(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171891
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】枠体及びスクリーン版
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20221104BHJP
B41C 1/14 20060101ALI20221104BHJP
B41F 15/36 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B41N1/24
B41C1/14
B41F15/36 A
B41F15/36 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149333
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2018180619の分割
【原出願日】2018-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2017185060
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017254369
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018117039
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】戸島 隆人
(72)【発明者】
【氏名】兼平 正巳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正行
(57)【要約】
【課題】高く均一な張力で紗を枠体に張設できる簡易な構造の枠体を提供する。
【解決手段】スクリーンマスター8を枠体17に張設する場合は、紗を枠体17の貼り付け面25に接着剤27で貼り付ける。貼り付け面25の外周部に所定の厚さの低摩擦シート30があるので、接着剤27とスクリーンマスター8の間には隙間ができる。紗張り装置1で上昇させた枠体17でスクリーンマスター8を押し上げる。低摩擦シート30により、スクリーンマスター8が貼り付け面25の上を移動する際に、枠体17の縁部での滑りが向上し、抵抗が減るため、スクリーンマスター8が破れにくく、必要な張力で枠体17に張設して圧着固定できる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムと紗からなるスクリーンマスターの前記紗が貼り付け面に接着剤で貼り付けられるスクリーン版の枠体であって、
前記貼り付け面の外周部に所定の厚さの低摩擦材料が設けられ、前記接着剤と前記スクリーンマスターとの間に隙間ができることを特徴とする枠体。
【請求項2】
前記貼り付け面に塗布された前記接着剤のうち、前記貼り付け面の外周部に塗布された前記接着剤の上に前記低摩擦材料が設けられていることを特徴とする請求項1記載の枠体。
【請求項3】
枠体と、
前記枠体の貼り付け面に塗布された接着剤と、
前記接着剤のうち前記貼り付け面の外周部に塗布された前記接着剤の上に設けられた所定の厚さの低摩擦材料と、
貼り合わせた熱可塑性樹脂フィルムと紗からなり、前記紗を前記低摩擦材料に接触させた状態で前記接着剤によって前記貼り付け面に接着されたスクリーンマスターと、
を有することを特徴とするスクリーン版。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルムと紗からなるスクリーンマスターの前記紗が貼り付け面に接着剤で貼り付けられるスクリーン版の枠体であって、
接着剤を含む不織布が前記接着剤により前記貼り付け面に接着されていることを特徴とする枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紗に張力を与えて枠体に取り付けることにより、スクリーン印刷に用いるスクリーン版を作製する紗張り装置に係り、特に、紗を高い張力で均一に枠体に張設することができる簡易な構造の紗張り装置と、枠体及びスクリーン版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、必要な張力で紗を枠体に張設してスクリーン版を作製する紗張り装置の発明が開示されている。この発明によれば、昇降テーブル141の上に載置した枠体4をエアシリンダ603で歪形とし、所定のテンションで張設保持した紗の下側から昇降テーブル141を上昇させて歪形の枠体4を紗に押圧し、貼り付け作業を行った後に昇降テーブル141を下降させ、枠体4の歪形を解除することによりスクリーン版を作製することができる。
【0003】
特許文献2には、紗の周縁部の保持を簡単かつ安定的に行なえるようにしたテンション調整可能な紗張り枠の発明が開示されている。この発明の紗張り枠は、本体枠1の溝内で紗の周縁部を保持している縁部保持体2をボルト5により外周側へ引き寄せることにより、紗の張り上げを行なうことができる。
【0004】
特許文献3には、確実かつ安定したクランプ力と均一な張力が容易に得られる紗張り機の発明が開示されている。この発明の紗張り機は、直交する2本の軸と、軸上に設けられた型枠を載せる型枠載置台と、軸上に設けられた紗の端縁を支持するクランプバーとを備えており、前記クランプバーに設けたスリットに固定用バーを嵌合させることによって紗の4つの端縁を支持し、クランプバーを軸上の外方向へ移動させて紗に張力を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62-99148号公報
【特許文献2】特開平8-20100号公報
【特許文献3】特開2008-302497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す紗張り装置の発明には、装置全体が大型化するため設置場所が限られ、コストも高いという課題がある。また、特許文献2及び特許文献3に示すような紗張り枠及び紗張り機の発明では、互いに直交する2方向について紗に働く張力が均等となるように設定することは熟練を要するため、適切な状態に紗を張ることが難しいという課題がある。また、これらの紗張り枠等は、その構造上強く張ることが難しいため、例えば20N以上の強い張力で紗を張ることが困難であるという課題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術及びその課題に鑑みてなされたものであり、高く均一な張力で紗を枠体に張設することができる簡易な構造の紗張り装置と、枠体及びスクリーン版を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された枠体は、
熱可塑性樹脂フィルムと紗からなるスクリーンマスターの前記紗が貼り付け面に接着剤で貼り付けられるスクリーン版の枠体であって、
前記貼り付け面の外周部に所定の厚さの低摩擦材料が設けられ、前記接着剤と前記スクリーンマスターとの間に隙間ができることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された枠体を用いて紗張りを行う場合には、枠体の貼り付け面に低摩擦シートを張ることにより、枠体に押し上げられたスクリーンマスターが貼り付け面の上を移動する際の抵抗を減らすことができる。また、この低摩擦シートによれば、枠体の縁部での滑りが向上し、抵抗が減ることとなる。このため、スクリーンマスターの破れが生じにくくなり、必要な張力で枠体に張設して圧着固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施形態の紗張り装置に設けられた取り付け枠の構造と作用を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の紗張り装置に設けられた枠体支持部とジャッキの斜視図である。
【
図4】第1実施形態の紗張り装置において枠体支持部とジャッキの駆動部を分離して表した斜視図である。
【
図5】第1実施形態の紗張り装置における枠体支持部とジャッキの駆動部の継手装置を透視して表した斜視図である。
【
図6】第1実施形態の紗張り装置にスクリーンマスターを載せた状態を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態の紗張り装置の取り付け枠にスクリーンマスターを保持させた状態を示す斜視図である。
【
図8】第1実施形態の紗張り装置に取り付けたスクリーンマスターをジャッキで押し上げて張力を与えた状態を示す斜視図である。
【
図9】第1実施形態の紗張り装置において枠体でスクリーンマスターに張力を与えた状態を示す模式的な断面図である。
【
図10】第1実施形態の紗張り装置において張力を与えられたスクリーンマスターの周縁部を加熱して枠体に溶着させる工程を示す斜視図である。
【
図11】第1実施形態の紗張り装置に使用する枠体の変形例を示す模式的な断面図である。
【
図12】第1実施形態の紗張り装置に設けられた取り付け枠の構造と作用を示す
図2の内容を含む線図で表した斜視図である。
【
図13】第2実施形態の紗張り装置の斜視図である。
【
図14】第2実施形態の紗張り装置において取り付け枠の上枠を開いた状態を示す斜視図である。
【
図15】取り付け枠の上枠を開いた第2実施形態の紗張り装置において、取り付け枠の下枠と枠体支持部のローラの一部を示す拡大斜視図である。
【
図16】第2実施形態の紗張り装置において取り付け枠の上枠を開き、枠体支持部の上に枠体を載置した状態を示す斜視図である。
【
図17】第2実施形態の紗張り装置において取り付け枠の上枠を開き、下枠の上にスクリーンマスターを載置した状態を示す斜視図である。
【
図18】第2実施形態の紗張り装置において取り付け枠の上枠と下枠の間にスクリーンマスターを挟み込んでロックした状態を示す斜視図である。
【
図19】第2実施形態の紗張り装置において取り付け枠に取りつけたスクリーンマスターを枠体支持部で押し上げて張力を加えた状態を示す斜視図である。
【
図20】第2実施形態の紗張り装置においてスクリーンマスターを枠体支持部で押し上げて張力を加えた状態を示す正面側から見た斜視図である。
【
図21】第2実施形態の紗張り装置において取り付け枠に取りつけたスクリーンマスターと、上昇前の待機位置にある枠体支持部及び枠体との位置関係を示す断面図である。
【
図22】第2実施形態の紗張り装置においてスクリーンマスターを枠体支持部で押し上げて張力を加えた状態を示す断面図である。
【
図23】第2実施形態の紗張り装置においてスクリーンマスターを枠体支持部で押し上げて張力を加えた状態の部分拡大断面図である。
【
図24】第2実施形態の紗張り装置を用いた枠体への紗張りにおいて、スクリーンマスターの下方に配置される枠体のサイズ、個数、姿勢の第1の例を示す平面図である。
【
図25】第2実施形態の紗張り装置を用いた枠体への紗張りにおいて、スクリーンマスターの下方に配置される枠体のサイズ、個数、姿勢の第2の例を示す平面図である。
【
図26】第2実施形態の紗張り装置を用いた枠体への紗張りにおいて、スクリーンマスターの下方に配置される枠体のサイズ、個数、姿勢の第3の例を示す平面図である。
【
図27】第2実施形態の変形例の紗張り装置の平面図である。
【
図28】第2実施形態の変形例の紗張り装置においてスクリーンマスターを枠体支持部で押し上げて張力を加えた状態の部分拡大断面図である。
【
図29】第2実施形態の変形例の紗張り装置においてスクリーンマスターを枠体支持部で押し上げて張力を加えた後、移動手段によって枠体を上昇させてUV接着剤をスクリーンマスターに密着させた状態の部分拡大断面図である。
【
図30】第3実施形態の紗張り装置において取り付け枠の上枠を開き、枠体支持部の上に枠体を載置した状態を示す斜視図である。
【
図31】第3実施形態の紗張り装置においてスクリーンマスターを挟み込んだ取り付け枠に向けて固定手段を回動させる状態を示す斜視図である。
【
図32】第3実施形態の紗張り装置において支持軸に直交する切断面で示した拡大断面図であって、開放位置にある固定手段と、取り付け枠に対する係合位置の直前にある固定手段を一図中に示した図である。
【
図33】第3実施形態の紗張り装置において取り付け枠に対する係合位置の直前にある固定手段を示す斜視図である。
【
図34】第3実施形態の紗張り装置において取り付け枠に対する係合位置にある固定手段を示す斜視図である。
【
図35】第3実施形態の紗張り装置において取り付け枠に取りつけたスクリーンマスターを枠体支持部で押し上げて張力を加えた状態を示す斜視図である。
【
図36】各実施形態の紗張り装置に好適に使用される枠体の製造手順を示す工程図である。
【
図37】各実施形態の紗張り装置に好適に使用される枠体の斜視図である。
【
図39】各実施形態の紗張り装置に好適に使用される枠体の他の例を示す図であって、分図(a)は同枠体の断面図であり、分図(b)は接着剤を剥がすために枠体を分解した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する各実施形態の紗張り装置は、紗に張力を与えて枠体に取り付けることにより、スクリーン印刷に用いるスクリーン版を作製するための装置である。スクリーン版の構成材料である「紗」とは、一般的にはステンレス等の金属やポリエステル等の樹脂からなるメッシュを意味するが、ここではその紗に熱可塑性樹脂フィルムを貼り付けたスクリーンマスターも含むものとする。メッシュを枠体に張設した場合には、メッシュに乳剤を塗布し、これに画像を形成して版とするが、スクリーンマスターを枠体に張設した場合には、スクリーンマスターの熱可塑性樹脂フィルムに画像を形成して版とする。以下に説明する第1及び第2実施形態では、スクリーンマスターを枠体に張設する場合を主たる例とする。
【0012】
1.第1実施形態の紗張り装置1の構成(
図1~
図5、
図12)
この紗張り装置1の構成を
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、第1実施形態の紗張り装置1は、直方体の各辺を角筒状の構造材で構成した剛性の高いフレーム2を本体としている。構造材にはアルミ材を用いることができるがこれに限らない。フレーム2の底部枠2aの4隅にはキャスター(脚輪)3が取り付けられており、比較的小さな力で、この装置1の全体を任意の方向に移動させ、回転させることができる。キャスター3にはストッパ4が設けられており、任意の位置に任意の向きで設定した本装置1を固定することができる。この紗張り装置1は、後述するように動力源が手動式の油圧ジャッキであるため、エア配管やケーブル等で外部機器に接続されていないので、狭い作業スペース内で自由に取り回し、移動させながら、スクリーン版の作製作業を行うことができる。
【0013】
図1に示すように、フレーム2の頂部の4辺には、紗に張力を与えて保持するための取り付け枠5が設けられている。
図2に示すように、各取り付け枠5は横方向に連続する溝6を有している。溝6は、中央の開口に対し、内部が上下に拡大した構造となっている。そして、溝6内の角部分は滑らかな湾曲状となっており、後述するガイド部7で溝6内に挟み込んだスクリーンマスターを損傷しないようになっている。
【0014】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、この溝6には、スクリーンマスター8の縁辺を挟み込んだ状態でガイド部7材が挿入される。ガイド部7は、取り付け枠5の溝6と同形状の挿入部7aと、挿入部7aに設けられて溝6の開口を塞ぐフランジ部7bとを有する。
なお、
図12(a)は、スクリーンマスター8が溝6に押し込まれた取り付け枠5と、ガイド部7を輪郭図又は線図で表した斜視図であり、
図12(b)及び(c)は、
図2(a)及び
図2(b)と同等の内容を、グレー表現をせずに輪郭図又は線図として示したものである。
【0015】
図1に示すように、フレーム2の下半部には、補強用の基台9が組み込まれており、その上にジャッキ10が取り付けられている。このジャッキ10はスクリーンマスター8に張力を与えるための手段であり、油圧式のパンタグラフジャッキである。
図3に示すように、ジャッキ10は、油圧ユニット11と、油圧ユニット11を操作するレバー12と、油圧により上昇するパンタグラフ状の駆動部13と、これら各部が取り付けられて前記基台9に固定される基板14を備えている。この紗張り装置1に使用するジャッキ10としては、パンタグラフジャッキ以外の形式のジャッキでもよいが、スクリーンマスター8に与える張力をなるべく大きく、例えば20N以上としたい場合には、最大使用荷重で2トン程度のジャッキ10を採用することが好ましい。
【0016】
図3~
図5に示すように、ジャッキ10の駆動部13の上端にある板部15には、後述する継手装置20を介して、枠体支持部16が取り付けられている。枠体支持部16は、スクリーン版の枠体17を載置する部材である。
図1に示すように、枠体支持部16は、フレーム2の底部枠2a(
図1参照)またはフレーム2の頂部で矩形状に組み立てられた取り付け枠5よりも一回り小さい矩形枠であり、2対の対辺の各中央部が補強材18で連結されている。
図1に示すように、枠体支持部16は、フレーム2の頂部に設けられた取り付け枠5よりもやや下方に配置されており、枠体支持部16の上に枠体17を載置した場合、フレーム2の取り付け枠5に張設したスクリーンマスター8の下面(多孔性支持体の側)に枠体17が対面するようになっている。
【0017】
図3~
図5に示すように、ジャッキ10の駆動部13の板部15と、枠体支持部16の下面とは、継手装置20で連結されている。この継手装置20は、ジャッキ10の板部15に取り付けられた凹部22aを有する受け板21aと、枠体支持部16の下面に取り付けられた凹部22bを有する受け板21bと、2つの受け板21a,21bの各凹部22a,22bに回転自在に嵌まり込む鋼球28とを有する。継手装置20は、枠体支持部16の重心に設けられて枠体支持部16を支持している。このように、枠体支持部16は継手装置20によって支持されているため、ジャッキ10によって持ち上げられる際に、枠体17はスクリーンマスター8に対して可能な限り均等な状態で当接することができる。
【0018】
図5に拡大した透視図で示すように、2つの受け板21a,21bの各四隅には丸孔23が形成されており、2つの受け板21a,21bの対向する丸孔23,23には、丸孔23よりも若干外径の小さい円柱棒24が挿入されている。従って、枠体支持部16は、ジャッキ10の駆動部13の板部15に対して、円柱棒24が廻り止めになるため水平面内については回転できないが、円柱棒24と丸孔23の隙間の分だけ、鋼球28を中心として各丸孔の深さ方向に揺動可能である。
【0019】
2.第1実施形態の紗張り装置1の作用(
図6~
図10、
図12)
以上説明した紗張り装置1を用いて枠体17にスクリーンマスター8を張設する際の作用を
図2及び
図6~
図10を参照して説明する。作製しようとするスクリーン版の仕様を例示する。枠体17の大きさは650mm×910mm、スクリーンマスター8は200メッシュ(1インチ当たり200本の繊維が存在する密度)とし、メッシュの材質は限定しない。スクリーンマスター8は、20Nの張力で枠体17に張設されるものとする。
【0020】
図6に示すように、紗張り装置1の枠体支持部16の上に枠体17を載置する。枠体17の2つの面のうち、スクリーンマスター8を貼り付ける一方の面を貼り付け面25と称する。
図6では、枠体支持部16の上に載置された枠体17の上面が貼り付け面25である。枠体17の貼り付け面25には、予め接着剤を塗布しておく。接着剤としては、製品名称「小西ボンドG17Z」のようなクロロプレンゴム系溶剤系接着剤や、ホットメルト接着剤、アクリル系接着剤が使用できる。これらの接着剤を溶剤で薄めて貼り付け面25に塗布し、乾燥させておく。接着剤を塗布した貼り付け面25を上に向けて枠体17を枠体支持部16の上に載置する。
【0021】
図6に示すように、紗張り装置1の取り付け枠5の上に、熱可塑性樹脂フィルムを上とし、多孔性支持体を下にした状態でスクリーンマスター8を載せる。スクリーンマスター8は4つの縁辺がいずれも取り付け枠5を越える大きさの矩形であり、各縁辺が取り付け枠5を越える長さ部分がスクリーンマスター8を張るための張り代となるように配置する。
【0022】
図2(a)及び
図12(a)に示すように、スクリーンマスター8の縁辺を取り付け枠5の溝6内に挿入し、さらに
図12(b)に示すように溝6にガイド部7を挿入して
図2(b)及び
図12(c)に示すように縁辺を固定する。
図2に示した例では、図示の便宜上、取り付け枠5よりもガイド部7材の方が短いが、実際には
図7に示すように取り付け枠5とガイド部7材の長さを同じとし、スクリーンマスター8の各縁辺の概ね全長が固定されるようにすることが好ましい。スクリーンマスター8の4つの縁辺をこのように固定することにより、
図7に示すようにスクリーンマスター8をしわが生じない程度の張力で枠体支持部16の上方に張設することができる。
【0023】
図8に示すように、ジャッキ10のレバー12を操作して駆動部13を上昇させ、枠体支持部16に載せた枠体17をスクリーンマスター8の下面側(多孔性支持体の側)に押し付ける。スクリーンマスター8は枠体17に押し上げられ、より大きな張力が加わった状態となる。なお、
図8では、枠体17がスクリーンマスター8を押し上げた状態をより明確に示すため、枠体支持部16は図示を省略している。
【0024】
図9に示すように、ジャッキ10を操作して枠体17でスクリーンマスター8を徐々に押し上げていくと、スクリーンマスター8は枠体17の貼り付け面25を滑り、張力で伸びて枠体17の外に徐々に移動していく。この操作は、枠体17の外にあるスクリーンマスター8の表面と垂線Lとの角度が45度以上の範囲で、スクリーンマスター8を枠体17で押し上げて必要な張力を得ることを目標とする。この角度が45度未満になると、枠体17の縁辺との擦れによってスクリーンマスター8が切れる可能性が高くなる。枠体17のサイズとスクリーンマスター8のメッシュ数が前述の例のようなものとすると、ジャッキ10を最大使用荷重の2トン以内で使用して
図9に示す状態まで押し上げれば、枠体17に張設されるスクリーンマスター8の張力を前述した20N程度とすることができる。なお、スクリーンマスター8に張力を加える作業は次のように行う。作業員がジャッキ10を操作して、スクリーンマスター8を徐々に押し上げ、スクリーンマスター8の張力を随時テンションゲージで測定し、目標の張力を得るものとする。
【0025】
先に
図5等を参照して説明した通り、枠体17を載せた枠体支持部16は、継手装置20の鋼球28を中心として、周方向の何れの位置においても、廻り止めである丸孔23と円柱棒24の隙間が許容する範囲で上下方向に揺動することができる。さらに、丸孔23と円柱棒24からなる廻り止めの作用により、枠体支持部16及び枠体17は、枠体17がスクリーンマスター8を押し上げる動作中に鋼球28を中心として略水平面内で回転方向に位置がずれることがない。さらにまた、枠体17を押し上げるジャッキ10は、堅牢なフレーム2の下半部分に固定された補強用の基台9に設置されているため、ジャッキ10の駆動部13は当初位置から真上の方向に移動するのみであり、左右方向にぶれることがない。
【0026】
従って、この紗張り装置1によれば、スクリーンマスター8に対する枠体17の当たりは均一となる。すなわち、枠体17の貼り付け面25は、いずれの位置においてもスクリーンマスター8に対して均一な状態で接し、スクリーンマスター8には均一な張力が発生する。また枠体17の角又は縁辺が部分的にスクリーンマスター8に片当たりしてスクリーンマスター8を切断してしまうおそれも少ない。
【0027】
図8及び
図9に示すように、枠体17に対してスクリーンマスター8を所望の張力で張設した状態が得られたなら、
図10に示すように固定作業を行う。なお、
図8と同様、
図10においても枠体支持部16は図示を省略している。図示しない作業員が、枠体17の貼り付け面25の上にあるスクリーンマスター8に熱ゴテ26を押し付け、熱ゴテ26を枠体17の周方向に沿って移動し、スクリーンマスター8の全周を加熱する。熱ゴテ26による加熱温度は約230度である。この加熱により、スクリーンマスター8の熱可塑性樹脂フィルムは溶融し、枠体17の接着剤が溶けて紗の繊維間に入り込むので、接着剤が冷却して固化することによりスクリーンマスター8は枠体17に接着される。
【0028】
なお、前述した通り、第1実施形態では、スクリーンマスター8の張力を20N程度とするものとしたが、接着剤を加熱溶融して固定したときにテンションゲージで測定した張力が20Nであっても、スクリーン版として実際に印刷に使用すると張力が落ちてしまう場合も考えられるので、目標が20Nであれば、実際にはこれより若干高めの張力で張設するとよい。
【0029】
図10に示す状態で加熱による固定が終了したら、枠体17と取り付け枠5の間の位置でスクリーンマスター8を刃物で枠体17に沿って切断し、完成したスクリーン版を枠体支持部16から取り出す。
【0030】
以上説明したように、第1実施形態の紗張り装置1によれば、枠体17にスクリーンマスター8を均等かつ高い張力で張ることができる。具体的には、20N以上で均等に張設したスクリーンマスター8のX方向の張力に対し、これと直交するY方向の張力を3~5%以内におさめることができる。
【0031】
また、スクリーンマスター8を枠体17に張設して固定した初期状態において、スクリーンマスター8の種類に応じた弾性限界を超える張力で張設することにより、経時変化によるスクリーンマスター8の伸びが発生しにくくなる。
【0032】
また、スクリーンマスター8の張力を均一に調整する時間を大幅に短縮することができる。すなわち、背景技術の項で説明した従来の技術における複雑な調整手順がなくなり、調整機構の破損等の不具合もなくなる。調整の熟練技術の習得も不要となる。
【0033】
また、動作機構がジャッキ10による上下方向のみの為、省スペースである。ジャッキ10として手動の油圧ジャッキを用いたため、電力を消費することなく、簡便な構造で高い均一な張力が得られる。なお、電動ジャッキを用いれば、自動化も可能となる。
【0034】
3.変形例(
図11)
次に、第1実施形態の変形例を
図11を参照して説明する。
図1~
図10を参照して説明した第1実施形態では、スクリーンマスター8を用いているため、前述したように枠体17の貼り付け面25に予め接着剤を塗布していた。これは、紗を枠体17に張設するのであれば、紗を枠体17に張設した後で、紗の側から接着剤を塗布して貼り付け面25と紗の間に接着剤の層を設けることができるが、スクリーンマスター8を枠体17に張設した後にスクリーンマスター8の側から接着剤を供給しても、熱可塑性樹脂フィルムがあるために貼り付け面25に接着剤を塗布することができないからである。
【0035】
第1実施形態のように貼り付け面25に接着剤を塗布した枠体17にスクリーンマスター8を張設する場合には、上述したようにスクリーンマスター8を枠体17で押し上げ、スクリーンマスター8を貼り付け面25の上で滑らせて枠体17の外へ移動させる動作を繰り返して張力をかけていく必要がある。しかしながら、この手法によれば、場合によっては次のような課題が生じる可能性がある。
【0036】
すなわち、枠体17のサイズ、紗の番数や材質、接着剤の種類や塗布状態、ジャッキ10により加えられる荷重等にもよるが、スクリーンマスター8の紗が、枠体17に塗布された接着剤に対して滑りにくくなり、押圧されたスクリーンマスター8が枠体17の外に円滑に移動しにくくなって、スクリーンマスター8に加わる張力を徐々に上げていくことが困難になるという課題である。また、滑りが悪化した結果として、スクリーンマスター8が枠体17の縁辺で擦れて破れる場合があるという課題もあった。このような課題に対しては、ジャッキ10で枠体17を少しずつ持ち上げる度に、枠体17の近傍にあるスクリーンマスター8を貼り付け面25の反対側(枠体17の下側)から指で押して枠体17の外側に移動させる修正操作を行うことで対応は可能である。
【0037】
しかしながら、この変形例では、第1実施形態の紗張り装置1で枠体17にスクリーンマスター8を張設する場合に、押し上げられたスクリーンマスター8が枠体17の貼り付け面25を容易に滑るようにして、上述した指による修正操作を行うことなく、ジャッキ10の操作だけでスクリーンマスター8に必要な高い張力を与えることができるようにすることを課題とする。
【0038】
図11に示すように、本変形例では、枠体17の貼り付け面25の必要な領域に接着剤27を塗布し、貼り付け面25及び接着剤27の外周部に、低摩擦材料である低摩擦シート30を貼付したことを特徴としている。接着剤27は枠体17の片側の面である貼り付け面25の全面に塗布してもよいが、
図11の例では貼り付け面25の一部分に塗布している。低摩擦シート30は、貼り付け面25の外周部を、矩形の枠体17の全周にわたって覆うとともに、枠体17の縁部を覆って下方に折れ曲がり、枠体17の側面の上部も覆っている。低摩擦シート30としては、フッ素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレンが塗布されたテープや、クラフトテープが使用できる。ここでクラフトテープとは、クラフト紙の片面に不溶性の糊が塗られたテープであって、他の片面に合成樹脂によるラミネート加工が施されているものを指すものとする。なお、材質の如何に係わらず、低摩擦シート30の摩擦係数は0.25以下とし、低摩擦シート30の厚さは50μm以上とすることが好ましい。
【0039】
図11に示すように、枠体17の貼り付け面25に設けた接着剤27の外周部の上に低摩擦シート30を張ることにより、低摩擦シート30の高さがスクリーンマスター8と接着剤27面との間に隙間35(
図11中、破線の楕円で位置を示す。)を生じさせる。この隙間35により、枠体17に押し上げられたスクリーンマスター8が貼り付け面25の上を移動する際の抵抗を減らすことができる。
【0040】
また、この低摩擦シート30によれば、枠体17の縁部での滑りが向上し、抵抗が減ることとなる。このため、スクリーンマスター8の破れが生じにくくなり、必要な張力で枠体17に張設して圧着固定することが可能となる。また、紗張り装置1の小型・軽量化が図れ、ユーザの操作性も向上する。
【0041】
4.第2実施形態の紗張り装置の構成(
図13~
図15、
図20~
図23)
この紗張り装置の構成を
図13~
図15及び
図20~
図23を参照して説明する。
第2実施形態の紗張り装置100は、第1実施形態の紗張り装置1と構成が共通している部分もあるが、異なっている部分もある。以下の説明では、第1実施形態の紗張り装置1と構成が異なっている部分を中心として説明し、第1実施形態の紗張り装置1と構成が共通する部分については、適宜説明を省略又は簡略化して第1実施形態の構成及び作用の説明を援用し、図面には可能な限り第1実施形態の紗張り装置1と共通の符号を付す。
【0042】
図13に示すように、第2実施形態の紗張り装置100は、直方体の各辺を角筒状の構造材で構成した剛性の高いフレーム2を本体としている。構造材にはアルミ材を用いることができるがこれに限らない。第2実施形態の紗張り装置100は、フレーム2の底部枠2aにキャスター(脚輪)3が取り付けられておらず、所定の位置に設置して使用するものである。第1実施形態の紗張り装置1と同様にキャスター3を設けて移動自在としてもよい。
【0043】
図13に示すように、フレーム2の頂部には、紗に張力を与えて保持するための取り付け枠101が設けられている。
図13及び
図14に示すように、取り付け枠101は、実質的に同一形状の上枠101aと下枠101bから構成されている。
【0044】
図14に示すように、下枠101bは、フレーム2の上部を構成する矩形の枠体である。下枠101bの一対の短辺の各一端側は、一方の長辺の側に突出しており、その突出部分を含む2つの小さな矩形の取り付け部102bが、フレーム2の外形よりも外方に突出して構成されている。
図13に示すように、上枠101aは、下枠101bとの間にスクリーンマスターを挟み込むための矩形の枠体である。下枠101bと同様、上枠101aの一対の短辺の各一端側は、一方の長辺の側に突出しており、その突出部分を含む2つの小さな矩形の取り付け部102aが、フレーム2の外形よりも外方に突出して構成されている。
【0045】
図14に示すように、下枠101bの2つの取り付け部102bと、これに対応する上枠101aの2つの取り付け部102aは、それぞれヒンジ103で回動自在に連結されている。ヒンジ103の回転軸は、下枠101b及び上枠101aの長辺に平行であり、上枠101aはヒンジ103の回転軸を中心としてその短辺を半径とした姿勢で回動することができる。また、
図14に示すように、上枠101aは例えば水平位置から上方に所定の鋭角だけ回動させた開放位置で位置が固定できるようになっており、上枠101aを開放位置に固定した状態でスクリーンマスター8を下枠101bの上に配置する作業を行う。
【0046】
図15に示すように、下枠101bの各辺の上面には、固定部材105が設けられている。
図14から理解されるように、上枠101aの各辺の下面にも、
図15に示した下枠101bの各辺の上面と同様に、固定部材105が設けられている。この固定部材105は、摩擦係数が高いゴム等の弾性部材からなる。
【0047】
図15に示すように、固定部材105は、全体として細長い部材であり、長手方向に直交する端面から分かるように、下方が拡大した基部106と、基部106の上に設けられた笠状に開いた略周状の接触部107から構成されている。下枠101bの各辺の上面には、長手方向に沿って互いに平行に2本の取付溝108が形成されている。この取付溝108に、固定部材105の基部106を挿入固定することにより、下枠101bの各辺の上面に2本の接触部107が所定間隔をおいて配置される。上枠101aに対する固定部材105の固定構造も同様である。そして、上枠101aを下枠101bの上に重ねた場合、それぞれの固定部材105の接触部107が互いに接触するため、上枠101aの下面と下枠101bの上面との間には、数mm程度の隙間が生じる。また、固定部材105の接触部107の上面には、上枠101aと下枠101bの間に挟み込んだスクリーンマスター8の滑り止めのために、長手方向に平行な複数本の溝109が設けてある。
【0048】
図13に示すように、下枠101b及び上枠101aは、固定手段130によって閉止状態に固定することができる。また、
図14に示すように、固定手段130を解除すれば、上枠101aを上方に回動させて下枠101bの上面を開放することができる。
図14に示すように、固定手段130は、下枠101bの長辺に設けられた2カ所の係止具131と、上枠101aの長辺において2カ所の係止具131と対応する位置に設けられた2カ所の被係止具131とを有している。
図16に示すように、係止具131は、支点を中心として上下方向に回動操作可能なハンドル133と、ハンドル133に連結されてハンドル133の操作に応じて上下に移動する環状部材134を有している。被係止具132は、環状部材134が掛止するフックである。
【0049】
図14に示すように開放状態にある上枠101aを、下枠101bの上に下ろし、ハンドル133を上方に操作して環状部材134を上方に移動させ、上枠101aの被係止具132に環状部材134を掛ける。そして、ハンドル133を下方に操作して環状部材134を下方に移動させ、ハンドル133の位置をロックする。
図13に示すように、上枠101aは下枠101bの方に引き寄せられた状態で固定される。なお、この固定手段130の構成は一例であり、重ねた上枠101aと下枠101bを固定し、さらに両者を引きつける方向に密着させて固定できる構成であれば、特に上述した構成に限定する必要はない。
【0050】
本実施形態の紗張り装置100におけるスクリーンマスターの取り扱い方は後に詳述するが、上枠101aを閉めて固定する操作の前に、上枠101aと下枠101bの間にスクリーンマスター8を挟んでおけば、上枠101aと下枠101bの固定部材105はスクリーンマスター8を挟んで互いに加圧されて潰れた状態となるので、固定部材105に設けられた溝109の作用と相俟って、スクリーンマスター8は張力を与えられた状態で上枠101aと下枠101bの間に確実に固定される。その固定作用は第1実施形態の紗張り装置1よりも優れている。従って、後述する枠体17への張設工程において、スクリーンマスター8を枠体17に張設するためにスクリーンマスター8に相当の張力を加えても、上枠101aと下枠101bの間からスクリーンマスター8が抜けることはなく、またスクリーンマスター8は破れにくい。これによって第1実施形態を越える張力(例えば25N)でスクリーンマスター8を枠体17に張設することができる。
【0051】
図13及び
図20に示すように、フレーム2の下半部には、補強用の基台9が組み込まれており、その上にはジャッキ110が取り付けられている。このジャッキ110は、上枠101aと下枠101bの間に張設されたスクリーンマスター8に張力を与えるための手段であり、電動式のパンタグラフジャッキである。
図20に示すように、ジャッキ110は、伸縮自在なパンタグラフ状の駆動部113と、電動モータ111と、電動モータ111で駆動されて駆動部113を伸縮させるスクリュ112と、これら各部が取り付けられて前記基台9に固定される基板14を備えている。電動式のジャッキ110によれば、スクリーンマスター8に与える張力の調整を容易かつ迅速に行なうことができる。特に、テンションを強く張りすぎた場合に少しだけ緩めるような調整を迅速に行うことができる。
【0052】
図13及び
図20に示すように、ジャッキ110の駆動部113の上端には、第1実施形態と同一構成の継手装置20を介して、枠体支持部115が取り付けられている。枠体支持部115は、スクリーン版の枠体17を載置する部材である。
図13に示すように、枠体支持部115は、フレーム2の頂部に設けられた下枠101bよりも一回り小さい矩形枠であり、2対の対辺の各中央部が補強材18で連結されている。
図13に示すように、枠体支持部115は、フレーム2の頂部に設けられた下枠101bよりもやや下方の待機位置に配置されている。待機位置にある枠体支持部115の上に枠体17を載置し、上枠101aと下枠101bの間にスクリーンマスター8を張設した場合、スクリーンマスター8の下面(多孔性支持体の側)と枠体17の上面は微小間隔をおいて対面する。
【0053】
図14の一部を拡大した
図15に示すように、枠体支持部115には、その4つの辺に沿って、各辺に平行となるようにローラ118が回動自在に設けられている。ローラ118は、スクリーンマスター8に摺動自在に接触してスクリーンマスター8の移動を案内するガイド部材である。ローラ118は、低摩擦材料、例えばPTFEやPFA等のフッ素樹脂からなる。
【0054】
図21は、上枠101aと下枠101bの間に張設したスクリーンマスター8と、枠体17を載置した待機位置にある枠体支持部115とを鉛直面で切断した断面図である。この
図21に示すように、枠体支持部115の各辺の外面には、アダプタ116を介して軸受部117が取りつけられている。軸受部117は、ローラ (ガイド部材)118を回転可能に支持する部材であり、樹脂又は金属等からなる。軸受部117は、必要な形状・構造・寸法となるように、アダプタ116とは別体で構成されており、この部分だけを3Dプリンタで作製することができる。アダプタ116は樹脂又は金属等からなる。前記アダプタ116、軸受部117、及びローラ118はガイド部を構成し、スクリーンマスター8を張る際に、マスター8と枠体17の上面との間に隙間を形成するとともにマスター8を摺動可能に支持する。
【0055】
図23にさらに拡大して示すように、軸受部117は、枠体支持部115の上面よりも上方に突出しており、その上面にはローラ118を受け入れる支持溝140が設けられている。支持溝140は、ローラ118の外径に適合した円柱形の空洞であるが、その内周面にはローラ118との接触面積を最小化するために凹凸状の支持構造141が形成されている。枠体支持部115に載置する枠体17の上面には接着剤27が塗布されているが、前記支持溝140に回動可能に嵌まり込んだローラ118の頂部は、枠体支持部115に載置した枠体17の接着剤27の上面よりも上方にある。
【0056】
図22及び
図23に示すように、ジャッキ110によって枠体支持部115を待機位置から上昇させると、枠体支持部115の4辺にあるローラ118がスクリーンマスター8に当たってこれを押し上げ、張力を与えるが、枠体17はスクリーンマスター8に接することはなく、枠体17とスクリーンマスター8の間には所定の間隔が保たれる。従って、スクリーンマスター8にテンションをかけていく際、スクリーンマスター8と枠体17との間には摩擦力は発生しない。
【0057】
5.第2実施形態の紗張り装置100の作用(
図13~
図23)
以上説明した第2実施形態の紗張り装置100を用いて枠体17にスクリーンマスター8を張設する際の作用を
図13~
図23を参照して説明する。使用するスクリーンマスター8と枠体17の仕様は概ね第1実施形態で説明したものと同様であるが、第1実施形態よりも大きい張力(例えば25Nを越える張力)でスクリーンマスター8を枠体17に張設することができる。
【0058】
第2実施形態の紗張り装置100は、第1実施形態の紗張り装置1と構成が共通している部分もあるが、異なっている部分もあるため、以下の作用の説明では、第1実施形態の紗張り装置1と作用の異なる部分を中心として説明し、第1実施形態と同様の作用については、必要に応じて説明を省略又は簡略化して第1実施形態における作用の説明を援用するものとする。
【0059】
図13は、スクリーンマスター8と枠体17がセットされておらず、上枠101aと下枠101bは閉止状態にあり、両枠は固定手段130でロックされている。
【0060】
図14に示すように、固定手段130によるロックを解除し、上枠101aを上方に回動させ、上枠101aを水平位置から上方に所定の鋭角度だけ回動させた開放位置で位置固定し、この開放位置で以下に説明する作業を行なう。
【0061】
図15及び
図16に示すように、枠体支持部115の上に枠体17を載置する。枠体17の構成は第1実施形態と同様である。
【0062】
図17に示すように、枠体支持部115及び図示しない枠体17を覆って、下枠101bの上にスクリーンマスター8を載せる。図示はしないが、一般にスクリーンマスター8は長尺帯状のものがロール状に巻かれた形態をしており、ロールから必要長さだけ繰り出して使用する場合が多い。必要な幅のスクリーンマスター8を、下枠101bの4辺を覆うのに必要な長さだけロールから繰り出して下枠101bの上に載せ、切断して
図17に示すような枚葉状のスクリーンマスター8を得る。もちろん、必要なサイズの枚葉状のスクリーンマスター8を用いてもよい。
【0063】
図18に示すように、上枠101aを下方に回動し、スクリーンマスター8を挟んで下枠101bの上に載置し、上枠101aと下枠101bを固定手段130をロックする。
【0064】
図19、
図20及び
図22に示すように、ジャッキ110のモータ111を駆動して駆動部113を上昇させ、枠体支持部115をスクリーンマスター8の下面側(多孔性支持体の側)に接触させる。このとき、第1実施形態で
図5等を参照して説明した作用と同様、枠体支持部115の4辺にあるローラ118はスクリーンマスター8に対して均一に当たる。すなわち、4つのローラ118は、いずれの位置においてもスクリーンマスター8に対して均一な状態で接する。そして、枠体支持部115をさらに押し上げ、スクリーンマスター8を押し上げる。特に
図22に示すように、スクリーンマスター8は枠体支持部115のローラ118に押されて上方に移動するとともに、ローラ118の回転により滑らかに外方に移動して伸長する。
【0065】
このように、第2実施形態では、スクリーンマスター8に張力を与えるために接触するのは枠体支持部115のローラ118であり、スクリーンマスター8に張力を加える際には、継手装置20の作用により全てのローラ118がスクリーンマスター8に均一に当たり、スクリーンマスター8の伸びに連動してローラ118が回転するため、スクリーンマスター8とローラ118の間に発生する摩擦力は非常に小さい。また、スクリーンマスター8と枠体17の間には隙間があるので、スクリーンマスター8が枠体17の貼り付け面25に接触することもない。
【0066】
従って、スクリーンマスター8は枠体17の上方に微小距離をおいて張設され、その際、スクリーンマスター8には必要十分な張力が均一に加わる。スクリーンマスター8の中央部において張力が弱くなることもなく、またローラ118との接触位置に過大な張力が作用してこの位置で切れてしまうこともない。なお、スクリーンマスター8を張設した際の枠体17との隙間は、枠体17との摩擦を避けるために必要であるが、後の接着の工程を考慮すると、なるべく狭い方がよい。枠体17の貼り付け面25に塗布されている接着剤(
図21及び22では省略)の厚さを精密に設定することは難しいので、前記隙間は50~100μm程度が下限である。またスクリーンマスター8の張力を例えば20N程度以上とすると、貼り付け後の戻り力が大きくなるため、これを考慮すれば前記隙間はなるべく狭い方がよく、上限は3mm程度である。
【0067】
なお、この紗張り装置100によれば、ジャッキ110が電動式であるため、スクリーンマスター8に与える張力の調整を容易かつ迅速に行なうことができる。特に、テンションを強く張りすぎた場合に少しだけ緩めるような微妙な調整を迅速に行うことができる。
【0068】
図19及び
図20に示すように、スクリーンマスター8を必要な張力で枠体17の上方に微小距離をおいて張設した状態が得られたなら、第1実施形態で
図10を参照して説明したように固定作業を行う。すなわち、作業員が、枠体17の貼り付け面25の上にあるスクリーンマスター8に熱ゴテ26を押し付け、熱ゴテ26を枠体17の周方向に沿って移動し、スクリーンマスター8の全周を加熱する。接着剤が冷却して固化することによりスクリーンマスター8は枠体17に接着される。なお、接着剤としてUV接着材を用いる場合には、枠体17の貼り付け面25に予めUV接着剤を所定の厚さで塗っておき、スクリーンマスター8に所定のテンションが掛った状態でスクリーンマスター8の上からUVライトを押し当てて貼り付け面25に押し付けつつ、スクリーンマスター8の全周を移動しながらUV光を照射する。これにより、UV接着剤は硬化してスクリーンマスター8が枠体17に固定される。
【0069】
第2実施形態の紗張り装置100によれば、枠体17とスクリーンマスター8が接触しないため、枠体17のサイズに応じ、複数枚の枠体17を同時に枠体支持部115の上にセットし、複数枚の枠体17に対して1工程で紗張りを行なうことが可能である。例えば、
図24に示すように、比較的大きな枠体17aに紗張りする場合には、1枚を枠体支持部115に載せる。また、
図25に示すように、
図24の枠体17aの半分程度の比較的小さな枠体17bに紗張りする場合には、2枚を枠体支持部115に載せて1枚のスクリーンマスター8で紗張りを行なうことができる。さらに、
図26に示すように、スクリーンマスター8が枠体17のエッジ等に接触しないため、枠体支持部115に対して枠体17aを傾斜して配置すれば、バイアスでの紗張りも可能となる。なお、
図24~
図26では、枠体支持部115の本体部分に代えて枠体支持部115の4辺に設けられたローラ118及び軸受部117を示している。
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態において、ジャッキの駆動部と枠体支持部が継手装置20を用いて連結されているが、継手装置を用いなくとも、枠体支持部が微小角度(一例として水平方向で5度以内)、枠体支持部の重心近傍を支点として揺動可能であればよい。最大仕様荷重が2トン程度の通常用いられている油圧ジャッキや電動ジャッキでは、駆動部がジャッキ本体に対してわずかに(微小角度)揺動可能となっている。このようなジャッキでは、駆動部を枠体支持部に対して固定連結しても、枠体支持部は微小角度、枠体支持部の重心部近傍を支点として揺動することができる。したがって、このようなジャッキを用いる場合には、ジャッキの駆動部を枠体支持部に対して固設してもよい。
また、上述の第2実施形態においては、ローラ118の高さは一定であるが、厚みの異なる枠体を使用する場合等には、アダプタ116を高さの異なるものに交換して軸受部117に固定することができる。また、軸受部117を、スライド可能に勘合する複数の金属パーツから構成し、これらの金属パーツを任意の位置で螺子止め固定できる構造とし、枠体の厚みに応じてローラ118の頂部の高さを調整できるようにしてもよい。この場合、ローラ118の頂部の高さと接着剤27上面との関係が
図23のような状態を維持できればよい。
【0070】
6.第2実施形態の変形例(
図27~
図29)
第2実施形態では、予め塗布した接着剤27とスクリーンマスター8の摩擦を解消するためにガイド部材としてローラ118を備えていた。このため、紗張りの際には
図23に示すように、接着剤27とスクリーンマスター8が接触することはなく、摩擦を生じることもなく、ローラ118でスクリーンマスターを強く押し上げて高テンションの紗張りを行うことができた。
【0071】
第2実施形態においてUV接着剤を用いる場合、前述した通り、枠体17の貼り付け面25に予めUV接着剤を所定の厚さで塗っておき、枠体17のUV接着剤と隙間をおいた状態でスクリーンマスター8に所定のテンションをかけ、このスクリーンマスター8の上からUVライトを押し当ててUV光を照射しながら貼り付け面25に押し付けつつ、スクリーンマスター8の全周を移動する手法が採用される。この手法によれば、UV接着剤が硬化してスクリーンマスター8を枠体17に固定することができる。
【0072】
ところが、第2実施形態において、UV接着剤を用いてスクリーンマスター8を枠体17に固定する際に、場合によっては幾つかの解決しなければならない課題がありうることに、本願発明者は気が付くに至った。それは、UV接着剤を用いる場合には、スクリーンマスターと接着剤層が十分に安定して接触している状態でないと、UV照射によりUV接着剤を固化することで行うスクリーンマスター8の固定が不十分になる可能性があるという課題である。すなわち、上述した第2実施形態においてUV接着剤を用る手法では、張設したスクリーンマスター8の上からUVライトを押し当ててUV光を照射しながら貼り付け面25に押し付けつつ、スクリーンマスター8の全周を移動していたため、UV接着剤と貼り付け面25の接触が不十分になる可能性があり、また周状の貼り付け面25の位置によっても接触が不均一になる可能性があり、結果としてスクリーンマスター8を枠体17の全周にわたって均一かつ十分な接着力で固定することが困難となる場合がありうるという課題が考えられる。また、このような問題を除外したとしても、スクリーンマスター8と枠体17の隙間が大きいと接着剤層を厚くする必要があり、接着剤の使用量が多くなりコストアップとなる、という課題も考えられる。UV接着剤を用いてスクリーンマスター8を枠体17に確実に固定するためには、枠体17の貼り付け面25に塗布したUV接着剤にスクリーンマスター8を密着させた状態でUV照射を行えばよいが、それでは、紗張りの際に接着剤とスクリーンマスター8の間に隙間を設けて摩擦を生じることなく高テンションの紗張りを行うという第2実施形態の紗張り装置100の目的が達成できなくなる。
【0073】
そこで、本願発明者等は、第2実施形態をさらに改良した。すなわち、紗張りの際に接着剤とスクリーンマスター8の間に隙間を設けて摩擦を生じることなく高テンションの紗張りを行うことができるとともに、UV接着剤を用いてスクリーンマスター8を枠体17に確実に固定することができる第2実施形態の変形例である紗張り装置100aを提案する。
【0074】
第2実施形態の変形例である紗張り装置100aの構成を
図27~
図29を参照して説明する。
第2実施形態の変形例の紗張り装置100aは、第2実施形態の紗張り装置100に新たな構成要素を加えたものであり、その他の構成は第2実施形態の紗張り装置100と同一である。そこで、以下の説明では、第2実施形態の紗張り装置100において本願発明者が見出した課題と、その解決手段である前記新たな構成要素を中心として説明し、第2実施形態と構成が共通する部分については適宜説明を省略又は簡略化して第2実施形態の構成及び作用の説明を援用し、図面には可能な限り第2実施形態の紗張り装置100と共通の符号を付すものとする。
【0075】
図27中に破線で示すように、紗張り装置100aにおいて枠体17を支持している図示しない矩形の枠体支持部115の四隅には、移動手段160が設けられている。
図28及び
図29に示すように、移動手段160は枠体支持部115の隅部の上面に開口して形成された取り付け孔150に、嵌入又はねじ止め等の任意の構造または手段で固定されている。移動手段160は、取り付け孔150に固定された本体部161と、本体部161に対して出没自在に設けられた押圧部162とを備えている。本体部161の内部には、押圧部162を上方に付勢するばね等の付勢手段と、押圧部162の位置をワンタッチで解除自在に固定するラッチ機構等が設けられている。付勢手段の付勢力に抗して押圧部162を押し下げれば、押圧部162は本体部161に没入し、ある位置を越えたところでラッチ機構が働いて押圧部162は動きを抑制され、
図28に示す下方位置にセットされる。この状態から押圧部162に押圧力を加えてさらに押し下げて本体部161内に押し込むと、ラッチ機構が解除され、そのまま押圧力を解除すると付勢手段によって押圧部162は上昇し、所定の上方位置にセットされる。なお、この移動手段160が枠体17に与える力は10Nから200Nの範囲内である。
【0076】
第2実施形態の変形例である紗張り装置100aの作用を
図27~
図29を参照して説明する。
枠体支持部115が待機位置にある状態で、4つの移動手段160の押圧部162を何れも下方位置に設定し、その上に枠体17を載置する。4つの移動手段160の押圧部162が何れも上方位置に設定されている場合は、その上に枠体17を載置し、枠体17の一対の長辺の各中央部(又は一対の短辺の各中央部)を下方に押し下げ、4つの移動手段160の押圧部162を下方位置に設定する。枠体17の貼り付け面25にはUV接着剤27aを塗布しておく。
【0077】
ジャッキ110によって枠体支持部115を待機位置から上昇させる。枠体支持部115の4辺にあるローラ118がスクリーンマスター8に当たってこれを押し上げ、必要な張力を与える。
図28に示すように、枠体17はスクリーンマスター8に接することはなく、枠体17のUV接着剤27aとスクリーンマスター8の間には所定の間隔が保たれる。従って、スクリーンマスター8にかけたテンションを所定の値まで上げていく際、スクリーンマスター8と枠体17との間には摩擦力は発生せず、UV接着剤27aが押圧されて枠体17の外側又は内側にはみ出して流れてしまうこともない。
【0078】
図28に示すように、スクリーンマスター8に所定の張力が与えられ、スクリーンマスター8と枠体17(及びUV接着剤27a)との間に所定の隙間がある状態において、枠体17の一対の長辺の各中央部(又は一対の短辺の各中央部)を同時に下方に押し下げる。4つの移動手段160のラッチ機構が解除され、枠体17は4つの押圧部162に押し上げられて上昇し、
図29に示すように、貼り付け面25のUV接着剤27aがスクリーンマスター8の紗(下面側)に接触する。
【0079】
図29に示す状態で、スクリーンマスター8のフィルム(上面側)の側からUV光を照射し、UV接着剤27aを硬化させてスクリーンマスター8を所定の張力が効いた状態で枠体17の貼り付け面25に接着・固定する。枠体17のUV接着剤27aは、必要な張力が与えられたスクリーンマスター8に全面で密着しており、その密着の状態は4つの移動手段160の付勢力によるため均一である。そして、枠体17の全周について必要な時間のUV照射を安定して行える。
【0080】
移動手段160による枠体17の上昇距離は、必要な張力が与えられた状態にあるスクリーンマスター8とUV接着剤27aの上面との距離が解消され、UV接着剤27aが接着に必要な状態でスクリーンマスター8の下面に接触するようなものであればよい。
図29に示す例では、UV接着剤27aの厚さおよび枠体17の重量を考慮して、UV接着剤27aの表面がローラ118の頂点と略一致する高さまで枠体17が上方に移動するような持ち上げ力を有する移動手段160を採用した。しかしながら、枠体17の貼り付け面25に塗布したUV接着剤27aの量(厚さ)によっては、圧縮を受けたUV接着剤27aの広がりを考慮しつつ、枠体17の表面がローラ118の頂点と略一致するまで枠体17を上昇させるか、これよりも若干上方の高さまで上方に移動させてスクリーンマスター8にさらにテンションを加えるようにしてもよい。この場合、押圧されたUV接着剤27aが枠体17の外側に流れ出ないようにすることが好ましい。また、移動手段160の押圧部162の下方位置は、枠体17の貼り付け面25に塗布されたUV接着剤27aがスクリーンマスター8の下面に接触しない位
置とする。
【0081】
本変形例によれば、UV接着剤27aを使用した紗張りにおいて、枠体17の全周にわたってUV接着剤27aを均一な状態で安定的に密着させることができる。また、UV接着剤27aの硬化はUV照射により行うため、作業者の技術の相違によるばらつきが少ない。さらに、ホットメルト接着剤等を用いる場合には接着剤の塗布および乾燥の作業時間に5時間程度を要するのに比べ、UV接着剤27aであれば乾燥させる必要がなく、5分程度で済むため作業効率が向上する。このように、UV接着剤27aを使用することにより、紗張りにおいて熟練した技術が不要となり、スクリーンマスター8と枠体17を確実かつ簡単に接着できる。さらにまた、UV接着剤27aを使用すれば熱等によるスクリーンマスター8へのダメージが無いため、製版品質の安定が図れる。
【0082】
本変形例では、枠体17に予め塗布したUV接着剤27aでスクリーンマスター8と枠体17を固定する使用方法を説明したが、枠体17に予め接着剤を塗布しないで行う使用方法にも本変形例を適用することができる。すなわち、本変形例の紗張り装置100aにおいて、スクリーンマスター8を枠体17の上方に距離をおいて所定の張力で張設した後、熱ゴテで貼り付け面25に沿ってスクリーンマスター8を熱してフィルムを溶融し、接着剤が通過する孔を作る。その後、移動手段160の押圧部162を上昇させて枠体17を上昇させ、接着剤を塗布していない枠体17の貼り付け面25をスクリーンマスター8の下面に接触させる。そして、スクリーンマスター8の上面側から接着剤を塗布し、スクリーンマスター8と枠体17を接着する。このように本変形例の紗張り装置100aによれば、移動手段160で最後に枠体17を微小距離だけ上昇させることができるので、予め枠体17に接着剤を塗布しておく手間をかけずとも、スクリーンマスター8に必要な張力を加えてから最後に枠体17と接触させて接着剤で接着する簡易な工程をとることができる。このような簡易な工程は、最後に枠体17を微小距離だけ上昇させる移動手段160を備えた本変形例でなければ実現できない。
【0083】
7.第3実施形態の紗張り装置300(
図30~
図35)
第3実施形態の紗張り装置300を
図30~
図35を参照して説明する。
まず第3実施形態の紗張り装置300の構成を説明する。第3実施形態の紗張り装置300は、第2実施形態の紗張り装置100と基本的な構成を共有しているが、上枠101aと下枠101bを固定する固定手段330等の構成が異なっている。以下の説明では、第2実施形態の紗張り装置100と構成が異なる固定手段330等の構成及び作用効果を中心として説明し、第2実施形態の紗張り装置100と共通する部分については、適宜説明を省略又は簡略化して第2実施形態の説明を援用し、図面には可能な限り第2実施形態の紗張り装置100と共通の符号を付すものとする。
【0084】
図30及び
図35に示すように、この紗張り装置300は、下枠101bの4つの辺に、2個ずつの固定手段330を有している。従って、固定手段330の総数は8個である。
図31及び
図32に示すように、下枠101bの外面下方と内面下方には、長手方向に沿って案内溝290がそれぞれ形成されている。案内溝290には、固定手段330のスライド部310が移動可能に係合している。スライド部310は、案内溝290に係合する2対の係合爪311をそれぞれ備えた2個の箱型の支持体312を本体としている。2個の支持体312,312は、所定の隙間313をおいて配置され、支持軸314に貫通されて一体に固定されている。従って、2個の支持体312,312の隙間313には支持軸314が露出している。
【0085】
図31に示すように、スライド部310の中央にある前記隙間313には、固定手段330の固定部320が設けられている。固定部320は、支持軸314が貫通する長孔321を備えた取り付け部322と、取り付け部322に一端で連続するハンドル323と、ハンドル323の他端に一体で設けられた操作体324とを備えており、これらが全体として略C字形に配置されてなる万力であり、上枠101aと下枠101bを固定する機能を備える。ハンドル323には操作用の孔325が形成されており、操作者がこの孔325に指を差し込んで操作すれば、スライド部310の支持軸314を中心として固定部320を上下に回動させることができる。また、
図32に示すように、操作体324にはねじ326が設けられている。このねじ326の上端部は、レンチ等の工具を挿入固定できる操作孔(図示せず)になっており、操作孔は操作部324の頂面に開口したねじ孔327(
図31参照)から見えるので、このねじ孔327から工具を操作孔に挿入して工具を回動操作すれば、ねじ326を進退させることができる。
図32に示すように、このねじ326の下端部は操作体324の下面を貫通して下方に突出しており、当該下端部には下面が平坦な座部328が図示しないボールジョイントで回動自在に連結されている。従って、固定手段330の固定部320を上枠101aの上面の上方に配置し、工具でねじ326を操作して下方に進めることにより、座部328を上枠101aの上面に安定して接触させ、ねじ326による荷重を上枠101aの上面に垂直な方向で安定して加えることができる。
【0086】
次に第3実施形態の紗張り装置300において、取り付け枠101にスクリーンマスター8を張設する際の作用を説明する。
図30に示すように、上枠101aを水平位置から上方に所定の角度だけ回動させた開放位置で位置固定し、この開放位置で以下に説明する作業を行なう。
【0087】
図30に示すように、枠体支持部115の上に枠体17を載置する。次に、
図27には示していないが、枠体支持部115及び枠体17を覆って、下枠101bの上にスクリーンマスター8を載せる。
【0088】
図31に示すように、上枠101aを下方に回動し、スクリーンマスター8の上に載置する。スクリーンマスター8は、上枠101aと下枠101bによって挟まれ、上枠101aと下枠101bの4つの辺において、上枠101aと下枠101bの間からスクリーンマスター8の縁部が外方に突出した状態となる。
【0089】
図32において、固定手段330が開放されており、取り付け枠101を固定していない状態では、
図32の下方に示すように固定部320は自重で下方に垂下している。この状態において、下枠101bに対する固定手段330の位置の調整を行う。すなわち、固定手段330のスライド部310は、その係合爪311によって下枠101bの案内溝290に係合しているので、操作者がスライド部310を持ち、下枠101bの辺に平行な方向の力(
図32において紙面に垂直な方向の力)を与えれば、固定手段330を移動させることができる。後の工程で、スクリーンマスター8を枠体17で押し上げた時に、スクリーンマスター8が上枠101aと下枠101bの間から抜けないようにするため、抜けやすい位置の付近に固定手段330を設定しておくことが好ましい。一般的には、矩形の取り付け枠101に張設したスクリーンマスター8を、取り付け枠101の各辺と矩形の枠体17の各辺が平行になるような配置関係で枠体17により押し上げれば、スクリーンマスター8のうち、取り付け枠101の角部に近い部分に大きな力が集中しやすいと考えられる。従って、固定手段330を取り付け枠101の各辺の角部に設置することが考えられるが、固定手段330を角部に近づけすぎるとマスターに加わる力が大きくなりすぎてマスターが破損する虞がでてくる。よって、マスター強度も考慮して、
図35に示すように、固定手段330を取り付け枠101の角部から少し離れた位置に配置するのがよい。
【0090】
図31に示すように、ハンドル323の孔325に指(操作者の指は不図示)を掛けてハンドル323を上方に操作し、
図32中の上方及び
図33に示すように操作体324が最も高い位置に来るように固定部320を引き上げる。
【0091】
図33から
図34に示すように、固定手段330を水平方向に沿って取り付け枠101に向けて押す。固定手段330は、長孔321に係合した支持軸314に沿って移動し、操作体324が上枠101aの真上となる位置に設定される。この時、上枠101aと下枠101bの間から突出しているスクリーンマスター8の縁部は、ハンドル323に押されて潰れて折れ曲がった状態となる。この状態で操作体324のねじ孔327からトルクレンチ329の連結部を挿入してねじ326に結合する。トルクレンチ329を操作してねじ326を回転させ、ねじ326を上枠101aに向けて進め、ねじ326の座部328を上枠101aの上面に当接させて押圧する。
【0092】
図34及び
図35から理解されるように、スクリーンマスター8を間に挟んだ上枠101aと下枠101bの固定は、スクリーンマスター8と垂直な方向の力で行われる。すなわち、固定手段330は、下枠101bの下面側に取り付けられており、上枠101aの上面をねじ326及び座部328で下枠101bに向けて押す。従って、上枠101aと下枠101bは、それぞれの下面及び上面にて接触した状態で、上下方向だけに作用する力により互いに押し付けられるため、スクリーンマスター8の固定は確実である。
【0093】
また、前述したように、スクリーンマスター8を挟んでいる上枠101aと下枠101bの固定力は、トルクレンチ329を使用して回転させた操作体324のねじ326によって決定される。トルクレンチは、所定のトルクでねじを締め付けるための作業用工具であり、軸力を測定するために必要となる高価な測定器や設備を使用することなく、トルクによる締め付け管理によって締め付け不足による緩みや、締め過ぎによる破損を防止することができる。
【0094】
スクリーンマスター8を取り付け枠101に張設する際に、固定手段330のねじ326に与えるべきトルクは予め実験等により定めておく。作業時には、トルクレンチ329の設定トルクを予め定めた値に設定し、ねじ326を締めることにより、上枠101aと下枠101bによるスクリーンマスター8の固定力を所期の値に設定することができる。従って、取り付け枠101に張設したスクリーンマスター8を枠体17で押し上げた時に、スクリーンマスター8が上枠101aと下枠101bの間から抜けてしまうことはない。
【0095】
上述した固定手段330のねじ326に与えるべきトルクは、種々の観点から設定することができる。スクリーンマスター8のメッシュ数から考えると、メッシュ数が大きく、目が細かいほど強度が大きく、より強い張力で張ることができ、枠体17で押し上げる工程での押し上げ力も大きいので、固定手段330のねじ326に与えるトルクは大きめに設定する。例えば、本願発明者の実験によれば、この紗張り装置300において、スクリーンマスター8がメッシュ数#70の場合に、トルク6N・mで取り付け枠101に張設すると、スクリーンマスター8は枠体17の押し上げによって取り付け枠101から抜けてしまった。また、スクリーンマスター8がメッシュ数#200の場合には、トルク8N・mで取り付け枠101に張設すると、スクリーンマスター8は枠体17の押し上げによって取り付け枠101から抜けてしまった。これらの結果から、固定手段330のねじ326に与えるトルクは少なくとも8N・mを越える値とすることが好ましい。
【0096】
また、最終的にスクリーンマスター8が取り付けられる枠体17のサイズから考えると、大きい枠体17ほど、スクリーンマスター8を押し上げた際に発生する反りが大きく、取り付け枠101の角部分からスクリーンマスター8が抜けやすくなるので、小さい枠体17を使用する場合に比べ、固定手段330のねじ326に与えるトルクを大きめにすることが好ましい。
【0097】
また、最終的に1枚のスクリーンマスター8に1工程で取り付ける枠体17の数から考えると、枠体17の数が少ないほど、スクリーンマスター8を押し上げた際に発生する反りが少ない。第2実施形態で説明した
図24に示す例のように枠体17が1個の場合よりも、
図25に示す例のように枠体17が2個の場合の方が、枠体17の反りが大きい。従って、枠体17の数が少ない場合には、枠体17の数が多い場合に比べて、固定手段330のねじ326に与えるトルクを小さめにすることができる。又は、固定手段330の数を少なくし、例えば取り付け枠101の辺ごとに1個の固定手段330としてもよい。
【0098】
スクリーンマスター8を枠体17に適当な力で張設したら、ジャッキ110のモータ111を駆動して駆動部113を上昇させ、枠体支持部115をスクリーンマスター8の下面側(多孔性支持体の側)に接触させ、枠体支持部115をさらに押し上げ、スクリーンマスター8を押し上げる。その後、スクリーンマスター8を枠体17に固定する作業を行う。
【0099】
以上説明したように、本実施形態の紗張り装置300によれば、上枠101aと下枠101bの間にスクリーンマスター8を挟み、固定手段330を取り付け枠101に沿って移動して適当な位置に定め、スクリーンマスター8と垂直な方向の力で上枠101aと下枠101bを固定する。スクリーンマスター8は、上枠101aと下枠101bによって、各辺の最適な位置において、垂直方向の荷重によって確実に固定される。さらに、固定手段330のねじ326による締め付けトルクは、使用するスクリーンマスター8のメッシュ数や枠体17のサイズや数等によって適宜に設定された値となるようにトルクレンチ329によって適切な値に管理されている。従って、張設したスクリーンマスター8を枠体17で押し上げた際にスクリーンマスター8が取り付け枠101から抜ける不具合は発生しにくい。なお、固定手段330による荷重は上枠101aと下枠101bに対して垂直方向にのみ働くので、上枠101a又は下枠101bに横方向の分力が作用する可能性は小さく、固定手段330による荷重で取り付け枠101や固定手段330自身が破損する恐れは小さい。
【0100】
なお、以上説明した第3実施形態では、固定手段330が下枠101bに設けられていたが、
図32に示すように上枠101aに形成した案内溝290に取り付けてもよいし、又は取り付け枠10とは別部品としておき、必要に応じて取り付け枠10を固定するようにしてもよい。なお、固定手段330の数は任意である。
【0101】
8.各実施形態の紗張り装置で用いられる枠体17(
図36~
図39)
以上説明した各実施形態の紗張り装置1,100で紗張りを行なう枠体17は、クロロプレンゴム系溶剤系接着剤、ホットメルト接着剤、又はアクリル系接着剤等を貼り付け面に予め所定の厚さとなるように塗布しておくことが必要である。そのためには、貼り付け面に接着剤を複数回にわたって塗布及び乾燥する必要があり、その作業には5時間から1日を要する。
【0102】
以上説明した各実施形態の紗張り装置1,100で紗張りを行なう枠体として、接着剤を塗布する準備時間が短い枠体について説明する。
図36(a)に示す枠体17の貼り付け面25に、同図(b)に示すように接着剤27を塗布した後、同図(c)に示すように、厚さ0.2mm以上の不織布200を貼り付け、不織布200の上面に接着剤27を再塗布する。不織布200には上下両面から接着剤27が染み込み、不織布200は貼り付け面25に貼着される。これを乾燥すれば紗張りに供することができる。このような不織布200を用いた構成によれば、枠体17に対して予め接着剤27が所定の厚さとなるように塗布する作業を1時間程度に短縮することができ、紗張りに要する工数を大幅に軽減することができる。
【0103】
以上説明した各実施形態の紗張り装置1,100で紗張りを行なう枠体として、接着剤27を塗布する準備時間が短い他の枠体について説明する。
図37及び
図38に示すように、枠体120の貼り付け面25に、断面形状で見た場合、表面から内部に進むにつれて幅が大きくなる楔形状のスリット122を、枠体120の各辺に平行に連続的に形成する。接着剤27はホットメルト接着剤を用いる。溶融した接着剤27を前記スリット122に流し込み、枠体120の各辺の貼り付け面25に薄く露出する位置まで流す。この状態で接着剤27を固めることにより、所定の厚みを持ち、且つ、枠体120から剥がれにくい接着剤27の層を短時間で形成することができる。
【0104】
以上説明した各実施形態の紗張り装置1,100で紗張りを行なう枠体として、接着剤27を塗布する準備時間が短く、かつ使用後に接着剤を除去する時間が短くて済む枠体123について説明する。
図39に示すように、枠体123の貼り付け面25に、断面形状で見た場合、表面から内部に進むにつれて幅が大きくなる楔形状のスリット124を、枠体123の各辺に平行に連続的に形成する。ここで、枠体123は、貼り付け面25の一部を含む外枠123aと、外枠123a以外の部分であり、貼り付け面25の残りの一部を含む内枠123bとから構成されている。外枠123aに形成されたスリット124は、貼り付け面25の一部を含む壁部125と、スリット124を挟んで壁部125と反対側にある返し部126とを有している。内枠123bと外枠123aを組み合わせると貼り付け面25にスリット124が開口した枠体123となり、外枠123aを水平方向にスライドさせると内枠123bと外枠123aを分離することができる。接着剤27はホットメルト接着剤を用いる。溶融した接着剤27を前記スリット124に流し込み、枠体120の各辺の貼り付け面25に薄く露出する位置まで流す。この状態で接着剤27を固めることにより、所定の厚みを持ち、且つ、枠体123からはがれにくい接着剤27の層を短時間で形成することができる。
【0105】
この枠体123によれば、楔形状のスリット124に流れ込んで固化した接着剤27は、内部の方が大きいため枠体120から剥がれにくい。使用後に他のスクリーンマスター8を貼るために接着剤27を除去したい場合には、外枠123aを水平方向にスライドさせて内枠123bから取り外すことにより、スリット124内にある接着剤27を返し部126で引いて外枠123aとともにスリット124外に取り出すことができる。
【0106】
9.実施形態における各態様の枠体及びスクリーン版の構成とその効果について
第1の態様の枠体17は、
熱可塑性樹脂フィルムと紗からなるスクリーンマスター8の前記紗が貼り付け面25に接着剤27で貼り付けられるスクリーン版の枠体17であって、
前記貼り付け面25の外周部に所定の厚さの低摩擦材料30が設けられ、前記接着剤27と前記スクリーンマスター8との間に隙間ができることを特徴としている。
【0107】
第1の態様の枠体17によれば、
枠体17の貼り付け面25に低摩擦シート30を張ることにより、枠体17に押し上げられたスクリーンマスター8が貼り付け面25の上を移動する際の抵抗を減らすことができる。また、この低摩擦シート30によれば、枠体17の縁部での滑りが向上し、抵抗が減ることとなる。このため、スクリーンマスター8の破れが生じにくくなり、必要な張力で枠体17に張設して圧着固定することが可能となる。
【0108】
第2の態様の枠体17は、第1の態様の枠体17において、
前記貼り付け面25に塗布された前記接着剤27のうち、前記貼り付け面25の外周部に塗布された前記接着剤27の上に前記低摩擦材料30が設けられていることを特徴としている。
【0109】
第2の態様の枠体17によれば、
枠体17の貼り付け面25に塗布した接着剤27の外周部の上面に低摩擦シート30を張ることにより、低摩擦シート30の高さが、スクリーンマスター8と接着剤27との間に隙間を生じさせる。このため、枠体17に押し上げられたスクリーンマスター8が貼り付け面25の上を移動する際の抵抗を減らすことができる。
【0110】
第3の態様のスクリーン版は、
枠体17と、
前記枠体17の貼り付け面25に塗布された接着剤27と、
前記接着剤27のうち前記貼り付け面25の外周部に塗布された前記接着剤27の上に設けられた所定の厚さの低摩擦材料としての低摩擦シート30と、
貼り合わせた熱可塑性樹脂フィルムと紗からなり、前記紗を前記低摩擦材料に接触させた状態で前記接着剤27によって前記貼り付け面25に接着されたスクリーンマスター8と、
を有することを特徴としている。
【0111】
第3の態様のスクリーン版によれば、
枠体17でスクリーンマスター8を押し上げるスクリーンマスター8の張設時に、枠体17に押し上げられたスクリーンマスター8が貼り付け面25の上を移動する際の抵抗が小さいため、スクリーンマスター8を必要な張力で枠体17に張設して圧着固定し、均一かつ高い張力で紗を張設することが可能となる。
【0112】
第4の態様の枠体17は、
熱可塑性樹脂フィルムと紗からなるスクリーンマスター8の前記紗が貼り付け面25に接着剤27で貼り付けられるスクリーン版の枠体17であって、
接着剤27を含む不織布200が前記接着剤27により前記貼り付け面25に接着されていることを特徴とする。
【0113】
第4の態様の枠体17によれば、
不織布200が接着剤27により枠体17の貼り付け面25に接着されているので、枠体17に対して予め接着剤27が所定の厚さとなるように塗布する作業を、接着剤の塗布と乾燥を繰り返して所望の厚さを得る工程に比べて短縮することができ、紗張りに要する工数を大幅に軽減することができる。
【符号の説明】
【0114】
1,100,300…紗張り装置
5,101…取り付け枠
8…スクリーンマスター
10,110…ジャッキ
13,113…駆動部
16,115…枠体支持部
17,120,123…枠体
20…継手装置
25…貼り付け面
27…接着剤
30…低摩擦材料としての低摩擦シート
101a…上枠
101b…下枠
118…ガイド部材としてのローラ
130,330…固定手段
160…移動手段
200…不織布
310…固定手段のスライド部
320…固定手段の固定部
326…ねじ
329…トルクレンチ