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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171883
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/13 20060101AFI20221104BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
E03D11/13
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149048
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2021030144の分割
【原出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴広
(72)【発明者】
【氏名】石見 亘
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠也
(57)【要約】
【課題】便器本体全体の外形寸法を抑制しつつ、便器本体における機能部の収納領域を大きく確保することができると共に、便器本体全体の強度を高めることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、陶器製の便器本体4と、機能部6と、を有し、上記陶器製の便器本体は、スカート部42と、上記機能部の少なくとも一部を収納可能にする後方機能収納部V0と、を備えており、後方機能収納部は、その収納領域を上下に区画すると共に機能部を支持する支持壁部48を備えており、スカート部は、外側壁部42cと、内側壁部42dと、を備えた二重壁部Eを形成し、この二重壁部は、その少なくとも一部が外側壁部と内側壁部との間に内部空間Iを形成し、スカート部は、二重壁部と支持壁部との接合部48dよりも上方の上端部分において、二重壁部の内部空間が削除された一重壁部Aを備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、上記ボウル部の下方に入口部が接続されて上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた陶器製の便器本体と、
この便器本体のボウル部よりも後方側に設けられて上記ボウル部への洗浄水の吐止水を制御する機能を含む機能部と、を有し、
上記陶器製の便器本体は、さらに、上記ボウル部及び上記排水トラップ部のそれぞれの側面よりも外側に形成されたスカート部と、上記ボウル部よりも後方側の領域における上記スカート部の上端よりも下方且つ上記スカート部よりも内側に設けられて上記機能部の少なくとも一部を収納可能にする後方機能収納部と、を備えており、
上記後方機能収納部は、その収納領域を上下に区画すると共に上記機能部を支持する支持壁部を備えており、
上記スカート部は、その外面を形成する外側壁部と、この外側壁部に対して内側に設けられた内側壁部と、を備えた二重壁部を形成し、この二重壁部は、その少なくとも一部が上記外側壁部と上記内側壁部との間に内部空間を形成しており、
上記支持壁部は、上記スカート部の二重壁部に接合されることによって支持されており、上記スカート部は、上記二重壁部と上記支持壁部との接合部よりも上方の上端部分において、上記二重壁部の内部空間が削除された一重壁部を備えていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記スカート部は、その下端から上端まで上記二重壁部で形成された第1スカート部と、上記スカート部の下端から所定の上方位置まで上記二重壁部で形成されると共に上記所定の上方位置から上記スカート部の上端まで上記一重壁部で形成された第2スカート部と、を備えている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記第1スカート部は、上記便器本体のボウル部と上記後方機能収納部とが接合される接合部に設けられている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記後方機能収納部は、上記便器本体のボウル部と上記後方機能収納部との上記接合部と、上記排水トラップ部と上記支持壁部との接合部と、を含み且つ上記排水トラップ部の出口部側の管路の中心である排水芯よりも前方側に配置される前方領域と、この前方領域の後方側に配置される後方領域と、を備えており、
上記第1スカート部の二重壁部は、上記後方機能収納部の前方領域に設けられており、
上記第2スカート部の一重壁部は、上記後方機能収納部の後方領域に設けられている請求項3記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記第1スカート部の二重壁部は、その内側壁部の壁面が上記後方機能収納部の下方から上方に向かって外側に広がるようにほぼ一定の傾斜角度で傾斜しており、
上記第2スカート部は、その二重壁部の内側壁部の壁面が下方から上方に向かって外側に広がるように二段階に傾斜している請求項2乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記第2スカート部は、第1傾斜段階において、上記二重壁部の内側壁部の壁面が下方の上記支持壁部との接合部から上方の偏向位置に向かって外側に広がるように上記第1スカート部の内側壁部の傾斜角度と同一の第1傾斜角度で傾斜し、その後、第2傾斜段階において、上記偏向位置から上方の上記一重壁部に向かって外側に広がるように上記第1傾斜角度よりも大きい第2傾斜角度で傾斜している請求項5記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1-3に記載されているように、陶器製の便器本体のボウル部及び排水トラップ部のそれぞれの側面よりも外側に形成されたスカート部が便器本体の全周に亘って形成されている、いわゆる、「フルスカート型」又は「総袴型」と呼ばれる水洗大便器が知られている。
このような従来の「フルスカート型」又は「総袴型」の水洗大便器においては、便器本体のボウル部への洗浄水の吐止水を制御する機能を含む機能部を収納可能にする収納領域が便器本体のボウル部よりも後方側の領域に設けられている。
また、特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、スカート部の側壁部が、その外面を形成する外側壁部と、この外側壁部に対して内側に設けられた内側壁部と、を備えた二重壁部を形成している。このスカート部の側壁部は、二重壁部の構造となっており、この二重壁部の外側壁部と内側壁部との間に内部空間を形成すると共に、便器本体の機能部の収納領域内における機能部を支持する支持壁部に接合されている。
つぎに、特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、便器本体のボウル部よりも後方側に機能部の収納領域を形成するスカート部の側壁部が、その外面を形成する外側壁部と、この外側壁部に対して内側に設けられた内側壁部と、を備えた二重壁部を形成する共に、外側壁部と内側壁部との間に内部空間を形成している。また、このスカート部の二重壁部の上方部分においては、内側壁部と外側壁部との間の内部空間が削除された一重壁部となっている。
さらに、特許文献3に記載されている従来の水洗大便器においては、便器本体の機能部の収納領域に設けられた支持壁部が、排水トラップ部との接合部から左右両側のスカート部まで水平方向に延びている。この支持壁部の左右の両端は、左右のスカート部の側壁部の一重壁部のそれぞれに接合されているが、この接合部よりも下方のスカート部の側壁部においては、二重壁部が形成されている。すなわち、支持壁部の左右の両端は、スカート部との接合部よりも上方の一重壁部により支持されていると共に、スカート部との接合部よりも下方の二重壁部により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6691659号公報(特開2017-89282号公報)
【特許文献2】特開2020-169538号公報
【特許文献3】特開2014-114633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、水洗大便器のデザインの多様化や水洗大便器の外観等の意匠性の向上に伴って、便器本体全体の外形寸法をいかに小型化(スリム化)しつつ、便器本体のボウル部よりも後方側の領域に機能部を収納する収納領域をいかに大きく確保するかが要請されている課題の1つとなっている。
しかしながら、例えば、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、スカート部の側壁部の二重壁部が機能部の収納領域の支持壁部に接合されているため、機能部の重量に対しても耐え得る十分な強度の収納部を確保することができるが、スカート部の側壁部が下端から上端に亘ってすべての領域において二重壁部による厚みのある構造により、機能部の収納領域が削減されて狭くなってしまうという問題がある。
また、上述した特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、便器本体における機能部の収納領域の支持壁部がスカート部の側壁部の二重壁部に接合されていないため、機能部を支持する支持壁部が強度不足により歪み等の変形が生じやすくなるおそれがあるという問題がある。
さらに、上述した特許文献3に記載されている従来の水洗大便器においては、機能部の収納領域に設けられた支持壁部と左右のスカート部の側壁部との接合部よりも下方のスカート部の領域が二重壁部となっているが、支持壁部と左右のスカート部の側壁部との接合部よりも上方のスカート部の領域が一重壁部となっている。これにより、機能部の収納領域が、水平な支持壁部よりも下方の領域に対して確保することができず、水平な支持壁部よりも上方の領域に集約されてしまうため、機能部の収納領域を上下の領域に大きく確保することが難しいという問題がある。
また、支持壁部よりも上方の領域に集約された収納領域は、スカート部の側壁部の一重壁部によって取り囲まれるため、収納部に収納される機能部の重量によっては、強度不足になるおそれがあり、支持壁部やスカート部の歪み等の変形により、便器本体の外観形状等に対して影響を及ぼすおそれがあるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題や問題点を解決するためになされたものであり、便器本体全体の外形寸法を抑制しつつ、便器本体における機能部の収納領域を大きく確保することができると共に、便器本体全体の強度を高めることができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、上記ボウル部の下方に入口部が接続されて上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた陶器製の便器本体と、この便器本体のボウル部よりも後方側に設けられて上記ボウル部への洗浄水の吐止水を制御する機能を含む機能部と、を有し、上記陶器製の便器本体は、さらに、上記ボウル部及び上記排水トラップ部のそれぞれの側面よりも外側に形成されたスカート部と、上記ボウル部よりも後方側の領域における上記スカート部の上端よりも下方且つ上記スカート部よりも内側に設けられて上記機能部の少なくとも一部を収納可能にする後方機能収納部と、を備えており、上記後方機能収納部は、その収納領域を上下に区画すると共に上記機能部を支持する支持壁部を備えており、上記スカート部は、その外面を形成する外側壁部と、この外側壁部に対して内側に設けられた内側壁部と、を備えた二重壁部を形成し、この二重壁部は、その少なくとも一部が上記外側壁部と上記内側壁部との間に内部空間を形成しており、上記支持壁部は、上記スカート部の二重壁部に接合されることによって支持されており、上記スカート部は、上記二重壁部と上記支持壁部との接合部よりも上方の上端部分において、上記二重壁部の内部空間が削除された一重壁部を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、後方機能収納部の収納領域を上下に区画すると共に機能部を支持する支持壁部が、スカート部の二重壁部に接合されることによって支持されているため、支持壁部やスカート部の強度を互いに向上させることができる。
また、スカート部においては、その二重壁部と支持壁部との接合部よりも上方の上端部分が、二重壁部の内部空間が削除された一重壁部を備えているため、スカート部における二重壁部と支持壁部との接合部からその上方の上端部分までの後方機能収納部の強度を維持しながら、後方機能収納部内の収納領域をより大きく確保することができる。
したがって、便器本体全体の外形寸法を抑制しつつ、便器本体における機能部の収納領域を大きく確保することができると共に、便器本体全体の強度を高めることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記スカート部は、その下端から上端まで上記二重壁部で形成された第1スカート部と、上記スカート部の下端から所定の上方位置まで上記二重壁部で形成されると共に上記所定の上方位置から上記スカート部の上端まで上記一重壁部で形成された第2スカート部と、を備えている。
このように構成された本発明においては、例えば、スカート部における支持壁部との接合部から上方のすべての領域を一重壁部に設定すると、後方機能収納部内の収納領域をより大きく確保することができる反面、製造時にスカート部の一重壁部等の一部が強度不足により歪み等の変形が生じやすくなってしまうという問題がある。
そこで、本発明においては、スカート部の下端から上端まで二重壁部で形成された第1スカート部と、スカート部の下端から所定の上方位置まで二重壁部で形成されると共に所定の上方位置からスカート部の上端まで一重壁部で形成された第2スカート部とを組み合わせることにより、製造時のスカート部の二重壁部や一重壁部の歪み等の変形を抑制することができると共に、後方機能収納部について、強度不足を解消しつつ、収納領域をより大きく確保することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記第1スカート部は、上記便器本体のボウル部と上記後方機能収納部とが接合される接合部に設けられている。
このように構成された本発明においては、一般的に、陶器製の便器本体のボウル部と後方機能収納部とが接合される接合部は、ボウル部自体の重量と後方機能収納部内に収納された機能部の重量等により、応力集中等の負荷がかかりやすい箇所となっている。
したがって、便器本体の製造時や輸送時等においても、便器本体に対して内力や外力等の負荷がボウル部と後方機能収納部との接合部等に作用すると、便器本体が破損してしまう可能性がある。
そこで、本発明においては、便器本体のボウル部と後方機能収納部との接合部に対して、スカート部の下端から上端まで二重壁部で形成された第1スカート部が接合されることにより、ボウル部と後方機能収納部との接合部の強度に対しても第1スカート部の二重壁部により向上させることができる。
したがって、後方機能収納部についても、強度不足を解消しつつ、収納領域をより大きく確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記後方機能収納部は、上記便器本体のボウル部と上記後方機能収納部との上記接合部と、上記排水トラップ部と上記支持壁部との接合部と、を含み且つ上記排水トラップ部の出口部側の管路の中心である排水芯よりも前方側に配置される前方領域と、この前方領域の後方側に配置される後方領域と、を備えており、上記第1スカート部の二重壁部は、上記後方機能収納部の前方領域に設けられており、上記第2スカート部の一重壁部は、上記後方機能収納部の後方領域に設けられている。
このように構成された本発明においては、第1スカート部の二重壁部が、便器本体のボウル部と後方機能収納部との接合部と、排水トラップ部と支持壁部との接合部と、を含み且つ排水トラップ部の出口部側の管路の中心である排水芯よりも前方側に配置される後方機能収納部の前方領域に設けられているため、ボウル部と後方機能収納部の前方領域との接合部を第1スカート部の二重壁部で支持することができると共に、排水トラップ部を支持する支持壁部に対しても第1スカート部の二重壁部で支持することができる。
したがって、後方機能収納部の前方領域における第1スカート部自体の強度を二重壁部により向上させることができると共に、第1スカート部がボウル部と後方機能収納部との接合部を支持するときの支持力についても補強することができる。
また、後方機能収納部の前方領域における第1スカート部自体の強度が二重壁部により補強されているため、第1スカート部が支持壁部を介して排水トラップ部を支持するときの支持力についても補強することができる。
さらに、ボウル部との接合部と、排水トラップ部と支持壁部との接合部と、を含む後方機能収納部の前方領域の第1スカート部については、その二重壁部の構造により、後方機能収納部の後方領域の第2スカート部の一重壁部の構造に比べて肉厚な構造にすることができる。
これにより、便器本体を輸送時や施工時に移動させる際には、作業者が、第2スカート部の一重壁部に比べて肉厚な第1スカート部の二重壁部の構造部分を保持しやすくなるため、第1スカート部の二重壁部の構造部分に比べて強度が低い第2スカート部の一重壁部を保持することを抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記第1スカート部の二重壁部は、その内側壁部の壁面が上記後方機能収納部の下方から上方に向かって外側に広がるようにほぼ一定の傾斜角度で傾斜しており、
上記第2スカート部は、その二重壁部の内側壁部の壁面が下方から上方に向かって外側に広がるように二段階に傾斜している。
このように構成された本発明においては、第1スカート部については、二重壁部の内側壁部の壁面が後方機能収納部の下方から上方に向かって外側に広がるようにほぼ一定の傾斜角度で傾斜しているため、歪み等の変形を生じ難くすることができる。
また、第2スカート部については、その二重壁部の内側壁部の壁面が下方から上方に向かって外側に広がるように二段階に傾斜しているため、後方機能収納部内の収納領域をより大きく確保することができる。
さらに、第1スカート部の二重壁部の内側壁部における一定の傾斜角度の壁面と、第2スカート部の二重壁部の内側壁部における二段階に傾斜している壁面により、第1スカート部の二重壁部の構造部分と第2スカート部の一重壁部の構造部分との互いの厚みの差を大きくすることができる。
よって、便器本体を輸送時や施工時に移動させる際には、作業者が、第2スカート部の一重壁部に比べて肉厚な第1スカート部の二重壁部の構造部分を保持しやすくなるため、第1スカート部の二重壁部の構造部分に比べて強度が低い第2スカート部の一重壁部を保持することを抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記第2スカート部は、第1傾斜段階において、上記二重壁部の内側壁部の壁面が下方の上記支持壁部との接合部から上方の偏向位置に向かって外側に広がるように上記第1スカート部の内側壁部の傾斜角度と同一の第1傾斜角度で傾斜し、その後、第2傾斜段階において、上記偏向位置から上方の上記一重壁部に向かって外側に広がるように上記第1傾斜角度よりも大きい第2傾斜角度で傾斜している。
このように構成された本発明においては、第2スカート部が、第1傾斜段階において、二重壁部の内側壁部の壁面が下方の支持壁部との接合部から上方の偏向位置に向かって外側に広がるように第1スカート部の内側壁部の傾斜角度と同一の第1傾斜角度で傾斜し、二重壁部分と一重壁部分の第一段階の傾斜が同一であるため、第2スカート部の二重壁部の内側壁部の壁面が下方の支持壁部との接合部から上方の偏向位置までの領域においては、第1スカート部及び第2スカート部のそれぞれの二重壁部の内側壁部の壁面が互いに段差なく滑らかに形成される。
したがって、支持壁部との接合部近傍の第1スカート部及び第2スカート部のそれぞれにおいても、互いに段差や歪み等の変形が生じ難くなるため、後方機能収納部の強度不足を抑制することができる。
また、第2スカート部が、第2傾斜段階において、二重壁部の内側壁部の偏向位置から上方の一重壁部に向かって外側に広がるように第1傾斜角度よりも大きい第2傾斜角度で傾斜しており、第2傾斜段階の第2スカート部の第2傾斜角度の傾斜が、二重壁部の偏向位置を基端として、上方の一重壁部に向かって外側に広がる形状にすることができる。
これにより、第2スカート部の第2傾斜段階において、二重壁部から一重壁部に遷移する遷移部分の強度不足を抑制しつつ、後方機能収納部内の収納領域をより大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水洗大便器によれば、便器本体全体の外形寸法を抑制しつつ、便器本体における機能部の収納領域を大きく確保することができると共に、便器本体全体の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態による水洗大便器の平面図である。
図3】本発明の一実施形態による水洗大便器を後方かつ斜め上方から見た分解斜視図である。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図2のV-V線に沿った断面図である。
図6図2のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図2のVII-VII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、図1図3により、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成について概略的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成図である。また、図2は、本発明の一実施形態による水洗大便器の平面図である。さらに、図3は、本発明の一実施形態による水洗大便器を後方かつ斜め上方から見た分解斜視図である。
図1図3に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、水道等の主給水源W0から供給された洗浄水が通水する給水路(主給水路2)と、陶器製の便器本体4と、洗浄水供給装置6と、を備えている。
【0015】
つぎに、図1図3に示すように、便器本体4は、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の上縁に形成されるリム部10と、ボウル部8の底部から延びる排水トラップ部12と、を備えている。
また、図1図3に示すように、洗浄水供給装置6は、詳細については後述するが、便器本体4のボウル部8よりも後方側に設けられており、主給水路2から供給された洗浄水を便器本体4に供給可能にする機能部である。この機能部は、より具体的には、電力により作動し、便器本体4のボウル部8への洗浄水の吐止水を制御する機能を含む。
【0016】
つぎに、図2に示すように、便器本体4の左右一方側(便器本体4を前方側から見て右側)のリム部10の内部には、リム導水路14が形成されている。
このリム導水路14は、便器本体4の左右一方側(便器本体4を前方側から見て右側)のリム部10の内部において、便器本体4の後方側から前方に向かって延びた後、その途中から後方側に向かって屈曲する、いわゆる、Uターン形状となっている。また、このリム導水路14の下流端(下流側後端)には、リム吐水口14aが設けられている。
さらに、便器本体4のリム導水路14の上流側には、詳細は後述する洗浄水供給装置6のリム側給水路2aが接続されている。このリム側給水路2aからリム吐水口14aに供給された洗浄水は、リム吐水口14aから後方に向けてボウル部8内に吐出され、リム吐水が行われるようになっている。
【0017】
つぎに、図1及び図2に示すように、便器本体4のボウル部8の外側面から底部かけてジェット導水路16が形成されている。このジェット導水路16の下流側は、ボウル部8の底部における排水トラップ部12の入口部12aに向かって指向しており、ジェット導水路16の下流端には、ジェット吐水口16aが設けられている。
また、便器本体4のジェット導水路16の上流側には、詳細は後述する洗浄水供給装置6のジェット側給水路2bが設けられている。このジェット側給水路2bから便器本体4のジェット導水路16に供給された洗浄水は、ジェット吐水口16aから排水トラップ部12に向けて吐出され、ジェット吐水が行われるようになっている。
ここで、図1に示すように、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aの上流側は、主給水路2の分岐部Bの切替弁18(詳細は後述する)に接続されている。
一方、図1に示すように、洗浄水供給装置6のジェット側給水路2bの上流側は、洗浄水供給装置6の貯水タンク20の下流側に設けられた洗浄水供給装置6の加圧ポンプ22(詳細は後述する)に接続されている。
【0018】
つぎに、便器本体4の排水トラップ部12は、ボウル部8の底部に設けられた入口部12aと、この入口部12aから上昇する上昇管12bと、この上昇管12bから下降する下降管12cとからなり、上昇管12bと下降管12cとの間が頂部12dとなっている。
また、図1に示すように、排水トラップ部12の下降管12cの出口部12eは、便器本体4の後方かつ下方に配置された排水ソケットSの入口部に接続されている。
さらに、図1に示すように、排水ソケットSの後方側の出口部は、便器本体4の後方の壁(図示せず)側から延びる排水管Dの入口部に接続されている。これにより、便器本体4の排水トラップ部12の出口部12eから排出された排水が排水ソケットSから壁側の排水管Dに排出される、いわゆる、「壁側排水」の排水形態となっている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、このような「壁側排水」の排水形態に限られず、便器本体4の排水トラップ部12の出口部12eから排出された排水が、排水ソケットSから便器本体4の底面の設置面(床面F)の下側の排水管に排出される、いわゆる、「床側排水」の排水形態に対しても適用可能である。
【0019】
つぎに、図1により、本実施形態による水洗大便器1の洗浄水供給装置6の各構成について概略的に説明する。
まず、図1に示すように、洗浄水供給装置6は、主給水路2の上流側から下流側に向かって、止水栓24、分岐金具26、バルブユニット28、及び、切替弁18をそれぞれ備えている。
つぎに、バルブユニット28は、定流量弁30、ダイヤフラム式の主弁32、及び、ソレノイドバブル等の電磁弁34をそれぞれ備えている。
また、洗浄水供給装置6は、コントローラ36を備えている。このコントローラ36は、バルブユニット28の開閉弁(電磁弁34)の開閉操作、切替弁18の切替操作、及び、加圧ポンプ22の回転数や作動時間等を制御する制御部として機能することができるようになっている。
【0020】
さらに、バルブユニット28の定流量弁30は、主給水路2における止水栓24から分岐金具26を通過した洗浄水について、所定の流量以下に絞るためのものである。
ちなみに、分岐金具26においては、水洗大便器1に対して局部衛生洗浄装置(図示せず)が設けられた形態では、局部衛生洗浄装置(図示せず)に洗浄水を供給するための給水管(図示せず)が接続可能にもなっている。
さらに、バルブユニット28においては、電磁弁34がコントローラ36の制御により開弁操作されると、主弁32が開弁し、定流量弁30から主弁32を通過した洗浄水が、主給水路2の下流側の分岐部Bの切替弁18に供給されるようになっている。
ここで、切替弁18は、主給水路2の洗浄水をリム側給水路2aとタンク側給水路2cの双方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であり、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更することができるようになっている。
【0021】
つぎに、洗浄水供給装置6は、主給水路2から供給された洗浄水を便器本体4に供給可能にするタンク装置Tを備えている。このタンク装置Tは、便器本体4の後方に連結されて主給水路2から供給された洗浄水を貯水する貯水タンク20と、この貯水タンク20内の洗浄水を便器本体4に圧送するポンプ(加圧ポンプ22)と、を備えている。
さらに、主給水路2の下流側の分岐部Bの下流側には、便器本体4のリム導水路14に連通するリム側給水路2a、及び、貯水タンク20に接続されるタンク側給水路2cがそれぞれ設けられている。
これにより、主給水源W0から主給水路2の分岐部Bに供給された洗浄水は、リム側給水路2aへのリム給水及びタンク側給水路2cへのタンク給水の少なくともいずれか一方の給水として利用されるようになっている。
【0022】
また、洗浄水供給装置6には、タンク側給水路2cの下流側から加圧ポンプ22まで延びるポンプ給水路2d、及び、加圧ポンプ22から下流側に延びるジェット側給水路2bがそれぞれ設けられている。
これらにより、本実施形態の水洗大便器1では、主給水路2から供給された水道直圧の洗浄水が、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aから便器本体4のリム導水路14を経てリム吐水口14aに供給され、リム吐水口14aからの吐水(いわゆる、「リム吐水」)が可能になっている。
さらに、主給水路2から洗浄水供給装置6に供給された洗浄水は、洗浄水供給装置6のタンク側給水路2c、貯水タンク20、ポンプ給水路2d及び加圧ポンプ22を経た後、ジェット側給水路2bから便器本体4のジェット導水路16を経てジェット吐水口16aに供給され、ジェット吐水口16aからの吐水(いわゆる、「ジェット吐水」)が可能になっている。
すなわち、本実施形態の水洗大便器1は、主給水路2から供給された水道直圧の洗浄水によるリム吐水と、貯水タンク20から加圧ポンプ22により加圧された洗浄水によるジェット吐水とを併用することができる、いわゆる、ハイブリット式の水洗大便器1として機能するようになっている。
【0023】
つぎに、貯水タンク20の内部には、上側フロートスイッチ38及び下側フロートスイッチ40がそれぞれ配置されている。これらのフロートスイッチ38,40により貯水タンク20内の水位を検出することができるようになっている。
例えば、上側フロートスイッチ38は、貯水タンク20内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、この上側フロートスイッチ38のオン状態をコントローラ36が検知して、電磁弁34を閉弁させるようになっている。
一方、下側フロートスイッチ40においては、貯水タンク20内の水位が、上側フロートスイッチ38が検知する所定の貯水水位よりも低い所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、この下側フロートスイッチ40のオン状態をコントローラ36が検知して、加圧ポンプ22を停止させるようになっている。
また、加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水をポンプ給水路2dに吸引し、このポンプ給水路2dから洗浄水をジェット側給水路2bに加圧することにより、ジェット吐水口16aから吐出させるためのものである。
【0024】
これらの構造により、通常の便器洗浄時においては、コントローラ36が、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作等を検知し、電磁弁34、切替弁18、加圧ポンプ22を順次作動させるようになっている。
これにより、リム吐水口14a及びジェット吐水口16aからの吐水が順次開始されて、ボウル部8内を洗浄した洗浄水は、ボウル部8内の汚物と共に排水トラップ部12から排出されるようになっている。
さらに、コントローラ36は、洗浄終了後、電磁弁34を開放し、切替弁18がタンク側給水路2c側に切り替えられ、主給水路2内の洗浄水が貯水タンク20に補給されるようになっている。
そして、貯水タンク20内の水位が上昇し、上側フロートスイッチ38が規定の貯水量を検出すると、コントローラ36が電磁弁34を閉弁させることにより、主弁32が主給水路2を閉鎖し、給水が停止されるようになっている。
また、これらの洗浄水供給装置6(機能部)の各機器は、便器本体4のボウル部8よりも後方側の領域内における後方機能収納部V0(詳細は後述する)に収納されるようになっている。
【0025】
つぎに、図2図7を参照して、本実施形態による水洗大便器1の便器本体4における洗浄水供給装置6(機能部)が収納される後方機能収納部V0、及び、この後方機能収納部V0の周辺構造について具体的に説明する。
まず、図4は、図2のIV-IV線に沿った断面図である。また、図5は、図2のV-V線に沿った断面図である。さらに、図6は、図2のVI-VI線に沿った断面図である。また、図7は、図2のVII-VII線に沿った断面図である。
ここで、図4図7に示す本実施形態の水洗大便器1においては、洗浄水供給装置6については図示せず、省略している。
【0026】
まず、図2図7に示すように、便器本体4は、そのボウル部8及び排水トラップ部12のそれぞれの側面よりも外側に形成されたスカート部42を備えている。
また、便器本体4の後方機能収納部V0は、便器本体4のボウル部8よりも後方側の領域におけるスカート部42の上端よりも下方かつスカート部42よりも内側に設けられており、洗浄水供給装置6(機能部)の少なくとも一部を収納可能にする収納領域を形成している。
【0027】
つぎに、図2図7に示すように、スカート部42は、便器本体4の背面に設けられた後壁部42aと、便器本体4を前方から見て左右の側面に設けられた側壁部42bと、を備えている。
ここで、図5図7に示すように、スカート部42の後壁部42a及び側壁部42bのそれぞれは、スカート部42の外面を形成する外側壁部42cと、この外側壁部42cの内側に設けられた内側壁部42dと、を備えており、これらの外側壁部42cと内側壁部42dとにより二重壁部Eを形成している。また、この二重壁部Eは、外側壁部42cと内側壁部42dとの間に内部空間Iを形成している。
【0028】
また、スカート部42の後壁部42aにおける前方から見て左右中央の下方部分には、排水管Dが接続される接続開口部44が前後方向に貫くように形成されている。
さらに、図4図7に示すように、便器本体4の後方機能収納部V0の左右中央かつ下方の領域における接続開口部44の前方側には、排水ソケット収納部46が形成されている。この排水ソケット収納部46は、排水トラップ部12の下降管12cの出口部12eに接続された排水ソケットS(図1参照)を収納可能にする収納領域として機能するようになっている。
【0029】
つぎに、図5図7に示すように、後方機能収納部V0は、洗浄水供給装置6(機能部)を支持する支持壁部48を備えている。この支持壁部48は、排水トラップ部12に接合され、後方機能収納部V0の収納領域を上下に区画して上側領域V1及び下側領域V2のそれぞれとしている。
また、後方機能収納部V0の上側領域V1は、洗浄水供給装置6(機能部)の少なくとも一部を収納する収納領域を含み、後方機能収納部V0の下側領域V2は、接続開口部44及び排水ソケット収納部46のそれぞれの開口領域を含む。
【0030】
つぎに、図2図5図7に示すように、後方機能収納部V0の支持壁部48は、排水トラップ部12との接合部48aから左右両側及び後方側に水平方向に延びる水平壁部48bを備えている。
また、支持壁部48は、その水平壁部48bに対して左右外側且つ下方に設けられた下方壁部48cを備えている。この下方壁部48cの左右方向の外側は、スカート部42の左右の側壁部42bにおける二重壁部Eの内側壁部42dに接合されている。
【0031】
つぎに、図2及び図4図7に示すように、後方機能収納部V0の支持壁部48の水平壁部48bは、排水トラップ部12における排水芯O1よりも後方側から後方に延びるように設けられた水平主壁部50を備えている。
さらに、後方機能収納部V0の支持壁部48の水平壁部48bは、水平主壁部50の後方側に設けられてスカート部42の後壁部42aに接合される水平補助壁部52を備えている。
【0032】
また、図2及び図5図7に示すように、水平主壁部50の左右の側端部50aのそれぞれは、左右方向のスカート部42の左右の側壁部42bのそれぞれに対して離間するように設けられている。
一方、図2及び図4に示すように、水平補助壁部52の後端部は、スカート部42の後壁部42aに接合されている。また、水平補助壁部52の左右の側端部52aのそれぞれは、左右方向のスカート部42の左右の側壁部42bのそれぞれに接合されるように設けられている。
これらにより、支持壁部48の水平壁部48bは、図2に示す平面視において、前後方向に延びる水平主壁部50と左右方向に延びる水平補助壁部52とにより概ねT字形の形状となっている。
【0033】
つぎに、図2及び図4に示すように、支持壁部48の水平壁部48bにおける後方側の水平補助壁部52の左右の両端部52aは、スカート部42の左右の側壁部42bにおける二重壁部Eの内側壁部42dに接合されている接合部となっている。
また、図2及び図5図7に示すように、支持壁部48の下方壁部48cの左右方向の外側端部48dは、スカート部42の左右の側壁部42bにおける二重壁部Eの内側壁部42dに接合されている接合部となっている。
さらに、図2及び図4図6に示すように、スカート部42は、二重壁部Eと支持壁部48との接合部48d,52aよりも上方の上端部分において、二重壁部Eの内部空間Iが削除された一重壁部Aを備えている。
【0034】
つぎに、図2及び図7に示すように、スカート部42の側壁部42bは、その下端から上端まで二重壁部Eで形成された第1スカート部S1を備えている。
また、図2に示すように、第1スカート部S1は、便器本体4のボウル部8と後方機能収納部V0とが接合される接合部C1に接合されている。
さらに、図2及び図4図6に示すように、スカート部42の側壁部42bは、第1スカート部S1の後方側に設けられた第2スカート部S2を備えている。この第2スカート部S2は、その下端から所定の上方位置P1まで二重壁部Eで形成されると共に、この所定の上方位置P1からスカート部42の上端まで一重壁部Aで形成されている。
【0035】
つぎに、図2及び図4図7に示すように、後方機能収納部V0の上側領域V1は、便器本体4のボウル部8と後方機能収納部V0との接合部C1と、排水トラップ部12と支持壁部48との接合部C2と、を含み、かつ、排水トラップ部12の出口部12e側の管路の中心である排水芯O1よりも前方側に配置される前方領域V3を備えている。
また、後方機能収納部V0の上側領域V1は、この前方領域V3の後方側に配置される後方領域V4を備えている。
さらに、第1スカート部S1の二重壁部Eは、後方機能収納部V0の前方領域V3に設けられている。
また、第2スカート部S2の一重壁部Aは、後方機能収納部V0の後方領域V4に設けられている。
【0036】
つぎに、図7に示すように、第1スカート部S1の二重壁部Eは、その内側壁部42dの壁面が後方機能収納部V0の下方から上方に向かって外側に広がるように、鉛直面L1に対してほぼ一定の傾斜角度αで傾斜している。
また、図5及び図6に示すように、第2スカート部S2は、その二重壁部Eの内側壁部42dの壁面が下方から上方に向かって外側に広がるように二段階に傾斜している。
【0037】
さらに、図5及び図6に示すように、第2スカート部S2は、第1傾斜段階において、二重壁部Eの内側壁部42dの壁面が下方の支持壁部48の下方壁部48cとの接合部48dから上方の偏向位置P2に向かって外側に広がるように、鉛直面L1に対して第1スカート部S1の内側壁部42dの傾斜角度α1と同一の第1傾斜角度β1で傾斜し(α1=β1)している。
その後、第2スカート部S2は、第2傾斜段階において、偏向位置P2から上方の一重壁部Aに向かって外側に広がるように、第2スカート部S2は、鉛直面L1に対して第1傾斜角度β1よりも大きい第2傾斜角度β2で傾斜している(β1<β2)。
【0038】
つぎに、図1図7を参照して、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
まず、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、後方機能収納部V0の収納領域を上下の領域(上側領域V1、下側領域V2)に区画すると共に機能部(洗浄水供給装置6)を支持する支持壁部48が、スカート部42の側壁部42bの二重壁部Eに接合されることによって支持されているため、支持壁部48やスカート部42の強度を互いに向上させることができる。
また、スカート部42においては、その二重壁部Eと支持壁部48との接合部48dよりも上方の上端部分が、二重壁部Eの内部空間Iが削除された一重壁部Aを備えているた。これにより、スカート部42の側壁部42bにおける二重壁部Eと支持壁部48との接合部48dからその上方の上端部分までの後方機能収納部V0の強度を維持しながら、後方機能収納部V0内の収納領域をより大きく確保することができる。
したがって、便器本体4全体の外形寸法を抑制しつつ、便器本体4における機能部(洗浄水供給装置6)の収納領域を大きく確保することができると共に、便器本体4全体の強度を高めることができる。
【0039】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、例えば、スカート部42における支持壁部48との接合部48dから上方のすべての領域を一重壁部Aに設定すると、後方機能収納部V0内の収納領域をより大きく確保することができる反面、製造時にスカート部42の一重壁部A等の一部が強度不足により歪み等の変形が生じやすくなってしまうという問題がある。
そこで、本実施形態の水洗大便器1においては、スカート部42の側壁部42bの下端から上端まで二重壁部Eで形成された第1スカート部S1と、スカート部42の側壁部42bの下端から所定の上方位置P1まで二重壁部Eで形成されると共に所定の上方位置P1からスカート部42の側壁部42bの上端まで一重壁部Aで形成された第2スカート部S2とを組み合わせることができた。
これにより、製造時のスカート部42の側壁部42bの二重壁部Eや一重壁部Aの歪み等の変形を抑制することができると共に、後方機能収納部V0について、強度不足を解消しつつ、収納領域をより大きく確保することができる。
【0040】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、一般的に、陶器製の便器本体4のボウル部8と後方機能収納部V0とが接合される接合部C1は、ボウル部8自体の重量と後方機能収納部V0内に収納された機能部(洗浄水供給装置6)の重量等により、応力集中等の負荷がかかりやすい箇所となっている。
したがって、便器本体4の製造時や輸送時等においても、便器本体4に対して内力や外力等の負荷がボウル部8と後方機能収納部V0との接合部C1等に作用すると、便器本体4が破損してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態の水洗大便器1においては、便器本体4のボウル部8と後方機能収納部V0との接合部C1に対して、スカート部42の側壁部42bの下端から上端まで二重壁部Eで形成された第1スカート部S1が接合されることにより、ボウル部8と後方機能収納部V0との接合部C1の強度に対しても第1スカート部S1の二重壁部Eにより向上させることができる。
したがって、便器本体4の後方機能収納部V0についても、強度不足を解消しつつ、収納領域をより大きく確保することができる。
【0041】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、第1スカート部S1の二重壁部Eが、便器本体4のボウル部8と後方機能収納部V0との接合部C1と、排水トラップ部12と支持壁部48との接合部C2と、を含み、かつ、排水トラップ部12の出口部12e側の管路の中心である排水芯O1よりも前方側に配置される後方機能収納部V0の前方領域V3に設けられている。
これにより、便器本体4のボウル部8と後方機能収納部V0の前方領域V3との接合部C1を第1スカート部S1の二重壁部Eで支持することができると共に、排水トラップ部12を支持する支持壁部48に対しても第1スカート部S1の二重壁部Eで支持することができる。
したがって、後方機能収納部V0の前方領域V3における第1スカート部S1自体の強度を二重壁部Eにより向上させることができると共に、第1スカート部S1がボウル部8と後方機能収納部V0との接合部C1を支持するときの支持力についても補強することができる。
また、後方機能収納部V0の前方領域V3における第1スカート部S1自体の強度が二重壁部Eにより補強されているため、第1スカート部S1が支持壁部48を介して排水トラップ部12を支持するときの支持力についても補強することができる。
さらに、ボウル部8との接合部C1と、排水トラップ部12と支持壁部48との接合部C2と、を含む後方機能収納部V0の前方領域V3の第1スカート部S1については、その二重壁部Eの構造により、後方機能収納部V0の後方領域V4の第2スカート部S2の一重壁部Aの構造に比べて肉厚な構造にすることができる。
これにより、便器本体4を輸送時や施工時に移動させる際には、作業者が、第2スカート部S2の一重壁部Aに比べて肉厚な第1スカート部S1の二重壁部Eの構造部分を保持しやすくなるため、第1スカート部S1の二重壁部Eの構造部分に比べて強度が低い第2スカート部S2の一重壁部Aを保持することを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、第1スカート部S1については、二重壁部Eの内側壁部42dの壁面が後方機能収納部V0の下方から上方に向かって外側に広がるように、鉛直面L1に対してほぼ一定の傾斜角度α1で傾斜しているため、歪み等の変形を生じ難くすることができる。
また、第2スカート部S2については、その二重壁部Eの内側壁部42dの壁面が下方から上方に向かって外側に広がるように二段階に傾斜しているため、後方機能収納部V0内の収納領域をより大きく確保することができる。
さらに、第1スカート部S1の二重壁部Eの内側壁部42dにおける一定の傾斜角度α1の壁面と、第2スカート部S2の二重壁部Eの内側壁部42dにおける二段階に傾斜している壁面により、第1スカート部S1の二重壁部Eの構造部分と第2スカート部S2の一重壁部Aの構造部分との互いの厚みの差を大きくすることができる。
よって、便器本体4を輸送時や施工時に移動させる際には、作業者が、第2スカート部S2の一重壁部Aに比べて肉厚な第1スカート部S1の二重壁部Eの構造部分を保持しやすくなるため、第1スカート部S1の二重壁部Eの構造部分に比べて強度が低い第2スカート部S2の一重壁部Aを保持することを抑制することができる。
【0043】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、第2スカート部S2が、第1傾斜段階において、その二重壁部Eの内側壁部42dの壁面が下方の支持壁部48との接合部48dから上方の偏向位置P2に向かって外側に広がるように第1スカート部S1の内側壁部42dの傾斜角度α1と同一の第1傾斜角度β1で傾斜し、二重壁部分Eと一重壁部分Aの第一段階の傾斜が同一である。
これにより、第2スカート部S2の二重壁部Eの内側壁部42dの壁面が下方の支持壁部48との接合部48dから上方の偏向位置P2までの領域においては、第1スカート部S1及び第2スカート部S2のそれぞれの二重壁部Eの内側壁部42dの壁面が互いに段差なく滑らかに形成される。
したがって、支持壁部48との接合部48d近傍の第1スカート部S1及び第2スカート部S2のそれぞれにおいても、互いに段差や歪み等の変形が生じ難くなるため、後方機能収納部V0の強度不足を抑制することができる。
また、第2スカート部S2が、第2傾斜段階において、二重壁部Eの内側壁部42dの偏向位置P2から上方の一重壁部Aに向かって外側に広がるように第1傾斜角度β1よりも大きい第2傾斜角度β2で傾斜しており、第2傾斜段階の第2スカート部S2の第2傾斜角度β2の傾斜が、二重壁部Eの偏向位置P2を基端として、上方の一重壁部Aに向かって外側に広がる形状にすることができる。
これにより、第2スカート部S2の第2傾斜段階において、二重壁部Eから一重壁部Aに遷移する遷移部分の強度不足を抑制しつつ、後方機能収納部V0内の収納領域をより大きく確保することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 本発明の一実施形態による水洗大便器(ハイブリット式の水洗大便器)
2 主給水路
2a リム側給水路
2b ジェット側給水路
2c タンク側給水路
2d ポンプ給水路
4 便器本体
6 洗浄水供給装置(機能部)
8 ボウル部
10 リム部
12 排水トラップ部
12a 排水トラップ部の入口部
12b 排水トラップ部の上昇管
12c 排水トラップ部の下降管
12d 排水トラップ部の頂部
12e 排水トラップ部の出口部
14 リム導水路
14a リム吐水口
16 ジェット導水路
16a ジェット口
18 切替弁
20 貯水タンク
22 加圧ポンプ
24 止水栓
26 分岐金具
26a 停電切替弁
28 バルブユニット
30 定流量弁
32 ダイヤフラム式の主弁
34 電磁弁
36 コントローラ
38 上側フロートスイッチ
40 下側フロートスイッチ
42 スカート部
42a スカート部の後壁部
42b スカート部の側壁部
42c スカート部の外側壁部
42d スカート部の内側壁部
42e スカート部の底部
42f スカート部の底部の凹部
44 接続開口部
46 排水ソケット収納部
48 支持壁部
48a 接合部
48b 水平壁部
48c 下方壁部
48d 下方壁部の左右方向の外側端部、接合部
50 水平主壁部
50a 水平主壁部の左右の側端部
52 水平補助壁部
52a 水平補助壁部の左右の側端部、接合部
A 一重壁部
B 分岐部
C1 便器本体のボウル部と後方機能収納部との接合部
C2 排水トラップ部と支持壁部との接合部
D 排水管
E 二重壁部
F 床面
I 内部空間
L1 鉛直面
O1 排水芯
P1 第2スカート部の二重壁部の所定の上方位置、
P2 偏向位置
S 排水ソケット
S1 第1スカート部
S2 第2スカート部
T タンク装置(洗浄水供給装置)
V0 後方機能収納部
V1 後方機能収納部の上側領域
V2 後方機能収納部の下側領域
V3 後方機能収納部の上側領域の前方領域
V4 後方機能収納部の上側領域の後方領域
W0 主給水源
α1 第1スカート部の内側壁部の傾斜角度
β1 第2スカート部の内側壁部の第1傾斜角度
β2 第2スカート部の内側壁部の第2傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7