IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イプセン バイオファーム リミティドの特許一覧

特開2022-171808リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル(およびロイコボリン)を含む併用療法を用いる胃がんの処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171808
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル(およびロイコボリン)を含む併用療法を用いる胃がんの処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20221104BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61P35/00
A61P1/00
A61P43/00 121
A61K31/282
A61K31/4375
A61K31/513
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/28
A61P1/08
A61K31/573
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022146925
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2019522381の分割
【原出願日】2017-11-01
(31)【優先権主張番号】62/416,317
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510186018
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ビン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン バジル フィッツジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】アシシュ カルラ
(72)【発明者】
【氏名】シャノン レオナルド
(57)【要約】
【課題】これまで未処置の胃がんと診断された患者の(ファーストライン)処置用に、胃がんの処置に有用な新規の療法を提供する。
【解決手段】胃がんを処置するために改善された抗腫瘍療法は、これまで未処置の胃がんを有する患者への、オキサリプラチンおよび5-フルオロウラシルと組み合わせたリポソームイリノテカンの投与を提供する。胃がんを処置する方法は、患者に対する2週間に1回のリポソームイリノテカン(例えば、MM-398)、オキサリプラチン、および5-フルオロウラシルの抗腫瘍療法の施行を含むことができる。必要に応じて、ロイコボリンは、5-フルオロウラシルの各投与の前に投与することもできる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、これまで未処置の胃がんと診断された患者の(ファーストライン)処置用に、5-フルオロウラシルおよびオキサリプラチンと組み合わせたリポソームイリノテカンの使用を含む、胃がんの処置に有用な新規の療法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃がんは、世界中のがんに関連した死亡率の、最も一般的な原因の1つである。約18,000名の転移性胃がん患者が、2015年に米国で医薬レジメンにより処置されると予測された。この集団の中で、約7000名の患者が、HER2-陰性のフロントライン処置カテゴリーに含まれる。HER2-陰性胃がんは高度異質性疾患であり、ベバシズマブ、リロツムマブ、およびセツキシマブなどの標的療法は不首尾に終わっていた。予後を難しくすることには、多くの胃がん患者は、診断時に進行期疾患を示す。現在のところ、限られた有効性(5年生存率が約4%)のいくつかの処置レジメンが調査されているという事実にも関わらず、進行性胃がんの処置のために世界的に受け入れられている標準化学療法レジメンはない。疾患は、一般に、化学療法、外科手術、および放射線療法で処置される。胃がんの患者の予後が良好でなく生存率中央値が低いことを考慮して、新しい処置の選択肢が依然求められている。
【0003】
多剤レジメンの耐容性は、がん処置に重要である。管理可能な処置の期間が長いほど、より長い薬物曝露に起因して、改善された結果をもたらすはずである。胃がんを有する患者の、1つの広く使用されるファーストライン処置は、オキサリプラチンに、注入5-フルオロウラシル(5-FU)およびロイコボリン(LV)を加えたものである。特に、修正されたFOLFOX6レジメン(mFOLFOX6)は、5-FU/LV(400mg/mIVボーラス+2400mg/m、46時間注入/400mg/mとして)+オキサリプラチン(85mg/m)、q2wを含む。処置は一般に十分耐容されるが、全生存は増加しない。
【0004】
ここ5年間にわたり、胃がんのファーストライン処置として登場した別の併用化学療法レジメンは、5-フルオロウラシル(5-fluorouricil)(5-FU)/ロイコボリン(LV)+イリノテカン+オキサリプラチン(FOLFIRINOX)の併用療法である。しかし、FOLFIRINOXは著しい毒性を有することが公知であり、使用は、より良好なパフォーマンスステータス(即ち、ECOGパフォーマンススコアが0または1)を有する患者に限定される。長期にわたるFOLFIRINOX処置では、オキサリプラチンは、毒性に起因してレジメンにおいてしばしば中止される。したがって、等しく有効な二剤レジメン(double regimen)を特定することができるならば、患者は、長期にわたる処置に、より良好に耐容することができる可能性があり、パフォーマンスステータスが良好でない患者ですら利益を受ける可能性がある。FOLFIRINOXレジメンが、2011年以来、ファーストライン転移性疾患に対する好ましい選択肢として全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)により推奨されてきたが、FOLFIRINOXに関連した毒性に関するいくつかの懸念がある。FOLFIRINOXの、1つの用量レジメンは、85mg/mのオキサリプラチン、180mg/mのイリノテカン、および400mg/mの用量でIVボーラスにより投与され、その後、2400mg/mが連続注入されるフルオロウラシルである。さらに毒性に起因して、修正されたスケジュールの有効性および安全性に対する効果は未知である、修正されたFOLFIRINOXレジメンがしばしば使用される(例えば、5-FUボーラスの排除)。
【0005】
CPT-11は、結腸もしくは直腸の転移性癌を有する患者、またはその疾患が初期のフルオロウラシルをベースにした療法の後に再発もしくは進行した結腸もしくは直腸の転移性癌を有する患者のファーストライン療法として、5-フルオロウラシルおよびロイコボリンと組み合わせた使用が承認された、米国でCamptosar(登録商標)として販売される塩酸イリノテカン三水和物である。
【0006】
MM-398は、リポソームイリノテカンであり、ゲムシタビンをベースにした療法の後の疾患の進行後に、ある特定の形態の膵がんを有する患者の処置のために、5-フルオロウラシルおよびロイコボリンと組み合わせたFDAに承認された製品ONIVYDE(登録商標)として米国で販売されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
胃がんを処置するためにこれまで抗腫瘍剤を受けたことがないヒト患者の該胃がんを処置する方法であって、合計で2週間に1回、該患者に抗腫瘍療法を施行することを含み、該抗腫瘍療法が、合計で、
a. 50または55mg/mのリポソームイリノテカン、
b. 60、70、または85mg/mのオキサリプラチン、
c. 200mg/mの(l)型ロイコボリンをまたは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および
d. 2,400mg/mの5-フルオロウラシル
を該患者に投与して該ヒト患者の該胃がんを処置することからなる、方法。
(項目2)
合計で50mg/mのリポソームイリノテカンが、2週間に1回、前記抗腫瘍療法中に前記患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
合計で55mg/mのオキサリプラチンが、2週間に1回、前記抗腫瘍療法中に前記患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
合計で60mg/mのオキサリプラチンが、2週間に1回、前記抗腫瘍療法中に前記患者に投与される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
合計で70mg/mのオキサリプラチンが、2週間に1回、前記抗腫瘍療法中に前記患者に投与される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
合計で85mg/mのオキサリプラチンが、2週間に1回、前記抗腫瘍療法中に前記患者に投与される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
合計で50mg/mのリポソームイリノテカン、および合計で60mg/mのオキサリプラチンが、2週間に1回、前記抗腫瘍療法中に前記患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
合計で55mg/mのリポソームイリノテカン、および合計で70mg/mのオキサリプラチンが、2週間に1回、前記抗腫瘍療法中に前記患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目9)
合計で50mg/mのリポソームイリノテカン、および合計で85mg/mのオキサリプラチンが、2週間に1回、前記抗腫瘍療法中に前記患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記オキサリプラチンの各投与が、前記リポソームイリノテカンの各投与の終了から2時間後に開始される、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記5-フルオロウラシルが、46時間にわたり注入物として投与される、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記ロイコボリンが、前記5-フルオロウラシルの直前に投与される、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンが、28日処置サイクルの1および15日目に投与される、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記リポソームイリノテカンが、合計で約90分間にわたり注入物として投与される、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記リポソームイリノテカンが投与され、その後、前記オキサリプラチンが投与され、その後、前記ロイコボリンが投与され、その後、前記5-フルオロウラシルが投与される、項目1から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記リポソームイリノテカンが、リポソームに封入されたイリノテカンスクロースオクタスルフェートを含む、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記リポソームイリノテカンが、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、およびN-(カルボニルメトキシポリエチレングリコール-2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(MPEG-2000-DSPE)からなるリポソーム小胞に封入されたイリノテカンを含む、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記リポソームイリノテカンが、リポソームに封入されたイリノテカンスクロースオクタスルフェートを含み、該リポソームイリノテカンが、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、およびN-(カルボニルメトキシポリエチレングリコール-2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(MPEG-2000-DSPE)からなるリポソーム小胞に封入されたイリノテカンを含む、項目2に記載の方法。
(項目19)
前記リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンが、28日処置サイクルの1および15日目に投与され、該リポソームイリノテカンの各投与が、該ロイコボリンの前に投与され、該ロイコボリンが、該5-フルオロウラシルの各投与の直前に投与され、5-フルオロウラシルの各投与が、46時間にわたり注入物として投与される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記リポソームイリノテカンが、リポソームに封入されたイリノテカンスクロースオクタスルフェートを含み、該リポソームイリノテカンが、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、およびN-(カルボニルメトキシポリエチレングリコール-2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(MPEG-2000-DSPE)からなるリポソーム小胞に封入されたイリノテカンを含む、項目10に記載の方法。
(項目21)
前記リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンが、28日処置サイクルの1および15日目に投与され、該リポソームイリノテカンの各投与が、該ロイコボリンの前に投与され、該ロイコボリンが、該5-フルオロウラシルの各投与の直前に投与され、5-フルオロウラシルの各投与が、46時間にわたり注入物として投与される、項目20に記載の方法。
(項目22)
胃がんを処置するためにこれまでゲムシタビンを受けたことがないヒト患者の該胃がんを処置する方法であって、合計で2週間に1回、該患者に抗腫瘍療法を施行することを含み、該抗腫瘍療法が、合計で、
a. 50mg/mのリポソームイリノテカン、
b. 85mg/mのオキサリプラチン、
c. 200mg/mの(l)型ロイコボリンまたは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および
d. 2,400mg/mの5-フルオロウラシル
を該患者に投与して該ヒト患者の該胃がんを処置することからなる、方法。
(項目23)
胃がんを処置するためにこれまでゲムシタビンを受けたことがないヒト患者の該胃がんを処置する方法であって、合計で2週間に1回、該患者に抗腫瘍療法を施行することを含み、該抗腫瘍療法が、合計で、
a. 55mg/mのリポソームイリノテカン、
b. 70mg/mのオキサリプラチン、
c. 200mg/mの(l)型ロイコボリンまたは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および
d. 2,400mg/mの5-フルオロウラシル
を該患者に投与して該ヒト患者の該胃がんを処置することからなる、方法。
(項目24)
胃がんを処置するためにこれまでゲムシタビンを受けたことがないヒト患者の該胃がんを処置する方法であって、合計で2週間に1回、該患者に抗腫瘍療法を施行することを含み、該抗腫瘍療法が、合計で、
a. 50mg/mのリポソームイリノテカン、
b. 60mg/mのオキサリプラチン、
c. 200mg/mの(l)型ロイコボリンまたは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および
d. 2,400mg/mの5-フルオロウラシル
を該患者に投与して該ヒト患者の該胃がんを処置することからなる、方法。
(項目25)
胃がんを処置するためにこれまでゲムシタビンを受けたことがないヒト患者の該胃がんを処置する方法であって、合計で2週間に1回、前記患者に抗腫瘍療法を施行することを含み、該抗腫瘍療法が、合計で、
a. 55mg/mのリポソームイリノテカン、
b. 85mg/mのオキサリプラチン、
c. 200mg/mの(l)型ロイコボリンまたは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および
d. 2,400mg/mの5-フルオロウラシル
を該患者に投与して該ヒト患者の該胃がんを処置することからなる、方法。
(項目26)
a. 前記リポソームイリノテカンが、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、およびN-(カルボニルメトキシポリエトリエングリコール-2000)-1,2-ジステアロイル(distearoly)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(MPEG-2000-DSPE)を含む、イリノテカンスクロースオクタスルフェート封入リポソーム小胞を含み、
b. 該リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンが、28日処置サイクルの1および15日目に投与され、
c. 該リポソームイリノテカンの各投与が、該ロイコボリンの前に投与され、
d. 該ロイコボリンが、該5-フルオロウラシルの各投与の直前に投与され、
e. 5-フルオロウラシルの各投与が、46時間にわたり注入物として投与される、項目22から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記オキサリプラチンの各投与が、前記リポソームイリノテカンの各投与の終了後に開始され、コルチコステロイドおよび抗嘔吐薬を前記抗腫瘍療法の前に前記患者に投与することをさらに含む、項目26に記載の方法。
胃がんを処置するために改善された抗腫瘍療法は、これまで未処置の胃がんを有する患者への、オキサリプラチンおよび5-フルオロウラシルと組み合わせたリポソームイリノテカンの投与を提供する。5-フルオロウラシルは、ロイコボリンと組み合わせて投与することができる。改善された抗腫瘍療法は、以前のFOLFIRINOXレジメンに比べ改善された治療指数(例えば、改善された毒性プロファイル)を提供することができる。
【0008】
胃がんを処置する方法は、患者に対する2週間に1回のリポソームイリノテカン(例えば、MM-398)、オキサリプラチン、および5-フルオロウラシルの抗腫瘍療法の施行を含むことができる。必要に応じて、ロイコボリンは、5-フルオロウラシルの各投与の前に投与することもできる。リポソームイリノテカンの各投与は、50mg/mもしくは55mg/m(56mg/mとして言及されることもある)のリポソームイリノテカン(用量は、本明細書に定義されるように、遊離塩基に基づく)、または60mg/mもしくは65mg/mのリポソームイリノテカン(用量は、本明細書に定義されるように、塩酸塩三水和物に基づく)の合計用量で投与されてもよい。合計で2,400mg/mの5-フルオロウラシルは、リポソームイリノテカンが投与される各日に開始して46時間にわたり投与することができる。合計で60、70、75、または85mg/mのオキサリプラチンは、リポソームイリノテカンが投与される各日に投与することができる。合計で200mg/mの(l)ロイコボリンを、5-フルオロウラシルの各投与前に投与することができる(例えば、必要に応じて400mg/mの(l+d)ロイコボリンとして投与される)。抗腫瘍療法は、28日処置サイクルの1および15日目に開始して施行することができ、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、および必要に応じてロイコボリンが、1および15日目に投与され、1および15日目に5-フルオロウラシルの46時間投与が開始される。リポソームイリノテカンおよび5-フルオロウラシルの各投与の合計用量は、抗腫瘍療法の以前の用量に対してグレード3または4の有害反応を経験する患者を含むある特定の患者に関して、25%低減させることができる。
【0009】
本発明は、部分的には、いくつかの前臨床の発見に基づく。第1に、リポソームイリノテカンは、曝露用量を一致させた非リポソームイリノテカンと比べて、トポイソメラーゼ1阻害剤SN-38(イリノテカンの活性代謝物)の抗腫瘍活性を改善した。第2に、5-フルオロウラシルおよびオキサリプラチンと組み合わせたリポソームイリノテカンは、これら薬剤のベースラインの毒性を悪化させることなく、非リポソームイリノテカンと比べて、胃がんのマウス異種移植モデルでの腫瘍成長の阻害および生存を一貫して改善した。
【0010】
さらに本発明は、部分的には、70mg/mのリポソームイリノテカン(遊離塩基)からなるヒトに対する初期抗腫瘍療法の用量の投与が、60mg/mのオキサリプラチン、2400mg/mの5-フルオロウラシル、および400mg/mの(l+d)ロイコボリンと組み合わせて投与したときに、ヒトにおいて十分耐容されなかったという発見に基づく。特に、この初期抗腫瘍療法の施行は、予期せぬ胃腸の有害事象をもたらした。しかし、50mg/mのリポソームイリノテカン、60mg/mのオキサリプラチン、2400mg/mの5-フルオロウラシル、および400mg/mの(l+d)ロイコボリンの新規の組合せからなる後続の抗腫瘍療法は、初期抗腫瘍療法で観察された胃腸の有害事象のいずれももたらさなかった。
【0011】
SN-38は、リポソームイリノテカンの強力な活性代謝物である。平均的な非封入SN-38(uSN38 Cavg)は、リポソームイリノテカンの有効性の増大に関連付けられ、一方、より高いレベルのその他のPKパラメーターは、リポソームイリノテカンの低減した耐容性に関連付けられる。例えば、より高い総イリノテカン最大血漿中濃度(tIRI Cmax)は下痢に関連付けられ、SN38(uSN38 Cmax)のより高い非封入最大血漿中濃度は、好中球減少症に関連付けられる。これらの薬物動態パラメーターは、naI用量に比例する。
【0012】
60mgのオキサリプラチンおよび80mg/mのリポソームイリノテカンの用量レベルでの、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンの投与は、非封入uSN38 Cmaxの血漿中の平均濃度の、100%よりも大きい増加をもたらし、一方、オキサリプラチン60mgおよびリポソームイリノテカン60mg/m(表2の用量レベル-1を参照)の用量レベルでの、これら4種の薬剤の投与は、約9%の増加をもたらした。さらに、低減した耐容性に関連付けられるPKパラメーター(tIRI CmaxまたはuSN38 Cmax)は、60mg/80mg/m(それぞれ)に関して約15%および44%増加したが、用量レベル-1に関しては3%および27%(それぞれ)減少した。したがって予想外に、より低い量のリポソームイリノテカンの投与は、より高い耐容用量をもたらし、それと同時に有効性が保持された。本出願において、オキサリプラチン、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンの、用量レベル-1または-3(表2)での投与は、tIRI CmaxまたはuSN38 Cmaxを有意に増加させることなく、血漿中のuSN38 Cavgを増加させ、より大きい耐容性でこれら用量の投与を可能する。
【0013】
したがって、(これまで未処置の)胃がんを処置する好ましい方法は、2週間に1回のヒト耐容抗腫瘍療法の施行を提供し、抗腫瘍療法の各施行は、本明細書で提供される抗腫瘍剤であるリポソームイリノテカン、オキサリプラチン、および5-フルオロウラシルの組合せである。好ましくは、2週間に1回施行される抗腫瘍療法は:(a)合計用量が50mg/mのリポソームイリノテカン(用量は、本明細書に定義されるように、遊離塩基に基づく)、(b)合計用量が60~85mg/mのオキサリプラチン(例えば、60、70、または85mg/mを含む)、および(c)必要に応じてロイコボリンと組み合わせて投与される合計で2,400mg/mの5-フルオロウラシル;または(a)合計用量が55mg/mのリポソームイリノテカン(用量は、本明細書に定義されるように、遊離塩基に基づく)、(b)合計用量が60~85mg/mのオキサリプラチン(例えば、60、70、または85mg/mを含む)、および(c)必要に応じてロイコボリンと組み合わせて投与される合計で2,400mg/mの5-フルオロウラシルからなる。必要に応じて、組合せは、合計で200mg/mの(l)ロイコボリンの投与(必要に応じて、400mg/mの(l+d)ロイコボリンとして投与される)を、5-フルオロウラシルの投与を開始する前に含むことができる。好ましくは、リポソームイリノテカンの投与後、リポソームイリノテカンから患者内で生成されたSN-38の量以外、抗腫瘍療法中にはその他の抗腫瘍剤は投与されない。例えば、抗腫瘍療法は、(非リポソーム)CPT-11イリノテカンなしで施行することができる。好ましくは、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、および(必要に応じて)ロイコボリンは、1日(1日目)における個別の注入として連続して投与され、5-フルオロウラシルは、ロイコボリン(投与される場合)の投与後1日目に開始して、次の日に継続して投与される(例えば、合計で46時間にわたり)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aは、胃腫瘍モデルMKN-45におけるnal-IRI活性を示すグラフであり;図1Bは、胃腫瘍モデルKATO IIIにおけるnal-IRI活性を示すグラフである。
【0015】
図2図2Aおよび2Bは、胃がんの異種移植モデルにおける、遊離イリノテカン単剤療法と比較したMM-398の抗腫瘍活性を示すグラフである。MKN-45腫瘍を有するマウスを、食塩液、12.5mg/kgの遊離イリノテカン、もしくは2.5mg/kgのMM-398で毎週、3週間(図2A)、または食塩液、25mg/kgの遊離イリノテカン、および5mg/kgのMM-398で毎週、3週間(図2B)にわたり処置した(投薬の日は、水平破線により示され;n=X(マウス群当たり)である)。
【0016】
図3図3Aは、5-FUおよびオキサリプラチンとの併用療法との関連で遊離イリノテカンと比較したMM-398の抗腫瘍活性を示すグラフであり;図3Bは、5-FUおよびオキサリプラチンとの三剤併用療法との関連で遊離イリノテカンと比較したMM-398の抗腫瘍活性を示すグラフである。
【0017】
図4-1】図4A~4Hは、MM-398が、オキサリプラチン、5-FU、および遊離イリノテカン(等しい曝露)に対してそれほど応答しない腫瘍モデルにおいて優れた抗腫瘍活性を表すことを示すグラフである(胃モデル(MKN-45)における有効性試験-単剤療法)。図4A MM-398腫瘍体積;図4B MM-398体重;図4C オキサリプラチン腫瘍体積;図4D オキサリプラチン体重;図4E 5-FU腫瘍体積;図4F 5-FU体重;図4G 遊離イリノテカン腫瘍体積、および図4H 遊離イリノテカン体重。5mg/kgでのMM-398は、試験したその他全ての処置よりも良好な抗腫瘍活性を有する。
図4-2】同上。
図4-3】同上。
図4-4】同上。
【0018】
図5A図5AはFOLFIRIレジメンを示し、図5BはFOLFOXレジメンを、MKN45におけるMM-398に対して示す。MM-398単剤療法は、試験した用量で、FOLFIRIおよびFOLFOXよりも良好な抗腫瘍活性を有する。
図5B】同上。
【0019】
図6A図6A~6Cは、図6A 単剤療法レジメン、図6B 二剤レジメン、および図6C 三剤レジメンへの応答としての体重変化を示す。全ての群で、許容される体重損失があった。
図6B】同上。
図6C】同上。
【0020】
図7A図7Aおよび7Bは、低用量での、(A)MM-398と、(B)遊離イリノテカンの抗腫瘍活性の比較を示すグラフである。
図7B】同上。
【0021】
図8A図8Aおよび8Bは、高用量での、(A)MM-398と、(B)遊離イリノテカンの抗腫瘍活性の比較を示すグラフである。
図8B】同上。
【0022】
図9図9は、胃がんにおける臨床試験の概略を示す図である。
【0023】
図10図10Aおよび10Bは、維持されたSN-38腫瘍レベルの持続時間を示すグラフである:図10A 腫瘍SN-38濃度;図10B 時間SN-38濃度は、6週サイクルの範囲外で閾値を上回っていることが予測される。
【0024】
図11図11は、様々な試験における選択されたファーストライン胃がんレジメンの、過去のOS中央値の成績(historical median OS performance)を示すグラフである。
【0025】
図12図12は、用量レベル1および用量レベル-1の安全性を示すグラフである。
【0026】
図13図13は、用量レベル1および用量レベル-1の有効性を示すグラフである。
【0027】
図14図14は、用量レベル-1および用量レベル1での処置への応答としての有害事象を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一部の試験におけるnal-IRIの用量は、等価用量の塩酸イリノテカン三水和物(塩)に基づいて計算し;本明細書では、他に指定しない限り、用量は遊離塩基としてのイリノテカンに基づく。
【0029】
塩酸イリノテカン三水和物のグラム当たり約866mgのイリノテカンがある。例えば、塩酸イリノテカン三水和物出発材料の量に基づく80mg/mのリポソームイリノテカンの用量は、実際に、約0.866×(80mg/m)=69.38mg/mのイリノテカン遊離塩基を含有し、この値は、投薬誤差を回避するために整数に丸められてもよい。例えば69.38mg/mは、表Aに示されるように70mg/mに丸められてもよい。
【0030】
別の例は、三水和物塩に基づく65mg/mのリポソームイリノテカンの用量であり、この値は、投薬誤差を回避するために55mg/m~57mg/m、例えば55mg/m、56mg/m、または57mg/mの用量に丸められてもよいリポソームイリノテカン遊離塩基の用量56.29mg/mに等しい、リポソーム塩酸イリノテカン三水和物(liposomal irinotecan hydrochloride trihydrate)65mg/mで存在する、同量のリポソーム封入イリノテカンを提供するリポソームイリノテカン遊離塩基の量を指す。別の例は、三水和物塩に基づく60mg/mの用量のリポソームイリノテカンであり、この値は、60mg/mの塩酸イリノテカン三水和物に存在しかつ投薬誤差を回避するためにリポソームイリノテカン遊離塩基約50mg/m~約52mg/m、例えば50mg/m、51mg/m、または52mg/mの用量に丸めることができる用量51.96mg/mに等しい、同量のリポソーム封入イリノテカンを提供するリポソームイリノテカン遊離塩基の量を指す。同様に、リポソーム塩酸イリノテカン三水和物の用量50mg/mは、リポソームイリノテカン遊離塩基43.30mg/mに変換することができ、この値は、投薬誤差を回避するために、43mg/mまたは44mg/mに丸めることができる。同様に、リポソーム塩酸イリノテカン塩三水和物の用量49mg/mは、リポソームイリノテカン遊離塩基42.22mg/mに変換することができ、この値は、投薬誤差を回避するために、42mg/mまたは43mg/mに丸めることができる。別の実施形態は、リポソーム塩酸イリノテカン三水和物の45mg/mの用量であり、この値はリポソームイリノテカン遊離塩基38.97mg/mに変換することができ、この値は、投薬誤差を回避するために38mg/mまたは39mg/mに丸めることができる。別の例では、リポソーム塩酸イリノテカン三水和物の40mg/mの用量は、リポソームイリノテカン遊離塩基34.64mg/mに変換することができ、この値は、投薬誤差を回避するために34mg/mまたは35mg/mに丸めることができる。別の例では、リポソーム塩酸イリノテカン三水和物の33mg/mの用量は、リポソームイリノテカン遊離塩基28.15mg/mに変換することができ、この値は、投薬誤差を回避するために28mg/mまたは29mg/mに丸めることができる。別の例では、リポソーム塩酸イリノテカン三水和物の用量30mg/mは、リポソームイリノテカン遊離塩基32.5mg/mに変換することができ、この値は、投薬誤差を回避するために32mg/mまたは33mg/mに丸めることができる。
【0031】
追加の例を表Aに示す。
【0032】
【表A】
【0033】
他に指示しない限り、本明細書で使用される場合、「nal-IRI」(ナノリポソームイリノテカン)および「MM-398」という用語は、リポソームイリノテカンの形態を指す。「CPT-11」という用語は、(非リポソーム)塩酸イリノテカン三水和物を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「5-FU」および「5FU」は交換可能に使用され、5-フルオロウラシルを指す。
【0035】
全ての引用される文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、表された範囲の端点は、その範囲に含まれる。例えば、30mg~70mgの範囲は、30および70(および端点間の全ての数値)を含む。
【0037】
実施例2で胃がんの異種移植モデルの試験により、曝露用量を一致させた非リポソームイリノテカンと比べて、リポソームイリノテカンの改善された抗腫瘍活性が実証された。実施例2のマウス動物試験では、用量「x」mg/kgのリポソームイリノテカンが、用量「5x」の非リポソームイリノテカン(CPT-11)と、トポイソメラーゼ1阻害剤(イリノテカンおよび/またはSN-38)へのほぼ同じ曝露を提供する。リポソームイリノテカンは、単剤療法としても5-FUおよびオキサリプラチンとの併用においても、前臨床モデルにおける非リポソームイリノテカンと比べ腫瘍成長阻害および生存を一貫して改善した。これらの知見は、5-FU/LVおよびオキサリプラチンと組み合わせたリポソームイリノテカンの治療上の潜在性を示し、ファーストライン胃がんにおけるこの三剤レジメンの臨床試験を支持する(実施例4)。
【0038】
FOLFIRINOXレジメンの動物モデルを、胃腫瘍異種移植マウスモデルにおいて、MM-398+5-FU/LV+オキサリプラチンレジメンに対して試験した。リポソームイリノテカン(MM-398)は、胃異種移植がんモデル(実施例2)において、単独で(例えば、図2A)またはオキサリプラチンおよび/もしくは5-FUと組み合わせて(例えば、図2B)、等価曝露用量(5mg/kg MM-398対25mg/kg 遊離IRI)で従来の(非リポソーム)イリノテカン(CPT-11)よりも良好に機能した。
【0039】
これらの前臨床の知見は、5-FU/LVおよびオキサリプラチンと組み合わせたリポソームイリノテカンの治療上の使用、ならびにファーストライン胃がんにおけるこの三剤レジメンの臨床試験を支持する(実施例4)。図3Aおよび3Bは、本明細書に記載されるMM-398+5-FU/LV+オキサリプラチンの組合せを用いる試験デザインのグラフ表示を示す。
【0040】
例えば、胃がんを処置するためにこれまで化学療法を受けたことがないヒト患者の胃がんを処置する際のリポソームイリノテカン、オキサリプラチン、および5-フルオロウラシルの組合せの使用であって、合計で2週間毎に1回、患者に抗腫瘍療法を施行することを含み、抗腫瘍療法が、(a)ヒト患者の胃がんを処置するための、50mg/mのリポソームイリノテカン、60mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシル;(b)ヒト患者の胃がんを処置するための、50mg/mのリポソームイリノテカン、85mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシル;(c)ヒト患者の胃がんを処置するための、55mg/mのリポソームイリノテカン、70mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシル;(d)ヒト患者の胃がんを処置するための、50mg/mのリポソームイリノテカン、60mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルであって、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンが、28日処置サイクルの1および15日目に投与されるもの;(e)ヒト患者の胃がんを処置するための、50mg/mのリポソームイリノテカン、85mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルであって、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンが、28日処置サイクルの1および15日目に投与されるもの;(f)ヒト患者の胃がんを処置するための、55mg/mのリポソームイリノテカン、70mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルであって、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンが、28日処置サイクルの1および15日目に投与されるもの;(g)ヒト患者の胃がんを処置するための、50mg/mのリポソームイリノテカン、60mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルであって、リポソームイリノテカンが投与され、その後にオキサリプラチンが投与され、その後にロイコボリンが投与され、その後に5-フルオロウラシルが投与されるもの;(h)ヒト患者の胃がんを処置するための、50mg/mのリポソームイリノテカン、85mg/mオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルであって、リポソームイリノテカンが投与され、その後、オキサリプラチンが投与され、その後、ロイコボリンが投与され、その後、5-フルオロウラシルが投与されるもの;(i)ヒト患者の胃がんを処置するための、55mg/mのリポソームイリノテカン、70mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルであって、リポソームイリノテカンが投与され、その後、オキサリプラチンが投与され、その後、ロイコボリンが投与され、その後、5-フルオロウラシルが投与されるもの;または(j)ヒト患者の胃がんを処置するための、50mg/m~55mg/mのリポソームイリノテカン、60mg/m~85mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリンもしくは400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルであって、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンが、28日処置サイクルの1および15日目に投与され、リポソームイリノテカンが投与され、その後、オキサリプラチンが投与され、その後、ロイコボリンが投与され、その後、5-フルオロウラシルが投与され、オキサリプラチンの投与が、リポソームイリノテカンの各投与終了後2時間に開始するものからなる。これら例示的な使用のそれぞれは、これら特定の成分に関して本明細書の下記のくだりで開示されるリポソームイリノテカン、オキサリプラチン、ロイコボリン、および5-フルオロウラシルの用量を置き換えるように修正することができる。時々、リポソームイリノテカンは、リポソームに封入されたイリノテカンスクロースオクタスルフェートを含む。時々、リポソームイリノテカンは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、およびN-(カルボニルメトキシポリエチレングリコール-2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(MPEG-2000-DSPE)からなるリポソーム小胞に封入されたイリノテカンを含む。
【0041】
本明細書で提供されるように、イリノテカンは、イリノテカンリポソーム調製物として投与することができる。好ましくは、リポソームイリノテカンは、イリノテカンスクローススルフェートリポソーム注射剤(そうでない場合には、「イリノテカンスクロースオクタスルフェートソルトリポソーム注射剤(irinotecan sucrose octasulfate salt liposome injection)」または「イリノテカンスクロソフェートリポソーム注射剤(irinotecan sucrosofate liposome injection)」と呼ばれる)であり、「MM-398」と本明細書で呼ばれる製剤(PEP02としても公知であり、米国特許第8,147,867号を参照)は、「ナノリポソームイリノテカン」(「イリノテカンリポソーム」または「リポソームイリノテカン」とも呼ばれる)の形態である。MM-398は、ナノリポソーム薬物送達系に封入されたイリノテカンスクロースオクタスルフェートソルトとしてのイリノテカンである。
【0042】
リポソームイリノテカンは、ヒト静脈内投与用に調製された医薬組成物にすることができる。例えば、リポソームイリノテカンは、静脈内注射のための滅菌注射用非経口液体として提供してもよい。リポソームイリノテカンの必要量を、例えば500mLの5%デキストロース注射液USPに希釈して、様々な濃度、例えば5mg/mLを提供してもよく、90分の期間にわたり注入してもよい。
【0043】
MM-398注射剤の活性成分、イリノテカンは、トポイソメラーゼI阻害剤クラスの薬物のメンバーであり、天然に生ずるアルカロイド、カンプトテシンの、半合成で水溶性の類似体である。トポイソメラーゼI阻害剤は、DNAの巻き戻しを防止し、したがって複製を防止することによって、制御されない細胞成長を停止させるように働く。イリノテカンの薬理作用は複雑であり、大規模な代謝変換が、薬物の活性化、不活性化、および排除に関わっている。イリノテカンは、非特異的カルボキシルエステラーゼによって100~1000倍高い活性代謝物、SN-38に変換されるプロドラッグである。SN-38は、グルクロン酸抱合(それによって主要な薬理遺伝的相違が示される)および胆汁排泄を介して取り除かれる。これらの薬物の性質は、イリノテカンによる臨床試験で観察される有効性および毒性の顕著な相違に関与する。
【0044】
リポソームイリノテカンは、スクロースオクタスルフェートとの塩としてゲル化したまたは沈殿した状態で複合体形成したイリノテカンを含有する水性空間を封入する、直径約80~140nmの単層脂質二重層小胞にすることができる。リポソームの脂質膜は、200のリン脂質分子ごとに約1つのポリエチレングリコール(PEG)分子の量において、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびポリエチレングリコール誘導体化ホスファチジル-エタノールアミンから構成される。
【0045】
ヒト患者に投与されるリポソームイリノテカンの量は、胃がんの処置のためにオキサリプラチンおよび5-フルオロウラシルと組み合わせて投与したとき、約30mg/m~約170mg/mの範囲であり得、好ましくは50mg/mまたは55mg/mまたは56mg/mにすることができる(用量は、遊離塩基に関して表される)。
【0046】
総イリノテカンおよび総SN-38の血漿薬物動態を、50~155mg/mの間の用量(イリノテカン遊離塩基の量、これは塩酸イリノテカン三水和物塩の量に関して表された60~180mg/mの用量に等しい)で、単剤としてまたは併用化学療法の一部としてMM-398を受けたがんを有する患者、およびがんを有する353名の患者で、母集団薬物動態分析を使用して評価した。50~155mg/mの用量範囲にわたり、総イリノテカンのCmaxおよびAUCは用量と共に増加する。さらに、総SN-38のCmaxは、用量に比例して増加し;しかし総SN-38のAUCは、用量との比例関係を下回って増加する。
【0047】
MM-398の50mg/m(遊離塩基)を、単剤または併用化学療法の一部として投与した後の、総イリノテカンおよび総SN-38の薬物動態パラメーターを、表Bに提示する。
【0048】
表B:総イリノテカンおよび総SN-38
【0049】
【表B】
【0050】
SN-38のCmaxは、リポソームイリノテカン用量に比例して増加するが、SN-38のAUCは、用量との比例関係を下回って増加し、投薬調整の新しい方法を可能にする。例えば、有害作用に関連付けられたパラメーターの値(Cmax)は、処置の有効性に関連付けられたパラメーターの値(AUC)よりも比較的大きく減少する。したがって、有害作用が見られる場合、リポソームイリノテカンの投薬の低減を実施することができ、それがCmaxの低減とAUCの低減との間の差を最大にする。この発見は、処置レジメンにおいて、所与のSN-38 AUCが、驚くほど低いSN-38 Cmaxで実現できることを意味する。同様に、所与のSN-38 Cmaxは、驚くほど高いSN-38 AUCで実現することができる。
【0051】
イリノテカンリポソームの直接測定は、イリノテカンの95%が封入されたリポソームのままであることを示し、総(total)形態と封入された形態との間の比は、投薬後0から169.5時間まで変化しなかった。
【0052】
一部の実施形態では、リポソームイリノテカンは、表Bのパラメーターによって特徴付けることができる。一部の実施形態では、リポソームイリノテカンは、MM-398、またはMM-398と生物学的に同等な生成物であってよい。一部の実施形態では、リポソームイリノテカンは、表Bの対応する値の80~125%であるCmaxおよび/またはAUC値を含む、表Cのパラメーターによって特徴付けることができる。2週間に1回、50mg/mのイリノテカン遊離塩基を投与する、様々な代替のリポソームイリノテカン製剤に関する総イリノテカンの薬物動態パラメーターを、表Cに提示する。
【0053】
表C
【0054】
【表C】
【0055】
本明細書に記載される併用処置は、本明細書に記載される転移性の状況で、従来の化学療法剤でこれまで処置されたことがない胃がんを有するヒト患者に、いくつかの用量およびスケジュールで、複数の追加の活性剤:オキサリプラチン、ロイコボリン、および5-フルオロウラシルと組み合わせたMM-398リポソームイリノテカンを投与することを包含する。
【0056】
5-フルオロウラシルは、核酸の生合成を妨げるピリミジンアンタゴニストである。薬物のデオキシリボヌクレオチドはチミジル酸シンテターゼを阻害し、したがって、デオキシウリジル酸からのチミジル酸の形成を阻害し、したがってDNAの合成を妨げる。これはRNA合成も妨げる。ヒト患者に投与される5-フルオロウラシルの例示的な有効量は、約2,000mg/m~約3,000mg/mに及ぶことができる。一部の実施形態では、ヒト患者に投与される5-フルオロウラシルの量は、2,400mg/mである。
【0057】
ロイコボリンは、5-フルオロウラシルの前に必要に応じて投与される。ロイコボリンは、プリンおよびピリミジンの合成における1-炭素転移反応の生化学的補因子として作用する。ロイコボリンは、テトロヒドロ葉酸に変換するのに、酵素ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)を必要としない。メトトレキセートおよびその他のDHFR-アンタゴニストの作用は、ロイコボリンによって阻害される。ロイコボリンは、フッ素化ピリミジン(即ち、フルオロウラシルおよびフロクスウリジン)の細胞毒性作用を増強することができる。5-FUが細胞内で活性化された後、これは葉酸補因子を伴い、酵素チミジル酸シンテターゼを阻害し、したがってピリミジン合成を阻害する。ロイコボリンは、葉酸プールを増加させ、それによってチミジル酸シンテターゼによる葉酸補因子と活性5-FUとの結合を増加させる。ロイコボリンは、右旋性および左旋性異性体を有し、後者の異性体のみが薬理学的に有用である。したがって、生物活性左旋性異性体(「左旋性ロイコボリン」)も、がんの処置のためFDAにより承認されてきた。ロイコボリンの投薬量は、右旋性(d)および左旋性(l)の両方の異性体を含有するラセミ混合物のもの、または必要に応じて、(l+d)ラセミ体の投薬量の半分の(l)型ロイコボリンのものである。ヒト患者に投与されるロイコボリンの例示的な有効量は、約100mg/m~約300mg/mに及ぶ(l)型ロイコボリンの量を含むことができる。一部の実施形態では、ヒト患者に投与される(l)型ロイコボリンの量は、200mg/mである。他の実施形態では、投与されるロイコボリンは、約200mg/m~約600mg/mに及ぶ量の(l+d)型ロイコボリンである。一部の実施形態では、投与される(l+d)型ロイコボリンの量は、400mg/mである。
【0058】
オキサリプラチンは、細胞周期非特的である細胞毒性をもたらす、DNA複製および転写を効果的に阻害するDNA架橋剤として作用する白金ベースの薬物である。オキサリプラチンは、典型的には注入5-FU/LVと組み合わせて使用され、進行結腸直腸がんでの使用が承認されている(より詳細については、添付文書を参照されたい)。ヒト患者に投与されるオキサリプラチンの有効量は、約30mg/m~約150mg/m、例えば約40mg/m~約100mg/mに及ぶことができ、またはオキサリプラチンの量は、50mg/m、55mg/m、60mg/m、65mg/m、70mg/m、75mg/m、80mg/m、85mg/m、90mg/m、または95mg/mであってよい。
【0059】
用量の修正は、血液学的および非血液学的有害事象を含む有害事象の結果として、本明細書に記載される併用処置を施行する方法に対して行ってもよい。
【0060】
一部の実施形態では、1つまたは複数の特徴を有する患者に、本明細書に記載される併用処置を施行する方法は、本明細書の実施形態により投与されるMM-398の用量を低減させまたはそうでない場合には修正することを含むことができる。一部の実施形態では、MM-398の用量は、表1Aに従い修正される。
【0061】
【表1A】
【0062】
一部の実施形態では、MM-398の第1、第2、および任意の後続の用量を、MM-398および/またはその他の抗腫瘍剤の第1のまたは後続の用量に対する有害反応などの患者の耐容性の懸念により、20~30%低減させることができ(20%、25%、および/または30%の用量低減を含む)、および/または患者をUGT1A128対立遺伝子にホモ接合であると同定することができる。一部の実施形態では、MM-398の第2または後続の用量は、別に約20%、25%、または30%低減させる(当初の用量の約40%、50%、または60%の用量低減)。例えば、25%低減させた60mg/mのMM-398の用量は、45mg/mであり、別の25%の第2の低減は、30mg/mである。一部の実施形態では、MM-398の用量は、25%低減される。一部の実施形態では、MM-398の用量は、30%低減される。一部の実施形態では、MM-398の低減した用量は、30mg/mから開始して55mg/m(を含む)までの範囲にある。一部の実施形態では、MM-398の用量は、50mg/mに低減される。一部の実施形態では、MM-398の用量は、45mg/mに低減される。一部の実施形態では、MM-398の用量は、35mg/mに低減される。
【0063】
その他の用量低減スケジュールを、以下の表1B~1Eに提示する。MM-398の開始(初期)用量が、50mg/m、5FU 2400mg/m、LV(l+d) 400mg/m、およびオキサリプラチンが85mg/mまたは60mg/mであるとき、グレードIIIまたはIVの血液毒性による第1の用量の低減は、好ましくは、抗腫瘍療法の各施行について、MM-398、5-FU、およびオキサリプラチンの用量のそれぞれに関して25%の用量低減である。第1の用量低減にも関わらず持続的な毒性では、MM-398、5-フルオロウラシル、およびオキサリプラチンの抗腫瘍剤のそれぞれにおける追加の25%の用量低減が好ましい。次いでさらなる毒性は、一部の場合では処置の中止をもたらす。非血液学的毒性の場合、患者にとって医学的に適切な用量に基づいて選択することができる、薬物に関連付けられた特異的毒性(即ち、5FUの手足症候群、およびオキサリプラチンのニューロパシー)を除き、血液毒性の場合と同じ用量低減スキーマに従うことができる。
【0064】
【表1B】
【0065】
【表1C】
【0066】
【表1D】
【0067】
【表1E】
【0068】
一部の実施形態では、1つまたは複数の特徴を有する患者に、本明細書に記載される併用処置を施行する方法は、本明細書の実施形態により投与されたオキサリプラチンの用量を低減させまたはそうでない場合には修正することを含むことができる。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は20~30%低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は20%低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は25%低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は30%低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの低減用量は、30mg/m~75mg/mの範囲にある。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は、75mg/mに低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は、65mg/mに低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は、60mg/mに低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は、45mg/mに低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は、45mg/mに低減される。一部の実施形態では、オキサリプラチンの用量は、34mg/mに低減される。
【0069】
一部の実施形態では、1つまたは複数の特徴を有する患者に、本明細書に記載される併用処置を施行する方法は、本明細書の実施形態により投与された5-フルオロウラシルの用量を低減させまたはそうでない場合には修正することを含むことができる。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの用量は、20~30%低減される。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの用量は、20%低減される。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの用量は、25%低減される。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの用量は、30%低減される。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの低減用量は、1000mg/m~1800mg/mの範囲にある。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの用量は、1800mg/mに低減される。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの用量は、1350mg/mに低減される。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの用量は、1400mg/mに低減される。一部の実施形態では、5-フルオロウラシルの用量は、1200mg/mに低減される。
【0070】
一部の実施形態では、1つまたは複数の特徴を有する患者に、本明細書に記載される併用処置を施行する方法は、本明細書の実施形態により投与されるMM-398、オキサリプラチン、および/または5-フルオロウラシルの用量をさらに低減しまたはそうでない場合に修正することを含むことができる。
【0071】
一部の実施形態では、1つまたは複数の特徴を有する患者に、本明細書に記載される併用処置を施行する方法は、本明細書の実施形態により投与されるMM-398、オキサリプラチン、および5-フルオロウラシルのうちの複数の用量を低減しまたはそうでない場合に修正することを含むことができる。
【0072】
MM-398、オキサリプラチン、および/または5-フルオロウラシルに関する追加の用量の修正は、参照により本明細書に組み込まれるそれぞれの添付文書に見出すことができる。
【0073】
一部の実施形態では、併用処置を施行する方法は、ヒト患者の胃がんを処置するため、30、40、50、または55mg/mのリポソームイリノテカン、30、36、42、45、53、60、64、70、または85mg/mのオキサリプラチン、200mg/mの(l)型ロイコボリン、または400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリン、および1,200、1,350、1,800、または2,400mg/mの5-フルオロウラシルを含む。
【0074】
したがって、一部の実施形態では、ヒト患者の胃がんを処置するため併用処置を施行する方法は、以下の表1Fに示される、下記の用量のリポソームイリノテカン、オキサリプラチン、およびロイコボリンを投与することを含む。ロイコボリンは、一般に、(l)型ロイコボリンが200mg/mで、または(l+d)ラセミ体が400mg/mで投与されるが、この用量は、主治医が変えてもよい。表中の実施形態のいずれかは、200mg/mの(l)型ロイコボリン、または400mg/mの(l+d)ラセミ体、または異なる医師の処方用量で投与されてもよい。
【0075】
【表1F-1】
【表1F-2】
【表1F-3】
【表1F-4】
【表1F-5】
【表1F-6】
【表1F-7】
【表1F-8】
【表1F-9】
【表1F-10】
【表1F-11】
【表1F-12】
【表1F-13】
【表1F-14】
【0076】
リポソームイリノテカンは、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、およびロイコボリンと組み合わせて、好ましくは静脈内投与される。一実施形態では、リポソームイリノテカンは、オキサリプラチン、5-FU、およびロイコボリンの前に投与される。別の実施形態では、ロイコボリンは、5-FUの前に投与される。別の実施形態では、MM-398リポソームイリノテカンが投与され、その後、オキサリプラチンが投与され、その後、ロイコボリンが投与され、その後、5-フルオロウラシルが投与される。ある特定の実施形態では、リポソームイリノテカンは、90分にわたり患者に静脈内投与される。別の実施形態では、オキサリプラチンは、120分にわたり患者に静脈内投与される。別の実施形態では、5-FUは、46時間にわたり静脈内投与される。一実施形態では、オキサリプラチンは、リポソームイリノテカンの投与の約6~約72時間後に投与される。別の実施形態では、オキサリプラチンは、リポソームイリノテカンの投与の例えば6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間後に投与される。別の実施形態では、ロイコボリンは、30分にわたり静脈内投与される。様々な実施形態では、リポソームイリノテカンはMM-398である。様々な実施形態では、胃がんを有するヒト患者に、MM-398リポソームイリノテカンおよびその他の活性剤を投与する前に、デキサメタゾンおよび5-HT3アンタゴニストまたはその他の抗嘔吐薬を前投薬する。
【0077】
本発明のさらなる実施形態
【0078】
下記の方法および実施形態は、単独で、このセクションの他の実施形態と組み合わせて、または上記開示された方法と組み合わせて考慮することができる。本発明は、転移性の状況で、化学療法剤でこれまで処置されたことがない患者などの、ヒト患者の胃がんを処置するための方法であって、オキサリプラチン、ロイコボリン、および5-FUと組み合わせて、MM-398とも呼ばれるリポソームイリノテカンを患者に投与すること(例えば、イリノテカンスクロースオクタスルフェートソルトリポソーム注射剤)を含む方法を提供する。
【0079】
1. 胃がんを処置するためにこれまで化学療法を受けたことがないヒト対象の、胃がんを処置するための方法であって、ヒト対象の胃がんを処置するために、治療有効量のMM-398リポソームイリノテカンを、オキサリプラチン、ロイコボリン、および5-FUと組み合わせて対象に投与することを含む、方法。
【0080】
2. 投与されるMM-398リポソームイリノテカンの量が、50mg/m(遊離塩基)または55mg/m(遊離塩基)である、実施形態1の方法。
【0081】
3. 胃がんを処置するためにこれまで化学療法を受けたことがないヒト対象の胃がんを処置するための方法であって、ヒト対象の胃がんを処置するために、60mg/m(塩)または65mg/m(塩)のMM-398リポソームイリノテカンを、オキサリプラチン、ロイコボリン、および5-FUと組み合わせて、対象に投与することを含む、方法。
【0082】
4. 投与されるオキサリプラチンの量が、約50mg/m~約100mg/m、例えば約60mg/m~約85mg/m、例えば60mg/m、70mg/m、75mg/m、または85mg/mである、実施形態1~3のいずれか1つの方法。
【0083】
5. ロイコボリンが、400mg/mの(l+d)ラセミ体で、または200mg/mの(l)型で投与される、実施形態1~4のいずれか1つの方法。
【0084】
6. 投与される5-FUの量が2,400mg/mである、実施形態1~5のいずれか1つの方法。
【0085】
7. MM-398リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、ロイコボリン、および5-FUが、少なくとも1回投与され、例えばMM-398、オキサリプラチン、ロイコボリン、および5-FUが、28日サイクルの1および15日目に投与される、実施形態1~6のいずれか1つの方法。
【0086】
8. 複数のサイクルが施行される、実施形態1~7のいずれか1つの方法。
【0087】
9. オキサリプラチンがロイコボリンの前に患者に投与され、例えばロイコボリンが、5-FUの前に患者に投与され、必要に応じてMM-398リポソームイリノテカンが、オキサリプラチン、ロイコボリン、および5-FUの前に患者に投与される、実施形態1~8のいずれか1つの方法。
【0088】
10. MM-398が90分にわたり投与され、その後、オキサリプラチンが120分にわたり投与され、その後、ロイコボリンが30分にわたり投与され、その後、5-FUが46時間にわたり投与される、実施形態9の方法。
【0089】
特定の実施形態では、転移性の状況で、これまでいかなる化学療法剤でも処置されたことがない、胃がんを有するヒト患者を、本開示の併用レジメンで処置し、この方法は、2週サイクルの1日目に開始して、50mg/mのMM-398リポソームイリノテカンを90分にわたり、その後、60~85mg/mのオキサリプラチンを、その後、200mg/mの(l)型ロイコボリン、または400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリンを、その後、2,400mg/mの5-FUを、患者に静脈内投与することであって、このヒト患者が、1回または複数回のサイクルで処置される、ことを含む。別の特定の実施形態では、転移性の状況で、これまでいかなる化学療法剤でも処置されたことがない、胃がんを有するヒト患者を、本開示の併用レジメンで処置し、この方法は、2週サイクルの1日目に開始して、55mg/mのMM-398リポソームイリノテカンを90分にわたり、その後、60~85mg/mのオキサリプラチンを、その後、200mg/mの(l)型ロイコボリン、または400mg/mの(l+d)ラセミ体ロイコボリンを、その後、2,400mg/mの5-FUを、患者に静脈内投与することであって、このヒト患者が、1回または複数回のサイクルで処置される、ことを含む。本明細書に開示される実施形態では、ヒト患者に投与されるMM-398リポソームイリノテカンの有効量は、約30mg/m~約60mg/m、例えば約40mg/m~約50mg/m、または約50mg/m~約55mg/mに及ぶことができる。様々な実施形態では、ヒト患者に投与されるMM-398リポソームイリノテカンの量は、50mg/mである。様々な実施形態では、ヒト患者に投与されるMM-398リポソームイリノテカンの量は、55mg/mである。本明細書に開示される実施形態では、ヒト患者に投与されるオキサリプラチンの有効量は、約40mg/m~約100mg/m、例えば約60mg/m~約85mg/m、または例えば約60mg/m~約70mg/mに及ぶことができる。様々な実施形態では、ヒト患者に投与されるオキサリプラチンの量は、60mg/m、70mg/m、または85mg/mである。この実施形態の一変形例では、オキサリプラチンが120分にわたり投与され、ロイコボリンは30分にわたり投与され、5-FUは46時間にわたり投与される。
【0090】
[実施例]
【0091】
(実施例1)
胃腫瘍モデルにおけるnal-IRIのin vivo耐容性および有効性の評価
【0092】
MM-398の抗腫瘍活性を、MKN-45およびKATO III胃腫瘍モデルで評価した。異種移植腫瘍を担持するマウスに、食塩液、25mg/kgの遊離イリノテカン、5mg/kgのMM-398、10mg/kgのMM-398、または20mg/kgのMM-398を毎週、4週間にわたり与えて処置した(図1Aおよび1B)。全ての用量は、十分耐容された。nal-IRIは、10および20mg/kgで腫瘍退縮を伴う抗腫瘍活性を示す。
【0093】
(実施例2)
動物モデルにおける併用療法のin vivo耐容性および有効性の評価
【0094】
5-FUおよびオキサリプラチントとの三剤併用療法との関連で、遊離イリノテカンと比較したMM-398の抗腫瘍活性を、評価した。MKN-45異種移植腫瘍を担持するマウスに、食塩液、100mg/kgの5-FU+5mg/kgのオキサリプラチン、25mg/kgの遊離イリノテカン、5mg/kgのMM-398、遊離イリノテカン+5-FU+オキサリプラチンまたはMM-398+5-FU+オキサリプラチンの三剤を、毎週、3週間にわたり与えて処置した。全ての群を、同じ試験で実施したが、視覚化の目的で2つのパネルに分離する。5-FUを腹腔内投与し、一方、その他全ての薬剤は静脈内投与し;投薬日を水平破線により示し;n=X(マウス群当たり)であった(図2Aおよび2B)。
【0095】
(実施例3)
ヒト臨床試験における抗腫瘍療法の耐容性
【0096】
リポソームイリノテカン、5-FU/ロイコボリン、およびオキサリプラチンを組み合わせる抗腫瘍療法の耐容性を、2つの異なる用量:80mg/m(塩)のリポソームイリノテカン(MM-398)および60mg/m(塩)のリポソームイリノテカン(MM-398)を使用して、ヒト臨床試験で評価した。表2は、28日処置サイクルにわたる、ヒトにおいてこれまで未処置の(フロントライン)膵がんの処置のための4つの投薬レジメンをまとめる。
【0097】
【表2】
【0098】
最初に、オキサリプラチン、MM-398リポソームイリノテカン、ロイコボリン、および5-フルオロウラシルの組合せを、上記表2の用量レベルで評価した。結果を、上記表2の用量レベル1に関して(80mg/m(塩)MM-398用量に関して)表3にまとめており、用量レベル1のオキサリプラチンおよび5-フルオロウラシル/ロイコボリンと組み合わせた80mg/m(塩)用量のリポソームイリノテカン(MM-398)が、ヒトにおいて耐容されなかったことを示している。
【0099】
【表3】
【0100】
表3は、膵がんと診断された合計で7名の患者の処置からの結果をまとめる。
【0101】
表3の「チェックマーク」(レ)は、上記表2の用量レベル1の抗腫瘍療法を受けた患者を示し、この療法は、3回連続する28日処置サイクルの、示される日に開始され、実施例4のプロトコールに記載されるように、80mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、60mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルが与えられる。
【0102】
表3の「R」は、実施例4のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における、表2の用量レベル-1である、低減用量の抗腫瘍療法:60mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、60mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルを受けた患者を示す。
【0103】
表3の「R1」は、実施例3のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における、表2(上記実施例3)の用量レベル-1である、低減用量の抗腫瘍療法:60mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、60mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルを受けた患者を示す。
【0104】
表3の「R2」は、実施例3のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における用量である、低減用量の抗腫瘍療法:50mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、60mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および1,200mg/mの5-フルオロウラシル(用量レベル-1の用量に比べて50%の低減)を受けた患者を示す。
【0105】
表3の「X」は、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンを組み合わせる、またはリポソームイリノテカン、オキサリプラチン、および5-フルオロウラシルを組み合わせる抗腫瘍療法を受けなかった患者を示す。サイクル1、1日目の後、およびサイクル1、15日目の前に、患者2は、UGT1A128対立遺伝子に対してホモ接合であることが決定され、後続の低減用量の抗腫瘍療法は、実施例4のプロトコールに基づいて、表3に示される日に施行された。患者1および3~7は、UGT1A128対立遺伝子に対してホモ接合ではなかった。
【0106】
表2(実施例3)の用量レベル1の抗腫瘍療法は、これら7名の患者のうち3名にのみ、(28日)サイクル1の15日目に施行し、患者は、2回超の連続用量に関して用量レベル1を受けず、この療法をサイクル1後に受けた患者はいなかった。
【0107】
したがって、表3に示されるように、用量80mg/mのリポソームイリノテカン(塩)を、60mg/mのオキサリプラチンならびに用量2,400および400mg/mの5-フルオロウラシルおよび(l+d)ロイコボリンと組み合わせる抗腫瘍療法は、ヒト臨床試験において十分耐容されなかった(用量制限毒性をもたらした)。用量80mg/mのリポソームイリノテカン(塩)と、60mg/mのオキサリプラチン、ならびに用量2,400および400mg/mの5-フルオロウラシルおよび(l+d)ロイコボリンとを組み合わせる抗腫瘍療法の例は、表2の療法を含む。
【0108】
対照的に、以下の表4に示されるように、用量60mg/mのリポソームイリノテカン(塩)を、60mg/mのオキサリプラチンならびに用量2,400および400mg/mの5-フルオロウラシルおよび(l+d)ロイコボリンと組み合わせる抗腫瘍療法は、ヒト臨床試験において耐容された。特に、表4の用量レベル-1(60mg/m(塩)のM-398用量)は、2回またはそれよりも多くの連続する回数で、実施例4に記載される臨床試験で複数のヒト患者に投与した。低減された60mg/m(塩)のリポソームイリノテカン(MM-398)を、オキサリプラチンおよび5-フルオロウラシル/ロイコボリンと組み合わせて含むこれらの抗腫瘍療法は、用量レベル1よりも、ヒトにおいて良好に耐容された(図12~14)。他の実施形態では、表4の用量レベル-2Bまたは-3の療法を患者に施行した。
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
表5は、膵がんと診断された合計7名の患者の処置からの結果をまとめる。表5の「チェックマーク」(レ)は、上記表4の用量レベル-1の抗腫瘍療法を受けた患者を示し、この療法は、3回連続する28日処置サイクルの、示される日に開始され、実施例4のプロトコールに記載されるように、60mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、60mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルが与えられる。
【0112】
表2の用量レベル1の抗腫瘍療法とは対照的に、表2(実施例3)の用量レベル-1の抗腫瘍療法では、患者3、4、および6に、少なくとも3回連続投与(患者6に関する14回連続投与を含む)が繰り返し施行された。
【0113】
表4(実施例3)の用量レベル-1の抗腫瘍療法は、7名の患者のうち6名に対して(28日)サイクル1の1および15日目、ならびに(28日)サイクル2の1および15日目に施行し、試験の7名の患者のうち少なくとも4名には用量制限毒性がなかった。
【0114】
表5の「チェックマーク」(レ)は、上記表4の用量レベル-1の抗腫瘍療法を受けた患者を示し、この療法は、3回連続する28日処置サイクルの、示される日に開始され、実施例4のプロトコールに記載されるように、80mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、60mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルが与えられる。
【0115】
表5の「R3」は、実施例4のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における用量である、低減用量の抗腫瘍療法:50mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、60mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および1,800mg/mの5-フルオロウラシル(用量レベル-1の用量に比べて25%の低減)を受けた患者を示す。表5の1名の患者は、グレードIIの症状(非血液学的)によりこの低減用量を受けたが、用量制限毒性はなかった。
【0116】
表5の「R4」は、実施例3のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における用量である、低減用量の抗腫瘍療法:60mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、45mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および2400mg/mの5-フルオロウラシル(用量レベル-1の用量に比べて50%の低減)を受けた患者を示す。
【0117】
表5の「R5」は、実施例3のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における用量である、低減用量の抗腫瘍療法:30mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)(用量レベル-1の用量に比べて50%の低減)、30mg/mのオキサリプラチン(用量レベル-1の用量に比べて50%の低減)、197mg/mの(l+d)ロイコボリン、および1200mg/mの5-フルオロウラシル(用量レベル-1の用量に比べて50%の低減)を受けた患者を示す。
【0118】
表5の「R6」は、実施例4のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における用量である、低減用量の抗腫瘍療法:36mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、36mg/mのオキサリプラチン、240mg/mの(l+d)ロイコボリン、および1440mg/mの5-フルオロウラシルを受けた患者を示す。
【0119】
したがって、表5に示されるように、用量60mg/mのリポソームイリノテカン(塩)と、60mg/mのオキサリプラチン、ならびに用量2,400および400mg/mの5-フルオロウラシルおよび(l+d)ロイコボリンを組み合わせる抗腫瘍療法は、ヒト臨床試験において十分耐容された。
【0120】
用量60mg/mのリポソームイリノテカンを、85mg/mのオキサリプラチン、ならびに用量2,400および400mg/mの5-フルオロウラシルおよび(l+d)ロイコボリンと組み合わせる抗腫瘍療法の例は、表2の療法を含む。
【0121】
【表6】
【0122】
表6は、膵がんと診断された合計で10名の患者の処置からの予備臨床結果をまとめる。
【0123】
表6の「チェックマーク」(レ)は、上記表4の用量レベル-2Bの抗腫瘍療法を受けた患者を示し、この療法は、3回連続する28日処置サイクルの、示される日に開始され、実施例3のプロトコールに記載されるように、60mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および2,400mg/mの5-フルオロウラシルが与えられる。
【0124】
表6の「R7」は、実施例3のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における用量である、低減用量の抗腫瘍療法:50mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および1,800mg/mの5-フルオロウラシル(用量レベル-2Bの用量に比べて25%の低減)を受けた患者を示す。
【0125】
表6の「R8」は、実施例3のプロトコールに記載されるように、対応するサイクルおよび日における用量である、低減用量の抗腫瘍療法:50mg/mのリポソームイリノテカン(MM-398、用量は、塩酸イリノテカン三水和物塩の対応する量に基づく)、60mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの(l+d)ロイコボリン、および1,800mg/mの5-フルオロウラシル(用量レベル-2Bの用量に比べて25%の低減)を受けた患者を示す。
【0126】
表6の「X」は、リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、およびロイコボリンを組み合わせる、またはリポソームイリノテカン、オキサリプラチン、および5-フルオロウラシルを組み合わせる抗腫瘍療法を患者が受けなかったことを示す。
【0127】
(実施例4)
胃がんの処置
【0128】
図9に概略的に示されるように、本試験は、化学療法を受けたことがない胃がんを有する患者において、その他の抗がん療法と組み合わせたMM-398の安全性、耐容性、および有効性を、mFOLFOX6と比べて評価する非盲検第3相比較試験である。この試験は、下記のレジメン:(1)MM-398+5-FU/LV+オキサリプラチン(Arm1)、および(2)5-FU/LV+オキサリプラチン(Arm2)を評価する。
【0129】
この第3相試験は、これまで未処置の胃がんを有する患者において、MM-398を含むまたは含まないオキサリプラチン+5-FU/LVの有効性を評価する。この試験は、患者HRQLに対するMM-398併用処置の影響に関する重要な情報も提供し、応答の潜在的バイオマーカーも同定し得る。
【0130】
試験において、MM-398は、FOLFIRINOXレジメンの安全性、耐容性、および最終的には有効性を改善するために、従来のイリノテカン代わりに投与される。NAPOLI-1レジメンへのオキサリプラチンの追加は、DNA損傷を増加させかつ有効性を増強させるために含まれる。さらに、MM-398の長期PK特性および持続する腫瘍曝露に起因して、従来のイリノテカンの代わりにMM-398を使用することが、FOLFIRINOXの有効性をさらに改善するためにデザインされる。
【0131】
リポソームイリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)/ロイコボリンの、修正された三剤併用レジメンが、本明細書に提供され、それによって5-FUのボーラスは投与されない。オキサリプラチンの目標用量、60、70、または85mg/mは、連続注入用量の5-FU(ボーラスは除外する)、ならびに5-FUとの組合せで耐容性でありかつ有効であることがこれまで示されたMM-398の2週ごとの用量による、Arm1併用レジメンで評価される。MM-398投薬により、SN-38のCmaxは、遊離イリノテカンによる標準投薬で予測され得るよりも低いことが予測される。
【0132】
イリノテカンによるこれまでの経験に基づいて、UGT1A128対立遺伝子に対してホモ接合である個体(UGT1A1 7/7遺伝子型)は、イリノテカン処置の開始後に好中球減少症のリスクが増加する。イリノテカンに関する処方情報によれば、単剤イリノテカンを受けた(350mg/mを3週間ごとに1回)66名の患者の試験では、UGT1A128対立遺伝子にホモ接合である患者におけるグレード4の好中球減少症の発生率は、50%程度の高さであり、この対立遺伝子に対してヘテロ接合の患者では(UGT1A1 6/7遺伝子型)、発生率は12.5%であった。重要なのは、グレード4の好中球減少症が、野生型(WT)対立遺伝子とホモ接合の患者(UGT1A1 6/6遺伝子型)で観察されなかったことである。その他の試験では、生命を脅かす好中球減少症を伴う有病率がより低いことが、記載される(詳細については、イリノテカンに関する処方情報を参照されたい)。MM-398の母集団PK試験は、UGT1A128ホモ接合性と、増加したSN-38曝露との間の関係を明らかにしていない(治験薬概要書を参照)。第I相試験では、ヘテロ接合またはWT患者のコホートで毒性の差は見られず、付随する脱水または疲労を伴うまたは伴わない下痢のDLTは、両方のコホートで見られなかった。これらの理由で、およびUGT1A128ホモ接合性の有病率が比較的低いので、検査結果は、この試験でMM-398の第1の用量の前に必要とされず、全ての患者に関する開始用量は、50mg/m(遊離塩基)と等価の60mg/m(塩)である。しかし、患者がUGT1A128についてホモ接合であることが公知である場合、MM-398の用量は、本明細書に記載されるよう低減され得る。
【0133】
患者は、MM-398+5-FU/LV+オキサリプラチンまたは5-FU/LV+オキサリプラチンのいずれかへの処置(1:1:1)のために無作為化される。無作為化は、地域(東アジア対世界の残りの部分)およびパフォーマンスステータス(ECOG 0対1)に基づいて階層化される。
【0134】
下記の有害事象は、5-FU/LVと組み合わせた過去のオキサリプラチン処置では一般的(≧40%)であり、MM-398含有併用レジメンで予測される:末梢感覚神経障害、好中球減少症、血小板減少症、貧血、吐き気、トランスアミナーゼおよびアルカリホスファターゼの増加、下痢、疲労、嘔吐(emesis)、および口内炎。アレルギー反応およびアナフィラキシー反応を含む追加の有害事象が、オキサリプラチンに関する添付文書に記載されるように予想され得る。FOLFIRINOXの組合せの第3相試験において、最も一般的な(>5%)グレード3~4の有害事象は:好中球減少症、疲労、嘔吐(vomiting)、下痢、血小板減少症、感覚神経障害、貧血、高アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、血栓塞栓症、および発熱性好中球減少症であった。これらの予測される毒性を考慮し、Arm1を、安全性および耐容性について評価する。
【0135】
オキサリプラチンの用量70mg/mまたは85mg/mは、この試験の目標用量である。試験は、従来のイリノテカンの代わりにMM-398を使用したときに、これらの用量が適合可能であるかどうかを確認することである。任意の予測できない毒性がある場合、患者は、より低い用量のオキサリプラチン(60mg/m)で処置され得る。
【0136】
【表7】
【0137】
Arm1: MM-398+5-FU/LV+オキサリプラチン
【0138】
クリニックで投与される注入の順序は、下記の通りである:最初にMM-398、その後、オキサリプラチン、次いでLV、その後、5-FUを投与する。
【0139】
患者は、MM-398注入の終了から2時間後にオキサリプラチンの注入を受ける。輸液反応が見られない場合、患者は、MM-398注入の終了後に直接オキサリプラチンを受けることができる。任意のグレード3またはそれよりも高い輸液反応が患者に見られる場合、DSMBは、MM-398注入の終了から2時間後にオキサリプラチンの投与に戻すことを選択し得る。
【0140】
Arm2: 5-FU/LV+オキサリプラチン
【0141】
患者は、オキサリプラチン(85mg/m)の注入、その後、ロイコボリンおよび5-FU(400mg/mのIVボーラス+2400mg/m(46時間注入/400mg/mとして))を受ける。
【0142】
前投薬
【0143】
全ての患者に、イリノテカン、5-FU、およびオキサリプラチン投与に関する標準的な施設診療、または欧州連合(EU)内に置かれた場所での製品概要(SmPC)に従って、標準用量のデキサメタゾンおよび5-HT3アンタゴニスト、または等価のその他の抗嘔吐薬を、MM-398注入、5-FU/LV注入、およびオキサリプラチン注入の前に、前投薬しなければならない。アトロピンは、以前のサイクルで急性コリン作用性症状を経験した患者に対して予防的に処方され得る。
【0144】
MM-398の用量および投与(Arm1)
【0145】
MM-398は、2週ごとの90分(±10分)にわたる静脈内(IV)注入によって投与される。第1のサイクルの1日目は固定された日であり;後続の用量は、各サイクルの第1日±2日に投与されるべきである。
【0146】
投与前に、適切な用量のMM-398を、5%デキストロース注射液(D5W)またはノーマルセーラインに希釈して、500mLの最終体積にしなければならない。インラインフィルター、またはD5Wもしくはノーマルセーライン以外の任意の希釈剤を使用しないように、注意を払うべきである。MM-398は、1mL/秒(30mg/秒)までの速度で投与することができる。
【0147】
投与されるMM-398の実際の用量は、各サイクルの開始のときの患者の体表面積を計算することによって決定される。計算された合計用量の±5%の変動が、用量の投与を容易にするために認められる。MM-398バイアルは単回使用バイアルであるので、現場のスタッフは、将来使用するためにバイアルのいかなる未使用部分も保存してはならず、製品の未使用部分を廃棄しなければならない。
【0148】
5-FUおよびロイコボリンの用量および投与(Arm1および2)
【0149】
ロイコボリンは、30分(±5分)にわたるIV注入として、(l+d)ラセミ体が400mg/mまたは(l)型が200mg/mの用量で、各28日サイクルの1および15日目に投与される。
【0150】
5-FUは、46時間(±60分)のIV注入として、各28日サイクルの1および15日目に、2400mg/mの用量で投与される。Arm2では、46時間注入に加えて5-FUの400mg/mのIVボーラスを投与する。
【0151】
ロイコボリンは、添付文書、SmPC、またはロイコボリンを復元するための標準的な施設の指針の指示により復元されるべきである。
【0152】
ロイコボリンは、5-FU注入の前に投与されるべきであり、オキサリプラチンと同時に与えられてもよい。投与される5-FUおよびロイコボリンの実際の用量は、各サイクルの前に患者の体表面積を計算することによって決定される。計算された合計用量の±5%の変動が、用量の投与を容易にするために認められる。
【0153】
オキサリプラチンの用量および投与(Arm1および2)
【0154】
オキサリプラチンは、用量70mg/mまたは85mg/mのIVで、120分(±10分)にわたり、各28日サイクルの1および15日目に投与される(目標用量が、本明細書に記載される方法により確認される場合)。目標用量が耐容されない場合、オキサリプラチンの投薬量を60mg/mに調整することができる。
【0155】
オキサリプラチンは、添付文書、SmPC、またはオキサリプラチンの調製および投与のための標準的な施設の指針の指示に従い、調製されるべきである。
【0156】
オキサリプラチンは、Arm1で、MM-398注入の後に投与されるべきである。投与されるオキサリプラチンの実際の用量は、各サイクルの前に患者の体表面積を計算することによって決定される。計算された合計用量の±5%の変動が、用量の投与を容易にするために認められる。
【0157】
用量制限毒性(DLT)
【0158】
5-FU/LVおよびオキサリプラチンと組み合わせて投与されたMM-398では、下記の有害事象が処置の第1のサイクル中に生じ、それらが試験処置レジメンに関係するとみなされる場合に用量制限毒性(DLT)と考えられる:
【0159】
最適な療法にも関わらず7日以内に解消しないグレード4の好中球減少症または血小板減少症(治験薬は差し控え、併用薬を投与し、例えばG-CSFを好中球減少症に対して投与する);
【0160】
38.5℃以上の発熱が併発したグレード4の好中球減少症(即ち、発熱性好中球減少症)、および/または感染を伴うグレード3の好中球減少症;
【0161】
薬物関連毒性に起因して、計画された日の14日以内に後続の処置コースを開始できない場合;ならびに
【0162】
2週間未満の持続する疲労/無力症、アルカリホスファターゼレベルの増加、3日以下の持続期間の吐き気および嘔吐(最適な抗嘔吐レジメンによる処置後、72時間を超えて続く場合のみ用量制限とみなされる)、および3日以下の持続期間の下痢(最適な抗下痢レジメンによる処置後、下痢が72時間を超えて続く場合のみ用量制限とみなされる)の、特定の排除を含む、任意のグレード4の非血液学的毒性
【0163】
疾患の進行に関する任意の毒性は、DLTとみなされない。
【0164】
DLT評価および用量漸増決定を目的とする安全性評価期間は、処置の1サイクルである(即ち、28日;または本明細書に記載されるように処置遅延がある場合、試験処置の第2の用量後、14日)。用量は、現行の用量レベルでの安全性データが評価された後(コホートに登録された最後の患者が処置の第1のサイクルを終了したら)、および最適な用量の安全性および耐容性に関する基準を超えていない場合のみ、次のレベルに漸増することができる。さらに、サイクル1(適用可能な場合)後に生ずる、グレード3またはそれよりも高い任意の薬物関連毒性を、それらの累積MM-398または併用療法用量との潜在的な関係に関して評価し、その決定において用量を漸増することを検討する。PKデータは、利用可能であり得るが、用量漸増の決定のためには必要とされない。
【0165】
【表8-1】
【表8-2】
【0166】
用量の修正
【0167】
各サイクルの毒性は、後続のサイクルの施行前に記録し、国立がん研究所の有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)(バージョン4.03)に従いグレード付けしなければならない。全てのアームに関する全ての用量低減は、最悪の先行する毒性をベースにすべきである。
【0168】
投薬は、試験処置に関係する毒性からの回復を可能にすることになったときから、2週間まで持続され得る。毒性から回復するのに必要な時間が2週間よりも長い場合、患者は、試験処置から利益を得ていない限り試験を中止すべきであり、その場合、患者の試験の継続は、継続することのリスクおよび利益に関して治験担当医師と治験依頼者との間で論じられるべきである。オキサリプラチンが、Arm1に登録された患者において十分に耐容されない場合、オキサリプラチンを中止してもよく、患者は、治験担当医師の裁量でMM-398+5-FU/LVを受け続けてもよい。
【0169】
毒性に起因して試験中に患者の用量が低減される場合、その用量は、試験の継続期間にわたり低減されたままであるべきであり;用量の、以前の用量への再漸増は認められない。2回の用量低減を受け、第3の用量低減が必要と考えられる有害事象を経験した任意の患者は、試験処置を中止しなければならない。
【0170】
用量の修正
【0171】
各投薬の前に、患者は:ANC≧1500/mm、WBC≧3500/mm、血小板数≧100,000/mm、および下痢≦グレード1を有していなければならない。
【0172】
処置は、上述のレベルまで回復するのに十分な時間が得られるまで遅延させるべきであり、回復したら、処置は、以下の表の指針に従い施行されるべきである。患者が発熱性好中球減少症を有していた場合、ANCは、1500/mm以上に解消されていなければならず、患者は、感染から回復していなければならない。グレード3または4の非血液学的毒性の場合、処置は、グレード1またはベースラインに解消されるまで遅延させるべきである。レジメンの範囲内での個々の処置それぞれの用量調整に関する指針は、以下の表に見出される。患者が輸液反応を経験する場合、施設の指針または輸液反応管理に関して提供された指針のいずれかに従うべきである。
【0173】
以下の全ての表に関し、患者は、2回よりも多くの用量低減が必要である場合または30mg/mよりも低いMM-398の低減が必要である場合、試験処置から撤退すべきである。毒性に関する用量調整は、ロイコボリンの場合必要ではない。ロイコボリンは、各5-FU用量の直前に与えられなければならず;したがって、5-FU用量が持続される場合、ロイコボリン用量も同様に持続されるべきである。
【0174】
MM-398または5-FUの毒性に起因して必要とされる処置中止は、試験の中止をもたらす。しかし、Arm1の場合、オキサリプラチンのみの中止を必要とする毒性(例えば、ニューロパシー)は、全ての将来の投薬に関してMM-398+5-FU/LVのみでの試験処置を継続する選択肢をもたらす。
【0175】
ONIVYDEの開始用量は、50mg/mまたは55mg/mのいずれか、5FU 2400mg/m、LV 400mg/mであり、オキサリプラチンは、85mg/m、70mg/m、または60mg/mである。用量低減は、任意のグレードIII~IVの血液毒性に関して全ての薬剤で25%の低減である。第1の用量低減にも関わらず持続的な毒性では、全ての薬剤でさらに25%の用量低減を行う。次いでさらなる毒性は、治験の中止をもたらす。
【0176】
非血液学的毒性の場合、用量低減は、表3に示される薬物に関連した特異的毒性(即ち、5-FUの手足症候群、およびオキサリプラチンのニューロパシー)を除き、血液毒性に関するものと同じ用量低減スキーマになる。
【0177】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【0178】
輸液反応は、モニターされる。輸液反応は、以下に定義されるように、アレルギー反応/輸液反応およびアナフィラキシーの、国立がん研究所のCTCAE(バージョン4.0)の定義に従い定義される:
【0179】
【表10】
【0180】
試験現場のポリシーまたは下記の処置指針が、輸液反応の管理に使用されるものとする。
【0181】
【表11】
【0182】
グレード1またはグレード2の輸液反応を経験する患者では、将来の注入は、低減速度(120分にわたる)で慎重に施行してもよい。
【0183】
第2のグレード1または2の輸液反応を経験する患者では、デキサメタゾン10mgをIV投与する。全ての後続の注入は、塩酸ジフェンヒドラミン50mgをIVで、デキサメタゾン10mgをIVで、およびアセトアミノフェン650mgを経口で前投与されるべきである。
【0184】
血液学的毒性に関するMM-398の用量修正
【0185】
新しいサイクルの療法を開始する前に、患者は下記を有していなければならない:
【0186】
ANC≧1500/mm
【0187】
血小板数≧100,000/mm
【0188】
処置は、回復のため十分な時間が得られるように遅延させるべきであり、回復したら、処置は、以下の表の指針に従い施行されるべきである。患者が発熱性好中球減少症を有していた場合、ANCは1500/mm以上に解消されなければならず、患者は感染から回復していなければならない。
【0189】
【表12】
【0190】
【表13】
【0191】
非血液学的毒性に関するMM-398用量修正
【0192】
処置は、下痢がグレード1以下に解消するまで、およびその他のグレード3または4の非血液学的毒性では、グレード1またはベースラインに解消するまで遅延させるべきである。薬物に関係した下痢およびその他のグレード3または4の非血液学的毒性に関するMM-398の用量調整に関する指針を、以下に提示する。輸液反応は、上記のように取り扱われるべきである。
【0193】
【表14】
【0194】
【表15】
【0195】
5-FUおよびロイコボリンの用量修正:
【0196】
5-FUの用量修正に関する指針を以下に提示する。毒性に関する用量調整は、ロイコボリンの場合必要ではない。ロイコボリンは、各5-FU用量の直前に与えなければならず;したがって、5-FU用量が持続される場合、ロイコボリン用量も同様に持続されるべきである。患者が輸液反応を経験する場合、施設の指針またはMM-398輸液反応管理のために提供される指針のいずれかを、使用すべきである。
【0197】
血液学的毒性に関する5-FU用量修正
【0198】
サイクル中の次の用量の前に、または療法の新しいサイクルを開始する前に、患者は下記を有していなければならない:
【0199】
ANC≧1500/mm
【0200】
WBC≧3500/mm
【0201】
血小板数≧75,000/mm(5-FUに関する欧州製品概要によると、血小板は、療法を開始する前に≧100,000/mmまで回復しているべきである)
【0202】
処置は、回復するのに十分な時間が得られるまで遅延させるべきであり、回復したら、処置は、以下の表に提示される指針に従い施行されるべきである。
【0203】
【表16】
【0204】
非血液学的毒性に関する5-FU用量修正
【0205】
処置は、全てのグレード3または4の非血液学的毒性がグレード1またはベースラインに解消されるまで、遅延させるべきである。5-FU関連の毒性の用量調整に関する指針を、以下に提示する。
【0206】
【表17】
【0207】
UGT1A128陽性患者に関するMM-398用量修正(Arm1)
【0208】
患者を、スクリーニング中にUGT1A128状態に関して検査したが、検査の結果は、MM-398の初回投与(initial dose)の前に必要ではない。全ての患者は、50mg/m(遊離塩基)で投薬を開始するが、しかし将来の用量は、UGT1A128 7/7遺伝子型に関して陽性(即ち、ホモ接合)である患者に関して低減させてもよい。UGT1A128ホモ接合性に起因してサイクル1中に低減用量を受ける任意の患者は、コホートに関して評価可能ではなくなり、交換される。
【0209】
【表18】
【0210】
【表19-1】
【表19-2】
【0211】
疾患評価
【0212】
腫瘍応答を、固形がん効果判定基準(RECIST)バージョン1.1に従い評価して、CTまたはMRIによる疾患進行を確立させる。さらに、治験担当医師により適切と考えられるその他のイメージング手順を行って、新生物関与の部位を評価する。同じ評価方法を、試験の全体を通して使用しなければならない。治験担当医師は、RECIST v1.1指針に従い、標的病変および非標的病変を選択すべきである。フォローアップ測定および全体的な応答も、これらの指針に従うべきである。
【0213】
腫瘍評価は、患者が進行性疾患を有することが決定されるまでに終了すべきである(RECIST v1.1に従う)。処置終了のときにRECIST v1.1に従う記録された疾患進行を有していない患者では、疾患の進行が記録されるまで、8週ごとのフォローアップ期間へとイメージング試験を継続して行うべきである。予定通りの継続イメージングフォローアップは、疾患に対する実験的処置の影響の評価において潜在的なバイアスを低減させるため、推奨される。
【0214】
EORTC-QLQ-C30およびEQ-5D-5L
【0215】
健康関連のクオリティオブライフ(HRQL)を、EORTC-QLQ-C30およびEQ-5D-5Lの手段により評価する。EORTC-QLQ-C30は、多文化臨床研究の場における、がん患者のクオリティオブライフの信頼性ある有効な尺度である。これは9つのマルチアイテムスケール:5つの機能的スケール(身体、役割、認知、感情、および社会);3つの症状スケール(疲労、疼痛、ならびに吐き気および嘔吐);ならびにグローバルヘルスおよびクオリティオブライフスケールを組み込む。いくつかの単一アイテム症状の尺度も含まれる。EQ-5Dは、HRQLの総合的な好みに基づく測定である。EQ-5D-5L記述システムは、下記の5つの次元:移動性、セルフケア、通常の活動、疼痛/不快感、および不安/うつ病を含む。各次元は、5つのレベル:問題なし、僅かに問題あり、中程度の問題あり、重大な問題あり、および行うことができない、というレベルを有する。
【0216】
患者は、評価スケジュール(Schedule of Assessment)で概説した時点で両方のアンケートを完成する必要がある。患者が治験薬を受けようとする日、治験薬投与の前に評価は完了すべきである。アンケートの検証済みの解釈が利用可能であるような患者のみ、アンケートを完成することが必要になる。
【0217】
有効性分析
【0218】
有効性の評価では、MM-398含有アームを対照アームと比較する。有効性の比較は、ランダム化階層を組み込む階層化分析を使用する。各比較は、0.10レベルの片側検定を使用して、MM-398含有アームが有効性パラメーターを改善するかどうかを評価する。信頼区間は、記述目的で、両側95%レベルで提示される。仮説検定および信頼区間は、多重比較について調整されない。主要な有効性比較は、全てのランダム化された患者を含むITT母集団をベースにする。
【0219】
腫瘍評価を、RECIST v1.1に従い測る。各患者について、無増悪生存時間は、ランダム化から、RECIST 1.1を使用する治験担当医師による、最初に記録された射線画像による疾患の増悪(PD)、または任意の原因による死亡のいずれか先に起きた方までの時間として決定される。増悪または死亡が、非PDの最後の腫瘍評価から12週後よりも長い時点で生じる場合、無増悪生存時間は、最後の非PD腫瘍評価のときに打ち切られる。
【0220】
一次分析は、全てのランダム化された患者に関して24週無増悪状態を決定できるときに実施され、最後の患者がランダム化されてから約24週後が見込まれる。PFSおよびその他の端点に関する後続の分析は、PFS事象が少なくとも120名(即ち、ランダム化された患者の80%)の患者で生じたときに行われる。
【0221】
一次有効性分析
【0222】
処置企図(ITT)解析では、患者が24週でまだ増悪していないことを示すデータを患者が有する場合、患者は、24週で無増悪生存を達成したとみなされる。即ち患者は、24週またはそれ以降で、増悪または新しい抗がん療法の前に少なくとも1つの非PD評価がある場合、応答者とみなされる。
【0223】
24週無増悪達成基準を満たさない患者(例えば、最長24週で増悪/死亡した患者、24週の前に打ち切られた患者)、増悪または死亡が、非PDの最後の腫瘍評価から12週間後よりも長い時点で生ずる場合。
【0224】
各アームについて、24週での無増悪生存達成率は、アームにおける、24週達成基準を満たす患者の数をITT患者の数で割ることにより推定する。この率の推定は、対応する95%信頼区間で提示される。MM-398含有アームは、片側Cochran-Mantel-Haenszel検定を使用し、0.10の有意水準でランダム化階層化因子を組み込んで、対照アームに対する率の増加に関して評価する。
【0225】
二次有効性分析
【0226】
無増悪生存(PFS)を、Kaplan-Meier法を使用して、各アームについて記述的にまとめる。メジアンPFS時間および対応する95%信頼限界が提示される。MM-398含有アームの場合、PFSを対照アームと比較する。仮説検定は、片側階層化ログランク検定を使用して、PFSの差に関して実施する。PFSに関するハザード比(95%信頼区間を有する)を、階層化Coxモデルを使用して推定する。
【0227】
最良総合効果(BOR)は、疾患増悪まで、治験薬の開始から記録されるような最良の応答と定義される。ベースライン後の腫瘍評価がない患者は、BORに関して評価可能ではないとみなされる。BORを安定な疾患(SD)として分類するには、ランダム化から少なくとも6週間に認定SD評価があるべきである。客観的奏効率(ORR)は、評価可能な患者の総数に対する、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)のいずれかとして特徴付けられたBORを有する患者の割合と定義される。ベースラインで測定可能な疾患を有する患者のみが、客観的奏効の分析に含まれる。客観的奏効率およびその対応する95%CIの推定は、各処置アームについて計算される。各MM-398含有アームの場合、ORRを対照アームと比較する。MM-398含有アームと対照アームとの間の客観的奏効率の差は、95%CIで提供される。ランダム化階層により調整されるCochran-Mantel-Haenszel検定が、客観的奏効率を比較するのに使用される。
【0228】
全生存(OS)は、ランダム化から、任意の原因による死亡日までの時間である。分析時点で生きている、またはフォローアップされていない患者は、最後の既知の生存日に打ち切られる。OSを、Kaplan-Meier法を使用して、各アームについて記述的にまとめる。MM-398含有アームの場合、OSを、対照アームと比較する。仮説検定を、片側階層化ログランク検定を使用して、OSの差に関して実施する。PFSに関するハザード比(95%の信頼区間を有する)を、階層化Coxモデルを使用して推定する。
【0229】
クオリティオブライフ分析
【0230】
クオリティオブライフ分析は、クオリティオブライフのそれぞれの手段(EORTC-QLC-C30、EQ-5D-5L)について、分析母集団中の患者を使用して行う。EORTC-QLQ-30およびEQ-5D-5Lの結果は、処置群により、来診ごとにまとめる。
【0231】
施行される各EORTC QLQ-C30の場合、下記のスケール:全身健康状態、身体機能、役割機能、感情機能、認知機能、社会機能、疲労、吐き気および嘔吐、疼痛、呼吸困難、不眠症、食欲不振、便秘、下痢、金銭的困難に関してスコアを算出する。
【0232】
スコアリングは、EORTC QLQ-C30スコアリングマニュアル(Fayers、Aaronson、Bjordal、Curran、およびGroenvald、2001年)に記載されるように実施する。報告されたスコアが全てのスケールで0~100の範囲を有するように、線形変換を生のスコアに適用する。要約統計量は、各サブスケールに関して提示される。要約健康状態指数値(summary health state index value)は、各EQ-5D-5L評価ごとに算出する。要約統計量は、要約健康状態指数に関して提示される。各EQ-5D-5L属性(移動性、セルフケア、通常の活動、疼痛/不快感、および不安/うつ病)について、応答を表にする。
【0233】
安全性分析
【0234】
安全性分析(有害事象および実験室分析)は、安全性母集団を使用して行われる。有害事象は、MedDRAバージョン17.1またはそれ以降のバージョンにより報告される。毒性は、NCI CTCAEバージョン4.03に従いグレード付けされる。
【0235】
処置中に発生した有害事象および安全性の知見についての期間は、第1の治験薬投与のときから最後の治験薬投与日の30日後までである。有害事象が、時間の記録なしに第1の治験薬投与日に開始する場合、その事象は、処置中に発生したとみなされる。
【0236】
表にまとめた概要は、全ての有害事象、前処置の有害事象、処置中に発生した有害事象(TEAE)、深刻な有害事象、治験薬中止に至る有害事象、治験薬に関連したTEAE、およびTEAEグレード3/4に関して示される。有害事象は、器官別大分類および好ましい用語によってまとめられる。全ての有害事象データは、患者により列挙される。
【0237】
実験室データはサイクルにより示される。異常な実験室値は、全ての利用可能なデータを使用して評価され、毒性グレード付けは、NCI CTCAE毒性スケールに従い割り当てられ、ここで、基準は、そのようにするのに利用可能である。連続する実験室データにおける最大および最小の減少/増加が報告される。異常な実験室値の頻度およびパーセント(L/ULN、2×L/ULN)が評価される。最も深刻な毒性グレードへのシフトがまとめられる。
【0238】
バイタルサインおよびECGは、時点によるベースラインからの変化に関して表にされる。追加の分析は、SAP内で詳細に記載されるように行ってもよい。
【0239】
バイタルサインは、時点によるベースラインからの変化に関して表にされる。追加の分析は、SAP内で詳細に記載されるように行ってもよい。
【0240】
バイオマーカーサブグループ分析
【0241】
分析は、潜在的なバイオマーカー(血漿およびアーカイブされた組織から)と有効性パラメーター(ORR、標的病変サイズの変化パーセント、およびPFS、または適宜)との間の関連付けを評価するために行う。グラフ表示は、適切なときに行う。
【0242】
薬物動態分析
【0243】
MM-398およびオキサリプラチンの血漿中濃度を使用して、PKパラメーターを特徴付けることができる。散在的なPKサンプリングスケジュールに起因して、個々の患者に関するPKパラメーターは、以前に推定された(MM-398)または公開された(オキサリプラチン)母集団PKモデルパラメーターからの事前確率(priors)を用い経験ベイズ推定法に基づいて推定することができる。モデルでシミュレートした曝露、例えばCmax、AUC(曲線下面積)は、薬物曝露の最小二乗幾何平均比(LS-GMR)を比較することにより、MM-398とオキサリプラチンとの間の任意の可能性ある相互作用を検査するのに使用される。NONMEM(登録商標)、バージョン7.3は、個々のPKパラメーターを推定し血漿曝露をシミュレートするのに使用される。
【0244】
(実施例5)
ONIVYDE(登録商標)(イリノテカンリポソーム注射)リポソームイリノテカン
【0245】
本明細書に記載されるイリノテカンリポソームの1つの好ましい例は、ONIVYDE(登録商標)(イリノテカンリポソーム注射)として販売される製品である。ONIVYDE(登録商標)は、静脈内使用のためにリポソーム分散液中のイリノテカンで製剤化されたトポイソメラーゼ阻害剤である。
【0246】
完成したONIVYDE(登録商標)製品は、注入用の白色から僅かに黄色の不透明な滅菌濃縮物である。この製品は、塩酸イリノテカン三水和物を含有するリポソームの等張性分散体からなる。リポソームは、スクロソフェート塩(sucrosofate salt)としてゲル化または沈殿状態にあるイリノテカンを含有する水性区画を囲む、直径約110nmの小さい単層脂質二重層小胞である。小胞は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)6.81mg/mL、コレステロール2.22mg/mL、およびメトキシ末端ポリエチレングリコール(MW 2000)-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(MPEG-2000-DSPE)0.12mg/mLから構成される。各mLは、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)を緩衝剤4.05mg/mLとして、および塩化ナトリウムを等張性試薬8.42mg/mLとしても含有する。リポソームは、水性緩衝溶液中に分散される。
【0247】
ONIVYDE(登録商標)製品は、塩酸イリノテカン三水和物出発材料から得られる、リポソームに封入されたイリノテカンスクロソフェートを含有する。イリノテカンの化学名は、(S)-4,11-ジエチル-3,4,12,14-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ1H-ピラノ[3’,4’:6,7]-インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル-[1,4’ビピペリジン]-1’-カルボキシレートである。ONIVYDE(登録商標)の投薬量は、イリノテカンリポソームを調製するのに使用される、等量の塩酸イリノテカン三水和物出発材量に基づいて、またはリポソーム中のイリノテカンの量に基づいて、計算することができる。塩酸イリノテカン三水和物のグラム当たり、約866mgのイリノテカンがある。例えば、塩酸イリノテカン三水和物出発材料の量に基づくONIVYDE(登録商標)の用量80mgは、最終生成物中に約0.866x(80mg)のイリノテカンを実際に含有する(即ち、塩酸イリノテカン出発材料の重量に基づくONIVYDE(登録商標)の用量80mg/mは、最終生成物中のイリノテカン約70mg/mと臨床上等価である)。各10mLの単回用量バイアルは、43mgのイリノテカン遊離塩基を、4.3mg/mLの濃度で含有する。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】