(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171885
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ペンニードルハブの注射深さの最適化
(51)【国際特許分類】
A61M 5/46 20060101AFI20221104BHJP
A61M 5/42 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61M5/46
A61M5/42 510
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149087
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2019544053の分割
【原出願日】2018-02-16
(31)【優先権主張番号】62/459,727
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522179943
【氏名又は名称】エンベクタ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー リニ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード クルーグ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ モレル
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ペティス
(57)【要約】
【課題】従来装置は、意図された使用に全体的に適しているが、薬物または薬剤を選択された目標領域に送達するためにカニューレの貫入深さを制御するための改良された装置に対する継続的な要求が存在している。
【解決手段】ペンニードル用のニードルハブ(10)は、患者の皮膚と接触するための拡大された表面を備えて提供される。拡大された表面は、ニードルまたはカニューレが皮膚を所望の深さまで貫入することができ、ニードルまたはカニューレの実質的に全体の露出された長さが皮膚を所望の深さまで貫入することを可能にする、寸法および形状を有する表面を備えて提供される。ニードルハブの表面は、約1~5mm
2の表面積を有する第1の接触表面を形成する内側円錐形状部材(26)と、第2の接触表面を形成する、周辺縁にある外側リング(28)とによって、約15から50mm
2の合計表面積を有して形成され得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンニードル送達装置に結合するように構成されたニードルハブであって、前記ニードルハブは、
近位端部および遠位端部を備える本体であって、前記近位端部は、前記ペンニードル送達装置に結合されるように構成され、ポストが、前記本体の前記遠位端部から延びる、本体と、
前記ポストに結合され、前記ポストから延びるカニューレと、
を含み、
前記ポストは、ポスト側壁および上壁を有し、前記上壁は、患者の皮膚へ前記カニューレを挿入すると前記患者の皮膚の表面と接触するための接触表面を形成する外側表面を有し、前記接触表面は、前記カニューレを取り囲み、環状の第1の接触表面を形成する、第1の部分と、前記第1の部分を取り囲み、前記第1の部分から径方向に外方向に離間され、環状の第2の接触表面を形成する、第2の部分と、を有し、
前記第1の接触表面および第2の接触表面は、挿入力の範囲にわたって安定性のある送達を提供し、
前記上壁は、前記上壁の内側表面から前記本体の前記近位端部に向かって延在する内側ポストを有し、前記内側ポストと前記ポストの前記ポスト側壁の内側表面との間に前記内側ポストを安定化させるための複数のリブが延在する、
ニードルハブ。
【請求項2】
前記接触表面は、前記第1の接触表面と前記第2の接触表面との間に環状凹部を有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項3】
前記第1の接触表面は、前記カニューレを挿入すると前記患者の皮膚と接触して前記皮膚の表面を変形させるように位置決めされ、前記第2の接触表面は、前記第1の接触表面と接触する前記皮膚が偏向した時に前記皮膚と接触する、請求項2に記載のニードルハブ。
【請求項4】
前記ニードルハブの前記接触表面は、前記第1の接触表面および前記第2の接触表面の合計表面積を補完して、前記カニューレが前記皮膚を所定の深さで貫入できるようにする、軸方向高さを有する実質的に円錐状の構成を有する、請求項3に記載のニードルハブ。
【請求項5】
前記カニューレは、前記接触表面および前記合計表面積の前記軸方向高さを補完して、前記カニューレが前記皮膚を所定の深さまで貫入できるようにする長さおよびゲージを有する、請求項4に記載のニードルハブ。
【請求項6】
前記第1の接触表面は、2mmから3mmの直径を有する、前記カニューレに隣接する湾曲した表面を有し、前記第2の接触表面は、5.0から7.0mmの外径を有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項7】
前記ポストの前記接触表面は、前記ポストの外側周辺縁と前記カニューレとの間を延びる実質的に凸状の表面を有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項8】
前記カニューレを取り囲む前記第1の接触表面は、前記第2の接触表面の曲率半径を補完する曲率半径を有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項9】
前記カニューレは、3.5から8.0mmの長さを有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項10】
前記ポストは、遠位表面から延びる内側リングを有し、および、前記第1の接触表面を画定して、前記患者の皮膚内への前記カニューレの挿入中に前記皮膚の表面と接触する径方向幅を備えた軸方向遠位面を有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項11】
前記ポストは、前記第2の接触表面を画定する軸方向面を有する、前記ポストから延びる外側リングを備えた外側周辺縁と、前記第1の接触表面を画定する、前記カニューレを取り囲む軸方向面を備えた内側円錐形状部材と、前記外側リングと前記内側円錐形状部材との間を延びる環状形状の凹状部分と、を有し、前記内側円錐形状部材および外側リングは、連続曲線内で位置合わせされる、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項12】
前記凹状部分は、前記内側円錐形状部材の前記軸方向面および前記外側リングの軸方向面と位置合わせされた連続的な凸状表面を有する、請求項11に記載のニードルハブ。
【請求項13】
前記凹状部分は、0.4から1.0mmの深さを有する、請求項12に記載のニードルハブ。
【請求項14】
前記内側円錐形状部材および前記外側環状リングは、2~3mm離間され、前記接触表面は、5~8mmの直径を有する、請求項11に記載のニードルハブ。
【請求項15】
前記環状の第1の接触表面および前記第2の環状接触表面は、15~35mm2の合計表面積を有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項16】
前記環状の第1の接触表面が、3~4mm2の表面積を有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項17】
前記第2の部分が、14~16mm2の表面積を有する、請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項18】
前記環状の第1の接触表面は、1~5mm2の表面積および0.8~1.2mmの径方向幅を有し、
前記第2の部分は、1.2~1.7mmの径方向幅を有し、
前記第1の接触表面および前記第2の接触表面は、15~50mm2の合計表面積を有する、
請求項1に記載のニードルハブ。
【請求項19】
前記複数のリブが、前記ポストの前記上壁の前記内側表面から前記ポストの全体の長さにわたって延在する、請求項1に記載のニードルハブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年2月16日出願の米国特許仮出願第62/459,727号明細書に対する優先権を主張し、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
本発明は、ニードルまたはカニューレの挿入深さを制御するように構成されたニードルハブおよびニードルハブ面を対象にする。本発明はまた、初期挿入中および患者への物質の注入中にニードルの貫入深さを制限する界接特徴を備えたニードルハブを有する、ペンニードルを対象にする。接触面は、貫入または挿入の深さを最適化するように構成され、ここでは実質的に、ハブから露出したニードルまたはカニューレの全長を皮膚に挿入することができ、それにより、向上した貫入深さの安定性を提供する。ニードルハブは、皮膚の表面に印加された表面圧力を選択された領域内に集中させて、皮膚内への貫入深さを制御するための、特定の領域を備えたハブ面を有する。
【背景技術】
【0003】
患者の皮膚へのニードルの挿入は、主に、ニードル支持体の特徴または構造ではなく、ニードルの特徴に基づいて決定され、これは、非特許文献1に開示されている。患者の皮膚へのニードル挿入は、通常、注射深さに影響を与える3つの段階に分類される。第1段階は、ニードルと皮膚との初期接触に相当し、ここでは皮膚の表面を穿孔することなく、組織が変形する。第2段階は、皮膚の穿孔および皮膚の弛緩を指し、このときニードルの挿入力は止められている。第3段階は、ニードルが抜かれる段階であり、ニードルが抜かれるにつれて、皮膚を外方向に引っ張り、または伸張させるものである。
【0004】
支持構造がニードルの注射または抜き取り中に皮膚と接触しない、さまざまな注射装置が生み出されてきている。他の装置も提案されてきており、ここでは装置の端面は、皮膚の表面と接触して患者への貫入深さを制限するように位置決めされる。
【0005】
ペン注射器送達装置が、非経口薬剤の自己投与を容易にするために開発されてきた。ペンニードルは、ニードルベースの注射システムの構成要素であり、接着剤を使用してプラスチックハブ内に組み付けられた両頭カニューレからなる。ハブは、雌ねじを有し、それにより、ハブをペン注射器装置に取り付けることを可能にする。ペンニードル取付具は、カニューレの近位端部が薬剤カートリッジのゴムセプタムを貫通して流体流路を作りだすことを可能にする。多くの糖尿病患者の場合、血糖制御の維持は、便利で目立たない、バイアルおよびシリンジの代替となるように開発されたペン注射器送達装置を使用して、皮下(SC)組織内へのインスリンの頻回投与を実行することによって達成される。数多くのペン注射器が、使い捨て構成または複数回使用構成として市販されており、その各々は、さまざまな患者中心の特徴を提供している。遠位のペンニードルカニューレは、送達部位と接触し、送達のための導管を提供する。ペンニードル設計は、標的組織空間への安定した送達を可能にし、注射液の漏出を最小限に抑え、注射に関連する出血および損傷などの痛み/不快感および副作用を低減するように意図される。主な設計特徴、ニードルの長さ/ゲージおよびハブ面の幾何学的形状は、送達システムの機構および注射技術と共に、注射の成功を決定づけるものである。
【0006】
注射は、皮膚の皮内領域、皮下領域、および筋肉内(IM)領域内で行われてもよい。インスリンを含む、多くのタイプの注射可能な薬剤の場合、SC領域が注射の投与に好ましい。例として、非特許文献2を参照されたい。
【0007】
ニードルの長さ、例えば約4mmから5mmの長さを有するニードルなどが、薬剤を皮下領域内の特定の目標深さに注射するために適応される。本発明は、ニードルを所望の目標深さに安定して挿入できるような構造を提供する。従来のペンニードルは、ハブから延びる軸方向のポスト上に支持されたカニューレを有する。ポストは、狭い部分と、注射中に皮膚に接触しない、相対的に広い基部と、を形成する。当技術分野で知られている他のペンニードルでは、注射部位に接して置かれるハブの遠位面は、相対的に大きくすることができ、縁にわずかなテーパが提供されることがある。ハブの縁は、カニューレが患者の皮膚表面に対して角度を付けて挿入されたときに、皮膚と係合することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Needle Insertion Modeling;Identifiability and Limitations,L.Barbe,Biomedical Signal Processing and Control 2 (207) 191-198
【非特許文献2】Lo Presti,et al.,Skin and subcutaneous thickness at injecting sites in children with diabetes:ultrasound findings and recommendations for giving injection,Pediatric Diabetes (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来装置は、意図された使用に全体的に適しているが、薬物または薬剤を選択された目標領域に送達するためにカニューレの貫入深さを制御するための改良された装置に対する継続的な要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、注射装置、特にペン注射器などの注射装置と共に使用するためのニードルハブを対象にする。本発明は、さらに、薬物、薬剤、または他の物質を患者に、皮膚の表面に対する所望の深さで注射するための注射装置を対象にする。ニードルハブは、皮膚との接触表面を形成するハブ面を有し、また、ニードルまたはカニューレによる貫入深さを制御および最適化して、ニードルまたはカニューレによる所望の深さ以上の貫入を阻害するための所定の形状、寸法、および幾何学的形状を含む。ニードルハブは、露出したカニューレまたはニードルの全長が組織に挿入されるように挿入深さを最適化し、それにより、注射の深さの向上した安定性を提供する。ニードルハブは、ユーザによって印加された挿入力の範囲にわたって、カニューレ挿入の深さの安定性を提供する形状および構成を備えた、皮膚接触面を有する。
【0011】
本発明の一実施形態におけるニードルハブ面は、ニードルの貫入深さを制御する形状および寸法によって決定された表面幾何学形状を備えた皮膚接触表面を有する。ニードルハブの面は、皮膚に印加された圧力を注射部位に集中させて、貫入深さを制御しながら挿入深さを最大化する、表面領域を提供する。一実施形態において、ニードルハブは、ニードルの長さを補完してニードルまたはカニューレによる筋肉内貫入を最小限にする、形状および寸法を有する。ニードルハブ面は、皮膚の選択された表面領域上に力を分配して、ニードルまたはカニューレの実質的な全長が皮膚または組織に所望の深さで貫入することを可能にしながら、所定の深さ以上の貫入を阻害する、寸法および構成を有することができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、皮膚に対して圧力または力を集中させるためのニードルの基部周りの領域と、挿入中の皮膚の変形を制限することにより挿入中の挿入深さを制御するための周囲特徴と、を有する接触面を備えたニードルハブを有する、注射装置が提供される。接触面の輪郭は、与えられたニードルの長さに対して、ニードルの最大貫入深さを提供する。ハブの周囲は、皮膚表面とニードルハブとが完全に係合した時、ユーザによって印加された圧力または力を皮膚の所定の表面領域に分配する形状を有する。ニードルハブの周囲は、挿入力を皮膚の表面領域上に分配することにより、ニードル貫入および皮膚の変位を制限する形状および寸法を有し、注射部位における皮膚の偏りおよび歪みを制御する。
【0013】
本発明の別の特徴は、患者による向上した快適感の知覚を伴う所望の圧力分布を提供するための、所定の輪郭を有する接触表面を備えた、ニードルハブを提供することである。ニードルハブの接触表面は、図示する実施形態において、円錐状または凸状の形状を有する。
【0014】
本発明の一実施形態において、ニードルハブは、送達容量の範囲にわたって物質の安定した送達を提供するため、および、安定性があり、再現可能な操作者内および操作者間の送達結果を提供するための形状および寸法を備えた、接触表面を有する。
【0015】
本発明のニードルハブはまた、1~60Uの用量における、漏れ、浮腫、および紅斑などの注射の副作用を最小限に抑える皮膚接触面も提供する。接触表面は、ユーザにより知覚される低レベルの痛みおよび不快感をもたらす形状および寸法を有する。本発明のニードルハブはまた、使用の不安感を低減する、より小さく/より短く知覚されるプロファイルを提供する。
【0016】
本発明の一実施形態は、主にペン注射器装置用のニードルハブを提供し、ここで、ニードルハブの接触表面は、異なるユーザ間の注射技術の影響を低減し、皮下送達のための短いペンニードルの安定した導入を提供する、形状および寸法を有する。ニードルハブは、ニードルハブが患者の皮膚に押しつけられたとき、皮膚の表面の変形を制御することにより、最適な貫入深さおよび注入される物質の送達を提供するように構成される。
【0017】
本発明のこれらおよび他の目的は、約1mm2から5mm2の初期接触表面領域を形成する形状を備えた皮膚接触面を有する、ペンニードル用のニードルハブを提供することにより達成される。別の実施形態において、初期接触表面は、約1~10mm2であり得る。ニードルハブは、皮膚と完全に接触した時、約5~50mm2の表面積を有する形状を有する。一実施形態において、完全接触における表面積は、約15から約35mm2であり得る。
【0018】
本発明の特徴は、基本的に、ペン注射器送達装置に結合するように構成されたニードルハブを提供することによりもたらされ、ここでニードルハブは、近位端部および遠位端部を備える本体を含み、近位端部はペン注射器送達装置と結合するように構成される。カニューレは本体と結合し、患者への挿入のために遠位端部から延びる。遠位ハブ端部は、患者の皮膚へカニューレを挿入する際に、患者の皮膚表面と接する。接触表面は第1の部分を有し、これはカニューレの基部を取り囲み、約1~5mm2の表面積を有する環状の第1の接触表面を形成する。接触表面は第2の部分を有し、これは環状の第1の接触表面を取り囲み、環状の第1の接触表面から外側に径方向に離間され、環状の第2の接触表面を形成する。ここで、第1の接触表面および第2の接触表面は、約15~50mm2の合計表面積を有する。別の実施形態において、環状の第1の接触表面および環状の第2の接触表面は、約15mm2から約35mm2の合計表面積を有し得る。一実施形態において、内側円錐形状部材は、第1の接触表面を形成し、第2の接触表面を形成する外側リングから約0.5mmの距離を軸方向に延びる。
【0019】
本発明の特徴は、ペンニードルに結合するための本体と、本体の遠位端部から延びるポストと、ポストに結合されたカニューレと、を有する、ニードルハブを備えた薬剤ペンを提供することで、薬剤を薬剤ペンで注射するための方法を提供することにより、さらに達成される。ポストは、皮膚へカニューレを挿入する際に患者の皮膚と接触するための、接触表面を有する。接触表面は、約1~5mm2の表面積を有する環状の第1の接触表面を形成しながらカニューレを取り囲む第1の部分と、第1の部分を取り囲み、第1の部分から外側に径方向に離間され、環状の第2の接触表面を形成する第2の部分と、を有し、ここで、第1の接触表面および第2の接触表面は、約15~35mm2の合計表面積を有する。
【0020】
本発明の1つの特徴は、凸状表面を形成する、実質的に円錐形状を有する皮膚接触表面を備えたニードルハブを提供することである。一実施形態において、円錐形状の皮膚接触表面は、凸状表面に対して、約0.3から0.7mmの軸方向高さを有するニードルハブの遠位面から突出する、中央に配置された円錐形状の環状部分を有する。カニューレは、皮膚を貫入するために、環状部分の中央部分から延びる。本発明の一実施形態において、ニードルハブの凸状接触表面は、約0.5から2.0mmの軸方向高さと、約5.0から8.0mm、典型的には約5.0から7.0mmの幅とを有し、皮膚と接触し、カニューレによる皮膚内への制御された貫入深さを提供するために十分な表面積および適切な形状を提供する。
【0021】
本発明の別の特徴は、皮膚を貫入するためのカニューレを有する注射装置を提供することであり、装置は、カニューレの基部周りに、貫入深さを制御するための幅および高さを有する実質的に凸状の表面を有する、皮膚接触表面を有する。凸状表面は、カニューレの挿入中に皮膚の変形を制御して、カニューレが皮膚を貫入して筋肉内層まで達することを防ぐ、高さおよび幅を有する。
【0022】
ニードルハブの凸状の湾曲した接触面は、患者の注射部位と接触して、患者により優れた快適感および安定性を提供するための表面積を提供する。インスリンおよび他の糖尿病関連の薬物は、皮下領域に送達されることが多いため、ニードルの貫入深さを制御することが望ましい。
【0023】
さまざまな実施形態のそれぞれの好ましい特徴または任意選択の特徴を他の特徴と組み合わせてもよく、1つまたは複数の特定の特徴と組み合わせて説明した特徴もまた、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わせてもよいことが理解されるであろう。
【0024】
本発明のこれらおよび他の特徴は以下の本発明の詳細な説明から明らかとなり、図と共に本発明のさまざまな実施形態を開示するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下は、図の簡単な説明である。
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態におけるニードルハブの側面図である。
【
図3】
図1の実施形態におけるニードルハブの上面図である。
【
図6】皮膚へのカニューレの初期挿入および皮膚内への初期貫入深さを示す、ニードルハブの側面図である。
【
図7】皮膚に挿入されたカニューレおよびニードルハブの端部表面の形状に適合するように弛緩する皮膚、および貫入深さを示す、ニードルハブの側面図である。
【
図8】ニードルの着座深さの密度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のペンニードルは、薬剤または他の物質を患者に注射するためのペン注射器装置に取り付けられるニードルハブを指す。ニードルおよびカニューレという用語は、本明細書において同じ意味で用いられ、対象者の注射部位へ挿入するための鋭利な端部を有する細い管状部材を指す。遠位方向は、注射部位に向かう方向であり、近位方向は、反対方向である。軸方向は、ニードルおよびニードルハブの長手方向軸に沿う、またはこれに平行な方向を指し、径方向は、軸方向に対して垂直の方向を指す。ペン注射器装置は、従来技術で知られているような標準的な装置であることができ、ここで、ニードルハブは、物質を患者に送達するためのペン注射器の端部に取り付けられ得る。使用後、ニードルハブは取り外されて破棄され、次の注射のために新しいニードルハブに交換される。
【0028】
成人の皮内層は、通常、約2から3mmの厚さを有し、それにより、皮内注射深さは、皮膚の外側表面から測定して、約0から3mmの範囲である。皮下層の厚さは、患者の年齢、性別、肥満度指数(BMI)、および注射が投与される体の部位に応じて変わる。皮下領域は、約7mmから約15mmの平均厚さを有する。インスリンは、好ましくは、皮下領域に送達される。
【0029】
本発明は、注射装置、特に皮膚を所定の貫入深さまで貫入するための所定の長さを有するカニューレを備える、ニードルハブを対象にする。ニードルまたはカニューレは、たとえば、3~8mmであることができ、31~33ゲージであることができる。他の実施形態において、ニードルまたはカニューレは、意図する目的に適した他のゲージであることができる。一実施形態において、ニードルは4~8mmであることができる。他の実施形態において、ニードルは27~33ゲージであることができる。ニードルハブは、カニューレが皮膚を貫入するときに、皮膚と接触し、これを変形させる皮膚接触表面を有し、制御された貫入深さを提供する。接触表面は、皮膚の適切な表面領域にわたって挿入力を分散させることにより、カニューレ挿入中、皮膚の変形を制御して皮膚内への貫入深さを制限する、所定の形状、幅、および高さを有する。約3mm以下の小さく狭い皮膚接触表面を有する装置での印加力は、使用中に装置が皮膚に押しつけられたとき、カニューレ周りの皮膚を圧迫することができる。集中的な圧迫は、カニューレを皮膚内の所望の深さより下に貫入させることがある。本発明のニードルハブの外周は、圧力を分散させて皮膚の圧迫およびカニューレの貫入深さを制限する。一実施形態において、ニードルハブは、ユーザによって印加加えられる通常のまたは普通の挿入力によって、カニューレの全長が組織に挿入されるような形状および構成を備えた、皮膚と接触する表面領域を有する。接触表面の形状および構成は、印加力の範囲にわたって皮膚内への注射深さの向上した安定性を提供する。
【0030】
カニューレを取り囲むペンニードル装置の皮膚接触表面は、皮膚と接触して接触圧力を分散させ、カニューレの貫入深さを制限または制御するように構成された幅および高さを有する。本発明の一実施形態において、ペンニードル装置は、約4mmのカニューレの貫入を得るように構成される。皮膚接触表面は、カニューレの貫入中、装置が皮膚に押しつけられたとき、皮膚表面の変形の形状、幅、および深さを制御するようにさらに構成される。幅は、皮膚へのカニューレの初期挿入中に皮膚と接触する表面領域、およびユーザによって印加される通常の力における薬物の注射または送達中に皮膚と接触する表面に対応する。高さは、接触表面の外側周辺縁と、接触表面の近位端部を形成するカニューレの基部との間の軸方向の距離を指す。接触表面の表面領域および形状は、ニードルまたはカニューレの全長または実質的な全長が、貫入深さを制御しながら皮膚を貫入することを可能にするように構成され得る。
【0031】
一実施形態におけるニードルハブは、カニューレを取り囲む、約1.0mm2から約5.0mm2の、皮膚と最初に接触するための第1の接触表面領域を有する。他の実施形態において、第1の接触表面は、約1.0から4.0mm2の表面積を有する。環状形状の第2の接触表面は、第1の接触表面領域を取り囲み、これから径方向に外側に、かつ軸方向に離間されており、約10.0から40mm2の表面積を有する。さまざまな実施形態において、ニードルハブの皮膚接触表面領域は、約15.0mm2から50.0mm2を有する第1の接触表面領域および第2の接触表面領域によって画定された、表面領域を有する。一実施形態において、第1の接触表面領域および第2の接触表面領域の合計表面積は、約15.0から35.0mm2であり得る。さらなる実施形態において、第1の接触表面領域および第2の接触表面領域の合計表面積は、約15.0から20.0mm2であり得る。さらなる実施形態において、第1の接触表面領域は、約1mm2から5mm2の表面積を有することができ、第2の接触表面領域は、約10mm2から30mm2の表面積を有することができ、それにより約15mm2から約35mm2の合計表面積を提供する。
【0032】
ニードルハブの皮膚接触表面は、実質的に円形の形状と、丸みのある、または、湾曲した凸状プロファイルとを有することができ、カニューレは円形の皮膚接触表面の中心軸に沿って配置される。接触面の湾曲したまたは傾斜した表面は、カニューレの基部にある中心点に向けて収束し、ここでカニューレは、ニードルハブから延びて接触表面の基部から最も遠い接触面の外側端部を画定する。この実施形態におけるカニューレは、約4.0mmから約6.0mmの長さを有し、薬物、特にインスリンを、特定の薬剤に対する皮膚の目標深さまで送達するための深さおよび皮膚層まで皮膚を貫入する。別の実施形態において、カニューレは、約3.5から約8.0mmの長さを有する。
【0033】
図示する実施形態において、ニードルハブは、ハブの外側周辺縁からカニューレの基部にあるニードルハブの接触表面の遠位の軸方向端部まで延びる、実質的に凸状の形状を有する皮膚接触表面を有し、それにより、皮膚接触表面は、実質的に半球状または円錐の形状を有して、カニューレの初期貫入中および薬物の送達のための完全な挿入中、皮膚と接触する。ニードルハブの皮膚接触領域の凸状表面は、外側リングによって形成された接触表面の外側周辺縁から、カニューレを取り囲み、周辺縁から軸方向に離間された接触表面の最も外側の中央円錐部分まで測定して、約2.0から8.0mmの幅または直径と、約0.5から約1.0mmの軸方向高さとを有することができる。一実施形態において、ニードルハブの凸状表面を形成する軸方向面は、約5.0から9.0mmの直径を有し、約20.00mm2から約70.0mm2、典型的には約25.0から65.0mm2の合計表面積を提供することができる。別の実施形態において、軸方向面は、約5.0から約7.0mmの直径を有する。
【0034】
一実施形態において、凸状皮膚接触表面は、約0.5mmの高さと、第1の接触表面領域および第2の接触表面領域によって形成された約15mm2から20mm2の組み合わせられた、または合計の皮膚接触表面積とを有する。第1の接触表面および第2の接触表面は、約2から3mmの距離を離して離間され得る。高さは、ニードルハブおよび外側リングの外側縁から、ニードルハブの中央内側円錐形状部材の軸方向面までの軸方向距離によって測定され、通常、約0.5から1.0mmである。ニードルハブの合計の軸方向表面領域は、第1の接触表面、第2の接触表面、および第1の接触表面と第2の接触表面との間の領域によって形成され、約25.0から65.0mm2であることができる。
【0035】
接触表面領域の直径、高さ、および合計表面積の間の関係は、カニューレが皮膚に挿入されたとき、ニードルハブに通常加えられる印加力の範囲にわたってカニューレの制御された貫入深さを提供する。図示するニードルハブは、主に、ペン注射器送達装置と共に使用することを対象にする。他の実施形態において、接触表面の構成は、再使用可能な、または使い捨ての注射器装置、自動注射器、シリンジ、パッチポンプまたは皮膚との接触を必要とする他の送達装置と共に使用するのに適している。
【0036】
本発明の一実施形態において、ニードルハブの皮膚接触表面は、中央の内側円錐形状部材と、内側円錐形を取り囲み、これから径方向に外方向に離間され、内側円錐形との間に環状凹部を形成する外側リングとを備えた、実質的に円錐の形状を有する。一実施形態における外側リングは、ニードルハブの接触面の外側周辺縁を形成する。一実施形態における凹部は、皮膚へのカニューレの挿入中、装置が皮膚に押しつけられたとき、皮膚が凹部の底部と接触することを可能にする深さを有する。他の実施形態では、凹部は、皮膚が凹部の底部と接触しない深さを有する。1つの実施形態では、凹部の深さおよび径方向の幅は、カニューレの貫入中、皮膚表面の変形を制御して貫入深さを制御する接触表面の部分を形成するように構成され得る。凹部は、約0.4から2.0mmの深さ、通常は約0.4から1.0mmの深さを有することができる。凹部は、ニードルハブの外側周辺縁において外側リングにより、および接触表面の中央においてカニューレを取り囲む内側円錐リングにより、画定され得る。他の実施形態では、皮膚接触表面内に形成された凹部は、約6から35.0μlの容積を有することができる。
【0037】
内側円錐形状部材は、約2.0から約4.0mm、典型的には約2.0から3.0mmの外径と、約1.0から5.0mm2の範囲の軸方向接触表面領域と、を有する内側環状リングを形成する。一実施形態において、外側リングは、約10.0から35.0mm2の軸方向表面領域を有することができる。内側円錐形状部材は、カニューレが最初に皮膚に挿入されたときの初期接触表面を形成することができる。内側円錐形状部材は、外側リングの軸方向面の外側縁に対して0.3~0.7mmの軸方向高さを有することができる。別の実施形態では、内側円錐形状部材は、外側リングの外側縁に対して約0.5から1.0mmの軸方向高さを有することができる。ニードルハブは、1~15mm2の初期接触表面領域と、5~50mm2の完全着座表面積とを有することができる。一実施形態において、初期接触表面領域は、内側円錐形状部材の軸方向面により形成される。
【0038】
一実施形態において第2の接触表面を形成する外側リングは、患者の皮膚と接触するための約10.0~30.0mm
2の軸方向表面領域を有することができる。外側リングは、凹部の底部から、約0.4から約1.25mmの軸方向高さを有することができる。患者の皮膚へカニューレまたはニードルを挿入する、および引き抜く間、カニューレの貫入に影響を与える皮膚表面の歪みおよび変形が引き起こされる。
図1~7を参照すれば、本発明の一実施形態は、ペンニードルと連結するための本体12と、カニューレ20を支持し、挿入および注射中に患者の皮膚と接触するための面を形成するポスト14と、を有するニードルハブ10である。本体12は、側壁16と、本体の中心軸に向かって内方向に延びる肩部18とを備えた、実質的に円筒形状を有する。図示する実施形態では、肩部18は、本体の長手方向軸に対して実質的に垂直に延びる。
【0039】
ポスト14は、肩部18から軸方向に延び、カニューレを支持し、皮膚接触表面を画定する軸方向面24を備えて形成される。ポスト14は、使用中にポストの面特徴のみが皮膚と接触するような距離で、本体12から延びる軸方向高さまたは長さを有する。ポスト14の軸方向面24は、使用中、ニードルハブの皮膚接触表面を形成する。軸方向面24は、接触表面の第1の部分および第1の接触表面を形成するためにポスト14から軸方向に突出する、せり出した中央円錐形状部材26によって形成される。ポストの周囲に形成された環状外側リング28は、第2の接触表面領域を形成する。環状形状凹部30が、中央円錐形状部材26と外側リング28との間に形成される。軸方向面24および皮膚接触表面は、外側リング28の外側周辺縁および内側円錐形状部材26によって画定される。図示する実施形態では、環状凹部30は、中央円錐形状部材26と外側リング28との間に延びる、実質的に円錐形状を有する底部表面34を有し、それにより、底部表面34は、内側部材26から外方向に、外側リング28に向かって傾斜して延びる。図示する実施形態では、環状凹部30は、内側部材26および外側リング28に対して実質的に均一の深さを有する。底部表面34は、実質的に均一の深さの連続表面を形成し、内側部材26および外側リング28の軸方向面によって形成された曲率を補完する、円錐曲率を有する。
【0040】
中央円錐形状部材26は、ポスト14の軸方向面から延びて、
図1に示すように、ニードルハブの軸方向寸法に関して、外側リング28の軸方向高さより大きい軸方向高さを画定する。中央円錐形状部材26の高さ、外側リング28の高さ、およびこれら高さの相違は、初期挿入中は皮膚の歪みおよび偏向に寄与し、使用中、皮膚が弛緩した後は、カニューレの貫入深さの制御に寄与する。円錐形状部材26の軸方向面と外側リング28の軸方向面との間の軸方向空間は、中央円錐形状部材26が第1の接触表面によって皮膚と初期接触して皮膚を変形させ、圧力を中央部材に集中させることを可能にする。次いで、第2の接触表面を形成する外側リング28が皮膚と接触して、軸方向面の全幅にわたって圧力を分散させることにより、中央円錐形状部材26の高さの違いによって貫入深さおよび皮膚の変形を制限し、制御する。
【0041】
図示する実施形態における中央円錐形状部材26は、ポスト14の軸方向中央に位置決めされた、実質的に環状のリング様形状を有し、ポスト14の軸方向に延びる。中央円錐形状部材26の環状軸方向表面38は、軸方向に外方向に面して内側リングを形成し、ニードルハブ10の皮膚接触表面の環状の第1の接触表面を形成する、第1の皮膚接触部分を画定する。
図1~3および5に示す実施形態では、中央円錐形状部材26は、カニューレおよびカニューレをハブ10に固定するための接着剤を受け入れるための接着剤ウエル32を形成する、中央凹部を有する。接着剤ウエル32は、カニューレがペン注射器装置と連通するためのハブを通って延びるための軸方向通路を有する。接着剤ウエルは、内側円錐形の内側縁において約1.5から2mmの直径を有することができる。
【0042】
図1~3および5に示すように、中央円錐形状部材26は、軸方向面38と共に円錐形状を形成する環状外側表面36を有する。図示する実施形態における外側環状表面36は、実質的に軸方向に延び、僅かな外方向テーパを有して形成される。図示する実施形態では、軸方向面38は、ニードルハブおよび中央部材26の中央長手方向軸に対して外方向に延びる表面を有する。図示する実施形態では、中央部材26の軸方向面38は、僅かな曲率を有し、内側円錐形状部材26の内側縁から外側周辺縁に向かって湾曲する円錐形状を形成して、円錐形状皮膚接触表面の第1の部分を形成する。これまで論じたように、軸方向面38は、第1の接触表面を画定し、通常、約1から約5mm
2の表面積を有する。
【0043】
外側リング28は、丸みのある湾曲した内側縁と、ポスト14の外側環状表面と共に収束する、丸みのある外側縁とを備えた、僅かに湾曲した軸方向面40を有する。中央円錐形状部材26の軸方向面38は、ポスト14の周辺縁に向かって僅かに外方向に傾斜して、実質的に円錐形状の接触表面を形成する。軸方向面38は、ポスト14の接触表面の第1の部分を形成する。外側リング28の軸方向面40は、接触表面の第2の接触表面部分を形成する。円錐形状部材の軸方向面38の曲率半径は、外側リング28の軸方向面40の曲率半径を補完し、連続的な曲線を形成するように位置合わせされる。
【0044】
図示する実施形態における外側リング28の軸方向面40および内側円錐形状部材26の軸方向面38は、約6から約9mmの曲率半径を有する曲率を形成するように配向される。外側リングの軸方向表面40は、約10.0から約40.0mm2の表面積を有する第2の接触表面を形成することができる。外側リング28および軸方向面40は、約5.0から7.0mmの直径を有することができる。一実施形態では、軸方向面38は、ニードルハブの長手方向軸に対して垂直に、および中央円錐形状部材の軸に対して垂直に延びる、実質的に平坦な表面を有することができる。
【0045】
一実施形態では、ニードルハブは、約5.0から約10mm2の表面積を有する環状軸方向面38を有する内側円錐形状部材26と、約25.0から40mm2の表面積を有する環状軸方向面40を有する外側環状リング28とによって形成された、約5.0から約7.0mmの直径を有する軸方向面を有し、ここで、円錐形状部材26の軸方向面38によって形成された第1の接触表面および外側リング28の軸方向面40によって形成された第2の接触表面の合計表面積は、約30.0mm2から約50.0mm2である。内側円錐形状部材および外側リングは、一実施形態では約1から3mmの距離で離間させることができ、ここで、外側リングおよび接触表面の外形寸法は、約6~8mmである。他の実施形態では、内側円錐形状部材および外側リングは、約2から3mmの距離で離間させることができる。別の実施形態では、第1の接触表面は、約5~10mm2の表面積を有することができ、第2の接触表面は、約10~25mm2の表面積を有することができ、それにより、約15~35mm2の合計表面積を提供する。内側円錐形状部材および外側リングは、約0.3から1.0mmの距離で軸方向に離間させることができる。別の実施形態では、内側リングは、約0.3mmから0.7mm、通常は約0.5から1.0mmで軸方向に離間させることができる。
【0046】
さらなる実施形態では、内側円錐形状部材26は、円錐形状部材の内側縁から外側縁まで測定して、約0.8から1.2mm、典型的には約1.0mmの径方向幅を有することができる。内側円錐形状部材は、一実施形態では、約3.0から4.0mmの表面積を有することができる。一実施形態では、内側円錐形状部材は、約3.5から3.7mm2の表面積を有する。外側リング28は、外側リングの外側縁から内側縁まで測定したときに、約1.2から1.7mm、通常は約1.5mmの径方向幅を有することができる。外側リングは、約14.0から16.0mm2の表面積を有することができる。一実施形態では、外側リングは、約15.0から15.5mm2の表面積を有することができる。ニードルはまた、5ベベルニードルまたはカニューレであることもできる。
【0047】
図6および7に示すように、ニードルハブ10は、カニューレ20の挿入中、患者の皮膚42と接触して、カニューレを皮膚内の所望の深さに位置決めする。
図5に示すように、カニューレ20は、皮膚42に挿入され、ここでは中央部材26の軸方向接触表面は、皮膚と初期接触して皮膚を押し下げる。カニューレ20をさらに挿入した結果、外側リング28の軸方向接触表面は皮膚42と接触して、皮膚の変形を制限し、皮膚内へのカニューレ20の貫入深さを制御する。
図6を参照すれば、ニードルハブ10のポスト14の内側部材26は、初めに皮膚42と接触して、下方向の挿入力によって皮膚の歪みを生じさせる。
図6に示すように、外側リング28は皮膚と接触して、皮膚との表面接触を増大させ、圧力を分散させて貫入深さを制限する。外側リング28に対する中央部材26の高さ、および内側部材と外側リングとの合計表面積を含むハブの形状および寸法は、与えられた印加力に対する、組織による圧迫および弛緩の程度に影響を与える。挿入後、皮膚42は
図7に示すように弛緩し、それにより、カニューレ先端部は、注射される物質を送達するための所望の深さにある。貫入深さは、以下のように表現され得る。
【0048】
f(深さ)=L+l0*σ/E+ψ
式中
L=有効ニードル長さ
E=σ/ε 組織弾性率
σ=Fn/A 圧迫応力
ε=Δl/l0 印加された応力による変形
Fn=法線成分力
Ac=断面界接表面積、=f(z)
l0=圧迫されていない長さ
Δl=長さの変化
ψ=経験的データによって補正決定されたテンティング(tenting)係数
f(z)=初期表面積、円錐形高さ、円錐形高さ>z≧0=増大された表面積、z>円錐形高さ
*表面積(SA)は、独自の面幾何学的形状の特徴に依存する。固体モデルを使用して、ニードルz軸並進に対する接触表面積を特定し、f(z)関数生成を可能にする。単層組織モデルが、本発明の動作原理の説明目的のために提供される。
【0049】
皮膚接触表面の形状および構成に基づくニードル貫入深さは、
図8に示される。
図8は、ニードルが組織内の指定された目標深さに着座していることを示す密度プロットを示す図である。グラフでは、装置Aは、
図1に示す装置に対応する。皮膚表面から2Uデポー剤の上部までが測定され、この測定値は、より多くの容量送達によって起こり得る不均一なデポー剤の分散からのコンボリューションをせずに、組織内のニードル貫入深さを表す。装置Bおよび装置Cは、従来の装置である。ニードル着座深さ平均/標準の(sd)プールされた横断して印加される力レベルは、履歴データに類似しており、ここでは印加力は測定されなかった。
【0050】
ニードルハブ10は、ペン注射器と共に使用可能であるように構成される。
図4および5に示すようなニードルハブ10の本体16は、典型的な方法でペン注射器に連結するための、ねじ山44を備えた壁を有する。カニューレ20は、送達される物質が入ったカートリッジのセプタムを突き刺すために、ニードルハブの中央内に下方向に延びる。この実施形態では、内部リブ46が上壁48からポスト14の全長を延びて、追加の強度および完全性をニードルハブ10に提供する。内側ポスト50は、カニューレ20を支持するために、上壁48から、ポスト14の軸方向長さに対応する長さを延びる。リブ46は、ポスト50およびカニューレ20を支持するために、ポスト14の内側表面から内側ポスト50の外側表面までの間を延びて、ペン注射器に連結したときのカニューレ20およびポスト50の曲がりまたは偏向に抵抗する。図示する実施形態では、リブ46は、ポスト50を安定化させる軸方向長さを有する。
【0051】
非経口送達システムの特徴は、装置と送達部位との間の界接面であり、ここでは組織生物力学が装置の機能に影響を与える。装置の構造および設計は、これらの要因に対応する。送達機構、バイオ界接面、ならびに送達性能を決定する薬剤の物理的および化学的特性の間の複雑な関係は、よく理解されていない。従来の装置は、通常、長さ、ゲージ、貫入力、潤滑および流れ特性などのニードルまたはカニューレの特徴に焦点をあてている。ペンニードル設計およびニードルハブ面の幾何学的形状は、指定された印加に対する標的組織空間内の安定性のあるニードル深さ配置を容易にする。これらの特徴は、区別可能な構成を提供し、使用中の快適感、筋肉内注射のリスクの低減、ニードルの恐怖感の低減を向上させる。ニードルハブ面の幾何学的形状、ニードル長さおよびゲージは、送達システムの機構および注射技術と共に、装置の成功を決定する。
【0052】
ニードルハブの接触表面は、皮膚の変形を制御し、それによりカニューレの貫入深さを制御する幅および高さを有する。接触表面の形状および寸法は、皮膚表面との完全係合時に印加される圧力を分散させる。輪郭は、圧力分散と共に、患者に向上した快適感を提供する。ハブの高さおよび表面積ならびに周囲表面領域は、与えられた印加力に対する組織の圧迫および弛緩の程度に影響を与える。
【0053】
説明する実施形態では、中央円錐形状部材26および外側リング28は、実質的に円筒状または環状の形状を有し、ポスト14から軸方向に延び、ここで、中央部材26および外側リング28の軸方向表面は、ニードルハブ10の皮膚接触表面を画定する。外側リング28は、使用中に皮膚と接触する直径を有し、内側円錐形状部材26の寸法と共に皮膚の変形を制御する。図示する実施形態では、内側円錐形状部材26は、外側リング28の軸方向高さより大きい軸方向高さまたは長さを有し、皮膚との初期接触を提供する。内側円錐形状部材26との接触に続き、カニューレ20をさらに挿入すると外側リング28と接触し、皮膚が弛緩する。内側部材および外側リングの寸法は、所望の貫入深さおよびカニューレの長さに基づいて選択される。本明細書に説明する実施形態は、寸法の例示であり、これは、必要に応じて変更されて、使用の間カニューレの所望の貫入深さを提供することができる。
【0054】
環状凹部30の深さは、カニューレ20による所望の貫入深さに応じて変化し得る。図示する実施形態では、環状凹部30の径方向寸法は、内側部材および外側リングの合計径方向寸法より大きい。通常、凹部の深さが大きくなるほど、遠位面の接触表面領域は小さくなり、皮膚表面の変形が大きくなるほど、カニューレによるより深い貫入が可能になる。接触表面を形成する内側円錐形および外側リングの軸方向表面の角度は、意図する結果に基づいて選択され得る。環状凹部30は、内側部材26および外側リング28の軸方向面に対する深さを有することができ、それにより、皮膚は環状凹部30の底部表面と接触して、内側円錐形状部材26と外側リング28との間の皮膚変形を制御することができる。他の実施形態では、環状凹部30の深さは、使用中に皮膚が環状凹部30の底部と接触しないような十分な深さであることができる。
【0055】
ニードルハブ装置は、浅い注射を減らす方法における使用に適し、また、薬物を患者に注射するのに適している。方法は、薬剤コンパートメントと、ペンニードルを受け入れるように構成された遠位端部と、を有するペン本体を提供することを含む。ペンニードルは、受け入れおよびペン本体への結合のために、近位側に凹部を備えた基部を有するハブを含む。遠位面として、近位側と遠位面との間を開口部が延びる。好ましい実施形態の上記の説明は、本発明を限定するとみなされるべきものではなく、本発明は付属の特許請求の範囲によって定められる。本開示は、本発明の範囲を逸脱することなく、説明される本発明の変形形態を当業者が実践することができることが意図される。本明細書および特許請求の範囲において、本明細書の数量的限定は、修飾子「約」によって限定されるように理解され、それにより、等価の結果をもたらす小さい逸脱は本発明の範囲内にある。1つの実施形態または独立請求項に関連して開示する特徴または従属請求項の限定事項は、本発明の範囲から逸脱することなく、別の実施形態または異なる独立請求項において組み合わせられてよい。