(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171730
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】多量体タンパク質の純度の決定
(51)【国際特許分類】
G01N 33/561 20060101AFI20221104BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20221104BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20221104BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20221104BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221104BHJP
【FI】
G01N33/561
C07K16/46 ZNA
C07K16/00
C12N5/10
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139802
(22)【出願日】2022-09-02
(62)【分割の表示】P 2021092988の分割
【原出願日】2016-05-11
(31)【優先権主張番号】62/160,341
(32)【優先日】2015-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ムスサミ カティル
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ジャン-カエ
(57)【要約】
【課題】ポリペプチド複合体としてなるタンパク質生成物における、ヘテロ二量体とホモ二量体とを区別して定量する方法。
【解決手段】混合物中にある特定の分子実体を検出及び定量化するための、改良されたキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、アフィニティーキャピラリー電気泳動(ACE)、及び部分充填ACE(PF-ACE)のシステム及び方法が提供される。ヘテロ二量体の二重特異性抗体は、製造中、ホモ二量体種と共に生成されることがしばしばあり、このことによって二重特異性抗体の定量化に混乱が生じ得る。二重特異性のヘテロ二量体及びホモ二量体の混合物中にある特定のホモ二量体を検出するキャピラリー電気泳動システム及び方法が開示される。二重特異性抗体のサブユニットのうちの1つに結合することができるリガンドは、混合物と接触して、電気泳動移動度が減少した複合体を形成し、これによって非結合のホモ二量体の検出が可能になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性抗体とその単一特異性抗体副生成物との混合物中の単一特異性抗体を定量化するための方法であって、該方法が
(a)二重特異性抗体とその単一特異性抗体副生成物との混合物をリガンドと組み合わせる工程であって、
該単一特異性抗体副生成物が、第1の単一特異性抗体および第2の単一特異性抗体からなり、
該二重特異性抗体が、第1のエピトープに特異的な第1のサブユニットおよび第2のエピトープに特異的な第2のサブユニットを含み、
該第1の単一特異性抗体は、2つの同一の第1のサブユニットを含み、
該第2の単一特異性抗体は、2つの同一の第2のサブユニットを含み、
該リガンドは、該第2のサブユニットに結合することができ、かつ該第1のサブユニットには結合しない、工程、
(b)工程(a)の組み合わせをキャピラリーにアプライする工程、
(c)該キャピラリー全体に電圧を印加する工程、
(d)該リガンドに結合していない第1の単一特異性抗体を、該リガンドに結合している二重特異性抗体および第2の単一特異性抗体と比較して、キャピラリー内をより速く移動させる工程、
(e)該結合していない単一特異性抗体を定量化する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
二重特異性抗体とその単一特異性抗体副生成物との混合物中の単一特異性抗体を定量化するための方法であって、該方法が
(a)請求項1において規定される混合物を、第1のサブユニットに結合することができ、かつ第2のサブユニットには結合しないリガンドと組み合わせる工程、
(b)工程(a)の組み合わせをキャピラリーにアプライする工程、
(c)該キャピラリー全体に電圧を印加する工程、
(d)該リガンドに結合していない第2の単一特異性抗体を、該リガンドに結合している二重特異性抗体および第1の単一特異性抗体と比較して、キャピラリー内をより速く移動させる工程、
(e)該結合していない単一特異性抗体を定量化する工程
を含み、
該方法が、請求項1の方法とは別個にまたは並行して実行される、
前記方法。
【請求項3】
前記キャピラリーが、カソード側の端部、アノード側の端部、および該カソード側の端部の付近に配置された検出器窓を含む、請求項1~2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
二重特異性抗体とその単一特異性抗体副生成物との混合物中の単一特異性抗体を定量化するための方法であって、該方法が
(a)二重特異性抗体とその単一特異性抗体副生成物との混合物を、リガンドプラグを含むキャピラリーにアプライする工程であって、
該単一特異性抗体副生成物が、第1の単一特異性抗体および第2の単一特異性抗体からなり、
該二重特異性抗体が、第1のエピトープに特異的な第1のサブユニットおよび第2のエピトープに特異的な第2のサブユニットを含み、
該第1の単一特異性抗体は、2つの同一の第1のサブユニットを含み、
該第2の単一特異性抗体は、2つの同一の第2のサブユニットを含み、
該リガンドプラグ中のリガンドは、該第2のサブユニットに結合することができ、かつ該第1のサブユニットには結合しない、工程、
(b)該キャピラリー全体に電圧を印加する工程、
(c)該リガンドに結合していない第1の単一特異性抗体を、該リガンドに結合している二重特異性抗体および第2の単一特異性抗体と比較して、キャピラリー内をより速く移動させる工程、
(d)該結合していない単一特異性抗体を定量化する工程
を含む、前記方法。
【請求項5】
二重特異性抗体とその単一特異性抗体副生成物との混合物中の単一特異性抗体を定量化するための方法であって、該方法が
(a)請求項4において規定される混合物を、リガンドプラグを含むキャピラリーにアプライする工程であって、該リガンドプラグ中のリガンドが、第1のサブユニットに結合することができ、かつ第2のサブユニットには結合しない、工程、
(b)該キャピラリー全体に電圧を印加する工程、
(c)該リガンドに結合していない第2の単一特異性抗体を、該リガンドに結合している二重特異性抗体および第1の単一特異性抗体と比較して、キャピラリー内をより速く移動させる工程、
(d)該結合していない単一特異性抗体を定量化する工程
を含み、
該方法が、請求項4の方法とは別個にまたは並行して実行される、
前記方法。
【請求項6】
前記キャピラリーが、カソード側の端部、アノード側の端部、および該カソード側の端部の付近に配置された検出器窓を含み、かつ前記リガンドプラグが、該アノード側の端部の付近に配置される、請求項4~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記結合していない単一特異性抗体が、200nmもしくは280nmにおける吸光度またはレーザー誘起蛍光を測定する検出器によって前記検出器窓から検出される、請求項3または6記載の方法。
【請求項8】
前記リガンドの等電点が、前記二重特異性抗体およびその単一特異性抗体副生成物のそれぞれの等電点よりも低い、または、より低くなるように改変されている、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記リガンドが抗体またはそのフラグメントである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記リガンドがビオチン分子を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記第1のサブユニットおよび前記第2のサブユニットが、それぞれ第1の重鎖および第2の重鎖である、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記第1のサブユニットおよび前記第2のサブユニットが、それぞれ第1の重鎖および第2の重鎖であり、かつ該第2の重鎖が、IMGTエキソンナンバリングシステムに従ってナンバリングされたアミノ酸置換H95R及びY96Fを含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記第1のサブユニットに結合する前記リガンドが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3を含む抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記第1のサブユニットに結合する前記リガンドが、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3を含む抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記第2のサブユニットに結合する前記リガンドが、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3を含む抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記第2のサブユニットに結合する前記リガンドが、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3を含む抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記リガンドがビオチン化によって改変されている、請求項13~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記リガンドが、一級アミンのカップリング及びリジン側鎖修飾を介したビオチン化によって改変されている、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記二重特異性抗体およびその単一特異性抗体副生成物が、組換えタンパク質である、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記二重特異性抗体およびその単一特異性抗体副生成物が、2つの別々の重鎖および1つの共通の軽鎖の組換え発現によって産生される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記組換え発現が、CHO細胞またはCHO細胞派生物由来である、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
WIPO標準ST.25(1998)に準拠する配列表のテキストファイルが、本明細書と同時に提出されている。このテキストファイルの内容は、参照によって本明細書に組み込まれている。配列表を含むテキストファイルは「10141US01_ST25」という名称であり、2016年4月11日に作成され、約19,025バイトの情報を含んでいる。
【0002】
分野
本発明は、概して、ポリペプチド及びポリペプチド複合体の複合混合物中にある1つ以上のポリペプチド種を検出するための、組成物、システム及び方法を対象にしている。具体的には、本発明は、二重特異性抗体を含む多量体の混合物中にあるホモ二量体を検出するための組成物、システム及び方法を含む。
【背景技術】
【0003】
関連技術
モノクローナル抗体は、様々な疾患の治療法における重要なクラスに相当する。モノクローナル抗体の汎用性を増大させることについての関心が高まっており、その1つのアプローチは、二重特異性抗体(bsAb)の設計及び産生である。2つの重鎖及び2つの軽鎖を使用した従来的なbsAb発現を行うと、重鎖及び軽鎖のランダムな相互作用に起因して、複数の(10個以下の)望ましくない多量体タンパク質生成物がもたらされることになる。2つのユニークな重鎖と1つの共通の軽鎖とを共発現させれば、副生成物の数を2つのホモ二量体種まで最小限化することになるが、この後、精製中にこれらを除去する必要があり得る。したがって、所望のヘテロ二量体(bsAb)からホモ二量体副生成物を検出し区別するための、有効かつ効率的な方法に対するニーズが存在する。2つのユニークな重鎖及び2つの同一の軽鎖からなるbsAbの純度を推定する試薬および方法が開示される。
【発明の概要】
【0004】
概要
出願人らは、多量体生成物の混合物中のホモ二量体を検出するための試薬及びプロセスを開発した。この試薬は、ホモ二量体副生成物の特定のサブユニットに結合するリガンドを含む。このプロセスにはキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)の改変形態が含まれ、改変形態は、リガンドと多量体生成物の混合物とを組み合わせてから電気泳動を行うアフィニティーキャピラリー電気泳動(ACE)、及びキャピラリーをリガンドで部分的に充填してから多量体生成物の混合物を電気泳動にかける部分充填アフィニティーキャピラリー電気泳動(PF-ACE)と呼ばれる。多量体生成物には、第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含有するヘテロ二量体、2つの第1のサブユニット(別名「ホモB」)を含有する第1のホモ二量体、ならびに2つの第2のサブユニット(別名「ホモA」)を含有する第2のホモ二量体が含まれる。リガンドは特定のサブユニットに結合し、一部の実施形態では第1のサブユニットに、他の実施形態では第2のサブユニットに結合する。
【0005】
一実施形態では、多量体タンパク質の混合物は、第1のサブユニット及び第2のサブユニットを発現する異種の核酸を含有する細胞によって生成される。特定の実施形態では、この細胞は、モノクローナル抗体のような生物療法用の分子を産業規模で生産する際に使用される、哺乳動物細胞である。細胞には、CHO細胞ならびにその誘導体であるCHO-K1細胞及びEESYR(登録商標)細胞が含まれる。
【0006】
一実施形態では、ホモ二量体(第1のホモ二量体または第2のホモ二量体のいずれか)は、ヘテロ二量体及び他のホモ二量体の電荷/質量比を低下させることによって、キャピラリーゾーン電気泳動を介して検出される。電荷/質量比は、リガンドのうちの1つがサブユニットのうちの1つに結合して電荷/質量比が低い複合体形成がもたらされた場合に低下し、このことによってキャピラリー内での複合体の移動度が、非結合のサブユニット及びそのホモ二量体に比べて大きく遅延される。例えば、多量体の混合物が、第2のサブユニットに結合するリガンド(第2のリガンド)と組み合わされた場合、この第2のリガンドは、(第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含有する)ヘテロ二量体及び(2つの第2のサブユニットを含有する)第2のホモ二量体に結合することになる。第1のホモ二量体は結合しないままであり、そのためサイズに対する電荷比がより高く、それに伴いキャピラリー内の移動度も高い。したがって、電気泳動の実施中に、第1のホモ二量体のピークが最初に検出され、そのピークは、複合体を形成した第2のホモ二量体及びヘテロ二量体からは十分に分離されている。同様に、多量体の混合物が第1のリガンドと組み合わされた場合、複合体を形成した第1のホモ二量体及びヘテロ二量体の電気泳動移動度は低下し、これによって第2のホモ二量体が十分に分離されたピークとして検出されることが可能になる。この手順は、アフィニティーキャピラリー電気泳動(ACE)と呼ばれる。
【0007】
別の実施形態では、キャピラリーは、予めリガンドプラグをロードされる。多量体の混合物をロードし、キャピラリー内を電気泳動にかけると、各多量体種は、キャピラリー中にある「リガンドプラグ」に遭遇する。リガンドに結合するサブユニットを含有する任意の多量体は、リガンドに結合し、その電気泳動移動度は速度が抑えられることになる(すなわち、移動度シフト)。次に、非結合のホモ二量体は、リガンドと結合した多量体から分離されて自由にキャピラリー内を移動する。この手順は、部分充填アフィニティーキャピラリー電気泳動(PF-ACE)と呼ばれる。
【0008】
第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体の両方を検出するために、少なくとも2つの別個の手順が実施され、1つは、第2のホモ二量体を検出するために第1のリガンドを使用し、1つは、第1のホモ二量体を検出するために第2のリガンドを使用する。任意選択により、標準的なCZE手順を実行してヘテロ二量体を検出してもよいが、両方のホモ二量体に類似した電荷/質量を有するヘテロ二量体は、これらのホモ二量体と同じ「ピーク」で検出されることになる。ヘテロ二量体の画分は、第1のACEまたはPF-ACE手順で検出される第1のホモ二量体を引き、第2の手順で検出される第2のホモ二量体を同様に引くことによって、定量化される。
【0009】
一実施形態では、第1のサブユニットは、第1のサブユニットがプロテインAに結合することを可能にする免疫グロブリンCH3ドメインを含有し、第2のサブユニットは、第2のサブユニットがプロテインAに結合することを可能にしない変異した免疫グロブリンCH3ドメインを含有する。一実施形態では、各ホモ二量体は、個別の特異性を有する単一特異性抗体であり、ヘテロ二量体は、第1のホモ二量体の同族抗原及び第2のホモ二量体の同族抗原の両方に対して特異的な二重特異性抗体である。一実施形態では、3つの抗体の各々(例えば、bsAbすなわちヘテロAB、ホモA、ホモB)は同一の軽鎖を含有し、第1及び第2のサブユニットとは重鎖を指している。これらの抗体は、ホモ二量体及びヘテロ二量体と呼ばれているが、通常、実際にはこれらは四量体である。軽鎖は各多量体種とも同じものであるため、命名に関しては実質的に無視されている。特定の実施形態では、第1の重鎖はプロテインAに結合することができ、第2の重鎖は、プロテインAとの結合を不可能にする、CH3ドメインのH95R及びY96F置換を含有する(IMGTに従ったナンバリング;Lefranc,M.-P.,(2008)40 Mol.Biotechnol.101-111を参照)。
【0010】
一実施形態では、リガンドは、サブユニットに結合する抗体である。第1のリガンドは、第1のサブユニットに結合するが第2のサブユニットには結合しない抗体であり、第2のリガンドは、第2のサブユニットに結合するが第1のサブユニットには結合しない抗体である。一実施形態では、リガンドのpI(等電点)は、各多量体のpIと異なっているかまたは異なるように改変される(例えば、より酸性であるかまたはpIが低い)。
[1]
マルチサブユニットタンパク質の第1のサブユニットに結合し、かつ前記マルチサブユニットタンパク質の第2のサブユニットには結合しない、リガンドであって、前記第1のサブユニット、前記第2のサブユニット、または前記マルチサブユニットタンパク質の等電点よりも低い等電点を有する、前記リガンド。
[2]
前記第1のサブユニット及び前記第2のサブユニットがそれぞれ免疫グロブリン重鎖を含み、前記第2のサブユニットが、IMGTエキソンナンバリングシステムに従ってナンバリングされたアミノ酸置換H95R及びY96Fを含む、[1]のリガンド。
[3]
前記マルチサブユニットタンパク質が二重特異性抗体である、[1]または[2]のリガンド。
[4]
前記リガンドが抗体又は抗体フラグメントを含む、[1]のリガンド。
[5]
前記リガンドがビオチン分子を含む、[4]のリガンド。
[6]
前記リガンドが蛍光標識を含む、[4]または[5]のリガンド。
[7]
前記リガンドが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3を含む、[4]のリガンド。
[8]
前記リガンドが、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3を含む、[4]または[7]のリガンド。
[9]
マルチサブユニットタンパク質の第2のサブユニットに結合し、かつ前記マルチサブユニットタンパク質の第1のサブユニットには結合しない、リガンドであって、前記第1のサブユニット、前記第2のサブユニット、または前記マルチサブユニットタンパク質の等電点よりも低い等電点を有する、前記リガンド。
[10]
前記第1のサブユニット及び前記第2のサブユニットが、それぞれ免疫グロブリン重鎖を含み、前記第2のサブユニットが、IMGTエキソンナンバリングシステムに従ってナンバリングされたアミノ酸置換H95R及びY96Fを含む、[9]のリガンド。
[11]
前記マルチサブユニットタンパク質が二重特異性抗体である、[9]または[10]のリガンド。
[12]
前記リガンドが抗体又は抗体フラグメントである、[9]のリガンド。
[13]
前記リガンドがビオチン分子を含有する、[12]のリガンド。
[14]
前記リガンドが蛍光標識を含む、[12]または[13]のリガンド。
[15]
前記リガンドが、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3を含む、[12]のリガンド。
[16]
前記リガンドが、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3を含む、[12]または[15]のリガンド。
[17]
リガンド、第1のホモ二量体、第2のホモ二量体、ヘテロ二量体、キャピラリー、検出器、前記キャピラリーの一方の端部またはその付近にあるアノード、前記キャピラリーの他方の端部またはその付近にあるカソード、及び電源を備えたシステムであって、前記第1のホモ二量体が、少なくとも2つの同一の第1のサブユニットを含み、前記第2のホモ二量体が、少なくとも2つの同一の第2のサブユニットを含み、前記ヘテロ二量体が、1つの第1のサブユニット及び1つの第2のサブユニットを含む、前記システム。
[18]
前記検出器が、前記キャピラリーの前記カソード側の端部の付近に配置され、前記リガンド、前記第1のホモ二量体、前記第2のホモ二量体、及び前記ヘテロ二量体が、前記キャピラリーの前記アノード側の端部において前記キャピラリーにロードされる、[17]のシステム。
[19]
前記検出器が、210nm~280nmでの吸光度またはレーザー誘起蛍光を検出する、[17]または[18]のシステム。
[20]
前記キャピラリーが、前記アノードと前記検出器との間にリガンドプラグを含有する、[17]のシステム。
[21]
前記リガンドが、前記第1のサブユニットに結合し、かつ前記第2のサブユニットには結合しない、[17]のシステム。
[22]
前記リガンド及び前記第1のホモ二量体を含む第1の複合体と、前記リガンド及び前記ヘテロ二量体を含む第2の複合体とを含む、[21]のシステム。
[23]
前記第1の複合体及び前記第2の複合体が、前記第2のホモ二量体よりも電気泳動移動度が低い、[22]のシステム。
[24]
前記リガンドが、前記第2のサブユニットに結合し、かつ前記第1のサブユニットには結合しない、[17]のシステム。
[25]
前記リガンド及び前記第2のホモ二量体を含む第3の複合体と、前記リガンド及び前記ヘテロ二量体を含む第4の複合体とを含む、[24]のシステム。
[26]
前記第3の複合体及び前記第4の複合体が、前記第1のホモ二量体よりも電気泳動移動度が低い、[25]のシステム。
[27]
前記リガンドが、抗体またはそのフラグメントである、[21]から[26]のいずれかのシステム。
[28]
前記ヘテロ二量体が二重特異性抗体であり、前記第2のサブユニットが、IMGTエキソンナンバリングシステムに従ってナンバリングされたアミノ酸置換H95R及びY96Fを含む、[17]のシステム。
[29]
多量体の混合物中にあるホモ二量体を検出するための方法であって、(a)前記多量体の混合物及びリガンドを組み合わせる工程と、(b)工程(a)の前記組み合わせをキャピラリーにアプライする工程と、(c)前記キャピラリーに電圧を印加して前記キャピラリー内で前記ホモ二量体を移動させる工程と、(d)前記ホモ二量体を検出する工程と、を含む前記方法。
[30]
多量体の混合物中にあるホモ二量体を検出するための方法であって、(a)リガンドプラグを含有するキャピラリーに前記多量体の混合物をアプライする工程と、(b)前記キャピラリーに電圧を印加して前記キャピラリー内で前記ホモ二量体を移動させる工程と、(c)前記ホモ二量体を検出する工程と、を含む前記方法。
[31]
前記キャピラリーが、カソード側の端部、アノード側の端部、及び検出器窓を含む、[29]または[30]の方法。
[32]
前記ホモ二量体が、200nmもしくは280nmにおける吸光度またはレーザー誘起蛍光を測定する検出器によって前記検出器窓から検出される、[31]の方法。
[33]
前記検出器窓が、前記キャピラリーの前記カソード側の端部の付近にある、[31]の方法。
[34]
前記電圧が28キロボルトである、[29]または[30]の方法。
[35]
前記多量体の混合物が、(a)2つの第1のサブユニットを含む第1のホモ二量体と、(b)2つの第2のサブユニットを含む第2のホモ二量体と、(c)前記第1のサブユニット及び前記第2のサブユニットを含むヘテロ二量体とを含む、[29]または[30]の方法。
[36]
前記ヘテロ二量体が二重特異性抗体であり、各ホモ二量体がモノクローナル抗体である、[35]の方法。
[37]
前記第2のサブユニットが、IMGTエキソンナンバリングシステムに従ってナンバリングされたアミノ酸置換H95R及びY96Fを含む、[36]の方法。
[38]
前記多量体の混合物がCHO細胞培養物から得られ、前記CHO細胞培養物が、免疫グロブリン軽鎖と、H95R及びY96F置換を含む免疫グロブリン重鎖と、プロテインAに結合する免疫グロブリン重鎖とを発現するCHO細胞を含む、[37]の方法。
[39]
前記リガンドが、任意の多量体の等電点よりも低い等電点を有する、[29]または[30]の方法。
[40]
前記リガンドが抗体又は抗体フラグメントを含む、[39]の方法。
[41]
前記リガンドがビオチン分子を含む、[40]の方法。
[42]
前記リガンドが、前記第1のサブユニットに結合し、かつ前記第2のサブユニットには結合せず、検出される前記ホモ二量体が前記第2のホモ二量体である、[39]または[40]の方法。
[43]
前記リガンドが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3を含む、[42]の方法。
[44]
前記リガンドが、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3を含む、[43]の方法。
[45]
前記リガンドが、前記第2のサブユニットに結合し、かつ前記第1のサブユニットには結合せず、検出される前記ホモ二量体が前記第1のホモ二量体である、[39]または[40]の方法。
[46]
前記リガンドが、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3を含む、[45]の方法。
[47]
前記リガンドが、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3を含む、[46]の方法。
[48]
第1のホモ二量体、第2のホモ二量体、及びヘテロ二量体を含有する混合物中にある前記ヘテロ二量体の量を定量化する方法であって、(a)[45]の方法に従って、前記混合物中にある第1のホモ二量体の量を決定する工程と、(b)[42]の方法に従って、前記混合物中にある第2のホモ二量体の量を決定する工程と、(c)前記混合物中にある前記ヘテロ二量体の量を算出する工程と、を含む前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】二重特異性抗体(ヘテロAB)及び、生成中に発現される生成物関連副生成物(ホモA及びホモB)を示す模式図である。プロテインAに対する結合性を欠くCH3ドメインのジペプチド置換は、塗りつぶされた六角星によって示されている。
【
図2】還元条件下のCE-SDSによって分析された、ホモA(a)、ホモB(b)、bsAb1(c)、ホモA、ホモB、及びbsAb(d)、ならびに分子量ラダー(e)の電気泳動図を示している。
【
図3】CZEを介して分離された、bsAb1(トレースa)、ホモB mAb(トレースb)、ホモA mAb(トレースc)、及びホモA:bsAb1:ホモBの1:2:1混合物(トレースd)の代表的な電気泳動図を示している。
【
図4】bsAb2(トレースa)、ホモB mAb(トレースb)、及びホモA mAb(トレースc)のCZE電気泳動図を示している。
【
図5】bsAb3(トレースA)試料、抗A mAb親和性リガンド存在下でのbsAb3(トレースB)、及び抗B mAb親和性リガンド存在下でのbsAb3(トレースC)の電気泳動図を示している。
【
図6】鎖B特異的リガンドのbsAb3に対する化学量論的結合を示すSE-HPLCクロマトグラムを示している。トレースaはbsAb3を示し、トレースbは抗B抗体を示し、トレースcはbsAb3及び抗B抗体の組み合わせを示している。
【
図7】bsAb3(トレースA)、抗-鎖Bリガンド存在下かつACE条件下の場合(トレースB)及び、抗-鎖Bリガンド存在下かつPF-ACE条件下の場合(トレースC)の試料における電気泳動図を示している。
【
図8】遊離ホモB mAb(トレースA)、抗-鎖B mAb存在下のホモB mAb(トレースB)または抗-鎖A mAb存在下のホモB mAb(トレースC)の電気泳動図を示している。遊離ホモA mAb(トレースD)及び、抗-鎖A mAb存在下のホモA mAb(トレースE)または抗-鎖B mAb存在下のホモA mAb(トレースF)の電気泳動図も示されている。
【
図9】bsAb3(トレースa)、5%のmAb不純物を添加したbsAb3(トレースb)、さらに抗A mAb存在下の場合(トレースc)または抗B mAb存在下の場合(トレースd)の電気泳動図を示している。
【
図10】ホモ二量体A(ホモA)における、ホモAの相対濃度(パーセント)に対する補正ピーク面積を示している。
【
図11】ホモ二量体B(ホモB)における、ホモBの相対濃度(パーセント)に対する補正ピーク面積を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本発明の説明の前に理解されたいことは、本発明が記載された特定の方法及び実験条件に限定されないことであり、それはこのような方法及び条件は変動し得るからである。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本明細書の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、こうした用語が限定的であるようには意図されていないことも理解されたい。
【0013】
本発明の実施または試験の際に、本明細書に記載の方法及び材料に類似したまたは同等の、任意の方法及び材料を使用することは可能であるが、これより好ましい方法及び材料について説明する。本明細書で引用される全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれて記載される。別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0014】
本明細書で使用する「リガンド」という用語は、別の分子に結合する任意の分子を意味する。「リガンド」は、生化学分野では同族受容体に結合するアゴニストまたはアンタゴニストとしての従来的な意味を有する。本明細書で使用する「リガンド」には抗体抗原反応も含まれ、抗体がリガンドであり抗原が同族結合パートナーである場合も、その逆であるところの抗原がリガンドであり抗体(またはそのフラグメント)が同族結合パートナーである場合も含まれる。
【0015】
リガンドは、「同族」の分子に結合する任意の分子とすることができ、抗体、抗体フラグメント、ScFv分子、trap分子、受容体コンカテマー、1つ以上のCDRを含有する組換え分子または合成分子、抗原、ハプテン、組換えエピトープ、古典的リガンド、受容体、可溶性受容体フラグメント、核内受容体、ステロイド、ペプチド、アプタマー、RNA、DNA、有機分子、小分子などが含まれる。
【0016】
「リガンドプラグ」という用語は、キャピラリー内のリガンドに富んだ部位を指し、概してキャピラリーのローディング側の端部(例えば、アノード側の端部の付近)にある。キャピラリーに予めリガンドをロードしてもよく、このリガンドは、自らの同族結合パートナーがキャピラリーを移動する際にその同族結合パートナーと結合する(すなわち「捕捉する」)「プラグ」を形成し、そして移動度が変化した「複合体」を形成する。
【0017】
「複合体」という用語は、小分子、金属、ポリペプチド、タンパク質、核酸、アプタマーまたは他の分子実体などの、少なくとも2つの分子実体を含む高次の分子実体を指し、かつそれらを含む。「複合体」という用語には、マルチサブユニットタンパク質も含まれる。例えば、ヘモグロビンは、2つのアルファグロビン鎖、2つのベータグロビン鎖、4つの鉄含有ヘム基、及びCO2またはO2を含有する複合体である。例えば、自らの同族リガンドに結合している受容体は複合体であり、抗原に結合している抗体は複合体であり、基質に結合している酵素、または基質及び補酵素に結合している酵素は、複合体である。本明細書で開示の一部の実施形態で使用する「複合体」には、リガンドに結合しているホモ二量体またはヘテロ二量体が含まれる。複合体は、「分子実体」または「実体」とも呼ぶことができる。例えば、リガンドに結合しているホモ二量体またはヘテロ二量体は、複合体であり、それ自身を「実体」または「分子実体」と呼ぶことができる。
【0018】
本明細書で使用する「多量体」という用語、そして「多量体タンパク質」というフレーズは、2つ以上の構成要素サブユニットから作られるタンパク質を示すために互換的に使用される。サブユニットは、共に結合して、あるいは相互作用して多量体を形成することができる。結合または相互作用は、共有結合及び非共有結合を含めた任意の1つ以上の分子間結合を介したものであり得る。「ホモ二量体」は、同じまたは機能的に同等な2つ以上のサブユニットを含む多量体である。本明細書で使用する場合、ホモ二量体は、同じまたは機能的に同等な少なくとも2つのポリペプチドを含むが、ホモ二量体はさらなるサブユニットも含んでよい。例えば、モノクローナル抗体は、2つの同一の重鎖を含有する。そのため、モノクローナル抗体は「ホモ二量体」であると考えることができる。ただし、完全に古典的なモノクローナル抗体は2つの軽鎖も含有するため、四量体と呼ぶこともできる。「ヘテロ二量体」は、同じではない、または機能的に同等ではない、2つ以上のサブユニットを含む多量体である。ヘテロ二量体は、2つの異なるサブユニットのほかにさらなるサブユニットを含有してもよい。例えば、二重特異性抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含有し、抗体の半分(例えば、1つの重鎖及び1つの軽鎖)が1つのエピトープに結合し、抗体のもう半分(例えば、別の重鎖及び同じ軽鎖、同じ重鎖及び別の軽鎖、または別の軽鎖及び別の重鎖)は、別のエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体は四量体である。二重特異性という用語は、同じでないまたは機能的に同等でない重鎖に関するものであるため、場合によっては、二重特異性抗体は二量体である。
【0019】
本明細書で使用する「サブユニット」または「構成要素サブユニット」または、多量体の構成要素、通常は(ただし常にではない)ポリペプチドを意味する。構成要素のポリペプチドは単鎖であり、その長さは3アミノ酸から数千アミノ酸までの任意のサイズをとり得る。
【0020】
本明細書で使用する「結合する」または「結合している」という用語は、ある分子が非共有結合力によって別の分子と相互作用することを意味する。結合する、または結合しているということは、抗体とその抗原との間の力、またはリガンドとその受容体との間の力などの、比較的強い力(マイクロモルまたはKd未満)を含意する。非共有結合力には、水素結合、イオン双極子及びイオン誘起双極子相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、ハロゲン結合、パイ-パイ相互作用、及びカチオンパイ-アニオンパイ相互作用が含まれる。Wang et al.,(2001)30 Ann.Rev.Biophys.Biomol Structure 211-243を参照されたい。
【0021】
「付着する」、「架橋する」、「付着している」、または「架橋されている」という用語は、2つ以上のサブユニットがより複雑なタンパク質を形成するための共有結合的な相互作用を表すために使用される。
【0022】
「CH3」、「CH3ドメイン」、及び「免疫グロブリンCH3ドメイン」は互換的に使用され、おおよそ341番目(EUナンバリングシステムによる)のアミノ酸からC末端に及ぶ免疫グロブリン重鎖の領域を示す(Edelman et al.,(1969)63(1)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.78-85)。CH3ドメインはプロテインAとの結合に関係し、例えばヒトIgG1、IgG2、及びIgG4のCH3ドメインはプロテインAとの結合を調節し、IgG3のCH3ドメインはプロテインAを調節しないようになっている(Van Loghem et al.,Staphylococcal protein A and human IgG subclasses and allotypes,15(3)Scand.J.Immunol.275-8(1982))。CH3ドメインにおけるアミノ酸置換H95R及びY96F(IMGTナンバリングによる;EUナンバリングシステムではH435R及びY436Fとなる)は、プロテインAとの結合を不可能にする(米国特許第8,586,713号(2013年11月19日発行))。
【0023】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖(2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖)からなる免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVH)及び重鎖定常領域を有する。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)を含有する。各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を有する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VH領域及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに再分割されることができ、この領域の間に保存的な領域(フレームワーク領域(FR)と称される)が分散して存在する。各VH及びVLは3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向けてFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配列されている。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプまたはサブクラスにおけるグリコシル化免疫グロブリン及び非グリコシル化免疫グロブリンの両方を指す。「抗体」という用語には、組換え手段によって調製、発現、創出または単離される抗体分子、例えば、抗体を発現するように遺伝子導入された宿主細胞から単離される抗体など、が含まれる。抗体の構造の概説については、Lefranc et al.,IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,27(1)Dev. Comp.Immunol.55-77(2003);及びM.Potter,Structural correlates of immunoglobulin diversity,2(1)Surv.Immunol.Res.27-42(1983)を参照されたい。
【0024】
抗体という用語には「二重特異性抗体」も含まれ、二重特異性抗体には、2つ以上の異なるエピトープに結合することができるヘテロ四量体の免疫グロブリンが含まれる。二重特異性抗体の半分(単一の重鎖及び単一の軽鎖を含み、6つのCDRを含む)は、1つの抗原またはエピトープに結合し、抗体のもう半分は、異なる抗原またはエピトープに結合する。場合によっては、二重特異性抗体は、同じ抗原の、ただし異なるエピトープまたは重複しないエピトープに結合することがある。場合によっては、二重特異性抗体の両半分が同一の軽鎖を有しながらも、二重特異性を維持している。二重特異性抗体は、米国特許出願公開第2010/0331527号(2010年12月30日)でその概要が記載されている。
【0025】
抗体の「抗原結合部分」(または「抗体フラグメント」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体における1つ以上のフラグメントを指す。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に含まれる結合フラグメントの例としては、以下のものが挙げられる:(i)Fabフラグメント(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価のフラグメント);(ii)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント);(iii)Fdフラグメント(VH及びCH1ドメインからなる);(iv)Fvフラグメント(抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなる)、(v)dAbフラグメント(VHドメインからなる)(Ward et al.(1989)Nature 241:544-546)、(vi)単離されたCDR、及び(vii)scFv(Fvフラグメントの2つのドメインであるVL及びVHからなり、合成リンカーによってつなげられて単一のタンパク質鎖を形成し、ここではVL及びVH領域は対をなして1価の分子を形成する)。ダイアボディなどの他の形態の単鎖抗体も、「抗体」という用語の下に含まれる(例えば、Holliger et al.(1993)90 PNAS USA 6444-6448;及びPoljak et al.(1994)2 Structure 1121-1123を参照)。
【0026】
なおさらに、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分と、1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの、共有結合的または非共有結合的な相互作用によって形成される、より大きな免疫接着分子の一部であり得る。このような免疫接着分子の例としては、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al.(1995)6 Human Antibodies and Hybridomas 93-101)、共有結合的ビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al.(1994)31 Mol.Immunol.1047-1058)が挙げられる。Fab及びF(ab’)2フラグメントなどの抗体部分は、全抗体のパパイン消化またはペプシン消化などの従来的な手法を使用して、全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分及び免疫接着分子は、当技術分野で知られている標準的な組換えDNA手法を使用して得ることができる(Sambrook et al.,1989を参照)。
【0027】
「Fc融合タンパク質」は、2つ以上のタンパク質の一部または全てを含み、このうちの1つが免疫グロブリン分子のFc部分であり、これらのタンパク質は本来、別の方法で一緒に見出されることはない。抗体由来のポリペプチドの様々な部分(Fcドメインを含む)と融合したいくつかの異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製については、例えば、Ashkenazi et al.,(1991)88 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 10535;Byrn et al.,(1990)344 Nature 677;及びHollenbaugh et al.,(1992)“Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”(Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pages 10.19.1-10.19.11)で説明されている。「受容体Fc融合タンパク質」は、Fc部分にカップリングした受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含み、Fc部分は、一部の実施形態では免疫グロブリンのヒンジ領域およびそれに続くCH2及びCH3ドメインを含む。一部の実施形態では、Fc融合タンパク質は、1つ以上のリガンドに結合する2つ以上の別々の受容体鎖を含有する。例えば、Fc融合タンパク質はtrapであり、例えば、IL-1 trap(例えば、リロナセプト(hIgG1のFcと融合したIL-1R1細胞外領域と融合したIL-1RAcPリガンド結合領域を含有する);米国特許第6,927,004号を参照)、またはVEGF trap(例えば、アフリベルセプト(hIgG1のFcと融合したVEGF受容体Flk1のIgドメイン3と融合したVEGF受容体Flt1のIgドメイン2を含有する);米国特許第7,087,411号(2006年8月8日発行)及び同第7,279,159号(2007年10月9日発行)を参照)などである。
【0028】
本明細書で使用する「プロテインA」という用語は、IgG1、IgG2及びIgG4のFcドメインに結合し、IgG3には結合しない、42kDaのStapylococcus aureus細胞壁プロテインAの天然形態、組換え形態、改変形態、遺伝子操作形態及び誘導体を意味する(Dima et al.,(1983)13(8)Eur.J.Immunol.605-14)。遺伝子操作プロテインAは、例えば、Z-ドメイン四量体、Y-ドメイン四量体、またはDドメイン及びEドメインを欠いた遺伝子操作プロテインAである。これら遺伝子操作されたプロテインAの典型例は、免疫グロブリンのVH3ドメインに結合することができない(または親和性があったとしても極めて低い親和性で結合する)が、それでもIgG1、IgG2及びIgG4のCH3ドメインには結合することができる。遺伝子操作プロテインAは、Minakuchi et al.,(2013)22(9)Protein Sci.1230-8で論じられている。市販のプロテインとしては、MabSelect(登録商標)(GE Healthcare,Little Chalfont,UK)、MabSelect Sure(GE Healthcare,Piscataway,NJ)、Prosep Ultra(登録商標)(Millipore,Billerica,MA)、及びPoros A(登録商標)(Perspective Biosystems,Framingham,MA)が挙げられる。
【0029】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、プロテインAのFcドメインに対する親和性を利用してFc含有タンパク質を精製する。実際には、プロテインAクロマトグラフィーは、固体支持体に固定されたプロテインAの使用を伴う。Gagnon,Protein A Affinity Chromotography,Purification Tools for Monoclonal Antibodies,Validated Biosystems 155-198(1996)を参照されたい。固体支持体は非水溶性マトリックスであり、これにプロテインAが接着する。このような支持体としては、アガロース、セファロース、ガラス、シリカ、ポリスチレン、ニトロセルロース、チャコール、砂、セルロース及び任意の他の好適な材料が挙げられる。タンパク質を好適な固体支持体に固定するための方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、Ostrove,(1990)(Guide to Protein Purification,Methods in Enzymology,182:357-371)を参照されたい。このような固体支持体は、プロテインAの固定を伴うものも伴わないものも、多くの商業的供給元、例えば、Vector Laboratory(Burlingame,CA),Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,Calif.),BioRad(Hercules,CA),Amersham Biosciences(GE Healthcareの一部門,Uppsala,Sweden),Pall(Port Washington,NY)及びEMD-Millipore(Billerica,MA)などから容易に利用可能である。多孔質ガラスマトリックスに固定されたプロテインAは、PROSEP(登録商標)-A(Millipore)として市販されている。また、固相はアガロースベースのマトリックスであってもよい。アガロースマトリックスに固定されたプロテインAは、MABSELECT(商標)(GE Healthcare Bio-Sciences,Pittsburgh,PA)として市販されている。
【0030】
「キャピラリー」という用語は、基体であって、該基体の中または上を通って1つ以上の分子実体が移動する、基体を指し、場合によっては、この1つ以上の分子実体は分離を可能にするために異なる速度で移動する。キャピラリーは、ガラスまたはポリマーなどの任意の材料で作られてよい。例えば、下に例示する一部の実験では、裸溶融シリカキャピラリー(40μmまたは50μm)を使用した(Polymicro Technologies,Phoenix,AZから入手可能)。キャピラリーは、自らの直径よりも大きい長さの中空チューブとすることができる。概してキャピラリーは、生体分子または他の分子実体を、実体の質量及び/または電荷に基づいて分離するために使用される。例えば、ある等電点がキャピラリー全体に適用された場合、分子実体は、自らの電荷対質量比によって決まる速度でキャピラリー内を移動する。等電点を提供するために、キャピラリーの一方の端部はカソード(負荷電)に連結され(「キャピラリーのカソード側の端部」)、キャピラリーの他方の端部はアノード(正荷電)に連結される(「キャピラリーのアノード側の端部」)。正電荷を帯びた実体は、カソードに向かって移動することになる。
【0031】
「検出器」または「検出器窓」は、キャピラリーの長軸に沿ったある点で提供され、分子実体が通過する際にそれを検出するための窓としての役割を果たす。分子実体は、分子検出の技術分野で知られている方法のうちの任意の1つ以上の方法によって検出することができる。例えば、タンパク質は、220nmまたは280nm(DNAは260nm)における電磁放射の吸光度によって検出することができる(「UV吸光度検出」)。C.Stoscheck,(1990)182 Methods in Enzymology 50-69を参照されたい。レーザー誘起蛍光(CE-LIF)を用いて、固有蛍光によって(固有蛍光を有する分子の場合)、または標識実体の検出によって、分子実体を検出することもできる。例えば、280nmまたは295nmのレーザーは、タンパク質のチロシン、トリプトファン及びフェニルアラニンの固有蛍光を誘起させるために使用することができ、発光が検出される(例えば、Beckman Coulter PA 800タンパク質キャラクタリゼーションシステム(Beckman Coulter,Brea,CA))。また分子実体は、LIFによって検出することもでき、実体を蛍光体タグで誘導体化し、誘導体化された実体をレーザー(例えば、488nmの光を照射するアルゴンイオンレーザー、442nmの光を照射するHeCdレーザー、または473nm、410nm、405nm、もしくは425nmの光を照射するダイオードレーザー)で励起させ、そして発光波長を検出することによって行われる。こういったタグとしては、とりわけ、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)、6-オキシ-(N-スクシンイミジルアセテート)-9-(2-メトキシカルボニル)(SAMF)、N-ヒドロキシスクシンイミジルフルオレセイン-O-アセテート(SIFA)、4-フルオロ-7-ニトロ-2,1,3-ベンゾオキシジアゾール(NBD-F)、3-(2-フロイル)キノリン-2-カルボキシアルデヒド(FQ)、5-(4,6-ジクロロトリアジニル)アミノフルオレセイン(DTAF)及び3-(4-カルボキシベンゾイル)-2-キノリンカルボキシアルデヒド(CBQCA)が挙げられる。E.Szoko&T.Tabi,(2010)53(5)J.Pharma.and Biomed.Analysis 1180-1192を参照されたい。
【0032】
「細胞」という用語は、原核細胞または真核細胞を指す。細胞は、とりわけ試薬または治療薬として有用なポリペプチドまたはタンパク質を発現することが可能である(Kipriyanov and Little,(1999)12 Molecular Biotechnology 173-201)。発現されたポリペプチドまたはタンパク質は、細胞内に局在する場合もあれば、細胞膜または細胞壁に局在する場合もあれば、細胞から分泌される場合もある。原核細胞には、Escherichia coliなどの細菌細胞が含まれる(Spaduit et al.,(2014)32(1)Trends Biotechnol.54-60)。真核細胞には、タバコ、シロイヌナズナ、ジャガイモ、トウモロコシ、ニンジン、及びベニバナが含まれる(Yusibov et al.,(2011)7:3 Human Vaccines 313-321;K.Ko,(2014)33(3)Monoclonal Antibodies in Immunodiagnosis and Immunotherapy 192-198)。真核細胞には、Saccaromyces cerevisiae及びPichia pastorisなどの酵母細胞(Spaduit,et al.,(2011)3(5)MAbs 453-60)が含まれる。真核細胞には、Sf9細胞などの昆虫細胞が含まれる(Huang et al.,(2006)26(2A)Anticancer Res.1057-63)。真核生物細胞としては、以下のような哺乳動物細胞:BSC細胞、HeLa細胞、HepG2細胞、LLC-MK細胞、CV-1細胞、COS細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、RK細胞、TCMK-1細胞、LLCPK細胞、PK15細胞、LLC-RK細胞、MDOK細胞、BHK細胞、BHK-21細胞、「CHO細胞」、CHO-K1細胞、EESYR(登録商標)細胞、NS-1細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、BHK細胞、3T3細胞、293細胞、RK細胞、Per.C6細胞、及びニワトリ胚細胞が挙げられる。「チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株」または、CHO-K1細胞株などのいくつかの特定のCHO細胞変異体のうちの1つ以上は、大規模なタンパク質生産(例えば、抗体生産)用に最適化される。EESYR(登録商標)細胞株は、対象タンパク質の生産強化に最適化された特殊なCHO細胞株である。EESYR(登録商標)細胞の詳細な説明については、米国特許第7,771,997号(2010年8月10日発行)を参照されたい。
【0033】
「移動度」という用語は、媒体を通る分子実体(複合体を含む)の移動を指す。媒体は、ゲル、フィルム、空気または他の気体、水性緩衝液または他の液体、キャピラリー、薄膜、ふるい粒子などであり得る。分子実体は、特に電場、磁場、重力場の中を、単純な拡散によって、または分子ふるいを介して移動し得る。概して、移動度は、分子実体の体積、質量、または電荷に関連する。拡散については、質量が大きい分子実体は、質量が小さい実体または複合体よりも移動度が低い。電場における分子実体の移動度(すなわち、「電気泳動移動度」)は、実体の電荷対質量比に依存する。実体の電荷は、実体の3次元構造、等電点、変性状態または未変性状態、溶媒和状態及び水和状態、緩衝液ならびに媒体のpHに部分的に依存する。Barroso et al.,(2015)854 Analytica Chimica Acta 169-177を参照されたい。分子実体の電荷対サイズ比が大きいほど、電気泳動移動度も高くなる(すなわち、媒体を通る速度が高くなる)。
【0034】
リガンド
一態様において、本発明は、マルチサブユニットタンパク質の第1のサブユニットに結合し、かつマルチサブユニットタンパク質の第2のサブユニットには結合しないリガンドを提供する。リガンドは、第1のサブユニットを含有するこうした分子を同定するために、直接的に、またはサブトラクションによって間接的に、使用される。代替の実施形態では、リガンドは、第2のサブユニットに結合し、かつ第1のサブユニットには結合しない。概して、リガンドは、ヘテロ二量体の一方のサブユニットに結合するが、ヘテロ二量体の他方のサブユニットには結合しない。
【0035】
場合によっては、第1のサブユニット及び第2のサブユニットの各々が、免疫グロブリンCH3ドメインを含有する。免疫グロブリン重鎖はCH3ドメインを含有することから、各サブユニットは免疫グロブリン重鎖であり得る。そのため、マルチサブユニットタンパク質は、場合によっては2つの別々の重鎖を含有する抗体である。このような抗体は、二重エピトープ特異性を有する二重特異性抗体であり得る。
【0036】
二重特異性抗体(または他のヘテロ多量体)を生成するためのいくつかのプロトコールによれば、一方のサブユニットのCH3ドメインはプロテインAに結合することが可能であり(CH3)、他方のサブユニットのCH3はプロテインAには結合しないかまたは非常に低い親和性で結合する(CH3*)。そのため、二重特異性抗体は、プロテインAとの結合能力が低いまたはゼロの2つのCH3ドメイン(すなわち、CH3*)を有する抗体よりは良好にプロテインAに結合するが、2つのプロテインA結合性のCH3ドメインを有する抗体ほど良好に結合するわけではない。このプロテインAに対する結合性の差は、存在する任意のホモ二量体から二重特異性抗体を分離するために使用することができる。一実施形態では、CH3*は、プロテインAとの結合を低下させるかまたは不可能にするアミノ酸置換H95R及びY96F(IMGTエキソンナンバリングシステムによるナンバリング)を含む。
【0037】
例えば、二重特異性抗体は、細胞(例えば、CHO細胞またはEESYR(登録商標)などのCHO細胞派生物)の中で、第1のエピトープに対して特異的な第1の重鎖と、第2のエピトープに対して特異的な第2の重鎖との両方を発現させることによって、生成することができる。抗体は2つの重鎖を含有するため、2つの同一の第1の重鎖を有し、第1のエピトープに対して特異的なホモ二量体(別名ホモB);2つの同一の第2の重鎖を有し、第2のエピトープに対して特異的なホモ二量体(別名ホモA);ならびに第1及び第2の重鎖両方を有し、両方のエピトープに対して特異的なヘテロ二量体(別名ヘテロAB)の少なくとも3つの形態の抗体が形成されると考えられる。精製スキームによっては、プロテインA結合性のホモ二量体(ホモB)及びプロテインA結合性のヘテロ二量体(ヘテロAB)の分離は完璧ではなく、得られるヘテロ二量体(例えば、二重特異性抗体)にはホモ二量体が混入している。
【0038】
本発明における1つの特定の目的は、細胞によって生成され、プロテインAクロマトグラフィーによりヘテロ二量体からホモ二量体を識別して精製された、ヘテロ二量体の純度を決定することである。場合によっては、ホモ二量体及びヘテロ二量体(Ab)の生物物理学的属性(例えば、質量、等電点、アミノ酸含有量など)はかなり類似しており、各々の種に対する具体的な同定および定量化を困難にしている。そのため、リガンド(L)を使用して、ホモ二量体の一方及びヘテロ二量体に選択的に結合させ、かつ他方のホモ二量体に結合させないようにする。このような結合は、生物物理学的属性が変化しかつ際立った特徴を備える複合体(別名Ab・L)を形成し、当業者はこれにより、結合しているホモ二量体及び結合しているヘテロ二量体から非結合のホモ二量体を識別することができるようになる。場合によっては、この複合体は電気泳動移動度が変化し、リガンドを伴う複合体から、複合体を形成しないホモ二量体をより顕著に分離するまたは分けることが可能になる。
【0039】
リガンドは、サブユニットのうちの1つ(例えば、第1のサブユニットまたは第2のサブユニット。ただし両方ではない)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、または他の抗原結合タンパク質とすることができる。一実施形態、すなわち(a)ヘテロ二量体が二重特異性抗体であり、(b)第1のサブユニットが、プロテインAに結合するCH3ドメインを含有する免疫グロブリン重鎖であり、(c)第2のサブユニットが、プロテインAには結合しないCH3ドメイン(例えば、H95R及びY96Fアミノ酸置換を含有するCH3*)を有する免疫グロブリン重鎖であり、(d)リガンドが、第1のサブユニットに結合する抗体である、実施形態では、リガンドは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3にそれぞれ記載の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3、ならびに/または配列番号4、配列番号5、及び配列番号6にそれぞれ記載の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3を含む(例えば、抗B抗体)。
【0040】
別の実施形態、すなわち(a)ヘテロ二量体が二重特異性抗体であり、(b)第1のサブユニットが、プロテインAに結合するCH3ドメインを含有する免疫グロブリン重鎖であり、(c)第2のサブユニットが、プロテインAには結合しないCH3ドメイン(例えば、H95R及びY96Fアミノ酸置換を含有するCH3*)を有する免疫グロブリン重鎖であり、(d)リガンドが、第2のサブユニットに結合する抗体である、実施形態では、リガンドは、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9にそれぞれ記載の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3、ならびに/または配列番号10、配列番号11、及び配列番号12にそれぞれ記載の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3を含む(例えば、抗B抗体)。
【0041】
二重特異性抗体を検出または定量化するためのシステム
二重特異性抗体(bsAb)は、2つの別々の結合特異性を備え、がん治療を含めた広範囲の臨床適用例がある(Kufer et al.,(2004)22(5)Trends Biotechnol.238-44及びLameris et al.,(2014)S1040-8428(14)Crit.Rev.Oncol.Hematol.2014,00135-8)。bsAbは、従来の併用薬物療法または単剤療法を介して他の方法で活性化させることが難しいヘテロ二量体受容体に対し、架橋して活性化させることができる(J.R.Cochran,(2010)2(17)Sci Transl Med.17ps5)。
【0042】
商用規模でのbsAb製造は難しい。治療用途に好適である実現可能なbsAbを産生するために、複数のアプローチが採用された(R.E. Kontermann(2012)4:2 MAbs 182-97)。このようなアプローチの1つは、2つのユニークな重鎖(鎖A及び鎖B)に共有結合的に連結する共通の軽鎖の使用を伴う(Davis et al.,PCT出願第WO2010151792号,2010年12月29日;2011;Babb et al.,PCT出願第WO2013184761号,2013年12月12日)。第1の重鎖(別名「第1のサブユニット」または「鎖B」)、第2の重鎖(別名「第2のサブユニット」または「鎖A」)及び共通の軽鎖を生成中に共発現させ、次に、これらを組み合わせてホモA、ホモB及びヘテロABの3つの生成物にする。ホモ二量体(ホモAまたはホモB)は、2つの同一の重鎖(AAまたはBB)及び2つの同一の軽鎖からなる。bsAb生成物(ヘテロAB)は、2つのユニークな重鎖(鎖A及び鎖B)及び2つの同一の軽鎖からなる。理論的には、これら3つの生成物は、1:2:1(ホモA、ヘテロAB及びホモB)の比で発現されるはずである(
図1)。重鎖の一方である鎖AはプロテインAへの結合を不可能にし、またプロテインAに対する鎖Aの結合親和性が、単一特異性AbであるホモBの緊密な結合またはホモAの弱い結合と比較して中程度であることにより、bsAb(ヘテロAB)の選択的精製が可能になる。
【0043】
bsAbの製造におけるこういった進歩にもかかわらず、精製されたbsAb薬物中に少量のホモ二量体(ホモA及びホモB)が依然として存在する可能性がある。標的抗原によっては、例え少量のホモ二量体であっても、可能性として、異なる作用様式または異なる分解経路を示し、よってbsAb生成物の効力及び免疫原性に影響を及ぼす恐れが考えられる(Woods et al.,(2013)5 mAbs 711-722)。そのため、bsAbの純度を評価するための分析方法の開発は極めて重要である。
【0044】
ホモ二量体生成物とヘテロ二量体との間の構造的類似性及び生物物理学的類似性は、分離及び定量化を極めて困難にしている。ゲル電気泳動法及びサイズ排除クロマトグラフィーなどの従来的な分離ベースの純度アッセイは、ホモ二量体不純物からbsAbを識別するための分離能を欠いている。最近では、bsAbの純度を推定するためのLC-MSベースのアプローチが報告されている(同上)。bsAbの純度の特性決定には質量分析がごく普通に適用されているが、ホモ二量体に優先してbsAbを定量化するために質量分析を適用するには、脱グリコシル化などの修飾を伴う。イオン化速度から生じる異種性及びC末端リジンの切断により、bsAbの純度評価のための質量分析の適用は更に限定される。
【0045】
キャピラリー電気泳動(CE)は、抗体を特性決定するために使用される(Jorgenson et al.,(2000)72 Anal.Chem.111-128)。CEの形態には、キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)、キャピラリー等電点集束(cIEF)及びキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)が含まれる。CZEの分離メカニズムは、電荷対サイズ比に基づく。CZEは、コーティングされていないキャピラリーを使用した一部の抗体アッセイで用いられる(He et al.,(2010)82(8)Anal.Chem.3222-30)。また、部分充填アフィニティーキャピラリー電気泳動(PF-ACE)と組み合わせたCZEも、特定の分子種の同一性を決定するために使用されてきた(Brown et al.,(2005)540 Analytica Chimica Acta 403-410)。PF-ACEは、その鎖特異的リガンドに対する選択的親和性による分析物(例えば、bsAb、ホモA及びホモB)の移動度のシフトを利用している。PF-ACEは、既存のLC-MSベースのアプローチとは独立して用いることができる(Woods,2013)。
【0046】
別の態様では、本発明は、リガンド、第1のホモ二量体、第2のホモ二量体、ヘテロ二量体、キャピラリー、検出器、キャピラリーの一方の端部またはその付近にあるアノード、キャピラリーの他方の端部またはその付近にあるカソード、及び電源を備えるシステム(例えばCZEシステム)を提供する。一実施形態では、第1のホモ二量体は、少なくとも2つの同一の第1のサブユニット(例えば、プロテインAに結合することが可能な免疫グロブリン重鎖)を含み、第2のホモ二量体は、少なくとも2つの同一の第2のサブユニット(例えば、プロテインAに結合することが不可能な免疫グロブリン重鎖)を含み、ヘテロ二量体は、1つの第1のサブユニット及び1つの第2のサブユニットを含む。検出器は、キャピラリーに沿った任意の箇所に配置してもよい。概して、分子実体は全体として正電荷を有し、そのため電場下ではカソードに向かって移動することになる。そのため、一部の実施形態では、検出器はキャピラリーのカソード側の端部の付近に配置される。検出器は、タンパク質を検出することができ、とりわけ210nmまたは280nmにおける吸光度を測定するUV検出法、または自然蛍光もしくは蛍光標識を検出するレーザー誘起蛍光を用いることができる。
【0047】
一実施形態では、リガンド(第1のサブユニットまたは第2のサブユニットのいずれかに対して特異的だが、両方に対してではない)、第1のホモ二量体、第2のホモ二量体、及びヘテロ二量体がキャピラリーのアノード側の端部またはその付近にロードされる。場合によっては、この混合物は、カソード側の端部の付近にロードされてもよいし、キャピラリーに沿った任意の位置でロードされてもよい。リガンドはその同族サブユニットに結合し、ヘテロ二量体と、及びホモ二量体のうちの一方と複合体を形成するが、他方のホモ二量体とは複合体を形成しない。したがって、リガンドが第1のサブユニットに結合すると、第1のホモ二量体及びリガンドを含む複合体(第1の複合体)、ならびにヘテロ二量体及びリガンドを含む複合体(第2の複合体)が形成される。代替的に、リガンドが第2のサブユニットに結合すると、第2のホモ二量体及びリガンドを含む複合体(第3の複合体)、ならびにヘテロ二量体及びリガンドを含む複合体(第4の複合体)が形成される。各場合において、複合体は、結合しない(複合体を形成しない)ホモ二量体よりも、電気泳動移動度が低い。一部の実施形態では、すなわち、ヘテロ二量体が二重特異性抗体である場合、第1のサブユニットは、プロテインAに結合することが可能な免疫グロブリン重鎖であり、第2のサブユニットは、プロテインAに結合することが不可能な免疫グロブリン重鎖である(すなわち、H95R及びY96Fに置換されたCH3*ドメインを含有する)。
【0048】
本システム及び方法によれば、キャピラリー内を進む間、複合体は速度が抑えられ、複合体を形成しないホモ二量体と同時に検出器窓を通過することはない。そのため、複合体を形成しないホモ二量体は、ヘテロ二量体及び他のホモ二量体により妨害されることなく検出及び定量化される。二重特異性抗体の場合において、一つのACEアッセイでは、非置換CH3重鎖に結合するリガンドが使用され、この場合、CH3*:CH3*(ホモA)2量体は複合体を形成しないままである。このCH3*:CH3*(ホモA)ホモ二量体が検出及び定量化される。(最初のACEアッセイとは別個にかつ/または並行して実行することができる)他の独立したACEアッセイでは、H95R及びY96Fに置換されたCH3*ドメインに結合するリガンドが使用される。この場合、CH3:CH3(ホモB)2量体は複合体を形成しないままであり、検出及び定量化される。両方のACEアッセイを実行する実施形態では、両方のホモ二量体を定量化することができる。この場合、二重特異性抗体のヘテロ二量体は、いかなるリガンドも伴わないCZEアッセイで決定するか、または添加されたホモA及び/またはホモB試料について生成された標準曲線を使用して決定する、二量体の総量(CH3:CH3 + CH3:CH3* + CH3*:CH3*)(ホモB + ヘテロAB + ホモA)から、独立したACEアッセイによって決定する各ホモ二量体の量を引くことによって、定量化することができる。
【0049】
別の実施形態におけるシステム及び方法は、ローディングポートと検出器との間の、キャピラリーのアノード側(ローディング側)の端部の付近に入れられたリガンドプラグを使用する(PF-ACE)。この場合、(第1のホモ二量体、第2のホモ二量体、及びヘテロ二量体を含む)多量体混合物が、キャピラリーのリガンドプラグ手前にロードされる。多量体がキャピラリー内を移動する際に、構成成分である分子実体がリガンドプラグに遭遇し、その地点でリガンド-多量体複合体が形成され、それにより、リガンドには結合しないホモ二量体以外の全ての種における電気泳動移動度が低下する。リガンドが第1のサブユニットに結合する場合、2つの第2のサブユニットを含む(かつ第1のサブユニットを含まない)ホモ二量体は結合しないままであり、電気泳動移動度の影響を受けない。
【0050】
ヘテロ二量体が二重特異性抗体である一部の実施形態によれば、第1のサブユニットは、プロテインAに結合することが可能な免疫グロブリン重鎖(別名サブユニットB)であり、第2のサブユニットは、H95R及びY96Fに置換されたCH3ドメイン(すなわち、CH3*)を含有する免疫グロブリン重鎖(別名サブユニットA)であり、第1のサブユニットに結合するリガンドは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3(これらはそれぞれ、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む)を含み、かつ軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3(これらはそれぞれ、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む)を含む、抗体である。この場合、第2のサブユニットに結合するリガンドは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3(これらはそれぞれ、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む)を含み、かつ軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3(これらはそれぞれ、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む)を含む、抗体である。
【実施例0051】
実施例1:キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)による純度
二重特異性抗体(「bsAb」)の純度を評価するため、CE-SDSを還元条件下で実施した。bsAb(ヘテロ二量体)試料、ホモA(第2のホモ二量体)試料及びホモB(第1のホモ二量体)試料について還元条件下で得られたCE-SDS結果(
図2、トレースa~c)から、軽鎖(
図2、ピーク1)、非グリコシル化重鎖(
図2、ピーク2)及び重鎖(
図2、ピーク3)に対応する3つのピークが明らかになった。ホモA及びホモBを精製bsAb1に添加することによって調製したホモA:bsAb1:ホモB(1:2:1モル比)の共混合物試料からも、類似した移動時間を伴った3つのピークがもたらされた(
図2、トレースd)。bsAb、ホモ二量体及びこれらの共混合物の電気泳動図は識別することができず、このサイズに基づいた分離方法の限界を示している(
図2)。非還元条件下のCE-SDSについても、類似した結果が観測された。試験を行った抗体の分子量が非常に類似しているため、これらの結果は驚くべきものではない。適度な分離選択性は、bsAbからこれらのホモ二量体構成要素を分離する上で極めて重要である。
【0052】
CZEは、密接に関連したmAbを分離するための強力なツールであることが証明されている(He,2010)。bsAb1の純度を、分析物を電荷対サイズ比に基づいて分離する方法であるCZEによって評価した。電荷対サイズ比が大きい分析物ほどキャピラリー内を高速で移動する。純粋なbsAb1試料(
図3、トレースa)に比べて、ホモAは電荷対サイズ比がより大きく、キャピラリー内をより高速で移動する(
図3、トレースb)。ホモBは電荷対サイズ比がより小さく、キャピラリー内をより低速で移動する(
図3、トレースc)。bsAbは、ホモA(鎖A)からの重鎖である一方のアームとホモB(鎖B)からのものである他方のアームとを含有し、かつ対応するpI(8.01)を有するため、bsAbの電気泳動移動度は、ホモAとホモBとの間にある(
図3、トレースa)。主なピークグループ2、3及び4は、それぞれホモA、bsAb、及びホモBに対応する。電気泳動図で観察される小さいピークは、抗体における電荷バリアントまたはサイズバリアントのいずれかに起因する。ホモA及びホモBを精製bsAbに添加することによって、ホモA、bsAb、及びホモBの混合物(1:2:1の比)を作製した。次に、混合物をCZEによって分析した。混合物のCZEトレースには4セットのピークが含まれ、これらはホモA(ピークグループ2)、bsAb(ピークグループ3)、及びホモB(ピークグループ4)に相当する(
図3、トレースd)。ホモBのピークで観察される低いピーク強度は、低速な電気泳動移動度と、電気泳動図全体に分布するホモB種における複数の電荷バリアントとの組み合わせによるものである可能性が考えられる。CE-SDS(
図2)で分離されなかったホモA:bsAb1:ホモBの共混合物は、CZEにおいては期待できる結果が示された。bsAb1のCZEプロファイル(
図3)が十分に分離されているため、同定および純度の定量化が期待できる。Agilent Bioanalyzer上でAgilent Protein 230キットを使用して、CE-SDS分離を実施した。
【0053】
実施例2:部分充填アフィニティーキャピラリー電気泳動による純度
CZEは、電荷対サイズ比が多様な実体を含有する試料に限定される。常にこれが該当するわけではないため、CZEは、多くのbsAb候補に適用することはできない。例えば、bsAb2及び関連のホモ二量体はpI及びサイズが類似するため、非常に類似したCZEプロファイルを共有する(
図4、トレースa~c)。様々な分子実体が分離されないことから、個々の構成要素分子種の同定は現実的でなかった。
【0054】
純度を定量化するための別の実現可能なアプローチは、アフィニティーキャピラリー電気泳動(ACE)である。ACEでは、抗体(Ab)及びリガンド(L)の混合物(これらは、抗体-リガンド複合体(Ab・L)を形成する)を用意する(式1を参照)。次に、この混合物をキャピラリーに注入し、電気泳動にかけた。ACEは、Ab、L及びAb・L間の電気泳動移動度の相違に基づいている。抗原または鎖特異的抗体のいずれかがリガンドとして使用される場合、ホモ二量体の定量化は、様々な種間のベースライン分離能に依存しない。個々の種の選択的な移動度シフトは、任意の残りのホモ二量体の量を推定するために使用することができる。
【0055】
ACEでは、抗原を同族抗体用のリガンドとして使用することができる。代替的に、鎖特異的抗体(抗Aまたは抗B)を同族抗体用のリガンドとして使用することができる。抗A抗体(別名「第2のリガンド」)は、鎖Aを含有する抗体(ホモA及びbsAb)に対して特異的に結合する。同様に、抗B抗体(別名「第1のリガンド」)は、鎖Bを含有する抗体(ホモB及びbsAb)に対して結合する。
【0056】
一実施形態では、抗A抗体は、配列番号7~12のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖のCDRを含む。一実施形態では、抗A抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び、配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗A抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0057】
一実施形態では、抗B抗体は、配列番号1~6のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖のCDRを含む。一実施形態では、抗B抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗A抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、及び配列番号20のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0058】
一実施形態では、鎖A特異的抗体及び鎖B特異的抗体における理論上の等電点(pI)は、それぞれ6.55及び6.64である。pI及びサイズが類似した分析物(bsAbまたはホモ二量体)から生じるピークは、鎖特異的mAbと共に移動し、同定および定量化を妨害する可能性が考えられる。この妨害の可能性を避けるため、鎖特異的抗体の電気泳動移動度をビオチン化によって改変する。EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-Biotinキット及び手順(Thermo Scientific,Rockford,IL)を使用して抗A抗体及び抗B抗体をビオチン化した(Daniels and Amara,(1998)296 Methods Enzymol.307-18;Thermo Scientific,Instructions:EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-biotin,Doc.No.1850.3,https://tools.lifetechnologies.com/content/sfs/manuals/MAN0011580_EZ_Sulfo_NHS_Biotin_UG.pdf,April 29,2015で入手可能)。様々な性質及びスペーサーアーム長を有するいくつかの異なるビオチンのNHSエステルが利用可能である。簡潔に述べると、ビオチンのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル(例えば、水溶性のスルホ-NHS-ビオチン)を、リジンの一級アミノ基(-NH2)及び各ポリペプチドのN末端で利用可能な一級アミノ基とpH7~9の緩衝液中で反応させた。
【0059】
一級アミンのカップリング及びリジン側鎖修飾を介したビオチン化によって、鎖特異的抗体の電荷が酸性方向に改変され、そのため鎖特異的抗体の電気泳動速度が低下して、結果的に実験の実行時間内に検出可能な信号が喪失した。鎖特異的抗体からのいかなる検出可能なピークも存在しないことにより、対象分子種の同定および定量化が容易になった。
【0060】
ACE分析に関しては、抗A抗体または抗B抗体をリガンドとして使用した。bsAb3と抗A抗体または抗B抗体とを1:2のモル比で混合することによって調製したbsAb-リガンド複合体を使用して、ACEを実施した。複合体が形成されると、bsAb3の電気泳動移動度は変化することが予想され、そして遊離bsAb3の残留シグナルは残存しないことが予測された。しかし、bsAb3-抗A複合体及びbsAb3-抗B複合体について、遊離bsAb3の移動時間に類似した移動時間において大量の残留物のピークが検出された(
図5、トレースb及びc)。様々な比のbsAb及び抗Bの複合体(1:0.5、1:1及び1:3)について得られたACEデータから、過剰な抗Bリガンドの存在下であっても残留物のピークが見られることが実証された。bsAb3-抗B複合体の調製物中に残留非結合bsAb3が存在するかをさらに調べるため、SE-HPLC実験を実施したところ、bsAb3(
図6、トレースa;ピーク4)及び抗B(
図6、トレースb;ピーク3)が良好に分かれることが示された。SE-HPLCの結果は、bsAb3-抗B複合体(
図6、トレースc;ピーク1及び2)及び過剰な抗B(
図6、トレースc;ピーク3)の存在を示している。しかし、非結合bsAb3の存在を証明するものはほとんどなかった。これらの結果から、高レベルでの残留物のピークの存在は、CZE実験(
図5)中に印加された高電圧で分析物-リガンドが解離したこと(例えば、bsAb・L→bsAb+L)によるものであり得ることが示唆される。分析物-リガンド複合体の解離は、CEなどの親和性ベースの分離方法において過去に報告されている(S.Krylov,(2006)11(2)J Biomol Screen 115-122)。ssDNA及びssDNA結合タンパク質を含有する平衡混合物をキャピラリー内で分離する過去の試みからは、連続的な解離を経てピーク及び指数関数的「スミアー」がもたらされることが見出された。リガンド及び標的の両方が、電気泳動の間中、解離を続けた(同上)。一部のbsAbについては、ACE分析で観察される残留物のピーク及び「スミアー」の存在が、純度分析の妨害となる。
【0061】
解離の影響を回避するために、部分充填アフィニティーキャピラリー電気泳動(PF-ACE)が開発され利用された(Brown et al.,540 Analytica Chimica Acta 403-410(2005))。PF-ACEは、キャピラリーにリガンドを部分的に充填してから試料を注入することによって実施される。分析物が親和性リガンドゾーンを移動する際にリガンド-分析物複合体が形成され、複合体の移動度が遊離分析物に対してシフトする。親和性リガンドには結合しない残留分析物の移動度は、いずれも変化しない。そのため、PF-ACEは、bsAb中に存在する任意の残留分析物の相対的存在量を正確に推定することができる。
【0062】
ACE及びPF-ACE条件下で実験を行い、bsAb3-抗B複合体のデータを収集した。分析物-リガンド複合体の解離によりACE条件下で観察された残留bsAb3のピークは、PF-ACE条件では検出されなかった(
図7)。ACE条件下では、分析物は、ひとたび分析物-リガンド複合体から解離すると、再び複合体を形成しない可能性がある。PF-ACE条件下では、分析物がリガンドプラグ内を移動することにより、分析物は、早期に解離した場合であっても分析物-リガンド複合体を形成することができる。親和性リガンドゾーンの非存在下で観察されたホモBのピークは、抗B mAbを用いてPF-ACEを実施した場合には、シフトして信号の喪失として示された(
図8、トレースA及びトレースB)。この効果は、ホモB-抗B mAb複合体の形成によるものである。これとは対照的に、ホモB mAbが抗A mAbで部分的に充填されたキャピラリー内を移動した場合は親和性リガンドゾーンを含有しないトレースに比べて変化がないが、これはホモB mAbが抗A mAbには結合しないためである(
図8、トレースA、トレースC)。同様に、移動度シフトは、特異的結合(すなわち、ホモA+抗AまたはホモB+抗B)についてのみ観察され、他のリガンドによるものでは観察されなかった(
図8、トレースD及びトレースF)。これらの結果は、PF-ACEアッセイが、鎖特異性リガンドに基づく移動度シフトに高度に特化していることを示すものである。
【0063】
実施例3:二重特異性試料中にあるホモ二量体mAbの検出及び定量化
PF-ACEアッセイを介してbsAb純度を評価するため、少量(5%)のホモA及びホモBをbsAb3試料に添加してホモ二量体「不純物」の役割をさせた。得られたCZE及びPF-ACEトレースは、
図9に示されている。トレース『a』は、bsAb3の電気泳動図を示している。トレース『b』は、5%のホモA及びホモBの不純物を添加したbsAb3の電気泳動図を示している。ホモA及びホモBをbsAb3に添加したことにより、2つのピーク強度が増加する結果がもたらされた(トレースa及びトレースb、ピーク2及びピーク4を比較)。精製ホモ二量体の電気泳動移動度に基づいて、これらの2つのピークをそれぞれホモA及びホモBとして暫定的に同定した。これらの同定を、PF-ACE実験でトレースc及びトレースdにおいて確認した。トレースdは、残留物のピークであればホモA種を表すことになるbsAb3-抗B PF-ACEを示している。dにおいて観察される残留物のピークは、トレースbにおけるピーク2に類似した移動時間を有し、したがって添加された試料におけるピークの同定を立証する。類似した結果が、bsAb3-抗A PF-ACEについても観察された(
図9、トレースc、ホモB)。
図9で観察された少量の残留物のピーク、トレースcは、bsAb3で観察された混入物に対応し、添加された試料に由来するものではないため、トレースcを定量化から除外した。PF-ACEに基づいて、添加された試料中に存在するホモA及びホモBの量がそれぞれ5.2%及び5.2%と推定された。これらの値は、添加量の5%と良好に一致しており、実験誤差の範囲内である。
【0064】
検出限界(LOD)及び定量限界(LOQ)を評価するため、様々な量のホモA及びホモBを精製bsAb3に加えてスパイクリカバリーを実施した。広範囲のホモA及びホモB mAb(濃度0.1%~5%)を含有する9つのbsAb3試料を調製して、これらの添加された試料中に存在するホモ二量体のレベルを調べた。親和性リガンドの非存在下でホモA及びホモBを含有するbsAb3のPF-ACEトレースは、結果的にbsAb3、ホモA及びホモBに対応するピークを含む電気泳動図となった。この電気泳動図は、それぞれの添加されたbsAb3試料中にホモ二量体mAbが存在することを示すものである。添加されたbsAb3試料中の濃度増加に伴う優れた線形応答(R
2=0.999)が、ホモA(
図10)及びホモB(
図11)について観察された。全体として、ホモ二量体のLOQは0.1%の値を有することが実験的に判定された。
【0065】
実施例4:タンパク質分析の方法論
ダイオードアレイ検出器を搭載したBeckman PA800 plus装置を使用して、CZE実験を実施した。32Karat(登録商標)ソフトウェア(Beckman Coulter,Inc.,Brea,CA)をデータ分析に使用した。簡潔に述べると、抗体試料(1mg/mL)を水で希釈して約1mg/mLの濃度にして、裸溶融シリカキャピラリー(全長60.2cm、実効長50cm、i.d.40μm)を備えたBeckman PA800 Plusを使用して0.5psiで45秒間注入した。同じ条件下で1:2モル比のbsAb対リガンドを使用してACEを実施した。PF-ACE分析用については、リガンドプラグ(1Xリン酸緩衝食塩水中2mg/mLの修飾リガンド)を1psiで90秒間注入してから、分析物または分析物-リガンド複合体の注入を行った。分離を28kVで実施し、分離中はキャピラリー温度を22℃に維持した。試料を10℃で保管した。ε-アミノカプロン酸-酢酸600mM、0.1%のHPMCを含有するpH5.7の緩衝液をバックグラウンド電解液として使用し、1mMのヒスチジンを内部標準として添加した。
【0066】
bsAb、ホモA及びホモBの試料を、CE-SDSにより還元条件下で分析した。bsAb及びホモ二量体を単一バッチから共発現させ、精製した。Agilent Bioanalyzerで分離を実施し、試料調製は、Protein230キット用の製造業者のプロトコールに概ね従った。
【0067】
抗体、リガンド及び抗体-リガンド複合体の試料も、自然の条件下でサイズに基づいて分析し、これは0.3mL/分の流量のSEC緩衝液(リン酸ナトリウム200mM、pH7.1)中で平衡化されたACQUITY UPLC BEHカラムを搭載したWATERS ACQUITY UPLCシステム(Waters Corporation,Milford,MA)に注入することによって行った。
【0068】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> Regeneron Pharmaceuticals, Inc.
<120> Multimeric Protein Purity Determination
<150> US 62/160,341
<151> 2015-05-12
<160> 20
<170> PatentIn version 3.5
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