(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171878
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】細胞洗浄装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20221104BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N1/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022148938
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2019531966の分割
【原出願日】2017-12-14
(31)【優先権主張番号】62/434,748
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510005889
【氏名又は名称】ベックマン コールター, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リチャード トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バレンティン ケサダ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル トーマス
(57)【要約】
【課題】細胞を洗浄するための装置及び方法を提供すること
【解決手段】細胞洗浄機が開示される。細胞洗浄機は、細胞を保持するように構成された容器を含む。容器は、開口部と、内側表面と、内側表面の第2の内側表面部分と第3の内側表面部分との間に、かつ内側表面の第2の内側表面部分及び第3の内側表面部分に対して半径方向外側に配置された内側表面の第1の内側表面部分によって画定されたポケットと、空洞と、を含む、細長い本体を含む。容器はまた、軸を中心として容器をスピンさせることができる作動装置を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、非仮出願であり、2016年12月15日に出願された米国仮出願第62/434,718号の優先権を主張する。同仮出願は、全ての目的について、ここにその全体が参照により組み込まれる。
本発明の実施形態は、粒子調製の分野に関し、より具体的には、細胞を洗浄するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子分析は一般に、特に細胞分析は、粒子又は細胞を懸濁する液体を除去又は交換することを必要とすることが多い。これは、干渉物質、過剰な染み、非結合標識抗体、洗剤、透過化剤、溶解剤、定着剤、中和剤、及び他の物質を除去するのに有用である。一部の状況では、細胞洗浄はまた、溶解した材料によって媒介される細胞型間の望ましくない相互作用を低減するのに有用であり得る。
【0003】
粒子又は細胞洗浄のための従来の方法は、沈降及びデカント、音響分離、遠心分離、濾過、構造化チャネルを通じた流れ、及び磁気分離などの様々なプロセスを伴う。これらの方法は、自動化するのが難しく、嵩高で、時間がかかり、単回使用消耗品を頻繁に必要とする。したがって、細胞洗浄のための容易に自動化されるプロセス及び装置が必要とされている。
【0004】
細胞洗浄の目的は、更なる処理又はその後の分析に影響を及ぼし得る望ましくない物質を除去することである。細胞洗浄は、一般に、懸濁液の除去、及び一般に洗浄液と呼ばれる置換液体中での細胞の再懸濁を伴う。細胞洗浄は、洗浄プロセスの異なる部分で異なる洗浄液を使用することができ、また、望ましくない物質の移送を促進するために、選択された洗浄液又は撹拌への長時間の曝露を含んでもよい。
【0005】
細胞洗浄は、細胞を喪失、損傷、活性化、変性、若しくは破壊し得るか、細胞間の望ましくない相互作用を引き起こし得るか、又は特定の細胞型の試料を差別的に枯渇させ得る。これらの効果は、後続の分析の結果を変えることができる。例えば、高加速度(高速回転又は「遠心力」の慣性効果によって生成されるものなど)又は高流体剪断速度への細胞の曝露は、一部の細胞型を他の細胞型よりも破裂させることができる。したがって、洗浄された細胞混合物のアッセイは、元の試料中に存在する細胞の割合を正確に反映しない場合がある。したがって、試料中の多種多様な細胞の特性及び比率を保存する、細胞洗浄のためのプロセス及び装置に対する必要性が存在する。
【0006】
洗浄有効性は、洗浄手順の質の1つの尺度である。洗浄は、望ましくない物質をより多く除去する場合、高い有効性を有する。低い洗浄有効性を有するプロセスは、望ましくない物質をより多く残す。場合によっては、組み合わされたプロセスの洗浄有効性を改善するために、プロセスの複数のインスタンスを連鎖させてもよい。単純な希釈モデルは、全ての洗浄プロセスにとって現実的ではないが、洗浄有効性の概念を例示する役割を果たす。洗浄プロセスが、洗浄開始時に存在した流体の分画dを洗浄の終了時に残す場合、n回の繰り返し後、残存する元の流体の分画(元の望ましくない物質を含む)は、(d)nである。洗浄有効性は、残存する分画の逆数として表すことができ、この場合、1回のプロセスでは1/d、複数の繰り返しプロセスでは1/dnとして表すことができる。例えば、洗浄プロセスが1回の繰り返し後に元の液体の10%を残す場合、その洗浄有効性は1/0.1=10として表され得る。このような洗浄プロセスの4回の繰り返しにより、1/0.14=10,000の理想的な組み合わせ洗浄効果が得られる。
【0007】
しかしながら、洗浄工程は、影響なしに連鎖させることはできない。追加の洗浄繰り返しは、更なる時間を要し、細胞の変性又は喪失の可能性を増加させ得る。更に、再懸濁プロセスは、典型的には高流体剪断に依存するので、細胞に特に損傷を与える場合がある。したがって、より少ない洗浄繰り返しで、したがって、より少ない再懸濁のインスタンスで細胞を効果的に洗浄する細胞洗浄のためのプロセス及び装置が必要とされている。
【0008】
細胞は、洗浄中の印加力の大きさ及び持続時間に敏感であり得る。高い力への長時間の曝露は、細胞へのより多くの損傷を引き起こす。しかしながら、遠心細胞洗浄機では、力が増加するにつれて、印加力下で細胞が沈降するための時間は減少する。したがって、細胞の高い力への長時間の曝露を低減する、細胞洗浄装置及びプロセスが必要とされている。
【0009】
生細胞は、一般に、水性洗浄液よりもわずかに密度が高い。遠心細胞洗浄機では、より密度の高い細胞は、洗浄液を通してより高い相対力の領域に沈降する。遠心細胞洗浄機における洗浄プロトコルは、通常、細胞を沈降させる繰り返しサイクルを含み、できるだけ多くの洗浄液を除去し、新鮮な洗浄液中に細胞を再懸濁させる。細胞を沈降させるのに必要とされる時間は、細胞が洗浄液を通って移動する距離に依存し、したがって、沈降前に存在するより洗浄液が大量であるほど長い。したがって、小さな体積の初期の洗浄液から沈降させることが望ましい。このようなプロセスの洗浄有効性は、細胞に曝露される洗浄液の総体積と比較して、各除去工程の後に残存する洗浄液の量(機械的制約によって通常制限される量)によって制限される。したがって、低体積の初期の洗浄液から細胞を沈降させることは、沈降後に細胞を追加の洗浄液に曝露することだが、有益であろう。しかしながら、細胞が高い相対力の領域に沈降されると、力がより低い密度の液体を細胞の「上方」に浮き上がらせるので、追加の洗浄液は、感知可能なほど細胞と相互作用することはできない。したがって、単一の洗浄繰り返し中に洗浄を受ける細胞と追加の洗浄液との相互作用を可能にする、細胞洗浄装置及びプロセスに対する必要性が存在する。
【0010】
遠心細胞洗浄では、閉鎖コンテナの使用には、液体を添加又は除去するための複雑な回転接続を必要とする。しかしながら、開放コンテナは、コンテナ体積が収容される体積と比較して大きくない限り、液体が漏出することを可能にする。したがって、比較的大きな体積の液体を収容する開放コンテナ型細胞洗浄機が必要とされている。
【0011】
本発明の実施形態は、これら及び他の問題を、個々に又はまとめて解決する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞を保持するための容器を有する細胞洗浄機を含む。容器は、開口部、空洞、及びポケットを画定する細長い本体を含む。開口部は空洞と連通し、空洞はポケットと連通する。ポケットは、空洞を画定する細長い本体の部分に対して半径方向外側に延在することができる。ポケットは、垂直方向に配向された軸に対して対称であり得る。細長いポケットは、空洞を形成する側壁を越えて延在する半径方向の深さを有する。ポケットは、約2:1、4:1、10:1、又は15:1以上のアスペクト比(例えば、軸方向断面から見たときの長さ対深さ)を有することができる。ロータなどの作動装置は、軸を中心として容器をスピンさせることができる。
【0013】
空洞は、本体の円筒形セクションによって少なくとも部分的に画定されてもよく、ポケットの下方に位置決めされてもよい。空洞を画定する形成する内側表面は、シグモイド形状の移行部としてポケットに移行することができる。
【0014】
細胞洗浄機はまた、開口部を通過して空洞内に入る導管を含んでもよい。導管は、容器の回転中に、空洞に及び空洞から流体を移送するように構成される。導管は、容器の内壁に隣接して、かつポケットの下方に配置され得る先端部で終端する。導管は、軸から離れて、軸に対して平行に配置されてもよい。導管は、流体ポンプに流体連結されてもよい。
【0015】
容器はまた、本体の上部分によって画定される上環状領域を含んでもよい。上環状領域は、ポケットと開口部との間に配置されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、細胞洗浄機はまた、開口部を通してプローブを下げるように構成されたエレベータ上に取り付けられたプローブを含んでもよい。試料ポンプは、プローブと流体連通していてもよい。ポンプ及びプローブは、容器からの材料の添加又は除去を可能にする。コントローラは、作動装置(例えば、ロータ)、流体ポンプ、試料ポンプに電気的に接続することができ、エレベータは、これらの構成要素の動作を制御することができる。
【0017】
本発明本発明の実施形態はまた、液体中に懸濁された細胞を含む試料から細胞を洗浄することを含む方法を含む。この方法は、空洞及びポケットを含む容器内に試料を分注する工程を有し、空洞及びポケットは、垂直に配向される軸の周りに配置される。ポケットは、空洞を形成する本体の一部分に対して半径方向外側に位置決めすることができる。他の工程は、容器を容器の軸を中心として第1の速度で回転させる工程と、細胞をポケット内へと変位させる工程と、細胞をポケットの壁に向かって沈降させる工程と、液体の少なくとも一部を取り除く工程と、を含む。
【0018】
細胞をポケット内へと変位させる工程は、洗浄液の第1のアリコートを容器に添加する工程を含む。洗浄液は、容器内に延在し、ポケットの下方で終端する導管を通って添加される。取り除く工程は、異なる時点で同じ導管を通して吸引することを含む。
【0019】
他の工程は、導管を通して洗浄液の第2の又は後続のアリコートを添加し、細胞を再懸濁させる工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、液体の少なくとも一部を容器から取り除き、洗浄液の第2の(又は後続の)アリコートを添加する工程は、より有効な洗浄を提供するために1回以上繰り返されてもよい。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、工程を2~5回繰り返すことができる。
【0020】
容器を第1の速度で回転させる工程は、少なくとも約100又は250×gの力をポケット内で生成する。細胞の洗浄方法はまた、取り除く工程中に容器を第2の速度で回転させる工程を含んでもよい。第2の速度でのこの回転は、少なくとも約25×gの力をポケット内で生成し得る。したがって、いくつかの実施形態では、後続の容器の回転速度は、連続する各洗浄工程で減少することができる。
【0021】
細胞を再懸濁させる工程は、再懸濁液を添加し、回転を停止する副工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、回転は、細胞の再懸濁を支援する方向に急激に反転されてもよい。回転が停止されると、洗浄された細胞を除去することができる。
【0022】
試料の体積は、ポケットの下方の空洞の体積未満であってもよく、いくつかの実施形態では、ポケットの下方のこの体積の約0.7倍未満であってもよい。洗浄後、洗浄された細胞が、洗浄前の試料中の細胞よりも高い濃度で懸濁されるように、再懸濁液の体積は、試料の体積未満であってもよい。
【0023】
本方法は、すすぎ液を添加する工程と、容器を第3の速度で回転させる工程と、導管を通してすすぎ液を吸引する工程と、を含む、後続使用のために容器を清浄化する追加の工程を含んでもよい。容器を清浄化する工程は、すすぎ液を吸引する工程中の回転速度を変化させる工程を含んでもよい。
【0024】
洗浄液又は再懸濁液は、好適な材料を含んでもよい。例えば、約5mMのEDTAを含んでもよく、約0.1%~約2%のウシ胎児血清を含んでもよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、等張性緩衝液(例えば、PBS)、抗凝固剤(例えば、EDTA)、及びタンパク質(例えば、ウシ胎児血清)から構成される。いくつかの実施形態では、ウシ胎児血清は、タンパク質としてサーバすることができる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
細胞洗浄機であって、
細胞を保持するように構成された容器であって、前記容器が、開口部と、内側表面と、前記内側表面の第2の内側表面部分と第3の内側表面部分との間に、かつ前記内側表面の第2の内側表面部分及び第3の内側表面部分に対して半径方向外側に配置された前記内側表面の第1の内側表面部分によって画定されたポケットと、空洞と、を含む、細長い本体を含む、容器と、
軸を中心として、前記容器をスピンさせることができる作動装置と、を備える、細胞洗浄機。
(項目2)
前記空洞が、前記本体の下部分によって画定され、前記ポケットの下方にあり、前記ポケットが、少なくとも約2:1のアスペクト比を有する、項目1に記載の細胞洗浄機。
(項目3)
前記第1の内側表面部分から前記第2の内側表面部分への移行が、シグモイド形状の移行である、項目2に記載の細胞洗浄機。
(項目4)
前記開口部を通過するように構成されており、かつ前記容器の回転中に前記空洞に及び前記空洞から流体を移送するように構成されている、導管を更に備える、項目1~3のいずれか一項に記載の細胞洗浄機。
(項目5)
前記導管が、前記容器の壁に隣接して、かつ前記ポケットの下方に配置されている、先端部を備える、項目4に記載の細胞洗浄機。
(項目6)
前記導管が、前記軸に対して平行である、項目4又は5のいずれか一項に記載の細胞洗浄機。
(項目7)
前記導管が、流体ポンプと流体連通している、項目4~6のいずれか一項に記載の細胞洗浄機。
(項目8)
前記ポケットと前記開口部との間に配置された上環状部分を更に備える、項目1~7のいずれか一項に記載の細胞洗浄機。
(項目9)
エレベータに連結されたプローブであって、前記エレベータが、前記開口部を通じて前記プローブを下げるように構成されており、前記プローブが、ポンプと流体連通している、プローブ、を更に備える、項目1~8のいずれか一項に記載の細胞洗浄機。
(項目10)
ロータ、前記流体ポンプ、試料ポンプ、及び前記エレベータのうちの1つ以上を制御するように構成されている、コントローラを更に備える、項目1~9のいずれか一項に記載の細胞洗浄機。
(項目11)
前記開口部を通過し前記容器内に入る分注プローブ及び吸引プローブを更に備える、項目1に記載の細胞洗浄機。
(項目12)
前記分注プローブ及び前記吸引プローブの各々が、屈曲した端部を含む、項目11に記載の細胞洗浄機。
(項目13)
前記吸引プローブが、前記分注プローブよりも前記容器内の低い点で終端する、項目11に記載の細胞洗浄機。
(項目14)
前記吸引プローブ及び前記分注プローブが、前記軸に対して平行であるが、前記軸から中心が外れている部分を含む、項目11に記載の細胞洗浄機。
(項目15)
前記ポケット内の細胞を含む生物学的流体を更に含む、項目11に記載の細胞洗浄機。
(項目16)
液体中に懸濁された細胞を含む試料から細胞を洗浄する方法であって、
a)空洞及びポケットを画定する本体を含む容器内に前記試料を分注する工程であって、前記ポケットが、前記空洞を画定する内壁面に対して半径方向外側に延在する、分注する工程と、
b)前記容器の軸を中心として第1の速度で前記容器を回転させる工程と、
c)前記細胞を前記ポケット内へと変位させる工程と、
d)前記ポケット内の前記細胞を沈降させる工程と、
e)前記液体の少なくとも一部を取り除く工程と、を含む、方法。
(項目17)
洗浄された細胞が、工程e)の後に形成され、前記変位させる工程が、
前記容器内に延在し、かつ前記ポケットの下方で終端する導管を通して洗浄液の第1のアリコートを添加する工程を含み、前記取り除く工程が、前記導管を通して吸引する工程を含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
f)前記導管を通して前記洗浄液の第2のアリコートを添加する工程を更に含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記洗浄された細胞を再懸濁させる工程を更に含む、項目17~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記再懸濁させる工程が、再懸濁液を前記容器に添加し、回転を停止する工程を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記再懸濁させる工程が、前記容器の回転方向を反転させる工程を含む、項目19~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記空洞が、前記ポケットの下方の体積を有し、前記試料が、前記ポケットの下方の前記体積未満の試料体積を有する、項目19~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記試料体積が、前記ポケットの下方の前記体積の約0.7倍未満である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記再懸濁液が、前記試料体積未満の再懸濁液体積を有する、項目19~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記取り除く工程中に、前記容器を第2の速度で回転させる工程を更に含む、項目11~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記容器を第2の速度で回転させる工程が、前記ポケット内で少なくとも25×gの力を生成する、項目20に記載の方法。
(項目27)
前記容器を前記第1の速度で回転させる工程が、前記ポケット内で少なくとも約100×gの力を生成する、項目16~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
工程e)及びf)を繰り返す工程を更に含む、項目18に記載の方法。
(項目29)
g)前記容器を清浄化する工程を更に含む、項目18に記載の方法。
(項目30)
工程g)が、
i.すすぎ液を添加する工程と、
ii.前記容器を第3の速度で回転させる工程と、
iii.前記導管を通して前記すすぎ液を吸引する工程と、を含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記容器を清浄化する工程が、前記すすぎ液を吸引する工程中に回転速度を変化させる工程を含む、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記洗浄液又は前記再懸濁液が、約5mMのEDTAを含む、項目19~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記容器内で終端する分注プローブを使用して、前記容器にすすぎ液を添加する工程を更に含む、項目16に記載の方法。
(項目34)
前記容器内で終端する吸引プローブを使用して、前記すすぎ液の少なくとも一部を吸引する工程を更に含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記吸引プローブが、前記分注プローブよりも前記容器内の低い点で終端する、項目34に記載の方法。
(項目36)
容器であって、
細胞を保持するように構成された細長い本体であって、前記細長い本体が、開口部と、内側表面とを含む、細長い本体と、
前記内側表面の第2の内側表面部分と第3の内側表面部分との間に、かつ前記内側表面の第2の内側表面部分及び第3の内側表面部分に対して半径方向外側に配置された前記内側表面の第1の内側表面部分によって画定されたポケットであって、少なくとも約2:1のアスペクト比を有する、ポケットと、
前記ポケットの下方の空洞と、を備える、容器。
(項目37)
容器であって、
細長い本体であって、第1の閉鎖端部と、前記第1の閉鎖端部の反対側の第2の端部であって、開口部を含む、前記第2の端部とを含む、細長い本体と、
前記細長い本体の中心を通過する軸から半径方向外側に延在するポケットと、
前記ポケットの下方の前記細長い本体の下部分によって画定された空洞であって、前記ポケットと前記空洞との間の移行が、シグモイド形状の移行である、空洞と、を備える、容器。
(項目38)
前記本体の上部分によって画定された上環状部分であって、前記ポケットの上方にある、前記上環状部分を更に備える、項目37に記載の容器。
(項目39)
前記容器の前記本体内に形成されたロータ連結具を更に含む、項目37に記載の容器。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本発明の装置の一実施形態の概略側断面図を示す。
【
図1B】本発明の装置の一実施形態の概略側断面図を示す。
【0026】
【
図2】
図1の実施形態の容器の概略側断面図を示す。
【0027】
【
図3A】例示的な細胞洗浄プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図3B】例示的な細胞洗浄プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図3C】例示的な細胞洗浄プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図3D】例示的な細胞洗浄プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図3E】例示的な細胞洗浄プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図3F】例示的な細胞洗浄プロトコルの概略的な工程を示す。
【0028】
【
図4】
図3A~3Fの細胞洗浄プロトコルのフローチャートを示す。
【0029】
【
図5A】例示的な容器清浄化プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図5B】例示的な容器清浄化プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図5C】例示的な容器清浄化プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図5D】例示的な容器清浄化プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図5E】例示的な容器清浄化プロトコルの概略的な工程を示す。
【
図5F】例示的な容器清浄化プロトコルの概略的な工程を示す。
【0030】
【
図6】
図5A~5fの容器清浄化プロトコルのフローチャートを示す。
【0031】
【
図7A】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した白血球回収率の散布図を示す。
【
図7B】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した白血球回収率の散布図を示す。
【
図7C】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した白血球回収率の散布図を示す。
【
図7D】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した白血球回収率の散布図を示す。
【
図7E】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した白血球回収率の散布図を示す。
【
図7F】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した白血球回収率の散布図を示す。
【0032】
【
図8A】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した5分画の差分WBC分析のための散布図を示す。
【
図8B】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した5分画の差分WBC分析のための散布図を示す。
【
図8C】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した5分画の差分WBC分析のための散布図を示す。
【
図8D】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した5分画の差分WBC分析のための散布図を示す。
【
図8E】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した5分画の差分WBC分析のための散布図を示す。
【
図8F】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した5分画の差分WBC分析のための散布図を示す。
【0033】
【
図9A】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した血小板単球相互作用の散布図を示す。
【
図9B】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した血小板単球相互作用の散布図を示す。
【
図9C】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した血小板単球相互作用の散布図を示す。
【0034】
【
図10A】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した細胞生存率を示す。
【
図10B】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した細胞生存率を示す。
【
図10C】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した細胞生存率を示す。
【0035】
【
図11A】従来の洗浄と比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用したκ/λ分離を示す。
【
図11B】従来の洗浄と比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用したκ/λ分離を示す。
【0036】
【
図12A】従来の洗浄と比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した全細胞回収率を示す。
【
図12B】従来の洗浄と比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した全細胞回収率を示す。
【
図12C】従来の洗浄と比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した全細胞回収率を示す。
【0037】
【
図13A】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用したリンパ球T細胞回収率を示す。
【
図13B】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用したリンパ球T細胞回収率を示す。
【
図13C】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用したリンパ球T細胞回収率を示す。
【0038】
【
図14A】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用したB細胞及びNK細胞回収率を示す。
【
図14B】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用したB細胞及びNK細胞回収率を示す。
【
図14C】従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用したB細胞及びNK細胞回収率を示す。
【0039】
【
図15】本発明の実施形態によるアセンブリの部分側面断面図を示す。
【0040】
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1A及び
図1Bは、本発明の一実施形態による細胞洗浄機の一実施形態を概略的に示す。細胞洗浄機1は、本体と、ロータ12と、管18と、コントローラ20と、を備える、容器10を含む。いくつかの実施形態では、細胞洗浄機1はまた、ピペッタ16及びハウジング14を含んでもよい。
【0042】
図2は、容器10をより詳細に示す。容器10は、洗浄プロセス中に細胞試料及び洗浄液を収容するように構成され得る細長い本体を備える。容器10は、動作中にその長軸42を垂直に配向され得る。容器10は、閉鎖底部36と、開放頂部38と、底部36及び頂部38の間に延在する壁28と、を含む。壁28は、空洞30及びポケット34を画定する。
【0043】
本文書では、壁28の内側表面は、空洞30又はポケット34と境を接する容器10の一部分を指すことができる。壁28の外側表面は、壁28の一部によって空洞30又はポケット34から分離された容器10の一部分を指すことができる。
【0044】
本文書では、これらの2つの特徴は、容器10の本体の内側表面によって画定されているが、ポケット34は、空洞30から別個に示される。本体の内側表面は、ポケット34を形成するように、第2の内側表面部分37Bと第3の内側表面部分37Cとの間に、かつ第2の内側表面部分37B及び第3の内側表面部分37Cに対して半径方向外側に配置された第1の内側表面部分37Aを含んでもよい。軸42に向かってテーパ状になってもよい空洞30は、それらの画定面部分37A、37Bのそれぞれの半径によってポケット34から区別される。例えば、第1の内側表面部分37Aはポケット34の少なくとも一部を画定してもよく、一方、第2の内側表面部分37Bは、空洞の少なくとも一部を画定してもよい。
図2に示すように、第1の内側表面部分37Aは、第2の内側表面部分37Bよりも長軸42から(半径方向に)更に離れている。
図2の実施形態では、ポケット34の底部(容器10の本体の中央内側側壁に対応する)のポケット半径は、ポケット34の軸方向範囲にわたって、実質的に一定である(ポケット34の一方又は両方の端部における移行ゾーンを除いて。移行ゾーンは、第1及び第2の内側表面部分34A、34Bと、第1及び第3の内側部分34A、34Cとの間にある)。ポケット34の底部の半径はまた、その軸方向範囲の大部分又は全てにわたって一定であってもよく、この場合、ポケット34によって形成される空間は、画定された厚さ(ポケットの深さ)の円筒形シェルを形成してもよい。容器10の中空又は空虚な内部は、空洞30、及び容器10の本体の上セクション40によって画定され得る上環状領域39を含んでもよい。ポケット34の延長は、ポケットの軸方向範囲に対して小さく(ポケットの軸方向範囲の約10分の1未満)てもよい任意の移行ゾーンを含む。ポケットのアスペクト比は、約2:1、3:1、5:1、10:1、又は15:1より大きくてもよい(例えば、ここでアスペクト比は長さ:深さである)。半径は、空洞30の周囲領域の半径とポケット34の増大した半径との間で変化することができる。
【0045】
壁28及び壁28が含まれる本体は、ガラス、ポリカーボネート、又はアクリルプラスチックなどの安定した固体材料で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、高密度ポリエチレンの使用は、接着の低減により洗浄効果を改善する。透明性は、流体挙動及び清浄度が動作中に壁28を通して観察され得るため、プロセス開発中に有益である。
【0046】
いくつかの実施形態では、容器10及び空洞30は、軸42に関して対称である。壁28の外側表面は、壁28が比較的一定の厚さになるように、壁28の内側表面と同様の形状であってもよい。これは、容器10の質量を低減し、したがって容器10をスピンさせるのに必要なトルクを低減するという利点を有する。壁28の外側表面(したがって容器10)は、円筒形の輪郭を含んでもよく、半球形の底端部で終端してもよく、その結果、容器10の外側表面は、従来の試験管と同様の形状である。
【0047】
いくつかの実施形態では、細胞洗浄機1は、1mLのオーダーの体積を有する試料を処理するように設計されてもよい。このような実施形態では、空洞30は、直径約0.35インチ及び高さ約2インチの円筒形エンベロープ内に収まってもよい。しかしながら、他の実施形態では、細胞洗浄機1は、力及び相対体積を維持するようにスケーリングすることによって、他の試料サイズに対してより大きいか、又はより小さくてもよい。
【0048】
壁28の内側表面(第2の内側表面部分37Bに対応し得る)は、容器の下部分32並びに空洞30の少なくとも一部を画定することができる。いくつかの実施形態では、上環状領域39は、容器10の上部分40内に存在してもよい。下部分32、中央部分55、及び上部分40は、容器10の異なる軸方向長さに沿って配置される。空洞30を含む下部分32は、底部36の内側表面から上方に延在する。中央部分は、ポケット34を含む中央環状領域56を含み、下部分32の上方から始まり、更に上方に延在する。上部分40は、環状領域39を含み、存在する場合、中央環状領域56の上方から始まり、開放頂部38の内側表面まで更に上方に延在する。空洞30と境を接する壁28は、使用中にいかなる細胞又は液体を捕捉するのも避けるように、鋭い入隅を有さずに、滑らかな内側表面で形成されてもよい。最小入隅半径は、壁材の表面特性、及び容器10内の液体がその壁材を湿潤化する能力に依存し得る。いくつかの実施形態では、ポリカーボネート容器内の水性流体を使用すると、最小内隅半径は約0.03インチであってもよい。ポケット34を下部分32から分離することの利点は、ポケット34が、遠心力が、液体が添加又は除去される位置とは別個の位置で粒子を閉じ込める場所を提供することである。これは、洗浄プロセス中の粒子の意図しない除去を防止し、回収率を増加させる。
【0049】
底部36は、容器10を形成する細長い本体の閉鎖端部である。底部36は、細胞洗浄機1の動作中に下方に位置決めされる。本明細書における方向は、この向きを指す。底部36における壁28の外側表面は、容器10の物理的底部である。底部36における壁28の内側表面は、空洞30の物理的底部である。
【0050】
下部分32は、底部36における軸42と壁28の内側表面との交点から始まる。下部分32の目的は、細胞に影響を及ぼすことなく、液体の選択された添加又は除去を可能にすることである。流体が下部分32に添加され、下部分32から除去される間、細胞は、遠心力の影響下でポケット34内に保持されてもよい。壁28の内側表面は、下半径33に達するまで、軸42から滑らかかつ単調に外方に、かつ底部36から上方にテーパ状になる。下半径33は、下部分32の最大内側半径である。下部分32は、下部分32の円筒形セクション31を形成するようにより低い半径33で更に継続してもよく、又はポケット34への移行部で終端してもよい。いくつかの実施形態では、下部分32は、湾曲した下部分及び円筒形の上部分を有する試験管と同様の形状である。このような実施形態では、円筒形の上部分の半径は、より低い半径33に対応する。湾曲した下部分は、実質的に半球状、放物線状、又は中心線と底部36との交点からポケット半径35に移行する任意の他の輪郭であってもよい。下部分32の体積は、洗浄される細胞を含有する試料の全体を収容するのに十分に大きくてもよい。テーパ状の下部分32の利点は、外向きの遠心力が、比較的高密度の細胞又は粒子をテーパ部に沿ってポケット34に向かって上方に推進することである。第2の利点は、回転が停止すると、液体が底部中心に流れ、プローブ54による回収率を改善することである。
【0051】
ポケット34は、最大内部半径を有する容器10の内部の領域の中央環状領域56の一部を形成することができる。ポケット34の目的は、懸濁液が細胞の損失なしに交換され得るように、洗浄プロセス中に限られた体積内に細胞を収容することである。ポケット34は、下部分32(及び存在する場合は上部分40)に接合する場合を除いて、本質的に一定の内径(ポケット半径35)を有してもよい。他の実施形態では、ポケット34は、他の形状を有してもよい。例えば、ポケット34は、細胞が楕円体の「深」部に優先的に沈降するように、わずかに楕円体であってもよい。これは、試料が非常に低い細胞濃度を有する場合に有用であり得る。更に他の形状は、他の用途において有用であり得る。
【0052】
実施形態では、下部分32及びポケット34の境界における壁28の内側表面は、シグモイド形状の移行部41を形成してもよい(
図2に示すように軸線断面で見たとき)。シグモイド形状の移行部41の利点は、粒子がポケット34と下部分32との間で移動する際に粒子の捕捉又は立ち往生を低減することである。これにより、回収率が増加し、試料間のキャリーオーバーが減少する。
【0053】
ポケット34内の円筒形部を有する一実施形態では、ポケット34の活性体積は、ポケット34の端部の間の空洞30の体積と、ポケット34の端部間の下半径33に等しい半径を有する円筒の体積との間の差である。したがって、活性体積は、1つ又は2つのシグモイド形状のテーパ状端部を有する円筒形シェルである。円筒形部の利点は、細胞を薄層に集積し得、清浄化をより容易にし、所与の回転速度で同様のg力に細胞を供することである。円筒形部の別の利点は、捕捉された体積の流体を排除し、洗浄有効性を改善することである。
【0054】
いくつかの実施形態では、ポケット34は、試料中の細胞又は粒子の凝集体積と少なくとも等しい活性体積を含む。他の実施形態では、ポケット34は、試料の総体積に少なくとも等しい活性体積を含む。これは、細胞沈降中に試料の全体がポケット34内に収まることを可能にし、細胞である試料の分画にかかわらず、そのような沈降をほぼ一定の半径(したがって、ほぼ一定の力)で支持することを可能にする。更に他の実施形態では、ポケット34は、試料の総体積の約1.4倍に少なくとも等しい活性体積を含む。このより大きな体積は、以下により詳細に記載される上方変位工程中に試料が希釈された場合であっても、ほぼ一定の半径での沈降を支持する。
【0055】
上部分40は、存在する場合、ポケット34の上方から始まり、上端部38まで延在する。上部分40の目的は、ポケット34内の細胞が新鮮な洗浄液に曝露され得るように、ポケット34を横断した洗浄液を収容するための場所を提供することである。上部分40は、滑らかかつ単調にポケット34から内側にテーパ状になって上端部38と合流し、その結果、半径方向力は、いかなる比較的高い密度の材料もポケット34内に強制的に入れる傾向を有する。上部分40の体積は、下部分32の体積と同様であり、下部分32に最初に供給された流体を受容することができる。いくつかの実施形態では、上部分40は、下部分32よりも大きな体積を有してもよく、これは、流体フリーのマージン部のおおよそ放物線状の輪郭が、下部分34の体積よりも大きい量の上部分40の体積を消費するためである。上部分40及び下部分32は、ほぼ同じ半径を有する円筒形部を含んでもよい。ポケットを取り囲む対になった上部分及び下部分の利点は、下部分32に添加された洗浄液が、ポケット34内に閉じ込められた細胞を通過し、細胞をすすぎ、汚れた洗浄液を細胞から運び去ることを可能にすることである。これにより、洗浄液体積を最小限に抑えながら洗浄有効性が増加する。
【0056】
容器10が軸42を中心としてスピンするとき、容器10の流体内容物は、遠心力と重力との組み合わせの影響下で半径方向外側及び上方に分布する。流体内容物は、外側の壁28と、下方の底部36と、上方の環状リップ46と、中央の自由流体マージン部と境を接するカップ形状の中空シェルを形成する。流体フリーのマージン部は、回転速度によって、流体の表面張力によって、及び流体に対する壁材の接触角によって決定されるパラメータを有するほぼ放物線状の形状をとる。V.A.Lubardaは、Acta Mech(2013)224:1365において流体フリーのマージン部の形状の詳細な分析を公開しており、その全体がここに参照により組み込まれる。回転速度が増加するにつれて、流体フリーの境界の放物線状縁部は、底部36に向かって下降し、流体が開放シェル内に分布するように底部36に接触してもよい。
【0057】
上端部38は、軸42を中心とする開口部44と、開口部44を取り囲むリップ46と、を有する。上端部38の目的は、回転中に容器10内に液体を収容することである。開口部44は円形であってもよく、開口部直径を画定してもよい。開口部半径は、最大動作回転速度で流体が容器10内に留まるように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、最大動作速度は、約400×gの遠心力を生成し、開口部半径は約0.25インチである。開口部44の直径は、試料の導入及び流体の除去を可能にするのに十分に大きく、流体が最大スピン速度で漏出するのを防ぐのに十分に小さくてもよい。いくつかの実施形態では、開口部44の直径は、約0.157インチ~約0.25インチであってもよい。
【0058】
開口部44を取り囲むリップ46の利点は、容器10がスピンする間リップ46が液体内容物を保持し、導管18又はピペッタ16などの非回転装置へのアクセスを可能にすることである。他の実施形態では、表面張力及び重力がスピン中に容器10の内容物を保持してもよく、リップ46は存在しなくてもよい。
【0059】
導管18は、1つ以上のチューブ64、先端部66、及び関連する流体機器を含む。導管18の目的は、容器10に液体を送達及び除去することである。チューブ64は、先端部66の自由端と、容器10の外側で双方向ポンプ68、1つ以上のバルブ74、1つ以上の洗浄液リザーバ70、及び廃棄物リザーバ72などの関連する流体構成要素に接続された連結端部とを有する。外部流体構成要素は、プログラム可能な制御下でチューブ64を通して1つ以上の洗浄液を送達し、廃棄液を除去するように構成される。この双方向液体移送は、単一ポンプ(シリンジポンプ若しくは蠕動ポンプなど)であってもよい双方向ポンプ68によって駆動されてもよく、又は各々が単一方向に動作し得る2つ以上のポンプであってもよい。いくつかの実施形態では、導管18は、ハウジング14を通って配管されてもよい。
【0060】
チューブ64は、開口部44を通って容器10に入り、下部分32内へと下方に延在する。チューブ64は、皮下針の柄のセクションなどの円形チューブであってもよい。チューブ64は、その長さの大部分にわたって真っ直ぐであってもよいが、先端部66が壁28のテーパ状部分の近くに位置決めされ得るように、その自由端付近に屈曲部を含んでもよい。チューブ64の直線部分は、軸42に対して概ね平行に配置されてもよいが、環状リップ46の一方側に向かって軸外(例えば、共直線ではなく平行)に変位されてもよい。いくつかの実施形態では、導管18(チューブ64を含む)は容器10と共に回転しないため、チューブ64は、容器10のいかなる部分にも接触しないように位置決めされる。チューブ64の軸外位置により、チューブ64又は容器10のいずれにも接触することなく、(概ねより大きい直径の)ピペッタ16を入れることが可能になる。容器10の上方から延在するチューブ64の利点は、流体が外側容器10から添加又は除去され得ることである。開口部44を通って延在するチューブ64の利点は、回転シールなしに液体を添加又は除去することができ、システムの複雑性を低減することである。内壁に隣接して終端するチューブ64の利点は、これが洗浄中に除去可能な液体の分画を最大化し、洗浄有効性を増加させることである。これはまた、ポケット内の粒子に適用されるよりも低いg力で液体を除去し、関連する流体機器を単純化する。ポケット34の下方で終端するチューブ64の利点としては、液体が取り除かれる際に、添加された液体がポケット34内の細胞をスクラブして通過し、収容された細胞が除去されないという利点が挙げられる。これにより、洗浄有効性が増加し、回収率が改善される。
【0061】
容器10の上部分を通って延在する際のチューブ64の形状及び位置は、予想外の効果を有する。例えば、チューブ64は、回転中に容器10内の液体を安定化させ、洗浄液のパルスの形状に影響を及ぼす。チューブ64が上記のように構成されていると、容器10は、そうでなければ開口部44を通って容器10を溢れるであろうと予想される回転速度で流体体積を収容することができる。チューブ64は、容器10を通って伝播する際に、添加された洗浄液のパルス形状を彫刻して、より効果的な洗浄をもたらす。理論に束縛されるものではないが、第1の効果は、回転中のチューブ64と流体フリーの境界の放物線状縁部との間の表面相互作用によるものであり、第2の効果は、表面張力と粘性抗力との組み合わせによるものであると考えられる。細胞洗浄機1は、これらの効果を利用して、ポケット34内に沈降した細胞を通して洗浄液のパルスを上方及び下方に送るように容器10の充填レベル及び回転速度を操作する。
【0062】
先端部66付近の屈曲部は、チューブ64がその長さの大部分にわたってその垂直な軸外位置に留まることを可能にする一方で、軸42から更に離れた所望の位置に先端部66を位置決めすることを可能にする。屈曲部は、加工中に液体を吸引及び送達するために、壁28から約0.06インチ未満の範囲内に先端部66を位置決めすることができる。屈曲部は、90、120、130度などを含む任意の好適な角度を形成してもよい。この比較的大きな距離は、細胞洗浄機1の製造における許容誤差を低減する。実施形態では、導管18が洗浄相の後に残存する液体のより大きい画分を吸引し、それによって洗浄有効性を増加させることができるように、先端部66は、壁28から約0.03インチ未満の範囲内にあってもよい。先端部66に近接する壁28のセクションは、下部分32のテーパ状部分内にあってもよい。この位置により、ポケット34内へと上方に試料成分を変位させる回転中の液体の添加、及びポケット34内に沈降した細胞を乱すことによる液体の除去が可能になる。
【0063】
ロータ12は、軸42を中心として容器10をスピンさせる。ロータ12は、モータ48及び連結具52を含む。ロータ12の目的は、容器10内に制御された遠心力を発生させることである。モータ48は、ブラシレスDCモータなど、当技術分野において既知の様々なモータのうちのいずれかであってもよい。いくつかの実施形態では、モータ48は、容器10を少なくとも約10000回転/分の速度でスピンさせて、約400×g以上の半径方向力を発生させることができる。適切な軸受けが、スピン部品を支持する。
【0064】
モータ48は、コントローラ20に電気的に接続される。コントローラ20は、ドライバ(図示せず)を介してモータ48に必要とされる電気信号を提供する。連結具52は、モータ48を容器10に接続する。連結具52は、モータ48のキー付きシャフト又はピン止めシャフトを収容するように形成された底部36の外側の孔など、容器10と一体的に形成されてもよい。代替的に、連結具52は、容器10の外側を収容する中空部を含んでもよい。このような実施形態では、連結具52は、動作中のプロセスのビューを提供するための窓を含んでもよい。
【0065】
例示の目的でロータ12が示されているが、任意の他の好適な作動装置が使用されてもよい。例えば、ロータの代わりに、容器10は、その内部に磁石を有してもよく、磁石は、コイル及び対応する電源が容器10を起電力によって移動させ得るように、周囲のコンテナ内のコイルに電磁的に結合されてもよい。
【0066】
ピペッタ16は、プローブ54、エレベータ56、及び試料ポンプ58を含む。ピペッタ16の目的は、洗浄される試料を添加し、洗浄した細胞を容器10から除去することである。ピペッタ16はまた、容器清浄化後にすすぎ液を除去してもよい。
【0067】
プローブ54は、回転が停止されている間に開口部44を通って入る細長いチューブであってもよい。プローブ54の目的は、液体を容器10に収容及び容器10から送達することである。プローブ54は、化学的又は血液学的分析装置において一般的に用いられるものなどの洗浄可能なチューブであってもよい。代替的に、プローブ54は、ピペッタマンドレルに連結された使い捨てピペットチップであってもよい。プローブ54は、試料コンテナ内及び容器10内の流体のレベルを検出するために、静電容量性レベルセンサなどの従来のレベル感知デバイスも含んでもよい。
【0068】
プローブ54は、材料の最大除去を確実にするために、底部中心において、又はその近くで容器10に接近する。プローブ54は、衝突を回避するために、チューブ64が配置されているよりも容器軸の近くで容器10に入る。液体を追加及び除去するために導管18とは別個のプローブを使用する利点は、プローブ54が試料をピペットで移して、導管18のより複雑な流体接続と比較してキャリーオーバーを低減することができること、及びプローブが先端部66の位置を乱すリスクなしに容器の底部に接近することができることである。
【0069】
エレベータ56は、モータ及びスライドを含む従来の位置決め構成要素で構成されてもよい。その目的は、液体を送達又は除去するために、開口部44を通してプローブ54を上下させることである。エレベータ56はまた、試料コンテナ、廃棄物受け器、プローブ洗浄機、又は液体リザーバに対してプローブ54を位置付けるための少なくとも1つの追加の運動軸を含んでもよい。試料ポンプ58は、プローブ54に流体連結され、プローブ54内の流体を移動させるために駆動力を供給する。試料ポンプ58は、シリンジポンプ又はピストンポンプなどの、制御された体積の試料を送達することができる様々な従来のポンプのいずれかであってもよい。
【0070】
他の実施形態では、導管18は、ピペッタ16の機能の一部又は全てを実行してもよい。このような実施形態では、導管18は、チューブ64を容器10に対して位置決めする導管輸送(図示せず)を更に含んでもよい。導管輸送は、モータ及びスライドを含む従来の位置決め構成要素で構築されてもよい。
【0071】
細胞洗浄機1のいくつかの実施形態はまた、ハウジング14を含んでもよい。ハウジング14は、容器10を取り囲み、また、
図1Aに示すように、ロータ12及び導管18の部分を取り囲んでもよい。ハウジング14の目的は、洗浄プロセスから生じる任意の漏出又はエアゾール化された材料を封じ込めることである。ハウジング14は、導管18がハウジング14の一部分を介して双方向ポンプ68に配管されるように導管18に流体的に連結することができる。ハウジング14はまた、プローブ54の進入を可能にするために、容器10の軸と位置合わせされた孔を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング14はまた、エアゾール化された材料を除去するために吸引ポンプに取り付け可能な真空ポートを含む。
【0072】
コントローラ20は、様々な細胞洗浄プロトコルのうちの1つを実行するようにロータ、エレベータ、及び流体機器の動作を柔軟に順番に並べることができる、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、プログラマブルロジックコントローラ、又は同様の装置などの従来のコントローラであってもよい。動作中、ユーザは、記憶されたプロトコルを選択してもよく、又はコントローラ20がその後実行する新しいプロトコルのためのステップをコンパイルしてもよい。コントローラ20は、典型的には、低レベル信号を生成することによって、エレベータ56、ロータ12、双方向ポンプ68、試料ポンプ58、及び他の構成要素などの機械的装置を制御する。ドライバ(図示せず)は、低レベル信号を、各機械的装置に適切な駆動信号に変換することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ20はまた、細胞洗浄機1の状態を報告する装置から信号を受信してもよい。このような装置としては、なかでも、回転フィードバックのためのタコメータ又はエンコーダ、ピペッタ又は導管フィードバックのためのレベルセンサ、及び分離進行フィードバックのためのビデオ信号を挙げることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、コントローラ20は、プロセッサと、プロセッサに連結されたコンピュータ可読媒体とによって具現化されてもよい。コンピュータ可読媒体は、本明細書に記載される機能のいずれかを実装するために、プロセッサによって実行可能なコードを含み得る。
【0074】
細胞洗浄及び容器清浄化
【0075】
試料は、赤血球溶解剤で処理された全血、又は洗浄が所望される任意の他の細胞試料を含んでもよい。洗浄液は等張性緩衝液であってもよく、これは、いくつかの実施形態では、細胞間効果を低減するために添加された材料を含んでもよい。我々は、洗浄液又は再懸濁緩衝液(約1.0015g/mL又は約0.1%~約2%濃度のウシ胎児血清又はBSAを含むPBS)への約5mMのEDTAの添加は、白血球試料中の単球及び顆粒球の隣接集団に出現する不定細胞集団(場合によっては脱顆粒の顆粒球)の形成を防止することを見出した。
【0076】
プロトコルは、洗浄プロセスの異なる部分の間に異なる洗浄液を使用することができる。プロトコルはまた、最終再懸濁工程において洗浄液とは異なる再懸濁緩衝液を使用してもよい。コントローラは、流体取扱の当業者によく知られている様式で、所望の液体を収容するリザーバ70を双方向ポンプ68に接続するようにバルブ74のうちの適切なバルブを切り換えることによって、プロトコルに従って所望の添加液体を選択することができる。
【0077】
記載される全ての工程は、コントローラによって制御される。コントローラは、そのプログラムメモリに記憶されたソフトウェアプログラムからその命令を受信する。コントローラ(又はユーザインターフェースとして動作する第2のコンピュータ)は、ユーザ命令を受け取り、(命令をコントローラに送信し、コントローラは)選択されたプロトコルに従って様々な機械的構成要素を順番に並べる。
【0078】
例示的な細胞洗浄プロセスは、
図3A~3F及び
図4のフローチャートに概略的に示されている。一般に、本発明の一実施形態による方法は、液体中に懸濁された細胞を含む試料から細胞を洗浄する方法であって、空洞及びポケットを画定する本体を含む容器内に試料を分注する工程であって、ポケットが空洞を画定する内壁面に対して半径方向外側に延在する、工程と、軸を中心として、容器を第1の速度で回転させる工程と、細胞をポケット内へと変位させる工程と、ポケット内に細胞を沈降させる工程と、液体の少なくとも一部を取り除く工程と、を含む、方法を含んでもよい。
【0079】
工程102では、
図3Aに示すように、プローブ54は試料140を容器10内に分注する。容器10は、上記と同じ又は異なる特徴を含んでもよい。次いで、プローブ54は、試料140のアリコートを吸引し、容器10内に下降し、容器10の底部又はその付近に試料140のアリコートを堆積させる。エレベータ56は、次いでプローブ54を引き出す。
図3Aは、移送が完了した後の容器10内の試料140の位置を示す。
【0080】
工程104では、
図3Bに示すように、コントローラは、ポケット34の内壁において少なくとも約100又は250gを生成するのに十分な第1の速度で、容器10を回転させる(例えば、スピンさせる)。スピンすると、導管18は、高速度(毎秒約1mL)で洗浄液144を分注する。この体積は、初期試料140の一部又は全体をポケット34内へと変位させるのに十分である。いくつかの実施形態では、壁28に沿った高い注入速度は、それと完全に混合するのではなく、試料140を変位させるための慣性を提供する。導管18による液体添加を伴うこの工程及び他の工程では、コントローラ20は、液体をリザーバ70からチューブ64を通って先端部66の外へと方向付けるように、双方向ポンプ68及び任意の適切なバルブ74の操作を順番に並べる。
【0081】
工程106では、
図3Cに示すように、スピンは、第1の速度で約5秒間継続して、ポケット34の内壁表面部分37Aに細胞142を沈降させる。次いで、コントローラ20は、スピン速度をより低い洗浄速度に低下させる。
【0082】
工程108では、
図3Dに示すように、導管18は、より低い流速(毎秒約200μL)で追加の洗浄液144を注入して、容器10を充填する(流体フリーのマージン部の縁部を、上端部38の円形開口部44のおおよそ半径まで持ってくる。流体注入中にチューブ64と液体及び流体空気境界との相互作用によって生成される剪断力パルスは、ポケット34の壁際に閉じ込められた細胞142をスクラブするのを助ける。添加された洗浄液144は、洗浄液の流れの方向が細胞142をポケット34内に保持する遠心力の方向に対して実質的に垂直になるように、細胞を通って垂直に移動する。この垂直流の利点は、細胞142中の通過されない体積を減少させることである。剪断力パルスは、回転速度及び流体注入速度を変更することによって調節され得る。いくつかの実施形態では、コントローラ20は、回転速度を変化させて、流体フリーのマージン部をポケットにわたって上下に移動させて、その内部に保持された細胞をスクラブする。
【0083】
工程114では、
図3Eに示すように、導管18は、液体を高速で吸引し、先端部66付近の液体層を厚くするように、吸引しながら回転速度を上昇させる。導管18による液体の除去を伴うこの工程及び他の工程では、制御装置20は、液体を先端部66内へ、チューブ64を通って廃棄物72へと方向付けるように、双方向ポンプ68及び任意の適切なバルブ74の操作を順番に並べる。最小スピン速度は、細胞142に対する約25×gの力を生成して、ポケット34内に細胞142を保持する。次いで、導管18は、全体積が初期試料体積に近似するように洗浄液を添加する。コントローラ20は、回転を一時停止又は反転させて、ポケット34から細胞を再懸濁させる。反転は、2つの方向変化を含んでもよい(第2の方向変化は、元の回転方向を回復する)。これらの回転の変化は、比較的短時間(約1秒未満)で行われる。このような急速な変化は、容器10の内容物に対する慣性力として作用する高い接線加速度をもたらす。慣性力は、ポケット34内に沈降した細胞が最も高い慣性力を受けるように、半径と共に増加する。これらの慣性力は、液体中の粘性及び浮力効果と共に、細胞を撹拌し、それらを液体の隣接する部分と混合する働きをする。
【0084】
工程112では、コントローラ20は、ステップ106~110を数回繰り返す。より多くのサイクルは、より高い洗浄有効性をもたらす。いくつかの実施形態では、コントローラ20は、工程106~110の2回又は3回の繰り返しを順番に並べる。最終洗浄中、添加される液体の量は、サイトメトリー又は他の後続の処理のために粒子を所望の濃度で懸濁させるように調整される。添加される液体の体積は、試料の元の体積未満であってもよい。
【0085】
工程110では、
図3Fに示すように、回転止め、及びプローブ54は、容器10の底部付近まで下降し、分析又は他所での更なる処理のために洗浄された試料を吸引する。次いで、システムは、次の使用の準備のために容器10を清浄化する。
【0086】
例示的な容器清浄化プロセス120が、
図5A~5F及び
図6のフローチャートに概略的に示されている。
【0087】
工程122では、
図5Aに示すように、導管18は、容器10をスピンさせることなく急速にすすぎ液を添加する。
【0088】
工程124では、容器10がスピンし、次いで導管18がスピン中にすすぎ液を吸引する。コントローラ20は、
図5B~5Dに示されるように、放物線状の流体フリーのマージン部を容器10にわたって上下に移動させる。
【0089】
工程126では、
図5Eに示すように、導管18は、回転が遅くなるにつれて、全ての残存するアクセス可能な流体を吸引する。
【0090】
工程128では、コントローラ20は、すすぎ液完全導管18を添加し、工程124~126を1回以上繰り返す。いくつかの実施形態では、コントローラは、工程124~126の2回又は3回の繰り返しを順番に並べる。より多くのサイクルにより、容器の清浄度が改善され、キャリーオーバーが低減される。
【0091】
工程130では、
図5fに示すように)、プローブ54は、容器10の底部まで下降し、全ての残存するアクセス可能な液体を吸引する。次いで、容器10を再使用する準備が整う。
【0092】
実施例1:実験洗浄
【0093】
実施例3~10の各々は、以下の容器及びプロトコルの実施形態を使用する。
【0094】
容器10は、約2インチの高さであり、各々約0.4インチの高さの上部分及び下部分、並びに約1インチの高さのポケット(軸方向範囲又は高さ)を有する。上部分及び下部分は、約0.3125インチの内径を有する円筒形セクションを有し、ポケットは、約0.4125インチの内径を有する。したがって、この実施形態では、ポケットは、約0.05インチの深さ及び約0.206インチの最大半径を有する円筒形シェルを形成する。シェルの深さは、シェルの外径の約8分の1である。シェルの深さは、ポケットの軸方向範囲の約20分の1である。中心孔の直径は、約0.157インチである。上部分及び下部分の内壁は、半球状セクションで終端することによってポケットから離れる方向にテーパ状になっている。
【0095】
例示的なプロトコルは、以下の工程を含み、実験変形例によって記載されるように修正される:
a)プローブを使用して、400μLの赤血球溶解剤と混合された100μLの全血、及び各実験によって必要とされる標識を添加する。
b)6460rpmでスピンさせる(ポケット壁において約100又は250×gを生成する)。
c)導管を使用して、500μLの洗浄液を1mL/秒で添加する。
d)細胞をポケット壁に5秒間沈降させる。
e)導管を使用して、2mLの洗浄液を200μL/秒で添加する。
f)導管を使用して、スピン速度を2000rpmまで直線的に減少させながら、2.4mLの液体を1mL/秒で除去する(ポケット壁において約25×gを生成する)。
g)導管を使用して、400μLの洗浄液を添加し、ロータを2回0.5秒間反転させて、細胞を再懸濁させる。
h)各実験によって必要とされる回数だけ、工程e)、f)、及びg)を繰り返す。工程f)の最後の繰り返しの後、工程g)における洗浄液を再懸濁緩衝液と置き換え、回転を停止する。
i)プローブを使用して、洗浄された細胞を吸引し、フローサイトメーターで分析する。
【0096】
実施例2:従来の洗浄
a)400μLの赤血球溶解剤と混合された100μLの全血、及び各実験で必要とされるラベルを12×75mmのポリプロピレンチューブに手動でロードする。
b)2mLの洗浄液を添加する。反転によって混合する。
c)500×gで5分間スピンさせて細胞をペレット化する。
d)ピペットにより上澄み液を吸引する。
e)工程b)~d)を2回繰り返す。
f)ペレットを400μLの再懸濁緩衝液中に再懸濁させ、反転させることによって混合する。
【0097】
実施例3:生物学的同等性-散乱
【0098】
図7は、従来の洗浄及び洗浄なしと比較した、本発明の装置及び方法の実施形態を使用した白血球回収率の散布図を比較したものである。上段は、非洗浄細胞、従来的に洗浄された細胞、及び実施例1(試験方法)に従って洗浄された細胞の側方散乱(side scatter、SS)に対する前方散乱(forward scatter、FS)をプロットしている。下段は、
SSに対するCD45(Krome Orangeで標識された)をプロットしている。Krome Orangeは、Kman Coulter,Inc.の商標である。試験方法を使用したWBC集団の光散乱及び表現は、従来的に洗浄された及び洗浄されていない細胞と同等である。
【0099】
実施例4:生物学的同等性-5分画差分
【0100】
図8は、従来の洗浄及び洗浄なしと比較して、試験方法を使用した白血球回収率の散布図を比較したものである。上段は、洗浄されていない細胞、従来的に洗浄された細胞、及び試験方法に従って洗浄された細胞について、SSに対するCD45(FITCで標識された)をプロットしている。下段は、SSに対するCD14(PE-Cy7で標識された)をプロットしている。各組のプロットの下の計算値は、好中球、単球、リンパ球、好酸球、及び好塩基球の回収率が従来の細胞洗浄及び洗浄なしと同等であることを示す。
【0101】
実施例5:生物学的同等性-血小板
【0102】
図9は、従来の洗浄及び洗浄なしと比較して、試験方法を使用したCD41(ここではAPCで標識された血小板マーカー)に対するCD14(PE-Cy7で標識された)の散布図を比較したものである。プロットは、
図8の下側プロットの単球とマーキングされた矩形領域上でゲーティングされた。特に従来の細胞洗浄方法と比較して、CD41結合を示す単球密度の相当な減少に注目されたい。試験方法は、洗浄緩衝液中に5mMのEDTAを含んでいた。単球への血小板付着は、この試験方法で有意に減少する。
【0103】
実施例6:生物学的同等性-生存率
【0104】
図10は、従来の洗浄及び洗浄なしと比較して、試験方法を使用した白血球生存率の分析の散布図を比較したものである。プロットは、SSに対する7 Aminoactinomycin D(7AAD)からの信号を表示する。7AADは死細胞に結合するが、生細胞には結合しない。計算された細胞生存率は、従来の細胞洗浄と比較して微々たる減少を示し、フローサイトメトリー分析のために許容可能である。
【0105】
実施例7:生物学的同等性:κ/λ分離
【0106】
図11は、κ(FITCで標識された)に対するλ(PEで標識された)を表示するB細胞の散布図を比較したものである。斜線は、従来の洗浄と比較して、試験方法を使用して、λ陽性B細胞からκ陽性B細胞を分離する。計算値は、信号対雑音比として表される信号分離である。これらは、κ=KX-中央値/LX-中央値及びλ=LY-中央値/KY-中央値として計算される。κ及びλのゲーティング値は、従来の洗浄と同等である。
【0107】
実施例8:生物学的同等性:総細胞回収率
【0108】
図12は、従来の洗浄及び洗浄なしと比較して、試験方法を使用した全細胞回収率の分析のために、非ゲーティングの白血球の散布図を比較したものである。プロットは、実施例4と同様にSSに対するCD45(FITCで標識された)からの信号を表示する。計算値は、洗浄なしの場合と比較して回収された細胞である。
【0109】
実施例9:生物学的同等性:細胞サブセット回収率I
【0110】
図13は、従来の洗浄及び洗浄なしと比較して、試験方法を使用したT細胞サブセット回収率のヒストグラムを比較したものである。ヒストグラムは、CD3信号のビンを表示する(PE-Cy5で標識された)。試験方法のサブセット細胞回収率(Kman Coulter,Inc.のTetra Panelで標識されたWBCからゲーティングされた)は、従来の洗浄及び洗浄なしと同等である。
【0111】
実施例9:生物学的同等性:細胞サブセット回収率II
【0112】
図14は、従来の洗浄及び洗浄なしと比較して、試験方法を使用したB細胞及びNK細胞の回収率の散乱プロットを比較したものである。プロットは、CD19(ECDで標識された)に対するCD56(ローダミンで標識された)からの信号を表示する(Beckman Coulter,Inc.のTetra Panelで標識されたWBCからゲーティングされた)。試験方法のB細胞及びNK細胞の回収率は、従来の洗浄及び洗浄なしと同等である。
【0113】
図15及び16は、2つのプローブ、分注プローブ及び吸引プローブを含む実施形態を示す。2つのプローブなどの2つの導管を有することには、いくつかの利点がある。単一のプローブが使用される場合、1つのプローブが、清浄な緩衝液を分注し、廃棄物を除去しなければならない。したがって、2つのプローブを有するシステムを使用する1つの利点は、隣接する運転間の汚染を最小限に抑えることである。換言すれば、清浄な緩衝液は、前の運転の廃棄物から汚染され得る。第2の利点は、2つのプローブが異なる位置に配置され得ることである。分注プローブ(清浄な緩衝液を分配することができる)は、容器の上部に位置することができ、一方、除去プローブ(廃棄物を分注することができる)は容器の底部に位置する。運転の終了時に、少量の緩衝液が上プローブから分注され、緩衝液が容器の底部に落ちる際に内壁を清浄化する。これは、血液精製プロセス中の血液細胞の回収に役立つ。
【0114】
図15は、本発明の実施形態によるアセンブリの部分側面断面図を示す。
図15は、前述した容器の実施形態の構成を有することができる容器200を示す。分注プローブ202及び吸引プローブ204並びにそれらの遠位端は、容器200内に配置される。吸引プローブ204は直線状であり、容器200の底部に向かって延在し、廃棄緩衝液を除去するように構成することができる。分注プローブ202は、その端部に、ポケット206及びポケット206内に存在し得る任意の材料に対して洗浄緩衝液を添加するための、90度の屈曲部を有する。吸引プローブ204はまた、その遠位端に90度の屈曲部を有してもよく、又は直線状であってもよい。屈曲部は、
図16により明確に示されている。吸引プローブ204の端部は、ポケット206の真下にあり得る。分注プローブ202及び吸引プローブ204の端部は、
図15及び16では互いに直交するように示されているが、他の実施形態では、同じ平面内にあってもよく、又は場合によっては同様の様式で位置合わせされていてもよい。
【0115】
図16は、
図15に示すアセンブリの断面平面図である。
図16は、分注プローブ202及び吸引プローブ204の遠位端部分の上面図を示す。
図16に示すように、分注プローブ202及び吸引プローブ204の長軸は、容器の中心軸に対して中心が外れている。
【0116】
本発明の実施形態を使用して実行することができるいくつかの例示的な洗浄ルーチンは、以下のように説明することができる。1つの洗浄ルーチンは「試料洗浄」であり、血液(例えば、100μLの血液)などの検体が洗浄される。第2の洗浄ルーチンは「溶解洗浄」であり得、細胞溶解の非細胞生成物が血液試料から除去される。第3のルーチンは「バルク洗浄」であり、大量(例えば、500uL)の血液が洗浄される。いくつかの実施形態では、全ワークフローは、第1の洗浄ルーチン(試料洗浄)、続いて第2の洗浄ルーチン(溶解洗浄)を含んでもよい。
【0117】
試料洗浄(例えば、単一の100uL検体の)
【0118】
工程1.検体(例えば血液)を容器内に分注する。
【0119】
工程2.容器の上領域に位置する分注プローブを用いて、新鮮な洗浄緩衝液を容器内に分注する。
【0120】
工程3.容器を前後に回転させて、検体を渦動させる。
【0121】
工程4.容器を最大速度でスピンさせて、検体の構成成分を容器ポケット内にペレット化する。
【0122】
工程5.容器の回転速度が低下するにつれて、容器の底部付近に位置する吸引プローブを使用して、廃棄緩衝液を除去する。
【0123】
工程6.工程2~4を合計4回以上実行する。
【0124】
工程7.間隔をおいて容器を前後にスピンさせる。各間隔は、前の間隔よりも遅い速度である。これは、壁に接着し得る細胞を除くためである。
【0125】
工程8.チューブがゆっくりとスピンする間、上プローブを使用して少量の緩衝液を容器内に分注して、容器壁を清浄化する。
【0126】
溶解洗浄
【0127】
工程1.溶解した溶液を外部ピペットで容器内に移送する。溶解溶液は、検体及び溶解剤を含んでもよい。例えば、溶解溶液は、100μLの血液及び2.0mLのIOTest Lyse(Beckman Coulter,Inc.から入手可能な塩化アンモニウム系赤血球溶解溶液)を含んでもよい。総体積は、2.0ml超であってもよい。(例えば2.1mL)。
【0128】
工程2.直ちに容器を最大速度でスピンさせて、血液をポケット内にペレット化する。
【0129】
工程3.容器の回転速度が低下するにつれて、(下部吸引プローブを用いて)溶解上澄み液を除去する。
【0130】
工程4.容器の回転を停止する。
【0131】
工程5.上分注プローブを用いて新鮮な洗浄緩衝液を分注する。
【0132】
工程6.容器を前後にスピンさせて、検体中に渦を作り出す。
【0133】
工程7.容器を最大速度でスピンさせて、検体の構成成分を容器ポケット内にペレット化する。
【0134】
工程8.容器の回転速度が低下するにつれて、下部吸引プローブを使用して廃棄緩衝液を除去する。
【0135】
工程9.間隔をおいて容器を前後にスピンさせる。各間隔は、前の間隔よりも遅い速度である。これは、壁に接着し得る細胞を除くために使用することができる。
【0136】
工程10.容器をゆっくりとスピンしている間、上分注プローブを使用して少量の緩衝液を分注して、容器壁を清浄化する。
【0137】
バルク洗浄(500uLの検体)
【0138】
1.各工程の持続時間がより長いことを除いて、試料洗浄と同じ手順を使用する
【0139】
本明細書の態様は、特定の実施形態を参照することにより強調されているが、これらの開示される実施形態は、主題の原理の単なる例示である。本発明は、別段の指示がない限り、又は文脈と明確に矛盾しない限り、記載される実施形態における特徴の任意の組み合わせを包含する。
【0140】
特に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特性、項目、数量、パラメータ、特性、用語などを表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。本明細書で使用するとき、用語「約」は、修飾された特性、項目、数量、パラメータ、特性、又は用語が、明記された特性、項目、数量、パラメータ、特性、又は用語の値よりもプラス又はマイナス20パーセントの範囲を包含することを意味する。したがって、逆のことが示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲内で示される数値パラメータは変化し得る近似値である。
【0141】
本発明を説明する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)使用される「a」、「an」、「the」、及び同様の指示対象は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈と明確に矛盾しない限り、単数形と複数形との両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書に記載の全ての方法は、別段の指示がない限り、又は文脈と明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で行われ得る。例又は例示用語(例えば、「など」)の使用は、本発明の範囲に対する限定ではなく、単に本発明をより明らかにすることを意図したものである。本明細書におけるいずれの言語も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【外国語明細書】