(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171646
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ペルオキシダーゼの化学発光検出・定量・活性測定法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/532 20060101AFI20221104BHJP
G01N 21/76 20060101ALI20221104BHJP
C12Q 1/28 20060101ALN20221104BHJP
【FI】
G01N33/532 B
G01N21/76
C12Q1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022081164
(22)【出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021099761
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521260581
【氏名又は名称】一般社団法人京都光科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(72)【発明者】
【氏名】柄谷 肇
【テーマコード(参考)】
2G054
4B063
【Fターム(参考)】
2G054AA02
2G054AA06
2G054AB03
2G054AB04
2G054BA04
2G054BB10
2G054CA21
2G054CE03
2G054EA02
2G054EB03
2G054GB10
2G054JA07
2G054JA11
4B063QA01
4B063QQ22
4B063QR50
4B063QR66
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】本発明は、特別なエンハンサーの準備をせず、更なる高感度で検出できるペルオキシダーゼ検出・定量・活性測定方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ルミノール類と過酸化水素とを基質として用いるペルオキシダーゼ活性測定法において、疎水性的性質を生じる物質、例えば高濃度硫酸アンモニウムを溶かしたことを特徴とするペルオキシダーゼ検出・定量・活性測定方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミノール類と過酸化水素とを基質として用いるペルオキシダーゼ検出・定量・活性測定方法において、疎水性的性質を生じる物質を溶かしたことを特徴とするペルオキシダーゼ検出・定量・活性測定方法。
【請求項2】
疎水性的性質を生じる物質が硫酸アンモニウムである請求項1記載のペルオキシダーゼ検出・定量・活性測定方法。
【請求項3】
硫酸アンモニウムの濃度が3.0M~3.5Mである請求項2記載のペルオキシダーゼ検出・定量・活性測定方法。
【請求項4】
硫酸アンモニウムとともにEDTAを添加することを特徴とする請求項2乃至3記載のペルオキシダーゼ検出・定量・活性測定方法。
【請求項5】
ルミノール、過酸化水素、ペルオキシダーゼ、硫酸アンモニウムを含んでなる溶液であって、硫酸アンモニウムの濃度が3.0M~3.5Mであるペルオキシダーゼ検出・定量・活性測定溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルミノールを基質として用いたペルオキシダーゼの検出・定量・活性測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応を測定するには、抗原抗体結合体と未反応の抗原と抗体とを区別する必要がある。その手法として用いられるのが、抗原あるいは抗体に標識体を結合させ、反応後の標識体を検出することにより抗原あるいは抗体の量を測定する方法である。標識体としては、放射性同位元素、酵素、蛍光体、発光体、発色体、金属錯体、電気化学活性体などが知られている。酵素を標識剤として用いる方法には、ペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼを標識しておき、これに発色基質を用いて発色(吸光度変化)により定量できる。また、同じ標識酵素であっても発光基質や蛍光基質に変えることにより発光や蛍光を指標として測定する化学発光酵素免疫測定法(Chemiluminescence Enzyme Immunoassay:CLEIA)や蛍光酵素免疫測定法(Fluorescent Enzyme Immunoassay:FEIA)が開発されている。一方、温度変化などの影響を受けやすい酵素を用いずに化学発光を誘発する標識剤を用いる化学発光免疫測定法(Chemiluminescent Immunoassay:CLIA)がある。例えば、ルミノールやRu錯体が発光分子として用いられている。また電極を用いて所定の電圧を印加し、化学発光を誘発する電気化学発光免疫測定法(Electrochemiluminescent Immunoassay:ECLIA)もある。
これらは、いずれも感度が高い測定方法としてすでに実用化されている。
【0003】
上記測定方法においても、特にペルオキシダーゼを触媒とするルミノール系の化学発光がよく用いられている。ルミノールは、過酸化水素の存在下で中間体を経て発光種を生じ発光するが、この化学発光がエンハンサーであるp-ヨードフェノールなどp位に置換基を有するフェノール(p-置換フェノール)を加えることによって増強されることが発見(非特許文献1~4)されて以来、各種改良法がなされ、Enhanced Chemiluminescence(ECL)と呼ばれるようになった。ECLの特徴は以下の通りである。
弱塩基性水溶液中においてペルオキシダーゼと過酸化水素との反応で生じた2電子酸化状態のペルオキシダーゼ中間体とp-置換フェノール化合物の反応でp-ヨードフェノキシラジカルが効率よく生じる。生じたフェノキシラジカルは、ルミノールモノアニオンとして存在するルミノールと効率よく反応してルミノールジアザキノン中間体に転換され、ルミノールジアザキノン中間体は次に過剰の過酸化水素と反応し、いくつかの中間体を経由した後に最終産物である励起状態の3-アミノフタル酸を生成し、その緩和過程において発光する。このようにp-置換フェノール誘導体の作用によってルミノールの増発光が惹起される。即ち、ペルオキシダーゼの化学発光検出において、p-置換フェノール化合物が発光増強剤(エンハンサー)として有用な理由は、ペルオキシダーゼにより効率よく産生されたフェノキシラジカルが、発光反応の鍵中間体ルミノールジアザキノン中間体の生成を加速することによる。
【0004】
また、p-ヨードフェノールに代わる優れた増感剤も研究されている(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】B.B.Kim,et al.,Analytical Biochemistry,199,1-6(1991)
【非特許文献2】M.Kjalke,et al.,Biochim.Biophys.Acta,1992,Apr 17;1120(3):248-256.
【非特許文献3】G.H.Thorpe and L.J.Kricka,Methods in Enzymology 133,331-353(1986)
【非特許文献4】G.H.G.Thorpe,L.J.Kricka,et al.,Anal.Biochem.,145,96(1985)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-43447号公報
【特許文献2】特開平2-291299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらのエンハンサーを用いる化学発光法は、持続した発光が得られ、ある程度の高感度化が達成されたものの、特別なエンハンサーの準備が必要であり、微水溶性のエンハンサーを溶解するために有機溶媒も必要となる。また微量成分の測定には更なる感度が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、更なる高感度を求めて鋭意研究した結果、化学発光を利用し、ペルオキシダーゼ検出・定量するためルミノール類と過酸化水素とを基質として用いる方法において、水系反応であるルミノール反応に疎水性的性質を生じる物質を溶かし込むことにより感度が向上することを見い出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、水溶性でありながら添加することによって疎水性的性質を生じる物質が、過酸化水素による酵素ペルオキシダーゼ活性部位への配位反応並びに過酸化水素によるルミノールアザキノン中間体への求核置換反応を促進することを見出し、本発明になすに至ったのである。
本発明で用いる疎水性的性質を生じる物質としては、溶解すると、カチオンとしてアンモニウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオンなど、他方アニオンとして硫酸イオン、酢酸イオン、ヨウ化物イオン及び塩化物イオンをなどの塩析効果の強いイオン、即ちアンチカオトロピックイオンを生じる塩が好ましい。カチオンとしては特にアンモニウムの効果が大きく、アンモニウムイオンを含む塩類としては、例えば、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどを挙げることができる。他方、アニオンに着目すると、硫酸イオンを含む塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムを、酢酸イオンを含む塩としては、例えば、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウムを、塩化物イオンとしては、例えば、塩化アンモニウムや塩化ナトリウムを挙げることができる。これら物質のなかでも、特に硫酸アンモニウムが好ましい。
また、上述の無機塩類の他にもグリセリンやポリエチレングリコールなどミクロ疎性水環境を形成する物質を用いてもよい。
【0009】
硫酸アンモニウムを用いる場合、高濃度の硫酸アンモニウムが好ましく、濃度は、2.8M以上であって、好ましくは3.0~4.0M、更に好ましくは3~3.5Mである。溶解度の観点から3.5M近傍が実用的に適している。
また、本発明では、硫酸アンモニウムとともにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いることが好ましい。EDTAを溶存させることにより、バックグラウンド発光をほぼ完全に抑えることができる。添加するEDTAの量は、硫酸アンモニウムの濃度にもよるが、例えば、3.0~3.5Mの硫酸アンモニウムの場合、60.0ppm以上、5000ppm以下である。好ましくは、62.5ppm~500ppmである。
【0010】
本発明における化学発光測定方法は、酵素としてペルオキシダーゼを用いペルオキシダーゼの検出・定量・活性測定に化学発光基質、酸化剤及びアンチカオトロピックイオンを生じる塩類を用いるものであれば、測定対象、測定手法に特に制限はない。例えば、ペルオキシダーゼを標識酵素として用いる特異的結合反応系として、酵素免疫測定法の一抗体法、二抗体法、競合分析法、サンドイッチ分析法、ホモジーニアス分析法、ヘテロジーニアス分析法、ウエスタンブロット分析法、DNAプローブ法等の各種分析法に利用できる。
【0011】
本発明で用いられるペルオキシダーゼ(POD)は特に限定するものではないが、西洋ワサビ、微生物、牛乳、白血球などから抽出したペルオキシダーゼが挙げられる。これらのうち好ましいのは西洋ワサビのペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)である。また、ペルオキシダーゼは、遊離の状態であっても、免疫測定において用いられるような配位子(例えば、抗原、抗体、ハプテン、プロテインA、アビジン、ビオチンなど)と結合した複合体の状態であってもよい。
【0012】
本発明の方法において、PODの好適な使用量は、PODの量と化学発光量の関係が直線関係もしくは直線に近い関係となるのに必要な量である。PODの特に好適な使用量は、発光反応中にpM~nMの範囲の量で存在することである。PODがこの範囲の量より少ないと、本発明の効果が低下し、PODの濃度が多い場合、従来法のルミノール化学発光で十分であり、あえて高感度ルミノール化学発光を用いる必要はない。
【0013】
PODは、溶液中に遊離の状態で溶解されたものでも良いが、PODが、不溶性担体に結合されたものでも良い。不溶性担体は従来公知の物が使用できる。すなわち、ポリスチレンなどの高分子で形成された、ビーズ、チューブ、微粒子などである。又、PODを不溶性担体に結合させる方法は、従来公知の物理的又は化学的方法の何れも使用でき、特に制限はない。
【0014】
化学発光反応に用いる化学発光基質であるルミノール類は、好ましくは、具体的には、ルミノール、イソルミノール、N-エチルイソルミノール、N-(4-アミノブチル)-N-エチルイソルミノールヘミサクシミド、N-(6-アミノヘキシル)-N-エチルイソルミノール、6-[N-(4-アミノブチル)-N-メチルアミノ]-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン等が挙げられる。中でもルミノール又はイソルミノールが好ましく、特にルミノールが好ましい。ルミノールは、通常入手できる試薬グレードのものには、製造原料であるヒドラジン及び硫化物イオンが混入している場合が多いので、再結晶を繰返し精製したものを用いるのが好ましい。
【0015】
本発明において、発光反応は、弱塩基性の溶液中で行われることが好ましく、特にpH7~9が好適である。用いられる緩衝液は、前記のpHを満足するものであればどの様な種類の緩衝液を用いることも可能であるが、リン酸緩衝液、グリシン/NaOH緩衝液、トリス/塩酸緩衝液、トリス/酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、バルビタール緩衝液、ホウ酸緩衝液などが好ましいものとして挙げられる。
【0016】
本発明の原理は次の通りと考えられる。
図5にルミノール-HRP-H
2O
2反応アウトラインを示す。
先ず、本発明においては、PODのプロトヘム鉄は高濃度硫酸アンモニウムが存在する系では、過酸化水素酸素原子上の孤立電子対との配位結合が容易な低スピン錯体になっていると考えられる。
これまでの分光学的データから、PODのプロトヘム鉄はresting状態では通常5配位の高スピン状態であることが知られている。硫酸アンモニウムが存在しないとpHに関わらず高スピン状態のままであるが、硫酸アンモニウムが存在すると弱塩基性のpHにおいて低スピン型へと移行する。すなわち、通常は高スピン錯体で配位結合の効率は低スピン錯体に比べて低下しているが、本発明では低スピン型へ移行することにより、反応の効率化、即ち活性中心のプロトヘム鉄への配位結合を促進する効果が生じる。これが、まず、最初のステージ、H
2O
2とHRPの反応(First step of the reaction of HRP with H
2O
2)の反応に効果があると考える。
次に、高濃度硫酸アンモニウムの存在下では多くの水分子が高濃度硫酸イオンとアンモニウムイオンとに水素結合して水の構造が安定化され、水溶液であるにもかかわらず、いわゆる疎水性的なミクロ環境を形成し、結果的にH
2O
2の酸素原子上の孤立電子対によるルミノールジアザキノン中間体への求核反応(Addition of HOOH(H
2O
2),followed by the formation of luminol dioxetane product)の効率を増大させると考えられる。ミクロ疎水性環境は、もちろんFirst step of the reaction of HRP with H
2O
2の反応にも効果を発現しており、活性部位の水分子が除かれ、この効果も配位結合を促進する。
【0017】
また、本発明は、ルミノール、過酸化水素、POD、硫酸アンモニウムを含んでなるPOD検出・定量・活性測定溶液を提供する。硫酸アンモニウムの濃度は前述した2.8M以上であって、3.0M~3.5Mが好ましい。ルミノールと過酸化水素の濃度は、PODの定量に最適な値を設定する必要があり、例えば、PODがpM~nMのときは、過酸化水素10mM~100mM、ルミノール2mM~10mMが好ましい。また、pHもPODの検出・定量に最適な値、8~9に設定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エンハンサーを使用せずに高感度なPODの分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】硫酸アンモニウム(AS)濃度(M)を変えてルミノール化学発光をスペクトルとして記録した図
【
図2】種々の硫酸アンモニウム(AS)濃度条件におけるルミノール化学発光強度vs.反応開始後の時間を表した図
【
図3】最適化学発光条件によるHRPの検出・定量を表した図
【
図5】Luminol-H
2O
2-HRP反応アウトライン
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の実験における一般的な条件は次の通りである。
反応は、先ず、1mLキュベットに1μLの1×10
-6M~1×10
-9Mの濃度のHRPを入れ、次にルミノール溶液と過酸化水素溶液の等量ずつ混合した溶液1000μLを添加して反応を開始した。特に、本発明の評価に供したHRPの反応溶液中の濃度は1×10
-7Mと5×10
-9Mである。この場合、反応混合物中のHRP濃度は、それぞれ、1×10
-10Mあるいは5×10
-12Mである。上記のルミノール溶液とは、30mMのルミノールを含む0.75M水酸化ナトリウム 1volと、種々の濃度の硫酸アンモニウムを含むpH8.5 トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)(0.1M)緩衝溶液 5volの混合溶液である。このルミノール溶液の特徴は、最終的に得られる反応混合物のpHが最適になるように工夫されている。他方、過酸化水素溶液とは、100mMの過酸化水素を含む種々の濃度の硫酸アンモニウム水溶液(硫酸アンモニウム濃度は、ルミノール溶液の調製に用いた濃度と同じである)である。反応混合溶液のpHは、8.3~8.8である。ただし硫酸アンモニウムを含まない系のpHは、高濃度の硫酸アンモニウムによるpH緩衝作用が働かないためpHは約12である。
硫酸アンモニウム(AS)の効果の評価において、上述の反応系において、硫酸アンモニウム(AS)濃度(M)を変えてルミノール化学発光を調べた。具体的には、発光強度を反応時間を変数とする発光スペクトルとして記録して評価した。発光スペクトルの測定は、反応開始10s(0.17min)より1min間隔で、直後のものも含めて5回記録した。すなわち、0.17min,a00;1.17min,a01;2.17min,a02;3.17min,a03;4.17min;3桁目の数字はaと表記した。例えば、
図1中0420!900→0.17min,901→1.17min,902→2.17min,903→3.17min,904→4.17minを表す。
図1(a)はAS=0.0M(b)はAS=0.9M(c)はAS=1.8M(d)はAS=2.3M(e)はAS=2.5M(f)はAS=2.8M(g)はAS=3.0M(h)はAS=3.2Mを添加したときの発光スペクトルを表す。
図1に示す通り、ASの濃度が増加するにつれ、発光スペクトルの強度が上ることが分る。3.2Mの硫酸アンモニウムを含む系では、含まない系と比べて100倍ほど強度が増加する。図中、硫酸アンモニウムを添加しない系において、微弱な発光が観測されるが、この条件では上記の通りpHが高くHRPより鉄(III)イオンが遊離し、これが触媒作用を発現しているためであると考えられ、ここで対象とするHRPによる触媒作用に基づく発光ではない。上記のルミノール溶液及び過酸化水素溶液の濃度を調整することにより、200倍程度の強度の増加は可能と考えられる。
【0021】
図2は、種々の硫酸アンモニウム(AS)濃度条件におけるルミノール化学発光強度vs.反応開始後の時間.各スペクトルの面積を積分強度として、反応開始後の時間を変数としてプロットしたものである。AS濃度が3.0M以上のときに、特に化学発光強度が上ることが分る。
図2から硫酸アンモニウム濃度が2.8M以上で、この効果が顕著となることが分る。即ち、効果の発現に閾値があると言える。この結果は反応メカニズムに硫酸アンモニウムの効果が顕著に及ぶことを示している。すなわち、高濃度の硫酸アンモニウムは、上述の通り2種類の反応パスを促進することにより、結果的に全反応速度の増大に寄与し、発光強度が増大したと結論できる。
図3は、最適条件(反応混合物中の濃度;AS=3.2M、ルミノール=2.5mM、H
2O
2=50mM)でHRPを検出・定量した結果を示す。pMレベルのHRPを高いS/N比で明確に検出・定量することができる。
比で明確に検出・定量することができる。
【0022】
次に硫酸アンモニウムにさらにEDTAを溶存させることにより、本発明の効果を調べた。反応混合物中の濃度(すべてに共通する)は、硫酸アンモニウム=3.2M、ルミノール=2.5mM、H
2O
2=50mMである。
反応混合物中のEDTA濃度は
図4中に示す。
図4の左側の列((a)列)のグラフは酵素HRP(=1×10
-10M)を含み、他方右側の列((b)列)のグラフはHRPを含まないものである。EDTAを溶存する系は、バックグラウンド発光がほぼ完全に抑えられていることがわかる。従って左側のグラフの発光はHRPの触媒作用による発光であるとみなせる。右側列の最下段のグラフはEDTAを添加しない系で得たものである。HRPが無いにも関わらず発光が観測される。おそらく硫酸アンモニウムに含まれる不純物金属イオンの影響によると思われる。このバックグラウンドは、本来過酸化水素の安定化剤として添加したEDTAによる不純物金属イオンのマスキング効果によってほぼ完全に消去される。さらに、EDTAはルミノール-H
2O
2-HRP化学発光に及ぼす硫酸アンモニウムの効果にマイナス影響を及ぼさないことが明らかである。
【0023】
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、すべてのタイプの分析物、例えば生物学的高分子、有機分子等の検出に関して有用であるペルオキシダーゼの検出・定量あるいは活性の化学発光アッセイのために利用することができる。また、本発明は、膜基材のアッセイ、例えば、ドットブロッティング、ウエスタンブロッティング、サザンブロッティング等を用いてのタンパク質及び核酸の検出に適用できる。