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特開2022-171699太陽電池モジュール用の透明保護シート
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  • 特開-太陽電池モジュール用の透明保護シート 図1
  • 特開-太陽電池モジュール用の透明保護シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171699
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用の透明保護シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20221104BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221104BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221104BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01L31/04 560
B32B7/023
B32B27/36
B32B27/30 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137005
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2021128693の分割
【原出願日】2016-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】在原 慶太
(72)【発明者】
【氏名】中原 敦
(72)【発明者】
【氏名】濱上 元伸
(72)【発明者】
【氏名】古吉 亮介
(57)【要約】
【課題】従来よりも更に高い水準で透明性と耐候性を両立させた透明保護シート、透明性について具体的には、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が90.0%以上である、太陽電池モジュール用の透明保護シートを提供すること。
【解決手段】基材層60と、基材層60の一方の面に耐候接着材層66を介して積層されている耐候層63と、を含んでなり、基材層は、複数の基材樹脂シートが基材接着材層65を介して積層されてなる多層構成の積層体であって、該積層体の総厚さが200μm以上であって、基材接着材層65の屈折率と、該基材接着材層と対面する基材樹脂シートの屈折率との差が、いずれも0.01以下であり、耐候層63の屈折率は、前記基材層の屈折率より小さく、耐候接着材層66の屈折率と耐候層63の屈折率との差、及び、耐候接着材層66の屈折率と基材層60の屈折率との差が、いずれも0.20以下である透明保護シート6とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュール用の透明保護シートであって、
ポリエステル系樹脂をベース樹脂とする基材層と、
フッ素系樹脂をベース樹脂とする樹脂層であって、前記基材層の一方の面に耐候接着材層を介して積層されている耐候層と、を含んでなり、
前記基材層は、複数の基材樹脂シートが基材接着材層を介して積層されてなる多層構成の積層体であって、該積層体の総厚さが200μm以上であって、前記基材接着材層の屈折率と、該基材接着材層と対面する前記基材樹脂シートの屈折率との差が、いずれも0.01以下であり、
前記耐候層の屈折率は、前記基材層の屈折率より小さく、
前記耐候接着材層の屈折率と前記耐候層の屈折率との差、及び、前記耐候接着材層の屈折率と該耐候接着材層に接合されている前記基材層の屈折率との差が、いずれも0.20以下である、
透明保護シート。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂が、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート樹脂である、請求項1に記載の透明保護シート。
【請求項3】
太陽電池素子と封止材とを含んでなり、請求項1又は2に記載の透明保護シートが、最外層に配置されている太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記封止材がポリエチレン系樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂である請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用の透明保護シートに関する。詳しくは、太陽電池モジュールにおいて、いずれかの最外層に配置して用いることができる透明な保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。一般に、太陽電池を構成する太陽電池モジュールは、受光面側から、透明前面基板、前面封止材、太陽電池素子、背面封止材及び保護シートが順に積層された構成であり、太陽光が上記の太陽電池素子に入射することにより発電する機能を有する。尚、保護シートは、裏面保護シートとして用いられるのみならず、ガラス等の透明前面基板に代えて表面保護シートとして用いられる場合もある。
【0003】
そして、太陽電池モジュールは、長期間にわたって屋外で使用される。そのため、太陽電池モジュールを構成する上記の各部材には長期間にわたって屋外における過酷な環境に耐え得る耐久性が求められる。中でも保護シートには特に高い耐候性が要求される。
【0004】
このように高い耐候性を要求される太陽電池モジュール用の保護シートとしては、従来、フッ素系フィルムが広く用いられてきた。しかし、製造コスト削減や軽量化の要請への対応として、ポリエチレンテフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂を基材シートとして、耐候性を高めたコーティングタイプの保護シートが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方で、近年、所謂シースルータイプや両面採光タイプの太陽電池モジュール用として用いる保護シートとして、上記の耐候性を保持した上で、更に透明性をも有する保護シートが求められている(特許文献2参照)。
【0006】
太陽電池モジュール用の透明保護シートには、耐候性と透明性が高い水準で求められる。この要求に応えるために、透明性を有する熱可塑性樹脂等で形成した基材層に、高い耐候性を付与するための耐候層を更に積層した多層構成からなる各種の透明保護シートが開発されている(特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、透明保護シートが多層構成である場合、各層間の屈折率の差異に起因して起こる界面での光線反射が透明性の向上を妨げるため、耐候性を担保するために多層構成とした透明保護シートにおける透明性の向上には、構造上一定の限界があるのが現状であった。尚、ポリエステル系樹脂の屈折率は、一般的なポリエチレンテレフタレート(PET)で1.65程度、又、一般的なポリエチレンナフタレート(PEN)で1.77程度である。これらの樹脂を積層した積層体の波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、80~85%程度が上限側の限界であった。
【0008】
尚、本明細書における「透明」とは「可視光域及び近赤外線領域の光線を透過」可能であることを言い、より詳しくは、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が、少なくとも80%以上であることを意味するものとする。従来の透明保護シートもこの水準では透明ではあると言えるものであるが、本発明の透明保護シートは、これを大きく上回る高度の透明性(光線透過率90.0%以上)を有するものである。又、本明細書における「光線透過率」とは、特段の断りがない場合、JIS-K-7105又はJIS-K-7136に準拠して測定された波長400nm以上1200nm以下における光線透過率のことを言うものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2010-519742号公報
【特許文献2】特開2012-040842号公報
【特許文献3】特開2012-040842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、ポリエステル系樹脂を基材樹脂として用いた保護シートであって、従来よりも更に高い水準で透明性と耐候性を両立させた透明保護シート、透明性について具体的には、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が90.0%以上である、太陽電池モジュール用の透明保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、透明保護シートの基材層の屈折率を基準にして、各層間に介在する接着材層も含めた全ての層の屈折率を最適化し、更に、外気との接触面となる耐候層としては、相対的に屈折率の小さい樹脂層を配置することによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1) 太陽電池モジュール用の透明保護シートであって、屈折率が1.50以上1.60以下であるポリエステル系樹脂をベース樹脂としてなる基材層と、前記基材層の一方の面に耐候接着材層を介して積層されている耐候層と、を含んでなり、前記耐候層の屈折率が1.35以上1.45以下であり、前記耐候接着材層の屈折率と前記耐候層の屈折率との差、及び、前記耐候接着材層の屈折率と該耐候接着材層に接合されている前記基材層の屈折率との差が、いずれも0.20以下である透明保護シート。
【0013】
(2) 前記基材層が、前記ポリエステル系樹脂からなる複数の基材樹脂シートが基材接着材層を介して積層されてなる多層構成の積層体であって、前記基材接着材層の屈折率と、該基材接着材層と対面する前記基材樹脂シートの屈折率との差が、いずれも0.01以下である(1)に記載の透明保護シート。
【0014】
(3) 前記基材樹脂シートが、いずれも、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート樹脂である(2)に記載の透明保護シート。
【0015】
(4) 前記基材層の他方の面には、易接着層が形成されていて、前記易接着層の屈折率と前記基材層の屈折率との差が0.05以下である、(1)から(3)のいずれかに記載の透明保護シート。
【0016】
(5) 波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が90.5%以上である(1)から(4)のいずれかに記載の透明保護シート。
【0017】
(6) 太陽電池素子と接着材とを含んでなり、(1)から(5)のいずれかに記載の透明保護シートが、最外層に配置されている太陽電池モジュール。
【0018】
(7) 太陽電池素子と接着材とを含んでなり、(4)に記載の透明保護シートが、最外層に配置されている太陽電池モジュールであって、前記透明保護シートの前記易接着層に前記接着材が積層されている太陽電池モジュール。
【0019】
(8) 前記接着材がポリエチレン系樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂である(6)又は(7)に記載の太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ポリエステル系樹脂を基材樹脂として用いた保護シートであって、従来よりも更に高い水準で透明性と耐候性を両立させた透明保護シート、透明性について具体的には、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が90.0%以上である、太陽電池モジュール用の透明保護シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の太陽電池モジュール用の透明保護シートを用いた太陽電池モジュールの層構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明の太陽電池モジュール用の透明保護シートの層構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の太陽電池モジュール用の透明保護シートについて詳細に説明する。本発明は以下に記載される実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<太陽電池モジュールの基本構成>
先ず、本発明の透明保護シートが使用される太陽電池モジュールの基本構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュール1について、その層構成の一例を示した断面模式図である。太陽電池モジュール1は、図1に示すように受光面側から、透明前面基板2、前面封止材3、太陽電池素子4、背面封止材5、透明保護シート6が順に積層された構成である。尚、本発明における透明保護シートは、必ずしも非受光面側に配置されるものには限定されず、上述のように、例えば、ガラス製の透明前面基板に代えて受光面側に配置する表面側の透明保護シートとしても使用することができる。
【0024】
<透明保護シート>
本発明の透明保護シート6を、図2を用いて説明する。透明保護シート6は、太陽電池モジュール用の保護シートであって、太陽電池モジュール1のいずれかの最外層に配置されることが想定されている。よって、透明性に加えて高い耐候性を有するものであることが求められる。
【0025】
透明保護シート6は、多層構成の樹脂シートであり、少なくとも、基材層60と、その一方の表面に耐候接着材層66を介して積層されている耐候層63とを含んで構成されている。又、基材層60の他方の表面には、背面封止材5等の太陽電池モジュール用の接着材との密着性を向上させる易接着層64が形成されていることが好ましい。
【0026】
尚、基材層60は単層の基材樹脂シートであってもよいが、図2に示すように第1基材層61と、第2基材層62とが基材接着材層65を介して積層されている多層構成の積層体であることがより好ましい。基材層60を、このような多層構成とする場合、例えば、耐候層63の側に配置される第1基材層61を、第2基材層62と比較して、より耐候性の高い層とする構成をより好ましい層構成の一例として挙げることができる。具体的には、第1基材層61と、第2基材層62を同種のポリエステル系樹脂で構成しながら、第1基材層61のみをアニール処理が施された樹脂とする構成等を例示することができる。
【0027】
以上の基本構成からなる透明保護シート6は、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が90.0%以上、好ましくは90.5%以上である。又、透明保護シート6を構成する各層毎における上記の光線透過率は、必ずしも全ての層において90.0%以上であることを要しない。以下に詳細を説明する通り、多層構成の各層間の界面において相互に密着している樹脂層同士の屈折率の差が所定範囲内となるように全体設計を最適化することによって、層間の界面における反射率を抑えて、透明保護シート全体としての高度の透明性、即ち、上記の光線透過率を実現している点が透明保護シート6の層構成上における特徴となっている。上記の「樹脂層同士の屈折率の差が所定範囲内」にある態様の具体的な説明は以下において、各層毎の詳細とともに説明する。
【0028】
尚、透明保護シート6は、太陽電池モジュール1として一体化されて用いられる際には、耐候層63が太陽電池モジュール1の最外層側に露出する面となる。又、易接着層64が形成されている場合には、この易接着層64が背面封止材5等の他の樹脂基材との密着面となるようにして用いられる。
【0029】
[基材層]
透明保護シート6に上記の高度な透明性を備えさせるために、その主たる構成部分である基材層60には当然に高い透明性が求められる。具体的には、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が88%以上であることが好ましい。
【0030】
基材層60には、上記の透明性のみならず、その屈折率が本願所定の独自の範囲にあることが求められる。具体的には、透明保護シート6の基材層60を構成する樹脂としては、屈折率が1.50以上1.60以下の範囲にある樹脂を用いることができる。尚、「屈折率」とは、波長589.3nmの光(ナトリウムのD線)について、真空中の光速度cを、当該樹脂基材(媒質)中の光速度vで割った値のことを言う。このような屈折率に係る要件を満たす透明な樹脂であり、且つ、耐候性にも優れる樹脂として、透明保護シート6においては、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート(HR-PET)を、基材層60を構成する樹脂として好ましく用いることができる。
【0031】
ここで、太陽電池モジュール用の保護シートにおいて、一般に、透明性を有し、尚且つ、保護シートに求められる耐候性も備える樹脂材料として、経済性や加工性等も考慮した場合に、基材層を形成する樹脂として、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂を挙げることができる。しかしながら、一般的なポリエステル系樹脂は、通常、屈折率が1.60を超えるものが多い。一般的なPETの屈折率は1.65程度、一般的なPENの屈折率は1.77程度である。よって、これらの汎用的なポリエステル系樹脂は、透明保護シート6の基材層60を構成する樹脂としては不適当である。透明保護シート6は、独自の発想によって、従来、太陽電池モジュール用の保護シートにおいては看過されてきた、各層毎の屈折率に着目することにより、基材層60を構成するポリエステル系樹脂を、特定の屈折率(屈折率が1.50以上1.60以下)を有するポリエステル系樹脂、好ましい具体例として、実質的には、屈折率が1.58程度である耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート(HR-PET)に特定した点に、従来の一般的な保護シートにおける樹脂材料選択との顕著な差異がある。尚、上記の屈折率の条件を備えるポリエステル系の透明樹脂であって、これをHR-PETに替えて用いたものであっても本発明の範囲内であることは言うまでもない。
【0032】
尚、太陽電池モジュール用の保護シートに求められる耐候性も備える樹脂材料としては、他にフッ素系樹脂の選択も考えられる。しかしながら、フッ素系樹脂は、柔らかく伸びやすい為に、接着剤等の塗工後の乾燥時に伸びが発生する等の不具合が生じ易い。この点において、ポリエステル系樹脂の方が太陽電池モジュール用の保護シートの基材層を形成する樹脂として有利である。
【0033】
そして、基材層60が図2に示すように、第1基材層61と第2基材層62とが基材接着材層65を介して積層されている多層構成である場合には、上記同様、第1基材層61及び第2基材層62のいずれにも、HR-PETに代表される屈折率が1.50以上1.60以下の範囲にある透明なポリエステル系樹脂を用いることができる。
【0034】
基材層60を構成する基材樹脂シートは、上述のHR-PET等を、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他の成膜化法を用いて成膜することによって得ることができる。基材層60の厚さは、特に限定されないが、総厚さが、200μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層60の総厚さが200μm未満であると、絶縁性が低下するという点で好ましくない。又、この厚さが、300μmを超えると加工適性の点で好ましくない。
【0035】
上述の理由で基材層60の総厚さを200μm以上とする場合、厚さが200μm以上の単層の基材樹脂シートでこれを構成することもできるが、厚さ100μm以上の複数の基材樹脂シートを積層してこれを構成することがより好ましい。一般的に、PETをベース樹脂とする基材樹脂シートは、厚さが150μm程度以上の厚さが大きいシートとなった場合には、製膜時に延伸倍率が低下することにより、分子の配向性が低下して、耐加水分解性が十分に発現しないリスクが高まる。又、この場合、基材樹脂シートの表層と中心部で配向性に差が生じることに起因して製造途中でのカールが生じ易くなる場合もある。基材層60を、厚さ100μm以上150以下のPETをベース樹脂とする基材樹脂シートを積層した多層シートとすることにより、このようなリスクを回避することもできる。
【0036】
基材層60は、本発明の効果を害さない範囲内で、上記樹脂以外の成分を含有していてもよい。又、例えば、加工性、耐熱性、耐光性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤、その他の樹脂等を添加することができる。これら添加剤等の添加量としては、特に限定されず、その目的に応じて、任意に添加することができる。一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、滑剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、改質用樹脂等を挙げることができる。
【0037】
(基材接着材層)
基材層60が、図2に示すような多層構成である場合、第1基材層61と、第2基材層62とを接着する基材接着材層65にも透明性が求められる。又、透明保護シート6においては、この基材接着材層65に、単なる透明性のみではなく、その屈折率も基材層60を構成する各樹脂層との相対的な関係において特定範囲に調整されている。これにより、透明保護シート6は、基材層60を多層構成とする場合における、基材接着材層65と、第1基材層61及び第2基材層62との各界面での光線反射率を低減して、透明保護シート6の高い透明性を保持している。具体的に、基材接着材層65の屈折率については、当該基材接着材層65と対面する第1基材層61及び第2基材層62を構成する基材樹脂シートとの屈折率の差が、いずれも0.01以下となるようにする。
【0038】
尚、この基材接着材層65及び後述する耐候接着材層66等、透明保護シート6を構成する接着材層他、各層毎の屈折率は、JISK7142に従って、アタゴ製 アッベ屈折率計 DR-M2 を使用して測定することができる。より詳細には、接着剤層、プライマー層の屈折率測定については、離型フィルム上にミヤバーにて塗工し、その後乾燥、更に、その上に塗工、乾燥を繰り返して、200μm程度の厚みの測定サンプルを作成し、上記同様にJISK7142に従って、アタゴ製 アッベ屈折率計 DR-M2 を使用して測定することができる。
【0039】
透明であって、且つ、上記範囲の屈折率を有する基材接着材層65を形成するための接着材として、例えば、特開2012―79868号公報に開示されている「特定のポリウレタンジオールと、脂肪族ポリカーボネートジオールとの混合物を含む主剤と硬化剤からなる2液タイプのラミネート接着材」を用いることができる。
【0040】
上記接着材の主剤成分は、ポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールとの混合物を含むことを特徴とする。主剤を構成するポリウレタンジオール及び脂肪族ポリカーボネートジオールは、ともに水酸基を有するポリオールであり、イソシアネート基を有する硬化剤と反応して、基材接着材層65を構成することができる。
【0041】
主剤成分のポリウレタンジオールは、ウレタン構造をその繰り返し単位とし、その両末端に水酸基を有するポリウレタンである。ポリウレタンジオールの水酸基価は、10~50mgKOH/gの範囲であることが好ましい。ポリウレタンジオールは、接着材の主剤成分として、その接着性及び耐候性を向上させるため、脂肪族ポリカーボネートジオールと、1,6へキサンジオールとイソホロンジイソシアネートを反応させて得られる。
【0042】
脂肪族ポリカーボネートジオールは、市販のものを使用することもできる。耐久性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性に優れた接着材を得るため、例えば、数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)、数平均分子量2000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5662」)を好適に使用することができる。
【0043】
尚、脂肪族ポリカーボネートジオールと、1,6へキサンジオールとイソホロンジイソシアネートを反応させる場合に使用することができる溶剤としては、これらの化合物を溶解させることができ、溶剤と反応しないものであれば、特に制限されるものではないが、相溶性とラミネート時の加工性の観点から酢酸エチル等のカルボン酸エステル系の溶剤を挙げることができる。
【0044】
接着材層の厚さは、透明保護シート6に必要な透明性及び接着強度等に応じて適宜変更すれば良く、例えば1.0μm以上10μm以下の厚さが挙げられる。
【0045】
[耐候層]
耐候層63は、透明保護シート6の最外層に積層されて基材層60を保護するために積層される層である。耐候層63は、基材層60の一方の表面に、耐候接着材層66を介して耐候性を有する樹脂シート(耐候樹脂シート)を積層することによって形成する。透明保護シート6の透明性を維持するために、耐候層63にも基材層60と同等の透明性が求められる。又、透明保護シート6の耐候層63を構成する樹脂は、その屈折率が1.30以上1.50以下、好ましくは1.35以上1.45以下の範囲にある樹脂を用いる。
【0046】
一般に透明保護シートの耐候層を構成する樹脂としては、透明性と優れた耐候性を兼ね備えるフッ素系樹脂が用いられる。そのようなフッ素系樹脂の具体例として、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニル・エステル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等を例示することができるが、透明保護シート6においては、屈折率が1.4程度であるETFEを、耐候層63を形成する耐候樹脂シートとして好ましく用いることができる。
【0047】
(耐候接着材層)
耐候層63を基材層60の表面に接着する耐候接着材層66にも、上述の基材接着材層65と同様の透明性が求められる。又、透明保護シート6においては、この耐候接着材層66に、単なる透明性のみではなく、その屈折率も耐候層63の屈折率との相対的な関係において特定範囲にあるものを用いる。これにより、透明保護シート6は、耐候接着材層66と基材層60及び耐候層63との各界面での光線反射率を低減して、透明保護シート6の高い透明性を保持している。具体的に、耐候接着材層66の屈折率については、当該基材接着材層65と対面する耐候層63との屈折率の差、及び当該基材接着材層65に接合されている基材層60との屈折率の差が、いずれも0.20以下となるようにする。尚、基材層60が、図2に示すように第1基材層61と第2基材層62とからなる場合においては、上記の「屈折率との差」とは、耐候接着材層66と接している第1基材層61との屈折率の差を意味するものとする。
【0048】
透明であって、且つ、上記範囲の屈折率を有する耐候接着材層66を形成するための接着材としても、上記の基材接着材層を構成する接着材と同様の接着材を用いることもできるし、特定のポリウレタンジオールと、脂肪族ポリカーボネートジオールとの混合物を含む主剤と硬化剤からなる2液タイプのラミネート接着材に紫外線吸収剤を添加した、耐候性に優れる接着材を用いることもできる。
【0049】
[易接着層]
易接着層64は、所謂プライマー層であり、図2に示す通り、透明保護シート6の基材層60における、耐候層63が積層されている面とは反対側の他の表面に形成される。易接着層64にも、透明保護シート6の透明性を維持するために、基材層60と同等の透明性が求められる。又、透明保護シート6の易接着層64は、その屈折率について、当該易接着層の屈折率と基材層60の屈折率との差が0.05以下とすることができるようにこれを形成する。このような屈折率範囲になる易接着層64を構成するプライマー組成物として、透明保護シート6においては、オレフィン系樹脂を含有し水性媒体を主溶剤とするプライマー組成物を特に好ましく用いることができる。尚、基材層60が、図2に示すように第1基材層61と第2基材層62とからなる場合においては、上記の「屈折率との差」とは、易接着層64と接している第2基材層62との屈折率の差を意味するものとする。
【0050】
易接着層64を形成するために用いる上記のプライマー組成物(以下、単に「プライマー組成物」とも言う)に含まれるオレフィン系樹脂は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを含んでなる、酸変性ポリオフィン樹脂であることが好ましい。又、当該酸変性ポリオフィン樹脂は、JIS K7210に準拠して測定した190℃、荷重2.16kgにおけるMFRが0.01g/10min以上100g/10min未満であることが好ましい。これによりプライマー組成物段階での水性媒体への良好な分散性を保持し、尚且つ、背面封止材5を形成するオレフィン系樹脂への接着性に優れる易接着層64を形成することができる。
【0051】
尚、本発明の易接着層64が、例えば、ポリエステル系樹脂等からなる基材層60と、EVAや低密度ポリエチレン等のオレフィン系樹脂からなる背面封止材5との間の接着性を顕著に高めうるものであることは、例えば、特開2013-74172号公報の記載からも明らかである。
【0052】
プライマー組成物に含有される酸変性ポリオレフィン樹脂の主成分であるオレフィン成分は特に限定されない。エチレン、プロピレン、イソブチレン、2-ブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素数2~6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いることもできる。又、プライマー組成物に含有される酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸成分により酸変性されたポリオレフィン樹脂である。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0053】
酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは、0.2質量%以上8質量%以下である。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%未満の場合は、水性分散体への分散性が不十分となる傾向がある。一方、含有量が10質量%を超える場合は、背面封止材5を形成するオレフィン系樹脂との接着性や、耐水性が低下する傾向がある。
【0054】
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体における酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径は、接着性や分散安定性の観点から0.5μm以下であることが好ましく、0.01~0.4μmの範囲であることがより好ましく、0.02~0.3μmが特に好ましい。又、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体のpHは、分散安定性の観点からpH7~12の範囲であることが好ましく、pH8~11がより好ましい。
【0055】
酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、エチレン-アクリル酸エチル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル-(無水)マレイン酸共重合体等のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0056】
プライマー組成物において、酸変性ポリオレフィン樹脂は水性分散体として利用することが必要である。酸変性ポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に分散させることで水性分散体に加工することが可能である。分散させる方法としては、自己乳化法や強制乳化法等公知の分散方法を採用すればよい。酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体としては、水性媒体中で酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を塩基性化合物によって中和することで得られるアニオン性の水性分散体とすることが、接着性の観点から好ましい。
【0057】
プライマー組成物において、酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化させる際に主溶剤として用いる水性媒体は、水又は、水を含む液体からなる媒体である。具体的には、プライマー組成物の溶剤は、主溶剤として水性媒体を用い、当該水性媒体の当該溶剤100質量部に対する含有量は、50質量部を超えて100質量部以下、好ましくは、70質量部以上100質量部以下である。
【0058】
又、プライマー組成物は、本発明の上記効果の発現を阻害しない範囲で、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体中に、更に補助溶剤としてSP値が特定範囲にある有機溶剤を含ませることができる。具体的には、プライマー組成物の溶剤は、補助溶剤として有機溶剤が含まれている場合には、当該有機溶剤の当該溶剤100質量部に対する含有量は0質量部以上50質量部未満、好ましくは、0質量部以上30質量部未満である。又、この有機溶剤は、赤外線透過性暗色層を構成する主剤樹脂のSP値に応じて、当該樹脂の溶解性が少なくなるようなSP値を有するものであることを観点として、適宜選択することが好ましい。例えば、赤外線透過性暗色層の主剤樹脂として、SP値が、一般に10程度であるポリカーボネートポリウレタンが用いられている場合であれば、補助溶剤とする有機溶剤として、SP値が12程度である有機溶剤を必要に応じて用いることができる。このような有機溶媒の代表的な例としてイソプロピルアルコール(SP値:11.9)、1-プロパノール(同:11.9)、エタノール(同:12.7)等を用いることができる。
【0059】
その他、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散化を促進するための不揮発性の分散助剤として、例えば、乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子等を適宜添加することができる。尚、不揮発性の分散助剤の他、プライマー組成物に添加することにより、その物性を更に好ましいものとすることができる各種の添加剤やその他の添加樹脂として、より具体的には、上記特許文献(特開2014-240174号)に開示されている不揮発性分散助剤他、各種の添加剤等を、適宜好ましく用いることができる。
【0060】
[各層の屈折率について]
以上、説明した通り、透明保護シート6においては、各樹脂層同士の屈折率の差が所定範囲内となるようにされている。具体的には、基材層として用いるHR-PETの屈折率が1.58程度でることを基準として、まず太陽電池モジュール1として一体化された際に外気との界面となる耐候層63に屈折率が1.45以下の樹脂を配置することによって、最外面における下記の式1によって計算される理論状の反射率を低減し、更に、その他の界面における屈折率の差異を極小化して当該界面における上記反射率を極小化している。一例として、空気(屈折率:1.00)と耐候層63(屈折率:1.45)の界面における反射率(%)は、{(1.00-1.45)/(1.00+1.45)}×100=3.4(%)となる。又、各接着材層とこれに対面している各樹脂基材との屈折率との差を上述した範囲内にすることにより、各界面における上記反射率を、0.1%未満とすることができる。
【0061】
反射率(R)=((n1-n2)/(n1+n2)
(n1、n2は、界面上で密着している各樹脂基材の屈折率) (式1)
【0062】
<太陽電池モジュールの製造方法>
太陽電池モジュール1は、例えば、上記の透明前面基板2、前面封止材3、太陽電池素子4、背面封止材5、及び透明保護シート6からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。例えば真空熱ラミネート加工による場合、ラミネート温度は、130℃~190℃の範囲内とすることが好ましい。又、ラミネート時間は、5~60分の範囲内が好ましく、特に8~40分の範囲内が好ましい。このようにして、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュール1を製造することができる。
【実施例0063】
以下、実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
<透明保護シートの製造>
実施例及び比較例透明保護シートを、下記の樹脂シート、材料組成物、及び、接着材等を用いて製造した。各透明保護シートの層構成は表1に記載の通りとした。先ず各樹脂シートを下記の接着材を用いて接合した積層体とし、これらを実施例1及び比較例の透明保護シートとした。但し、実施例2については、上記の積層体に、更に、下記方法により、易接着層を形成して透明保護シートを製造した。
【0065】
(基材層)
基材層を構成する基材樹脂シートとして、厚さ125μm又は250μmの耐加水分解ポリエチレンテレフタレート(HR-PET)フィルム(AP(帝人デュポンフィルム社製))を用いた。表1において、厚さ125μmのフィルムを「PET125」、厚さ250μmのフィルムを「PET250」と記した。尚、比較例3の基材層を構成する基材樹脂シートのみ、厚さ250μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(Q51(帝人デュポンフィルム社製))を用いた、表1において、これを「PEN」と記した。
【0066】
(耐候層)
耐候層を構成する耐候樹脂シートとして、厚さ25μmのETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)フィルム(アフレックス25ND(旭硝子社製))を用いた。これを、表1において、「ETFE25」と記した。
【0067】
(易接着層)
基材層上に、易接着層を形成する材料として下記のプライマー組成物を用いた。同プライマー組成物を、塗布量1.0g/mで、グラビアコートで基材層の表面に塗布し、これを塗膜成形させて、厚さ1.0μmの易接着層を形成した。これを、表1において、「Pr1」と記した。
プライマー組成物:水59質量部、酸変性ポリオフィン樹脂18質量部、アクリル樹脂1質量部未満、IPA18質量部、トリエチルアミン1質量部未満、ワックス3質量部からなるプライマー組成物。
【0068】
(接着材層)
以下の方法(a)~(c)の工程により基材接着材層及び耐候接着材層を形成する接着材を製造した。製造した接着材による接合は、接着材を溶剤酢酸エチルに溶解し、硬化後膜厚が5.0μmとなるようにグラビアコートし、30~50℃、70~200時間のエージング処理をして硬化させることによって行った。これを、表1において、「AD」と記した。
(a) 主剤成分の製造
窒素雰囲気下、撹拌機を備えたフラスコに数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)100質量部、1、6-ヘキサンジオール(5質量部)、イソホロンジイソシアネート(27.5質量部)、酢酸エチル(132.5質量部)を加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm-1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、ポリウレタンジオールの50%溶液を得た。
主剤成分である脂肪族ポリカーボネートジオールとして、脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)を準備した。
上記で製造した主剤成分であるポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールを使用して、主剤を調製した。主剤の調製は、ポリウレタンジオール100質量部に対して、脂肪族ポリカーボネートジオールを15質量部配合することにより行った。
(b) 硬化剤の製造
硬化剤の材料としては、イソホロンジイソシアネートのヌレート体と、ヘキサメチレンジイソシアネート系2官能ポリウレタンジイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製「デュラネートD101」)を用いた。その配合割合(質量)は、イソホロンジイソシアネートのヌレート体:ヘキサメチレンジイソシアネート系2官能ポリウレタンジイソシアネートを40:60とした。尚、上記配合割合(質量)は、溶剤を含まない固形質量比であるが、製造に際しては固形分50%に調製した。
(c) 主剤と硬化剤の配合
上記で製造した主剤と硬化剤を使用し、接着材を製造した。又、主剤と硬化剤の配合は、主剤、硬化剤を溶剤に溶解させて、それぞれ50質量%(酢酸エチル溶液)とし行った。尚、上記硬化剤には、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを接着材全体に対して1.2%の割合で添加した。
【0069】
<透明保護シートの評価>
実施例、比較例の各透明保護シートの透明性を評価する為に、日本分光製V670を使用し、JIS K7361-1:1997に準じて、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
<透明保護シートの各層の屈折率及び各層間界面における反射率>
本発明の構成と作用効果の相関を確認するための参考試験として、実施例3の透明保護シートについて、<段落0038>に記載の測定方法によって各層の屈折率を測定し、<段落0059>に記載の式1によって、各層間界面における反射率の理論値を算出した。測定及び算出結果を表2に示す。尚、耐候層は外気(空気)と、易接着層は、EVA樹脂からなる封止材と接して界面を構成する態様を想定した。又、その他の樹脂シートの屈折率についても測定したが、PENについては、1.77であった。
【0072】
【表2】
【0073】
表1及び表2より、本発明の透明保護シートは、耐候性及び好ましくは基材接着性を高めるための機能層が積層されてなる多層構成の保護シートでありながら、極めて高い透明性を有するものであることが分かる。
【符号の説明】
【0074】
1 太陽電池モジュール
2 透明前面基板
3 前面封止材
4 太陽電池素子
5 背面封止材
6 透明保護シート
60 基材層
61 第1基材層
62 第2基材層
63 耐候層
64 易接着層
65 基材接着材層
66 耐候接着材層
図1
図2