(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172024
(43)【公開日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ステンレス製ツイスト加工メタルジグ
(51)【国際特許分類】
A01K 85/14 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
A01K85/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078198
(22)【出願日】2021-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】521192581
【氏名又は名称】神有デンソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188776
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 吉男
(72)【発明者】
【氏名】奥本 剛
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307BA45
2B307BA46
2B307BA47
(57)【要約】
【課題】生きた魚を模した動きを再現し、食魚性の魚の興味を引きながらも、使用の際の負担が軽減されたメタルジグを提供することを課題とする。
【解決手段】メタルジグ12を、略流線形の右側面部32と、略流線形の左側面部34と、右側面部32と左側面部34間の厚み部22とから板状に構成する。メタルジグ12に捻転部42を設け、捻転部42の長手方向の長さを全長の40パーセント以上とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略流線形の右側面部と、略流線形の左側面部と、前記右側面部と前記左側面部間の厚み部とから構成される板状のメタルジグであって、
捻転部を有し、かつ、前記捻転部の長手方向の長さが全長の40パーセント以上であることを特徴とするメタルジグ。
【請求項2】
前記捻転部の捻転角度が10°から30°であることを特徴とする請求項1に記載のメタルジグ。
【請求項3】
前記右側面部及び前記左側面部に鏡面加工が施され、前記厚み部には鏡面加工が施されていないことを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載のメタルジグ。
【請求項4】
前記右側面部及び前記左側面部の短手方向における長さが最大となる箇所が、
前記右側面部及び前記左側面部の長手方向の一端から全長の35パーセントから45パーセントの位置にあることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のメタルジグ。
【請求項5】
ステンレス製であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のメタルジグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルジグと称される金属製の魚釣り用ルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、釣竿をしゃくってルアーを動かすジギングと呼ばれる魚釣りの手法において、メタルジグと称される金属製の魚釣り用ルアーが使用されている。一般的に、このメタルジグの両端には、釣針と釣糸を取付けるための取付穴が設けられており、使用者は、メタルジグに釣糸を取付け、釣竿をしゃくることで、メタルジグの動きをある程度制御することが可能である。食魚性の魚は、水中で動くメタルジグを生きた魚と誤認することにより、釣針に掛かることとなる。
しかしながら、形状が単純なメタルジグは、水中での挙動も単純なものとなるため、生きた魚の動きを模することに限界があり、食魚性の魚が釣針に掛かり難いという問題があった。また、金属製で重量のあるメタルジグを使用するには、相応の筋力や体力が要求されるため、長時間の使用が困難であり、女性や子供には扱い難いという問題もあった。
【0003】
メタルジグの動きを生きた魚のものに近づけるために、特開2016-140356号公報(以下「特許文献1」という。)に、湾曲された水流受け部と、水流受け部に対して垂直に起立する尾部が一体形成された金属製ルアーが開示されている。
特許文献1の発明に係るメタルジグは、メタルジグに取り付けた釣糸を巻き取る際、魚が身をねじる動きを模して左右に遊動することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明に係るメタルジグは、釣糸の巻き取り方向に進行していなければ上記の動きが実現できないため、使用者は、頻繁に釣竿をしゃくり、あるいは釣糸を巻き続けなければならず、使用者に掛かる負担の問題は解決できていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、生きた魚を模した動きを再現し、食魚性の魚の興味を引きながらも、使用の際の負担が軽減されたメタルジグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の本発明のメタルジグは、略流線形の右側面部と、略流線形の左側面部と、右側面部と左側面部間の厚み部とから構成される板状のメタルジグであって、捻転部を有し、かつ、捻転部の長手方向の長さが、全長(メタルジグの長手方向の最大長さを指す。以下同じ。)の40パーセント以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るメタルジグは板状であり、右側面部及び左側面部(以下、「側面部」という。)が略流線形で、かつ、捻転部を有することにより、使用者が釣竿をしゃくることで、釣上方向と逆向きに生じる水の抵抗がメタルジグの側面部にも及ぶ。
この側面部が受ける水の抵抗により、メタルジグが回転する方向の力が生じる。メタルジグが十分に回転していると、使用者が釣竿を一度しゃくり終えた後、メタルジグが自重で水中を下降する際にもこの回転が継続する。さらに、メタルジグの回転によって水平よりも上向きの揚力が生じ、メタルジグの下降速度が低下するため、食魚性の魚の興味を引き続けながらも、再度しゃくり上げるまでの間隔を長く保つことができ、使用時の負担が軽減される。また、揚力が生じることにより、再度しゃくり上げる際に要する力自体も少なくなる。
加えて、本発明に係るメタルジグは、リールを巻き続けるだけでも回転するため、釣竿をしゃくらなくても食魚性の魚の興味を引き続けることが可能である。
なお、メタルジグを水底まで下降させたい場合は、メタルジグの長手方向の端部を鉛直下向きにして水中に投下することで、揚力の発生を防止し、円滑に投下することができる。
その上、本発明に係るメタルジグは板状であり、側面部が略流線形であるため、側面部の長手方向における端部のいずれに釣糸を取付けて使用した場合であっても、上記の効果を奏する。
一方、メタルジグ全体に占める捻転部の割合が不足している場合には、メタルジグを十分に回転させるには至らない。よって、本発明の効果を発揮させるためには、捻転部の長手方向の長さが、全長の40パーセント以上であることが必要であり、捻転部の捻転角度が10°以上であることが望ましい。
以下に、本発明に係るメタルジグの作用効果について、図を用いて、さらに詳しく述べる。
【0009】
図7は、本発明に係るメタルジグが水の抵抗により受ける力の向きを示す説明図である。
図7に示すように、本発明に係るメタルジグ10は、厚み部20と、略流線形の側面部30を有する。また、厚み部20と側面部30は、中央に設けられた捻転部40と、両端に設けられた非捻転部50とを有し、一体に構成されている。捻転部40は、全長の40パーセント以上の十分な長手方向の長さを有している。
進行方向60向きに力を加え、メタルジグ10が進行方向60に向かって進行すると、進行方向60とは逆向きに水の抵抗力80を受ける。メタルジグ10は捻転部40を有するため、水の抵抗力80は側面部30にも働き、側面部30の下面を上向きに押し上げる方向に回転力90が生じる。回転力90により、メタルジグ10は回転方向70に向かって回転する。
【0010】
図8及び
図9は、本発明に係るメタルジグが水中で回転することにより生じる揚力を示す説明図である。
図8に示すように、本発明に係るメタルジグ10を水中で回転方向72に回転させる。メタルジグ10には、重力100、浮力110及び水の抵抗力82が生じており、この3つの力の合力により、メタルジグ10は鉛直下向きの進行方向62に向かって進行している。メタルジグ10が進行方向62に向かって進行することにより、水流140が生じている。
水流140の中でメタルジグ10が回転方向72に回転していることにより、メタルジグ10の周りの水圧が変化し、揚力120が生じる。揚力120の向きは、水流140の向きと垂直である。重力100、浮力110、水の抵抗力82及び揚力120の合力130により、メタルジグ10は進行方向を変える。
図9に示すように、合力130により、メタルジグ10は進行方向64に向かって進み始める。このとき、水の抵抗力84が進行方向64と逆向きに生じる。メタルジグ10が進行方向64に向かって進行することにより、水流142が生じる。
水流142の中でメタルジグ10が回転方向72に回転していることにより、メタルジグ10の回りの水圧が変化し、揚力122が生じる。揚力122の向きは、水流142の向きと垂直であり、水平よりも上向きである。
【0011】
図10は、従来の捻転していないメタルジグの水中での挙動を示す説明図であり、メタルジグを引き上げた際の、一定の時間間隔におけるメタルジグの位置変化を示すものである。
図10に示すように、従来の捻転していないメタルジグ150は、釣竿をしゃくり、始点160から釣上点162まで軌跡170を通って引き上げられた後、釣上方向の慣性力を水の抵抗により失い、自重により軌跡172を通って下降する。
このとき、捻転部を有していないメタルジグ150は回転することがなく、ほとんど一様の姿勢を保ったまま水底180まで沈む。
メタルジグは金属製で、水中を下降する速度が速い上、動きの少ない状態でメタルジグを放置すると魚の食いつきが悪くなるため、使用者は頻繁に釣竿をしゃくらなくてはならない。
【0012】
図11は、本発明に係るメタルジグの水中での挙動を示す説明図であり、メタルジグを引き上げた際の、
図10における時間間隔と同一の時間間隔におけるメタルジグの位置変化を示すものである。
図11に示すように、本発明に係るメタルジグ10は、釣竿をしゃくり、始点160から釣上点162まで軌跡170を通って引き上げられた後、釣上方向の慣性力を水の抵抗により失い、自重により軌跡174を通って下降する。
[0009]で述べた通りに、メタルジグ10は引き上げられた際の水の抵抗により回転し、十分な長手方向の長さを有する捻転部を備えているため、釣上点162を経過した後も回転が持続する。
また、[0010]で述べた通りに、メタルジグ10には水平よりも上向きの揚力が生じているため、メタルジグ150を引き上げた場合と比較して、下降速度が緩やかとなる。
【0013】
次に、第2の本発明のメタルジグは、第1の本発明において、捻転部の捻転角度が10°から30°であることを特徴とする。
捻転角度が大きいほど、水の抵抗によりメタルジグに生じる回転方向の力が大きくなる。この捻転角度を10°から30°とすることによって、回転が適度となり、より生きた魚に近い視覚効果を発揮することができる。
【0014】
第3の本発明のメタルジグは、第1又は第2の本発明において、右側面部及び左側面部に鏡面加工が施され、厚み部には鏡面加工が施されていないことを特徴とする。
【0015】
側面部に鏡面加工を施すことにより、魚が鱗により光を反射するのと同様の視覚効果が生じる。また、メタルジグが回転することで、側面部が光を乱反射するため、捻転部を有さないメタルジグと比較して、鏡面加工を施すことによる視覚効果が顕著に表れる。
加えて、魚は、腹部や背部には鱗を有していないか、あるいは有していたとしても少量である種がほとんどである。そのため、メタルジグの厚み部には鏡面加工を施さず、側面部にのみ鏡面加工を施すことにより、その視覚効果はさらに生きた魚のものに近づく。
【0016】
第4の本発明のメタルジグは、第1~3のいずれか1つの本発明において、右側面部及び左側面部の短手方向における長さが最大となる箇所が、右側面部及び左側面部の長手方向の一端から全長の35パーセントから45パーセントの位置にあることを特徴とする。
【0017】
側面部の短手方向における長さが最大となる箇所を上記の位置とすることで、メタルジグ全体が魚を模した形状となり、より生きた魚に近い視覚効果を発揮することができる。
【0018】
第5の本発明のメタルジグは、第1~4のいずれか1つの本発明において、ステンレス製であることを特徴とする。
【0019】
素材をステンレスとすることにより、耐久性に優れ、鏡面加工が容易となると共に、メンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るメタルジグは、釣竿をしゃくるだけで容易に回転し、しゃくり終えた後の水中での下降速度が緩やかになると共に、下降時においても食魚性の魚の興味を引き続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るメタルジグの実施形態を示す平面図である。
【
図2】本発明に係るメタルジグの実施形態を示す正面図である。
【
図3】本発明に係るメタルジグの実施形態を示す右側面図である。
【
図4】本発明に係るメタルジグの実施例を示す平面図である。
【
図5】本発明に係るメタルジグの実施例を示す正面図である。
【
図6】本発明に係るメタルジグの実施例を示す右側面図である。
【
図7】本発明に係るメタルジグが水の抵抗により受ける力の向きを示す説明図である。
【
図8】本発明に係るメタルジグが水中で回転することにより生じる揚力を示す説明図である。
【
図9】本発明に係るメタルジグが水中で回転することにより生じる揚力を示す説明図である。
【
図10】従来の捻転していないメタルジグの水中での挙動を示す説明図である。
【
図11】本発明に係るメタルジグの水中での挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図を用いて説明する。
図1~3は、それぞれ、本発明に係るメタルジグの実施形態を示す平面図、正面図及び右側面図である。
図1~3に示すように、本発明の実施形態に係るメタルジグ12は、厚み部22と、略流線形の右側面部32と、略流線形の左側面部34により構成されている。また、メタルジグ12は、回転軸200を回転の軸として捻転角αだけ捻転する捻転部42を中央に有し、非捻転部52を両端に有している。さらに、メタルジグ12は、釣糸及び釣針の取付穴190を両端に有している。捻転部42は、全長の40パーセント以上の十分な長手方向の長さを有している。
【実施例0023】
以下に本発明の実施例について図を用いて説明する。
図4~6は、それぞれ、本発明に係るメタルジグの実施例を示す平面図、正面図及び右側面図である。
図4~6に示すように、本発明の実施例に係るメタルジグ14は、厚み部24と、略流線形の右側面部36と、略流線形の左側面部38により構成されている。メタルジグ14は、回転軸202を回転の軸として捻転角度18°で捻転する捻転部44を中央に有し、非捻転部54と非捻転部56をそれぞれ両端に有している。メタルジグ14は、釣糸及び釣針の取付穴192を両端に有している。
また、メタルジグ14は全長が245mmで成形されており、捻転部44は長手方向の長さが135mm、非捻転部54は長手方向の長さが45mm、非捻転部56は長手方向の長さが65mmでそれぞれ成形されている。したがって、捻転部44の長手方向の長さは、全長の約55パーセントである。
さらに、メタルジグ14には、右側面部36及び左側面部38の短手方向における長さが25mmで最大となる最大幅部210が、右側面部36及び左側面部38の長手方向の一端のうち、非捻転部54を有する側の端部から100mmの位置、すなわち全長の約40パーセントの位置に設けられている。
加えて、メタルジグ14はステンレス製であり、右側面部36と、左側面部38には鏡面加工が施され、厚み部24には鏡面加工は施されていない。
なお、厚み部24は5mmで成形されている。