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特開2022-171676化学的分析のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171676
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】化学的分析のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20221104BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20221104BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20221104BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20221104BHJP
   H01J 49/16 20060101ALI20221104BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20221104BHJP
   H01J 49/40 20060101ALI20221104BHJP
   H01J 49/06 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N1/00 101
H01J49/00 310
H01J49/04 040
H01J49/04 130
H01J49/04 450
H01J49/16 700
H01J49/42 150
H01J49/40
H01J49/06 200
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131013
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2019519759の分割
【原出願日】2017-10-12
(31)【優先権主張番号】62/408,454
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン リウ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アール. コービー
(72)【発明者】
【氏名】ドン ダブリュー. アーノルド
(57)【要約】
【課題】好適な化学的分析のためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】イオンの生成および質量分光法による後続の分析のためにイオン源に液体サンプルを送達するための方法およびシステムが、本明細書に提供される。本教示の種々の側面によると、1つ以上の検体種が、その後のイオン源への送達のために減少された脱着溶媒の体積内のサンプリングプローブ内に挿入されるサンプル基質から脱着され得るように、イオン源に流体的に結合されるサンプリングプローブ内の脱着溶媒の流動が選択的に制御され得る、MSベースのシステムおよび方法が、提供される。種々の側面では、感度が、(例えば、増加される脱着時間に起因する)より高い脱着効率および/または脱着された検体の減少される希釈に起因して、増加され得る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2016年10月14日に出願された米国仮出願第62/408,454号からの優先権の利益を主張するものであり、該米国仮出願の全内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本教示は、概して、質量分光法に関し、より具体的には、質量分光法システムおよび方法のためのサンプリング界面に関する。
【背景技術】
【0003】
質量分光法(MS)は、定性および定量用途の両方で、被検物質の元素組成を決定するための分析技法である。MSは、未知の化合物を同定する、分子中の元素の同位体組成を決定する、その断片化を観察することによって特定の化合物の構造を決定する、サンプル中の特定の化合物の量を定量化するために有用であることができる。その感度および選択性を前提として、MSは、特に、生命科学用途において重要である。
【0004】
複雑なサンプルマトリクス(例えば、生体、環境、および食品サンプル)の分析では、多くの現在のMS技法が、広範囲にわたる事前処置ステップが、着目検体のMS検出/分析に先立ってサンプルに対して実施されることを要求する。そのような分析前ステップは、サンプリング(すなわち、サンプル収集)およびサンプル調製(マトリクスからの分離、濃縮、分別、および必要である場合、誘導体化)を含むことができる。例えば、分析プロセス全体の時間の80%を上回る時間が、MSを介した検体の検出を可能にする、またはサンプルマトリクス内に含有される潜在的な干渉の源を除去するために、サンプルの収集および調製に費やすことができるが、それにもかかわらず、各サンプル調製段階における希釈および/または誤差の潜在的な源を増加させると推定されている。
【0005】
理想的には、MSのためのサンプル調製およびサンプル導入技法は、高速、確実、再現可能、安価、かついくつかの側面において、自動化に適しているべきである。改良されるサンプル調製技法の最近の一実施例は、固相マイクロ抽出法(SPME)であり、これは、本質的には、サンプリング、サンプル調製、および抽出を、単一の溶媒のないステップに統合する。概して、SPMEデバイスは、デバイスがサンプルの中に挿入されるとき、サンプル内の検体が優先的に吸着されることができる抽出相でコーティングされた、繊維または他の表面(例えば、ブレード、マイクロ先端、ピン、またはメッシュ)を利用する。抽出は、組織、血液、または他の生体マトリクスの中に短時間周期にわたって直接生体適合性デバイスを挿入することによって原位置で生じることができるため、SPMEは、いかなるサンプル収集も要求しない。代替として、SPMEデバイスは、少量の収集サンプル(すなわち、サンプルアリコート)を使用して、生体外分析のために使用されることができる。
【0006】
SPMEは、概して、正確および単純であると見なされ、減少されるサンプル調製時間および廃棄コストをもたらすことができるが、SMPE調製されたサンプルの質量分光法ベースの分析は、それにもかかわらず、質量分光法(MS)のために要求されるように、検体をSPMEデバイスから直接イオン化する、またはイオン化に先立ってSPMEデバイスから検体を脱着させるために、付加的な機器および/または時間のかかるステップを要求し得る。実施例として、最小限のサンプル取扱を用いて濃縮相サンプルから検体を脱着/イオン化することができる、種々のイオン化方法(例えば、それらの表面をガスまたはエアロゾル等のイオン化媒体に暴露することによってサンプルから検体を「拭取する」、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)およびリアルタイム直接分析(DART))が、開発されている。しかしながら、そのような技法はまた、高性能かつ高価な機器を要求し得、非常に揮発性の小分子の限定されたクラスのみに適することができる。
【0007】
代替として、DESIまたはDART以外のイオン化技法を介したイオン化に先立って、SPMEデバイスから検体を抽出するための付加的な脱着ステップが、利用されている。例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)は、最も一般的なイオン化方法のうちの1つであり、検体が溶液中にあることを要求するため、一部のユーザは、MS分析に先立って、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を介して、抽出/濃縮された検体の液体脱着およびそれに続く精製/分離を利用している。しかしながら、HPLCに先立った液体脱着は、HPLC移動相に課される要件(例えば、弱い溶媒強度)に起因して、検体をSPMEコーティングから比較的に大きい体積の液相に移送するための拡張された処理ステップを要求し得、処理能力を減少させ、潜在的な誤差の源をもたらし、希釈を増加させることができ、容易に自動化されることはできない。いくつかのグループが、代わりに、標準的なエレクトロスプレーイオン源自体への実質的修正を提案している。典型的には、ESIでは、液体サンプルが、継続的に導電性毛細管内からイオン化チャンバの中に放出される一方、毛細管と対電極との間の電位差が、液体サンプルを電気的に帯電させるイオン化チャンバ内で強い電場を生成する。本電場は、液体の表面上に課された電荷が液体の表面張力を克服するために十分に強い(すなわち、粒子が、電荷を散乱させ、より低いエネルギー状態に戻るよう試みる)場合、毛細管から放出された液体を、対電極に向かって引き寄せられる複数の荷電微小液滴の中に散乱させる。イオン化チャンバにおける脱溶媒和の間、微小液滴内の溶媒が蒸発するにつれて、電荷検体イオンが、次いで、後続質量分光分析のために、対電極のサンプリングオリフィスに進入することができる。例えば、「A Probe For Extraction Of Molecules Of Interest From A Sample」と題されたPCT公開第WO2015188282号(参照することによって全体として本明細書に組み込まれる)は、したがって、イオンが湿潤された基質の縁から直接生成されるように、イオン化電位を(離散量の脱着溶液が適用される)伝導性SPMEデバイス自体に印加することによって、SPMEデバイスからのエレクトロスプレーイオン化を提供することを主張する。
【0008】
フロントエンドへの最小限の改変を用いてMSシステムへのSPMEデバイスの高速結合を可能にしながら、感度、単純性、選択性、速度、および処理能力を維持する、改善されたおよび/または低コストのシステムの必要性が、残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2015188282号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
イオンの生成および質量分光法による後続分析のために、液体サンプルをイオン源に送達するための方法およびシステムが、本明細書に提供される。本教示の種々の側面によると、イオン源に流体的に結合されたサンプリングプローブ内の脱着溶媒の流動が、サンプル基質(例えば、官能化表面、SPME基質、表面コーティングされた磁性粒子を有する基質)から脱着された1つ以上の検体種が、その後、1つ以上の流体経路を介してイオン源に送達される脱着溶媒の減少された体積に濃縮され、それによって、脱着された検体の希釈を減少させ、かつ脱着された検体の検出の感度を増加させるように、選択的に停止されることができる、MSベースのシステムおよび方法が、提供される。種々の側面では、SPMEデバイスからの検体は、脱着溶媒の増加される濃縮によって、および/または脱着サンプリング界面とイオン源との間に液体クロマトグラフィ(LC)カラムを伴わずに、そこから脱着されることができる。加えて、または代替として、本教示の種々の側面は、サンプリング界面内での付加的な処理ステップ(例えば、複数のサンプリング、反応)を可能にするように、サンプリング界面内での脱着溶媒の流率の選択的制御を提供する。本教示の種々の側面によると、脱着溶媒は、1つ以上のポンプ機構およびイオンスプレー源の安定性を維持するように、サンプリング界面の停止された流動条件の間、イオン源に継続的に送達されることができる。
【0011】
本教示の種々の例示的側面によると、試料の化学的組成を分析するためのシステムが、提供され、本システムは、脱着溶媒を貯蔵するためのリザーバと、リザーバから脱着溶媒を受容するように構成されるサンプリング空間を少なくとも部分的に画定する開放端部を有するサンプリングプローブであって、サンプリング空間はさらに、該検体種の少なくとも一部がそこからサンプリング空間内の脱着溶媒の中に脱着されることができるように、そこに吸着される1つ以上の検体種を有する基質の少なくとも一部を受容するように構成される、サンプリングプローブとを備える。本システムは、加えて、リザーバからイオン源に脱着溶媒を送達するための、複数の流体経路と、該サンプリング空間を介して該リザーバから該イオン源に脱着溶媒を流動させるための、第1の流体経路と、該サンプリング空間をバイパスしながら、該リザーバから該イオン源に脱着溶媒を流動させる、第2の流体経路とを交互に提供する、流体取扱システムとを含む。いくつかの側面では、例えば、流体取扱システムは、第1の構成と第2の構成との間において移動可能である弁であって、第1の構成では、サンプリング空間を介してリザーバからイオン源に脱着溶媒を流動させるための、第1の流体経路が、提供され、第2の構成では、リザーバからイオン源に脱着溶媒を流動させながら、サンプリング空間をバイパスする、第2の流体経路が、提供される、弁を備えることができる。ある側面では、弁が、それぞれ、第1および第2の構成のそれぞれにあるとき、脱着溶媒が、実質的に継続的にイオン源に送達されることができる。加えて、いくつかの側面では、第2の構成では、サンプリング空間内の脱着溶媒の体積流率は、実質的にゼロである。さらに、いくつかの側面では、第2の構成では、リザーバからイオン源への脱着溶媒の体積流率は、時間の一部にわたって、実質的にゼロである。
【0012】
弁は、本教示による種々の構成を有することができる。実施例として、いくつかの側面では、弁は、第1の流体チャネルを介してリザーバの出口に流体的に結合される、第1のポートと、第2の流体チャネルを介してサンプリングプローブの入口端部に流体的に結合される、第2のポートと、第3の流体チャネルを介してサンプリングプローブの出口端部に流体的に結合される、第3のポートと、第4の流体チャネルを介してイオン源の入口に流体的に結合される、第4のポートとを備えることができる。いくつかの関連する側面では、第1の流体経路は、第1、第2、第3、および第4の流体チャネルを備え得、第2の流体経路は、第1および第4の流体チャネルとを備えることができる。種々の例示的側面では、弁は、第1および第2の通路を備えることができ、第1の構成では、第1の通路は、第1および第2のポートに流体的に結合し、第2の通路は、第3および第4のポートに流体的に結合し、第2の構成では、第1および第2の通路は、第1の通路が、第1および第4のポートに流体的に結合し、第2の通路が、第2および第3のポートに流体的に結合するように作動(例えば、手動的にまたはコントローラの制御下で電気的に回転)されることができる。代替として、いくつかの側面では、第1の構成では、第1の通路は、第1および第2のポートに流体的に結合し、第2の通路は、第3および第4のポートに流体的に結合し、第2の構成では、第1および第2の通路は、第1の通路が、第2および第3のポートに流体的に結合し、第2の通路が、第1および第4のポートに流体的に結合するように作動(例えば、手動的にまたは例えば、コントローラの制御下で電気的に回転)される。
【0013】
サンプリングプローブは、種々の構成を有することができる。実施例として、いくつかの例示的側面では、プローブは、近位端から遠位端に延在する、外部毛細管と、近位端から遠位端に延在し、少なくとも部分的に外部毛細管内に配置される、内部毛細管とを備えることができる。ある側面では、内部毛細管の遠位端は、内部毛細管の遠位端と、外部毛細管の内壁の一部と、外部毛細管の遠位端との間にサンプリング空間を画定するように、外部毛細管の遠位端に対して陥凹されることができる。さらに、内部毛細管および外部毛細管は、脱着溶媒導管と、サンプリング空間を介して相互に流体連通するサンプリング導管とを画定することができ、脱着溶媒導管は、リザーバから脱着溶媒を受容するように構成される入口端部からサンプリング空間において終端する出口端部へと延在し、サンプリング導管は、脱着された検体が混入される脱着溶媒をサンプリング空間から受容するための該サンプリング空間において開始する入口端部からイオン源に流体的に結合される出口端部へと延在する。
【0014】
いくつかの関連する側面では、内部毛細管の軸上のボアは、少なくとも部分的に、サンプリング導管を画定し、内部毛細管と外部毛細管との間の空間は、脱着溶媒導管を画定し、さらに、脱着溶媒導管の入口端部は、弁とサンプリング空間との間の第1の流体経路内に配置され、サンプリング導管の出口端部は、サンプリング空間と弁との間の第1の流体経路内に配置される。
【0015】
種々の側面では、本システムはさらに、その中に混入される脱着された検体を有する脱着溶媒を、質量分光計のサンプリングオリフィスと流体連通するイオン化チャンバの中に放出するための、イオン源を備えることができる。
【0016】
いくつかの側面では、本システムはまた、第1の構成と第2の構成との間の弁の移動を制御するためのコントローラを備えることができ、コントローラは、弁を、基質をサンプリング空間内の脱着溶媒内に挿入するための第2の構成に移動させるように構成される。加えて、コントローラは、弁を、その中に脱着された検体を有する脱着溶媒を、サンプリング空間からイオン源に流動させるための第1の構成に移動させるように弁の作動を生じさせることができ、脱着溶媒は、スイッチが、第1および第2の構成のそれぞれにあるとき、実質的に継続的にイオン源に送達される。いくつかの関連する側面では、本システムはさらに、第1および第2の経路を通して脱着溶媒を流動させるための1つ以上のポンプをさらに備えることができ、コントローラは、弁が第2の構成に移動されると、脱着溶媒が、開放端部においてドーム様の表面プロファイルを形成し、弁が第1の構成に移動されると、開放端部において渦巻状の表面を形成するように、1つ以上のポンプによって送達される脱着溶媒の流率を制御するように構成される。付加的な関連する側面では、コントローラはさらに、弁が、基質が脱着溶媒内に挿入される前に、サンプリングプローブを清掃するか、空気中の物質のサンプリングを防止するかのうちの少なくとも1つを行うように、第1の構成にあるとき、脱着溶媒が、サンプリング空間からサンプリングプローブの開放端部を通して一時的に越流するように、1つ以上のポンプによって送達される脱着溶媒の流率を制御するように構成されることができる。
【0017】
本教示の種々の例示的側面によると、試料の化学的組成を分析するための方法が、提供され、本方法は、それに吸着された1つ以上の検体を有する基質の少なくとも一部(例えば、抽出相でコーティングされた表面を有するSPME基質)を、サンプリングプローブのサンプリング空間内に含有される脱着溶媒の中に、該吸着された検体の少なくとも一部が、コーティングされた表面から脱着溶媒の中に脱着されるように、第1の持続期間にわたって挿入するステップであって、該サンプリング空間は、サンプリングプローブの開放端部によって部分的に画定される、ステップを含む。種々の側面では、非限定的な実施例として、第1の持続期間は、約1秒~約5分の範囲内であることができる。本方法はさらに、脱着溶媒の流動を脱着溶媒のリザーバからイオン源に指向させながら、該第1の持続期間の少なくとも一部の間、サンプリング空間における脱着溶媒の体積流率が実質的にゼロになるように、サンプリング空間をバイパスするステップを含むことができる。その後、リザーバからイオン源への脱着溶媒の流動は、サンプリング空間内の脱着溶媒の中に脱着された検体がイオン源に送達されるように、サンプリング空間を介して再指向されることができる。脱着溶媒内に混入された脱着された検体は、質量分光分析のために、次いで、イオン源によってイオン化されることができる。種々の側面では、複数の流体経路を通して脱着溶媒の流動を指向させるための、第1の構成と第2の構成との間で移動可能な弁は、リザーバとサンプリング空間との間に配置され、脱着溶媒の流動をサンプリング空間を介してリザーバからイオン源に再指向させるステップは、弁を第1の構成から第2の構成に作動させるステップを含む。ある側面では、弁が、第1および第2の構成のそれぞれにあるとき、脱着溶媒が、実質的に継続的にイオン源に送達されることができる。加えて、いくつかの側面では、第2の構成では、サンプリング空間内の脱着溶媒の体積流率は、実質的にゼロである。いくつかの関連する側面では、脱着溶媒をサンプリング空間を介してリザーバからイオン源に流動させるための、第1の流体経路が、提供され、脱着溶媒をリザーバからイオン源に流動させるための、かつサンプリング空間をバイパスする、第2の流体経路が、提供される。
【0018】
種々の側面では、本方法はさらに、該基質のサンプリング空間内への挿入に先立って、サンプリング空間を通した脱着溶媒の流動を確立するステップであって、サンプリング空間内の脱着溶媒の流率は、基質がその中に挿入されるとき、該開放端部において脱着溶媒のドーム様表面プロファイルを生成するように構成される、ステップと、該開放端部において脱着溶媒の渦巻様表面プロファイルを生成するように、脱着溶媒の流動をサンプリング空間を介してリザーバからイオン源に再指向させる該ステップの間に、サンプリング空間内の脱着溶媒の流率を調節するステップとを含むことができる。加えて、または代替として、本方法は、プローブを清掃するか、空気中の物質のサンプリングを防止するかのうちの少なくとも1つを行うように、基質の挿入に先立って、脱着溶媒が、サンプリング空間からプローブの開放端部を通して越流するように、該サンプリング空間内の脱着の流率を設定するステップを含むことができる。
【0019】
本教示の種々の側面では、本方法はさらに、該第1の持続期間の間に、基質上に吸着されたか、基質から脱着されたかのうちの少なくとも1つである検体と反応するための、1つ以上の試薬をサンプリング空間に添加するステップを含むことができる。
【0020】
本教示の種々の例示的側面によると、試料の化学的組成を分析するためのシステムが、提供され、本システムは、脱着溶媒を貯蔵するための、リザーバと、リザーバから脱着溶媒を受容するように構成されるサンプリング空間を部分的に画定する開放端部を有する、サンプリングプローブであって、該サンプリング空間はさらに、該検体種の少なくとも一部が、そこからサンプリング空間内の脱着溶媒の中に脱着されるように、そこに吸着された1つ以上の検体種を有する基質の少なくとも一部を、開放端部を通して受容するように構成される、サンプリングプローブとを備える。本システムはさらに、少なくとも1つのポンプと、脱着溶媒をリザーバからイオン源に送達するための少なくとも1つの流体経路とを備える、流体取扱システムであって、その中へのサンプリングプローブの挿入の間にサンプリング空間内の脱着溶媒の流動を終了させるように構成される、流体取扱システムを備えることができる。種々の側面では、コントローラは、少なくとも1つのポンプに動作可能に結合され、かつ少なくとも1つの経路内の脱着溶媒の体積流率を制御するように構成されることができ、コントローラは、サンプリングプローブの挿入の間、ポンプをオフにするように構成される。加えて、または代替として、いくつかの側面では、本システムはさらに、イオン源の放出端部を囲繞する、霧化ガス流動を提供するための霧化ガスの源を備えることができ、コントローラは、霧化ガスの源に動作可能に結合され、イオン源の放出端部に提供される霧化ガスの流動を終了させることによって、サンプリングプローブの挿入の間に、サンプリング空間内の脱着溶媒の流動を終了させるように構成される。いくつかの例示的側面では、コントローラはまた、その中に混入される脱着された検体を有する脱着溶媒をイオン源に送達するように、第1の基質の引抜に続いて、サンプリング空間に提供される脱着溶媒の体積流率を増加させるように構成されることができる。種々の側面では、コントローラは、加えて、または代替として、脱着溶媒を該サンプリング空間を介して該リザーバから該イオン源に流動させるための、第1の流体経路が提供される、第1の構成と、脱着溶媒を該リザーバから該イオン源に流動させるための、かつ該サンプリング空間をバイパスする、第2の流体経路が提供される、第2の構成との間で流体取扱システムを作動させるように構成されることができる。
【0021】
本教示の種々の例示的側面によると、試料の化学的組成を分析するためのシステムが、説明され、これは、送達溶媒を貯蔵するためのリザーバと、リザーバから送達溶媒を受容するように構成されるサンプリング空間を部分的に画定する開放端部を有するサンプリングプローブであって、該サンプリング空間はさらに、1つ以上の液滴がサンプリング空間内の送達溶媒と混合可能であるように、開放端部を通して、その中に含有される1つ以上の検体種を有する1つ以上の液滴を受容するように構成される、サンプリングプローブと、少なくとも1つのポンプと、送達溶媒をリザーバからイオン源に送達するための少なくとも1つの流体経路とを備える、流体取扱システムであって、サンプリング空間の中への1つ以上の液滴の挿入の間にサンプリング空間内の送達溶媒の流動を終了させるように構成される、流体取扱システムとを備える。
【0022】
本教示の種々の例示的側面によると、1つ以上の着目検体を含有する液体サンプルの1つ以上の液滴を、サンプリングプローブのサンプリング空間内に含有される送達溶媒の中に、液体サンプルの1つ以上の液滴が送達溶媒と混合されるように、第1の持続期間にわたって挿入するステップであって、該サンプリング空間は、サンプリングプローブの開放端部によって部分的に画定される、ステップと、送達溶媒の流動を送達溶媒のリザーバからイオン源に指向させながら、該第1の持続期間の少なくとも一部の間、サンプリング空間における送達溶媒の体積流率が実質的にゼロになるように、サンプリング空間をバイパスするステップと、その後、送達溶媒の流動を、サンプリング空間内で送達溶媒と混合された液体サンプルの1つ以上の液滴がイオン源に送達されるように、該サンプリング空間を介してリザーバからイオン源に再指向させるステップと、質量分光分析のために、混合された送達溶媒内に含有される1つ以上の着目検体および液体サンプルの1つ以上の液滴をイオン化するステップとを含む、化学的分析のための方法が、説明される。
【0023】
本出願人の教示のこれらおよび他の特徴は、本明細書で説明される。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
試料の化学的組成を分析するためのシステムであって、
脱着溶媒を貯蔵するためのリザーバと、
前記リザーバから脱着溶媒を受容するように構成されるサンプリング空間を部分的に画定する開放端部を有するサンプリングプローブであって、前記サンプリング空間はさらに、検体種の少なくとも一部が基質から前記サンプリング空間内の前記脱着溶媒の中に脱着するように、前記開放端部を通して、基質に吸着される1つ以上の検体種を有する基質の少なくとも一部を受容するように構成される、サンプリングプローブと、
前記リザーバからイオン源に脱着溶媒を送達するための複数の流体経路と、
第1の構成と第2の構成との間において移動可能である弁であって、前記第1の構成では、前記サンプリング空間を介して前記リザーバから前記イオン源に脱着溶媒を流動させるための第1の流体経路が提供され、前記第2の構成では、前記リザーバから前記イオン源に前記脱着溶媒を流動させるための、かつ前記サンプリング空間をバイパスする第2の流体経路が提供される、弁と
を備える、システム。
(項目2)
前記弁が、前記第1および第2の構成のそれぞれにあるとき、脱着溶媒が、実質的に継続的に前記イオン源に送達される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記第2の構成では、前記サンプリング空間内の前記脱着溶媒の体積流率は、実質的にゼロである、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記弁は、
第1の流体チャネルを介して前記リザーバの出口に流体的に結合される第1のポートと、
第2の流体チャネルを介して前記サンプリングプローブの入口端部に流体的に結合される第2のポートと、
第3の流体チャネルを介して前記サンプリングプローブの出口端部に流体的に結合される第3のポートと、
第4の流体チャネルを介して前記イオン源の入口に流体的に結合される第4のポートと
を備える、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記第1の流体経路は、前記第1、第2、第3、および第4の流体チャネルを備え、前記第2の流体経路は、前記第1および第4の流体チャネルを備える、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記弁は、第1および第2の通路を備え、
前記第1の構成では、前記第1の通路は、前記第1および第2のポートに流体的に結合し、前記第2の通路は、前記第3および第4のポートに流体的に結合し、
前記第2の構成では、前記第1および第2の通路は、前記第1の通路が、前記第1および第4のポートに流体的に結合し、前記第2の通路が、前記第2および第3のポートに流体的に結合するように作動される、項目4に記載のシステム。
(項目7)
前記弁は、第1の通路と、第2の通路とを備え、
前記第1の構成では、前記第1の通路は、前記第1および第2のポートに流体的に結合し、前記第2の通路は、前記第3および第4のポートに流体的に結合し、
前記第2の構成では、前記第1および第2の通路は、前記第1の通路が、前記第2および第3のポートに流体的に結合し、前記第2の通路が、前記第1および第4のポートに流体的に結合するように作動される、項目4に記載のシステム。
(項目8)
近位端から遠位端に延在する外部毛細管と、
近位端から遠位端に延在し、前記外部毛細管内に配置される内部毛細管であって、前記内部毛細管の遠位端は、前記内部毛細管の遠位端と、前記外部毛細管の内壁の一部と、前記外部毛細管の遠位端との間に前記サンプリング空間を画定するように、前記外部毛細管の遠位端に対して陥凹される、内部毛細管と
をさらに備え、
前記内部毛細管および外部毛細管は、脱着溶媒導管と、前記サンプリング空間を介して相互に流体連通するサンプリング導管とを画定し、前記脱着溶媒導管は、前記リザーバから脱着溶媒を受容するように構成される入口端部から前記サンプリング空間において終端する出口端部へと延在し、前記サンプリング導管は、前記脱着された検体が混入される脱着溶媒を前記サンプリング空間から受容するための前記サンプリング空間において開始する入口端部から前記イオン源に流体的に結合される出口端部へと延在し、
随意に、
前記内部毛細管の軸上のボアは、少なくとも部分的に、前記サンプリング導管を画定し、前記内部毛細管と前記外部毛細管との間の空間は、前記脱着溶媒導管を画定し、
前記脱着溶媒導管の入口端部は、前記弁と前記サンプリング空間との間の前記第1の流体経路内に配置され、
前記サンプリング導管の出口端部は、前記サンプリング空間と前記弁との間の前記第1の流体経路内に配置される、
項目1に記載のシステム。
(項目9)
脱着溶媒の中に混入される前記脱着された検体を有する脱着溶媒を質量分光計のサンプリングオリフィスと流体連通するイオン化チャンバの中に放出するためのイオン源をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記第1の構成と第2の構成との間の前記弁の作動を制御するためのコントローラをさらに備え、前記コントローラは、
前記弁を、前記基質を前記サンプリング空間内の脱着溶媒内に挿入するための前記第2の構成に移動させることと、
前記弁を、脱着溶媒の中に脱着された検体を有する脱着溶媒を、前記サンプリング空間から前記イオン源に流動させるための前記第1の構成に移動させることであって、脱着溶媒は、スイッチが、前記第1および第2の構成のそれぞれにあるとき、実質的に継続的に前記イオン源に送達される、ことと
を行うように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記第1および第2の経路を通して脱着溶媒を流動させるための1つ以上のポンプをさらに備え、前記コントローラは、前記弁が前記第2の構成に移動されると、脱着溶媒が、前記開放端部においてドーム様の表面プロファイルを形成し、前記弁が前記第1の構成に移動されると、前記開放端部において渦巻状の表面を形成するように、前記1つ以上のポンプによって送達される脱着溶媒の前記流率を制御するように構成され、かつ随意に、
前記コントローラはさらに、前記弁が、前記基質が前記脱着溶媒内に挿入される前に、前記サンプリングプローブを清掃するか、空気中の物質のサンプリングを防止するかのうちの少なくとも1つを行うように、前記第1の構成にあるとき、脱着溶媒が、前記サンプリング空間から前記サンプリングプローブの開放端部を通して一時的に越流するように、前記1つ以上のポンプによって送達される前記脱着溶媒の流率を制御するように構成される、項目10に記載のシステム。
(項目12)
化学的分析のための方法であって、
基質に吸着された1つ以上の検体を有する基質の少なくとも一部を、サンプリングプローブのサンプリング空間内に含有される脱着溶媒の中に、前記吸着された検体の少なくとも一部が、コーティングされた表面から前記脱着溶媒の中に脱着されるように、第1の持続期間にわたって挿入するステップであって、前記サンプリング空間は、前記サンプリングプローブの開放端部によって部分的に画定される、ステップと、
前記脱着溶媒の流動を前記脱着溶媒のリザーバからイオン源に指向させながら、前記第1の持続期間の少なくとも一部の間、前記サンプリング空間における前記脱着溶媒の体積流率が実質的にゼロになるように、前記サンプリング空間をバイパスするステップと、
その後、前記脱着溶媒の流動を、前記サンプリング空間内の前記脱着溶媒の中に脱着された前記検体が前記イオン源に送達されるように、前記サンプリング空間を介して前記リザーバから前記イオン源に再指向させるステップと、
質量分光分析のために、前記脱着溶媒内に混入された前記脱着された検体をイオン化するステップと
を含む、方法。
(項目13)
前記基質は、SPME基質および表面が官能化された粒子のうちの1つを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
複数の流体経路を通して前記脱着溶媒の流動を指向させるための弁は、前記リザーバと前記サンプリング空間との間に配置され、前記脱着溶媒の流動を前記サンプリング空間を介して前記リザーバから前記イオン源に再指向させるステップは、前記弁を第1の構成から第2の構成に作動させるステップを含む、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記弁が、前記第1および第2の構成にあるとき、脱着溶媒が、実質的に継続的に前記イオン源に送達される、項目14に記載の方法。
(項目16)
脱着溶媒を前記サンプリング空間を介して前記リザーバから前記イオン源に流動させるための第1の流体経路が提供され、前記脱着溶媒を前記リザーバから前記イオン源に流動させるための、かつ前記サンプリング空間をバイパスする第2の流体経路が提供される、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記基質の前記サンプリング空間内への挿入に先立って、前記サンプリング空間を通した前記脱着溶媒の流動を確立するステップであって、前記サンプリング空間内の前記脱着溶媒の流率は、前記基質が前記サンプリング空間の中に挿入されるとき、前記開放端部において前記脱着溶媒のドーム様表面プロファイルを生成するように構成される、ステップと、
前記開放端部において前記脱着溶媒の渦巻様表面プロファイルを生成するように、前記脱着溶媒の流動を前記サンプリング空間を介して前記リザーバから前記イオン源に再指向させる前記ステップの間に、前記サンプリング空間内の前記脱着溶媒の流率を調節するステップと
をさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目18)
前記第1の持続期間の間に、前記基質上に吸着されたか、前記基質から脱着されたかのうちの少なくとも1つである検体と反応するための、1つ以上の試薬を前記サンプリング空間に添加するステップをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目19)
試料の化学的組成を分析するためのシステムであって、
脱着溶媒を貯蔵するためのリザーバと、
前記リザーバから脱着溶媒を受容するように構成されるサンプリング空間を部分的に画定する開放端部を有するサンプリングプローブであって、前記サンプリング空間はさらに、前記検体種の少なくとも一部が、基質から前記サンプリング空間内の前記脱着溶媒の中に脱着されるように、基質に吸着された1つ以上の検体種を有する基質の少なくとも一部を、前記開放端部を通して受容するように構成される、サンプリングプローブと、
少なくとも1つのポンプと、脱着溶媒を前記リザーバからイオン源に送達するための少なくとも1つの流体経路とを備える流体取扱システムであって、前記流体取扱システムは、前記サンプリング空間の中への前記サンプリングプローブの挿入の間に前記サンプリング空間内の脱着溶媒の流動を終了させるように構成される、流体取扱システムと
を備える、システム。
(項目20)
前記少なくとも1つのポンプに動作可能に結合され、かつ前記少なくとも1つの経路内の前記脱着溶媒の体積流率を制御するように構成されるコントローラをさらに備え、前記コントローラは、前記サンプリングプローブの挿入の間、前記ポンプをオフにするように構成され、
随意に、前記コントローラは、前記脱着溶媒の中に混入される脱着された検体を有する前記脱着溶媒を前記イオン源に送達するように、第1の基質の引抜に続いて、前記サンプリング空間に提供される前記脱着溶媒の体積流率を増加させるように構成され、前記コントローラは、脱着溶媒を前記サンプリング空間を介して前記リザーバから前記イオン源に流動させるための第1の流体経路が提供される、第1の構成と、前記脱着溶媒を前記リザーバから前記イオン源に流動させるための、かつ前記サンプリング空間をバイパスする第2の流体経路が提供される第2の構成との間で前記流体取扱システムを作動させるように構成される、項目19に記載のシステム。
(項目21)
前記システムはさらに、前記イオン源の放出端部を囲繞する、霧化ガス流動を提供するための霧化ガスの源を備え、前記コントローラは、前記霧化ガスの源に動作可能に結合され、前記コントローラは、前記イオン源の放出端部に提供される前記霧化ガスの流動を終了させることによって、前記サンプリング空間の中への前記サンプリングプローブの挿入の間に、前記サンプリング空間内の脱着溶媒の流動を終了させるように構成される、項目19に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0024】
当業者は、以下に記載の図面が例示目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、出願人の教示の範囲をいかようにも限定することを意図するものでは決してない。
【0025】
図1図1は、概略図において、本出願人の教示の種々の側面による、質量分光計システムのエレクトロスプレーイオン源に流体的に結合される、基質サンプリング界面を備える例示的システムを図示する。
図2図2は、概略図において、本出願人の教示の種々の側面による、図1の例示的基質サンプリング界面を付加的に詳細に図示する。
図3図3A-Bは、本教示の種々の側面による、図1のシステムにおける使用のための例示的サンプリングプローブであって、第1の連続流動モードおよび第2の流動停止モードにおいて、それぞれ、動作される、サンプリングプローブを図式的に描写する。
図4図4A-4Dは、本教示の種々の側面による、連続流動モードおよび第2の流動停止モードの間のサンプリング空間内の脱着溶媒の例示的表面形状を図示的に描写する。
図5図5は、概略図において、本出願人の教示の種々の側面による、サンプル分析のための例示的自動化システムを描写する。
図6図6は、概略図において、サンプル液体の液滴が送達溶媒の中に堆積される、図1のシステム内における使用のための、サンプリングプローブの例示的実施形態を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
明確にするために、以下の議論は、省略することが簡便または適切である場合には、特定の具体的な詳細を省略しつつ、本出願人の教示の実施形態の種々の側面を詳細に説明するであろうことを理解されたい。例えば、代替的実施形態における同等または類似の特徴に関する議論は、幾分、省略され得る。周知のアイデアまたは概念もまた、簡潔にするために、詳細には議論されない場合がある。本出願人の教示のいくつかの実施形態は、具体的に説明された詳細の特定部分を実施のたびに必要としない場合があり、これは、実施形態の深い理解を提供するためのみに本明細書で説明されることを当業者は認識するであろう。同様に、説明される実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、共通的な一般知識による改変または変形の影響を受け得ることは明らかであろう。以下に示す実施形態の詳細な記述は、本出願人の教示をいかようにも限定するものとして見なされるべきものではない。
【0027】
本出願人の教示の種々の側面によると、1つ以上の検体種が、その後のイオン源への送達のために減少された脱着溶媒の体積内のサンプリングプローブ内に挿入されるサンプル基質から脱着されることができるように、イオン源に流体的に結合されるサンプリングプローブ内の脱着溶媒の流動が選択的に制御(例えば、停止)されることができる、MSベースの分析システムおよび方法が、本明細書に提供される。種々の側面では、感度が、(例えば、増加される脱着時間に起因する)より高い脱着効率および/または脱着された検体の減少される希釈に起因して、増加されることができる。種々の側面では、サンプル基質からの検体は、脱着サンプリング界面とイオン源との間に液体クロマトグラフィ(LC)カラムを伴わずに、そこから直接脱着されることができる。加えて、または代替として、本教示の種々の側面は、付加的な処理ステップがサンプリングプローブ内で発生することを可能にするように、サンプリング界面内での脱着溶媒の流率の選択的制御を提供する(例えば、複数のサンプリング、反応等)。本教示の種々の側面によると、脱着溶媒は、1つ以上のポンプ機構およびイオンスプレー源の安定性を維持するように、サンプリング界面の停止された流動条件の間、イオン源に継続的に送達されることができる。
【0028】
図1は、サンプル基質20の表面上に吸着される検体をイオン化および質量分析するための、本出願人の教示の種々の側面による、例示的システム10のある実施形態を図式的に描写し、システムは、サンプリングプローブ30を通してリザーバ50からイオン源60に脱着溶媒を流動させるための第1および第2の流体経路を交互に提供しながら、それぞれ、サンプリングプローブ30をバイパスする流体取扱システム40を含む。図1に示されるように、例示的システム10は、概して、1つ以上のサンプル検体を含有する液体を(例えば、エレクトロスプレー電極64を介して)イオン化チャンバ12の中に放出するためのイオン源60と流体連通する、基質サンプリングプローブ30(例えば、開放ポートプローブ)と、イオン源60によって生成されるイオンの下流処理および/または検出のためのイオン化チャンバ12と流体連通する、質量分析器70とを含む。基質サンプリングプローブ30は、概して、サンプルからの1つ以上の検体が吸着され、脱着溶媒源50と、基質サンプリングプローブ30と、イオン源60との間に延在する流体経路内に設置される、抽出相でコーティングされる表面を有する基質20(例えば、SPME基質)の少なくとも一部を受容するように構成されることができる。このように、サンプル基質20のコーティングされた表面から脱着された検体は、脱着溶媒内をそれによるイオン化のためのイオン源40に流動し得る。下記により詳細に議論されるであろうように、流体取扱システム40は、概して、1つ以上の流体導管、弁、および/またはリザーバ50と、サンプリングプローブ30と、イオン源60との間の液体(例えば、脱着溶媒)の流動を制御するためのポンプを備える。種々の側面では、流体取扱システム40は、脱着溶媒がサンプリングプローブ30を介してリザーバ50からイオン源60に流動する、継続的流動モードと、リザーバ50からの脱着溶媒がイオン源60に送達され続けながら、サンプリングプローブ30をバイパスする、流動停止モードとを含む複数のモードにおいて(例えば、図示されていないコントローラの制御下で)動作されることができる。種々の側面では、全て非限定的な実施例として、流動停止モードの持続期間は、1つ以上の基質20からの検体の脱着、および/またはサンプリングプローブ30への付加的な試薬の添加の間に生じるように選択されることができる。
【0029】
イオン源60は、種々の形態を有することができるが、概して、基質サンプリングプローブ30から受容される液体(例えば、脱着溶媒)内に含有される検体を生成するように構成される。図1に描写される例示的実施形態では、基質サンプリングプローブ30に流体的に結合される毛細管を含むことができるエレクトロスプレー電極64は、イオン化チャンバ12内に少なくとも部分的に延在し、その中に脱着溶媒を放出する出口端部において終端する。当業者によって理解されるであろうように、本教示に照らせば、エレクトロスプレー電極64の出口端部は、カーテンプレート開口部14bおよび真空チャンバサンプリングオリフィス16bに概して(例えば、これらの近傍に)向けられた、複数の微小滴を含むサンプルプルームを形成するように、イオン化チャンバ12に脱着溶媒を、アトマイズ、エアロゾル化、霧化、または別様に放出(例えば、ノズルで噴霧)することができる。当業者に公知のように、微小滴内に含有される検体は、例えば、サンプルプルームが発生させられる際に、イオン源60によってイオン化(すなわち、荷電)されることができる。非限定的な実施例として、エレクトロスプレー電極64の出口端部は、伝導性材料で作製されることができ、電圧源の極(図示せず)に電気的に結合されることができる一方、電圧源の他の極は、接地されることができる。サンプルプルーム内に含有される微小滴は、したがって、液滴内の脱着溶媒がイオン化チャンバ12内での脱溶媒和の間に蒸発するにつれて、そのような荷電した検体イオンが解放され、開口14b、16bに向けまたこれらを通して引き寄せられ、(例えば、1つ以上のイオンレンズを介して)質量分析器70内に集束されるように、出口端部に印加された電圧によって荷電され得る。以下に議論されるように、本教示のいくつかの側面では、脱着溶媒は、1つ以上のポンプ機構およびイオン源60の安定性を維持するように、サンプリング界面の停止流動条件の間、イオン源60に継続的に送達されることができる。イオン源プローブは、概して、エレクトロスプレー電極64として本明細書に説明されるが、液体サンプルをイオン化するための、当技術分野において公知であり、かつ本教示に従って修正される、任意の数の異なるイオン化技法が、イオン源60として利用され得ることを理解されたい。非限定的な実施例として、イオン源60は、エレクトロスプレーイオン化デバイス、霧化器補助エレクトロスプレーデバイス、化学的イオン化デバイス、霧化器補助アトマイゼーションデバイス、フォトイオン化デバイス、レーザイオン化デバイス、サーモスプレーイオン化デバイス、またはソニックスプレーイオン化デバイスであることができる。いくかの側面では、イオン源60は、随意に、例えば、高速霧化流動と液体サンプルのジェットとの相互作用を介して、14bおよび16bによるサンプリングのために、サンプルプルームの形成およびプルーム内でのイオンの解放を促進するように、エレクトロスプレー電極64の出口端部を取り囲み、そこから放出される流体と相互作用する高速の霧化ガス流動を供給する加圧ガス(例えば、窒素、空気、または希ガス)の源を含むことができることを理解されたい。霧化ガスは、例えば、約0.1リットル/分~約20リットル/分の範囲内の種々の流率で供給されることができる。
【0030】
描写された実施形態では、イオン化チャンバ12は、大気圧に維持されることができるが、いくつかの実施形態では、イオン化チャンバ12は、大気圧より低い圧力に排気されることができる。基質20から脱着された検体が、脱着溶媒がエレクトロスプレー電極64から放出されるにつれてイオン化されることができる、イオン化チャンバ12は、カーテンプレート開口14bを有するプレート14aによってガスカーテンチャンバ14から分離される。示されるように、質量分析器70を収容する真空チャンバ16は、真空チャンバサンプリングオリフィス16bを有するプレート16aによってカーテンチャンバ14から分離される。カーテンチャンバ14および真空チャンバ16は、1つ以上の真空ポンプポート18を通した排気によって、選択された圧力(例えば、同一または異なる大気圧より低い圧力、イオン化チャンバより低い圧力)に維持されることができる。
【0031】
質量分析器70は、種々の形態を有することができることもまた、本明細書の教示に照らして、当業者によって理解されるであろう。概して、質量分析器70は、イオン源60によって生成されるサンプルイオンを処理(例えば、フィルタ、ソート、解離、検出等)するように構成される。非限定的な実施例として、質量分析器70は、3連4重極質量分析器または当業者に公知であり、本明細書の教示に従って修正された、任意の他の質量分析器であることができる。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法の種々の側面に従って修正され得る、他の非限定的、例示的質量分光計システムが、例えば、Rapid Communications in Mass Spectrometry(2003; 17: 1056-1064)に公開され、James W. Hager and J. C. Yves Le Blancによって著された、「Product ion scanning using a Q-q-Qlinear ion trap (Q TRAP) mass spectrometer」と題された記事、および「Collision Cell for Mass Spectrometer」と題された米国特許第7,923,681号(参照することによって全体として本明細書によって組み込まれる)に見出されることができる。他の構成は、本明細書に説明されるものに限定されず、当業者に公知である他のものも含み、また、本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法と併せて利用されることができる。例えば、他の好適な質量分析器は、単一4重極、3連4重極、ToF型、トラップ型、およびハイブリッド型分析器を含む。さらに、例えば、イオン化チャンバ12と質量分析器70との間に配置され、それらの質量と電荷の比率ではなく高いおよび低い場における漂流ガスを通したそれらの移動性に基づいてイオンを分離するように構成される、イオン移動度分光計(例えば、微分移動度分光計)を含む、任意の数の付加的な要素が、システム10内に含まれ得ることを理解されたい。加えて、質量分析器70は、分析器70を通過するイオンを検出することができ、例えば、検出された1秒あたりのイオンの数を示す信号を供給し得る検出器を備えることができることを理解されたい。
【0032】
ここで図2を参照すると、SPME基質20からの1つ以上の検体を脱着するための、そして図1のシステムにおける使用に好適である例示的基質サンプリングプローブ30(例えば、開放ポートプローブ)が、図式的に描写されている。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法の種々の側面に従って修正されることができる、他の非限定的な例示的サンプル基質が、例えば、van Berkel et al.によって著され、Rapid Communication in Mass Spectrometry 29(19), 1749-1756に公開され、「An open port sampling interface for liquid introduction atmospheric pressure ionization mass spectrometry」と題された記事(参照することによって全体として組み込まれる)に見出されることができる。示されるように、基質サンプリングプローブ30は、概して、リザーバ50とイオン源60との間に配置され、リザーバ50によって提供される脱着溶媒中に混入される検体がイオン源60に送達され、それによってイオン化され得るように、その間に流体経路を提供する。サンプリングプローブ30は、基質から脱着した検体をサンプリングするための種々の構成を有し得るが、描写される例示的構成は、近位端32aから遠位端32bに延在する外部管(例えば、外部毛細管32)と、外部毛細管32内に同軸に配置される内部管(例えば、内部毛細管34)とを含む。示されるように、内部毛細管34もまた、近位端34aから遠位端34bに延在する。内部毛細管34は、それを通る流体チャネルを提供する、軸上のボアを備え、これは、図2の例示的実施形態に示されるように、液体がプローブ出口導管44cを介して図1の基質サンプリングプローブ30からイオン源40に伝送され得るサンプル導管36を画定する(すなわち、サンプル導管36は、流体取扱システム40を介してエレクトロスプレー電極64の内部ボアに流体的に結合されることができる)。他方では、外部毛細管32の内面と内部毛細管34の外面との間の環状空間が、(例えば、プローブ入口導管44bを介して)脱着溶媒源50に結合される入口端部から(内部毛細管34の遠位端34bに隣接する)出口端部に延在する着溶媒導管38を画定することができる。本教示のいくつかの例示的側面では、内部毛細管34の遠位端34bは、内部毛細管34の遠位端34bと外部毛細管32の遠位端32bとの間に延在し、かつそれらによって画定される基質サンプリングプローブ30の遠位流体チャンバ35を画定するように、(例えば、図2に示されるような距離hだけ)外部毛細管32の遠位端32bに対して陥凹されることができる。したがって、遠位流体チャンバ35は、基質サンプリングプローブ30の開放遠位端と内部毛細管34の遠位端34bとの間に流体を含有するように適合された空間を表す。さらに、サンプリングプローブ30内の図2の矢印によって示されるように、脱着溶媒導管38は、本遠位流体チャンバ35を介してサンプル毛細管36と流体連通する。このように、かつ個別のチャネルの流体流率に応じて、脱着溶媒導管38を通して遠位流体チャンバ35に送達される流体は、その出口端部への、かつその後のイオン源60への伝送のために、サンプル導管36の入口端部に進入し得る。内部毛細管34は、サンプル導管36と、脱着溶媒導管38を画定する、内部毛細管34と外部毛細管32との間の環状の空間とを画定するように上記に説明され、かつ図2に示されているが、内部毛細管34によって画定される導管は、代わりに、(脱着溶媒導管を画定するように)脱着溶媒源50に結合されることができ、内部毛細管34と外部毛細管32との間の環状空間は、(サンプル導管を画定するように)イオン源60に結合されることができることを理解されたい。
【0033】
図2に示されるように、全て非限定的な実施例として、脱着溶媒源50は、脱着溶媒が選択される体積流率で送達され得る供給導管44bを介して(例えば、往復ポンプ、回転型、歯車型、プランジャ型、ピストン型、蠕動型等の容積型ポンプ、隔膜ポンプ、および重力型、衝撃型、遠心型ポンプ等の他のポンプを含む、1つ以上のポンプ機構を介して、液体サンプルを送り込むために使用されることができる)脱着溶媒導管38に流体的に結合されることができる。基質20(例えば、SPMEデバイス)からの検体を脱着させるために有効であり、イオン化プロセスに適している任意の脱着溶媒が、本教示における使用に好適である。同様に、1つ以上のポンプ機構が、サンプル導管36および/またはイオン源60のエレクトロスプレー電極を通した体積流率であって、相互および脱着溶媒導管38を通した脱着溶媒の体積流率と同一またはそれと異なるように選択される体積流率を制御するために提供されることができることを理解されたい。図4を参照して下記に詳細に議論されるように、いくつかの側面では、基質サンプリングプローブ30の種々のチャネルおよび/またはエレクトロスプレー電極44を通したこれらの異なる体積流率は、システム10および/またはサンプリングプローブ30の開放端部における脱着溶媒の表面形状全体を通して流体の移動を制御するように、(例えば、エレクトロスプレー電極の放出端部を囲繞する霧化ガスの流率を調節することによって)独立して調節されることができる。非限定的な実施例として、脱着溶媒導管38を通した体積流率は、遠位流体チャンバ35内の流体が基質サンプリングプローブ30の開放端部から越流し、引抜された基質によって堆積される任意の残留サンプルを清掃し、および/またはいかなる空気中の物質も(例えば、基質の引抜の後、別の基質の挿入の前に)サンプル導管36の中に伝送されないように防止するように、サンプル導管36を通した体積流率に対して一時的に増加されることができる。種々の側面では、本明細書に別様に議論されるように、サンプリングプローブ30の中に入るまたはその中の脱着溶媒の体積流率は、脱着された検体を脱着溶媒のより小さい体積に濃縮させるように、基質の挿入に応じて停止されることができる。
【0034】
図2に示されるように、検体が脱着され得るコーティングされた表面22を有する例示的SPME基質20は、例えば、「A Probe for Extraction of Molecules of Interest from a Sample」と題されたPCT公開第WO2015188282号(その教示は、参照することによって全体として本明細書によって組み込まれる)に説明されるように、コーティングされた表面22が少なくとも部分的に脱着溶媒(例えば、遠位流体チャンバ35内の脱着溶媒)中に配置されるように基質サンプリングプローブ30の開放端部を通して挿入されるように図式的に描写されている。図2に示されるように、非限定的な実施例として、例示的基質20は、その上にSPME抽出相(例えば、層)がコーティングされ、かつ1つ以上の着目検体がサンプルからの抽出の間に脱着され得る延在表面22を備え得る。遠位流体チャンバ35の中に挿入されているコーティングされた表面22上で、遠位流体チャンバ35内の脱着溶媒は、脱着された検体が脱着溶媒を用いてサンプル導管36の入口の中に流動し得るように、コーティングされた表面22上に吸着される1つ以上の検体の少なくとも一部を脱着するために有効であり得る。本教示によるシステムおよび方法における使用のための基質は、概して、それによって提供される脱着溶媒が基質からの1つ以上の着目検体を脱着させるために有効であるように、基質サンプリングプローブ30によって提供される流体経路の中に少なくとも部分的に挿入され得るが、基質構成(例えば、粒子、繊維、ブレード、マイクロ先端、ピン、またはメッシュ)および/またはコーティング(例えば、HLB-PAN、C18-PAN、抗体等)は、特に限定されない。実際には、任意の公知の基質、および当業者に公知である、または今後本教示に従って開発および修正されるコーティング化学物質が、本明細書に開示される方法およびシステムにおいて使用されることができる。本教示の種々の側面に従った使用に好適である他の例示的SPMEデバイスが、例えば、「Method and Devise for Solid Phase Microextraction and Desorption」と題された米国特許第5,691,205号(その教示は、参照することによって全体として本明細書によって組み込まれる)に説明される。
【0035】
本教示による基質サンプリングプローブはまた、例示的描写を表す図2の基質サンプリングプローブ30を伴う種々の構成およびサイズを有し得ることを理解されたい。非限定的な実施例として、内部毛細管34の内径の寸法は、約1ミクロン~約1ミリメートルの範囲内(例えば、200ミクロン)であり、内部毛細管34の外径の例示的寸法は、約100ミクロン~約3または4センチメートルの範囲内(例えば、360ミクロン)であり得る。また、実施例として、外部毛細管32の内径の寸法は、約100ミクロン~約3または4センチメートルの範囲内(例えば、450ミクロン)であり、外部毛細管32の外径の典型的寸法は、約150ミクロン~約3または4センチメートルの範囲内(例えば、950ミクロン)であり得る。内部毛細管34および/または外部毛細管32の断面形状は、円形、楕円形、超楕円形(すなわち、超楕円のような形状をしている)、または均一な多角形(例えば、正方形)であり得る。図1のシステムにおける使用に好適であり、かつ本教示に従って修正されるSPMEサンプリングプローブに関する付加的な詳細が、例えば、「Surface Sampling Concentration and Reaction Probe」と題された米国特許公開第20130294971号、および「Method and System for Formation and Withdrawal of a Sample From a Surface to be Analyzed」と題された米国特許公開第20140216177号(その教示は、参照することによって全体として本明細書によって組み込まれる)に見出されることができる。
【0036】
ここで図3Aおよび3Bを参照すると、本教示の種々の側面による例示的流体取扱システム40が、付加的に詳細に描写されている。示されるように、流体取扱システム40は、リザーバ50に流体的に結合される弁41と、サンプリングプローブ30と、イオン源60とを備える。本明細書に別様に議論されるように、ポンプ(図示せず)が、加えて、流体取扱システム40を通した流体の流動を制御するように提供され得ることが、当業者によって理解されるであろう。描写される流体取扱システム40では、弁41は、本教示の種々の側面による、システム10の構成要素の種々の入口および出口に選択的に結合され得る複数の通路46a、bを有する、四方弁を備える。特に、第1の構成内の弁41は、サンプリングプローブ30のサンプリング空間35を介してリザーバ50からイオン源60への連続的流体経路を提供し得(図3A)、第2の構成内の弁41は、脱着溶媒が、直接リザーバ50からイオン源60に流動しながらサンプリングプローブ30をバイパスする(例えば、サンプリング空間35に送達されている脱着溶媒を伴わずに)ように、流体経路を提供し得る(図3B)。弁41を図3Aの構成から図3Bのものに作動するステップは、サンプリングプローブ30内の脱着溶媒の流動が実質的に停止されるであろうように、サンプリングプローブ30をリザーバ50およびイオン源60から流体的に分離することを理解されたい。なお、イオン源60への流体の流動は、継続する一方、弁は、図3Bに示されるように、例えば、図3Aの構成におけるような実質的に同一の体積流率で流動停止構成にあり、それによって、イオン源60の安定性を維持することができる(例えば、イオン源は、乾燥条件に続いて再平衡される必要はない)。
【0037】
図3Aおよび3Bの例示的描写に示されるように、弁41は、それぞれ、ポート45a-dを介して流体チャネル44a-dに流体的に結合される、複数の通路46a、bを含み得る。例えば、図3Aの連続流動モード構成では、弁41は、脱着溶媒を脱着溶媒導管38に提供するように、リザーバ50の出口チャネル44aとサンプリングプローブ30の入口チャネル44bとの間に延在する流体通路46aを提供する。サンプリング空間35およびサンプル導管36を通して流動された後、脱着溶媒は、次いで、プローブ出口チャネル44c、弁41内の通路46b、およびイオン源入口導管44dを介して、イオン源60に移送されることができる。本教示の種々の側面によると、流体取扱システム40内の流体経路は、弁41を(例えば、手動で、またはコントローラの制御下で電気的に)作動させることによって、(例えば、1つ以上の基質からの検体の脱着のステップの間に)図3Bに示される流動停止モード構成に再構成されることができる。図3Bに描写されるように、例えば、通路46a、bおよびポート45a-dは、通路46aがリザーバ50の出口チャネル44aおよびイオン源入口チャネル44dに直接接続する(それによって、サンプリングプローブ30をバイパスする)一方で、通路46bが、サンプリングプローブ30の入口および出口チャネル44b、cを接続し、したがって、流体流を実質的に有していないサンプリングプローブ30内に閉回路を形成するように、図3Aに示される構成に対して90°時計回りに回転されている。
【0038】
ここで図4A-Dを参照すると、これらの図は、本明細書に説明されるサンプリング方法の前、間、および後に生成され得る、サンプリングプローブ30内の流体流の種々の条件を図式的に表す。図4Aに示されるように、例えば、サンプリング空間35の中への基質の挿入に先立って、脱着溶媒導管38を通した体積流率は、遠位流体チャンバ35内の流体が基質サンプリングプローブ30の開放端部から越流し、以前に挿入された基質によって堆積される任意の残留サンプルを清掃し、および/またはいかなる空気中の物質も(例えば、基質の引抜の後、別の基質の挿入の前に)サンプル導管36の中に伝送しないように防止するように、サンプル導管36を通した体積流率に対して一時的に増加されることができる。ここで図4Bを参照すると、サンプリングプローブ30内の流体の流動が本明細書に別様に議論されるように停止されると、基質20が脱着溶媒の中にサンプリングプローブ30aの軸に対して略垂直の方向に挿入され得るように、開放端部においてドーム形状の表面プロファイルを形成するために、一時的により高い流率もまた、使用されることができる。このように、検体が吸着される表面との接触のためのより大きい面積が、提供され、これは、それによって、脱着効率を増加させ得る。ここで図4Cを参照すると、サンプリングプローブ30のサンプリング空間35はまた、流動停止モードの間にサンプリング空間35に添加される種々の試薬を用いて検体を反応させるために、種々の側面において利用されることができる。実施例として、基質からの検体の脱着の前、間、またはその後に、1つ以上の試薬が、サンプリング空間内に残る、基質20に吸着され、および/または以前にそこから脱着された検体を反応させるように、サンプリング空間35に添加されることができる。代替として、または加えて、複数の基質は、複数の基質からの検体がサンプリング空間35内の脱着溶媒の実質的に同一の体積の中に脱着され得るように、流動停止モードの単一の持続時間の間、サンプリング空間内に挿入されることができる。他の実施形態では、試薬自体が、分析されるべき着目検体を含有し得る。そのような場合、液滴が、脱着された検体がサンプリング空間内に以前に存在した、または存在するであろうかどうかということから独立して、検出されるべきサンプリングプローブの中に分注されてもよい。ここで図4Dを参照すると、(図4Bにおけるような)流動停止モードにおける脱着または(図4Cにおけるような)サンプリング空間内の反応に続いて、流体取扱システム40は、サンプリング空間35内の脱着溶媒の中に脱着された検体が、サンプリングプローブ内の流動が再開されるにつれて、イオン源に送達されるように、その連続流動モード構成に戻るように切り替えられることができる。ある側面では、より低い脱着溶媒流率が、一時的に選択され、それによって、サンプリングプローブの開放端部において渦巻様の表面プロファイルを作成し、MSベースの分析の増加される感度および/またはより鋭いピーク形状をもたらすことができる。
【0039】
ここで図5を参照すると、本教示の種々の側面による別の例示的サンプル分析システム510が、描写されている。システム510は、それが、質量分析器570による分析のためのサンプル基質520から脱着された検体からイオンを生成するように、流体取扱システム540を介してサンプリングプローブ530およびイオン源560に流体的に結合され得るリザーバ550を含むという点で、図1-4を参照して上記に議論されるものに類似する。本明細書に別様に議論されるように、流体取扱システム540は、サンプリングプローブ520のその中への挿入の間にサンプリング空間内の脱着溶媒の流動を終了させるように構成されることができる。
【0040】
図5に示されるように、例示的システム510は、(例えば、コントローラ580の制御下で)自動化されることができ、サンプル基質520を把持する、保持する、または別様にそれに結合するように、サンプルホルダ502に結合される作動機構504(例えば、ロボットアーム、段、電気機械トランスレータ、ステップモータ等)を含むことができる。本教示に従った使用に好適な1つの例示的なロボットシステムが、PAS Technologiesによって販売されるConcept-96オートサンプラである。(例えば、人間の介入を伴わずに)コントローラ580の制御下で、例えば、作動機構504は、例えば、基質の調節(例えば、着目検体の抽出を可能にするための表面のコーティングまたは別様の官能化)、(例えば、渦の有無にかかわらず、コーティングされた表面をサンプル中に浸漬させることによる)サンプルからの検体の抽出/濃縮、(例えば、いくつかの干渉分子、塩分、タンパク質等を除去するように、HO中にそれに脱着された検体を有する基質520を浸漬させることによって)抽出されたサンプルの洗浄、および洗浄された基質520の基質サンプリングプローブ530のサンプリング空間内への挿入を含む、完全なサンプル調製ワークフローを通して基質520を移送するように構成されることができる。本明細書に別様に議論されるように、基質サンプリングプローブ530は、リザーバ550から提供される脱着溶媒を利用して基質520からの検体を脱着するように構成され、脱着された検体は、イオン化/質量分光分析のために、脱着溶媒内からイオン源560/質量分析器570に混入される。
【0041】
図5に示されるように、例示的流体取扱システム540は、脱着溶媒をリザーバ550からプローブ530のサンプリング空間に圧送するように構成される、ポンプ543を備え得る。種々の側面では、ポンプ543は、リザーバからサンプリングプローブ530(およびサンプリング空間の中)への脱着溶媒の体積流率がコントローラ580によって提供される1つ以上の信号に基づいて調節され得るように、コントローラ580に動作可能に結合されることができる。実施例として、コントローラ580は、サンプリング空間内のサンプル基質520の挿入に応じてポンプ543によって脱着溶媒の流動を終了させるように構成されることができる。加えて、または代替として、コントローラは、別の基質520が作動機構502によってその中に挿入される前に、サンプリングプローブ530の開放端部を通して一時的に脱着溶媒を越流させるように、そこからのサンプル基質520の除去の後、サンプリング空間への脱着溶媒の体積流率を増加させるように構成されることができる。
【0042】
上記に記載されるように、システム510はまた、サンプルプルームの形成、および例えば、液体サンプルの高速霧化流動および噴射の相互作用を介して、514bおよび516bによるサンプリングのためのプルーム内のイオン放出を改良するために、エレクトロスプレー電極564の出口端部を囲繞し、そこから放出される流体と相互作用する高速霧化ガス流動を供給する、加圧ガス(例えば、窒素、空気、または希ガス)の源563を含むように示される。霧化ガスは、種々の流率、例えば、約0.1リットル/分~約20リットル/分の範囲内で供給されることができ、これはまた、コントローラ580の影響下で制御され得る。本教示の種々の側面によると、霧化ガスの流率は、サンプリング空間からの脱着溶媒の流率が、例えば、(例えば、ベンチュリ効果に起因して)それがエレクトロスプレー電極564から放出されるにつれて、霧化ガスおよび脱着溶媒の相互作用によって生成される吸引に基づいて(例えば、図2のサンプル導管36を介して)調節され得るように、(例えば、コントローラ580の影響下で)調節されることができることを理解されたい。このように、コントローラ580は、加えて、または代替として、霧化ガスの流率を制御するためのポンプおよび/または弁のうちの1つ以上のものを調節することによって、本教示の種々の側面によるサンプリングプローブを通した脱着溶媒の流率を制御することができる。非限定的な実施例として、コントローラ580は、基質520をその中に挿入する間にサンプリング空間内の脱着溶媒の流動を実質的に終了させるように、ポンプ543および/または(例えば、1つ以上の弁を介して)霧化源563から提供される霧化ガスの流動によって提供される脱着溶媒の流動を終了させるように構成されることができる。
【0043】
基質520から脱着された検体が脱着溶媒がエレクトロスプレー電極564から放出されるにつれてイオン化され得る、イオン化チャンバ512は、カーテンプレート開口514bを有するプレート514aによってガスカーテンチャンバ514から分離される。示されるように、質量分析器570を収容する真空チャンバ516は、真空チャンバサンプリングオリフィス516bを有するプレート516aによってカーテンチャンバ514から分離される。カーテンチャンバ514および真空チャンバ516は、1つ以上の真空ポンプポート518を通した排気によって、選択された圧力(例えば、同一または異なる大気圧より低い圧力、イオン化チャンバより低い圧力)に維持され得る。
【0044】
ここで図6を参照すると、サンプル基質が利用されていない、本教示の別の実施形態が、描写されている。本実施形態では、1つ以上の着目検体が、液体サンプル601内に含有され、1つ以上の着目検体を含有する液体サンプルの1つ以上の液滴が、サンプリングプローブの中に堆積される。そのような実施形態では、本装置は、基質からの検体を脱着するステップにおいて伴われない、導管38内に含有される脱着溶媒が、送達溶媒導管638内に進行する送達溶媒として特徴付けられることを除いて、サンプル基質との併用のために以前に説明されたものに類似する。そのような場合、弁は、第2の構成において動作するときにおけるものと類似する方式で機能し、1つ以上の液滴中に含有される1つ以上の検体は、弁が、検体が分析のためにイオン源に移送されることを可能にする第1の構成に切り替えられる前に、サンプリングプローブ内で濃縮することが可能にされることができる。
【0045】
説明される例示的方法およびシステムは、自動化されたプロトコルにおいて利用され得、液体クロマトグラフィ等の複雑かつ時間のかかるサンプル調製ステップの必要性を低減および/または排除し得ることを、本教示に照らして理解されたい。本教示の種々の側面によると、作動機構(例えば、ロボットアーム、段、電気機械トランスレータ、ステップモータ等)が、コントローラ(図示せず)の制御下で、かつ人間の介入を伴わず、1つ以上の基質を、例えば、サンプル基質20の表面上に吸着された検体の脱着効率および/または感度を増加させるように、本明細書に別様に説明されるような流体取扱システム40の構成と一致するように調節される、サンプリングプローブのサンプリング空間に送達するために利用されることができる。
【0046】
本明細書で使用される節の見出しは、編成目的のみのためであり、限定するものとして解釈されるべきではない。本出願人の教示は、種々の実施形態に関連して記載されるが、本出願人の教示がそのような実施形態に限定されることは意図されない。逆に、本出願人の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、改変、および均等物を包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6