(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171902
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ミネラル濃縮液組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20221104BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20221104BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20221104BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221104BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20221104BHJP
C12H 1/14 20060101ALN20221104BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L33/16
A23L2/38 B
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/00 V
A23L2/00 B
C12H1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149433
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2021541547の分割
【原出願日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2020025724
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020025725
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020041409
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020189878
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】大栗 弾宏
(72)【発明者】
【氏名】横尾 芳明
(72)【発明者】
【氏名】小貫 仁
(72)【発明者】
【氏名】長田 知也
(72)【発明者】
【氏名】藤江 彬子
(72)【発明者】
【氏名】喜多 諒
(72)【発明者】
【氏名】寺本 由紀
(57)【要約】
【課題】水、食品又は飲料などに添加することにより、その風味や機能を改善する。
【解決手段】ミネラル濃縮液組成物であって、前記ミネラル濃縮液組成物中に存在する金属イオンのうち、カリウムイオンが最も高い濃度で含まれていることを特徴とする、ミネラル濃縮液組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラル濃縮液組成物であって、前記ミネラル濃縮液組成物中に存在する金属イオンのうち、カリウムイオンが最も高い濃度で含まれていることを特徴とする、ミネラル濃縮液組成物。
【請求項2】
前記ミネラル濃縮液組成物中の塩化物イオンの含有量が、前記カリウムイオン濃度の50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のミネラル濃縮液組成物。
【請求項3】
前記ミネラル濃縮液組成物中のカルシウムイオンの含有量が、前記カリウムイオン濃度の2.0%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のミネラル濃縮液組成物。
【請求項4】
前記ミネラル濃縮液組成物中のマグネシウムイオンの含有量が、前記カリウムイオン濃度の1.0%以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のミネラル濃縮液組成物。
【請求項5】
前記ミネラル濃縮液組成物中のナトリウムの含有量が、前記カリウムイオン濃度の5~45%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のミネラル濃縮液組成物。
【請求項6】
前記ミネラル濃縮液組成物が、植物由来原料の活性炭の抽出液を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のミネラル濃縮液組成物。
【請求項7】
前記植物由来原料が、ココヤシ、パームヤシ、アーモンド、クルミ又はプラムの果実殻;おがくず、木炭、樹脂又はリグニンから選択される木材;巣灰;竹材;バガス、もみ殻、コーヒー豆又は廃糖蜜から選択される食品残渣;あるいはこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載のミネラル濃縮液組成物。
【請求項8】
植物由来原料の活性炭がヤシ殻活性炭である、請求項6に記載のミネラル濃縮液組成物。
【請求項9】
7.5~10.5のpHを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のミネラル濃縮液組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のミネラル濃縮液組成物を含む、水、食品又は飲料。
【請求項11】
生体内における酸性化を予防又は改善するために用いられる、請求項10に記載の水、食品又は飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、食品又は飲料などに添加することにより、その風味や機能を改善することができるミネラル濃縮液組成物に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向や美味志向を背景として、安全で美味しい水を求める社会的関心が高まっており、ペットボトルなどの容器に入ったミネラルウォーターが、世界中で多く飲まれている。しかしながら、ペットボトル等のプラスチック容器のごみは、深刻な環境問題となっており、容器詰めのミネラルウォーターに代わり、家庭などで手軽に提供できるミネラル水の開発が求められている。
【0003】
また、生体の生理作用に必要な微量元素であるミネラル成分を補給することを目的として、浄水などに高濃度のミネラルを添加した飲用水なども開発されている。例えば、特許文献1には、高マグネシウム含有量濃縮液を浄水と混合することにより、高濃度のマグネシウムを含有する飲用水を製造することが開示されている。特許文献2には、海洋深層水由来の水に、マグネシウム及びカルシウムからなるミネラル成分を添加して飲料を製造することが開示されている。しかしながら、二価の金属イオンは苦みやえぐみなどの雑味をもたらすことが知られており、これらのミネラルを高濃度で含有する水、食品又は飲料は、摂取しにくいという欠点があった。
【0004】
さらに、特許文献3には、麦飯石、天寿石、トルマリン等の天然鉱石を水に浸漬することによりミネラル成分を溶出させることを特徴とするミネラル水の製造方法が開示されているが、当該方法は、得られたミネラル水中に、過剰摂取すると有害であるとされるバナジウム等の所望されない成分が含まれることやミネラルの抽出効率が高くないといった欠点を有する。また、特許文献4には、鶏糞炭を水で加熱抽出することによるミネラル水の製造方法が開示されているが、鶏糞炭は食品用途の原料としては適切でない。
特許文献5には、竹炭を煮沸抽出することによるミネラルウォーターの製造方法が開示されており、また、特許文献6には、木炭を煮沸抽出することによるアルカリ水の製造方法が開示されている。しかしながら、これらの先行技術に開示される方法では、ミネラル成分を効率的に抽出して、所望のミネラル成分のみを含むミネラルウォーターを得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-102137号公報
【特許文献2】特開2008-48742号公報
【特許文献3】特開2009-72723号公報
【特許文献4】特開平6-31284号公報
【特許文献5】特開2005-334862号公報
【特許文献6】特開2001-259659号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】安部郁夫,活性炭の製造方法,炭素 連載講座,2006,No.225,373-381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水、食品又は飲料などに添加することにより、その風味や機能を改善することができるミネラル濃縮液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このたび、純水を用いてミネラルの溶出が可能な天然素材としてヤシ殻活性炭を見出し、これにより得られたミネラル濃縮液の成分について鋭意検討した結果、高濃度のカリウムイオンを含むミネラル濃縮液組成物が、添加した浄水に対して、弱アルカリ性から弱酸性のpH領域における有意な緩衝能とともに、まろやかで雑味が少ない風味を付与するという驚くべき知見を得た。
【0009】
即ち、本発明の主旨は、以下に存する。
[1] ミネラル濃縮液組成物であって、前記ミネラル濃縮液組成物中に存在する金属イオンのうち、カリウムイオンが最も高い濃度で含まれていることを特徴とする、ミネラル濃縮液組成物。
[2] 前記ミネラル濃縮液組成物中の塩化物イオンの含有量が、前記カリウムイオン濃度の50%以下であることを特徴とする、1に記載のミネラル濃縮液組成物。
[3] 前記ミネラル濃縮液組成物中のカルシウムイオンの含有量が、前記カリウムイオン濃度の2.0%以下であることを特徴とする、1又は2に記載のミネラル濃縮液組成物。
[4] 前記ミネラル濃縮液組成物中のマグネシウムイオンの含有量が、前記カリウムイオン濃度の1.0%以下であることを特徴とする、1~3のいずれかに記載のミネラル濃縮液組成物。
[5] 前記ミネラル濃縮液組成物中のナトリウムの含有量が、前記カリウムイオン濃度の5~45%であることを特徴とする、1~4のいずれかに記載のミネラル濃縮液組成物。
[6] 前記ミネラル濃縮液組成物が、植物由来原料の活性炭の抽出液を含む、1~5のいずれかに記載のミネラル濃縮液組成物。
[7] 前記植物由来原料が、ココヤシ、パームヤシ、アーモンド、クルミ又はプラムの果実殻;おがくず、木炭、樹脂又はリグニンから選択される木材;巣灰;竹材;バガス、もみ殻、コーヒー豆又は廃糖蜜から選択される食品残渣;あるいはこれらの組み合わせから選択される、6に記載のミネラル濃縮液組成物。
[8] 前記植物由来原料の活性炭がヤシ殻活性炭である、6に記載のミネラル濃縮液組成物。
[9] 7.5~10.5のpHを有する、1~8のいずれかに記載のミネラル濃縮液組成物。
[10] 1~9のいずれかに記載のミネラル濃縮液組成物を含む、水、食品又は飲料。
[11] 生体内における酸性化を予防又は改善するために用いられる、10に記載の水、食品又は飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、水、食品又は飲料などの風味や機能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、各濃度のヤシ殻活性炭からのミネラル濃縮エキスを添加した水組成物と対照(KOH及び市販のアルカリイオン水)の緩衝能を示す。
【
図2】
図2は、最終カリウム濃度が100ppmとなるように調製したヤシ殻活性炭由来のミネラル濃縮エキスを添加した水組成物と対照(浄水及び市販のアルカリイオン水)の緩衝能を示す。
【
図3】
図3は、各濃度のヤシ殻活性炭からのミネラル濃縮エキスを添加した水組成物と対照(K
2CO
3)のまろやかさに関する官能性評価を示す。
【
図4】
図4は、各濃度のヤシ殻活性炭からのミネラル濃縮エキスを添加した水組成物と対照(K
2CO
3)の雑味に関する官能性評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ミネラル濃縮液組成物であって、前記ミネラル濃縮液組成物中に存在する金属イオンのうち、カリウムイオンが最も高い濃度で含まれていることを特徴とする、ミネラル濃縮液組成物に関する。
【0013】
カリウムは生体に必要なミネラルの1つであり、生体内においては大部分が細胞内に存在し、細胞外液に多く存在するナトリウムと相互に作用しながら、細胞の浸透圧を維持したり、細胞内の水分を保持したりするのに重要な役割を果たしている。カリウムは、ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持しているほか、酸・塩基平衡の維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きを担っている。また、カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果を有することが知られている。このように、カリウムは人にとって極めて重要なミネラル成分であるが、過剰なカリウムイオンは、苦みやえぐみといった雑味をもたらす。したがって、本発明のミネラル濃縮液組成物は、水、食品又は飲料に添加した時に、水、食品又は飲料中のカリウム濃度又は添加されたカリウムイオンの濃度(ミネラル濃縮液組成物中のカリウム濃度(ppm)/希釈倍率)の下限値が、20ppm以上、25ppm以上、30ppm以上、35ppm以上、45ppm以上、又は50ppm以上であり、そして、カリウムイオン濃度の上限値が600ppm以下、595ppm以下、590ppm以下、585ppm以下、580ppm以下、575ppm以下、570ppm以下、565ppm以下、560ppm以下、555ppm以下、550ppm以下、545ppm以下、540ppm以下、535ppm以下、530ppm以下、525ppm以下、520ppm以下、515ppm以下、510ppm以下、505ppm以下、500ppm以下、495ppm以下、490ppm以下、485ppm以下、480ppm以下、475ppm以下、470ppm以下、465ppm以下、460ppm以下、455ppm以下、450ppm以下、445ppm以下、440ppm以下、435ppm以下、430ppm以下、425ppm以下、420ppm以下、415ppm以下、410ppm以下、405ppm以下、400ppm以下、395ppm以下、390ppm以下、385ppm以下、380ppm以下、375ppm以下、370ppm以下、365ppm以下、360ppm以下、355ppm以下、350ppm以下、345ppm以下、340ppm以下、335ppm以下、330ppm以下、325ppm以下、320ppm以下、315ppm以下、310ppm以下、305ppm以下、300ppm以下、295ppm以下、290ppm以下、285ppm以下、280ppm以下、275ppm以下、270ppm以下、265ppm以下、260ppm以下、255ppm以下、250ppm以下、245ppm以下、240ppm以下、235ppm以下、230ppm以下、225ppm以下、220ppm以下、215ppm以下、210ppm以下、205ppm以下、又は200ppm以下となるように調製することが好ましい。本発明のミネラル濃縮液組成物は、水、食品又は飲料に添加した時に、水、食品又は飲料中のカリウム濃度又は添加されたカリウムイオンの濃度(ミネラル濃縮液組成物中のカリウム濃度(ppm)/希釈倍率)が、例えば、50~200ppm、50~190ppm、50~180ppm、50~170ppm、50~160ppm、50~150ppm、50~140ppm、50~130ppm、50~120ppm、50~110ppm、50~100ppm、50~90ppm、50~80ppm、50~70ppm、50~60ppm、60~200ppm、60~190ppm、60~180ppm、60~170ppm、60~160ppm、60~150ppm、60~140ppm、60~130ppm、60~120ppm、60~110ppm、60~100ppm、60~90ppm、60~80ppm、60~70ppm、70~200ppm、70~190ppm、70~180ppm、70~170ppm、70~160ppm、70~150ppm、70~140ppm、70~130ppm、70~120ppm、70~110ppm、70~100ppm、70~90ppm、70~80ppm、80~200ppm、80~190ppm、80~180ppm、80~170ppm、80~160ppm、80~150ppm、80~140ppm、80~130ppm、80~120ppm、80~110ppm、80~100ppm、80~90ppm、90~200ppm、90~190ppm、90~180ppm、90~170ppm、90~160ppm、90~150ppm、90~140ppm、90~130ppm、90~120ppm、90~110ppm、90~100ppm、100~200ppm、100~190ppm、100~180ppm、100~170ppm、100~160ppm、100~150ppm、100~140ppm、100~130ppm、100~120ppm、100~110ppm、110~200ppm、110~190ppm、110~180ppm、110~170ppm、110~160ppm、110~150ppm、110~140ppm、110~130ppm、110~120ppm、120~200ppm、120~190ppm、120~180ppm、120~170ppm、120~160ppm、120~150ppm、120~140ppm、120~130ppm、130~200ppm、130~190ppm、130~180ppm、130~170ppm、130~160ppm、130~150ppm、130~140ppm、140~200ppm、140~190ppm、140~180ppm、140~170ppm、140~160ppm、140~150ppm、150~200ppm、150~190ppm、150~180ppm、150~170ppm、150~160ppm、160~200ppm、160~190ppm、160~180ppm、160~170ppm、170~200ppm、170~190ppm、170~180ppm、180~200ppm、180~190ppm、又は190~200ppmとなるように調製することができる。
【0014】
天然に存在する水には一定量の塩化物イオンが含まれており、これらの多くは地質や海水に由来するものである。塩化物イオンは、250~400mg/l以上存在すると、味に鋭敏な人には塩味を与え、味を損なう可能性があるため、本発明のミネラル濃縮液組成物における塩化物イオンの含有量は、できるだけ少ない方が好ましい。本発明のミネラル濃縮液組成物は、水、食品又は飲料に添加した時に、水、食品又は飲料中の塩化物イオンの含有量が、例えば、前記カリウムイオン濃度の50%以下、49%以下、48%以下、47%以下、46%以下、45%以下、44%以下、43%以下、42%以下、41%以下、40%以下、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、35%以下、34%以下、33%以下、32%以下、31%以下、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下となるように調製することができる。本発明のミネラル濃縮液組成物中の塩化物イオンの含有量は、例えば、前記カリウムイオン濃度の50%以下、49%以下、48%以下、47%以下、46%以下、45%以下、44%以下、43%以下、42%以下、41%以下、40%以下、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、35%以下、34%以下、33%以下、32%以下、31%以下、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下である。
【0015】
カルシウムは、生体内において、リンと共にハイドロキシアパタイトとして骨格を形成し、筋肉の収縮に関与することが知られている。マグネシウムは、生体内において、骨や歯の形成並びに多くの体内の酵素反応やエネルギー産生に関与することが知られている。また、水中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの含有量は、水の味に影響することが知られており、水中に含まれるミネラル類のうちカルシウムとマグネシウムの合計含有量の指標(硬度)が一定水準より少ない場合を軟水、多い場合を硬水という。一般的には、日本国内で産出されるミネラルウォーターは軟水のものが多く、欧州で産出されるものには硬水が多い。WHOの基準では、これらの塩類の量を炭酸カルシウムに換算したアメリカ硬度(mg/l)において、0~60のものを軟水、120~180のものを硬水、180以上のものを非常な硬水というように決められている。一般的には適度な硬度(10~100mg/l)の水が美味しいとされており、特にマグネシウム含有量が高くなると苦みが強く飲みにくくなる。また、硬度が高すぎると、水の味覚に影響を与えるだけでなく、胃腸を刺激し、下痢などの原因となるため好ましくない。したがって、本発明のミネラル濃縮液組成物は、水、食品又は飲料に添加した時に、水、食品又は飲料中のカルシウムイオンの含有量が、例えば、前記カリウムイオン濃度の30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下であり、そして、水、食品又は飲料中のマグネシウムイオンの含有量が、例えば、前記カリウムイオン濃度の15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下となるように調製することが好ましい。本発明のミネラル濃縮液組成物中のカルシウムイオンの含有量は、例えば、前記カリウムイオン濃度の2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、又は0.01%以下である。また、本発明のミネラル濃縮液組成物中のマグネシウムイオンの含有量は、例えば、前記カリウムイオン濃度の1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、又は0.01%以下である。
【0016】
ナトリウムは、生体内において、水分を保持しながら細胞外液量や循環血液の量を維持し、血圧を調節している。効果的に体内に水分補給するには、一定量のナトリウムイオンを摂取するとよいことが知られており、特に熱中症対策などに有効である。しかしながら、ナトリウムを過剰に摂取すると、この液量が増大するため、血圧が上昇したり、むくみが生じたりするおそれがある。また、ナトリウムイオンの含有量が多くなるにしたがい、塩味やぬめり感が生じてしまい、飲料の爽快感が損なわれる場合がある。したがって、本発明のミネラル濃縮液組成物は、水、食品又は飲料に添加した時に、水、食品又は飲料中のナトリウムイオン濃度が、例えば、前記カリウムイオン濃度の10~50%、10~45%、10~40%、10~35%、10~30%、10~25%、10~20%、10~15%、15~50%、15~45%、15~40%、15~35%、15~30%、15~25%、15~20%、20~50%、20~45%、20~40%、20~35%、20~30%、20~25%、25~50%、25~45%、25~40%、25~35%、25~30%、30~50%、30~45%、30~40%、30~35%、35~50%、35~45%、35~40%、40~50%、40~45%、又は45~50%となるように調製することが好ましい。前記ミネラル濃縮液組成物中のナトリウムの含有量は、例えば、前記カリウムイオン濃度の5~45%、5~40%、5~35%、5~30%、5~25%、5~20%、5~15%、5~10%、10~45%、10~40%、10~35%、10~30%、10~25%、10~20%、10~15%、15~45%、15~40%、15~35%、15~30%、15~25%、15~20%、20~45%、20~40%、20~35%、20~30%、20~25%、25~50%、25~45%、25~40%、25~35%、25~30%、30~45%、30~40%、30~35%、35~45%、35~40%、又は40~45%である。
【0017】
本発明のミネラル濃縮液組成物は、水、食品又は飲料に添加することにより、弱アルカリ性の水、食品又は飲料を産生することができる。例えば、本発明のミネラル濃縮液組成物を添加した水は、典型的には、7.5~10.5、7.5~10.0、7.5~9.5、7.5~9.0、7.5~8.5、7.5~8.0、8.0~10.5、8.0~10.0、8.0~9.5、8.0~9.0、8.0~8.5、8.5~10.5、8.5~10.0、8.5~9.5、8.5~9.0、9.0~10.5、9.0~10.0、9.0~9.5、9.5~10.5、9.5~10.0、又は10.0~10.5のpHを有してよい。また、本発明のミネラル濃縮液組成物を添加した水は、緩衝能を有しており、好ましくは、弱アルカリ性から弱酸性のpH領域において、有意な緩衝能を有する。例えば、pH9.2に調整した水酸化ナトリウム溶液100gに対して0.1M塩酸で滴定し、pH9.2からpH3.0までに要した液量を(A)mLとし、本発明のミネラル濃縮液組成物を添加した水を0.1M塩酸で滴定し、pH9.2からpH3.0までに要した液量を(B)mLとしたときの比(B)/(A)を緩衝能とした場合、本発明のミネラル濃縮液組成物を添加した水は、例えば、1.5以上、1,6以上、1,7以上、1,8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、8.5以上、9.0以上、9.5以上、10.0以上、10.5以上、11.0以上、又は11.5以上の緩衝能を有する。このようなpH特性は、生体内における酸性化を予防又は改善するために有用である。したがって、本発明のミネラル濃縮液組成物を水(例えば、浄水)、食品又は飲料に添加することにより、例えば、食後の口腔内の酸性化に起因する酸蝕歯を予防することや、胃腸内の酸性化に起因する胃酸過多や腸内異常発酵などの胃腸症状を改善することが可能となる。
【0018】
本発明のミネラル濃縮液組成物は、植物由来原料の活性炭の抽出液を含んでもよい。活性炭は、大部分の炭素の他、酸素、水素、カルシウムなどからなる多孔質の物質であり、体積あたり表面積が大きいため、多くの物質を吸着する性質を有することから、20世紀初頭から現在にいたるまで、工業的に広く生産されている。一般には、活性炭は、原料となる炭素材料の内部にnmオーダーの微細孔を生成させること(賦活)によって製造される。活性炭の製造方法は、原料を炭化したのち水蒸気や二酸化炭素などの賦活ガスを用いて高温で賦活処理を行うガス賦活法と、原料に塩化亜鉛やリン酸などの薬品を加えてから不活性ガス雰囲気中で加熱して炭化と賦活を同時に行う薬品賦活法に大別される(非特許文献1)。本発明において用いられる活性炭は、炭素材料として植物由来原料を用いて、上記ガス賦活法又は薬品賦活法のいずれかによって製造することができる。
【0019】
本発明において用いられる活性炭の原料は、植物由来原料である限り特に制限されないが、例えば、果実殻(ココヤシ、パームヤシ、アーモンド、クルミ、プラム)、木材(おがくず、木炭、樹脂、リグニン)、巣灰(おがくずの炭化物)、竹材、食品残渣(バガス、もみ殻、コーヒー豆、廃糖蜜)、廃棄物(パルプ工場廃液、建設廃材)などが挙げられ、典型的には、ヤシ殻、おがくず、竹、又はこれらの組み合わせから選択され、好適には、ヤシ殻である。ヤシ殻は、ココヤシ又はパームヤシの実の中にあるシェルと呼ばれる殻を意味する。
【0020】
本発明において用いられる活性炭の形状は特に限定されないが、例えば、粉末活性炭、粒状活性炭(破砕炭、顆粒炭、成型炭)、繊維状活性炭、又は特殊成型活性炭などが挙げられる。
【0021】
植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出する工程は、植物由来原料の活性炭を水系溶媒と接触させて、植物由来原料の活性炭に存在するミネラルを溶出させることによって達成される。このような工程は、植物由来原料の活性炭に存在するミネラルを溶出させることができる限り特に制限されないが、例えば、植物由来原料の活性炭を水系溶媒に浸漬することや、植物由来原料の活性炭を充填したカラムに水系溶媒を通過させることによって行うことができる。植物由来原料の活性炭を水系溶媒に浸漬する場合には、抽出効率を上げるために、水系溶媒を攪拌してもよい。また、ミネラル抽出液を製造する方法は、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出した後に、不純物を除去するために、得られた抽出液を遠心分離する工程、及び/又は濾過する工程などをさらに含んでもよい。
【0022】
植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出する工程において用いられる水系溶媒は、基本的には、HCl溶液以外のものを指す。典型的には水溶媒であり、特に純水であることが好ましい。純水とは、塩類、残留塩素、不溶性微粒子、有機物、非電解性ガスなどの不純物を含まないか殆ど含まない純度の高い水を意味する。純水には、不純物を取り除く方法により、RO水(逆浸透膜を通した水)、脱イオン水(イオン交換樹脂などによりイオンを除去した水)、蒸留水(蒸留器で蒸留した水)などが含まれる。純水はミネラル成分を含まないことから、ミネラルを補給する効果は示さない。
【0023】
植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出できる限り抽出温度は特に制限されないが、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出する工程は、5℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、又は95℃以上の温度で行うことができ、例えば、5~95℃、5~90℃、5~85℃、5~80℃、5~75℃、5~70℃、5~65℃、5~60℃、5~55℃、5~50℃、5~45℃、5~40℃、5~35℃、5~30℃、5~25℃、5~20℃、5~15℃、5~10℃、10~95℃、10~90℃、10~85℃、10~80℃、10~75℃、10~70℃、10~65℃、10~60℃、10~55℃、10~50℃、10~45℃、10~40℃、10~35℃、10~30℃、10~25℃、10~20℃、10~15℃、15~95℃、15~90℃、15~85℃、15~80℃、15~75℃、15~70℃、15~65℃、15~60℃、15~55℃、15~50℃、15~45℃、15~40℃、15~35℃、15~30℃、15~25℃、15~20℃、20~95℃、20~90℃、20~85℃、20~80℃、20~75℃、20~70℃、20~65℃、20~60℃、20~55℃、20~50℃、20~45℃、20~40℃、20~35℃、20~30℃、20~25℃、25~95℃、25~90℃、25~85℃、25~80℃、25~75℃、25~70℃、25~65℃、25~60℃、25~55℃、25~50℃、25~45℃、25~40℃、25~35℃、25~30℃、30~95℃、30~90℃、30~85℃、30~80℃、30~75℃、30~70℃、30~65℃、30~60℃、30~55℃、30~50℃、30~45℃、30~40℃、30~35℃、35~95℃、35~90℃、35~85℃、35~80℃、35~75℃、35~70℃、35~65℃、35~60℃、35~55℃、35~50℃、35~45℃、35~40℃、40~95℃、40~90℃、40~85℃、40~80℃、40~75℃、40~70℃、40~65℃、40~60℃、40~55℃、40~50℃、40~45℃、45~95℃、45~90℃、45~85℃、45~80℃、45~75℃、45~70℃、45~65℃、45~60℃、45~55℃、45~50℃、50~95℃、50~90℃、50~85℃、50~80℃、50~75℃、50~70℃、50~65℃、50~60℃、50~55℃、55~95℃、55~90℃、55~85℃、55~80℃、55~75℃、55~70℃、55~65℃、55~60℃、60~95℃、60~90℃、60~85℃、60~80℃、60~75℃、60~70℃、60~65℃、65~95℃、65~90℃、65~85℃、65~80℃、65~75℃、65~70℃、70~95℃、70~90℃、70~85℃、70~80℃、70~75℃、75~95℃、75~90℃、75~85℃、75~80℃、80~95℃、80~90℃、80~85℃、85~95℃、85~90℃、又は90~95℃の温度で行われる。
【0024】
植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出できる限り抽出時間は特に制限されないが、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出する工程は、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、30分以上、35分以上、40分以上、45分以上、50分以上、55分以上、60分以上、65分以上、70分以上、75分以上、又は80分以上の時間で行うことができ、例えば、5~80分、5~75分、5~70分、5~65分、5~60分、5~55分、5~50分、5~45分、5~40分、5~35分、5~30分、5~25分、5~20分、5~15分、5~10分、10~80分、10~75分、10~70分、10~65分、10~60分、10~55分、10~50分、10~45分、10~40分、10~35分、10~30分、10~25分、10~20分、10~15分、15~80分、15~75分、15~70分、15~65分、15~60分、15~55分、15~50分、15~45分、15~40分、15~35分、15~30分、15~25分、15~20分、20~80分、20~75分、20~70分、20~65分、20~60分、20~55分、20~50分、20~45分、20~40分、20~35分、20~30分、20~25分、25~80分、25~75分、25~70分、25~65分、25~60分、25~55分、25~50分、25~45分、25~40分、25~35分、25~30分、30~80分、30~75分、30~70分、30~65分、30~60分、30~55分、30~50分、30~45分、30~40分、30~35分、35~80分、35~75分、35~70分、35~65分、35~60分、35~55分、35~50分、35~45分、35~40分、40~80分、40~75分、40~70分、40~65分、40~60分、40~55分、40~50分、40~45分、45~80分、45~75分、45~70分、45~65分、45~60分、45~55分、45~50分、50~80分、50~75分、50~70分、50~65分、50~60分、50~55分、55~80分、55~75分、55~70分、55~65分、55~60分、60~80分、60~75分、60~70分、60~65分、65~80分、65~75分、65~70分、70~80分、70~75分、又は75~80分の時間で行われる。
【0025】
このようにして得られたミネラル抽出液を濃縮することにより、ミネラル濃縮液組成物を得ることができる。
【0026】
ミネラル抽出液を濃縮する工程は、当業界において周知な方法によって行うことができ、このような方法としては、例えば、煮沸濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、膜濃縮、又は超音波霧化分離などが挙げられる。ミネラル抽出液を濃縮することにより、その組成を殆ど変更することなく、高濃度のカリウムなどの所望のミネラルを含有するミネラル濃縮液組成物が得られる。
【0027】
前記ミネラル抽出液を濃縮する工程の後に、得られたミネラル濃縮液組成物を冷蔵保管及び冷時濾過することが好ましい。冷却温度は 、典型的には、0~15℃、好ましくは、3~10℃、3~9℃、3~8℃、3~7℃、3~6℃に調整される。また、このような冷蔵保管及び冷時濾過より前にミネラル濃縮液組成物のpHを調整することが好ましい。ミネラル濃縮液組成物は、例えば、7.5~10.5、7.5~10.0、7.5~9.5、7.5~9.0、7.5~8.5、7.5~8.0、8.0~10.5、8.0~10.0、8.0~9.5、8.0~9.0、8.0~8.5、8.5~10.5、8.5~10.0、8.5~9.5、8.5~9.0、9.0~10.5、9.0~10.0、9.0~9.5、9.5~10.5、9.5~10.0、又は10.0~10.5のpHを有するように調整される。このような処理を行うことにより、透明性が高く、浮遊物や沈殿物が有意に低減されたミネラル濃縮液組成物を得ることができる。
【0028】
本発明のミネラル濃縮液組成物を提供するための容器の形態は、特に制限されないが、例えば、金属容器(缶)、滴下タイプ、スプレータイプ、スポイドタイプもしくは化粧水ボトルタイプなどの樹脂容器、紙容器(ケーブルトップつきも含む)、PETボトル、パウチ容器、ガラス瓶、エアレス容器、ポーション容器、防腐剤無添加(PF)点眼容器、スティック、小型ポンプ容器、大型ポンプ容器、ポーションカップ容器、内袋内蔵ボトル、プラスチック使い切り容器、又は水溶性フィルム容器などが挙げられる。また、本発明のミネラル濃縮液組成物を水道水や浄水と自動混和して、連続的に弱アルカリ性のミネラル水を提供することもできる。
【0029】
本発明のミネラル濃縮液組成物は、水、食品又は飲料などに添加することにより、その風味や機能を改善することができる。例えば、本発明のミネラル濃縮液組成物の用途としては、以下の用途が考えられる。
・水道水、浄水又は純水に滴下してミネラル水とする。
・ウイスキーなどのアルコール類に滴下して風味を改善する。
・滴下したミネラル水は、ワインなどを飲む際の水ともなる。
・コーヒー液、コーヒー飲料、茶浸出液、又は茶飲料などのエキスやパウダーや飲料に滴下して、風味をまろやかにする。
・コーヒー豆や茶葉の抽出水に滴下して、抽出効率を上げる。
・炊飯の水に滴下して炊飯を行い、炊きあがりの米の風味を改善する。
・水などの液体に滴下して、胃腸の弱い人や胃酸過多の人における胃腸の不快症状改善の用途に用いる。
・水などの液体に滴下して、血圧が高い人における血圧改善の用途に用いる。
・水道水や浄水と自動混和して、飲み水や手洗い用の殺菌効果のある水を提供する。
・本発明のミネラル濃縮液組成物は、水、食品又は飲料などに添加するだけでなく、植物に滴下して、ミネラル栄養剤として用いることもできる。
【0030】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、適宜変更を加えて実施することが可能である。
【実施例0031】
<実施例1:ヤシ殻活性炭からのミネラル抽出液の作製>
1L三角フラスコにヤシ殻活性炭(「太閤CWタイプ」未洗浄品/フタムラ化学社製)30g、及び90℃に加温した蒸留水400gを入れ、90℃で加温しながら100rpmで15分間、撹拌子によって攪拌した。得られた懸濁液をポリエステル500メッシュ(25μm)で吸引濾過し、これにより得られた濾液を3000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離した後の上清を濾紙で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。
【0032】
<実施例2:活性炭の比較>
ヤシ殻活性炭をクラレコール(登録商標)GG(未洗浄品/クラレ社製)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でミネラル抽出液を作成した。
【0033】
<実施例3-6:抽出時間の比較>
抽出時間を10、20、40、80分に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でミネラル抽出液を作成した。
【0034】
<実施例7-9:蒸留水量、抽出時間の比較>
蒸留水を130、200、400g、抽出時間を5分に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でミネラル抽出液を作成した。
【0035】
<実施例10-12:抽出温度、抽出時間の比較>
抽出温度を30、60、90℃、抽出時間を5分に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でミネラル抽出液を作成した。
【0036】
実施例1-12で作成したミネラル抽出液を下記の方法に従って分析した。
<金属のICP分析>
ICP発光分光分析装置:iCAP6500Duo(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用した。ICP汎用混合液XSTC-622Bを希釈して0、0.1、0.5、1.0mg/Lの4点検量線を作成した。試料を検量線範囲に入るように希硝酸で希釈し、ICP測定を行った。
【0037】
<Cl-,SO4
2-のIC分析>
イオンクロマトグラフシステム:ICS-5000K(日本ダイオネクス社製)を使用した。カラムはDionex Ion Pac AG20およびDionex Ion Pac AS20を用いた。溶離液は0~11分は5mmol/L、13~18分は13mmol/L、20~30分は45mmol/Lの水酸化カリウム水溶液を用い、0.25mL/分の流量で溶出した。陰イオン混合標準液1(Cl-20mg/L、SO4
2-100mg/L含む7イオン種含有:富士フイルム和光純薬社製)を希釈して、Cl-は0、0.1、0.2、0.4、1.0mg/Lの5点検量線を、SO4
2-は0、0.5、1.0、2.0、5.0mg/Lの5点検量線を作成した。試料を検量線範囲に入るように希釈し、25μL注入してIC測定を行った。
【0038】
【0039】
活性炭、抽出時間、活性炭に対する抽出液量、抽出温度を変更してもカリウム濃度が有意に高いという特徴は変わらなかった。また、HClを用いた場合には有意な量の塩化物イオンが抽出された一方(データは示さず)で、いずれの実施例においても、塩化物イオンの濃度は低かった。なお、上記いずれの実施例においても、重金属類(鉛、カドミウム、ヒ素、水銀など)は検出されなかった(データは示さず)。
【0040】
<実施例13:濃縮液の作成>
1L三角フラスコにヤシ殻活性炭(「太閤CWタイプ」未洗浄品/フタムラ化学社製)174g、及び30℃に加温した蒸留水753gを入れ、30℃で加温しながら100rpmで5分間、撹拌子によって攪拌した。得られた懸濁液をポリエステル500メッシュ(25μm)で吸引濾過し、これにより得られた濾液を3000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離した後の上清を濾紙で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。同様に、さらに2回実施した。得られた3回のミネラル抽出液を混合し、エバポレーターによって62倍に濃縮し、下記に示すミネラル濃縮エキスを得た。
【0041】
実施例13で作成したミネラル抽出液とミネラル濃縮エキスを62倍に希釈したものを上記の方法に従って分析した。結果を以下の表に示す。
【0042】
【0043】
濃縮の条件を経ても、カリウム濃度が高く、ナトリウム、塩化物イオンの濃度が低い特徴は変わらなかった。
【0044】
<実施例14:ヤシ殻活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
1L三角フラスコにヤシ殻活性炭(「太閤CWタイプ」未洗浄品/フタムラ化学社製)200g、及び90℃に加温した蒸留水1500gを入れ、90℃で加温しながら100rpmで15分間、撹拌子によって攪拌した。得られた懸濁液をポリエステル500メッシュ(25μm)で吸引濾過し、これにより得られた濾液を3000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離した後の上清を濾紙で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。得られたミネラル抽出液を、エバポレーターによって14倍に濃縮し、下記に示すミネラル濃縮エキスを得た。
【表3】
【0045】
<実施例15:緩衝能評価-I>
(1)評価用サンプルの作成
カリウム濃度がそれぞれ下記で示す濃度となるように、上記で得られたミネラル濃縮エキスを、超純水(MilliQ水)に添加し、評価用サンプルを作製した。
【表4】
【0046】
(2)pHの測定
上記で得られた抽出液の他、比較例として下記のサンプルを用意した。各サンプル100mlに対し、0.1N HClを撹拌子で攪拌しながら1mlずつ添加し、pHを測定した。
・KOH
・市販のアルカリイオン水(Na:8.0mg/l、K:1.6mg/l、Ca:13mg/l、Mg:6.4mg/l、pH値:8.8~9.4)
pH9.2に調整した水酸化ナトリウム溶液100gに対して0.1M塩酸で滴定し、pH9.2からpH3.0までに要した液量を(A)mLとし、前記ミネラル含有水組成物を0.1M塩酸で滴定し、pH9.2からpH3.0までに要した液量を(B)mLとしたときの比(B)/(A)を緩衝能とした。
図1に示すとおり、ヤシ殻活性炭由来のミネラル濃縮エキスを添加した水は、優れた緩衝能を有することが判明した。
【0047】
<実施例16:緩衝能評価-II>
(1)比較例及び評価用サンプルの作成
比較例として、浄水(水道水をWater Stand社製の浄水器で処理したもの)、及び、実施例1と同じ、市販のアルカリイオン水を用意した。また、カリウム濃度が100ppmとなるように、実施例1で得られたミネラル濃縮エキスを、浄水(上記に同じ)に添加し、評価用サンプルを作製した。
(2)pHの測定
上記で得られたサンプルを実施例2と同様に緩衝能の評価を行った。すなわち、各サンプル100mlに対し、0.1N HClを撹拌子で攪拌しながら1mlずつ添加し、pHを測定した。
図2に示すとおり、水道水の浄水にヤシ殻活性炭由来のミネラル濃縮エキスを添加した水は、浄水やアルカリイオン水に比べて、優れた緩衝能を有することが判明した。
【0048】
<実施例17:ヤシ殼活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
=パイロットスケール=
ヤシ殼活性炭(「太閤」、塩酸未洗浄品、フタムラ化学社製)40kgに180Lの純水を通液し、得られた懸濁液をメッシュ及び遠心分離によって清澄化し、ミネラル抽出液を得た。遠心式薄膜真空蒸発装置によって92倍に減圧濃縮し、得られた濃縮液を遠心分離及び濾紙によって清澄化した。これを各1Lのビニールパウチに充填し、85℃、30分間熱処理し、ミネラル濃縮処理エキスを得た。得られたミネラル濃縮処理エキスのカリウムイオン濃度、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度はICP発光分光分析法に従い、塩化物イオン濃度はイオンクロマトグラフ法、TOCは全有機炭素計測定法で分析した。また、得られたミネラル濃縮処理エキスについて2週間冷蔵にて保管後、「-」(透明性が高く浮遊物および沈殿物が認められない)、「+」(わずかに浮遊物または沈殿物が認められる)、「++」(浮遊物や凝集物が多く認められる)、「+++」(浮遊物や凝集物がさらに多く認められ、透明性が失われている)、「++++」(浮遊物が多く凝集物が堆積し、透明性が低い)の五段階で濁りの程度の目視評価を行った。
【0049】
<実施例18:ヤシ殼活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
=ラボ・スモールスケール=
ヤシ殼活性炭(粒状白鷺、塩酸未洗浄品、大阪ガスケミカル社製)200gと蒸留水910gを入れ、30℃で加温しながら100rpmで20分間、撹拌子によって攪拌した。得られた懸濁液を濾紙(東洋濾紙株式会社ADVANTEC定量濾紙No.5Cφ55mm)で吸引濾過し、これにより得られた濾液をさらに濾紙(MERCKOmnipore PTFE Membrane 5.0μmφ47mm)で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。これを十分量のミネラル抽出液が得られるまで複数回繰り返し、ミネラル抽出液全体を混合した後、ロータリーエバポレーターによって50倍に減圧濃縮し、得られた濃縮液を濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC 25ASO20AN 0.2μm)で濾過し、ミネラル濃縮エキスを得た。このミネラル濃縮液に塩酸を添加し、pHが9.5程度付近になるように調整し、これをバイアル瓶に10mL小分け充填し、2日間冷蔵にて保管した。その後、濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC 25ASO20AN 0.2μm)で冷時濾過し、これを80℃、30分間熱処理し、ミネラル濃縮処理エキスを得た。得られたミネラル濃縮処理エキスのカリウムイオン濃度、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)に従って分析し、塩化物イオン濃度、硫酸イオン濃度はイオンクロマトグラフィー(IC)に従って分析した。また、得られたミネラル濃縮処理エキスについて2週間冷蔵にて保管後、「-」(透明性が高く浮遊物および沈殿物が認められない)、「+」(わずかに浮遊物または沈殿物が認められる)、「++」(浮遊物や凝集物が多く認められる)、「+++」(浮遊物や凝集物がさらに多く認められ、透明性が失われている)、「++++」(浮遊物が多く凝集物が堆積し、透明性が低い)の五段階で濁りの程度の目視評価を行った。
【0050】
<実施例19:ヤシ殼活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
=ラボ・ラージスケール=
ヤシ殼活性炭(粒状白鷺、塩酸未洗浄品、大阪ガスケミカル社製)800gと蒸留水3660gを入れ、30℃で加温しながら15分間、攪拌した。得られた懸濁液を濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC A080A090C)で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。これを十分量のミネラル抽出液が得られるまで複数回繰り返し、ミネラル抽出液全体を混合した後、ロータリーエバポレーターによって60倍に減圧濃縮し、得られた濃縮液を濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC A080A090C)で濾過し、ミネラル濃縮エキスを得た。これをバイアル瓶に10mL小分け充填し、2日間冷蔵にて保管した。その後、濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC A080A090C)で冷時濾過した。これに塩酸を添加し、pHが9.5程度付近になるように調整し、さらに純水によってカリウムイオン濃度が100000ppm程度になるよう希釈調整した。これを80℃、30分間熱処理し、ミネラル濃縮処理エキスを得た。得られたミネラル濃縮処理エキスのカリウムイオン濃度、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度、硫酸イオンはイオンクロマトグラフィー(IC)に従い、塩化物イオン濃度はイオンクロマトグラフ法、TOCは全有機炭素計測定法で分析した。また、得られたミネラル濃縮処理エキスについて2週間冷蔵にて保管後、「-」(透明性が高く浮遊物および沈殿物が認められない)、「+」(わずかに浮遊物または沈殿物が認められる)、「++」(浮遊物や凝集物が多く認められる)、「+++」(浮遊物や凝集物がさらに多く認められ、透明性が失われている)、「++++」(浮遊物が多く凝集物が堆積し、透明性が低い)の五段階で濁りの程度の目視評価を行った。
【0051】
<実施例20:ヤシ殼活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
=パイロットスケール=
2500Lコニカルタンクにヤシ殼活性炭(「粒状白鷺、未洗浄品、大阪ガスケミカル社製)360kgと35℃純水1620kgを入れ、15分間攪拌し、得られた懸濁液を振動篩及び遠心分離、濾紙濾過に清澄化し、ミネラル抽出液を得た。遠心式薄膜真空蒸発装置によって60倍に減圧濃縮し、得られた濃縮液を濾紙で濾過し、ミネラル濃縮エキスを得た。ドラム缶に充填して2日間冷蔵にて保管し、その後、濾紙で冷時濾過した。これに塩酸を添加し、pHが9.5程度付近になるように調整し、さらに純水によってカリウムイオン濃度が100000ppm程度になるよう希釈調整した。これを130℃、30秒間熱処理し、ミネラル濃縮処理エキスを得た。得られたミネラル濃縮処理エキスのカリウムイオン濃度、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度、硫酸イオンはイオンクロマトグラフィー(IC)に従い、塩化物イオン濃度はイオンクロマトグラフ法、TOCは燃焼酸化-赤外線TOC分析法で分析した。また、得られたミネラル濃縮処理エキスについて2週間冷蔵にて保管後、「-」(透明性が高く浮遊物および沈殿物が認められない)、「+」(わずかに浮遊物または沈殿物が認められる)、「++」(浮遊物や凝集物が多く認められる)、「+++」(浮遊物や凝集物がさらに多く認められ、透明性が失われている)、「++++」(浮遊物が多く凝集物が堆積し、透明性が低い)の五段階で濁りの程度の目視評価を行い、さらに濁度計(HACH社 2100AN TURBISIMETRER)を用いてNTU濁度を測定した。
【0052】
実施例17-20の結果を表5に示す。ミネラルエキスの成分として、実施例17ではカリウム濃度が60994ppm、塩化物イオン濃度が3030ppm、pHが11.1のミネラルエキスが得られ、実施例18ではカリウム濃度が87500ppm、塩化物イオン濃度が32890ppm、pHが9.50のミネラルエキスが得られ、実施例19ではカリウム濃度が100000ppm、塩化物イオン濃度が13132ppm、pHが9.51のミネラルエキスが得られ、実施例20ではカリウム濃度が111747ppm、塩化物イオン濃度が8545ppm、pHが9.48のミネラルエキスが得られた。また、濁りの観点では、実施例17では「++++」(浮遊物が多く凝集物が堆積し、透明性が低い)という評価であった一方で、冷蔵保管及び冷時濾過を行った実施例18、実施例19及び実施例20ではいずれも「++」(浮遊物や凝集物が多く認められる)の評価となった。特に、pH調整を冷蔵保管及び冷時濾過より前に行った実施例18では、「-」(透明性が高く浮遊物及び沈殿物が認められない)となった。このことから、透明性の高いミネラルエキスを得るためには、冷蔵保管及び冷時濾過を行うのが望ましく、pH調整を行う場合は冷蔵保管及び冷時濾過より前に行うのが望ましいことが判明した。
【表5】
【0053】
<実施例21:官能評価>
カリウム終濃度が50~300ppmとなるように、実施例1で作製したミネラル濃縮エキス、又は炭酸カリウムをそれぞれ浄水に添加し、下記の表に示すとおり、ミネラル飲用水のサンプルを得た。また、コントロールとして浄水を用意した。浄水は、水道水を市販の汎用浄水器で処理したもの(活性炭によりカルキ臭などを除いたもの)を用いた。
【表6】
上記で得られたサンプルについて、訓練された評価パネラー4名により官能評価を行った。官能評価に際しては、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で、水の「まろやかさ」及び「雑味」についてコントロールと比較した評価を行い、各パネラーの評価点を平均した。
「まろやかさ」は、口当たりが良く、刺激がない、まるい風味とし、以下の4段階の評価点をつけた(0点=コントロールと同等、1点=ややまろやか、2点=まろやか、3点=非常にまろやか)。数値が正に大きい程、まろやかさが強化されていることを意味する。
「雑味」は、苦みやえぐみなど、不快と感じられる風味とし、以下の4段階の評価点をつけた(0点=コントロールと同等、-1点=やや雑味がある、-2点=雑味がある、-3点=非常に雑味がある)。数値が負に大きい程、雑味が大きいことを意味する。
【0054】
「まろやかさ」に関する官能評価(
図3)からわかるように、ヤシ殻活性炭由来のミネラル濃縮エキスを添加することにより、浄水に比べてまろやかな味わいを得ることができる。また、上記表中のサンプルCとサンプルGを比較した場合には、炭酸カリウム水溶液よりも、ミネラル濃縮エキスの添加水の方がまろやかであるとすべての評価者が回答し、上記表中のサンプルDとサンプルHを比較した場合には、炭酸カリウム水溶液よりも、ミネラル濃縮エキスの添加水の方がまろやかであると半数以上の評価者が回答した。
「雑味」に関する官能評価(
図4)からわかるように、カリウム濃度が同等の場合には、ヤシ殻活性炭由来のミネラル濃縮エキスを添加した場合の方が、炭酸カリウム溶液よりも雑味が少ない。また、上記表中のサンプルCとサンプルGを比較した場合には、炭酸カリウム水溶液よりも、ミネラル濃縮エキスの添加水の方が雑味が少ないと半数以上の評価者が回答し、上記表中のサンプルDとサンプルHを比較した場合には、炭酸カリウム水溶液よりも、ミネラル濃縮エキスの添加水の方が雑味が少ないとすべての評価者が回答した。
【0055】
<実施例22:水における官能評価-カリウム濃度の影響>
水は浄水(水道水を浄水器処理したもの)と水道水を用意し、水中の添加されるカリウム濃度が下記に示す濃度となるように、実施例17と同様にして得られたミネラル濃縮エキス(カリウム濃度:104000ppm)を添加して水の官能評価を実施した。
官能評価は、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表7】
【0056】
ミネラル濃縮エキスを添加した浄水及び水道水では、50~100ppmのカリウム濃度において風味が有意に改善された。特に、水道水では、50~100ppmのカリウム濃度において、ミネラル濃縮エキスの添加前と比較してカルキ臭の有意な低減が確認された。
【0057】
<実施例23:水における官能評価-pH影響>
水は浄水(水道水を浄水器処理したもの)と水道水を用意し、実施例17と同様にして得られたミネラル濃縮エキス(カリウム濃度:53375ppm)を塩酸で各pH(pH11.2、10.2、9.2及び8.1)に調整後、水中の添加されるカリウム濃度がそれぞれ下記に示す濃度となるように添加して水の官能評価を実施した。
官能評価は、訓練された評価パネラー5名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表8】
【0058】
pH8.1~11.2、特にpH8.1~10.2に調整したミネラル濃縮エキスを添加したミネラル水において広いカリウム濃度範囲で香味が有意に改善された。また、水道水では、50ppm以上のカリウム濃度において、どのpHにおいてもミネラル濃縮エキスの添加前と比較してカルキ臭の有意な低減が確認されたが、各pHとカリウム濃度により、香味良好なpH-カリウム濃度領域がそれぞれ得られた。浄水においても、各pHとカリウム濃度により、香味良好なpH-カリウム濃度領域がそれぞれ得られた。
【0059】
<実施例24:氷における飲料に対する味覚改善効果>
水は浄水(水道水を浄水器処理したもの)と水道水と市販のミネラル水(天然水)を用意し、水中の添加されるカリウム濃度がそれぞれ下記に示す濃度となるように、実施例17と同様にして得られたミネラル濃縮エキス(カリウム濃度:53375ppm)を添加後、10mlずつカップに入れて一晩冷凍、取り出し5分後、氷の風味について官能評価を実施した。
官能評価は、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表9】
浄水、水道水及び市販のミネラル水(天然水)にミネラル濃縮エキスを添加して製造した氷では、50~100ppmのカリウム濃度において氷自体の風味が有意に改善された。
【0060】
上記で得られた各氷をアルコール濃度40%のウイスキー360μlに添加し、ウイスキーの風味(味わい、香り立ち)について官能評価を実施した。
官能評価は、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表10】
浄水、水道水及び市販のミネラル水(天然水)にミネラル濃縮エキスを添加して製造した氷をウイスキーに添加したところ、ミネラル濃縮エキスを添加していない氷と比較して、50~100ppmのカリウム濃度においてウイスキーの風味が有意に改善された。
【0061】
上記で得られた各氷をアルコール濃度25%の焼酎1400μlに添加し、焼酎の風味(味わい、香り立ち)について官能評価を実施した。
官能評価は、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表11】
浄水、水道水及び市販のミネラル水(天然水)にミネラル濃縮エキスを添加して製造した氷を焼酎に添加したところ、ミネラル濃縮エキスを添加していない氷と比較して、50~100ppmのカリウム濃度において焼酎の風味が有意に改善された。
【0062】
上記で得られた各氷をレモンサワー1400μlに添加し、レモンサワーの風味(味わい、香り立ち)について官能評価を実施した。
官能評価は、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表12】
浄水、水道水及び市販のミネラル水(天然水)にミネラル濃縮エキスを添加して製造した氷をレモンサワーに添加したところ、ミネラル濃縮エキスを添加していない氷と比較して、50~500ppmのカリウム濃度においてレモンサワーの風味が有意に改善された。
【0063】
水道水で製造した氷では、50~100ppmのカリウム濃度において、ミネラル濃縮エキスを添加しないものと比較してカルキ臭の有意な低減が確認された。
【0064】
<実施例25:抽出系飲料における官能評価>
水は浄水(水道水を浄水器処理したもの)と水道水と市販のミネラル水(天然水)を用意し、水中の添加されるカリウム濃度がそれぞれ下記に示す濃度となるように、実施例17と同様にして得られたミネラル濃縮エキス(カリウム濃度:53375ppm)を添加後、沸騰させ、コーヒー及び緑茶の抽出水(100ml)とした。
コーヒーの抽出は、各カップ分にブラジル産コーヒー豆10gを計量して、粉砕機で粉砕したのち、上記沸騰した抽出水を注ぐことにより行い、4分置いたのちコーヒー抽出液の官能評価を行った。
コーヒーの官能評価は、ミルク及び砂糖なし、ミルク入り(15mlに500μlのミルクを添加)、砂糖入り(50mlに3gのグラニュー糖を添加)、ミルク及び砂糖入り(50mlに3gのグラニュー糖及び166μlのミルクを添加)の4種類で行い、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表13】
ミネラル濃縮エキスを添加した浄水、水道水及び市販のミネラル水(天然水)を抽出溶媒として用いて抽出したコーヒーでは、ミネラル濃縮エキスを添加していない抽出溶媒を用いた場合と比較して、50~300ppmのカリウム濃度においてコーヒーの風味が有意に改善された。
【0065】
緑茶の抽出は、各カップ分に茶葉2gを計量して、上記沸騰した抽出水を注ぐことにより行い、3分置いたのち緑茶抽出液の官能評価を行った。
官能評価は、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表14】
ミネラル濃縮エキスを添加した浄水、水道水及び市販のミネラル水(天然水)を抽出溶媒として用いて抽出した茶では、ミネラル濃縮エキスを添加していない抽出溶媒を用いた場合と比較して、50~100ppmのカリウム濃度において茶の風味が有意に改善された。
【0066】
<実施例26:各種飲料における官能評価>
各種飲料に、飲料中の添加されるカリウム濃度がそれぞれ下記に示す濃度となるように、実施例17と同様にして得られたミネラル濃縮エキス(カリウム濃度:96900ppm)を添加して、各飲料について官能評価を行った。
官能評価は、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが香味大変不良;1点=変化があるが香味不良;2点=変化なし;3点=変化があり香味良好;4点=変化があり香味大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表15-1】
上記表から、ミネラル濃縮エキスを添加したアルコール飲料では、50~600ppmのカリウム濃度、特に50~100ppmの濃度範囲において風味が有意に改善されることが確認された。また、ノンアルコールビールでは、50~300ppmのカリウム濃度において風味が有意に改善された。
【表15-2】
ミネラル濃縮エキスを各種飲料に添加したところ、コーラ飲料又はレモン系炭酸飲料では、50~100ppmのカリウム濃度において風味が有意に改善され、オレンジ系果汁飲料では、50~300ppmのカリウム濃度において風味が有意に改善され、緑茶飲料又は麦茶飲料では、50~100ppmのカリウム濃度において風味が有意に改善され、ブラックコーヒー飲料では、50~300ppmのカリウム濃度において風味が有意に改善され、ミルク入り紅茶飲料では、50~300ppmのカリウム濃度において風味が有意に改善された。
【0067】
<実施例27:炭酸飲料の泡質評価>
水は浄水(水道水を浄水器処理したもの)と水道水を用意し、水中の添加されるカリウム濃度がそれぞれ下記に示す濃度となるように、実施例17と同様にして得られたミネラル濃縮エキス(カリウム濃度:104000ppm)を添加して調整後、ガス圧を2.1±0.2kg/cm
2に揃えたソーダサイフォンで炭酸を付けてサンプルとし、泡質(「泡の細かさ」、「炭酸の飲みこみやすさ」及び「後味のキレ」)の評価を行った。
評価は、訓練された評価パネラー4名により、事前に評価パネラー間で評価基準のすり合わせを行った上で実施した。評価は、ミネラル濃縮エキスを添加していないものをコントロールとして用いて、各パネラーによる以下の4段階の評価点(0点=変化があるが大変不良;1点=変化があるが不良;2点=変化なし;3点=変化があり良好;4点=変化があり大変良好)を合計した後にそれぞれの平均値を算出し、平均値が1以下である場合を×、1.1以上2以下である場合を△、2.1以上3以下である場合を〇、3.1以上である場合を◎とした。
【表16】
浄水及び水道水にミネラル濃縮エキスを添加した炭酸水では、50~300ppmのカリウム濃度において泡質が有意に改善された。