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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171858
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】抗ウイルス薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20221104BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/16
A61P31/14
A61P43/00 111
A61K31/4184
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148313
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2019569421の分割
【原出願日】2017-08-11
(31)【優先権主張番号】2017902236
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン・スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ビーン
(57)【要約】
【課題】安全かつ有効な抗ウイルス薬の設計は、ウイルスが宿主の有機体の細胞を使用して複製するため、困難である。このことは、宿主の有機体の細胞に同時に危害を加えることなくウイルスを妨害する抗ウイルス薬の標的を見出すことの難易度を高くしている。新規のウイルス変種が継続して出現することにより、新規の安全かつ有効な抗ウイルス療法を開発することが継続して必要とされている。その結果、ゆえに、対象におけるウイルス感染を処置または防止する新しい方法が必要とされている。
【解決手段】本開示は、対象におけるウイルス感染を処置または防止する方法に関する。より詳細には、本発明は、対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止する方法であって、有効量のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を投与することを含む、上記方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止する方法であって、有効量のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記Mononegaviralesウイルス感染が、Pneumoviridae、Rhabdoviridae、Paramyxoviridae、及びFiloviridaeからなる群から選択される科のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Mononegaviralesウイルス感染が、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、麻疹ウイルス(MeV)、ヘンドラウイルス(HeV)、ニパウイルス(NiV)、トリメタニューモウイルス(aMPV)、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、ムンプスウイルス(MuV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、センダイウイルス(SeV)、ヒトパラインフルエンザウイルス1(HPIV-1)、トウモロコシモザイクウイルス(MMV)、イネ黄葉ウイルス(RYSV)、レタス壊死性黄変病ウイルス(LNYV)、狂犬病ウイルス(RABV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、牛流行熱ウイルス(BEFV)、感染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、マールブルグウイルス(LVMV)、及びエボラウイルス(EBOV)からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Mononegaviralesウイルス感染が、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記Mononegaviralesウイルス感染が、麻疹ウイルス(MeV)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が:
【化1】
からなる群から選択される構造を有し、
式中、Xが:
【化2】
からなる群から選択され;
Yが:
【化3】
からなる群から選択され;
Zが、5または6員の単環式炭素環式または単環式複素環式であり;
、R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択され;
前記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式が、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的に置換されており;
前記単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式が、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、及びC1-10アルキルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されており;
前記C1-10アルキル及びC2-10アルケニルが、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されている;
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、アンジオテンシンII受容体拮抗薬である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、アンジオテンシンII受容体ATサブタイプ拮抗薬である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、テルミサルタン、カンデサルタン、ロサルタン、バルサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、フィマサルタン、サプリサルタン、オルメサルタン、アジルサルタン、プラトサルタン、タソサルタン、EXP-3174、TCV-116、PD123319、EMA401、ならびにこれらの薬学的に許容可能な塩および溶媒和物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、テルミサルタンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、アンジオテンシンII受容体に結合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、レニン阻害剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、ウイルスRNA複製を遮断する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、別の抗ウイルス化合物と組み合わせて投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、内皮機能不全、高血圧、糖尿病性腎症または鬱血性心不全について処置されていない、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、内皮機能不全について処置されていない、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、前記対象に経口投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、鳥類または哺乳類である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記哺乳類が、ヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止するための方法において使用されるときのアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤。
【請求項22】
対象におけるMononegaviralesウイルス感染の処置または防止のための薬剤の製造におけるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象におけるウイルス感染を処置または防止する方法に関する。より詳細には、本発明は、対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止する方法であって、有効量のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を投与することを含む、上記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、有機体の生きた細胞内でのみ複製する小さな感染因子である。ウイルスは全ての生命体に感染し得るが、ヒトに感染することが知られている一般的なウイルス性病原菌の例として、風邪、インフルエンザ、水痘、及びヘルペスが挙げられる。より深刻な合併症を伴う疾患、例えば、エボラウイルス病、鳥インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス及び後天性免疫不全(HIV/AIDS)、ならびに重症急性呼吸器症候群(SARS)もまた、ウイルスによって引き起こされる。さらに、ウイルス感染は、ヒト及び他の種において、がんの原因と認められている。
【0003】
ウイルス感染の症状は、穏やかなものから著しく衰弱させるものまで様々であり得る。ウイルス感染は、処置されないまま放置されると、死を引き起こす可能性がある。ウイルス性疾患に対する最も有効な医学的アプローチは、感染に対する免疫を付与するワクチン接種、及び、ウイルスの複製を選択的に妨害する抗ウイルス薬である。大部分の抗ウイルス療法は特定のウイルス感染について使用されているが、広域スペクトル抗ウイルス療法が広範なウイルスに対して有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2006/0135422A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、安全かつ有効な抗ウイルス薬の設計は、ウイルスが宿主の有機体の細胞を使用して複製するため、困難である。このことは、宿主の有機体の細胞に同時に危害を加えることなくウイルスを妨害する抗ウイルス薬の標的を見出すことの難易度を高くしている。新規のウイルス変種が継続して出現することにより、新規の安全かつ有効な抗ウイルス療法を開発することが継続して必要とされている。
その結果、ゆえに、対象におけるウイルス感染を処置または防止する新しい方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、対象におけるウイルス感染を処置または防止する新規かつ代替の方法を同定した。
【0007】
したがって、一態様において、対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止する方法であって、有効量のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、Mononegaviralesウイルス感染は、Pneumoviridae、Rhabdoviridae、Paramyxoviridae、及びFiloviridaeからなる群から選択される科のものである。
【0009】
いくつかの実施形態において、Mononegaviralesウイルス感染は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、麻疹ウイルス(MeV)、ヘンドラウイルス(HeV)、ニパウイルス(NiV)、トリメタニューモウイルス(aMPV)、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、ムンプスウイルス(MuV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、センダイウイルス(SeV)、ヒトパラインフルエンザウイルス1(HPIV-1)、トウモロコシモザイクウイルス(MMV)、イネ黄葉ウイルス(RYSV)、レタス壊死性黄変病ウイルス(LNYV)、狂犬病ウイルス(RABV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、牛流行熱ウイルス(BEFV)、感染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、マールブルグウイルス(LVMV)、及びエボラウイルス(EBOV)からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの好ましい実施形態において、Mononegaviralesウイルス感染は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である。
【0011】
いくつかの好ましい実施形態において、Mononegaviralesウイルス感染は、麻疹ウイルス(MeV)である。
【0012】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は:
【化1】
からなる群から選択される構造を有し、
式中、Xが:
【化2】
からなる群から選択され;
Yが:
【化3】
からなる群から選択され;
Zが、5または6員の単環式炭素環式または単環式複素環式であり;
、R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択され;
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式が、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的に置換されており;
上記単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式が、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、及びC1-10アルキルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されており;
上記C1-10アルキル及びC2-10アルケニルが、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬である。
【0014】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アンジオテンシンII受容体ATサブタイプ拮抗薬である。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、テルミサルタン、カンデサルタン、ロサルタン、バルサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、フィマサルタン、サプリサルタン、オルメサルタン、アジルサルタン、プラトサルタン、タソサルタン、EXP-3174、TCV-116、PD123319、EMA401、ならびにこれらの薬学的に許容可能な塩および溶媒和物からなる群から選択される。
【0016】
いくつかの特定の好ましい実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、テルミサルタンである。
【0017】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アンジオテンシンII受容体に結合する。
【0018】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤である。
【0019】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、レニン阻害剤である。
【0020】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ウイルスRNA複製を遮断する。
【0021】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、別の抗ウイルス化合物と組み合わせて投与される。
【0022】
いくつかの実施形態において、対象は、内皮機能不全、高血圧、糖尿病性腎症または鬱血性心不全について処置されていない。
【0023】
いくつかの実施形態において、対象は、内皮機能不全について処置されていない。
【0024】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、対象に経口投与される。
【0025】
いくつかの実施形態において、対象は、鳥類または哺乳類である。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態において、哺乳類はヒトである。
【0027】
別の態様において、対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止する際の使用のためのアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を提供する。
【0028】
別の態様において、Mononegaviralesウイルス感染を処置または防止する際の使用のためのアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤から選択される抗ウイルス剤を提供する。
【0029】
別の態様において、対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止するためのアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の使用を提供する。
【0030】
別の態様において、対象におけるMononegaviralesウイルス感染の処置または防止のための薬剤の製造におけるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の使用を提供する。
【0031】
本明細書におけるいずれの実施形態も、別途特に記述しない限り、変更すべきところは変更して任意の他の実施形態に適用されるととられるべきである。
【0032】
本発明は、例示目的のみで意図されている、本明細書に記載されている具体的な実施形態によって範囲が制限されるべきではない。機能的に等価な生成物、組成物及び方法は、本明細書に記載されているように、明確に本発明の範囲内である。
【0033】
この明細書全体を通して、別途特に記述しないまたは文脈が別途必要としない限り、単一の工程、物質の組成物、工程の群または物質の組成物の群に対する言及は、かかる工程、物質の組成物、工程の群または物質の組成物の群の1または複数(すなわち、1つ以上)を包含するととられるべきである。
【0034】
以下、本発明を、以下の非限定的な例によって、添付の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】BSL-4におけるHeV感染の阻害剤の高スループット化学スクリーニングに使用したワークフロー及び対照。(A)Tocris、Prestwick及びLopacからの4,148の公知の薬物のスパニングライブラリのライブラリを384ウエル組織培養プレート内にアリコートし、HeLa細胞(4,000細胞/ウエル)で1時間インキュベートした。細胞をHeVに1のMOIで24時間感染させた。プレートを4%パラホルムアルデヒドで固定し、染色してウイルス抗原及び細胞生存率を検出した。(B)このスクリーニングにおいて使用した陽性対照化合物であり、相対的な細胞数及びHeV感染に対する影響を示している。(C)化合物スクリーニングからの結果であり、化合物を最低(ウイルス複製の減少)から最高(ウイルス複製の増加)までの相対的なHeV感染によってランク付けした。
図2】テルミサルタンは、HeV及び他の陰性ストランドRNAウイルスによる感染を阻害する。(A)テルミサルタンまたは等価のDMSO対照による24時間、1時間の後処理でのHeV(MOI1)に感染したHeLa細胞におけるHeV力価、p<0.05。テルミサルタンまたは等価のDMSO対照によるHeLa細胞の26時間の後処理での、相対的な細胞数(B)及び代謝活性(C)、siNEGと比較してp<0.05。(D)テルミサルタン(10μΜ)による24時間、1時間の後処理での示したウイルス(MOI1)によって感染したHeLa細胞におけるウイルス力価、DMSO対照と比較してp<0.05、有意差なし。
図3】テルミサルタンは、HeV感染の侵入後の初期段階を阻害する。(A)DMSOまたはテルミサルタン(10μM)によって処理した(標的)HeLa細胞へのHeV-F及びHeV-G発現(エフェクタ)HEK-293T細胞の細胞間融合。値を模擬に対して正規化し、100に設定する、ビヒクル(DMSO対照)と比較してp<0.05。(B)HeLa細胞における細胞内ウイルスRNAのqRT-PCR測定及び(C)HeV(MOI5)に感染した細胞におけるウイルス力価のTCID50測定、模擬と比較してp<0.05。HeV RNA値を細胞18Sレベル及びHeV接種レベルに正規化し、1に設定する。(D)siNEGまたはsiFBLによるトランスフェクト、続いてHeV感染(MOI 0.1、24時間)したHeLa細胞を染色するHeV-Pタンパク質を示す免疫蛍光顕微鏡検査法。
図4】HeV感染が、複数のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤によって阻害される。テルミサルタン、カンデサルタンまたは等価のDMSO対照による24時間、1時間の後処理でのHeV(MOI1)に感染したHeLa細胞におけるHeV力価、*p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一般的な技術及び定義
別途特に定義しない限り、本明細書において使用されている全ての技術及び科学的用語は、当業者(例えば、生化学、化学、医薬品化学、抗ウイルス創薬など)によって一般的に理解されているものと同じ意味を有するととられるべきである。
【0037】
本明細書において使用されているとき、「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」という用語は、「X及びY」あるいは「XまたはY」のいずれかを意味すると理解されるべきであり、また、両方の意味またはいずれかの意味に明白なサポートを付与するととられるべきである。
【0038】
本明細書において使用されているとき、約という用語は、反対のことが記述されていない限り、表記されている値の±20%、より好ましくは±10%を指す。
【0039】
この明細書全体を通して、「含む(comprise)」、または変形、例えば、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」という語は、記述されている要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群の包含を示唆するが、任意の他の要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を排除するものではないことが理解されよう。
【0040】
本明細書において使用されているとき、「対象」という用語は、Mononegaviralesウイルス感染に罹りやすい任意の有機体を指す。例えば、対象は、哺乳類、鳥類、節足動物、脊索動物、両生動物または爬虫類であり得る。例示的な対象には、限定されないが、ヒト、鳥類(例えば、ニワトリ、カモ)、霊長類、家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ニワトリ、ウマ、ロバ、ブタ)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)、実験室試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、及び捕虜の野生動物(例えば、キツネ、シカ)が含まれる。一例において、対象は、鳥類である。一例において、対象は、哺乳類である。一例において、対象は、ヒトである。
【0041】
本明細書において使用されているとき、「処置する(こと)」という用語は、特定の障害または状態に関連する症状の軽減、及び、当該症状を取り除くことを含む。例えば、本明細書において使用されているとき、「ウイルス感染を処置する(こと)」という用語は、ウイルス感染に関連する症状を軽減すること、及び、当該症状を取り除くことを指す。
【0042】
本明細書において使用されているとき、「防止」という用語は、特定の障害または状態の予防を含む。例えば、本明細書において使用されているとき、「ウイルス感染を防止する(こと)」という用語は、ウイルス感染に関連する症状の発症または持続を防止することを指す。
【0043】
当業者によって理解されるように、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、治療有効量で投与される。「治療有効量」という用語は、本明細書において使用されているとき、処置されている障害または状態の症状の1つ以上をある程度まで軽減または防止するのに十分な量で投与されるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を指す。結果は、疾患もしくは状態の兆候、症状もしくは原因の低減及び/もしくは軽減、または生体系の任意の他の所望の改変であり得る。例えば、1つの結果は、ウイルス感染に関連する発熱の症状の低減及び/または軽減であってよい。「有効量」という用語は、本明細書において使用されているとき、過度の副作用を伴うことなく所望の薬理作用または治療的改善を達成するのに有効なアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の量を指す。ほんの一例として、治療有効量は、限定されないが、用量の増大の臨床試験を含めた常套の実験によって求められ得る。「治療有効量」という用語は、例えば、予防有効量を含む。「有効量」または「治療有効量」は、化合物の代謝の変動、及び対象の年齢、体重、全身状態のいずれか、処置されている状態、処置されている状態の重篤度、ならびに処方医師の判断に起因して対象毎に変動し得ることが理解される。そのため、正確な「有効量」を特定することが常に可能であるということではない。しかし、任意の個体の場合における適切な「有効量」は、常套の実験を使用して当業者によって求められ得る。1を超える治療剤が併用される場合、各治療剤の「治療有効量」は、自身において使用されるときに治療的に有効である治療剤の量を指すことができ、または、1つ以上のさらなる治療剤との組み合わせによって治療的に有効である低減された量を指してもよい。
【0044】
活性の「開始」という用語は、本明細書において使用されているとき、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の投与後、処置されている障害または状態の症状の1つ以上をある程度まで軽減または防止するための時間の長さを指す。「持続期間」という用語は、治療薬が治療的に有効であり続ける、すなわち、処置されている障害または状態の症状の1つ以上をある程度まで軽減または防止するための時間の長さを指す。当業者は、開始、ピーク、及び治療の持続期間が、例えば、患者、患者の状態、及び投与経路などの因子に応じて変動し得ることを知っているであろう。
【0045】
「炭素環式」及び「カルボシクリル」という用語は、環原子が全て炭素原子、例えば、約3~約20個の炭素原子であり、芳香族、非芳香族、飽和、または不飽和であってよく、置換されていてよく及び/または縮合環を含んでいてよい単環式または多環式環系を表す。かかる基の例として、アリール基、例えばベンゼン、飽和基、例えば、シクロペンチル、または完全もしくは部分的に水素化されたフェニル、ナフチル及びフルオレニルが挙げられる。多環式環系には二環式及び三環式環系が含まれることが認識されよう。
【0046】
「ヘテロシクリル」または「複素環式」は、単独で、またはヘテロシクリルオキシなどの複合語のいずれで使用されていても、環原子が、少なくとも2つの異なる元素、典型的には、炭素と、窒素、硫黄及び酸素の1つ以上との組み合わせによって付与されるが、環原子に他の元素、例えば、セレン、ホウ素、リン、ビスマス、及びケイ素を含んでいてよく、環系が約3~約20個の原子であり、芳香族、例えば、「ヘテロアリール」基、非芳香族、飽和、または不飽和であってよく、置換されていてよく及び/または縮合環を含んでいてよい単環式または多環式環系を表す。例えば、ヘテロシクリルは、(i)1つ以上のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、もしくは硫黄を含有していてよい、例えば、約3~約20環員の任意選択的に置換されているシクロアルキルもしくはシクロアルケニル基(例として、ピロリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、または完全もしくは部分的に水素化されたチエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジニル、チアジニル、ピリジル及びアゼピニルが挙げられる);(ii)アリール(もしくはヘテロアリール)環及び複素環式基が一緒に縮合して環状構造を形成している、任意選択的に置換されている部分飽和単環式または多環式環系(例として、クロマニル、ジヒドロベンゾフリル及びインドリニルが挙げられる);または(iii)1つ以上の橋かけを有する、任意選択的に置換されている完全もしくは部分飽和多環式縮合環系(例として、キヌクリジニル及びジヒドロ-1,4-エポキシナフチルが挙げられる)であってよい。多環式環系には二環式及び三環式環系が含まれることが認識されよう。
【0047】
理解されるように、「芳香族」基は、mが1以上の整数である4m+2πの電子を有する環式基を意味する。本明細書において使用されているとき、「芳香族」は、「アリール」と互換的に使用されて、芳香族基の価数に関わらず、芳香族基を指す。
【0048】
「アリール」は、単独で、またはアリールアルキル、アリールオキシもしくはアリールチオなどの複合語のいずれで使用されていても:(i)例えば約6~約20個の炭素原子の、任意選択的に置換されている単環式もしくは多環式芳香族炭素環式部位、例えば、フェニル、ナフチルもしくはフルオレニル;または(ii)アリール及びシクロアルキルまたはシクロアルケニル基が一緒に縮合して環状構造を形成している、任意選択的に置換されている部分飽和多環式炭素環式芳香族環系、例えば、テトラヒドロナフチル、インデニル、インダニル、もしくはフルオレン環を表す。多環式環系には二環式及び三環式環系が含まれることが認識されよう。
【0049】
「ヘタリール」、「ヘテロアリール」またはヘテロ芳香族基は、1つ以上のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素またはリンを含む芳香族基または環である。本明細書において使用されているとき、「ヘテロ芳香族」は、「ヘタリール」または「ヘテロアリール」と互換的に使用され、ヘテロアリール基は、1つ以上のヘテロ原子を含む一価芳香族基、二価芳香族基及びそれより多価の芳香族基を指す。例えば、「ヘテロアリール」は、単独で、またはヘテロアリールオキシなどの複合語のいずれで使用されていても:(i)例えば、約5~約20環員の任意選択的に置換されている単環式または多環式芳香族有機部位であって、環員の1つ以上が炭素以外の元素(複数可)、例えば窒素、酸素、硫黄またはケイ素であり;ヘテロ原子(複数可)が、炭素環式環構造を中断し、かつ、芳香族特性を付与する十分数の非局在化π電子を有している、ただし、環が、隣接する酸素及び/または硫黄原子を含んでいないことを条件とする、上記部位を表す。典型的な6員のヘテロアリール基は、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピリジル及びピリミジニルである。全ての位置異性体、例えば、2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジルが予期される。典型的な5員のヘテロアリール環は、フリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、及びシロールである。全ての位置異性体、例えば、2-チエニル及び3-チエニルが予期される。二環式基は、典型的には、上記の名称のヘテロアリール基、例えば、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、インドリジニル、イソキノリル、キナゾリニル、キノリル及びベンゾチエニル;から誘導されるベンゾ-縮合環系、または、(ii)ヘテロアリール及びシクロアルキルもしくはシクロアルケニル基が一緒に縮合して環状構造、例えば、テトラヒドロキノリルもしくはピリジニル環を形成している、任意選択的に置換されている部分飽和多環式ヘテロアリール環系である。多環式環系には二環式及び三環式環系が含まれることが認識されよう。
【0050】
「任意選択的に置換されている」という用語は、官能基が、任意の利用可能な位置において置換または非置換のいずれかであることを意味している。置換は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ホルミル、アルカノイル、シクロアルカノイル、アロイル、ヘテロアロイル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロシクリルオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロシクリルアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、シアノ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルカノエート、シクロアルカノエート、アリーロエート、ヘテロシクリロエート、ヘテロアリーロエート、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロシクリルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ニトロ、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ハロアリール、ハロヘテロシクリル、ハロヘテロアリール、ハロアルコキシ、ハロアルキルスルホニル、シリルアルキル、アルケニルシリルアルキル、及びアルキニルシリルアルキルから選択される1つ以上の官能基によるものであり得る。具体的に記載されていない他の基も使用され得ることが認識されよう。
【0051】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、単独で、またはハロアルキル、ハロアルコキシもしくはハロアルキルスルホニルなどの複合語のいずれで用いられていても、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表す。さらに、ハロアルキル、ハロアルコキシまたはハロアルキルスルホニルなどの複合語で使用されるとき、アルキルは、独立して同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子で部分的にハロゲン化されていても完全に置換されていてもよい。ハロアルキルの例として、限定することなく、-CHCHF、-CFCF及び-CHCHFClが挙げられる。ハロアルコキシの例として、限定することなく、-OCHF、-OCF、-OCHCCl、-OCHCF及び-OCHCHCFが挙げられる。ハロアルキルスルホニルの例として、限定することなく、-SOCF、-SOCCl、-SOCHCF及び-SOCFCFが挙げられる。
【0052】
「アルキル」は、単独で、またはアルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはハロアルキルなどの複合語のいずれで使用されていても、1~約20個以上の炭素原子のサイズの範囲の直鎖または分岐鎖の炭化水素を表す。そのため、アルキル部位は、より小さな基に明確に限定されない限り、例えば、1~約6個以上の炭素原子のサイズの範囲の部位、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル及び/またはブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれより高級な異性体を、例えば、約6~約20個以上の炭素原子のサイズの範囲のかかる直鎖または分岐鎖の炭化水素なども含めて含んでいる。一例において、アルキル部位は、1~10個の炭素原子を有する。
【0053】
「アルケニル」は、単独で、またはアルケニルオキシもしくはハロアルケニルなどの複合語のいずれで使用されていても、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素を、より小さな基に明確に限定されない限り、2~約6個以上の炭素原子のサイズの範囲の部位、例えば、メチレン、エチレン、1-プロペニル、2-プロペニル、及び/またはブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びそれより高級な異性体も含めて、例えば、約6~約20個以上の炭素原子のサイズの範囲のかかる直鎖または分岐鎖の炭化水素なども含めて表している。一例において、アルケニル部位は、2~10個の炭素原子を有する。
【0054】
「アルキニル」は、単独で、またはアルキニルオキシなどの複合語のいずれで使用されていても、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素を、より小さな基に明確に限定されない限り、例えば、2~約6個以上の炭素原子のサイズの範囲の部位、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、及び/またはブチニル、ペンテニル、ヘキシニル、ならびにそれより高級な異性体、例えば、約6~約20個以上の炭素原子のサイズの範囲のかかる直鎖または分岐鎖の炭化水素などを含めて表している。一例において、アルキニル部位は、2~20個の炭素原子を有する。
【0055】
「シクロアルキル」は、種々のサイズ、例えば、約3~約20個の炭素原子の単または多炭素環式環系、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを表す。シクロアルキルオキシという用語は、酸素原子を通して連結している同基、例えば、シクロペンチルオキシ及びシクロヘキシルオキシを表す。シクロアルキルチオという用語は、硫黄原子を通して連結している同基、例えば、シクロペンチルチオ及びシクロヘキシルチオを表す。
【0056】
「シクロアルケニル」は、例えば、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する約3~約20個の炭素原子の非芳香族単または多炭素環式環系、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニルまたはシクロヘプテニルを表す。「シクロアルケニルオキシ」という用語は、酸素原子を通して連結している同基、例えば、シクロペンテニルオキシ及びシクロヘキセニルオキシを表す。「シクロアルケニルチオ」という用語は、硫黄原子を通して連結している同基、例えば、シクロペンテニルチオ及びシクロヘキセニルチオを表す。
【0057】
「シクロアルキニル」は、例えば、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する約3~約20個の炭素原子の非芳香族単または多炭素環式環系、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニルまたはシクロヘプテニルを表す。「シクロアルケニルオキシ」という用語は、酸素原子を通して連結している同基、例えば、シクロペンテニルオキシ及びシクロヘキセニルオキシを表す。「シクロアルケニルチオ」という用語は、硫黄原子を通して連結している同基、例えば、シクロペンテニルチオ及びシクロヘキセニルチオを表す。
【0058】
「アルカノイル」は、-C(=O)-アルキル基を表し、ここで、アルキル基は、上記に定義されている通りである。特定の実施形態において、アルカノイルは、約C-C20のサイズの範囲である。一例はアシルである。
【0059】
「アロイル」は、-C(=O)-アリール基を表し、ここで、アリール基は、上記に定義されている通りである。特定の実施形態において、アロイルは、約C-C20のサイズの範囲である。例として、ベンゾイルならびに1-ナフトイル及び2-ナフトイルが挙げられる。
【0060】
「ヘテロシクリル」は、-C(=O)-ヘテロシクリル基を表し、ここで、複素環式基は、上記に定義されている通りである。特定の実施形態において、ヘテロシクリルは、約C-C20のサイズの範囲である。
【0061】
「ヘテロアロイル」は、-C(=O)-ヘテロアリール基を表し、ここで、ヘテロアリール基は、上記に定義されている通りである。特定の実施形態において、ヘテロアロイルは、約C-C20のサイズの範囲である。例は、ピリジルカルボニルである。
【0062】
「カルボキシル」は、-COH部位を表す。
【0063】
「オキシカルボニル」は、炭素原子を通して分子の残りに連結しているカルボン酸エステル基-CORを表す。
【0064】
「アルコキシカルボニル」は、-CO-アルキル基を表し、ここで、アルキル基は、上記に定義されている通りである。特定の実施形態において、アルコキシカルボニルは、約C-C20のサイズの範囲である。例として、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが挙げられる。
【0065】
「アリールオキシカルボニル」は、-CO-アリール基を表し、ここで、アリール基は、上記に定義されている通りである。例として、フェノキシカルボニル及びナフトキシカルボニルが挙げられる。
【0066】
「ヘテロシクリルオキシカルボニル」は、-CO-ヘテロシクリル基を表し、ここで、複素環式基は、上記に定義されている通りである。
【0067】
「ヘテロアリールオキシカルボニル」は、-CO-ヘテロアリール基を表し、ここで、ヘテロアリール基は、上記に定義されている通りである。
【0068】
「アミノカルボニル」は、炭素原子を通して分子の残りに連結しているカルボン酸アミド基-C(=O)NHRまたは-C(=O)NRを表す。
【0069】
「アルキルアミノカルボニル」は、-C(=O)NHRまたは-C(=O)NR基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているアルキル基である。
【0070】
「アリールアミノカルボニル」は、-C(=O)NHRまたは-C(=O)NR基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているアリール基である。
【0071】
「ヘテロシクリルアミノカルボニル」は、-C(=O)NHRまたは-C(=O)NR基を表し、ここで、Rは、上記に定義されている複素環式基である。ある特定の実施形態において、NRは、任意選択的に置換されている複素環式環である。
【0072】
「ヘテロアリールアミノカルボニル」は、-C(=O)NHRまたは-C(=O)NR基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているヘテロアリール基である。ある特定の実施形態において、NRは、任意選択的に置換されているヘテロアリール環である。
【0073】
「シアノ」は、-CN部位を表す。
【0074】
「ヒドロキシル」は、-OH部位を表す。
【0075】
「アルコキシ」は、-O-アルキル基を表し、ここで、アルキル基は、上記に定義されている通りである。例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、ならびに異なるブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ及びそれより高級な異性体が挙げられる。
【0076】
「アリールオキシ」は、-O-アリール基を表し、ここで、アリール基は、上記に定義されている通りである。例として、限定することなく、フェノキシ及びナフトキシが挙げられる。
【0077】
「アルケニルオキシ」は、-O-アルケニル基を表し、ここで、アルケニル基は、上記に定義されている通りである。例は、アリルオキシである。
【0078】
「ヘテロシクリルオキシ」は、-O-ヘテロシクリル基を表し、ここで、複素環式基は、上記に定義されている通りである。
【0079】
「ヘテロアリールオキシ」は、-O-ヘテロアリール基を表し、ここで、ヘテロアリール基は、上記に定義されている通りである。例は、ピリジルオキシである。
【0080】
「アルカノエート」は、-OC(=O)-R基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているアルキル基である。
【0081】
「アリーロエート」は、-OC(=O)-R基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているアリール基である。
【0082】
「ヘテロシクリロエート」は、-OC(=O)--R基を表し、ここで、Rは、上記に定義されている複素環式基である。
【0083】
「ヘテロアリーロエート」は、-OC(=O)-R基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているヘテロアリール基である。
【0084】
「アミノ」は、-NH部位を表す。
【0085】
「アルキルアミノ」は、-NHRまたは-NR基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているアルキル基である。例として、限定することなく、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ならびに異なるブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ及びそれより高級な異性体が挙げられる。
【0086】
「アリールアミノ」は、-NHRまたは-NR基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているアリール基である。例は、フェニルアミノである。
【0087】
「ヘテロシクリルアミノ」は、-NHRまたは-NR基を表し、ここで、Rは、上記に定義されている複素環式基である。ある特定の実施形態において、NRは、任意選択的に置換されている複素環式環である。
【0088】
「ヘテロアリールアミノ」は、-NHRまたは--NR基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているヘテロアリール基である。ある特定の実施形態において、NRは、任意選択的に置換されているヘテロアリール環である。
【0089】
「カルボニルアミノ」は、窒素原子を通して分子の残りに連結しているカルボン酸アミド基-NHC(=O)Rを表す。
【0090】
「アルキルカルボニルアミノ」は、-NHC(=O)R基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているアルキル基である。
【0091】
「アリールカルボニルアミノ」は、-NHC(=O)R基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているアリール基である。
【0092】
「ヘテロシクリルカルボニルアミノ」は、-NHC(=O)R基を表し、ここで、Rは、上記に定義されている複素環式基である。
【0093】
「ヘテロアリールカルボニルアミノ」は、-NHC(=O)R基を表し、ここで、Rは、上記に定義されているヘテロアリール基である。
【0094】
「ニトロ」は、-NO部位を表す。
【0095】
「アルキルチオ」は、-S-アルキル基を表し、ここで、アルキル基は、上記に定義されている通りである。例として、限定することなく、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソ プロピルチオ、ならびに異なるブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ及びそれより高級な異性体が挙げられる。
【0096】
「アリールチオ」は、-S-アリール基を表し、ここで、アリール基は、上記に定義されている通りである。例として、フェニルチオ及びナフチルチオが挙げられる。
【0097】
「ヘテロシクリルチオ」は、-S-ヘテロシクリル基を表し、ここで、複素環式基は、上記に定義されている通りである。
【0098】
「ヘテロアリールチオ」は、-S-ヘテロアリール基を表し、ここで、ヘテロアリール基は、上記に定義されている通りである。
【0099】
「スルホニル」は、硫黄原子を通して分子の残りに連結している-SOR基を表す。
【0100】
「アルキルスルホニル」は、-SO-アルキル基を表し、ここで、アルキル基は、上記に定義されている通りである。
【0101】
「アリールスルホニル」は、-SO-アリール基を表し、ここで、アリール基は、上記に定義されている通りである。
【0102】
「ヘテロシクリルスルホニル」は、-SO-ヘテロシクリル基を表し、ここで、複素環式基は、上記に定義されている通りである。
【0103】
「ヘテロアリールスルホニル」は、-SO-ヘテロアリール基を表し、ここで、ヘテロアリール基は、上記に定義されている通りである。
【0104】
「アルデヒド」は、-C(=O)H基を表す。
【0105】
「アルカナール」は、アルキル-(C=O)H基を表し、ここで、アルキル基は、上記に定義されている通りである。
【0106】
「アルキルシリル」は、最大3つの、独立して選択されるアルキル基によって置換されていてよい、ケイ素原子を通して分子の残りに連結しているアルキル基を提示し、ここで、各アルキル基は、上記に定義されている通りである。
【0107】
「アルケニルシリル」は、最大3つの、独立して選択されるアルケニル基によって置換されていてよい、ケイ素原子を通して分子の残りに連結しているアルケニル基を提示し、ここで、各アルケニル基は、上記に定義されている通りである。
【0108】
「アルキニルシリル」は、最大3つの、独立して選択されるアルキニル基によって置換されていてよい、ケイ素原子を通して分子の残りに連結しているアルキニル基を提示し、ここで、各アルケニル基は、上記に定義されている通りである。
【0109】
「アリール」は、炭素環式芳香族基を指す。アリール基の例として、限定されないが、フェニル、ナフチル及びアントラセニルが挙げられる。炭素環式芳香族基または複素環式芳香族基は、非置換であるか、または、限定されないが、-C-Cアルキル、-O-(C-Cアルキル)、-アリール、-C(O)R’、-OC(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NH、-C(O)NHR’、-C(O)N(R’)-NHC(O)R’、-S(O)R’、-S(O)R’、-OH、-ハロゲン、-N、-NH、-NH(R’)、-N(R’)及び-CN;ここで、各R’は、H、-C-Cアルキル及びアリールから独立して選択される;を含めた1つ以上の基によって置換されていてよい。
【0110】
「C1-10アルキル」という用語は、本明細書において使用されているとき、1~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐状の飽和または不飽和炭化水素を指す。代表的な「C1-10アルキル」基として、限定されないが、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、-n-ヘキシル、-n-ヘプチル、-n-オクチル、-n-ノニル及び-n-デシルが挙げられ;分岐状C-Cアルキルとして、限定されないが、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、2-メチルブチルが挙げられる一方で、不飽和C-Cアルキルとして、限定されないが、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、-アセチレニル、-プロピニル、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1ブチニル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、2,3,4-トリメチルペンチル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、3,5-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルペンチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、及びイソオクチルが挙げられる。C-Cアルキル基は、非置換であるか、または、限定されないが,-C-Cアルキル,-O-(C-Cアルキル)、-アリール、-C(O)R’、-OC(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NH、-C(O)NHR’、-C(O)N(R’)-NHC(O)R’、-SOR’、-S(O)R’、-S(O)R’、-OH、-ハロゲン、-N、-NH、-NH(R’)、-N(R’)及び-CN;ここで、各R’は、H、-C-Cアルキル及びアリールから独立して選択される;を含めた1つ以上の基によって置換されていてよい。
【0111】
「C1-10アルキレン」は、式-(CH1-10-の直鎖飽和炭化水素基である。C-C10アルキレンの例として、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン及びデカレンが挙げられる。
【0112】
「アリーレン」は、2つの共有結合を有し、かつ、以下の構造に示されるようにオルト、メタ、またはパラであってよいアリール基であり:
【化4】
ここで、フェニル基は、非置換であるか、または、限定されないが、-C-Cアルキル、-O-(C-Cアルキル)、-アリール、-C(O)R’,-OC(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NH、-C(O)NHR’、-C(O)N(R’)-NHC(O)R’、-S(O)R’、-S(O)R’、-OH、-ハロゲン、-N、-NH、-NH(R’)、-N(R’)及び-CN;ここで、各R’は、H、-C-Cアルキル及びアリールから独立して選択される;を含めた最大で4つの基によって置換されていてよい。
【0113】
「アルケニレン」は、親アルカンの同じまたは2つの異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することにより誘導される2つの一価ラジカル中心を有する、2~18個の炭素原子の不飽和の分岐状または直鎖または環式炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルケニレンラジカルとして、限定されないが:1,2-エチレン(-CH=CH-)が挙げられる。
【0114】
「アルキニレン」は、親アルキンの同じまたは2つの異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することにより誘導される2つの一価ラジカル中心を有する、2~18個の炭素原子の不飽和の分岐状または直鎖または環式炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキニレンラジカルとして、限定されないが:アセチレン(-C≡C-)、プロパルギル(-CHC≡C-)、及び4-ペンテニル(-CHCHCHC≡CH-)が挙げられる。
【0115】
「アリールアルキル」は、非環式アルキルラジカルを指し、ここで、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子に結合している水素原子の1つが、アリールラジカルによって置き換えられている。典型的なアリールアルキル基として、限定されないが、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどが挙げられる。アリールアルキル基は、6~20個の炭素原子を含み、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル基を含めたアルキル部位は、1~6個の炭素原子であり、アリール部位は、5~14個の炭素原子である。
【0116】
「ヘテロアリールアルキル」は、非環式アルキルラジカルを指し、ここで、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子に結合している水素原子の1つが、ヘテロアリールラジカルによって置き換えられている。典型的なヘテロアリールアルキル基として、限定されないが、2-ベンゾイミダゾリルメチル、2-フリルエチルなどが挙げられる。ヘテロアリールアルキル基は、6~20個の炭素原子を含み、例えば、ヘテロアリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル基を含めたアルキル部位は、1~6個の炭素原子であり、ヘテロアリール部位は、5~14個の炭素原子、ならびに窒素、酸素、リン、及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子である。ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール部位は、3~7環員(2~6個の炭素原子)を有する単環、または、7~10環員(4~9個の炭素原子ならびに窒素、酸素、リン、及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子)を有する二環、例えば:ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]、または[6,6]系であってよい。
【0117】
「置換されているアルキル」、「置換されているアリール」、及び「置換されているアリールアルキル」は、1つ以上の水素原子が、それぞれ独立して、置換基によって置き換えられている、それぞれ、アルキル、アリール、及びアリールアルキルを意味する。典型的な置換基として、限定されないが、-X、-R、-O、-OR、-SR、-S、-NR、-NR、=NR、-CX、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO、=N、-N、NC(=O)R、-C(=O)R、-C(=O)NR、-SO 、-SOH、-S(=O)R、-OS(=O)OR、-S(=O)NR、-S(=O)R、-OP(=O)(OR)、-P(=O)(OR)、-PO 、-PO、-C(=O)R、-C(=O)X、-C(=S)R、-COR、-CO 、-C(=S)OR、-C(=O)SR、-C(=S)SR、-C(=O)NR、-C(=S)NR、-C(=NR)NRが挙げられ、ここで、各Xは、独立して、ハロゲン:F、Cl、Br、またはI;であり、各Rは、独立して、-H、C-C20アルキル、C-C20アリール、C-C14複素環、保護基またはプロドラッグ部位である。上記に記載されているアルキレン、アルケニレン、及びアルキニレン基もまた、同様に置換されていてもよい。
【0118】
複素環の例として、例えば、限定することなく、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ピペリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、2-ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ビス-テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ビス-テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H-ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH-カルバゾリル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシンドリル、ベンゾオキサゾリニル、及びイサチノイルが挙げられる。
【0119】
例として、限定することなく、炭素結合した複素環は、ピリジンの2、3、4、5、もしくは6位、ピリダジンの3、4、5、もしくは6位、ピリミジンの2、4、5、もしくは6位、ピラジンの2、3、5、もしくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールもしくはテトラヒドロピロールの2、3、4、もしくは5位、オキサゾール、イミダゾールもしくはチアゾールの2、4、もしくは5位、イソオキサゾール、ピラゾール、もしくはイソチアゾールの3、4、もしくは5位、アジリジンの2もしくは3位、アゼチジンの2、3、もしくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7、もしくは8位、または、イソキノリンの1、3、4、5、6、7、もしくは8位で結合している。なおより典型的には、炭素結合した複素環として、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、または5-チアゾリルが挙げられる。
【0120】
例として、限定することなく、窒素結合した複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾールの1位、イソインドール、またはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール、またはβ-カルボリンの9位で結合している。なおより典型的には、窒素結合した複素環として、1-アジリジル、1-アゼテジル、1-ピロリル、1-イミダゾリル、1-ピラゾリル、及び1-ピペリジニルが挙げられる。
【0121】
「薬学的に許容可能な塩」という句は、本明細書において使用されているとき、例示的な化合物または例示的な抱合体の薬学的に許容可能な有機または無機塩を指す。例示的な化合物及び例示的な抱合体は、少なくとも1つのアミノ基を含有し、したがって、酸付加塩が、このアミノ基によって形成され得る。例示的な塩として、限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))塩が挙げられる。薬学的に許容可能な塩は、別の分子、例えば、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンの包含を含んでいてよい。対イオンは、親化合物における電荷を安定させる任意の有機または無機部位であってよい。さらに、薬学的に許容可能な塩は、その構造において1を超える帯電した原子を有していてよい。複数の帯電した原子が薬学的に許容可能な塩の部分である場合は、複数の対イオンを有し得る。ゆえに、薬学的に許容可能な塩は、1つ以上の帯電した原子及び/または1つ以上の対イオンを有し得る。
【0122】
「薬学的に許容可能な溶媒和物」または「溶媒和物」は、1つ以上の溶媒分子と、本発明の化合物、例えば、例示的な化合物または例示的な抱合体との会合を指す。薬学的に許容可能な溶媒和物を形成する溶媒の例として、限定されないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、及びエタノールアミンが挙げられる。
【0123】
Mononegavirales
Mononegavirales目には、多くの異なる種からなる多数の属をさらに含むいくつかの科が含まれる。
【0124】
Mononegavirales目には、Bornaviridaeウイルス、Filoviridaeウイルス、Mymonaviridaeウイルス、Nyamiviridaeウイルス、Paramyxoviridaeウイルス、Pneumoviridaeウイルス、Rhabdoviridaeウイルス、Orthomyxoviridaeウイルス、及びSunviridaeウイルスが含まれる。そのため、いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Bornaviridae科のウイルスに属する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Filoviridae科のウイルスに属する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Mymonaviridae科のウイルスに属する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Nyamiviridae科のウイルスに属する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Paramyxoviridae科のウイルスに属する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Pneumoviridae科のウイルスに属する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Rhabdoviridae科のウイルスに属する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Orthomyxoviridaeウイルスに属する。いくつかの実施形態において、ウイルス感染は、Sunviridae科のウイルスに属する。
【0125】
Bornaviridae科のウイルスには、Loveridgeガータースネークウイルス1(LGSV-1)、ボルナ病ウイルス1(BoDV-1)、ボルナ病ウイルス2(BoDV-2)、斑入りリスボルナウイルス1(VSBV-1)、カナリアボルナウイルス1(CnBV-1)、カナリアボルナウイルス2(CnBV-2)、カナリアボルナウイルス3(CnBV-3)、カエデチョウ科フィンチボルナウイルス1(EsBV-1)、オウムボルナウイルス1(PaBV-1)、オウムボルナウイルス2(PaBV-2)、オウムボルナウイルス3(PaBV-3)、オウムボルナウイルス4(PaBV-4)、オウムボルナウイルス7(PaBV-7)、オウムボルナウイルス5(PaBV-5)、水鳥ボルナウイルス1(ABBV-1)、及び水鳥ボルナウイルス2(ABBV-2)が含まれる。
【0126】
Filoviridae科のウイルスには、ルロビウウイルス(LLOV)、ブンディブギョウイルス(BDBV)、レストンウイルス(RESTV)、スーダンウイルス(SUDV)、タイフォレストウイルス(TAFV)、エボラウイルス(EBOV)、マールブルグウイルス(MARV)、及びラブン(RAVV)ウイルス(RAW)が含まれる。一例において、ウイルス感染は、エボラウイルス(EBOV)である。一例において、ウイルス感染は、マールブルグウイルス(MARV)である。
【0127】
Mymonaviridae科のウイルスには、菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)ネガティブストランドRNAウイルス1(SsNSRV-1)が含まれる。
【0128】
Nyamiviridae科のウイルスには、ミッドウェーウイルス(MIDWV)、ニヤマニーニウイルス(NYMV)、シエラネバダウイルス(SNVV)、アオムシコバチ(Pteromalus puparum)ネガティブストランドRNAウイルス1(PpNSRV-1)、及びダイズシストセンチュウウイルス1(SbCNV-1)が含まれる。
【0129】
Paramyxoviridae科のウイルスには、アトランティックサーモンパラミクソウイルス(AsaPV)、鳥パラミクソウイルス1(APMV-1)、鳥パラミクソウイルス2(APMV-2)、鳥パラミクソウイルス3(APMV-3)、鳥パラミクソウイルス4(APMV-4)、鳥パラミクソウイルス5(APMV-5)、鳥パラミクソウイルス6(APMV-6)、鳥パラミクソウイルス7(APMV-7)、鳥パラミクソウイルス8(APMV-8)、鳥パラミクソウイルス9(APMV-9)、鳥パラミクソウイルス10(APMV-10)、鳥パラミクソウイルス11(APMV-11)、鳥パラミクソウイルス12(APMV-12)、鳥パラミクソウイルス13(APMV-13)、フェルドランスウイルス(FDLV)、セダーウイルス(CedV)、クマシ(Kumasi)ウイルス(KV)、ヘンドラウイルス(HeV)、Mojiangウイルス(MojV)、ニパウイルス(NiV)、イヌジステンパーウイルス(CDV)、クジラ麻疹ウイルス(CeMV)、ネコ麻疹ウイルス(FeMV)、麻疹ウイルス(MeV)、小反芻獣疫ウイルス(PPRV)、アザラシジステンパーウイルス(PDV)、牛疫ウイルス(RPV)、ウシパラインフルエンザウイルス3(BPIV-3)、ヒトパラインフルエンザウイルス1(HPIV-1)、ヒトパラインフルエンザウイルス3(HPIV-3)、センダイウイルス(SeV)、豚パラインフルエンザウイルス1(PPIV-1)、アチモタウイルス1(AchPV-1)、アチモタウイルス2(AchPV-2)、コウモリムンプスウイルス(BMV)、パラインフルエンザウイルス5(PIV-5)、ヒトパラインフルエンザウイルス1(HPIV-1)、ヒトパラインフルエンザウイルス2(HPrV-2)、ヒトパラインフルエンザウイルス4a(HPIV-4a)、ヒトパラインフルエンザウイルス4b(HPIV-4b)、マプエラウイルス(MapV)、メナングルウイルス(MenPV)、ムンプスウイルス(MuV)、ラピエダドミコアカンメキシコウイルス(LPMV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、シミアンウイルス41(SV-41)、ソスガウイルス、テビオットウイルス(TevPV)、チョーマンウイルス(TioPV)、Tuhokoウイルス1(ThkPV-1)、Tuhokoウイルス2(ThkPV-2)、及びTuhokoウイルス3(ThkPV-3)が含まれる。一例において、ウイルス感染は、麻疹ウイルス(MeV)である。一例において、ウイルス感染は、ムンプスウイルス(MuV)である。一例において、ウイルス感染は、ヒトパラインフルエンザウイルス1(HPIV-1)である。一例において、ウイルス感染は、ヘンドラウイルスである。一例において、ウイルス感染は、ニパウイルスである。一例において、ウイルス感染は、ニューカッスル病ウイルス(NDV)である。一例において、ウイルス感染は、センダイウイルスである。
【0130】
Pneumoviridae科のウイルスには、トリメタニューモウイルス(AMPV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(HRSV)、ヒト呼吸器合胞体ウイルスA2(HRSV-A2)、ヒト呼吸器合胞体ウイルスB1(HRSV-B1)、及びマウス肺炎ウイルス(MPV)が含まれる。一例において、ウイルス感染は、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(HRSV)である。一例において、ウイルス感染は、ヒト呼吸器合胞体ウイルスA2(HRSV-A2)である。一例において、ウイルス感染は、ヒト呼吸器合胞体ウイルスB1(HRSV-B1)である。一例において、ウイルス感染は、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(HRSV)である。一例において、ウイルス感染は、トリメタニューモウイルス(AMPV)である。一例において、ウイルス感染は、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)である。
【0131】
Rhabdoviridae科のウイルスには、アーボリータム(Arboretum)ウイルス(ABTV)、バルサ(Balsa)ウイルス(BALV)、クート湾(Coot Bay)ウイルス(CBV)、プエルトアルメンドラ(Puerto Almendras)ウイルス(PTAMV)、リオチコ(Rio Chico)ウイルス(RCHV)、キュリオノポリス(Curionopolis)ウイルス(CURV)、イリリ(Iriri)ウイルス(IRIRV)、イタカイナス(Itacaiunas)ウイルス(ITAV)、ロシャンボー(Rochambeau)ウイルス(RBUV)、アルファルファ萎縮(afalfa dwarf)ウイルス(ADV)、オオムギ黄色線条モザイクウイルス(BYSMV)、ブロッコリー壊死性黄色ウイルス(BNYV)、コロカシアボボン病(Colocasia bobone disease)付随ウイルス(CBDaV)、ウシノケグサの葉の条斑病(festuca leaf streak)ウイルス(FLSV)、レタス壊死性黄変病ウイルス(LNYV)、レタス黄色斑葉(lettuce yellow mottle)ウイルス(LYMoV)、北穀モザイクウイルス(NCMV)、ソンクス(sonchus)ウイルス(SonV)、ストロベリークリンクルウイルス(SCV)、アメリカコムギ縞萎縮(wheat American striate mosaic)ウイルス(WASMV)、コーヒー輪点ウイルス(CoRSV)、ランえそ斑紋ウイルス(OFV)、アデレード川ウイルス(ARV)、ベリマーウイルス(BRMV)、牛流行熱ウイルス(BEFV)、キンバレーウイルス(KIMV)、マラカルウイルス(MALV)、コールピンヤウイルス(KOOLV)、コトンカンウイルス(KOTV)、オボジャングウイルス(OBOV)、ヤタウイルス(YATV)、フランダースウイルス(FLAV)、ハートパークウイルス(HPV)、グレーロッジウイルス(GLOV)、ジョインジャカカウイルス(JOIV)、ラホヤウイルス(LJV)、カメゼウイルス(KAMV)、ランジャウイルス(LANV=LJAV)、マニトバウイルス(MANV=MNTBV)、マルコウイルス(MCOV)、モスケイロウイルス(MQOV)、モスリルウイルス(MOSV)、ヌガイガンウイルス(NGAV)、オード川ウイルス(ORV)、パリークリークウイルス(PCV)、ウォンガルウイルス(WONV)、バルーウイルス(BARV)、フキリニ(Fikirini)ウイルス(FKRV)、フクオカウイルス(FUKV)、カーンキャニオンウイルス(KCV)、キューラリバウイルス(KEUV)、コレンテ(Kolente)ウイルス(KOLEV)、クマシ(Kumasi)ラブドウイルス(KRV)、ルダンテック(Le Dantec)ウイルス(LDV)、エルゴン山コウモリウイルス(MEBV)、コルビッソンウイルス(NKOV)、ニシムロ(Nishimuro)ウイルス(NISV)、オオイタ(Oita)ウイルス(OITAV)、ウーハンシラミバエ(Wuhan louse fly)ウイルス5(WLFV-5)、ヨンチアダニ(Yongjia tick)ウイルス2(YTV-2)、アラバンウイルス(ARAV)、オーストラリアコウモリリッサウイルス(ABLV)、ボケローコウモリリッサウイルス(BBLV)、デュベンヘイジウイルス(DUVV)、ヨーロッパコウモリリッサウイルス1(EBLV-1)、ヨーロッパコウモリリッサウイルス2(EBLV-2)、イコマリッサウイルス(IKOV)、イルクーツウイルス(IRKV)、クージャンウイルス(KHUV)、ラゴスコウモリウイルス(LBV)、モコラウイルス(MOKV)、狂犬病ウイルス(RABV)、シモニコウモリウイルス(SHIBV)、西コーカサスコウモリウイルス(WCBV)、ヒラメラブドウイルス(HIRV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、感染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、スネークヘッドラブドウイルス(SHRV)、チョウセンアサガオ葉脈黄化(datura yellow vein)ウイルス(DYVV)、ナス斑点萎縮ウイルス(EMDV)、トウモロコシ細条斑(maize fine streak)ウイルス(MSFV)、トウモロコシイランモザイク(maize Iranian mosaic)ウイルス(MIMV)、トウモロコシモザイクウイルス(MMV)、ジャガイモ黄萎病ウイルス(PYDV)、イネ黄葉ウイルス(RYSV)、イネトランジトリーイエローイングウイルス(RTYV)、ソンカスイエローネットウイルス(SYNV)、ノゲシ黄色葉脈ウイルス(SYVV)、タロイモ葉脈退緑ウイルス(TaVCV)、ヨーロッパウナギウイルス(eel virus European X)(EVEX)、パーチラブドウイルス(PRV)、レイクトラウトラブドウイルス(LTRV)、Drosophila affinisシグマウイルス(DAffSV)、Drosophila ananassaeシグマウイルス(DAnaSV)、Drosophila immigransシグマウイルス(DImmSV)、Drosophila melanogasterシグマウイルス(DMelSV)、Drosophila obscuraシグマウイルス(DObsSV)、Drosophila tristisシグマウイルス(DTriSV)、Muscina stabulansシグマウイルス(MStaSV)、コイ春季ウイルス血症ウイルス(SVCV)、ソウギョラブドウイルス(GrCRV)、パイクフライラブドウイルス(PFRV)、テンチラブドウイルス(TenRV)、バコンゴウイルス(BASV)、コースタルプレーンズウイルス(CPV)、Ekpomaウイルス1(EKV-1)、Ekpomaウイルス2(EKV-2)、スウィートウォーターブランチウイルス(SWBV)、ビベンズアーム(Bivens Arm)ウイルス(BAV)、ティブロガルガン(Tibrogargan)ウイルス(TIBV)、ダラム(Durham)ウイルス(DURV)、クラマスウイルス(KLAV)、ツパイウイルス(TUPV)、レタスビッグベイン随伴ウイルス(LBVaV)、水疱性口内炎アラゴアスウイルス(VSAV)、アメリカコウモリベシクロウイルス(ABVV)、カラジャスウイルス(CJSV)、チャンディプラウイルス(CHPV)、球菌ウイルス(COCV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、イスファハンウイルス(ISFV)、ユロナウイルス(JURV)、マルパイススプリングウイルス(MSPV)、マラバウイルス(MARAV)、モアトン(Morreton)ウイルス(MORV)、水疱性口内炎ニュージャージーウイルス(VSNJV)、ペリネウイルス(PERV)、ピリーウイルス(PIRYV)、ラディウイルス(RADV)、ユグボグダノヴァツ(Yug Bogdanovac)ウイルス(YBV)、及びムサ(Moussa)ウイルス(MOUV)が含まれる。一例において、ウイルス感染は、牛流行熱ウイルス(BEFV)である。一例において、ウイルス感染は、トウモロコシモザイクウイルス(MMV)である。一例において、ウイルス感染は、イネ黄葉ウイルス(RYSV)である。一例において、ウイルス感染は、レタス壊死性黄変病ウイルス(LNYV)である。一例において、ウイルス感染は、狂犬病ウイルス(RABV)である。一例において、ウイルス感染は、感染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)である。一例において、ウイルス感染は、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)である。
【0132】
Orthomyxoviridae科のウイルスには、インフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型、インフルエンザウイルスC型、インフルエンザウイルスD型、伝染性サケ貧血症ウイルス、トゴトウイルス、及びクアラニア(Quaranja)ウイルスが含まれる。一例において、ウイルス感染は、インフルエンザウイルスA型である。
【0133】
Sunviridae科のウイルスには、サンシャインコースト(Sunshine Coast)ウイルス(SunCV)が含まれる。
【0134】
アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤
レニン-アンジオテンシン系(RAS)またはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)としても知られているアンジオテンシンIIシグナル伝達経路は、血漿ナトリウム濃度及び動脈圧の調節に関与するホルモン系である。血漿ナトリウム濃度が正常よりも低いまたは腎血流が低減されると、腎臓内の傍糸球体細胞がプロレニン(細胞内タンパク質)をレニンに変換し、これが、次いで循環系に直接分泌される。このレニンは、次いで、アンジオテンシノーゲンとして知られている血漿タンパク質からアンジオテンシンIを開裂する。アンジオテンシンIは、次いで、肺、及び腎臓の上皮細胞内で、全身の毛細血管の内皮細胞において見られるアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンIIに変換される。アンジオテンシンIIは、細動脈を収縮させて結果として動脈圧の増加を生じさせる強力な血管作動性ペプチドである。アンジオテンシンIIはまた、副腎皮質からのホルモンアルドステロンの分泌も刺激する。アルドステロンは、腎臓の尿細管上皮細胞に、細管の流体から血液内へのナトリウムイオンの再吸収を増加させると同時に、カリウムイオンを尿となる細管の流体内に排出させる。
【0135】
アンジオテンシンIIは、アンジオテンシン受容体の内因性リガンドである。アンジオテンシン受容体は、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路においてシグナル変換を担うGタンパク質共役受容体(GPCR)のクラスに属する。「受容体」という用語は、本明細書において使用されているとき、化学信号を受容して生物学的反応を生じるタンパク質分子を指す。一例において、受容体は、アンジオテンシン受容体である。
【0136】
アンジオテンシン受容体には2つのサブタイプ-アンジオテンシンI受容体及びアンジオテンシンII受容体-が存在することが知られている。アンジオテンシンII受容体には4つのサブタイプ-アンジオテンシンII受容体1型(AT)、アンジオテンシンII受容体2型(AT)、アンジオテンシンII受容体3型(AT)、及びアンジオテンシンII受容体4型(AT)-が存在することが知られている。
【0137】
アンジオテンシンIIシグナル伝達経路を中断または阻害することが知られている分子がある。本明細書において使用されているとき、「アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤」という用語は、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路を中断または阻害することが可能である剤を指す。アンジオテンシンIIシグナル伝達が阻害され得る3つの形態は;(1)アンジオテンシンII受容体の拮抗作用による、(2)アンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害による、及び(3)レニンの阻害によるものである。本明細書において使用されているとき、「拮抗すること」または「拮抗作用」という用語は、受容体に結合することによる生物学的反応の遮断または抑制を指す。「阻害すること」または「阻害」という用語は、本明細書において使用されているとき、標的の生物学的プロセス、例えば、細胞シグナル変換、細胞増殖、ウイルスの複製、及びウイルス感染に対しての任意の検出可能な負の効果を指す。典型的には、拮抗作用または阻害は、対照と比較したとき、標的のプロセス(例えば、アンジオテンシンIIシグナル伝達もしくはウイルス感染)における少なくとも10%、20%、30%、40%、もしくは50%の減少、または、上記で言及されている下流のパラメータのうちのいずれか1つにおいて反映される。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路は、アンジオテンシンII受容体の拮抗作用によって(すなわち、アンジオテンシンII受容体拮抗薬によって)中断または阻害される。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害によって(すなわち、ACE阻害剤によって)中断または阻害される。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路は、レニンの阻害によって(すなわち、レニン阻害剤によって)中断または阻害される。
【0138】
アンジオテンシンIIシグナル伝達経路のシグナル伝達を中断または阻害することが知られているかかる薬物は、多くの場合、小分子である。本明細書において使用されているとき、「小分子」という用語は、概して900ダルトン未満の分子量を有する有機分子を指す。より大きな分子、例えば、核酸、タンパク質及び多糖類などは、小分子とされない。当業者は、有機小分子が治療剤として特に有用であることを認識する。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、小分子である。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、小分子である。一例において、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は、小分子である。一例において、レニン阻害剤は、小分子である。
【0139】
代替の実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、抗体であり、例えば、アンジオテンシンII受容体と結合する抗体である。
【0140】
アンジオテンシンII受容体拮抗薬
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬である。本明細書において使用されているとき、「アンジオテンシンII受容体拮抗薬」という用語は、アンジオテンシンII受容体を遮断する分子を指す。アンジオテンシンII受容体拮抗薬はまた、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)とも称される。アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、アンジオテンシンII受容体の活性化を遮断することにより、アンジオテンシンIIが結合することを防止し、結果として、アンジオテンシンII受容体の生物活性を遮断する。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アンジオテンシンII受容体1型(AT)拮抗薬である。
【0141】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式Iによる構造を有する:
【化5】
【0142】
上記式Iの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0143】
式Iの化合物によると、Xは:
【化6】
からなる群から選択される。
【0144】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化7】
である。
【0145】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化8】
である。
【0146】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化9】
である。
【0147】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化10】
である。
【0148】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化11】
である。
【0149】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化12】
である。
【0150】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化13】
である。
【0151】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化14】
である。
【0152】
式Iの化合物によると、Yは:
【化15】
からなる群から選択される。
【0153】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化16】
である。
【0154】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化17】
である。
【0155】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化18】
である。
【0156】
式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、X及びY基の任意の組み合わせであってよいことが理解されよう。
【0157】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化19】
である。
【0158】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化20】
である。
【0159】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化21】
である。
【0160】
式Iの化合物によると、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0161】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化22】
である。
【0162】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化23】
である。
【0163】
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的に置換されている。
【0164】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化24】
である。
【0165】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化25】
である。
【0166】
上記単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されている。
【0167】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化26】
である。
【0168】
さらに、式Iの化合物によると、C1-10アルキル及びC2-20アルケニルは、それぞれ、式I内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0169】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化27】
である。
【0170】
一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、テルミサルタンである。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、カンデサルタンである。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ロサルタンである。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、イルベサルタンである。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、オルメサルタンである。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アジルサルタンである。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、フィマサルタンである。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、EXP-3174である。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、プラトサルタンである。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、TCV-116である。一例において、式IによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、タソサルタンである。
【0171】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式IIによる構造を有する:
【化28】
【0172】
上記式IIの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0173】
式IIの化合物によると、Zは、5または6員の単環式炭素環式または単環式複素環式である。
【0174】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化29】
である。
【0175】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化30】
である。
【0176】
Z基において2つの置換基、すなわち、R及びRの両方を常に有し得るという訳ではないことが認識されよう。しかし、式IIのZ基が、2つの置換基の最大、すなわち、R及びRの両方を有することが理解されよう。
【0177】
式IIの化合物によると、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0178】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化31】
である。
【0179】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化32】
である。
【0180】
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的に置換されている。
【0181】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化33】
である。
【0182】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化34】
である。
【0183】
上記単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されている。
【0184】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化35】
である。
【0185】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化36】
である。
【0186】
さらに、式IIの化合物によると、C1-10アルキル及びC2-20アルケニルは、それぞれ、式II内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0187】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化37】
である。
【0188】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化38】
である。
【0189】
一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、EMA401である。一例において、式IIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、PD123319である。
【0190】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式IIIによる構造を有する:
【化39】
【0191】
上記式IIIの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0192】
式IIIの化合物によると、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0193】
一例において、式IIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化40】
である。
【0194】
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的に置換されている。
【0195】
一例において、式IIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化41】
である。
【0196】
上記単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されている。
【0197】
一例において、式IIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化42】
である。
【0198】
さらに、式IIIの化合物によると、C1-10アルキル及びC2-20アルケニルは、それぞれ、式III内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0199】
一例において、式IIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化43】
である。
【0200】
一例において、式IIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、サプリサルタンである。
【0201】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式IVによる構造を有する:
【化44】
【0202】
上記式IVの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0203】
式IVの化合物によると、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0204】
一例において、式IVによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化45】
である。
【0205】
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的に置換されている。
【0206】
一例において、式IVによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化46】
である。
【0207】
上記単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されている。
【0208】
一例において、式IVによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化47】
である。
【0209】
さらに、式IVの化合物によると、C1-10アルキル及びC2-20アルケニルは、それぞれ、式IV内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0210】
一例において、式IVによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化48】
である。
【0211】
一例において、式IVによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、エプロサルタンである。
【0212】
「1つ以上」を参照して、式I、II、III、またはIVにおいて上記で称されている任意選択的なヘテロ原子または置換基のいずれかは、別途記述されない限り、任意の整数、例えば、1、2、3、4、5、6など、または例えば1~6の置換基、1~3の置換基、もしくは1~2の範囲の置換基であってよいことが認識されよう。
【0213】
多くの小分子アンジオテンシンII受容体拮抗薬、具体的にはアンジオテンシンAT拮抗薬が存在することが知られており、AT拮抗薬が市場に届いている例がある。例として、限定されないが、ロサルタン(商品名Cozaar)、カンデサルタン(Atacand)、バルサルタン(Diovan/Exforge)、イルベサルタン(Avapro)、テルミサルタン(Micardis)、エプロサルタン(Teventen)、オルメサルタン(Benicar/Olmetec)、アジルサルタン(Edarbi)、及びフィマサルタン(Kanarb)が挙げられる。他の例として、限定されないが、サプリサルタン、EXP-3174、プラトサルタン、EMA401、TCV-116、PD123319、及びタソサルタン(表1)が挙げられる。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、ロサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、カンデサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、バルサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、イルベサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、テルミサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、エプロサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、オルメサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、アジルサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、フィマサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、サプリサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、EXP-3174である。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、プラトサルタンである。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、EMA401である。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、TCV-116である。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、PD123319である。一例において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、タソサルタンである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0214】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤である。本明細書において使用されているとき、「アンジオテンシン変換酵素阻害剤」という用語は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の生物活性を阻害する分子を指す。アンジオテンシン変換酵素(ACE)は、生物活性アンジオテンシンIIへのアンジオテンシンIの変換を担う。
【0215】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式Vによる構造を有する:
【化49】
【0216】
上記式Vの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0217】
式Vの化合物によると、Wは:
【化50】
からなる群から選択される。
【0218】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化51】
である。
【0219】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化52】
である。
【0220】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化53】
である。
【0221】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化54】
である。
【0222】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化55】
である。
【0223】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化56】
である。
【0224】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化57】
である。
【0225】
式Vの化合物によると、Wは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、C1-10アルキルC1-10シクリル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によって任意選択的にさらに置換されていてよい。
【0226】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化58】
である。
【0227】
式Vの化合物によると、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0228】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化59】
である。
【0229】
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、及びアミノカルボニルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されている。
【0230】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化60】
である。
【0231】
さらに、式Vの化合物によると、C1-10アルキル、C2-20アルケニル、及びC1-10アルキルアリールは、それぞれ、式V内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0232】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化61】
である。
【0233】
一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、キナプリルである。一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、イミダプリルである。一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、エナラプリルである。一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ラミプリルである。一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ペリンドプリルである。一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、トランドラプリルである。一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、リシノプリルである。一例において、式VによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、モエキシプリルである。
【0234】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式VIによる構造を有する:
【化62】
【0235】
上記式VIの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0236】
式VIの化合物によると、Wは:
【化63】
からなる群から選択される。
【0237】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化64】
である。
【0238】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化65】
である。
【0239】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化66】
である。
【0240】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化67】
である。
【0241】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化68】
である。
【0242】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化69】
である。
【0243】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化70】
である。
【0244】
式VIの化合物によると、Wは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、C1-10アルキルC1-10シクリル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によって任意選択的にさらに置換されていてよい。
【0245】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化71】
である。
【0246】
式VIの化合物によると、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0247】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化72】
である。
【0248】
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、及びアミノカルボニルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されている。
【0249】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化73】
である。
【0250】
さらに、式VIの化合物によると、C1-10アルキル、C2-20アルケニル、及びC1-10アルキルアリールは、それぞれ、式VI内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0251】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化74】
である。
【0252】
一例において、式VIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、フォシノプリルである。
【0253】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式VIIによる構造を有する:
【化75】
【0254】
上記式VIIの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0255】
式VIIの化合物によると、Wは:
【化76】
からなる群から選択される。
【0256】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化77】
である。
【0257】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化78】
である。
【0258】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化79】
である。
【0259】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化80】
である。
【0260】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化81】
である。
【0261】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化82】
である。
【0262】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化83】
である。
【0263】
式VIIの化合物によると、Wは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、C1-10アルキルC1-10シクリル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によって任意選択的にさらに置換されていてよい。
【0264】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化84】
である。
【0265】
式VIIの化合物によると、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0266】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化85】
である。
【0267】
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、及びアミノカルボニルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されている。
【0268】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化86】
である。
【0269】
さらに、式VIIの化合物によると、C1-10アルキル、C2-20アルケニル、及びC1-10アルキルアリールは、それぞれ、式VII内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0270】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化87】
である。
【0271】
一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、シラザプリルである。一例において、式VIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ベナゼプリルである。
【0272】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式VIIIによる構造を有する:
【化88】
【0273】
上記式VIIIの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0274】
式VIIIの化合物によると、Wは:
【化89】
からなる群から選択される。
【0275】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は:
【化90】
である。
【0276】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化91】
である。
【0277】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化92】
である。
【0278】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化93】
である。
【0279】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化94】
である。
【0280】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化95】
である。
【0281】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化96】
である。
【0282】
式VIIIの化合物によると、Wは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、C1-10アルキルC1-10シクリル、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式から選択される1つ以上の置換基によって任意選択的にさらに置換されていてよい。
【0283】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化97】
である。
【0284】
式VIIIの化合物によると、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0285】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化98】
である。
【0286】
上記C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、及びアミノカルボニルから選択される1つ以上の置換基によってそれぞれ任意選択的にさらに置換されている。
【0287】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化99】
である。
【0288】
さらに、式VIIIの化合物によると、C1-10アルキル、C2-20アルケニル、及びC1-10アルキルアリールは、それぞれ、式VIII内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0289】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化100】
である。
【0290】
一例において、式VIIIによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ゾフェノプリルである。
【0291】
「1つ以上」を参照して、式V、VI、VII、またはVIIIにおいて上記で称されている任意選択的なヘテロ原子または置換基のいずれかは、別途記述されない限り、任意の整数、例えば、1、2、3、4、5、6など、または例えば1~6の置換基、1~3の置換基、もしくは1~2の範囲の置換基であってよいことが認識されよう。
【0292】
多くの小分子アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤が存在することが知られており、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤が市場に届いている例がある。例として、限定されないが、カプトプリル(商品名Capoten)、キナプリル(Accupril)、イミダプリル(Tanatril)、ゾフェノプリル(Bifril/Zofenil)、エナラプリル(Vasotec/Renitec/Berlipril/Enap/エナラプリル/Profarma)、シラザプリル(Inhibace)、ラミプリル(Altace/Prilace/Ramace/Ramiwin/Triatec/Tritace)、ベナゼプリル(Lotensin)、ペリンドプリル(Coversyl/Aceon/Perindo)、トランドラプリル(Mavik/Odrik/Gopten)、リシノプリル(Listril/Lopril/Novatec/Prinivil/Zestril/Lisidigal)、フォシノプリル(Fositen/Monopril)、及びモエキシプリル(Univasc)(表2)が挙げられる。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、カプトプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、キナプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、イミダプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ゾフェノプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、エナラプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、シラザプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ラミプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ベナゼプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ペリンドプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、トランドラプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、リシノプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、フォシノプリルである。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、モエキシプリルである。一例において、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は、カプトプリルである。
【表2-1】
【表2-2】
【0293】
レニン阻害剤
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、レニン阻害剤である。本明細書において使用されているとき、「レニン阻害剤」という用語は、レニンの生物活性を阻害する分子を指す。アンジオテンシノーゲナーゼとしても知られているレニンは、アンジオテンシンIへのアンジオテンシノーゲンの加水分解を担う腎臓によって分泌されるタンパク質及び酵素である。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、レニン阻害剤である。
【0294】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、式IXによる構造を有する:
【化101】
【0295】
上記式IXの化合物は、以下のようにさらに記載され得る。
【0296】
式IXの化合物によると、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、スルホニル、アルデヒド、アルカノイル、アロイル、アルカノエート、アリーロエート、オキシカルボニル、アミノカルボニル、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C1-10アルキルアリール、単環式または多環式炭素環式、及び単環式または多環式複素環式からなる群から選択される。
【0297】
一例において、式IXによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化102】
である。
【0298】
さらに、式IXの化合物によると、C1-10アルキル、C2-20アルケニル、及びC1-10アルキルアリールは、それぞれ、式IX内のいずれに現れていても、O、N及びSから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断されていてよい。
【0299】
一例において、式IXによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は
【化103】
である。
【0300】
一例において、式IXによるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アリスキレンである。
【0301】
「1つ以上」を参照して、式IXにおいて上記で称されている任意選択的なヘテロ原子または置換基のいずれかは、別途記述されない限り、任意の整数、例えば、1、2、3、4、5、6など、または例えば1~6の置換基、1~3の置換基、もしくは1~2の範囲の置換基であってよいことが認識されよう。
【0302】
小分子レニン阻害剤が存在し、かつ、市場に届いていることが知られている。この例は、アリスキレン(商品名Tekturna/Rasilez)(表3)である。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、アリスキレンである。一例において、レニン阻害剤は、アリスキレンである。
【表3】
【0303】
処置の方法
驚くべきことに、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路を阻害することが、Mononegaviralesウイルス感染を処置または防止する方法を提供することが見出された。具体的には、驚くべきことに、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路を阻害することが、Mononegaviralesウイルスに感染した細胞におけるウイルスRNA複製を遮断することが見出された。いくつかの実施形態において、対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止する方法であって、有効量のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を投与することを含み、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、ウイルスRNA複製を遮断する、上記方法を提供する。一例において、対象におけるMononegaviralesウイルス感染を処置または防止する方法であって、有効量のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0304】
事前のまたは他の健康状態
いくつかの実施形態において、対象は、ウイルス感染以外の事前の健康状態を有していても有していなくてもよい。アンジオテンシンIIシグナル伝達経路は、血圧及び心臓事象の調節に関連しており、結果として、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路の阻害剤が、かかる疾患、例えば、内皮機能不全、高血圧(例えば、高い血圧)、糖尿病性腎症、及び鬱血性心不全を含めた処置において投与される。かかる事前の健康状態は、ウイルス感染に関連していても、関連していなくてもよい。すなわち、対象は、事前の健康状態の罹患とは独立してウイルス感染に罹っていてよく、または、対象は、ウイルス感染に関連する事前の健康状態に罹患していてよい。一例において、ウイルス感染を有する対象は、事前の状態に罹患していない。一例において、ウイルス感染を有する対象は、事前の状態に罹患している。
【0305】
事前の健康状態は、医師によって診断されていても、診断されていなくてもよい。すなわち、ウイルス感染を有する対象は、診断されていない事前の健康状態に罹患していてよい。一例において、ウイルス感染を有する対象は、診断された事前の状態に罹患している。一例において、ウイルス感染を有する対象は、診断されていない事前の状態に罹患している。
【0306】
対象は、ウイルス感染に罹ったときに、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路に関連する状態(例えば、内皮機能不全、高血圧、糖尿病性腎症、及び鬱血性心不全)の処置のためにアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤(例えば、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、レニン阻害剤)が投与されていることが可能である。一例において、対象は、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路に関連する状態について処置されている。他の場合に、対象は、ウイルス感染に罹ったときに、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路に関連する状態(例えば、内皮機能不全、高血圧、糖尿病性腎症、及び鬱血性心不全)に罹患していないことが可能である。一例において、対象は、アンジオテンシンIIシグナル伝達経路に関連する状態(例えば、内皮機能不全、高血圧、糖尿病性腎症、及び鬱血性心不全)について処置されていない。一例において、対象は、内皮機能不全について処置されていない。一例において、対象は、高血圧について処置されていない。一例において、対象は、糖尿病性腎症について処置されていない。一例において、対象は、鬱血性心不全について処置されていない。
【0307】
投与
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、種々の経路、例えば、経口、局所、皮下、経皮、筋肉内、静脈内、または腹腔内によって対象に投与される。いくつかのアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤(例えば、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、レニン阻害剤)は、経口送達用で市場に出されている。すなわち、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、及びレニン阻害剤の大部分が、経口投与可能であるとして市場に出されている。そのため、かかる公知の薬物は、適切な特性、すなわち、薬物動態及び物理化学特性を示して、経口投与の際に生物薬剤学的に活性であることが認識される。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、対象に経口投与される。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、対象に静脈内投与される。
【0308】
同様に、かかる公知の薬物は、具体的な投薬量で規定されている。例えば、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、テルミサルタンは、高血圧の処置について規定されており、20mg、40mg、及び80mgの経口投薬量として利用可能である。ウイルス感染の処置において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、例えば、高血圧の処置におけるテルミサルタンにおいて、そのこれまでに知られている処置使用に関して規定されている投薬量で投与されてよく、または、そのこれまでに知られている処置使用に関して規定されている量とは異なる投薬量で投与されてよい。すなわち、ウイルス感染の処置のために投与される必要があるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の投薬量は、そのこれまでに知られている処置使用に関して規定されている投薬量とは無関係である。一例において、ウイルス感染の処置のために投与される必要があるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の量は、そのこれまでに知られている処置使用に関して規定されている投薬量とは無関係である。
【0309】
同様に、かかる公知の薬物は、具体的な投薬レジメンで規定されている。例えば、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、テルミサルタンは、1日1回40mgの用量として最初に高血圧の処置について規定されており、1日1回が80mgまで増加され得る。ウイルス感染の処置において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、例えば、高血圧の処置におけるテルミサルタンにおいて、そのこれまでに知られている処置使用に関して規定されている投薬レジメンに従って投与されてよく、または、そのこれまでに知られている処置使用に関して規定されているものと異なる投薬レジメンに従って投与されてよい。すなわち、ウイルス感染の処置のために投与される必要があるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の投薬レジメンは、そのこれまでに知られている処置使用に関して規定されている投薬レジメンとは無関係である。
【0310】
一例において、ウイルス感染の処置のために投与されるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の投薬レジメンは、そのこれまでに知られている処置使用に関して規定されている投薬レジメンとは無関係である。
【0311】
併用療法
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ウイルス感染の処置または防止のための単一の治療として対象に投与される。すなわち、テルミサルタンなどの単一のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が、ウイルス感染の処置または防止のために対象に投与される。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ウイルス感染の処置または防止のための単一の治療として対象に投与される。
【0312】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤は、ウイルス感染の処置または防止のための併用療法として対象に投与される。すなわち、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の組み合わせ、例えば、テルミサルタン及びカンデサルタンは、ウイルス感染の処置または防止のために対象に投与される。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の組み合わせは、ウイルス感染の処置または防止のために対象に投与される。
【0313】
アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の組み合わせには、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10個の異なるアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が含まれる。一例において、2つのアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の組み合わせが、ウイルス感染の処置のために対象に投与される。一例において、3つのアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の組み合わせが、ウイルス感染の処置のために対象に投与される。
【0314】
アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の組み合わせは、同じクラスからの阻害剤(すなわち、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアンジオテンシンII受容体拮抗薬)を含んでいてよい。代替的には、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の組み合わせは、1つ以上の異なるクラスからの阻害剤を含んでいてよい。一例において、1つ以上のアンジオテンシンII受容体拮抗薬及び1つ以上のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の組み合わせが規定されている。一例において、1つ以上のアンジオテンシンII受容体拮抗薬及び1つ以上のレニン阻害剤の組み合わせが規定されている。一例において、1つ以上のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤及び1つ以上のレニン阻害剤の組み合わせが規定されている。アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の全ての可能な組み合わせが、ウイルス感染の処置において規定され得ることが理解されよう。例えば、2つのアンジオテンシンII受容体拮抗薬及び1つのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の組み合わせが規定されている。一例において、テルミサルタン及びカンデサルタンの組み合わせが、ウイルス感染の処置または防止のために対象に投与される。
【0315】
いくつかの実施形態において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤、またはその組み合わせが、別の抗ウイルス化合物と組み合わせて、ウイルス感染の処置または防止のための治療として対象に投与される。かかる他の抗ウイルス化合物には、例えば、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、アンプリゲン、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル、シドホビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エコリエベル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサビル、ニタゾキサニド、ノビル、オセルタミビル、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、ピラミジン、サキナビル、ソホスブビル、スタブジン、テラプレビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、及びジドブジンが含まれる。任意の2つ以上の他の抗ウイルス化合物の組み合わせが、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤と共に投与されてよい。別の抗ウイルス化合物の全ての組み合わせと組み合わせて、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の全ての可能な組み合わせが、ウイルス感染の処置において規定され得ることが理解されよう。一例において、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤及び別の抗ウイルス薬の組み合わせが、ウイルス感染の処置または防止のために対象に投与される。一例において、テルミサルタン及び別の抗ウイルス化合物の組み合わせが、ウイルス感染の処置または防止のために対象に投与される。一例において、テルミサルタン、カンデサルタン及び別の抗ウイルス化合物の組み合わせが、ウイルス感染の処置または防止のために対象に投与される。
【0316】
処方物
当業者は、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤が対象への投与のための医薬組成物中に適宜処方されていてよいことを認識するであろう。医薬組成物は、種々の薬物送達系での使用に好適であり得る。本開示での使用に好適な処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)に見出され得る。薬物送達のための方法の簡単なレビューについては、Langer(1990)を参照されたい。
【0317】
アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を含有する医薬組成物の調製に、不活性かつ薬学的に許容可能な担体が使用される。本明細書において使用されているとき、「薬学的に許容可能な担体」という用語には、薬剤投与に適合する、ありとあらゆる固体または溶媒(例えば、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、水、生理食塩水)分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容可能な担体は、組成物の他の成分と適合可能でありかつそのレシピエントに有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。医薬担体は、固体または液体のいずれであってもよい。固体形態の調製物には、例えば、散剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェー、及び坐剤が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、または錠剤崩壊剤としても作用し得る1つ以上の物質であり得;カプセル化材であることもできる。散剤では、担体が、概して、微粉化された活性構成要素との混合物中にある微粉化された固体である。錠剤では、有効成分(アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤)が、好適な割合で所要の結合特性を有しかつ所望の形状及びサイズに成型されている担体と混合されている。
【0318】
薬学的に許容可能な担体の量は、当業者が担体とは異なるとして分類するであろう化合物及びいずれか他の任意選択的な成分(例えば、他の活性剤)のレベルに依る。本発明の処方物は、例えば、組成物の約5%~99.99%、または25%~約99.9%または30%~90重量%の薬学的に許容可能な担体を含んでいてよい。薬学的に許容可能な担体は、他の補助薬の非存在下で、組成物の残りを形成していてよい。
【0319】
薬学的に許容可能な担体の量は、当業者が担体とは異なるとして分類するであろう化合物及び任意の他の任意選択的な成分(例えば、他の活性剤)のレベルに依る。本発明の処方物は、例えば、組成物の約5%~99.99%、または25%~約99.9%または30%~90重量%の薬学的に許容可能な担体を含んでいてよい。薬学的に許容可能な担体は、他の補助薬の非存在下で、組成物の残りを形成していてよい。
【0320】
任意選択的に、本開示の医薬組成物は、他のさらなる構成要素、例えば治療的及び/または予防的成分をさらに含む。本発明は、そのため、さらなる態様において、本発明の化合物、1つ以上の薬学的に許容可能な担体を1つ以上の他の活性剤と共に含む医薬組成物に関する。概して、医薬組成物に存在する他の活性剤の量は、組成物において単独でまたは他の成分と組み合わせてのいずれかでさらなる利益を付与するのに十分である。
【0321】
これらの任意選択的な構成要素は、治療的もしくは審美的利益または想定される作用形態によってカテゴリー化されてよいことが当業者によって理解されよう。しかし、これらの任意選択的な構成要素は、いくつかの場合において、1を超える治療的もしくは審美的利益を付与し、または1を超える作用形態を介して作動し得ることも理解されよう。そのため、本明細書における分類は、便宜上なされており、構成要素をその列挙されている具体的な用途(複数可)に限定することは意図されていない。また、適用される場合、構成要素の薬学的に許容可能な塩は、本明細書において有用である。
【0322】
他の活性剤が本発明の医薬処方物に存在するとき、化合物の用量は、他のさらなる構成要素が存在しないときに用いられるものと同じであっても異なっていてもいずれでもよい。適切な用量は、当業者によって容易に認識されよう。
【0323】
坐剤の形態の医薬組成物の調製では、低融点ワックス、例えば、脂肪酸グリセリド及びココアバターの混合物をまず溶融し、これに有効成分を例えば撹拌によって分散させる。溶融した均一な混合物を次いで便利なサイズの金型に注ぎ、冷却及び固化させる。
【0324】
散剤及び錠剤は、約5%~約70重量%の間の、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の有効成分を含有していてよい。好適な担体には、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが含まれる。
【0325】
医薬組成物は、担体としてのカプセル化材とのアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の活性化合物の処方物を含み、当該阻害剤(他の担体と共にまたはこれを用いずに)が担体によって包囲されて、その結果、担体がこれにより当該化合物と会合するようになっている、カプセルを付与し得る。同様に、カシェーも含まれ得る。錠剤、散剤、カシェー、及びカプセルは、経口投与に好適な固体剤形として使用され得る。
【0326】
液体医薬組成物には、例えば、経口または非経口投与に好適な溶液、経口投与に好適な懸濁液及びエマルジョンが含まれる。活性構成要素(例えば、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤)の滅菌水溶液、または水、緩衝用水、生理食塩水、PBS、エタノール、もしくはプロピレングリコールを含む溶媒中の活性構成要素の滅菌溶液は、非経口投与に好適な液体組成物の例である。組成物は、適切な生理条件に必要とされる薬学的に許容可能な補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、洗浄剤などを含有していてよい。
【0327】
滅菌溶液は、活性構成要素(例えば、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤)を所望の溶媒系に溶解し、次いで、得られる溶液にメンブランフィルタを通過させてこれを滅菌することによって、または、代替的には、滅菌条件下で先に滅菌された溶媒に滅菌化合物を溶解することによって調製され得る。得られる水溶液は、そのまま使用のためにパッケージングされても、凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は、投与の前に、滅菌した水性担体と合わされる。調製物のpHは、典型的には、3と11との間、例えば5~9、7~8である。
【0328】
医薬組成物の単回または複数回投与は、用量レベル及びパターンが処置施術者によって選択されて実施され得る。いずれの事象においても、医薬処方物は、患者におけるウイルス感染を有効に処置または防止するのに十分な量のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を付与すべきである。
【0329】
医薬目的で使用されるとき、アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤阻害剤は、概して、好適な緩衝剤中に処方されてよく、当該緩衝剤は、いずれの薬学的に許容可能な緩衝剤、例えば、リン酸緩衝生理食塩水またはリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、トリス緩衝剤、グリシン緩衝剤、滅菌水、及び、例えば、Good et al.(1966)によって記載されている、当業者に公知の他の緩衝剤であってよい。
【0330】
組成物は、安定剤、エンハンサ、または他の薬学的に許容可能な担体もしくはビヒクルを付加的に含み得る。薬学的に許容可能な担体は、例えば化合物を安定化させるために作用する生理的に許容可能な化合物を含有し得る。生理的に許容可能な化合物には、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストラン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸もしくはグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定剤もしくは賦形剤が含まれ得る。他の生理的に許容可能な化合物には、微生物の成長または作用を防止するのに特に有用である、湿潤剤、乳化剤、分散剤または防腐剤が含まれる。種々の防腐剤は周知であり、これには、例えば、フェノール及びアスコルビン酸が含まれる。担体、安定剤またはアジュバントの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)に見出され得る。
【0331】
アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を含有する処方物は、当業者に公知の任意の送達方法を使用して任意の組織または器官に送達され得る。これらは、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、もしくは腫瘍内注射、または経口摂取用もしくは局所適用用に処方され得る。
【0332】
処方物の有効な投薬量は、投与手段、標的部位、患者の生理状態、及び投与される他の薬剤を含めた多くの異なる因子によって変動するであろう。そのため、処置投薬量は、安全性及び効能を最適化するように漸増される必要があろう。投与される化合物の有効量を決定する際、医師は、使用されている具体的な化合物、診断されている疾患;患者の年齢、体重、及び全身状態、循環血漿レベル、ベクターの毒性、疾患の進行、ならびに抗ベクター抗体の産生を評価すべきである。用量のサイズはまた、具体的なベクターの投与に付随する任意の副作用の存在、性質及び程度によっても決定されよう。用量は、概して、体重のキログラム当たり約0.01及び約100μgの間、例えば体重のキログラム当たり約0.1及び約50μgの間の範囲であってよい。
【0333】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、治療有効量のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を含む。医薬組成物中のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の含有量は、例えば、医薬組成物の約0.1%~約100%w/wである。一例において、医薬組成物は、治療有効量のアンジオテンシンII受容体拮抗薬を含む。一例において、医薬組成物は、治療有効量のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤を含む。一例において、医薬組成物は、治療有効量のレニン阻害剤を含む。一例において、医薬組成物は、治療有効量のテルミサルタンを含む。一例において、医薬組成物は、治療有効量のカンデサルタンを含む。一例において、医薬組成物は、治療有効量のアンジオテンシンII受容体拮抗薬及び別の抗ウイルス化合物を含む。
【0334】
本開示は、獣医及びヒト医療用途の両方のための医薬処方物または組成物を提供し、これは、1つ以上のアンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤を含み、1つ以上の他の抗ウイルス化合物または本明細書に記載されているその任意の実施形態もしくはその任意の薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の薬学的に許容可能な担体及び/または賦形剤、及び任意選択的に任意の他の治療的成分、安定剤などと組み合わされても、組み合わされなくてもよい。
【0335】
担体(複数可)または賦形剤は、他の成分、例えば、糖、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、デキストレート(例えば、シクロデキストリン、例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、ならびにペクチンと適合可能であるという意味で薬学的に許容可能でなければならない。組成物は、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、滑沢剤、防腐剤(抗酸化剤を含む)、香味剤、矯味剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味料、帯電防止剤、ソルビタンエステル、脂質(例えば、リン脂質、例えば、レシチンならびに他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸及び脂肪酸エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))、ならびにキレート剤(例えば、EDTA、亜鉛及び他のかかる好適なカチオン)をさらに含んでいてよい。組成物での使用に好適な他の医薬賦形剤及び/または添加剤は、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、19.sup.th ed.,Williams & Williams,(1995)、及び「Physician’s Desk Reference」、52.sup.nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998)、及び「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、Third Ed.,Ed.A.H.Kibbe,Pharmaceutical Press,2000に列挙されている。
【0336】
本開示を、説明目的のみであり非限定的である以下の例を参照してさらにここで説明する。例は、図を参照する。
【実施例0337】
実施例1-アンジオテンシンIIシグナル伝達阻害剤の抗ウイルス特性
材料及び方法
細胞:HeLa細胞(ATCC CCL-2)を、成長培地(10%(v/v)ウシ胎児血清(FCS)、10mM HEPES、2mM L-グルタミン、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを補充したEMEMにおいて保持した。アフリカミドリザル腎臓上皮Vero細胞(ATCC CRL-81)を、10%(v/v)FCS、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを補充したDMEMにおいて保持した。全ての細胞を5%CO/95%空気雰囲気下37℃でインキュベートした。
【0338】
ウイルス:全てのウイルス学の研究をCSIRO Australian Animal Health Laboratoryにおいて行った。HeV(Hendra virus/horse/1994/Hendra)、NiV(Nipah virus/Malaysia/human/99)及びRSV(株A2)をVero細胞において継代させた。インフルエンザA/WSN/33(H1N1)(厚意による提供、Professor Lorena Brown,University of Melbourne)を、10日間孵化した特定病原体除去鶏卵(Australian SPF Services,Cadello,VIC,Australia)の尿膜腔液において継代させた。全てのウイルスをアリコートし、植菌用に-80℃で保存した。
【0339】
化学化合物スクリーニング:専門会社の化学化合物ライブラリのスクリーニングをWalter and Eliza Hall Institute High Throughput Chemical Screening Facility(Bundoora,Australia)と共同で実施した。ライブラリは、4つのサブライブラリ:エピジェネティックス(77化合物)、キナーゼ阻害剤(210化合物)、公知の薬物(3707化合物)及び標的化された薬剤(73化合物);からなった。公知の薬物のライブラリは、3つの市販のライブラリ:Tocris,Prestwick及びLOPAC;のコンパイルである。化合物をQueensland Compound Library(Queensland,Australia)から得、384ウエル、黒壁、無色の底の組織培養プレートにおいて原液のジメチルスルホキシド(DMSO)中で保存した。陽性対照をプレート毎に含ませた。E64D(Sigma#E8640)及びカルパイン阻害剤II(Sigma#A6060)を2μΜ及び10μΜでアッセイした。両方の分子は、Pager and Dutch(2005)に記載されているように、HeV融合タンパク質の切断及び活性化に必要とされるカテプシンLプロテアーゼを阻害する。
【0340】
HeLa細胞(4000細胞/ウエル)を、BioTek406液体取り扱いロボット(BioTek,Winooski,VT)を使用して化合物を含有するプレートに添加した。1時間後、細胞をバイオセーフティーレベル(BSL-4)でHeV(感染の多重度:24時間で0.1)に感染させた。この後、細胞を4%パラホルムアルデヒドによって2時間固定し、BSL-4から除去し、免疫染色して、HeV抗原を検出した。細胞をPBS中0.1% Triton X-100(Sigma)に10分間透過させ、非特異的結合をPBS中0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)で30分間遮断した。ウサギ抗HeV核タンパク質(HeV-N)抗体(AAHL)をPBS-BSA中1:1000で希釈し、細胞において1時間インキュベートした後、3×5分間PBS洗浄し、PBS-BSA中1:200において抗ウサギAlexa Fluor 488抗体(A11008,Life Technologies)によって1時間インキュベートした。細胞をPBSで3×5分間PBS洗浄し、次いで、核染色法の4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)(Invitrogen,Carlsbad,CA;1μg/ml)によってPBS中で20分間染色した。細胞を、エッジを除く画像化したウエル当たり全てのフィールドについて、20倍対物レンズを使用するCellInsight Personal Cell Imager(Thermo Scientific)を使用して画像化した。感染細胞の百分率、感染細胞当たりの平均蛍光、及びウエル当たりの細胞核の数を、Target Activation bioapplication of the Cellomics Scan software(iDev workflow)(Thermo Fisher,Waltham,MA)を使用して定量した。
【0341】
組織培養感染用量(TCID50)分析:TCID50アッセイを、Deffrasnes et al.(2016)及びFoo et al.(2016)において記載されているように実施した。感染ウイルス力価を次いでReed and Muench(1938)において記載されているように算出した。
【0342】
定量リアルタイムPCR:HeV RNA用の定量RT-PCRを、Deffrasnes et al.(2016)及びFoo et al.(2016)において記載されているように実施した。
【0343】
細胞間融合アッセイ:HeV-F及び-G媒介融合アッセイを、Deffrasnes et al.(2016)及びFoo et al.(2016)において記載されているように実施した。
【0344】
細胞生存率:40nM siRNAにより96-ウエルプレートにおいてトランスフェクトした細胞を72時間固定し、4%パラホルムアルデヒドでポストトランスフェクトした。細胞核を次いで4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)核染色法(Invitrogen)を使用して染色し、処置群当たりの生存可能な核の数を、CellInsight Personal Cell Imager(Thermo Scientific,Waltham,MA)を使用して定量した。
【0345】
統計:2つの群の間の差を両側スチューデントt検定によって統計的に分析した。<0.05のp値を有意とみなした。**p<0.01、p<0.05、N.S.有意差なし。全てのデータ点が3回の平均であり、エラーバーは標準偏差を表している。全てのデータは、少なくとも2つの別個の実験を代表するものである。
【0346】
結果
HeV感染の阻害剤についての薬物ライブラリのスクリーニング:4,148の化学化合物のライブラリをHeLa細胞におけるHeV感染の阻害についてスクリーニングした。化合物を、各処置群について単一のウエルを用いて、1μΜ及び10μΜの最終濃度でアッセイした。細胞を化合物によって1時間インキュベートし、続いて、BSL-4実験室において野生型HeVに24時間感染させた。感染後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで2時間固定し、BSL-3実験室に除去し、ここで、細胞を抗体で染色してHeV抗原を検出し、DAPI核染色により、無数の細胞数とした。このプロセルのワークフローを図1Aに示す。
【0347】
陰性及び陽性対照を使用してHeV阻害を評価し、ウエル当たりの基準で読み取った堅牢性をアッセイした。HeV感染を低減するための陽性対照として、細胞を、カテプシンL、E64D及びカルパイン阻害剤IIの2つの化学化合物阻害剤によって10μΜで別個にインキュベートした。陰性対照として、細胞を、適切なレベルの化合物希釈剤(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈したDMSO)によってインキュベートした。スクリーニングに使用したHeVの多重度の感染がいくらかの細胞死を結果として引き起こすため(図1B)、ウイルスを阻害した化合物は、陰性対照ウエルと比較して、ウエル当たりの細胞数の増加及びウエル当たりのウイルス抗原レベルの減少を結果として引き起こした(図1B)。これらの結果は、カルパイン阻害剤IIが、ウイルス誘発の細胞死及びウイルスタンパク質合成を阻害する際のE64Dよりも有効であったことを示した。
【0348】
スクリーニングから得られた細胞数/ウエルの正規化した図を図1Cに示す。細胞数の百分率及びウイルス抗原レベルの百分率をDMSO(陰性対照)及びカルパイン阻害剤II(10μΜ)(陽性対照)に下方(0%)及び上方(100%)シグナルとしてそれぞれ正規化する。
【0349】
テルミサルタンはHeV及び他の陰性ストランドRNAウイルスによる感染を阻害する:スクリーニングは、HeV及び関連するウイルスに対する新規の抗ウイルス療法としてテルミサルタンを同定した。HeV感染に対するテルミサルタンの影響は、これまでに記載されている抗ウイルス特性の報告がないことを前提として、魅力的であった。テルミサルタンは、ヒト使用について公知の毒性及び安全性プロファイルを有する経口活性化合物であるため、ウイルス感染へのその影響をより詳細に調査した。まず、感染野生型HeVの産生に対してのテルミサルタンの影響を評価した。テルミサルタンは、用量依存性でHeV感染を阻害した(図2A)。HeV力価の有意な低減(~95%)は、最も高いテルミサルタンレベル(50μΜ)で処理した細胞による感染後24時間で収集した上清において観察された。
【0350】
細胞の健康に対するテルミサルタンの影響を次に評価した。抗ウイルス活性を結果として生じさせる濃度でのテルミサルタンによるHeLa細胞の処理は、細胞数への穏やかな影響を示した(図2B)。Alamar blueアッセイは、等しいレベルのビヒクルまたは培地によって処理した細胞と比較して、テルミサルタンによって26時間処理した細胞における代謝活性の有意な変化を示さなかった(図2C)。
【0351】
他のパラミクソウイルス感染をテルミサルタンによって遮断することができたか否かを次に調査した。Paramyxoviridae科のメンバーを2つの亜科(Paramyxovirinae及びPneumovirinae)に分割した。HeV及びNiVは、Paramyxovirinae亜科におけるHenipavirus属に属している。同じ亜科において異なる属に属しているウイルス:ニパウイルス、及びPneumoviridae亜科、RSV(ニューモウイルス属)に属しているウイルス;を試験した。また、Mononegavirales:インフルエンザAウイルス(A/WSN/33)(Orthomyxoviridae科)、水疱性口内炎ウイルス(VSV、Rhabdoviridae科)及びザイールエボラウイルス(Filoviridae科)からの3つの他のウイルスによる感染を試験した。テルミサルタンによって処理した細胞において(図2D)、HeV、NiV、RSV、VSVについてはウイルス力価の有意な低減が観察され、A/WSN/33については観察されなかった。
【0352】
テルミサルタンは、HeV感染の侵入後の初期段階を阻害する:テルミサルタンによって遮断されるヘニパウイルス感染サイクルの段階を決定することを目的とした。HeV細胞侵入に対するテルミサルタンの影響を、まず、Deffrasnes et al.(2016)に記載されている確立された細胞間融合アッセイを使用して決定した。HeV-F及びHeV-Gタンパク質を発現するエフェクタ細胞によってインキュベートするとき、テルミサルタンによって処理した標的細胞は、ビヒクルによって処理した標的細胞に匹敵するエフェクタ細胞との融合1を示し(図3A)、これは、テルミサルタンがHeV細胞侵入を遮断しなかったことを示唆した。陽性対照として、(SMARTpool siRNA、siEFNB2を使用して)HeV侵入受容体エフリン-B2の細胞を枯渇させることにより、siNEGと比較して70%だけ細胞間融合が減少した。
【0353】
テルミサルタンがウイルスゲノム複製及び転写を遮断するか否かを次に調査した。HeLa細胞におけるHeVの単一サイクル複製動力学は、Deffrasnes et al.(2016)において記載されているように以前に特徴付けられている。高MOIのHeVに感染したHeLa細胞は、感染後12~24時間の間に感染性ビリオンの産生を開始する(接種レベルを超える)。このことは、HeLa細胞におけるHeV感染の1サイクルの長さがおよそ12~24時間であることを示している。ゆえに、有効なTaqMan qPCRアッセイを使用して、感染後12時間における細胞内ウイルスRNAレベルを測定した。ビヒクルによって処理した細胞において、細胞内ウイルスRNAレベルは、感染後12時間で接種レベルの~1000倍を超えて増加した(図3B)。この単一サイクル感染期間内では(感染後12時間)、テルミサルタン処理が、細胞内ウイルスRNAレベルを有意に低減した(図3B)。これまでの報告と一致して、ウイルス力価は、感染後12時間と接種レベルとの間に匹敵し、テルミサルタンによるウイルスRNA複製の阻害がウイルス感染の第1サイクル内で起こったことが確認された(図3C)。さらに、ウイルスタンパク質産生(Pタンパク質及びNタンパク質)は、テルミサルタンによって処理したHeV-感染細胞において、ほぼ完全に廃止された(図3D)。まとめると、これらの結果は、テルミサルタンが、感染の先駆期間の際にウイルスRNA合成を遮断することを示している。
【0354】
HeV感染は、複数のアンジオテンシンII受容体拮抗薬によって阻害される:テルミサルタンの抗ウイルス特性が他のアンジオテンシンII受容体拮抗薬について観察されるか否かを決定した。カンデサルタンは、用量依存性でHeV感染を阻害したことが見出され、これは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬がウイルス成長をより広範に阻害し得ることを示唆している(図4)。
【0355】
多数の変形及び/または変更が本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく上記の実施形態に対してなされ得ることが当業者によって認識されよう。そのため、本実施形態は、あらゆる点で説明的であって制限的ではないとしてみなされるべきである。
【0356】
本明細書において考察及び/または参照した全ての公開公報は、これらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0357】
本願は、2017年6月13日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2017902236号からの優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0358】
本明細書に含まれている文献、作用、材料、デバイス、物品などのいずれの考察も、単に、本発明のための状況を付与する目的である。これは、これらの事項のいずれかまたは全てが、この出願のそれぞれの主張の優先日の前に存在したとして、先行技術の基礎の部分を形成している、または本発明に関連する分野における共通の一般的知識であったということを了承しているとしてとられるべきではない。
【0359】
参照文献
Dalesandro et al.(1996) J.Thorac.Cardi.Surg.11:416-422.
Deffrasnes et al.(2016) PLoS Pathog.12:el005478.
Foo et al.(2016) PLoS Pathog.12:el005974.
Good et al.(1966) Biochemistry 5:467.
Koc et al.(1996) Seminars in Oncology 23:46-65.
Langer(1990) Science 249:1527-1533.
Makarov et al.(1996) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:402-406.
Nolta et al.(1996) Proc Natl.Acad.Sci.USA 93:2414-2419.
Pager and Dutch(2005) J Virol,2005.79:12714-12620.
Raper et al.(1996) Annals of Surgery 223:116-126.
Reed and Muench(1938) Am.J.Hygiene 27:493-497.
図1
図2
図3
図4