第1の表面506と、三角筋502の上部514に沿って延びる凸形状を有する最外の第2の表面512と、を有する細長楕円形状である。図示されるように、植え込まれると、スペーサ500の最外の第1の表面506は上腕骨504と係合し、最外の第2の表面512は三角筋502と係合し、それによってスペーサ500が両者の間で自己固定することを可能にする。スペーサ500は三角筋に関して図示されているが、他の実施形態では、スペーサは、肩甲下筋、棘下筋膜、広背筋、及び大胸筋などの他の肩筋を増強するために使用され得る。
【0050】
特定の実施形態では、本スペーサは、筋肉間(例えば、筋間植え込み)又は筋繊維間(例えば、筋内植え込み)に位置付けられて、筋機能を改善するように筋肉(複数可)又は筋繊維を増強するように設計され得る。例えば、一実施形態では、収縮状態のスペーサ(例えば、収縮したスペーサ)は、筋肉の部分の間位置付けられ得、次いで、位置決めされると、スペーサは、収縮状態から膨張状態(例えば、膨張したスペーサ)に膨張し得る。結果として、インプラントは、筋肉の収縮の結果に影響を与えるように、筋繊維の部分を互いに離れるように局所的に方向を変更し得る。更に、スペーサの膨張は、スペーサが筋肉内で自己固定することを可能にし得る。
【0051】
更に、特定の実施形態では、肩痛は多因性であり得、異なる時間に別々に起こり得る(例えば、睡眠中の疼痛や日中の活動に関連する疼痛)。したがって、複数のスペーサが、肩関節(複数可)又はその周りの異なるそれぞれの戦略的位置に配置され得、各スペーサは、ショルダーを安定させて特定の活動(例えば、睡眠と日中の活動、横向きと仰向け、及び座位活動と立位活動)に対処するように構成することができる。例えば、肩峰下のスペーサ(例えば、肩峰下空間内に位置付けられたスペーサ)が日々の又はリハビリテーション活動中の患者に恩恵をもたらし得る一方、上腕骨頭の後部支持スペーサ(例えば、上腕骨頭の後側に位置付けられたスペーサ)は睡眠中の疼痛を軽減し得る。したがって、多因性肩痛に同時に対処することができるインプラントシステムが開発されてきた。
【0052】
概して、インプラントシステムは、それぞれが内部に画定された少なくとも1つの膨張可能なチャンバを有する少なくとも2つのスペーサと、膨張可能なチャンバ間に延在する流体通路と、流体通路内に位置付けられたバルブと、を含み得る。膨張可能なチャンバは、流体通路を介して互いに流体連通しているため、チャンバのそれぞれの容積は、選択的に互いに対して調整されて(例えば、例えばコントローラ及びソフトウェアを介して自動調整されて)、異なるチャンバ構成を可能にする(例えば、収縮又は膨張位置)。これらの異なる構成は、肩関節の位置に基づき得る。したがって、所与の膨張可能なチャンバの容積は、特定の活動に基づいて選択され得、適切な容積は、肩関節を安定させ、それにより、上記の活動中に疼痛を軽減するように調整される。
【0053】
植え込まれると、患者の肩関節の異なる位置、よって特定の活動について、(例えば、医療提供者によって)較正プロファイルが作成され得る。これらの較正プロファイルを使用して、スペーサの膨張可能なチャンバ間の流体移送、ひいては加圧を調節し得る。当業者であれば、それぞれの膨張可能なチャンバ内及び外への流体移送が、それぞれの膨張可能なチャンバ内の圧力の変化をもたらすことを理解するであろう。すなわち、膨張可能なチャンバ内への流体移送は、膨張可能なチャンバを増大させ、ひいては加圧する一方、膨張可能なチャンバ外への流体移送は、膨張可能なチャンバを低減させ、ひいては減圧させる。
【0054】
特定の実施形態では、膨張可能なチャンバは、本体の外側に位置する受信機と無線で通信するように構成された1つ以上の圧力センサを含み得る。較正プロファイルは受信機上で維持され、1つ以上の圧力センサ、バルブ(複数可)、及び存在する場合、任意のポンプを含む圧力フィードバック制御システムの状況では、設定点として採用され得る。これらの設定点は、それぞれの特定の肩位置、したがって、睡眠又は日中又はリハビリテーション活動などのそれぞれの特定の活動と関連付けられ得る。代替的に、較正セッション中、医療提供者と相談する患者は、それぞれの活動中の安定化及び疼痛の緩和にとって適正に「感じる」膨張可能なチャンバの圧力を決定することができる。したがって、患者は、その記憶に頼ることができ、よって、個々の膨張可能なチャンバ間の流体移送を手動で制御することができる。流体移送、及びそれによる圧力調整は、自動的に(例えば、1つ以上の圧力センサ及び自動ポンプ及び/又はバルブを使用することによって)、又は手動で(自動化された方法で実行することができる(例えば、患者の肩若しくは上腕の動き、及び/又は患者のバルブ若しくはポンプの作動によって)実行され得る。したがって、疼痛向けの膨張可能なチャンバの膨張スキームは、疼痛の緩和が達成されるまで、膨張可能なチャンバを加圧及び減圧することによって容易に調整され得る。
【0055】
インプラントシステムが弱い又は機能不全の肩筋を有する患者に植え込まれる場合、医療提供者は、身体検査及び予想される活動に基づいて適切な膨張圧力を較正し得る。膨張プロファイルは、リモート受信機に保存され得るか、又はプロファイルは、患者が再現するために提供され得る。使用中、膨張可能なチャンバの流体移送は、インプラントシステムのそれぞれのバルブ及び存在する場合、ポンプを作動させることによって、膨張可能なチャンバの圧力を、活動に適した適切なプロファイルに調整するように調節され得る。
【0056】
インプラントシステムが、前方不安定性、後方不安定性、及び/又は腕の外転欠陥などの複数の問題を有する患者に植え込まれる場合、医療提供者は、それらの問題に対処するための異なる圧力プロファイルを練り上げるのを助け、それらのプロファイルをリモート受信機に保存し得る。使用中、患者が不快な位置又は活動を経験する場合、インプラントシステムのバルブ及び存在する場合、ポンプを作動させて、適切な圧力プロファイルを回復し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、インプラントシステムは皮下に植え込み得る。そのような実施形態では、バルブは、皮膚にわたって指圧を加えることによって開放させることができる機械的バルブであり得る。他の実施形態では、バルブは、水頭症バルブの様式と同様に、皮膚にわたって磁気的に作動させ得る。水頭症バルブの追加の詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,591,499号に見出し得る。更に他の実施形態では、バルブは、圧力制限ダックビル型バルブであり得、膨張可能なチャンバが膨張し、加圧されると、バルブは所定の圧力で開口する。このタイプのバルブはまた、リリーフバルブとして作用することによって、膨張可能なチャンバの不注意な過圧を防止し得る。バルブが開放した状態で、一実施形態では、患者は腕を動かして、スペーサの膨張可能なチャンバ間の流体移送を誘発し、次いで所望の構成が得られるとバルブを閉鎖し得る。
【0058】
図12は、内部に画定された第1の膨張可能なチャンバ604を有する第1のスペーサ602と、内部に画定された第2の膨張可能なチャンバ608を有する第2のスペーサ606と、第1及び第2の膨張可能なチャンバ604、608の間に延在する流体通路610と、流体通路610内に位置付けられたバルブ612と、を有するインプラントシステム600の例示的な実施形態を示す。第1及び第2の膨張可能なチャンバ604、608は各々、それぞれの容積間を可逆的に移行するように構成されている。例えば、第1の膨張可能なチャンバ604は、第1の容積と第2の容積との間を可逆的に移行するように構成することができ、第2の膨張可能なチャンバ608は、第3の容積と第4の容積との間を可逆的に移行するように構成することができる。第1の膨張可能なチャンバ604と第2の膨張可能なチャンバ608との間の容積移行は、バルブ612が開放位置(例えば、第2の状態)であるときに行われ得る。更に、図示されるように、第1及び第2の膨張可能なチャンバ604、608は、互いに異なる形状を有するが、他の実施形態では、第1及び第2の膨張可能なチャンバ604、608は、ほぼ均一な形状を有し得る(例えば、製造公差内で名目上同一である)。当業者であれば、第1及び第2の膨張可能なチャンバの寸法及び形状が、少なくとも植え込み部位及び患者の解剖学的構造に依存することを理解するであろう。
【0059】
バルブ612は、内部に画定されたバルブチャンバ616を有するバルブ本体614と、チャネル618aがそこを通って延在するバルブチャンバ616内に配置されたプラグ618と、プラグ618に結合されたアクチュエータ620と、を含む。特定の実施形態では、バルブ612は、付勢要素(図示せず)を介して閉鎖位置(例えば、第1の状態)へと付勢され得る。使用時、バルブ612が閉鎖位置にあるとき(図12を参照)、プラグ618のチャネル618aは流体通路610とずれているため、第1及び第2の膨張可能なチャンバ604、608間の流体移送が阻止される。したがって、第1及び第2の膨張可能なチャンバ604、608のそれぞれの容積間の移行は実質的に防止される。
【0060】
更に、バルブ612は、バルブ612のアクチュエータ620の作動を介して、閉鎖位置(例えば、第1の状態)から開放位置(例えば、第2の状態)へ移行し得る。アクチュエータ620が(例えば、手動で、例えば患者による指若しくは手の圧力によって、又はコントローラ及び/又はソフトウェアを介して自動的に)作動されると、アクチュエータ620は、プラグ618を下向きに(例えばY方向に)並進させて、プラグ618のチャネル618aを流体通路610と少なくとも部分的に整合させるように構成されている。この整合により、1つ以上の充填材料がバルブ612を通過する、よって、流体通路610を通過することを可能にする。したがって、バルブ612が開放位置にあるとき、チャネル618aは、流体通路610の一部を形成する。流体通路610は、第1の膨張可能なチャンバ604と第2の膨張可能なチャンバ608との間に延在するため、バルブ612が開放位置にあるとき、第1の膨張可能なチャンバ604と第2の膨張可能なチャンバ608との間で流体移送が生じ得る(図13及び図14を参照)。この流体移送は、関節(例えば、肩関節)の位置、及びそれによる特定の活動(例えば、睡眠又は日中の活動)に基づき得る。
【0061】
特定の実施形態では、1つ以上の充填材料は、植え込み前、膨張可能なチャンバのうちの少なくとも1つに存在し得る。例えば、この実施形態では、1つ以上の充填材料は、第1の膨張可能なチャンバ604及び第2の膨張可能なチャンバ608内に存在する。以下でより詳細に説明するように、使用時、患者が不快な位置又は活動を経験したときに、スペーサ602、606の構成が変化することによって関節に望ましい支持をもたらすように、この流体は第1及び第2の膨張可能なチャンバ604、608間を移動する。
【0062】
図13及び図14は、関節700の第1の空間702内に位置付けられている第1のスペーサ602と、関節700の第2の空間704内に位置付けられている第2のスペーサ606と、を示す。この図示された実施形態では、関節700は肩関節である。簡略化のために、肩関節の肩甲骨のみが図13及び図14に示されている。当業者によれば、本インプラントシステムが他の関節(例えば、膝の膝蓋骨-大腿骨及び/又は脛骨-大腿骨区画、腰の大腿骨-寛骨臼関節、足首の距骨-踝関節、及び/又はその他の関節)で使用されるように構成され得、したがって、本インプラントシステムは、図示される関節又は関節内空間に限定されないことを理解するであろう。
【0063】
この図示された実施形態では、第1のスペーサ602は、上腕骨頭(図示せず)よりも上方、したがって、肩峰706と上腕骨頭との間に位置付けられるように構成されている。すなわち、第1の空間702は、肩峰下空間である。第2のスペーサ606は、上腕骨頭(図示せず)の後方に位置付けられるように構成されている。使用中、バルブ612は、閉鎖位置(図12を参照)から開放位置(図13及び図14を参照)へ移動され得る。図示されていないが、インプラントシステム600は、皮下に植え込むことができ、したがって、バルブ612のアクチュエータ620は、バルブ612が閉鎖位置から開放位置に移動するように、例えば、患者が皮膚にわたって指圧を加えてアクチュエータ620を並進させることによって作動され得る。更に、バルブ612が開放しているとき、流体移送及び流体流の方向は、患者の腕又は肩の操作によって誘発され得る。閉鎖位置と開放位置との間でバルブを移動させるための(例えば、手動又は自動の)他の好適な機構は、上記で説明されている。
【0064】
肩関節の位置、及びそれによる特定の活動に応じて、バルブ612が開放位置にあるときには、流体移送が、第1の膨張可能なチャンバ604と第2の膨張可能なチャンバ608との間で行われ得る。例えば、睡眠活動のために、図13に示すように、バルブ612が閉鎖位置から開放位置に移動すると、流体流の方向D1は、第1の膨張可能なチャンバ604から第2の膨張可能なチャンバ608までであり、その結果、第2の膨張可能なチャンバ608が膨張して(例えば、第2の膨張可能なチャンバ608が、第1の容積から第1の容積よりも大きい第2の容積に移動して)、(例えば、患者が仰向けになっているときに上腕骨頭を前方又は腹側に押すことによって)上腕骨に望ましい量の後方支持を提供し、睡眠中の患者の疼痛を最小限に抑える。更に、この流体流の方向D1は、第1の膨張可能なチャンバ604を収縮させる(例えば、第1の膨張可能なチャンバ604は、第1の容積から第1の容積よりも小さい第2の容積に移行する)。しかしながら、この構成は、他の活動には好適ではない場合がある。
【0065】
例えば、図14に示されるように、日々の又はリハビリテーション活動のために、バルブ612が閉鎖位置から開放位置に移動すると、流体流の方向D2(例えば、D1と反対の方向)は第2の膨張可能なチャンバ608から第1の膨張可能なチャンバ604までであり、その結果、第1の膨張可能なチャンバ604が膨張して(例えば、第1の膨張可能なチャンバ604が、第1の容積から第1の容積よりも大きい第2の容積に移行して)、(例えば、上腕骨頭を下向きに圧縮することによって)移動して肩峰下空間を維持する際に望ましい量の支持を提供し、(例えば、上腕骨頭を下向きに圧縮することによって)日々の又はリハビリテーション活動中の患者の疼痛を最小限に抑える。更に、この流体流の方向D2は、第2の膨張可能なチャンバ608を収縮させる(例えば、第2の膨張可能なチャンバ608は、第1の容積から第1の容積よりも小さい第2の容積に移行する)。したがって、第1の膨張可能なチャンバ604と第2の膨張可能なチャンバ608との間の流体移送を使用して、患者の疼痛を最小限に抑えるか又は軽減するように、異なる肩位置及び活動に適したスペーサ構成、及びそれによる圧力プロファイルを生成することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、インプラントシステムはまた、流体通路と流体連通している(例えば、手動又は自動の)少なくとも1つのポンプを含み得る。少なくとも1つのポンプは、バルブが開放位置にあるときに(例えば、第2の状態)、第1の膨張可能なチャンバと第2の膨張可能なチャンバとの間で流体流を駆動する(例えば、流体移送を誘導する)ように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、流体移送は、プライマ球状ポンプなどの皮膚にわたって手圧によって操作される植え込み可能なポンプを使用して実行され得る。そのような実施形態では、多位置バルブを使用して、流れの方向を制御し得る。更に別の実施形態では、インプラントシステムが比較的短期間必要とされる場合、膨張可能なチャンバは、管を介して経皮的にアクセスされ得、流体交換機構(例えば、ポンプ(複数可)及びバルブ(複数可)は、本体の外側に保持され、患者によって直接アクセス可能である。この構成は、インプラントシステム設計においてより高い柔軟性を可能にし得る。例えば、流体移送は、変位又は注射器ポンプを介して直接管理され得、バルブは、必要とされない場合がある。代替的に又は追加的に、少なくとも1つのポンプは、バルブに動作可能に結合され得、少なくともスペーサの植え込みの前、同時に、又はその後に1つ以上の充填材料をインプラントシステムに圧送するように構成され得る。
【0067】
図15A及び図15Bは、3つのスペーサ802、806、810と、主流体通路814と、主バルブ818と、3つのチャンババルブ820、822、824と、2つのチャンバ間バルブ826、828と、を有するインプラントシステム800の別の実施形態を示す。図15Aは、(例えば、関節、例えば、肩関節に対する植え込み及び/又は除去のために)収縮状態にある3つのスペーサの各々を示す。図15Bは、(例えば、関節内への植え込み後の)膨張状態の3つのスペーサ802、806、810の各々を示す。
【0068】
図15Bにより詳細に示されるように、第1のスペーサ802は、第1の膨張可能なチャンバ804を有し、第2のスペーサ806は、第2の膨張可能なチャンバ808を有し、第3のスペーサ810は、第3の膨張可能なチャンバ812を有する。第1の膨張可能なチャンバ804及び第2の膨張可能なチャンバ808は、それらの間に延在する第1の流体通路830を介して互いに流体連通している。第1のチャンバ間バルブ826は、第1の流体通路830内に位置付けられ、閉鎖位置(例えば、第1の状態)と開放位置(例えば、第2の状態)の間を移動するように構成されている。第1のチャンバ間バルブ826が概して図示されているが、第1及び第2の膨張可能なチャンバ804、808の間の流体移送を制御するように構成された任意の好適なバルブが使用され得る。
【0069】
更に、第2の膨張可能なチャンバ808及び第3の膨張可能なチャンバ812は、それらの間に延在する第2の流体通路832を介して互いに流体連通している。第2のチャンバ間バルブ828は、第2の流体通路832内に位置付けられ、閉鎖位置(例えば、第3の状態)と開放位置(例えば、第4の状態)の間を移動するように構成されている。第2のチャンバ間バルブ828が概して図示されているが、第2及び第3の膨張可能なチャンバ808、812の間の流体移送を制御するように構成された任意の好適なバルブが使用され得る。
【0070】
主流体通路814は、中央管腔816及び3つの分岐管腔816a、816b、816cを含む。第1の分岐管腔816aは、中央管腔816と第1の膨張可能なチャンバ804との間に延在し、第2の分岐管腔816bは、中央管腔816と第2の膨張可能なチャンバ808との間に延在し、第3の分岐管腔816cは、中央管腔816と第3の膨張可能なチャンバ812との間に延在する。更に、3つのチャンババルブ820、822、824のうちの1つのチャンババルブは、対応する1つの分岐管腔内に位置付けられる。3つのチャンババルブ820、822、824が各々、概して図示されているが、中央管腔816とそれぞれの膨張可能なチャンバ804、808、812との間の流体移送を制御するように構成され得る任意の好適なバルブが使用され得る。
【0071】
この図示された実施形態では、第1のチャンババルブ820は、第1の分岐管腔816a内に位置付けられ、第2のチャンババルブ822は、第2の分岐管腔816b内に位置付けられ、第3のチャンババルブ824は、第3の分岐管腔816c内に位置付けられる。したがって、各チャンババルブ820、822、824cは、中央管腔816からそれぞれの膨張可能なチャンバ804、808、812への流体移送を制御するように構成されている(例えば、閉鎖位置(例えば、第5の状態)と開放位置(例えば、第6の状態)との間を移行する)。これにより、膨張可能なチャンバ804、808、812は、異なる肩位置、したがって特定の活動のための異なる膨張及び収縮スキームを有することができる。例えば、膨張可能なチャンバ804、808、812は各々、個々に及び別々に膨張又は収縮され得、膨張可能なチャンバ804、808、812は、同時に膨張又は収縮され得、膨張可能なチャンバのうちの2つは、同時に膨張又は収縮され得、残りの膨張可能なチャンバは個々に及び別々に膨張又は収縮され得、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。したがって、肩位置、ひいては特定の活動に応じて、第1の膨張可能なチャンバ804、第2の膨張可能なチャンバ808、及び/又は第3の膨張可能なチャンバ812は、閉鎖位置から開放位置に、又はその逆に移行して、第1のスペーサ802、第2のスペーサ806、及び/又は第3のスペーサ810の所望の構成を生成するのを支援し得る。
【0072】
図15A及び図15Bに更に示されるように、主バルブ818は、中央管腔816の第1の端部817(例えば、端部は、膨張可能な部材から最も離れた端部)に位置付けられ、閉鎖位置(例えば、第7の状態)と開放位置(例えば、第8の位置)の間で移動するように構成されている。主バルブ818が概して図示されているが、中央管腔816への流体移送を制御するように構成され得る任意の好適なバルブが使用され得る。
【0073】
使用時、いったんインプラントシステム800が植え込まれ、主バルブ818が開放位置にあり、流体移送機構(例えば、ポンプ)に動作可能に接続されると、1つ以上の充填材料が中央管腔816に注入され得る。チャンババルブ820、822、824の位置(例えば、開放位置)に応じて、第1の膨張可能なチャンバ804、第2の膨張可能なチャンバ808、及び/又は第3の膨張可能なチャンバ812を膨張させ得る。更に、いったん第1の膨張可能なチャンバ804、第2の膨張可能なチャンバ808、及び/又は第3の膨張可能なチャンバ812が、チャンバ間バルブ826、828の位置(例えば、開放位置)に応じて、1つ以上の充填材料の注入を介して膨張すると、第1の膨張可能なチャンバ804第2の膨張可能なチャンバ808、及び/又は第3の膨張可能なチャンバ812間の流体移送が起こり得る。同様に、流体移送機構と組み合わせた主バルブ818を使用して、1つ以上の充填材料の少なくとも一部を除去することによって、(例えば、インプラントシステム800を患者から取り外す目的で)第1の膨張可能なチャンバ804、第2の膨張可能なチャンバ808、及び/又は第3の膨張可能なチャンバ812を収縮させ得る。
【0074】
図16A図17A、及び図18Aは各々、関節900の左上腕骨901及び肩甲骨903を有する肩関節の解剖学的環境を示す。図16B図17B、及び図18Bは、関節900の第1の空間906内に位置付けられている第1のスペーサ802と、関節900の第2の空間908と共に位置付けられている第2のスペーサ806と、関節900の第3の空間910内に位置付けられている第3のスペーサ810と、を示す。第1のスペーサ802は、上腕骨頭部902の後方に位置付けられるように構成され、第2のスペーサ806は、上腕骨頭902の上方(例えば、上腕骨頭902と肩峰904との間)に位置付けられるように構成され間に、第3のスペーサ810は、上腕骨頭902の前方に位置付けられるように構成されている。その結果、第1の膨張可能なチャンバ804、第2の膨張可能なチャンバ808、及び第3の膨張可能なチャンバ812の組み合わせは、肩甲骨903に対する上腕骨901の望ましくない後方、上方、及び/又は前方の位置決めに抵抗し得るか、又はその位置決めを排除し得る。当業者によれば、本インプラントシステムが他の関節(例えば、膝の膝蓋骨-大腿骨及び/又は脛骨-大腿骨区画、腰の大腿骨-寛骨臼関節、足首の距骨-踝関節、及び/又はその他の関節)で使用されるように構成され得、したがって、本インプラントシステムは、図示される関節又は関節内空間に限定されないことを理解するであろう。
【0075】
本開示においては、実施形態の同様の名称の構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の名称の各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。加えて、直線状又は円形の寸法が開示された装置、インプラント、インプラントシステム、及び方法の説明で使用される限りにおいて、このような寸法は、このようなインプラント、インプラントシステム、及び方法と共に使用され得る形状のタイプを限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。インプラント及びインプラントシステム、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、インプラント及びインプラントシステムが内部で用いられる対象の解剖学的構造、インプラント及びインプラントシステムが一緒に用いられる構成要素のサイズ及び形状、並びにインプラント及びインプラントシステムが用いられる方法及び手順に依存し得る。
【0076】
値又は範囲は、本明細書では、「約」及び/又は「約」1つの特定の値から別の特定の値までとして表すことができる。そのように値又は範囲が表される場合、開示される他の実施形態は、列挙された特定の値、及び/又は1つの特定の値から別の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用によって値が近似の形式で表現された場合、開示される多くの値が列挙され、その特定値により別の実施形態が形成されることが理解されるであろう。開示される多くの値が存在し、各値は、本明細書においては、その特定の値自体に加えて「約」が付く値として開示されることも更に理解されるであろう。一部の実施形態では、「約」は、例えば、列挙された値の10%以内、列挙された値の5%以内、又は列挙された値の2%以内を意味するために使用され得る。
【0077】
本教示を説明及び定義する目的で、別途記載のない限り、用語「実質的に」は、本明細書では、任意の定量的な比較、値、測定、又は他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために利用されることに留意されたい。用語「実質的に」はまた、本明細書では、定量的表現が、問題の対象物の基本的機能の変化をもたらすことなく、記述された基準から変化し得る程度を表すためにも利用される。
【0078】
当業者には、上で説明される実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明された内容により限定されるものではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。参照によって全体又は一部が本明細書に組み込まれるとされる任意の特許、公開又は情報は、組み込まれる資料は、この文書に記載されている既存の定義、記述、又は他の開示資料と矛盾しない程度のみである。したがって、本明細書に明確に示した開示内容は、本明細書に援用されるいかなる矛盾する文献にも優先するものとする。
【0079】
〔実施の態様〕
(1) インプラントであって、
関節内に植え込まれるように構成されたスペーサを備え、前記スペーサが収縮状態と膨張状態とで構成可能であり、前記スペーサが、
第1の端部から第2の端部まで延在する細長中央本体であって、前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する長手方向軸を有し、前記長手方向軸を横切る方向に第1の最大高さを有する、細長中央本体と、
前記細長中央本体の前記第1の端部及び前記第2の端部からそれぞれ延在する第1の翼部及び第2の翼部であって、前記第1の翼部及び前記第2の翼部の各々が、前記第1の最大高さよりも大きい最大高さを有する、第1の翼部及び第2の翼部と、
を有し、
植え込まれて、前記膨張状態にあるとき、前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの少なくとも一方が、解剖学的構造の一部と機械的に噛み合い、それによって前記スペーサを前記関節に自己固定し、前記スペーサの移動を抑制するように構成されている、インプラント。
(2) 前記関節が肩関節であり、前記スペーサが前記肩関節の肩峰と上腕骨との間に植え込まれるように構成されており、前記膨張状態にあるとき、前記スペーサが、前記肩峰を少なくとも部分的に取り囲むように構成されている、実施態様1に記載のインプラント。
(3) 前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が、上向きに、かつ前記細長中央本体の前記長手方向軸から離れるように湾曲することで、前記スペーサが植え込まれて、前記膨張状態にあるときに、前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの前記少なくとも一方の前記一部が前記肩峰の最深面の上方で延在するように構成されている、実施態様2に記載のインプラント。
(4) 前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの少なくとも一方の一部が、上向きに、かつ前記細長中央本体の前記長手方向軸から離れるように湾曲することで、前記スペーサが植え込まれて、前記膨張状態にあるときに、前記第1の翼部及び前記第2の翼部のうちの前記少なくとも一方の前記一部が前記肩峰の最外面と面一に、又はその上方で延在するように構成されている、実施態様2に記載のインプラント。
(5) 前記スペーサが実質的にU字形である、実施態様1に記載のインプラント。
【0080】
(6) 前記スペーサが、実質的にドッグボーン形状である、実施態様1に記載のインプラント。
(7) 前記スペーサの少なくとも1つの表面がテクスチャ加工され、それによって前記スペーサが植え込まれたときの前記スペーサの移動を更に抑制する、実施態様1に記載のインプラント。
(8) 前記スペーサが、内部に配置された少なくとも1つの薬剤を含み、前記スペーサが、前記スペーサが植え込まれている間に前記少なくとも1つの薬剤を放出するように構成されている、実施態様1に記載のインプラント。
(9) 前記スペーサが、膨張しているときに少なくとも1つの薬剤を受容するように構成され、前記スペーサが、前記スペーサが植え込まれている間に前記少なくとも1つの薬剤を放出するように構成されている、実施態様1に記載のインプラント。
(10) インプラントシステムであって、
関節の第1の空間内に位置付けられるように構成されている第1のスペーサであって、第1の容積と第2の容積との間を可逆的に移行するように構成された、内部に画定された第1の膨張可能なチャンバを有する、第1のスペーサと、
前記関節の第2の空間内に位置付けられるように構成されている第2のスペーサであって、第3の容積と第4の容積との間を可逆的に移行するように構成された、内部に画定された第2の膨張可能なチャンバを有する、第2のスペーサと、
前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間に延在する第1の流体通路と、
前記第1の流体通路内に位置付けられている第1のバルブであって、少なくとも第1の状態と前記第1の状態とは異なる第2の状態との間を移行するように構成されており、前記第1の状態が、前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間の流体移送を阻止して、それぞれの容積間の移行を防止し、前記第2の状態が、前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移行することができるように、前記関節の第1の位置に基づいて、第1の流体移送が前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間で行われることを可能にする、第1のバルブと、
を備える、インプラントシステム。
【0081】
(11) 前記流体通路と流体連通している少なくとも1つのポンプを更に備え、前記少なくとも1つのポンプが、前記少なくとも1つのバルブが前記第2の状態にあるときに、前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間の流体流を駆動するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記第1のバルブが、前記第1の膨張可能なチャンバ及び前記第2の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移行することができるように、前記肩関節の第2の位置に基づいて、前記第1の膨張可能なチャンバと前記第2の膨張可能なチャンバとの間の第2の反対の流体移送を促進するように構成されており、前記第2の位置が前記第1の位置と異なる、実施態様10に記載のシステム。
(13) 前記関節が肩関節であり、前記第1の空間が前記肩関節の上腕骨頭の後方にあり、前記第2の空間が前記上腕骨頭の上方又は前方にある、実施態様10に記載のシステム。
(14) 前記関節の第3の空間内に位置付けられるように構成されている第3のスペーサであって、第5の容積と第6の容積との間を可逆的に移行するように構成された、内部に画定された第3の膨張可能なチャンバを有する、第3のスペーサと、
前記第2の膨張可能なチャンバと前記第3の膨張可能なチャンバとの間に延在する第2の流体通路と、
前記第2の流体通路内に位置付けられている第2のバルブであって、少なくとも第3の状態と前記第3の状態とは異なる第4の状態との間を移行するように構成されており、前記第3の状態が、前記第2の膨張可能なチャンバと前記第3の膨張可能なチャンバとの間の流体移送を阻止して、それぞれの容積間の移行を防止し、前記第4の状態が、前記第2の膨張可能なチャンバと前記第3の膨張可能なチャンバがそれぞれの容積間を可逆的に移行することができるように、前記関節の前記第1の位置又は第3の位置のうちの少なくとも一方に基づいて、流体移送が前記第2の膨張可能なチャンバと前記第3の膨張可能なチャンバとの間で行われることを可能にする、第2のバルブと、
を更に備える、実施態様10に記載のシステム。
(15) 前記関節が前記肩関節であり、前記第1の空間が前記肩関節の上腕骨頭の後方にあり、前記第2の空間が前記上腕骨頭の上方にあり、前記第3の空間が前記上腕骨頭の前方にある、実施態様14に記載のシステム。
【0082】
(16) 中央管腔及び3つの分岐管腔を有する主流体通路を更に備え、前記第1の分岐管腔が、前記中央管腔と前記第1の膨張可能なチャンバとの間に延在し、前記第2の分岐管腔が、前記中央管腔と前記第2の膨張可能なチャンバとの間に延在し、前記第3の分岐管腔が、前記中央管腔と前記第3の膨張可能なチャンバとの間に延在する、実施態様14に記載のシステム。
(17) 前記第1の分岐管腔、前記第2の分岐管腔、及び前記第3の分岐管腔のうちの少なくとも1つの中に位置付けられた少なくとも1つの第3のバルブを更に備え、前記少なくとも1つの第3のバルブが、内部を通る流体移送を阻止する第5の状態と、内部に流体を通過させる第6の状態との間を移行するように構成されている、実施態様16に記載のシステム。
(18) 前記中央管腔の端部に位置付けられ、第7の状態と第8の状態との間を移行するように構成されている第4のバルブを更に備え、前記第8の状態において、前記第4のバルブが、前記少なくとも1つの第3のバルブが第6の状態にあるときに、前記第4のバルブを通る流体移送を可能にして、前記第1の膨張可能なチャンバ、前記第2の膨張可能なチャンバ、及び前記第3の膨張可能なチャンバのうちの少なくとも1つの膨張及び収縮の少なくとも一方を行うように構成されている、実施態様17に記載のシステム。
(19) 筋機能を生体力学的に増強するための方法であって、
上腕骨と筋肉との間に収縮状態のスペーサを植え込むことと、
前記スペーサが前記上腕骨に貫入せずに前記上腕骨と前記筋肉との間で自己固定し、前記筋肉を伸長させて、前記上腕骨の上腕骨頭の周りの圧縮を増加させることを可能にするように、前記スペーサを前記収縮状態から膨張状態へ膨張させることと、
を含む、方法。
(20) 前記スペーサが、前記上腕骨の横方向に位置付けられている、実施態様19に記載の方法。
図1
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図10
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図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
【外国語明細書】